《原著》あたらしい眼科41(4):439.443,2024cブリンゾラミドからブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更1年間の効果,安全性井上賢治*1朝比奈裕美*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CSafetyandE.cacyOveraOne-YearPeriodafterSwitchingfromBrinzolamidetoBrimonidine/BrinzolamideFixedCombinationKenjiInoue1),YumiAsahina1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合剤(BBFC)のC1年間の効果と安全性を後向きに検討する.対象および方法:ブリンゾラミド点眼薬(BRZ)からCBBFCへ変更した緑内障,高眼圧症C128例を対象とした.変更前後の眼圧と視野を比較し,副作用と中止例を調査した.結果:眼圧は変更前(15.4C±3.5CmmHg)より変更3,6,9,12カ月後(13.1C±2.7,13.8C±3.2,13.8C±3.8,13.7C±2.7CmmHg)に有意に下降した.視野のCMD値は変更前C.9.79±4.59CdBと変更C12カ月後.9.18±4.70CdBで同等だった.副作用はC34例(26.6%)で出現し,結膜炎C12例,眼瞼炎C7例などだった.中止例はC50例(39.1%)で,副作用C29例,薬剤追加変更C20例などだった.結論:BRZからCBBFCへの変更ではC1年間にわたり眼圧は下降し,視野は維持できたが,中止例も約C40%と多かった.CPurpose:ToCinvestigateCbothCsafetyCandCe.cacyCoverCaC1-yearCperiodCafterCswitchingCfromCbrinzolamide(BRZ)toCbrimonidine/brinzolamideC.xedcombination(BBFC)C.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC128CpatientswhowereswitchedfromBRZtoBBFC.Thecomparisonofintraocularpressure(IOP)andmeandeviation(MD)valueatbeforeandatafterswitching,adversereactions,anddropoutswereinvestigated.Results:At3,6,9,and12monthsafterswitching,meanIOPhadsigni.cantlydecreasedto13.1±2.7,C13.8±3.2,C13.8±3.8,CandC13.7C±2.7CmmHg,Crespectively,CcomparedCtoCatbaseline(15.4C±3.5CmmHg)C.CThereCwasCnoCsigni.cantCdi.erenceCinCMDCvalueCbetweenCthatCatbaseline(C.9.79±4.59dB)andCatCafterC12months(C.9.18±4.70dB)C.COfCtheCtotalC128Cpatients,adversereactionsoccurredin34(26.6%)C,i.e.,conjunctivitis(n=12patients),blepharitis(n=7patients),andother(n=15patients),and50patients(39.1%)discontinuedtheadministrationduetoadversereactions(n=29patients),switching/addingmedications(n=20patients),andother(n=1patient)C.Conclusions:AlthoughIOPdecreasedandvisualacuitywasmaintainedfor1-yearafterswitchingfromBRZtoBBFC,approximately40%ofthepatientsdiscontinuedtheadministration.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(4):439.443,C2024〕Keywords:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,眼圧,安全性,変更.brimonidine/brinzolamide.xedcombination,intraocularpressure,safety,switching.Cはじめに緑内障治療における配合点眼薬は通常のC1成分の点眼薬よりも眼圧下降効果の面で,またC2剤併用よりもアドヒアランスの面で優れており,近年実臨床での使用が増加している1).日本で従来から使用可能な配合点眼薬はすべてにCb遮断薬が含有されており,全身性の副作用の問題からCb遮断薬が含有しない配合点眼薬の開発が望まれていた.ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬を配合したブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が海外ではC2013年より,日本でもC2020年C6月に使用可能となった.日本で実〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(73)C439表1患者背景項目症例128例性別男性67例,女性61例平均年齢C67.3±11.4歳(29.91歳)病型POAG84例CNTG43例COH1例変更前薬剤数C2.9±0.7剤(1.5剤)変更前点眼瓶数C2.3±0.6本(1.4本)変更前使用薬剤CPG/b配合点眼薬C66例(ブリンゾラミドPG点眼薬C29例との併用)CPG/b配合点眼薬+ROCK阻害薬C9例CPG/b配合点眼薬+a1遮断薬6例Cb遮断薬C3例PG点眼薬+b遮断薬C3例PG点眼薬+a1遮断薬+ROCK阻害薬C2例その他C10例変更前眼圧C15.4±3.5CmmHg(8.26mmHg)変更前CMD値C.9.79±4.59CdB(C.25.92.1.11CdB)POAG:原発開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障,OH:高眼圧症.施された治験においてもブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の良好な眼圧下降効果と高い安全性が報告されている2,3).しかし,これらの治験2,3)ではブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の投与期間はC4週間と短期だった.点眼薬の使用は長期に及ぶため,眼圧下降効果と安全性の評価では長期間の経過観察が理想である.上市後にブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の効果と安全性については数多く報告されている4.8).しかし,これらの報告の経過観察期間は12週間4),3カ月間5),6カ月間6.8)で,長期ではない.海外ではブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の開放隅角緑内障,高眼圧症に対するC6カ月間9),正常眼圧緑内障に対するC18カ月間の眼圧下降効果と安全性の報告10)がある.国内でのブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の長期間の眼圧下降効果と安全性の報告はなく,不明である.筆者らはブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の変更C6カ月間の眼圧下降効果と安全性を評価した6).具体的にはブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更症例,ブリンゾラミド点眼薬からの変更症例,ブリモニジン点眼薬からの変更症例を後ろ向きに調査した.今回ブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更した症例を対象として,経過観察期間をC1年間に延長し,さらに症例数を増加して,その長期的な効果と安全性を評価した.20*******1816141215.4±3.510128例13.1±2.713.8±3.213.8±3.813.7±2.7118例97例70例67例648**p<0.0001,*p<0.00012(ANOVA,BonferroniandDunn検定)0図1変更前後の眼圧I対象および方法2020年C6月.2021年C6月に井上眼科病院に通院中で,ブリンゾラミド点眼薬を中止してCwashout期間なしでブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(アイラミド配合点眼薬,1日C2回点眼)が新規に投与された原発開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む),高眼圧症患者C128例C128眼を対象とした.男性C67例,女性C61例,平均年齢はC67.3C±11.4歳(平均±標準偏差,29.91歳だった)(表1).変更したブリンゾラミド点眼薬以外の緑内障点眼薬は継続とした.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬変更前と変更C3,6,9,12カ月後の眼圧を調査し,比較した.変更前と比べた変更C3,6,9,12カ月後の眼圧下降幅を調査した.変更前と変更C12カ月後のCHumphrey視野検査C30-2CSITAstandardのCmeandeviation(MD)値を調査し比較した.変更後の副作用と中止症例を調査した.変更前後の薬剤数と点眼瓶数を調査した.配合点眼薬は薬剤C2剤,点眼瓶数C1瓶として解析した.診療録から後ろ向きに調査を行った.片眼該当症例は罹患眼,両眼該当症例は変更前眼圧が高いほうの眼,変更前眼圧が左右同値の症例では右眼を対象とした.眼圧変化の解析にはANOVA,BonferroniandDunn検定を用いた.MD値の比較にはCWilcoxonの符号順位検定を用いた.有意水準はCp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保障した.CII結果薬剤数は変更前C2.9C±0.7剤,1.5剤,変更後C3.9C±0.7剤,2.6剤だった.点眼瓶数は変更前C2.3C±0.6本,1.4本,変更後C2.3C±0.6本,1.4本だった.眼圧は変更前C15.4C±3.5C眼圧(mmHg)表2副作用内訳症例数期間結膜炎/アレルギー性結膜炎C122週間後,C1カ月後,C3カ月後,C4カ月後,C5カ月後(C3例),C8カ月後,9カ月後,1C0カ月後(2例),1C1カ月後眼瞼炎C710日後,1カ月後,5カ月後(2例),6カ月後,1C1カ月後,1C2カ月後結膜充血C62カ月後,3カ月後(3例),6カ月後,1C0カ月後掻痒感C51カ月後,3カ月後,4カ月後,6カ月後,1C0カ月後刺激感C28カ月後,1C0カ月後眠気C21カ月後,7カ月後めまいC110日後眼痛C22週間後,3カ月後霧視C14カ月後重複あり表3中止症例内訳症例数副作用29例結膜炎C/アレルギー性結膜炎C10例,眼瞼炎C5例,結膜充血C4例,掻痒感C2例,刺激感C2例,めまいC1例,眼痛C1例,眼痛+結膜充血C1例,掻痒感+霧視C1例,結膜炎+眼瞼炎C1例,結膜充血+掻痒感1例薬剤追加変更20例眼圧上昇C9例,視野障害進行C8例,眼圧下降不十分C3例SLT施行1例SLT:選択的レーザー線維柱帯形成術mmHg(平均C±標準偏差),8.26mmHg(128例),変更C3カ月後C13.1C±2.7CmmHg(118例),6カ月後C13.8C±3.2CmmHg(97例),9カ月後C13.8C±3.8mmHg(70例),12カ月後C13.7C±2.7mmHg(67例)で,変更3,6,9,12カ月後すべてで変更前に比べて有意に下降した(変更C3,6,9カ月後Cp<0.0001,変更C12カ月後Cp<0.001)(図1).眼圧下降幅は変更3カ月後C2.1C±2.2CmmHg,6カ月後C1.5C±2.7CmmHg,9カ月後C1.6C±3.1CmmHg,12カ月後C1.3C±2.5CmmHgだった.変更6カ月後に点状表層角膜炎を発症し,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更した症例と変更C8カ月後にリパスジル点眼薬のアレルギーでリパスジル点眼薬が中止となった症例は眼圧の解析から除外した.また,変更C6カ月後に転医した症例と変更8カ月後に白内障手術を施行した症例は眼圧の解析からは除外した.視野のCMD値は変更前C.9.79±4.59CdB,C.25.92.1.11dBだった.MD値は変更前と変更C12カ月後C.9.18±4.70CdB,C.19.86.C.0.33CdBで同等だった(p=0.8556).副作用はC34例(26.6%)で出現した(表2).内訳は結膜炎/アレルギー性結膜炎C12例(9.4%),眼瞼炎C7例(5.5%),結膜充血C6例(4.7%),掻痒感C5例(3.9%),刺激感C2例(1.6%),眠気C2例(1.6%)などだった(重複含む).重複した副作用は眼痛+結膜充血(変更C3カ月後),掻痒感+霧視(変更4カ月後),結膜炎+眼瞼炎(変更C5カ月後),結膜充血+掻痒感(変更C10カ月後)が各C1例だった.中止例はC50例(39.1%)だった(表3).中止の理由は,副作用C29例(22.7%)(結膜炎/アレルギー性結膜炎C10例,眼瞼炎C5例,結膜充血C4例,掻痒感C2例,刺激感C2例,めまい1例,眼痛C1例,眼痛+結膜充血C1例,掻痒感+霧視1例,結膜炎+眼瞼炎C1例,結膜充血+掻痒感C1例),薬剤追加や変更C20例(15.6%)(眼圧上昇C9例,視野障害進行C8例,眼圧下降不十分C3例),選択的レーザー線維柱帯形成術(selec-tivelasertrabeculoplasty:SLT)施行C1例(0.8%)だった.これらの副作用は点眼薬中止後に軽快,あるいは消失した.眼圧上昇C9例のうちC8例はリパスジル点眼薬,1例はブナゾシン点眼薬が各々追加された.視野障害進行C8例のうち,6例はリパスジル点眼薬が追加,1例はブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬を中止してリパスジル点眼薬に変更,1例はレボブノロール点眼薬とラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更し,さらにリパスジル点眼薬が追加された.眼圧下降不十分C3例では,3例ともリパスジル点眼薬が追加された.CIII考按今回のブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更では,眼圧は変更後に有意に下降した.眼圧下降幅はC1.3.2.1mmHg,眼圧下降率はC6.7.12.9%だった.今回と同様の点眼薬変更を行った報告がある2,6,7,9,10).日本の第CIII相臨床試験では,眼圧は変更C4週間後に有意に下降し,ピーク時の眼圧下降幅は3.7C±2.1mmHg,眼圧下降率はC18.1C±10.3%であった2).山田らのC2例C4眼での報告では変更C6カ月後の眼圧下降率はC22.9%だった7).海外での正常眼圧緑内障に対するブリンゾラミド点眼薬単剤からの変更では,眼圧は変更後C18カ月間にわたり有意に下降した10).その眼圧下降幅はC0.8.1.1CmmHg,眼圧下降率は4.9.6.8%であった.ブリンゾラミド点眼薬とCPG/Cb遮断配合点眼薬併用症例でブリンゾラミド点眼薬をブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更したC20例の眼圧下降幅は変更C1カ月後C4.0C±2.9CmmHg,3カ月後C4.5C±3.9CmmHg,6カ月後C4.8C±3.7CmmHgだった9).その眼圧下降率は変更C1カ月後C18.4%,3カ月後C20.7%,6カ月後C22.1%だった.今回の調査では日本の第CIII相臨床試験2)より眼圧下降は不良であったが,日本の第CIII相臨床試験では変更前眼圧がC20.7C±2.0CmmHg2)と高値だったため,また変更前の使用薬剤数が今回の調査がC2.9C±0.7剤と多剤併用であったためと考えられる.海外での正常眼圧緑内障に対するブリンゾラミド点眼薬単剤からの変更では,変更前眼圧はC13.4C±1.6CmmHg10)で,今回のほうがやや高値だった.そのため今回のほうが眼圧下降幅はやや良好だった.開放隅角緑内障,高眼圧症に対するブリンゾラミド点眼薬からの変更では,変更前眼圧はC21.7C±3.2CmmHg9)と今回の調査より高値だった.そのため眼圧下降幅(4.0.4.8CmmHg)は今回の調査より強力だったと考えられる.ただし,海外で使用されているブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬に含有されているブリモニジンは0.2%製剤で,日本のC0.1%製剤とは異なる.今回の調査では変更前と変更C12カ月後の平均CMD値に変化はなかった.しかし,視野障害進行により投与中止となった症例もC8例存在したので,変更後の視野変化には注意する必要がある.また,視野障害の進行についてはさらに長期の経過観察を行い評価すべきである.今回の調査での副作用はC34例(26.6%)に出現した.副作用の内訳は多岐にわたっていた.日本の第CIII相臨床試験のブリンゾラミド点眼薬からの変更では副作用はC8.8%に出現した2).その内訳は霧視C3.3%,点状角膜炎C2.7%などであった.今回のほうが副作用出現が多かったが,経過観察期間が1年間と長期だったためと考えられる.副作用はC34例で出現したがそのうちC29例(85.3%)で投与中止となった.また,筆者らは今回と同様の点眼薬変更についてC6カ月間の効果,安全性を報告した6)が,そのときの副作用出現はC18.3%だった.今回の調査で変更C6カ月後以降に出現した副作用は結膜炎/アレルギー性結膜炎C5例,眼瞼炎C2例,刺激感C2例,眠気C1例,結膜充血+掻痒感C1例だった.新たに成分として加わったブリモニジンによるアレルギー性結膜炎,眼瞼炎が長期投与した後に出現しやすいこと11)が関与していると考えられる.その他にもブリモニジン点眼薬に対するアレルギー反応はC2週間以内にC13.5%12),投与中止値C204.7日でC25.7%13),投与C1年でC15.7%14),2年でC27.1%14)と報告されている.すべての報告12.14)で点眼アレルギーの既往がリスク因子だった.変更C6カ月後以降もアレルギー反応を含めた副作用出現には注意する必要がある.また,投与時には点眼アレルギーの既往を確認したほうがよい.今回の中止症例はC39.1%であったが,日本の第CIII相臨床試験では,有害事象による中止例はなかった2,3).しかし,この臨床試験はブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の投与期間がC4週間と短かったことが原因と考えられる.筆者らのC6カ月間の経過観察での中止症例はC16.3%だった6).さらに長期の経過観察を行った今回の症例では,副作用,眼圧上昇,視野障害進行による中止例が変更C6カ月以降にも多数出現しており,点眼後の注意深い経過観察は必要である.また,今回の症例は眼圧が目標眼圧に達していない,あるいは視野障害が進行した症例が含まれている.そのため点眼薬を変更しても眼圧が十分に下がらない,または上昇する症例や視野障害進行が抑えられない症例が存在し,中止症例となった可能性もある.中止症例ではリパスジル点眼薬が投与された症例が多かったが,ブリモニジン点眼薬とリパスジル点眼薬の使用により高い交差性から副作用が多く出現する可能性が高まる.しかし,多剤併用症例のため使用していない点眼薬が少なく,リパスジル点眼薬が使用されたと考える.今回の臨床研究の問題点として以下があげられる.一つめはブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更するあるいは変更後に中止する,あるいは他剤を追加する基準がなく,主治医の判断にまかされていた点である.二つめは各症例のアドヒアランスが明確でない点である.三つめは眼圧測定時間が症例ごとに異なるため,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の眼圧下降効果が正確に判定できなかった可能性がある.しかし,今回は後ろ向き研究であり,実際の臨床現場における状況をありのままに解析すればよいと考え,このような研究内容とした.今回,ブリンゾラミド点眼薬を中止してブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬に変更した症例のC1年間にわたる効果と安全性を調査した.この変更では点眼瓶数,1日の点眼回数は変化せずアドヒアランス維持が期待できる.眼圧は変更後に有意に下降し,視野のCMD値は変更前後で同等だった.副作用はC26.6%に出現したが,配合点眼薬の中止により改善したため重篤ではなかった.中止症例はC39.1%と多く,副作用出現や眼圧上昇などが理由であった.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬はブリンゾラミド点眼薬からの変更症例においてC1年間にわたり良好な眼圧下降効果と視野維持効果を示したが,副作用出現や中止例は多く,慎重な経過観察が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)InoueK,KomoriR,Kunimatsu-SanukiSetal:FrequencyofCuseCofC.xed-combinationCeyeCdropsCbyCpatientsCwithCglaucomaatmultipleprivatepracticesinJapan.ClinOph-thalmolC16:557-565,C20222)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科C37:1299-1308,C20203)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第CIII相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験.あたらしい眼科C37:1289-1298,C20204)OnoeCH,CHirookaCK,CNagayamaCMCetal:TheCe.cacy,CsafetyCandCsatisfactionCassociatedCwithCswitchingCfromCbrinzolamide1%CandCbrimonidine0.1%CtoCaC.xedCcombi-nationofbrinzolamide1%andbrimonidine0.1%inglau-comapatients.JClinMedC10:5228,C20215)髙田幸尚,住岡孝吉,岡田由香ほか:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド併用使用から配合点眼薬へ変更後の短期の眼圧変化.眼科64:275-280,C20226)InoueK,Kunimatsu-SanukiS,IshidaKetal:Intraocularpressure-loweringCe.ectsCandCsafetyCofCbrimonidine/Cbrinzolamide.xedcombinationafterswitchingfromothermedications.JpnJOphthalmolC66:440-446,C20227)山田雄介,徳田直人,重城達哉ほか:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合点眼薬の有効性について.臨眼C76:695-699,C20228)丸山悠子,池田陽子,吉井健悟ほか:ブリンゾラミドとブリモニジン併用点眼からブリモニジン・ブリンゾラミド配合剤への切替え効果の検討.あたらしい眼科C39:974-977,C20229)TekeliCO,CKoseHC:EvaluationCofCtheCuseCofCbrinzol-amide-brimonidineC.xedCcombinationCinCmaximumCmedi-caltherapy.TurkJOphthalmolC52:262-269,C202210)JinCSW,CLeeSM:TheCe.cacyCandCsafetyCofCtheC.xedCcombinationofbrinzolamide1%andbrimonidine0.2%innormalCtensionglaucoma:anC18-monthCretrospectiveCstudy.JOculPharmacolTherC34:274-279,C201811)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,C201212)ManniCG,CCentofantiCM,CSacchettiCMCetal:DemographicCandclinicalfactorsassociatedwithdevelopmentofbrimo-nidineCtartrate0.2%-inducedCocularCallergy.CJCGlaucomaC13:163-167,C200413)BlundeauCP,CRousseauJA:AllergicCreactionsCtoCbrimoni-dineCinCpatientsCtreatedCforCglaucoma.CCanCJCOphthalmolC37:21-26,C200214)永山幹夫,永山順子,本池庸一ほか:ブリモニジン点眼によるアレルギー性結膜炎発症の頻度と傾向.臨眼C70:C1135-1140,C2016C***