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強度近視性黄斑円孔に対する内境界膜翻転法術後の外境界膜の連続性

2019年11月30日 土曜日

《原著》あたらしい眼科36(11):1456.1461,2019c強度近視性黄斑円孔に対する内境界膜翻転法術後の外境界膜の連続性河合健太郎小堀朗額田和之蒔田潤福井赤十字病院眼科CContinuityoftheExternalLimitingMembraneafterVitrectomywiththeInvertedInternalLimitingMembraneFlapTechniqueforHighMyopicMacularHoleKentaroKawai,AkiraKobori,KazuyukiNukadaandJunMakitaCDepartmentofOphthalmologyFukuiRedCrossHospitalC対象および方法:当院で内境界膜翻転法併用硝子体手術を施行した強度近視性黄斑円孔(眼軸長がC26Cmm以上,黄斑円孔網膜.離を伴わない,経過観察期間はC6カ月以上)の症例C20人C21眼を後ろ向きに検討した.術後のCOCT所見から外境界膜(ELM)の連続性の回復の有無を評価し,ELMの連続性の回復がみられる群(ELM+群)とCELMの連続性の回復を認めない群(ELM.群)に分け,患者背景,および術後視力,視力改善量を比較した.結果:21眼全例で円孔の閉鎖が得られ,ELMの連続性の回復はC12眼で認めた.ELM+群,ELM.群ともに術後ClogMAR視力は術前logMAR視力と比して有意に改善していた.視力改善量にはC2群間に有意差はなかったが,術前視力,術後視力はともにCELM+群がCELM.群と比して有意に良好であった.円孔径,円孔底径はCELM+群がCELM.群に比して有意に小さかったが,眼軸長にC2群間に有意差はなかった.CPurpose:Toretrospectivelyinvestigatethesurgicaloutcomesofvitrectomywiththeinternallimitingmem-brane(ILM).apCtechniqueCforChighCmyopicCmacularCholeCinCaccordanceCwithCexternalClimitingmembrane(ELM)Ccontinuity,CandCdetermineCtheCperioperativeCfactorCthatCisCrelatedCtoCtheCcontinuityCofCtheCELM.CMethods:InCthisCstudy,CweCanalyzedC21CeyesCofC20CpatientsCwhoCunderwentCvitrectomyCwithCtheCinvertedCILMC.apCtechniqueCforChighCmyopicCmacularCholeCwithoutCretinalCdetachment.CTheCpatientsCwereCdividedCintoCtwoCgroupsCbasedConCtheCexistenceCofCtheCcontinuityCofCELM.CPatientCage,CmacularCholeCsize,CaxialClength,CandCbest-correctedCvisualCacuity(BCVA)wasthencomparedbetweenthegroups.Results:Themacularholeclosedin21ofthe21eyes(100%).OpticalCcoherenceCtomographyC.ndingsCpostCsurgeryCshowedCELMCrecoveryCinC12eyes(57.1%).CInCbothCgroups,CthepostoperativeBCVAwassigni.cantlyimprovedcomparedwiththepreoperativeBCVA.MacularholesizeandmacularCholeCbottomCsizeCwasCsigni.cantlyCsmallerCinCtheCgroupCwithCELMCcontinuityCthanCinCtheCgroupCwithout.CConclusion:Our.ndingsshowthatthegroupwithELMcontinuityachievedbetterBCVApostsurgery,andthatthecontinuitywasrelatedtomacularholesize.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)36(11):1456.1461,C2019〕Keywords:内境界膜翻転法,強度近視性黄斑円孔,外境界膜.invertedinternallimitingmembrane.aptech-nique,highmyopicmacularhole,externallimitingmembrane.Cはじめに黄斑円孔に対する硝子体手術は,1991年にCKellyとWendelらにより報告された.その後,内境界膜(internalClimitingmembrane:ILM).離の併用,ILM.離を容易,確実にするインドシアニングリーン(indocyaninegreen:ICG),ブリリアントブルーCG(brilliantblueG:BBG)などの染色液の使用により,硝子体手術の成績は向上し,現在,特発性黄斑円孔ではC90%以上という高い閉鎖率が得られるようになった.2010年,Michalewskaらは,閉鎖率の低い大型黄斑円孔〔別刷請求先〕河合健太郎:〒918-8501福井市月見C2-4-1福井赤十字病院眼科Reprintrequests:KentaroKawai,M.D.,DepartmentofOphthalmology,FukuiRedCrossHospital,2-4-1Tukimi,Fukui918-8501,CJAPANC1456(114)に対し円孔周囲のCILMを翻転し円孔上に被せる,ILM翻転法(invertedILM.aptechnique)を併用することで閉鎖率,術後視力が改善することを報告した1).一方,強度近視性黄斑円孔に対するCILM.離併用硝子体手術の成績も特発性黄斑円孔と比べ,閉鎖率,視力改善率が低いことが知られているが2,3).2013年,Kuriyamaらにより,強度近視性黄斑円孔でもCILM翻転法を併用することで閉鎖率が向上することが報告された4).その後の報告でも,強度近視性黄斑円孔に対する手術では,円孔閉鎖の点からはILM翻転法がCILM.離と比して有用であることが示されている5).その機序として,翻転されたCILMがCMuller細胞の増殖,遊走の足場になりCgliosisを促し6),また翻転されたCILM表面に存在する神経栄養因子や増殖因子も円孔の閉鎖に寄与すると考えられている7).一方で過剰なCgliosisは網膜神経に細胞毒性をもつことや8),翻転されたCILMが円孔を埋めてしまうとCglialcellやCvisualcellの遊走を妨げ,層構造の回復に影響を及ぼす可能性も示唆されており9),ILM翻転法は術後の網膜外層の回復,伸展が不良となる傾向があることも示唆されている10,11).これらは,ILM翻転法では術後黄斑円孔の閉鎖が得られても良好な術後視力が得られない可能性があることを意味し,強度近視性黄斑黄斑円孔や大型黄斑円孔などの難治性の黄斑円孔に対する手術において,初回からILM翻転法を併用することの是非については議論が残るところである.ところで,黄斑円孔の術後の網膜外層の連続性の回復は,視力改善と相関することが知られている11,12).また,黄斑円孔の術後には外層は外境界膜(externallimitingmembrane:ELM),視細胞内節外節接合部(ellipsoidzone:EZ)の順に内層側から閉鎖し,術後早期のCELMの連続性の有無は視力予後に影響することが報告されている13,14).そこで筆者らは今回,術後良好な視力を得るのにその回復が重要と考えられる網膜外層のうち,術後比較的早期に連続性が回復するCELMに着目し,強度近視性黄斑円孔に対するILM翻転法併用硝子体手術後にCELMの連続性の回復する割合,およびその回復に影響する因子について検討した.CI対象および方法2012年C7月.2017年C3月に福井赤十字病院眼科で黄斑円孔に対してCILM翻転法併用硝子体手術を施行した症例のうち,以下の基準,すなわち,眼軸長がC26Cmm以上,黄斑円孔網膜.離を伴わない,経過観察期間がC6カ月以上,の三つの基準を満たすC20人C21眼を対象とし後方視的に検討した.いずれも黄斑円孔に対する初回手術であった.円孔径を,術前のCOCTの水平断画像をもとに,円孔直径の最小となるところを円孔径,円孔底部の直径を円孔底径と定め測定した.OCTはCHeiderbergCEngineeringCSpectralisを用いた.術後の黄斑円孔の閉鎖は,OCTで網膜色素上皮の露出していないものを閉鎖とした.また,術後COCTでCELMとCEZの連続性の回復の有無を評価し,ELMの連続性の回復がみられた群(ELM+群)とCELMの連続性の回復がみられなかった群(ELMC.群)のC2群に分けて,年齢,性別,眼軸長,術前の円孔サイズ,術前視力,術後視力,経過観察期間を比較した.なお,術後のCOCTの評価,および術後視力は経過観察期間中最終受診時のものを用いた.手術は有水晶体眼の症例では白内障手術を同時に施行した.硝子体手術の手術装置は,コンステレーションCRビジョンシステム(Alcon),またはアキュラスR(Alcon)を使用し25CGシステムまたはC27CGシステムを用いた.ILM染色はBBGを用いたが,1眼のみCBBGとCICGを併用していた.充.物はCSFC6(六フッ化硫黄)ガス(17眼),シリコーンオイル(2眼),空気(2眼)を症例により術者が選択し使用した.統計学的解析はCIBMCSPSSStatisticsバージョンC25を用いて行った.関連したC2群間の比較は対応のあるCt-testを,独立したC2群間の比較はCMann-WhitneyU-testを,2要因間の独立性の検定にはCFisherの正確確率検定を用いて検定し,p<0.05を有意差ありとした.本研究については,福井赤十字病院倫理委員会の承認を得て行った.CII結果平均経過観察期間はC25.6C±19.6カ月であった.平均年齢はC61.6C±9.6歳,男性C7眼,女性C14眼であった.平均円孔径C393.2C±215.5Cμm,平均円孔底径C780.0C±300.0Cμm,術前logMAR平均視力C0.66C±0.25,平均眼軸長はC29.1C±2.2Cmmであり,眼軸長がC30Cmm以上の症例がC6眼あった.白内障手術はC10眼に施行していた.21眼全例で円孔の閉鎖が得られ,ELMの連続性の回復は12眼,EZの連続性の回復はC10眼で得られていた.EZの連続性の回復が認められたC10眼では,全例でCELMの連続性の回復を認めていた.術後ClogMAR平均視力はC0.29C±0.30と,術前と比して有意に改善しており,logMAR視力がC0.2以上回復した症例はC14眼(66.7%)であった.ELM+群とCELM.群の術前視力,術後視力の散布図を図1に示す.両群とも,術後視力は術前視力と比して有意に改善していた.logMAR視力改善量はCELM+群C0.43C±0.26,ELMC.群C0.30C±0.24とC2群間に有意差はなく,またClogMAR視力C0.2以上改善した症例の割合もCELM+群C75.0%,ELMC.群C55.6%でC2群間に有意差はなかった.ただし,術前視力,術後視力ともにCELM+群はCELMC.群より有意に良好であった.ついで,ELM+群とCELMC.群で,術前因子,白内障手術の有無,術後経過観察期間を比較した(表1).平均年齢は術前logMAR視力1.210.80.60.40.20-0.2-0.200.20.40.60.811.2図1ELM+群,ELM.群の術前,術後logMAR視力の散布図○:ELM+群,×:ELMC.群.横軸,縦軸ともClogMAR視力を反転して示している.ELM+群とCELMC.群のC2群間で視力改善量に有意差はなかったが,ELMC.群はCELM+群に比べ術前・術後視力が有意に低く,術後logMAR視力は破線で示したClogMAR0.2(小数視力約0.63)以下にとどまっている.CELM+群C57.4C±8.6歳,ELMC.群C67.4C±7.8歳でCELM+群で有意に若年であった.円孔径は,ELM+群C271.2C±86.8μm,ELMC.群C582.5C±233.9μm,円孔底径はCELM+群C650.4±222.7Cμm,ELMC.群C1,004.1C±336.8Cμmであり,円孔径,円孔底径ともにCELM+群で有意に低値であった.術後経過観察期間はCELM+群C16.7C±12.2カ月,ELMC.群C34.8±22.4カ月とCELM+群で有意に短かった.性別,眼軸長,白内障手術の有無はC2群間で有意差を認めなかった.CIII考按強度近視性黄斑円孔に対するCILM.離併用硝子体手術の成績は,特発性黄斑円孔と比べ,閉鎖率,視力改善率が低いことが知られており,とくに眼軸長C30Cmm以上の症例では閉鎖率が低くなると報告されている2,3).今回の検討ではILM翻転法の併用により,眼軸長C30Cmm以上のC6眼を含む全例で閉鎖が得られ,術後のCELMの連続性の回復にも眼軸長は影響しなかった.CELM.群はCELM+群に比べ術後視力が有意に低く,図1に示したようにClogMAR0.2(小数視力約C0.63)以下にとどまっている.ただしC2群間で視力改善量,logMAR0.2以上の視力改善を得た割合に有意差はなく,円孔径が大きく術前視力が低い強度近視性黄斑円孔の症例でも,ILM翻転法により,ELMの連続性の回復は得られずとも一定の視力改善量を得ることが期待できる.ELMC.群で視力改善が得られた機序としては,中心小窩の周囲や傍中心窩の外層が回復することにより中心外視力が改善したことに加え,固視点の変化術後logMAR視力表1ELM+群,ELM.群の比較ELM+群CELM.群p値眼数(眼)C12C9年齢(歳)C57.4±8.6C67.2±8.2C0.023‡性別(M/F)C5/7C2/7C0.64*眼軸長(mm)C28.8±2.3C29.5±2.2C0.35‡最小円孔径(μm)C271.2±86.8C555.9±231.5C0.003‡円孔底径(μm)C650.4±222.7C952.8±313.0C0.028‡白内障手術(有/無)C7/5C3/6C0.39*経過観察期間(月)C16.7±12.2C37.4±22.0C0.023‡術前ClogMAR視力C0.51±0.22C0.85±0.12C0.001‡(小数視力)(0.31)(0.14)術後ClogMAR視力C0.084±0.12C0.55±0.24(小数視力)(0.82)(0.28)<0.001C‡logMAR視力改善量C0.43±0.26C0.30±0.24(小数視力)(0.37)(0.50)C0.35‡C平均C±標準偏差.‡Mann-WhitneyC’sCUtest.*FisherC’sCexacttest.()内の小数視力はClogMAR視力の平均を小数視力に換算したもの.が関与しているかもしれない10).以前,筆者らは最小円孔径400μm以上の大型黄斑円孔17眼に対するCILM翻転法併用硝子体手術の術後成績をCOCTでのCELMの連続性から検討した15).その結果,術後C17眼中C9眼(52.9%)でCELMの連続性が得られ,術後CELMの連続性が得られた症例は,得られなかった症例と比して術後視力が有意に良好で,眼軸長,最小円孔径が有意に小さかった.今回の検討ではC2群間で眼軸長に有意差は認めなかった.眼軸長C26Cmm以上の症例に限ると,ELMの回復における眼軸長の影響は小さくなると考えられる(代表症例を図2に示す).今回の検討では円孔径に加え円孔底径でもC2群間に有意差を認めたが,図3に示したように,とくに円孔径がC400Cμm以上の症例ではC6眼全例で術後CELMの連続性が得られなかった.筆者らの以前の大型黄斑円孔に対するCILM翻転法の検討では,円孔径C401Cμm以上C500Cμm以下のC8眼(全例眼軸長C25Cmm未満)では全例CELMの連続性の回復がみられた15).今回の検討では円孔径C400Cμm以上C600Cμm以下の症例はC1眼のみであり比較しにくいが,強度近視性黄斑円孔においては,網膜の菲薄化,網脈絡膜萎縮の存在,後部ぶどう腫による前後方向への牽引,網膜の相対的不足などにより,円孔径C400Cμm以上の大型円孔では術後網膜の伸展が足りずELMの連続性が得られにくい可能性がある(代表症例を図4に示す).平均年齢はCELMC.群はCELM+群と比して有意に高かった.加齢による両眼視機能の低下により黄斑円孔発症による片眼の視力低下に気づくまでの期間が長くなり,手術時の円孔径が大きくなった可能性が原因として考えられた.術前手術8カ月後図2ELM+群の症例56歳,女性.眼軸長C33.59Cmm,最小円孔径C264Cμm,円孔底径C548Cμm.上段:術前ClogMAR視力C0.70(小数視力C0.2).下段:術後C8カ月後ClogMAR視力C0(小数視力C1.0).眼軸長はC30Cmm以上あるが,最小円孔径,円孔底径は比較的小さく,術後CELM/EZの連続性は回復している.小数視力もC0.2からC1.0に改善がみられる.今回の検討では有水晶体眼に対しては超音波乳化吸引術,眼内レンズ挿入を行った.白内障手術を施行した症例,白内障手術を施行していない症例のClogMAR視力改善量はそれぞれC0.36C±0.22,0.38C±0.29で有意差は認めず,またCELM+群,ELMC.群それぞれにおいても白内障手術の有無でlogMAR視力改善量に有意差は認めなかった.今回の症例において視力改善における白内障手術の影響は小さいと考えられる.経過観察期間はCELM+群はCELMC.群と比して有意に短かった.ELMの連続性の回復がみられた経過良好な症例では,術後比較的早期に紹介元での経過観察に切り替えたためと考えられる.Wakabayashiらは,黄斑円孔の術後C3カ月の時点でCELMの連続性の回復を認めなかった症例のうち,54%でC12カ月後CELMの連続性の回復がみられたとしている14).今回の検討においては,術後C6カ月時点でのCOCTでCELMの連続性を評価すると,最終受診時CELM+群の11眼(1眼は術後C6カ月時点のCOCTなし)全例でCELMの連続性の回復を認め,最終受診時CELMC.群のC9眼全例でCELMの連続性の回復を認めなかった.また,ELMC.群はいずれもC12カ月以上の経過観察をしており,上に述べたように網膜外層のなかでは術後比較的早期に回復を認めるCELMの経過観察期間としては十分と思われるが,Michalewskaらは強度近視1,4001,2001,0008006004002000最小円孔径(μm)図3ELM+群,ELM.群の最小円孔径,円孔底径の散布図○:ELM+群,×:ELMC.群.最小円孔径,円孔底径はともにC2群間に有意差を認めたが,とくに最小円孔径は破線で示したC400Cμmより大きい症例では,術後CELMの連続性が認められなかった.術前手術19カ月後円孔底径(μm)02004006008001,000図4ELM.群の症例62歳,男性.眼軸長C28.01Cmm,最小円孔径C671Cμm,円孔底径C1353Cμm.上段:術前ClogMAR視力0.82(小数視力0.15).下段:術後C19カ月後ClogMAR視力C0.40(小数視力0.4).眼軸長はC30Cmm以下だが,大型円孔であった.術後ELMの連続性は回復せず,視力はClogMARでC0.4改善したが,術後視力は小数視力でC0.4にとどまっている.黄斑円孔の術後少なくともC12カ月にわたり中心窩の構造の改善がみられたとしており13),術後C12カ月後以降も経過観察を続けるとCELMの連続性の回復がみられる症例もあるのかもしれない.術前円孔径がC168Cμmと比較的小さく,術後CELM,EZの図5内層に増殖性変化を認めた症例42歳,男性.眼軸長C26.4Cmm,最小円孔径C168Cμm,円孔底径C503Cμm,術前ClogMAR視力C0.52(小数視力C0.3).上段:術後C10日目.円孔は閉鎖しCELMの連続性の回復がみられる.logMAR0.15(小数視力C0.7).下段:術後C7カ月後.ELMに加えCEZの連続性の回復がみられるが,網膜内層に増殖性変化を認める.logMAR視力C0.15(小数視力C0.7).連続性の回復がみられた症例において,術後C6カ月以上経過後に網膜内層の増殖性変化を認めたものがあった(図5).ILM翻転により過剰なCgliosis,増殖が誘導された可能性があり,強度近視性黄斑円孔であってもこのように小型の黄斑円孔ではCILM翻転は不要なのかもしれない.近年の報告では,600Cμm以上の大型円孔に対しては前向きランダム化試験において,ILM翻転法がCILM.離に比べ術後視力,閉鎖率ともに有意に良好であったとされている16).これはC600Cμm以上の円孔における閉鎖率がCILM翻転法のほうがよいことを反映していると考えられるが,強度近視性黄斑円孔においても,ILM.離では閉鎖しにくいと考えられる眼軸長C30Cmm以上や大型の円孔の場合には,ILM翻転のほうが視力予後がよいと思われる.今回の検討では,全例で円孔の閉鎖が得られ,57.1%でELMの連続性の回復を認めた.また,ELMC.群においても術後視力の低下した症例はなくClogMAR0.2以上の視力改善はC55.6%であった.強度近視性黄斑円孔に対するCILM.離併用硝子体手術の成績では視力悪化率がC16.7%(その多くは非閉鎖),視力改善率がC52.4%であったとする報告があり17),強度近視性黄斑円孔に対するCILM翻転法の一定の有効性は示されたが,強度近視性黄斑円孔においても,ILM.離とILM翻転法で視力改善や外層の伸展に差があるかどうかについては今後,円孔径の大きさによる層別解析を含む多数例での前向きランダム化試験が望まれる.文献1)MichalewskaCZ,CMichaelewskiCJ,CAdelmanCRACetal:CInvertedCinternalClimitingCmembraneC.apCtechniqueCforClargemacularholes.OphthalmologyC117:2018-2025,C20102)WuCTT,CKungYH:ComparisonCofCanatomicalCandCvisualCoutcomesCofCmacularCholeCsurgeryCinCpatientsCwithChighCmyopiaCvs.non-highCmyopia:aCcase-controlCstudyCusingCopticalcoherencetomography.GrafesArchClinExpOph-thalmolC250:327-331,C20123)SudaCK,CHangaiCM,CYoshimuraN:AxialClengthCandCout-comesofmacularholesurgeryassessedbyspectral-domainopticalCcoherenceCtomogramphy.CAmCJCOphthalmolC151:C118-127Ce1,C20114)KuriyamaS,HayashiH,JingamiYetal:E.cacyofinvert-edCinternalClimitingCmembraneC.apCtechniqueCforCtheCtreatmentofmacularholeinhighmyopia.AmJOphthal-molC156:125-131Ce121,C20135)MeteCM,CAlfanoCA,CGuerrieroCMCetal:InvertedCinternalClimitingCmembraneC.apCtechniqueCversusCcompleteCinter-nalClimitingCmenbraneCremovalCinCmyopicCmacularCholesurgery:acomparativestudy.RetinaC37:1923-1930,C20176)MichalewskaZ,MichalewskiJ,AdelmanRAetal:Invert-edCinternalClimitingCmembraneC.apCtechniqueCforClargeCmacularholes.OphthalmologyC117:2018-2025,C20107)ShiodeY,MorizaneY,MatobaRetal:TheroleofinvertC-edCinternalClimitingCmembraneC.apCinCmacularCholeCclo-sure.InvestOphthalmolVisSciC58:4847-4855,C20178)OhCJ,CYangCSM,CChoiCYMCetal:GlialCproliferationCafterCvitrectomyCforCaCmacularhole:aCspectralCdomainCopticalCcoherencetomographystudy.GraefesArchClinExpOph-thalmolC251:477-484,C20139)MatsumuraCT,CTakamuraCY,CTomomatsuCTCetal:Com-parisonCofCtheCinvertedCinternalClimitingCmembraneC.apCtechniqueandtheinternallimitingmembranepeelingformacularCholeCwithCretinalCdetachment.CPLoSCOneC11:Ce0165068,C201610)KaseCS,CSaitoCW,CMoriCSCetal:ClinicalCandChistologicalCevaluationoflargemacularholesurgeryusingtheinvert-edCinternalClimitingCmembraneC.apCtechnique.CClinCOph-thalmolC11:9-14,C201611)HuCX,CPanCQ,CZhengCJCetal:FovealCmicrostructureCandCvisualCoutcomesCofCmyopicCmacularCholeCsurgeryCwithCorCwithoutCtheCinvertedCinternalClimitingCmembraneC.apCtechnique.BrJOphthalmol103:1495-1502,C201912)OokaCE,CMitamuraCY,CBabaCTCetal:FovealCmicrostruc-tureConCspectral-domainCopticalCcoherenceCtomographicCimagesCandCvisualCfunctionCafterCmacularCholeCsurgery.CAmJOphthalmolC152:283-290,C201113)MichalewskaZ,MichalewskiJ,Dulczewska-CicheckaKetal:InvertedCinternalClimitingCmembraneC.apCtechniqueCforCsurgicalCrepairCofCmyopicCmacularCholes.CRetinaC34:C664-669,C201414)WakabayashiCT,CFujiwaraCM,CSakaguchiCHCetal:FovealCmicrostructureandvisualacuityinsurgicallyclosedmac-ularholes:spectral-domainopticalcoherencetomograph-icanalysis.OphthalmologyC117:1815-1824,C201015)額田和之,小堀朗,蒔田潤ほか:大型黄斑円孔に対しCstudy.COphthalmicCSurgCLasersCImagingCRetinaC49:236-ての内境界膜翻転法術後の外境界膜の連続性.あたらしいC240,C2018眼科C33:1524-1528,C201617)Alkabes,M,PadillaL,SalinasCetal:AssessmentofOCT16)ManasaS,KakkarP,KumarAetal:Comparativeevalu-measurementsCasCprognosticCfactorsCinCmyopicCmacularCationCofCstandardCILMCpeelCwithCinvertedCILMC.apCtech-holeCsurgeryCwithoutCfoveoschisis.CGraefesCArchCClinCExpCniqueCinClargeCmacularholes:aCprospective,CrandomizedCOphthalmolC251:2521-2527,C2013***

大型黄斑円孔に対しての内境界膜翻転法術後の外境界膜の連続性

2016年10月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科33(10):1524?1528,2016c大型黄斑円孔に対しての内境界膜翻転法術後の外境界膜の連続性額田和之小堀朗蒔田潤清水悠介福井赤十字病院眼科ContinuityofExternalLimitingMembraneafterVitrectomywithInvertedInternalLimitingMembraneFlapTechniqueforLargeMacularHoleKazuyukiNukada,AkiraKobori,JunMakitaandYusukeShimizuDepartmentofOphthalomogyFukuiRedCrossHospital目的:大型黄斑円孔に対する内境界膜翻転硝子体手術成績の外境界膜(externallimitingmembrane:ELM)連続性による検討.対象および方法:円孔径が400μm以上の大型黄斑円孔の17眼を後ろ向きに検討後のOCT所見からELM連続性あり群とELM連続性なし群に分け,年齢・術前の円孔サイズ・眼軸長・術前・術後視力の比較を行った.結果:黄斑円孔の閉鎖は17眼中16眼(閉鎖率:94.1%)であった.術後OCT所見で,ELMが回復していたものは9眼(52.9%)だった.2群間の比較で,円孔径はELM連続性あり群が491.11±117.52μm,ELM連続性なし群が728.57±124.83μm(p<0.01)と有意差を認めたが,円孔底径はELM連続性あり群が969.89±346.88μm,ELM連続性なし群が1,140.86±134.23μm(p=0.22)と有意差を認めなかった.結論:本法による術後視力はELMの連続性を得たものでよく,連続性の有無は黄斑円孔径に関連していた.Purpose:Toretrospectivelyinvestigatetheperformanceofvitrectomywithinternallimitingmembraneflaptechniqueforlargemacularholeinaccordancewithexternallimitingmembrane(ELM)continuity.Methods:Seventeeneyeswithlarge(>400μm)macularholethatunderwentthesurgeryweredividedintotwogroupsbasedonthepresenceofELMcontinuity.Wecomparedage,macularholesize,axiallengthandvisualacuitybetweenthegroups.Results:Themacularholeclosedin16ofthe17eyes(94.1%).OCTfindingsaftersurgeryshowedELMrecoveryin9eyes(52.9%).Macularholesizewas491.11±117.52μminthegroupwithELMcontinuityand728.57±124.83μminthegroupwithout(p<0.01).Macularholebottomsizewas969.89±346.88μminthegroupwithELMcontinuityand1140.86±134.23μminthegroupwithout(p=0.02).Conclusion:ThegroupwithELMcontinuityachievedbettervisualacuity,andcontinuitywasrelatedtomacularholesize.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(10):1524?1528,2016〕Keywords:内境界膜翻転法,大型黄斑円孔,外境界膜.invertedinternallimitingmembraneflaptechnique,largemacularhole,externallimitingmembrane.はじめに現在,黄斑円孔に対する治療は,硝子体手術に内境界膜(internallimitingmembrane:ILM)?離を併用し,眼内に充?物を満たすことが標準的な治療方法である.手術による治療は,1991年にKellyとWendelらにより初めて硝子体手術の報告がなされ1),その後,ILM?離を併用することで閉鎖率は向上させる報告がなされた2).さらに,インドシアニングリーン(ICG),ブリリアントブルー(BBG)などの使用によるILMの染色方法の確立で,?離部と非?離部の境界が明瞭になり,より確実なILM?離を施行できるようになった3?5).現在,特発性黄斑円孔の初回閉鎖率は,95%以上の閉鎖率を得ているが,円孔径が大きなものに限定して閉鎖率を調べると閉鎖率が下がることは知られている6).この大型黄斑円孔に対して,閉鎖率を向上させるために,Michaelwskaらが報告した7,8)ILM膜翻法がある.今回,筆者らは大型黄斑円孔に対してのILM翻転後の術後成績を術後OCT上での外境界膜(externallimitingmembrane:ELM)の連続性から検討したので報告する.I対象および方法2011年11月?2015年3月に,福井赤十字病院眼科(以下,当科)にて,ILM翻転法併用硝子体手術を施行した症例中,円孔径が400μm以上のものが28眼あった.このなかから,発症から2年以上経過していた陳旧性の7眼,増殖糖尿病網膜症および黄斑浮腫を伴っていた2眼,近視性の網脈絡膜萎縮が顕著な2眼は除外し,残りの17眼(男性6眼,女性11眼)を対象とした.平均経過観察期間は12.66±9.30カ月であった.平均年齢は70.10±7.32歳(60?83歳),平均円孔径606.94±170.44μm(418?985μm),平均円孔底径1,039.29±273.15μm(433?1,526μm),眼軸長24.49±2.30mm(21.43?30.49mm),術前logMAR平均視力0.81±0.28であった.術前に光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)の水平断画像をもとに,Kusuharaら9)に倣って円孔直径の最小となるところを円孔径,円孔底部の直径を円孔底径と定め測定を行った.術後OCTの観察は,HeidelbergEngineeringSpectralisを用いて行った.術後の黄斑円孔の閉鎖は,網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)の露出していないものに限り,閉鎖と判定した.つぎに,ELMと視細胞内節(ellipsoidzone:EZ)の回復を観察した.また,図1に示すとおりにELM連続性あり群とELM連続性なし群の2群に分けて,年齢・術前の円孔サイズ・眼軸長・術前視力・術後視力・経過観察期間の比較を行った.手術は,有水晶体眼である症例では白内障手術を同時に施行した.硝子体手術の手術装置は,コンステレーションRビジョンシステム(Alcon)またはアキュラスR(Alcon)を使用し,広角観察システムはResightR(Zeiss)を用いた.23Gシステムまたは25Gシステムを症例に応じて行った.まず中心部硝子体切除を行った後,後部硝子体?離を作製または確認を行った.続いて,強膜圧迫子にて周辺部圧迫しながら周辺部硝子体切除を行った.黄斑部はResightの60Dレンズまたはコンタクトレンズ(HOYA)を用いて操作を行った.ILM染色は,BBGまたはICGのいずれかを使用した.ICGを使用した症例は2例で,他の症例はBBGのみでILM染色を行った.ILM?離は,アーケード付近まで十分?離し,円孔縁全周にだけILMを残し翻転した.ILM翻転後,ILMのトリミングを施行した場合は,cutrateは5,000bpmを維持し,吸引圧を10mmHgまで落として適宜処理した.最後に,15?20%のSF6ガス,または術後うつむきが困難な症例にはシリコーンオイルを硝子体内腔に全置換した.統計学的解析はStatcel3を用いて行った.関連した2群間の比較は対応のあるt-testを,独立した2群間における比較で,Mann-WhitneyU-testを用いて検定した.p<0.05で有意差ありと判定した.本治療については,福井赤十字病院倫理委員会の承認を得て行った.II結果表1に全症例を円孔径が小さい症例から順次提示している.術前背景・手術内容・手術成績を示した.全症例の視力(logMAR値)は,術前0.89±0.40,術後1カ月が0.55±0.22,術後3カ月が0.47±0.35,術後最終視力が0.34±0.23で有意に改善が得られていた(表2).術前視力と術後最終視力の比較(図2)をしたところ,logMAR視力が0.2以上改善していたものは,17眼中14眼(82.4%)であった.黄斑円孔の閉鎖は17眼中16眼であった(閉鎖率:94.1%).術後OCT所見で,ELMが回復していたものは9眼(52.9%)で,EZが回復していたものは6眼(35.3%)であった.代表的な症例の術後OCT所見を図3,4に示す.図3に提示した症例4,5,6はELM連続性あり群の症例である.症例9,11,12はELM連続性なし群の症例である.図4の症例16は術後4カ月の時点でRPEが露出しており,非閉鎖である.ELM連続性あり群とELM連続性なし群の術前視力・術後視力・年齢・経過観察期間・術前の円孔サイズ・眼軸長の比較を表3に示す.ELM連続性あり群の術前視力(logMAR値)は0.75±0.24,術後最終視力は0.22±0.16(p<0.01).ELM連続性なし群の術前視力は0.93±0.32,術後最終視力は0.48±0.24(p<0.01)で,両群とも有意に改善していた.術前視力は,有意差は認めなかったが(p=0.22),術後最終視力を両群間で比較すると,ELM連続性あり群が有意によかった(p<0.05).年齢は,ELM連続性あり群が69.89±8.87歳,ELM連続性なし群が69.14±5.15歳(p=0.84)で有意差を認めなかった.眼軸長は,ELM連続性あり群が23.40±1.01mm,ELM連続性なし群が25.78±2.79mm(p<0.05)で有意差を認めた.経過観察期間は,ELM連続性あり群が11.83±5.49カ月,ELM連続性なし群が13.79±13.10カ月(p=0.69)で有意差を認めなかった.円孔径は,ELM連続性あり群が491.11±117.52μm,ELM連続性なし群が728.57±124.83μm(p<0.01)と有意差を認めたが,円孔底径はELM連続性あり群が969.89±346.88μm,ELM連続性なし群が1,140.86±134.23μm(p=0.22)で有意差を認めなかった.III考按今回筆者らは,大型黄斑円孔に対して,ILM翻転法併用硝子体手術を行い,術後視力・閉鎖率・術後OCT所見からの検討を行った.大型黄斑円孔の手術成績の過去の報告では,Michaelら6)がStage1,2の400μm以下の黄斑円孔が閉鎖率92%であるが,stage3,4では400μm以上の大型黄斑円孔の閉鎖率は56%に留まるとしている,Michalewskaら7)はILM翻転法を用いることで,flatopenな閉鎖が2%に留まり,閉鎖率が98%となることを報告している.今回の検討でも,17眼中16眼で閉鎖率が94.1%と良好な閉鎖率であった.1症例は閉鎖が得られなかったが,術後のOCT所見を検討するとflatopenの形で,術前の円孔よりも縮小していたが耳側の翻転したILMが?がれていることを確認した.この症例の手術ビデオを見返すと,翻転時は全周にILMが確認でき,その後粘弾性物質で翻転したILMを固定する手技も行っていた.ILM翻転法の問題点は,液-空気置換後に翻転したILMが元に戻ることや,?がれてしまうことである.粘弾性物質やパーフルオロオクタンの使用や翻転させるILMのトリミングの程度など,いろいろな手技の工夫で確実な翻転が検討されており,さらなる手術手技の発展が期待される.また,今回の検討では,術後OCT所見でELMの連続性に着目した.両群間の術後最終視力の比較では,連続性あり群が有意な改善をしていた.しかし,ELM連続性なし症例でもOCT所見に解離して視力が予想以上によいものも確認した(症例11,12,13).患者自身が固視点をうまく変えて視力をあげているのか,今後の経過観察の過程で,ELM・EZが回復してくるのか,今後の検討課題と考えられた.年齢での比較は有意差を認めなかったが,眼軸長についてはELM連続性なし群が有意に長かった.今回の検討した症例のなかに眼軸長27mm以上の症例が3眼含まれていた.これらの症例10,13,17はすべてELMの連続性は認めなかったため,有意差を認めたと考えた.円孔サイズの比較は,円孔底径でELM連続性あり群が969.89±346.88μm,ELM連続性なし群が1,140.86±134.23μm(p=0.22)と有意差を認めなかったが,円孔径は,ELM連続性あり群が491.11±117.52μm,ELM連続性なし群が728.57±124.83μm(p<0.01)と有意差を認めた.表1で,円孔径の小さい症例から順に症例を提示したが,400μm台の症例すべてELMの連続性を確認できた.既報で,IS/OSライン(EZ)の回復については,Hayasiら10)が,特発性大型黄斑円孔では43%で回復したとしている.全症例中,ELMが回復していたものは9眼(52.9%)であったが,500μm以上に限定してみると1眼のみに留まっていた.従来のILM?離後の円孔閉鎖における中心窩網膜外層の修復過程において,必ずELMの修復がEZに先行することが言われている11).ELMが連続して観察できるなら網膜が完全に伸展して閉鎖が得られているのではないかと考えた.黄斑円孔の閉鎖は,網膜の伸展性とグリア細胞の増殖遊走などによる創傷治癒が重要視されている12?14).翻転したILMは,この増殖・遊走の足場を提供しているのではないかと考えられている7).ELMの連続性ないものは網膜の伸展に加えて,グリア細胞の増殖したもので閉鎖を得ていると考えた.500μm以上の症例はILM翻転法を用いなければ,網膜の伸展が足りず閉鎖が得られない可能性が高いのではないかと考えられた.以上,大型黄斑円孔に対する手術成績を検討した.ILM翻転法は,円孔閉鎖率は向上させたが,視力予後・視機能については,さらなる症例の積み重ねと経過観察が必要と考えられた.ELMの回復程度は,術前の円孔径に関係していた.500μm以上の黄斑円孔は,ELMの連続性・回復を認めることが少ないが,閉鎖を第一に考えた場合にILM翻転を行うことが望ましいのではないかと考えた.文献1)KellyNE,WendelRT:Vitreoussurgeryforidiopathicmacularholes.Resultsofapilotstudy.ArchOphthalmol109:654-659,19912)BensonWE,CruickshanksKC,FongDSetal:Surgicalmanagementofmacularholes:AreportbytheAmericanAcademyofOphthalmology.Ophthalmology108:1328-1335,20013)KadonosonoK,ItohN,UchioEetal:Stainingofinternallimitingmembraneinmacularholesurgery.ArchOphthalmol118:1116-1118,20004)KimuraH,KurodaS,NagataMetal:Triamcinoneacetonide-assistedpeelingoftheinternallimitingmembrane.AmJOphthalmol137:172-173,20045)EnaidaH,HisatomiT,HataYetal:BrilliantblueGselectivelystainstheinternallimitingmembrane/brilliantblueG-assistedmembranepeeling.Retina26:631-636,20066)MichaelS,BakerBJ,DukerJSetal:Anatomicaloutcomesofsurgeryforidiopathicmacularholedeterminedbyopticalcoherencetomography.ArchOphthalmol120:29-35,20027)MichalewskaZ,MichalewskiJ,AdelmanRAetal:Invertedinternallimitingmembraneflaptechniqueforlargemacularholes.Ophthalmology117:2018-2025,20108)MichalewskaZ,MichalewskiJ,CisieckiSetal:Highspeed,highresolutionspectralopticalcoherencetomographyaftermacularholesurgery.GraefesArchClinExpOphthalmol246:823-830,20089)KusuharaS,TeraokaEscanoMF,FujiiSetal:Predictionofpostoperativevisualoutcomebasedonholeconfigurationbyopticalcoherencetomographyineyeswithidiopathicmacularholes.AmJOphthalmol138:709-716,200410)HayashiH,KuriyamaS:Fovealmicrostructureinmacularholesurgicallyclosedbyinvertedinternallimitingmembraneflaptechnique.Retina34:2444-2450,201411)WakabayashiT,FujiwaraM,SakaguchiHetal:Fovealmicrostructureandvisualacuityinsurgicallyclosedmacularholes:Spectral-domainopticalcoherencetomographicanalysis.Ophthalmology117:1815-1824,201012)TornambePE:Macularholegenesis:thehydrationtheory.Retina23:421-424,200313)OhJ,YangSM,ChoiYMetal:Glialproliferationaftervitrectomyforamacularhole:aspectraldomainopticalcoherencetomographystudy.GraefesArchClinExpOphthalmol251:477-484,201314)GreenWR:Themacularhole:histopathologicstudies.ArchOpthalmol124:317-321,2006〔別刷請求先〕額田和之:〒918-8501福井県福井市月見2丁目4番1号福井赤十字病院眼科Reprintrequests:KazuyukiNukada,M.D.,DepartmentofOphthalomogyFukuiRedCrossHospital,2-4-1Tukimi,Fukui918-8501,JAPAN0195120-41810/あ16た/図1ELM連続性の有無の判定黒矢印:ELM,白矢印:EZ.Aのように中心窩の外境界膜の回復がみられるものを連続性あり群に,BのようにELMの回復がみられず,ILMから増生したgliosisと思われる組織で閉鎖しているのをELM連続性なし群として判定した.(139)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161525表1術前背景・手術内容・成績表2術後視力図2術前後視力の視力変化●:ELM連続性あり群,▲:ELM連続性なし群.図3代表症例症例番号は表1に提示したもの.症例4,5,6はELM連続性あり群の症例で,翻転させたILMが観察できることが多い.症例9・症例11・症例12はELM連続性なし群の症例で,翻転させたILMからグリアと思われる組織で埋まり閉鎖を得ているが,網膜外層の回復を認めない.図4非閉鎖の症例術後4カ月の時点でRPEが露出しており,非閉鎖の症例(表1の症例16).Flatopenの形で術前の円孔よりも縮小していたが,耳側の翻転したILMが?がれている.表3ELMの連続性の有無による比較(141)あたらしい眼科Vol.33,No.10,201615271528あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(142)

術前網膜外層形態からみた糖尿病黄斑症に対する硝子体手術成績

2013年1月31日 木曜日

《第17回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科30(1):89.92,2013c術前網膜外層形態からみた糖尿病黄斑症に対する硝子体手術成績水流宏文中村裕介大矢佳美安藤伸朗済生会新潟第二病院眼科AssociationbetweenPreoperativeFovealPhotoreceptorLayerandOperationOutcomesinDiabeticMaculopathyHirofumiTsuru,YusukeNakamura,YoshimiOyaandNoburoAndoDepartmentofOphthalmology,SaiseikaiNiigataDainiHospital目的:糖尿病黄斑症に対する硝子体手術において,術前の網膜外層構造と術後成績との関連を検討する.方法:済生会新潟第二病院で糖尿病黄斑症に対し硝子体手術を施行し,3カ月以上経過観察した32例36眼(平均観察期間10.6カ月)について術前,術後1年または最終観察時に,視力と光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)にて中心窩網膜厚(centralretinalthickness:CRT)を測定した.また,術前に外境界膜(externallimitingmembrane:ELM),視細胞内節外節接合部(photoreceptorinnerandoutersegments:IS/OS)をOCTで観察し,水平断画像で中心窩を中心とした1,000μm内にELM,IS/OSの連続性が50%以上あるものをELM,IS/OS陽性とした.A群:ELM・IS/OSともに陽性,B群:ELM陽性かつIS/OS陰性,C群:ELM・IS/OSともに陰性の3群に分類(A群8眼,B群9眼,C群19眼)し,各群の視力,CRTの術後変化を検討した.結果:術後logMAR(logarithmicminimumangleofresolution)視力はA,B,C群いずれも有意に改善.CRTはB,C群で有意に減少.小数視力0.7以上を視力良好,0.7未満を不良とすると術後良好眼はA群8眼中5眼,B群9眼中4眼,C群19眼中1眼でC群に比べA,B群では有意に術後視力良好眼が多かった.結論:術前網膜外層構造が保たれている例では,術後視力成績が良好であった.Purpose:Toassesstherelationbetweenpreoperativephotoreceptorlayerandpostoperativeresultsindiabeticretinopathytreatedwithparsplanavitrectomy.Methods:Weretrospectivelystudied36eyesof32patientswithdiabeticmaculopathyonwhomwehadperformedparsplanavitrectomy(PPV).Weassessedvisualacuity(VA)andcentralretinalthickness(CRT),usingspectraldomainopticalcoherencetomography(SD-OCT),beforeandafterPPV.Wemeasuredthepreoperativeintegrityphotoreceptorinnerandoutersegments(IS/OS)andexternallimitingmembrane(ELM)within1,000μmatthecenterofthefovea.Morethan50%existenceof1,000μmwasdefinedas“positive”;lesswasdefinedas“negative.”Wecategorizedthe36eyesinto3groupsaccordingtointegrityofELMandIS/OS:(1)theAgroup,withELMandIS/OSpositive,(2)theBgroup,withELMpositiveandIS/OSnegative,and(3)theCgroup,withELMandIS/OSnegative.Weestimatedthecorrelationbetweenthegroupsandthesurgicalresults.Results:GroupsA,BandCcomprised8,9and19eyes,respectively.AfterPPV,theVAofall3groupswassignificantlyimprovedandtheCRTofgroupsBandCwassignificantlyreduced(B:p<0.05,C:p<0.01).Theproportionofeyeswithdecimalvisualacuityequaltoorgreaterthan0.7wassignificantlyhighingroupswithpreservedphotoreceptorlayer(AandBgroups),comparedwithCgroup(Agroup:p<0.01,Bgroup:p<0.05).Conclusion:EyeswithpreoperativelypreservedphotoreceptorlayerachievebetterVApostoperativelythandoeyeswithoutpreservedphotoreceptorlayer.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(1):89.92,2013〕Keywords:糖尿病黄斑症,光干渉断層計,外境界膜,視細胞内節外節接合部,網膜外層構造,経毛様体扁平部硝子体切除術.diabeticmaculopathy,opticalcoherencetomography(OCT),externallimitingmembrane(ELM),photoreceptorinnerandoutersegments(IS/OS),photoreceptorlayer,parsplanavitrectomy.〔別刷請求先〕安藤伸朗:〒950-1104新潟市西区寺地280-7済生会新潟第二病院眼科Reprintrequests:NoburoAndo,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SaiseikaiNiigataDainiHospital,280-7Terachi,Nishi-ku,NiigataCity950-1104,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(89)89 はじめに1990年代,Lewisら1)やTachiら2)により糖尿病黄斑症に対して硝子体手術が有効であることが報告されて以来,硝子体手術は糖尿病黄斑症の治療法の一つとして,わが国では多数施行されている.その後,opticalcoherencetomography(OCT)の登場により形態的な評価が可能となり,大谷ら3)は糖尿病黄斑浮腫を基本型に分類した.糖尿病黄斑浮腫の形態と硝子体手術後の視力との関連性が検討されてきたが,浮腫形態に基づく硝子体手術の効果予測には限界があり,術前に術後視力を予測することは困難であった.近年,スペクトラルドメインOCT(SD-OCT)が登場し,外境界膜(externallimitingmembrane:ELM)や視細胞内節外節接合部(photoreceptorinnerandoutersegments:IS/OS)などの網膜外層構造の詳細な評価が可能となり,各種疾患で網膜外層構造と視力との有意な相関が報告されるようになった4,5).糖尿病黄斑浮腫においても,Maheshwaryら6),Murakamiら7),Yanyaliら8)が中心窩のIS/OSやELMの連続性と視力とが相関すると報告している.今回,筆者らは新たな試みとして,糖尿病黄斑症の術前の網膜外層構造が硝子体手術後の成績を反映する指標となりうるのではないかと考え,術前のELM,IS/OSをSD-OCTで評価し,硝子体手術成績との関連性について検討した.I対象および方法対象は2008年1月から2011年3月の間に,済生会新潟第二病院で糖尿病黄斑症に硝子体手術を施行し,3カ月以上経過観察した32例36眼(平均観察期間10.6カ月).症例の1,000μmABLogMAR視力図1OCTにおけるELM・IS/OS評価トプコン社3DOCT-1000MARKIIの白黒表示を用いて,中心窩を中心とした1,000μm内のELM・IS/OSを計測した.A:IS/OS742μmで50%以上の連続性を認める.B:ELM1,000μmで50%以上の連続性を認める.内訳は男性18例21眼,女性14例15眼,Davis分類では増殖前網膜症17眼,増殖網膜症19眼であった.36眼中22眼に白内障手術を施行し,11眼に内境界膜.離を併用した.血管新生緑内障を合併していた4眼および術後網膜.離で追加手術を要した2眼は本検討から除外した.OCTの解析にはトプコン社3DOCT-1000MARKIIを用い,白黒表示にて術前網膜外層を評価し,色素上皮の高反射ラインの直上のラインをIS/OS,その直上のラインをELMと定義した.中心窩を中心とした1,000μm以内のELM,IS/OSを計測し,50%以上連続性が保たれているものをそれぞれ陽性と判定した(図1).ELM,IS/OSの連続性から,ELM・IS/OSともに陽性のA群,ELM陽性・IS/OS陰性のB群,ELM・IS/OSともに陰性のC群に分類した.A,B,Cの3群において術前および術後1年(または最終観察時)に視力と中心窩網膜厚(centralretinalthickness:CRT)を測定し,その結果を各群で比較検討を行った.II結果OCT所見からA群8眼,B群9眼,C群19眼に分類された.なお,ELM陰性・IS/OS陽性の例は認めなかった.術前logMAR(logarithmicminimumangleofresolution)視力はA群0.36,B群0.60,C群0.83で,A群とC群間で有意差を認めた(p<0.01,Mann-Whitney検定).術後logMAR視力はA群0.14,B群0.40,C群0.70であり,いずれの群も術前に比べて有意に改善を認めた(それぞれp<0.05,対応のあるt検定).A群とC群間では術前後のいずれにおいても有意差を認めた(p<0.01,術前はMannWhitney検定,術後はWelchのt検定)(図2).視力評価はlogMAR視力で術前後0.2以上の変化を視力0術前術後*0.1:A群0.20.36A群0.14ELM(+)IS/OS(+)0.3:B群0.40.60B群*0.40**ELM(+)IS/OS(-)0.5:C群0.6**0.70ELM(-)IS/OS(-)0.70.83C群*p<0.050.8**p<0.010.9*図2術前後のlogMAR視力術前logMAR視力A群:0.36,B群:0.60,C群:0.83.A・C群間で有意差を認めた(A・C群間:p<0.01Mann-Whitney検定).術後logMAR視力A群:0.14,B群:0.40,C群:0.70.A・C群間で有意差を認めた(A・C群間:p<0.01Welchのt検定).術後視力はA,B,C群いずれも有意に改善した(p<0.05対応のあるt検定).90あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(90) 20600550ELM(+)IS/OS(+)15500ELM(+)IS/OS(-)4眼5眼7眼4眼4眼9眼0眼0眼3眼A群B群C群:改善■:不変■:悪化:A群:B群:C群*p<0.05**p<0.01349.5332.3495.4353.8529.6401.3術前術後*******A群B群C群CRT(μm)450400350300250視力改善度10ELM(-)IS/OS(-)50図4術前後のCRT図3術後視力改善度LogMAR視力0.2以上の変化を改善,悪化とした.A群:改善4眼,不変4眼.B群:改善5眼,悪化4眼,C群:改善7眼,不変9眼,悪化3眼.A,B,C群いずれの群においても改善眼を得た.ELM陽性であるA,B群では,ELM陰性のC群に比べて改善眼の割合が高かった.悪化眼はELM陰性のC群のみで認められ,ELM陽性のA,B群では認めなかった.改善・悪化として検討し,全体では改善16眼,不変17眼,悪化3眼であった.各群での検討では,A,B群において改善眼の占める割合がC群より高く,悪化眼はみられなかった.C群では改善眼が19眼中7眼のみであり,3眼の悪化を認めた(図3).術後小数視力0.7以上を良好眼,0.7未満を不良眼に分類して比較したところ,A群では8眼中5眼が良好眼,B群では9眼中4眼が良好眼であるのに対し,C群では19眼中1眼のみが良好眼であり,C群に比べA,B群で有意に視力良好眼が多かった(A群C群間p<0.01,B群C群間p<0.05,Fisherの直接確率計算法).術前CRTはA群349.5μm,B群495.4μm,C群529.6μmで,A群とB群間およびA群とC群間で有意差を認めた(それぞれp<0.01,Studentのt検定).術後CRTはA群332.3μm,B群353.8μm,C群401.3μmであり,B群とC群において術後有意に減少した(B群:p<0.05,Wilcoxon符号付順位和検定,C群:p<0.01,対応のあるt検定).術前に認められたA群とB群間ならびにA群とC群間の有意差は術後には認めなかった(図4).術後の網膜外層構造の変化では,A群は全例でELM,IS/OSともに保たれており,B群ではIS/OS回復例が2眼,不変例が3眼,ELM消失例が4眼であり,C群ではELM回復例が2眼,不変例が17眼でありIS/OS回復眼は得られなかった.III考按Diabeticmacularedema(DME)に対して.胞様黄斑浮腫,漿液性網膜.離などの浮腫形態に基づいて硝子体手術成績が検討されてきたが,硝子体手術効果の予測には限界があ(91)術前A群:349.5μm,術前B群:495.4μm,術前C群:529.6μm.A・C群間,A・B群間で有意差を認めた(A・C群間,A・B群間p<0.05Studentのt検定).術後A群:332.3μm,術後B群:353.8μm,術後C群:401.3μm.B群,C群において術後有意にCRTが低下した(B群:p<0.05,Wilcoxon符号付順位和検定,C群:p<0.01,対応のあるt検定).術前に認められたA群とB群間ならびにA群とC群間の有意差は術後には認めなかった.り,術前に術後視力を予測することは困難であった.近年,SD-OCTの登場で網膜外層構造の評価が可能となり,各種疾患において網膜外層構造と視力との相関が強いとの報告が多数出てきており,DMEにおいても同様の関連性が報告されている6.8).筆者らは黄斑円孔の硝子体手術後の視力を検討し,ELM,IS/OSとの関連性が強いという知見を得た9).今回,DMEにおける硝子体手術後の視力予測因子として網膜外層構造に注目し,術前のELM,IS/OSをSD-OCTで評価し,硝子体手術成績との関連性について検討を行った.Oishiら5)は加齢黄斑変性症において,疾患重症度とELM,IS/OSの関係を検討し,まずIS/OSが消失し,さらに重症化するとELMも消失すると述べている.今回のDMEに関する検討でも加齢黄斑変性症と同様の結果を得た.硝子体手術後の視力はいずれの群でも有意に改善を認めたが,術前に網膜外層破綻が少ないA群では,破綻の進んだC群に比べて有意に術後視力が良好であった.網膜外層破綻が進む前に手術治療を行うことで視力回復が大きくなることを示唆しており,ELMの存在が術後良好な視力を目指す硝子体手術を行ううえで重要である.本検討では網膜外層の評価にOCTを用い,中心窩を中心とした1,000μm以内のELM,IS/OSを計測し,50%以上連続性が保たれているものをそれぞれ陽性と判定した.OCTによる網膜外層の評価に際しては,OCTのshadowingによる検出不能例が問題となり,shadowingにより実際には保たれているIS/OS,ELMを消失と評価してしまう可能性がある.そのため,今回筆者らは網膜浮腫や硬性白斑による局所のshadowingにより,ELM,IS/OSが陰性と誤評価あたらしい眼科Vol.30,No.1,201391 されないように50%以上連続していれば外層構造が保たれていると基準を少し緩く定めることでshadowingの影響を最小限にするよう配慮した.しかし,それでも黄斑浮腫による網膜肥厚の著しい症例では,OCTの機能・特性上,shadowingによる検出不能例は少なからず存在するはずであり,現時点でのOCTの性能の限界である.今後のOCTの性能向上に期待したい.ELMは漿液性網膜.離を伴う例においても判別可能であるという点で有用である.板谷ら10)は漿液性網膜.離を伴う中心性漿液性脈絡網膜症において,IS/OSは網膜色素上皮との正確な判別が困難である一方で,ELMは評価が可能であると報告している.漿液性網膜.離を伴うDME眼においても,IS/OSの同定は困難である一方でELMは判別可能であった.網膜外層構造の破綻が強く,漿液性網膜.離を含めた多形態を示すDMEにおいて,より多くの症例で網膜外層構造を評価しうる点でELMは優れた指標と考えられる.今回,少数例の検討ではあったがIS/OS,ELMが術後視力の予測因子として利用可能であり,特にELMは有用性が高い指標である可能性が示唆された.今後,OCTの進化による分解能,描出力向上により,さらに正確な評価が可能となるはずである.さらなる症例検討を重ねたい.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)LewisH,AbramsGW,BlumenkranzMSetal:Vitrectomyfordiabeticmaculartractionandedemaassociatedwithposteriorhyaloidaltraction.Ophthalmology99:753759,19922)TachiN,OginoN:Vitrectomyfordiffusemacularedemaincasesofdiabeticretinopathy.AmJOphthalmol122:258-260,19963)OtaniT,KishiS,MaruyamaY:Patternsofdiabeticmacularedemawithopticalcoherencetomography.AmJOphtalmol127:688-693,19994)MatsumotoH,KishiS,OtaniTetal:Elongationofphotoreceptoroutersegmentincentralserouschorioretinopathy.AmJOphthalmol145:162-168,20085)OishiA,HataM,ShimozonoMetal:Thesignificanceofexternallimitingmembranestatusforvisualacuityinage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol150:27-32,20106)MaheshwaryAS,OsterSF,YusonRMetal:Theassociationbetweenpercentdisruptionofthephotoreceptorinnersegment-outersegmentjunctionandvisualacuityindiabeticmacularedema.AmJOphthalmol150:63-67,20107)MurakamiT,NishijimaK,SakamotoAetal:Associationofpathomorphology,photoreceptorstatus,andretinalthicknesswithvisualacuityindiabeticretinopathy.AmJOphthalmol151:310-317,20118)YanyaliA,BozkurtKT,MacinAetal:Quantitativeassessmentofphotoreceptorlayerineyeswithresolovededemaafterparsplanavitrectomywithinternallimitingmembraneremovalfordiabeticmacularedema.Ophthalmologica226:57-63,20119)中村裕介,安藤伸朗:特発性黄斑円孔の術後閉鎖過程の光干渉断層計による観察.臨眼64:1677-1682,201010)板谷正紀,尾島由美子,吉田章子ほか:フーリエドメイン光干渉断層計による中心窩病変出力の検討.日眼会誌111:509-517,2007***92あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(92)