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ブリモニジン点眼液追加投与による眼圧下降効果の検討

2020年2月29日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(2):223?225,2020cブリモニジン点眼液追加投与による眼圧下降効果の検討神谷隆行*1川井基史*1,2中林征吾*1善岡尊文*1吉田晃敏*1*1旭川医科大学眼科学教室*2あさひかわ眼科クリニックTheE?cacyofBrimonidineOphthalmicSolutionasanAdjunctiveTherapyforGlaucomaTakayukiKamiya1),MotofumiKawai1,2),SeigoNakabayashi1),TakafumiYoshioka1)andAkitoshiYoshida1)1)DepartmentofOphthalmology,AsahikawaMedicalUniversity,2)Asahikawagankaclinicはじめに0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液(以下,ブリモニジン点眼液)はa2刺激薬の緑内障点眼薬である.その作用機序はぶどう膜強膜流出路からの房水流出促進と房水産生の抑制である.緑内障の唯一の治療法は眼圧下降であり,ブリモニジン点眼液を追加処方することで治療の選択肢が増える.今回,筆者らは旭川医科大学眼科において,既存の緑内障点眼薬で治療中であり眼圧下降効果が不十分でブリモニジン点眼液を追加投与した症例について,眼圧下降効果を診療録より後ろ向きに検討した.I対象および方法2012年11月?2017年4月に旭川医科大学病院に通院中で0.1%ブリモニジン点眼液を追加処方された97例153眼を対象とした.それぞれの患者について,ブリモニジン点眼液追加投与開始直前の受診3回分の平均眼圧値と追加投与開始直後の受診3回分の平均眼圧値を後ろ向きに調査し,点眼スコア別に追加前と追加後の眼圧下降値,下降率を比較した.配合剤点眼薬は2剤として解析した.なお,本研究は旭川医科大学倫理委員会で承認された.また,解析方法として,ブリモニジン点眼液追加投与開始前後の眼圧値の比較にはpairedt-testを用い,眼圧下降値の比較にはKruskal-〔別刷請求先〕神谷隆行:〒078-8510北海道旭川市緑が丘東2条1丁目1-1旭川医科大学眼科学教室Reprintrequests:TakayukiKamiya,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,AsahikawaMedicalUniversity,1-1Midorigaokahigashi2jo,Asahikawa,Hokkaido078-8510,JAPANWallistestを用い,いずれもp<0.05を有意水準とした.II結果表1に患者背景を示した.対象は97例153眼(男性59例,女性38例),年齢は72.1±12.1歳(平均値±標準偏差)であった.表2にブリモニジン点眼液追加投与開始前の点眼スコア別処方パターンを示した.内訳は1剤(ブリモニジン点眼液が2剤目として投与されたもの)が17眼(11.1%),2剤(ブリモニジン点眼液が3剤目として投与されたもの)が37眼(24.2%),3剤(ブリモニジン点眼液が4剤目として投与されたもの)が77眼(50.3%),4剤(ブリモニジン点眼液が5剤目として投与されたもの)が22眼(14.4%),追加前平均点眼スコアは2.7±0.86剤であった.病型は原発開放隅角緑内障(primaryopen-angleglaucoma:POAG)27眼,正常眼圧緑内障119眼,落屑緑内障11眼であった.患者全体として追加投与前眼圧は14.3±3.7mmHg,追加投与後眼圧は13.0±2.8mmHg,点眼スコア別では1剤が追加前15.7±3.3mmHg,追加後13.5±2.5mmHg,2剤が追加前13.3±3.3mmHg,追加後12.3±2.9mmHg,3剤が追加前14.0±2.9mmHg,追加後12.8±2.6mmHg,4剤が追加前16.0±6.0mmHg,追加後14.0±3.2mmHgであった.いずれも有意な眼圧下降を認めたが,スコア間では眼圧下降値に有意な差を認めなかった(p=0.12,Kruskal-Wallistset)(表3)また,図1にブリモニジン点眼液追加前眼圧と眼圧下降値の関係を示した.追加前眼圧と眼圧下降値は正の相関を認めた(p<0.001,r=0.6836,Pearson’scorrelationcoe?-cienttest).10%以上の眼圧下降を認めた症例は65眼(42.5表1患者背景症例数(男:女)97例153眼(59:38)年齢72.1±12.1歳追加前の点眼スコア2.7±0.86剤追加前眼圧14.3±3.7mmHg平均±標準偏差.%),20%以上の眼圧下降を認めた症例は27眼(17.6%),30%以上の眼圧下降を認めた症例は6眼(3.9%)であった.さらに,ブリモニジン点眼液追加前眼圧が15mmHg以下の症例(98眼)では79眼(80.6%)で眼圧下降効果を示した.III考按開放隅角緑内障では,眼圧下降が唯一の治療であり,緑内障点眼により治療を開始することが多いが,眼圧下降が不十分な場合や視野障害が進行する場合,点眼の追加や手術を検討する.今回,緑内障患者に対しブリモニジン点眼液を追加投与することで,有意な眼圧下降が得られることが示された.本研究での平均眼圧下降幅は1.4±2.4mmHg,平均眼圧下降率は7.9±13.3%であった.この値は既報と比較し同程度であり,当科においてもブリモニジン点眼液の追加投与による眼圧下降効果が確認できた.1mmHgの眼圧下降により視野障害進行のリスクが約10%減少することも知られており,ブリモニジン点眼液の追加処方により治療の選択肢が増えると考えられる.また,併用薬剤数の影響を検討するた表2追加前の点眼スコア別処方パターン点眼スコアパターン症例数1剤PG10b4CAI32剤PG+b12PG+CAI11b+CAI11PG+a12CAI+a113剤PG+b+CAI774剤PG+b+CAI+ROCK8PG+b+CAI+a114PG:プロスタグランジン関連薬,b:b遮断薬,CAI:炭酸脱水素酵素阻害薬,a1:a1遮断薬(ブナゾシン),ROCK:ROCK阻害薬(リパスジル).表3眼圧下降全体追加前の点眼スコア1剤2剤3剤4剤N15317377722追加前(mmHg)14.3±3.715.7±3.313.3±3.314.0±2.916.0±6.0追加後(mmHg)13.0±2.813.5±2.512.3±2.912.8±2.614.0±3.2差(mmHg)?1.4±2.4?2.2±1.7?0.9±1.3?1.2±2.1?2.0±4.3変化率(%)?7.9±13.3?12.9±10.0?6.4±9.9?7.7±12.8?7.7±20.3p値<0.001<0.001<0.001<0.0010.045変化率:各変化率の相加平均.め,ブリモニジン点眼液の追加投与前の点眼スコア別に調査してみたところ,今回2?4剤の併用薬剤があり,いずれの点眼スコアでも眼圧下降を示し,点眼スコアによる有意な差はなかった.これまでの多剤併用療法に対するブリモニジン点眼液追加投与による眼圧下降率は2剤目としての追加投与では11.8?18.2%1,3,4),3剤以上の多剤併用症例への追加投与では6.9?14.3%5,6)との報告がされているが,当科におけるブリモニジン点眼液追加投与による眼圧下降効果は既報と比較し,同程度と考えられる.緑内障点眼薬ではベースライン眼圧が高いほど,眼圧下降効果が高い傾向にあるが,今回の研究においてもブリモニジン点眼液追加前眼圧と眼圧下降値に有意な正の相関を認め,追加前眼圧が高いほど眼圧下降値も大きいことが示された.追加前眼圧が15mmHg以下という低い症例に限った場合にも80.6%の症例が眼圧下降を示しており,15mmHg以下の比較的眼圧が低い多剤併用中の症例においてもブリモニジン点眼液は有効であると考えられる.20100-10Y=0.4152x?4.618r=0.6836p<0.001眼圧下降N追加前眼圧10%以上下降65眼(42.5%)16.0±4.420%以上下降27眼(17.6%)17.2±5.130%以上下降6眼(3.9%)21.1±7.9図1追加前眼圧と眼圧下降幅の相関IV結論ブリモニジン点眼液は多剤併用例に対しても併用薬の数にかかわらず眼圧下降効果があり,追加前眼圧が15mmHg以下という低い症例においても有効であった.文献1)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,20122)LiuCJ,KoYC,ChengCYetal:E?ectoflatanoprost0.005%andbrimonidinetartrate0.2%onpulsatileocularblood?owinnormaltensionglaucoma.BrJOphthalmol86:1236-1239,20023)山本智恵子,井上賢治,富田剛司:ブリモニジン酒石酸塩点眼液のプロスタグランジン関連点眼液への追加効果.あたらしい眼科31:899-902,20144)林泰博,林福子:プロスタグランジン関連薬へのブリモニジン点眼液追加後1年間における有効性と安全性.あたらしい眼科69:499-503,20155)中島侑至,井上賢治,富田剛司:ブリモニジン酒石酸塩点眼液の追加投与による眼圧下降効果と安全性.臨眼68:967-971,20146)森山侑子,田辺晶代,中山奈緒美ほか:多剤併用中の原発開放隅角緑内障に対するブリモニジン酒石酸塩点眼液追加投与の短期成績.臨眼68:1749-1753,2014◆**

リパスジル点眼追加治療12カ月の成績

2018年7月31日 火曜日

《第28回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科35(7):967.970,2018cリパスジル点眼追加治療12カ月の成績上原千晶新垣淑邦力石洋平與那原理子酒井寛琉球大学大学院医学研究科・医科学専攻眼科学講座CTwelve-monthResultofAdd-onTherapywithRipasudilOphthalmicSolutionChiakiUehara,YoshikuniArakaki,YouheiChikaraishi,MichikoYonaharaandHiroshiSakaiCDepartmentofOphthalmology,UniversityoftheRyukyus緑内障点眼加療中の患者で,リパスジル点眼追加治療を行ったC76例C105眼を後ろ向きに調査した.3カ月以上継続使用し経過を追えたC52例C79眼(原発開放隅角緑内障C40眼,原発閉塞隅角緑内障C19眼,続発緑内障C20眼,平均点眼スコアはC3.7)の平均眼圧は追加前C17.7CmmHgからC12カ月後ではC15.0CmmHgに下降(下降率C10.6%)した.点眼スコアC3以下とC4以上では,それぞれC19.2CmmHgからC15.2CmmHg,17.7CmmHgからC15.0CmmHgへと,12カ月時点まで両群とも有意に眼圧下降した.リパスジル投与前眼圧C15CmmHg以上とC15CmmHg未満の比較ではC15CmmHg以上群では全時点で眼圧は下降(12カ月後下降率C14.5%)したが,15CmmHg未満群では全時点で有意な眼圧下降はなかった.3カ月以降継続群C79眼での点眼中止は眼圧下降不十分C14眼と副作用による中止C9眼の計C23眼(30.4%)であった.CInCaCretrospectiveCreviewCofC105CeyesCofC76CpatientsCwithCglaucomaCinsu.cientlyCcontrolledCunderCmultipleCmedicaltherapy,79eyesof52patientsweretreatedformorethan3monthswithtopicalRipasudiladd-onthera-py.CInCtheC79Ceyes,CintraocularCpressure(IOP)wasCreducedC10.6%Coverall.CIOPCwasCsigni.cantlyCreducedCinCbothgroupsoflow(3orless)andhighscore(4ormore)ofanti-glaucomamedications.AmongeyeswithIOP15CmmHgorChigher,CIOPCreductionCwasCsigni.cantCatCallCtimeCpoints,CbutCthisCwasCnotCtheCcaseCinCeyesCwithCIOPClessCthan15CmmHg.23eyes(30.4%)discontinuedtheRipasudiladd-ontherapybecauseofinsu.cientIOPcontrolorocularsidee.ects.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(7):967.970,C2018〕Keywords:緑内障,点眼,ROCK阻害薬,リパスジル,多剤併用.glaucoma,eyedrop,ROCKinhibitor,Ripa-sudil,multiplemedicaltherapy.CはじめにRhoキナーゼ阻害薬であるリパスジルは,線維柱帯細胞,Schlemm管内皮細胞の細胞骨格を修飾することにより,房水の主流出経路を促進し眼圧を下降させる1).既存の緑内障点眼薬と作用機序が異なるため,これまで眼圧下降が不十分であった症例に対しても効果が期待されているが,新しい薬剤であり,長期の効果と安全性の報告は少ない.今回,筆者らは既存の緑内障点眼薬で治療中であり眼圧下降が不十分でリパスジル点眼薬を追加投与した症例について,1年間の眼圧下降効果と安全性について後ろ向きに検討した.CI対象および方法当科にて緑内障治療中の患者のうち,眼圧下降が不十分と考えられ,2014年C12月.2016年C2月にリパスジル点眼薬1日C2回点眼を追加した症例はC106例C147眼である.3カ月以内の内眼手術既往のあるC9例C9眼,処方後C3カ月未満で転院,未来院となったC22例C33眼を除外したC76例C105眼を安全性解析対象とした.76例C105眼のうち,手術を前提として追加点眼しC2カ月以内に手術施行したのがC14例C14眼(レーザー線維柱帯形成術C2例C2眼,水晶体再建術C3例C3眼,濾過手術C9例C9眼),眼圧上昇による中止がC1眼,追加時または追加C2カ月以内に併用薬剤を変更したのがC10例C11眼であった.処方中止,または併用薬剤の変更となった上記の25例C26眼を除いたC55例C79眼を有効性解析対象とした(図1).追加前,追加後C1カ月,2カ月,3カ月,6カ月,12カ月の診察日時の眼圧を集計した.各時点で来院がなかったも〔別刷請求先〕上原千晶:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原C207琉球大学大学院医学部眼科学講座Reprintrequests:ChiakiUehara,M.D.,DepartmentofOphthalmology,UniversityoftheRyukyus,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0215,JAPAN0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(117)C967のはその月のみの欠損値とし,3カ月以降で点眼中止となった例はそれ以降の解析から除外した.全例で診察日朝の点眼は施行するよう指示されていた.統計には,リパスジル点眼薬の追加前と追加後それぞれの測定時期での眼圧は,対応のあるCt検定を,点眼スコア別,追加前眼圧別の眼圧下降値,下降率はCWilcoxonの符号付順位検定を用いた.CII結果眼圧解析対象のC55例C79眼は原発開放隅角緑内障(prima-ryopenangleglaucoma:POAG)40眼,原発閉塞隅角緑内障C19眼,続発緑内障C20眼(落屑緑内障C6眼,ステロイド緑内障C5眼,ぶどう膜炎続発緑内障C3眼,血管新生緑内障C6眼)で,年齢C66.8C±14.0(30.86)歳,男性28例42眼,女性C24例C37眼,追加投与開始前眼圧C17.7C±4.7(12.38)mmHg,1点眼薬をC1点,アセタゾラミド内服をC2点としたときの点眼スコアC3.7C±1.0(1.5)点(1点:4眼,2点:4眼,3点:18眼,4点:44眼,5点:8眼,6点:1眼),Humphrey静的視野計CSITAスタンダードC24-2または30-2によるCMD値はC.14.0±7.1CdBであった.リパスジル点眼薬を追加後,眼圧はすべての期間で有意に下降した(図2).平均眼圧は追加前C17.7CmmHgからC12カ月後ではC15.0CmmHgに下降(C.2.1CmmHg,下降率C10.6%)した.点眼スコアがC3以下とC4以上の群の追加前と追加C12カ月後の平均眼圧は,それぞれC19.2mmHgからC15.2mmHg,17.7CmmHgからC15.0CmmHgへと,両群ともに有意に下降し10リパスジル(*p<0.05,対応のあるt検定)投与前1M2M3M6M12M(n=79)(n=77)(n=58)(n=77)(n=77)(n=52)下降値(mmHg)C2.0±4.0C1.4±3.0C1.6±4.3C2.3±3.7C2.1±3.9下降率(%)C9.1±16.1C7.2±17.1C6.3±17.8C11.1±16.5C10.6±21.0図2眼圧の推移(全体)C968あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018(118)眼圧(mmHg)2422201816141210リパスジル1M2M3M6M12M追加前(*p<0.05:Wilcoxonの符号付順位検定)スコア3以下(n=26)(n=25)(n=14)(n=24)(n=26)(n=15)スコア4以上(n=53)(n=52)(n=44)(n=53)(n=51)(n=37)下降率(%)スコアC3以下C10.1±16.9C10.6±11.7C12.1±18.3C13.9±18.4C14.2±16.8スコアC4以上C8.6±16.1C6.1±18.6C3.7±17.2C9.7±15.6C9.2±22.7図3点眼スコア別眼圧の推移24眼圧(mmHg)22201816141210リパスジル追加前(*p<0.05:Wilcoxonの符号付順位検定)15mmHg以上(n=59)(n=58)(n=41)(n=58)(n=57)(n=35)15mmHg未満(n=20)(n=19)(n=17)(n=19)(n=20)(n=17)下降率(%)15CmmHg以上C11.6±15.7C8.0±18.2C8.9±18.2C12.4±15.7C14.5±20.815CmmHg未満C1.5±15.9C5.1±14.9C.1.8±14.3C7.4±18.8C2.3±20.0C図4リパスジル追加前眼圧別眼圧の推移はC9眼で,そのうちC4眼は眼瞼炎によるものであり,すべて投与後C6カ月以降に出現していた.掻痒感はC2眼がC3カ月に,3眼がC6カ月以降に出現していた.投与開始C3カ月後以降継続群C79眼のうちC12カ月までの点眼中止例はC23眼(30.4%;95%CCI,C20.2.40.5%)であり,内訳は眼圧下降不十分14眼(17.7%;95%CCI,C9.3.26.1%),前述した副作用による中止例C9眼であった.12カ月時点での未来院のC4眼は分母から除外した.眼圧下降不十分C14眼の内訳は点眼変更C4眼,併用薬変更C6眼,緑内障手術追加C2眼,レーザー治療追加C2眼であった.CIII考察Taniharaら2)はCPOAG,落屑緑内障,高眼圧症を対象としたリパスジル点眼追加治療C1年の前向き研究においては,プロスタグランジン製剤(PG)+b遮断薬に追加したときにおけるC12カ月後の眼圧下降値はC1.7CmmHg(下降率C9.9%)であったと報告した.また,多剤併用例におけるC3カ月の下降効果は,塚原ら3)の報告では下降率C9.3%,Inazaki4)らは下降値C2.8mmHg(下降率C15.5%),またCSatoら5)の報告の6カ月では下降値C3.1CmmHg(下降率約C15%)であった.今回の結果は平均点眼スコア3.7,12カ月の眼圧下降値C2.1mmHg(下降率C10.6%)と過去の報告とほぼ同様であった.(119)あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018C969追加前眼圧がC15mmHg以上の群では,眼圧下降値は14CmmHg以下の群と比べて有意に大きかったと中谷ら6)の報告がある.今回は眼圧下降が不十分で投薬を中止された例を除いた検討であったが,追加前眼圧C15CmmHg以上の群ではC12カ月において有意な眼圧下降を認めたが,15CmmHg未満の群では有意な眼圧下降はなかった.一方,術前点眼数にかかわらず眼圧下降が観察されたが,これはリパスジルが房水の主流出経路に作用し,既処方薬とは異なる作用機序であるためと考えられた.リパスジルの副作用は,処方後C2.3カ月以上経過して発症する眼瞼炎7),アレルギー性結膜炎や眼瞼炎(中止例は14.4%)2)の報告がある.今回の検討でも同様の結果であった.病型ごとの検討は症例数が少なく行っておらず,眼圧測定時間にも幅があることは後ろ向き研究であるための限界である.今回の検討は多剤併用の多い緑内障専門外来での検討であったため,眼圧下降不十分や副作用などで約C3割の症例で処方を中止した.より少ない点眼数で検討した臨床研究と後ろ向きの症例検討との相違であると考えられた.したがって,今回の結果を軽症例のより多い一般臨床現場に当てはめることはできない.より少ない併用数の症例を対象とした検討が必要である.病型別の検討ができなかったことも課題であり,今後症例数を増やして検討する必要がある.CIV結論リパスジル点眼薬は多剤併用例に対しても併用薬の数にかかわらず眼圧下降効果があり,追加前眼圧C15CmmHg以上の症例において有効であった.長期使用では眼瞼炎などの副作用に注意が必要である.利益相反:酒井寛(カテゴリーCP:トーメーコーポレーション)文献1)HonjoM,TaniharaH,InataniMetal:E.ectofrho-asso-ciatedCproteinCkinaseCinhibitorCY-27632ConCintraocularCpressureCandCout.owCfacility.CInvestCOphthalmolCVisCSciC42:137-144,C20012)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:One-yearclini-calCevaluationCofC0.4%Cripasudil(K-115)inCpatientCwithCopen-angleCglaucomaCandCocularChypertension.CActaCOph-thalmolC94:e26-e34,C20163)塚原瞬,榎本暢子,石田恭子ほか:リパスジル点眼薬による眼圧下降効果の検討.臨眼71:611-616,C20174)InazakiCH,CKobayashiCS,CAnzaiCYCetCal:E.cacyCofCtheCadditionalCuseCofCripasudil,CaCrho-kinaseCinhibitor,CinCpatientsCwithCglaucomaCinadequatelyCcontrolledCunderCmaximummedicaltherapy.JGlaucomaC26:96-100,C20175)SatoCS,CHirookaCK,CNaritaCECetCal:AdditiveCintraocularCloweringCe.ectsCofCtheCrhoCkinaseCinhibitor,CripasudilCinCglaucomaCpatientsCnotCableCtoCobtainCadequateCcontrolCafterothermaximaltoleratedmedicaltherapy.AdvTher33:1628-1634,C20166)中谷雄介,杉山和久:プロスタグランジン薬,Cbブロッカー,炭酸脱水酵素阻害薬,ブリモニジンのC4剤併用でコントロール不十分な緑内障症例に対するリパスジル点眼薬の追加処方.あたらしい眼科C33:1063-1065,C20167)富重明子,齋藤雄太,高橋春男:開放隅角緑内障に対するリパスジル点眼薬の短期的な眼圧下降効果.臨眼C71:1105-1109,C2017***970あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018(120)

0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたタフルプロスト点眼液0.0015%およびタフルプロスト点眼液0.0015%/チモロール0.5%点眼液併用との第III相二重盲検比較試験

2013年8月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科30(8):1185.1194,2013c0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE111点眼液)の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたタフルプロスト点眼液0.0015%およびタフルプロスト点眼液0.0015%/チモロール0.5%点眼液併用との第III相二重盲検比較試験桑山泰明*:DE-111共同試験グループ*福島アイクリニックPhaseIIIDouble-MaskedStudyofFixedCombinationTafluprost0.0015%/Timolol0.5%(DE-111)VersusTafluprost0.0015%AloneorGivenConcomitantlywithTimolol0.5%inPrimaryOpenAngleGlaucomaandOcularHypertensionYasuakiKuwayama1):DE-111CollaborativeTrialGroup1)FukushimaEyeClinic0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111)の有効性と安全性を検討するため,原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者488例を対象に,タフルプロスト単剤またはタフルプロストとチモロールの併用を対照とした多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施した.タフルプロスト4週間点眼後の眼圧が18mmHg以上の被験者を,DE-111群,タフルプロスト群,併用群に割り付け,治療期として4週間点眼した.治療期終了時の平均日中眼圧は治療期0週に比べ,DE-111群で2.6±1.8mmHg,タフルプロスト群で0.9±1.7mmHg,併用群で2.2±1.8mmHg下降し,タフルプロストに対する優越性,併用に対する非劣性が検証された.副作用発現率は,群間に有意差は認められなかった.DE-111点眼液は緑内障治療における多剤併用療法の選択肢として,有用性の高い配合点眼液である.Theaimofthisstudywastocomparetheefficacyandsafetyofthefixedcombinationophthalmicsolutionoftafluprost0.0015%/timolol0.5%(DE-111)tothatoftafluprost0.0015%ophthalmicsolution(tafluprost)ortafluprost0.0015%andtimolol0.5%ophthalmicsolutiongivenconcomitantly(concomitant)in488patientswithprimaryopenangleglaucoma(POAG)orocularhypertension(OH),inarandomized,double-masked,parallel-groupandmulticenterstudy.Patientswithintraocularpressure(IOP)≧18mmHgaftertafluprostinstillationfor4weekswererandomlyassignedtoeithertheDE-111,tafluprostorconcomitantgroup,withthedruginstilledfor4weeks.Attheendoftreatment,meandiurnalIOPreductionfrombaselinewas2.6±1.8mmHgintheDE-111group,0.9±1.7mmHginthetafluprostgroupand2.2±1.8mmHgintheconcomitantgroup,DE-111beingsuperiortotafluprostandnotinferiortoconcomitant.Nointergroupdifferenceswereseeninadversedrugreactionincidencerates.TheseresultsindicatethatDE-111isclinicallyusefulinmultidrugtherapyforglaucoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(8):1185.1194,2013〕Keywords:緑内障,配合点眼液,タフルプロスト,チモロール,多剤併用,DE-111.glaucoma,fixedcombination,tafluprost,timolol,concomitant,DE-111.〔別刷請求先〕桑山泰明:〒553-0003大阪市福島区福島5-6-16ラグザ大阪サウスオフィス4F福島アイクリニックReprintrequests:YasuakiKuwayama,M.D.,FukushimaEyeClinic,4FLaxaOsakaSouthOffice,5-6-16Fukushima,Fukushimaku,Osaka553-0003,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(141)1185 はじめに緑内障に対する現在唯一確実な治療法は眼圧下降であり,通常薬物治療が第一選択となる.薬物治療では良好なアドヒアランスを維持することが治療の成否を左右する.しかし,単剤による眼圧コントロールが不十分なため多剤併用療法が必要な患者が少なからず存在しており,アドヒアランスを良好に維持することが困難な場合も多い.このようななか,近年いくつかの配合点眼液が開発されており,緑内障診療ガイドライン1)では,『多剤併用療法の際には配合点眼薬の使用により,患者のアドヒアランスやQOLの向上も考慮すべきである』と,配合点眼液の意義について述べている.DE-111点眼液は,プロスタグランジン(PG)関連薬のタフルプロストとb遮断薬のチモロールを含有する1日1回点眼の配合点眼液であり,両点眼液の併用治療に比べて患者の利便性,アドヒアランスおよびqualityoflife(QOL)を改善し,緑内障の治療効果を高めることが期待される.一方で,PG関連薬とb遮断薬の配合点眼液は,両薬剤の併用治療と比較するとb遮断薬の点眼回数が1日2回から1日1回に減るため,眼圧下降効果が弱い可能性が危惧される.しかし,これまで国内では,PG関連薬とb遮断薬の配合点眼液についてはPG関連薬単剤治療を対照とした比較試験が第III相臨床試験として行われてきたが,PG関連薬とb遮断薬の併用治療を対照とした二重盲検比較試験は行われていなかった.今回,DE-111点眼液の第III相試験として,原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者を対象に,DE-111点眼液の有効成分の一つであるタフルプロスト点眼液0.0015%単剤投与との比較のみならず,タフルプロスト点眼液0.0015%とチモロール点眼液0.5%の併用との比較を目的とした多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施したので,その結果を報告する.なお,本試験はヘルシンキ宣言に基づく原則に従い,薬事法第14条第3項および第80条の2ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」を遵守し実施された.I対象および方法1.実施医療機関および試験責任医師本臨床試験は全国58医療機関において各医療機関の試験責任医師のもとに実施された(表1).試験の実施に先立ち,各医療機関の臨床試験審査委員会において試験の倫理的および科学的妥当性が審査され,承認を得た.2.目的DE-111点眼液のタフルプロスト点眼液に対する優越性,タフルプロスト点眼液とチモロール点眼液0.5%の併用に対する非劣性を検証することを目的とした.3.対象対象は両眼が原発開放隅角緑内障または高眼圧症と診断され,タフルプロスト点眼液点眼下で少なくとも片眼の眼圧が18mmHg以上であり,選択基準を満たし除外基準に抵触しない患者とした.なお,表2におもな選択基準および除外基準を示した.試験開始前に,すべての被験者に対して試験の内容および予想される副作用などを十分に説明し,理解を得たうえで,文書による同意を取得した.4.方法a.試験デザイン・投与方法本試験は多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験として実施した.被験者から文書による同意取得後,緑内障前治療薬の影響を消失させタフルプロスト点眼液の効果が一定となる期間として,導入期を4週間と設定した.導入期にはタフルプロスト点眼液を1日1回朝両眼に治療期0週まで点眼した.治療期0週当日朝はタフルプロスト点眼液を点眼せず来院し,点眼前の眼圧が18mmHg以上の被験者を対象として症例登録を行い,4週間の治療期に移行した.治療期では被験者はDE-111群,タフルプロスト群,併用群に1対1対1に無作為に割り付けられた.DE-111群はDE-111点眼液を1日1回朝両眼点眼およびプラセボ点眼液を1日2回朝夜両眼点眼,タフルプロスト群はタフルプロスト点眼液を1日1回朝両眼点眼およびプラセボ点眼液を1日2回朝夜両眼点眼,併用群はタフルプロスト点眼液を1日1回朝両眼点眼,およびチモロール点眼液0.5%を1日2回朝夜両眼点眼した.試験デザインを図1に示した.なお,点眼はいずれも1回1滴とするよう指導した.b.試験薬剤被験薬であるDE-111点眼液は,1ml中にタフルプロストを0.015mgおよびチモロールを5mg含有する無色澄明の水性点眼液である.DE-111点眼液とタフルプロスト点眼液,そしてチモロール点眼液0.5%とプラセボ点眼液はそれぞれ同一の容器を使用し,盲検性を確保した.試験薬の識別不能性は試験薬割付責任者が確認した.試験薬の割付は,試験薬割付責任者が置換ブロック法による無作為化により行い,キーコードは開鍵時まで封入し試験薬割付責任者が保管した.5.検査・観察項目試験期間中は検査・観察を表3のとおり行った.a.被験者背景性別,生年月日,合併症(眼および眼以外),既往歴などの被験者背景は,試験薬投与開始前に調査・確認した.b.試験薬の点眼状況治療期以降の来院ごとに,前回の来院直後からの点眼遵守状況について問診で確認した.1186あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(142) 表1DE-111共同試験グループ試験実施医療機関一覧(順不同)医療機関名試験責任医師名医療機関名試験責任医師名医療法人大谷地共立眼科医療法人社団慈眼会環状通り眼科さど眼科医療法人社団さくら有鄰堂板橋眼科医院眼科君塚医院ののやま眼科医療法人社団いとう眼科医療法人秀緑会高山眼科緑町医院春日部市立病院医療法人社団豊栄会さだまつ眼科クリニック医療法人社団秀光会かわばた眼科医療法人社団仁香会しすい眼科医院丹羽眼科財団法人厚生年金事業振興団東京厚生年金病院日本赤十字社医療センター吉川眼科クリニック医療法人社団聖愛会中込眼科医療法人社団みすまるのさと会アイ・ローズクリニック医療法人社団善春会若葉眼科病院医療法人社団高友会立川通クリニック道玄坂加藤眼科成城クリニック大橋眼科クリニック医療法人社団高瀬会たかせ眼科平町クリニック医療法人社団慶緑会あまきクリニック医療法人松鵠会みたに眼科クリニック医療法人社団湯田医院きくな湯田眼科医療法人社団律心会辻眼科クリニック戸塚駅前鈴木眼科特定医療法人丸山会丸子中央総合病院曽根聡秋葉純佐渡一成板橋隆三君塚佳宏野々山智仁伊藤睦子高山秀男水木健二貞松良成川端秀仁呉輔仁丹羽康雄藤野雄次郎濱中輝彦吉川啓司中込豊安達京吉野啓髙橋義徳加藤卓次松崎栄島﨑美奈子高瀬正郎小林幸三谷貴一郎湯田兼次辻一夫鈴木高佳野原雅彦国立大学法人岐阜大学医学部附属病院川瀬和秀医療法人社団秀浩会花崎眼科医院花﨑秀敏医療法人社団優あい会小野眼科クリニック小野純治医療法人社団緑泉会南波眼科南波久斌吉村眼科内科医院吉村弦医療法人安間眼科安間正子医療法人大雄会大雄会クリニック伊藤康雄医療法人高橋眼科髙橋研一独立行政法人労働者健康福祉機構淺野俊哉中部労災病院医療法人湖崎会湖崎眼科湖崎淳医療法人創正会イワサキ眼科医院岩崎直樹尾上眼科医院尾上晋吾杉浦眼科杉浦寅男医療法人岩下眼科岩下憲四郎医療法人菅澤眼科医院菅澤啓二地方独立行政法人神戸市民病院機構栗本康夫神戸市立医療センター中央市民病院長田眼科肱黒和子医療法人眼科康誠会井上眼科井上康広島県厚生農業協同組合連合会廣島総合病院二井宏紀山口県厚生農業協同組合連合会小郡第一総合病院榎美穂医療法人広田眼科広田篤林眼科病院林研新井眼科医院新井三樹医療法人蔵田眼科クリニック蔵田善規医療法人しらお眼科医院白尾真日本赤十字社長崎原爆病院脇山はるみ医療法人出田会出田眼科病院川崎勉健康保険組合連合会大阪中央病院井上由美子表2おもな選択基準および除外基準1)おもな選択基準(1)20歳以上(2)性別:不問(3)入院・外来の別:外来(4)導入期終了日(9時30分±30分)の少なくとも片眼の眼圧が18mmHg以上,両眼とも34mmHg以下2)おもな除外基準(1)以下の①.③のいずれかに該当する〔①気管支喘息,またはその既往を有する,②気管支痙攣,重篤な慢性閉塞性肺疾患を有する,③心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II,III度),心原性ショックを有する〕(2)角膜屈折矯正手術の既往を有する(3)緑内障手術(レーザー線維柱帯形成術,濾過手術,線維柱帯切開術など)の既往を有する(4)試験期間中にコンタクトレンズの装用を必要とする(5)安全性上不適格と判断される合併症または臨床検査値異常を有する(6)試験責任医師・試験分担医師が本試験の対象として不適当と判断する同意取得導入期登録/割付け治療期4週間4週間二重盲検DE-111群タフルプロスト点眼液タフルプロスト群併用群【導入期】・タフルプロスト点眼液:1日1回(朝)両眼点眼【治療期】・DE-111群プラセボ点眼液:1日2回(朝,夜)両眼点眼DE-111点眼液:1日1回(朝)両眼点眼・タフルプロスト群プラセボ点眼液:1日2回(朝,夜)両眼点眼タフルプロスト点眼液:1日1回(朝)両眼点眼・併用群チモロール点眼液0.5%:1日2回(朝,夜)両眼点眼タフルプロスト点眼液:1日1回(朝)両眼点眼図1試験デザイン(143)あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131187 表3検査・観察スケジュール観察項目導入期治療期中止時導入期開始時(.4週)0週2週4週文書同意●被験者背景●点眼遵守状況●●●●血圧・脈拍数測定●●●●●細隙灯顕微鏡検査●●●●●視力検査●●●眼圧測定午前中(12時まで)●●9時30分±30分●●●点眼2時間後±30分●●点眼8時間後±30分●●隅角検査●視野検査●眼底検査●●●臨床検査(血液・尿)●●●有害事象●c.各種検査・測定血圧・脈拍数測定,細隙灯顕微鏡検査,視力検査,眼圧測定,隅角検査,視野検査,眼底検査および臨床検査(血液・尿)を表3のスケジュールで実施した.眼圧測定は,導入期開始時,治療期0週,2週および4週または中止時の眼圧をGoldmann圧平眼圧計にて測定した.眼圧測定時刻は,導入期開始時では午前中,治療期0週および4週では朝点眼前の午前9.10時,朝点眼2時間後±30分および朝点眼8時間後±30分,治療期2週では朝点眼前の午前9.10時とした.中止時の眼圧測定時刻は規定しなかった.d.有害事象試験期間中に発現・悪化したすべての好ましくない,または意図しない疾病,またはその徴候を収集した.6.併用禁止薬および併用禁止療法試験期間を通じて,人工涙液,白内障治療剤およびビタミンB12製剤を除くすべての眼局所投与製剤,経口および静注投与の眼圧下降剤,すべてのb遮断薬,副腎皮質ステロイド薬および他の臨床試験薬の投与を禁止した.また,試験期間中の,眼科レーザー手術,コンタクトレンズの装用などを禁止した.7.評価方法a.有効性の評価有効性評価眼は,治療期0週(朝点眼前)の眼圧の高いほうの眼(左右が同値の場合は右眼)とした.主要評価項目は,治療期終了時(治療期4週または中止時)における治療期0週からの平均日中眼圧の変化量とした.なお,平均日中眼圧は,朝点眼前,点眼2時間後および点眼8時間後の平均値と定義した.また,副次評価項目は,各測定時点における治療期0週からの眼圧変化量および眼圧変化率とした.b.安全性の評価有害事象,臨床検査,血圧・脈拍数および眼科的検査をもとに安全性を評価した.8.解析方法a.有効性解析対象有効性は,最大の解析対象集団(FullAnalysisSet:FAS集団)を対象として検討した.また,試験実施計画書に適合した解析対象集団(PerProtocolSet:PPS集団)についても解析し,FAS集団との相違について考察した.b.安全性解析対象安全性は,被験薬または対照薬を少なくとも1回点眼し,安全性に関する何らかの情報が得られている被験者(安全性解析対象集団)を対象とした.c.データの取り扱い検査・観察時期が許容範囲から外れた場合,検査前日の点眼をしていない場合,検査当日の朝の点眼を眼圧測定の前に行った場合,および治療期0週以降の眼圧測定時刻が許容範囲から外れた場合は,当該検査日の眼圧データをPPS集団から除外した.1188あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(144) d.解析方法主要評価および副次評価の解析には,投与群別に対応のあるt検定を行った.群間比較には,投与群を要因,0週の眼圧値を共変量とした共分散分析を用いた.眼圧下降率20%の症例割合についてはFisherの直接法により群間比較を行った.安全性の解析のうち,有害事象については,発現例数と発現率を集計し,全体の発現率についてFisherの直接法を用いて群間の比較を行った.また,臨床検査値については,各検査項目別の異常変動の発現例数と発現率を集計し,連続量データについては,対応のあるt検定を,順序尺度データに関しては符号検定を行った.血圧・脈拍数については対応のあるt検定を行った.眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査,視力検査)については符号検定を行った.検定の有意水準は両側5%とし,区間推定の信頼係数は両側95%とした.解析ソフトはSASversion9.2(株式会社SASインスティチュートジャパン)を用いた.II結果1.被験者の構成被験者の内訳を図2に示した.文書同意を得て試験に組入れられた被験者は574例で,導入期が開始された被験者は558例,治療期が開始された被験者は489例であり,無作為にDE-111群161例,タフルプロスト群164例,併用群164例に割り付けられた.治療期中に5例が試験を中止し(DE-111群2例,タフルプロスト群2例,併用群1例),484例が試験を完了した(DE-111群159例,タフルプロスト群162例,併用群163例).無作為化された症例のうち,治療期用試験薬が投与されなかった1例を除く488例(DE-111群161例,タフルプロスト群164例,併用群163例)を安全性解析対象集団とした.さらに,ベースライン眼圧(治療期0週)が得られなかった1例を除く487例(DE-111群161例,タフルプロスト群163例,併用群163例)をFAS集団に,併用禁止薬使用などにより眼圧値が不採用となった13例を除く474例(DE111群156例,タフルプロスト群159例,併用群159例)をPPS集団とした.FAS集団における被験者背景を表4に示した.いずれの背景因子についても,群間に偏りはみられなかった.2.有効性FAS集団における平均日中眼圧や,その変化量の推移を図3と表5に,平均日中眼圧変化量の群間比較を表6に示した.治療期0週の平均日中眼圧は,DE-111群で19.6±2.0mmHg,タフルプロスト群で19.2±2.1mmHg,併用群で19.3±2.2mmHgであり,治療期終了時(4週または中止時)には,DE-111群で17.0±2.4mmHg,タフルプロスト群で18.3±2.8mmHg,併用群で17.1±2.5mmHgであった.文書同意を得た被験者:574例導入期の試験薬が投薬された被験者:558例無作為割付された被験者:489例DE-111群:161例タフルプロスト群:164例併用群:164例治療期の試験薬が投薬された被験者:488例DE-111群:161例タフルプロスト群:164例併用群:163例試験を完了した被験者:484例DE-111群:159例タフルプロスト群:162例併用群:163例導入期の試験薬未投与例:16例試験開始後に不適格が判明:10例試験継続の拒否:6例導入期中止例:69例有害事象発現:13例試験開始後に不適格が判明:51例転院,転居,多忙:5例治療期の試験薬未投与例:1例併用群:1例治療期に中止した被験者:4例有害事象発現:1例(DE-111群)通院が不可能:1例(DE-111群)転院,転居,多忙:1例(タフルプロスト群)試験開始後に不適格が判明:1例(タフルプロスト群)図2被験者の内訳(145)あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131189 表4被験者背景項目分類DE-111群タフルプロスト群併用群合計例数161163163487診断名原発開放隅角緑内障高眼圧症90(55.9)71(44.1)84(51.5)79(48.5)73(44.8)90(55.2)247(50.7)240(49.3)男85(52.8)68(41.7)82(50.3)235(48.3)性別女76(47.2)95(58.3)81(49.7)252(51.7)年齢平均値±標準偏差最小.最大65歳未満65歳以上61.6±11.626.8592(57.1)69(42.9)63.0±12.623.8581(49.7)82(50.3)60.6±13.623.8487(53.4)76(46.6)61.7±12.723.85260(53.4)227(46.6)緑内障前治療薬なしあり28(17.4)133(82.6)27(16.6)136(83.4)31(19.0)132(81.0)86(17.7)401(82.3)合併症なしあり17(10.6)144(89.4)18(11.0)145(89.0)21(12.9)142(87.1)56(11.5)431(88.5)導入期の隅角(Shaffer分類)3437(23.0)124(77.0)46(28.2)117(71.8)40(24.5)123(75.5)123(25.3)364(74.7)導入期の緑内障性視野異常異常なし異常あり89(55.3)72(44.7)94(57.7)69(42.3)101(62.0)62(38.0)284(58.3)203(41.7)導入期の緑内障性眼底異常異常なし異常あり71(44.1)90(55.9)74(45.4)89(54.6)88(54.0)75(46.0)233(47.8)254(52.2)導入期終了時の平均日中眼圧(mmHg)平均値±標準偏差最小.最大19.6±2.016.0.27.319.2±2.115.0.27.319.3±2.215.3.30.319.4±2.115.0.30.3導入期終了時のトラフ眼圧(mmHg)平均値±標準偏差最小.最大20.1±1.918.0.29.019.8±1.918.0.27.019.9±2.118.0.32.019.9±2.018.0.32.0例数(%).10-1-2-3眼圧変化量(mmHg)**NS**-4-50週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.**:p<0.001,NS:有意差なし(p>0.05).主要評価である治療期終了時(4週または中止時)における治療期0週からの平均日中眼圧の変化量(平均値±標準偏差)は,DE-111群で.2.6±1.8mmHg,タフルプロスト群で.0.9±1.7mmHg,併用群で.2.2±1.8mmHgであり,いずれの群も0週からの有意な眼圧下降を示した(p<0.001).また,DE-111群とタフルプロスト群の平均日中眼圧変化量の群間差(DE-111群.タフルプロスト群)は.1.7±0.21190あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013:DE-111群:タフルプロスト群:併用群0週治療期終了時図3平均日中眼圧変化量(平均値±標準偏差)mmHgであり,DE-111群はタフルプロスト群と比較して有意な眼圧下降を示した(p<0.001).DE-111群と併用群の平均日中眼圧変化量の群間差(DE-111群.併用群)は.0.3±0.2mmHg,95%信頼区間は.0.7.0.1mmHgであり,上限は事前に設定した非劣性マージン1.5mmHgを超えなかったことから,DE-111群の併用群に対する非劣性が証明された.副次評価である治療期2週(朝点眼前),4週(朝点眼前,点眼2時間後,点眼8時間後)の各測定時点における治療期0週からの眼圧変化量(平均値±標準偏差)は表7と図4に示した.DE-111群とタフルプロスト群の群間比較では,DE111群はすべての測定時点において有意な眼圧下降を示した(p<0.001).DE-111群と併用群の群間比較では,DE-111群は治療期4週朝点眼前を含め,すべての測定時点において劣らない眼圧下降を示した(表8).なお,PPS集団を対象とした解析でもFAS集団の有効性と相違のない結果が得られた.治療期終了時(4週または中止時)の治療期0週に対する平均日中眼圧の眼圧下降率が20%以上であった症例の割合は,DE-111群で19.9%,併用群で13.5%,タフルプロスト群で5.5%(図5)とDE-111群が最も大きく,タフルプロス(146) 表5平均日中眼圧とその変化量時期DE-111群タフルプロスト群併用群平均日中眼圧(mmHg)変化量(mmHg)平均日中眼圧(mmHg)変化量(mmHg)平均日中眼圧(mmHg)変化量(mmHg)Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値0週19.6±2.0(161)..19.2±2.1(163)..19.3±2.2(163)..治療期終了時17.0±2.4(161).2.6±1.8(161)<0.00118.3±2.8(163).0.9±1.7(163)<0.00117.1±2.5(163).2.2±1.8(163)<0.001Mean±SD:平均値±標準偏差,p値:対応のあるt検定.表6平均日中眼圧変化量の群間比較DE-111群.タフルプロスト群(mmHg)DE-111群.併用群(mmHg)Mean±SE95%信頼区間p値Mean±SE95%信頼区間p値.1.7±0.2.2.1..1.3<0.001.0.3±0.2.0.7.0.10.098Mean±SE:平均値±標準誤差,0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.表7眼圧実測値の推移および変化量時期DE-111群タフルプロスト群併用群眼圧(mmHg)治療期0週からの変化量(mmHg)眼圧(mmHg)治療期0週からの変化量(mmHg)眼圧(mmHg)治療期0週からの変化量(mmHg)Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値Mean±SD(例数)Mean±SD(例数)p値0週朝点眼前20.1±1.9(161)..19.8±1.9(163)..19.9±2.1(163)..0週点眼2時間後19.8±2.4(161)..19.3±2.5(163)..19.3±2.4(163)..0週点眼8時間後18.9±2.4(161)..18.5±2.6(163)..18.6±2.7(163)..2週朝点眼前17.4±2.4(160).2.7±2.0(160)<0.00118.3±2.7(163).1.5±1.9(163)<0.00117.3±2.8(163).2.7±2.3(163)<0.0014週朝点眼前17.0±2.4(160).3.1±2.2(160)<0.00118.5±2.9(163).1.3±2.0(163)<0.00117.2±2.6(163).2.7±2.2(163)<0.0014週点眼2時間後17.0±2.5(160).2.8±2.1(160)<0.00118.4±3.1(162).0.9±2.1(162)<0.00117.0±2.6(163).2.4±2.1(163)<0.0014週点眼8時間後17.0±2.9(159).1.9±2.3(159)<0.00118.1±3.1(162).0.4±2.2(162)0.01417.0±3.0(163).1.6±2.2(163)<0.001Mean±SD:平均値±標準偏差,p値:対応のあるt検定.ト群と比較して有意であった(p<0.001).併用群との間には有意差はなかった.3.安全性a.有害事象および副作用安全性解析対象集団は,DE-111群161例,タフルプロスト群164例,併用群163例の計488例であった.治療期中に発現した有害事象と副作用の発現例数および発(147)現率を表9に,副作用一覧を表10に示した.有害事象は,DE-111群で23.0%(37/161例),タフルプロスト群で19.5%(32/164例),併用群で12.3%(20/163例)であった.そのうち,試験薬との因果関係が否定できない副作用は,DE-111群で10.6%(17/161例),タフルプロスト群で7.9%(13/164例),併用群で8.6%(14/163例)であった.有害事象の発現率は群間に有意差が認められたが,副作用の発あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131191 2322212019181716151413時間後0時間後時間後4時間後**************:DE-111群:タフルプロスト群:併用群図4眼圧実測値(平均値±標準偏差)0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.DE-111群とタフルプロスト群との比較:いずれもp<0.001(**).併用群とタフルプロスト群との比較:いずれもp<0.001(**).DE-111群と併用群との比較:いずれも有意差なし(p>0.05).症例割合(%)眼圧(mmHg)**表8眼圧実測値変化量の群間比較時期DE-111群.タフルプロスト群(mmHg)DE-111群.併用群(mmHg)Mean±SE95%信頼区間p値Mean±SE95%信頼区間p値2週朝点眼前.1.2±0.2.1.6..0.7<0.0010.0±0.2.0.4.0.50.9054週朝点眼前.1.7±0.2.2.2..1.3<0.001.0.3±0.2.0.8.0.10.1474週点眼2時間後.1.7±0.2.2.2..1.3<0.001.0.3±0.2.0.7.0.10.1864週点眼8時間後.1.4±0.2.1.8..0.9<0.001.0.2±0.2.0.7.0.30.384Mean±SE:平均値±標準誤差,0週の眼圧値を共変量とした共分散分析に基づく群間比較.3020100DE-111群タフル併用群プロスト群19.9%(32/161)5.5%(9/163)13.5%(22/163)図5治療期終了時に眼圧下降率20%以上であった症例の割合1192あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013現率は群間に有意差は認められなかった(有害事象:p=0.035,副作用:p=0.707).DE-111群のおもな副作用は,点状角膜炎(3.7%,6/161例)および結膜充血(3.1%,5/161例),タフルプロスト群のおもな副作用は,点状角膜炎(2.4%,4/164例)および結膜充血(2.4%,4/164例),併用群のおもな副作用は点状角膜炎(3.1%,5/163例)および結膜充血(1.8%,3/163例)と,共通の副作用が認められ,発現頻度に大きな差はなかった.いずれの群においても,副作用はすべて眼障害で重症度は軽度であり,試験中あるいは試験終了後に軽快または回復した.DE-111群の副作用により試験中止に至った被験者は,点状角膜炎を発現した1例(0.6%)で,軽度であり,試験薬の投与中止後に回復した.b.臨床検査DE-111群で総ビリルビン,総蛋白およびアルブミンが,(148) 表9治療期にみられた有害事象と副作用の発現例数および発現率DE-111群タフルプロスト群併用群検定(Fisherの直接法)例数161164163有害事象発現例数(%)37(23.0)32(19.5)20(12.3)p=0.035副作用発現例数(%)17(10.6)13(7.9)14(8.6)p=0.707表10副作用一覧DE-111群タフルプロスト群併用群例数161164163副作用発現例数(%)17(10.6)13(7.9)14(8.6)眼精疲労1(0.6)──眼瞼色素沈着──1(0.6)眼瞼炎──1(0.6)結膜炎─1(0.6)─眼瞼紅斑1(0.6)──眼刺激2(1.2)1(0.6)1(0.6)眼痛1(0.6)──眼充血2(1.2)─2(1.2)羞明──1(0.6)点状角膜炎6(3.7)4(2.4)5(3.1)霧視─1(0.6)─睫毛の成長──1(0.6)眼の異物感─1(0.6)─結膜充血5(3.1)4(2.4)3(1.8)眼瞼.痒症──1(0.6)眼.痒症1(0.6)1(0.6)2(1.2)例数(%).タフルプロスト群で血小板が,併用群で好酸球,総蛋白およびアルブミンが,投与前に比し有意な変動を示したが,これらの変動に関連する有害事象は認められなかった.また,薬剤との因果関係が否定できないとされた臨床検査値の異常変動は,DE-111群で0.6%(1/161例,項目:尿糖)に認められたが,試験終了後に基準値内へ回復した.c.血圧・脈拍数収縮期血圧,拡張期血圧について,0週と比較して有意な変動はいずれの群においても認められなかった.脈拍数について,0週と比較して有意な下降がDE-111群で2週(平均値±標準偏差,.2.0±7.5拍/分,p=0.001)および4週(.1.3±7.9拍/分,p=0.034)に,併用群で2週(.5.3±7.6拍/分,p<0.001)および4週(.5.3±8.6拍/分,p<0.001)に認められた.タフルプロスト群では,0週と比較して有意な変動は認められなかった.これらの脈拍数の変動は,臨床的に問題となるものではなかった.また,関連する有害事象は認められなかった.d.眼科的検査(細隙灯顕微鏡検査,視力検査)細隙灯顕微鏡検査所見について,0週と比較して有意なス(149)コアの上昇がDE-111群で4週の角膜フルオレセイン染色スコア(左眼:p=0.012)に認められたが,その他の項目に有意なスコアの変動は認められなかった.タフルプロスト群と併用群では,有意なスコアの変動は認められなかった.また,本スコアの変動について,関連する有害事象は認められたものの,すべて軽度であった.視力検査について,いずれの群でも有意な変動は認められなかった.III考察現在,わが国において発売されているPG関連薬とb遮断薬の配合点眼剤には,ラタノプロストとチモロールマレイン酸塩の配合点眼液(ザラカムR配合点眼液),およびトラボプロストとチモロールマレイン酸塩の配合点眼液(デュオトラバR配合点眼液)がある.これらの点眼液についてPG関連薬単剤を対照とした臨床試験は,国内外で実施されており配合点眼剤の優越性が検証されている2.6)が,PG関連薬とb遮断薬の併用治療を対照とした臨床試験(二重盲検群間比較試験)は国内に報告がない.海外では併用治療を対照とした臨床試験の報告があり,非劣性が検証された報告7)もあるが,一部の測定時点で非劣性が検証されなかったり,配合点眼液の眼圧下降効果が併用治療を有意に下回ったとの報告8.10)もある.今回,DE-111点眼液のタフルプロスト点眼液単剤投与に対する優越性と,タフルプロスト点眼液およびチモロール点眼液0.5%(1日2回点眼)の併用治療との非劣性を同一試験で検証した.本試験では,主要評価である治療期終了時(4週または中止時)における治療期0週からの平均日中眼圧変化量において,DE-111群はタフルプロスト群と比較して有意な眼圧下降を示した.また,併用群と比較して劣らない眼圧下降を示し,PG関連薬とb遮断薬の併用治療に対する配合点眼液の非劣性が,国内で初めて検証された.各眼圧測定時刻について比較しても,朝点眼前(トラフ値),点眼2時間後および点眼8時間後のすべての眼圧測定時刻において,DE-111群は併用群と比較して劣らない眼圧下降を示した.DE-111点眼液は,PG関連薬とb遮断薬の併用治療に比べるとb遮断薬の点眼回数が1日2回から1日1回に減るが,DE-111点眼液によって眼圧が1日中コントロール可能であることが確認された.チモロールはpHなあたらしい眼科Vol.30,No.8,20131193 どさまざまな条件により眼内移行が変化することが知られており11),配合点眼液の製剤設計の違いが効果の持続性に影響する可能性が考えられる.また,眼圧下降達成率で比較して20%以上の眼圧下降が得られた症例の割合は,DE-111群で19.9%,併用群で13.5%,タフルプロスト群で5.5%と,DE-111群が最も大きく,タフルプロスト群と比較して有意差が認められた.安全性について,有害事象は,DE-111群で23.0%(37/161例),タフルプロスト群で19.5%(32/164例),併用群で12.3%(20/163例)に認められ,群間に有意差が認められたものの,DE-111群では鼻咽頭炎(3.7%,6/161例)などの試験薬との因果関係が否定されたものが多く,副作用発現率では群間に差はなかった.いずれの群においても副作用はすべて眼局所のもので,かつ軽度で,試験中あるいは試験終了後に軽快または回復した.また,いずれの群でも,重篤な副作用はみられなかった.DE-111群のおもな副作用は,点状角膜炎(3.7%,6/161例),結膜充血(3.1%,5/161例)であるが,これらの副作用はタフルプロスト点眼液および0.5%チモロール点眼液の副作用情報において既知のものであり,各単剤の安全性プロファイルを超えるものではなかった.よって,配合による副作用増大の懸念はないと考えられた.以上の結果から,PG関連薬単剤で眼圧下降効果が不十分な場合に,DE-111点眼液に変更することで,薬剤数および点眼回数を増やすことなく治療効果の増大が期待できる.また,すでにPG関連薬とb遮断薬を併用している場合には,DE-111点眼液に変更することで併用治療に劣らない治療効果が維持できるだけでなく,薬剤数および点眼回数が減ることで,アドヒアランス不良の患者ではより優れた治療効果が期待できる.以上,DE-111点眼液は緑内障治療において有用性の高い配合点眼液である.利益相反:広田篤(カテゴリーI:参天製薬)文献1)緑内障診療ガイドライン(第3版):日眼会誌116:3-46,20122)北澤克明,KP2035共同試験グループ:原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたラタノプロスト・チモロール配合剤(KP2035)の第III相二重盲検比較試験.臨眼63:807-815,20093)清野歩,佐々木英之,山田啓二:緑内障・高眼圧症治療剤トラボプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼液「デュオトラバR配合点眼液」.眼薬理25:22-26,20114)PfeifferN:Acomparisonofthefixedcombinationoflatanoprostandtimololwithitsindividualcomponents.GraefesArchClinExpOphthalmol240:893-899,20025)HigginbothamEJ,FeldmanR,StilesMetal:Latanoprostandtimololcombinationtherapyvsmonotherapy.ArchOphthalmol120:915-922,20026)DiestelhorstM,AlmegardB:Comparisonoftwofixedcombinationsoflatanoprostandtimololinopen-angleglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmol236:577581,19987)DiestelhorstM,LarssonL-I,forTheEuropeanLatanoprostFixedCombinationStudyGroup:A12-week,randomized,double-masked,multicenterstudyofthefixedcombinationoflatanoprostandtimololintheeveningversustheindividualcomponents.Ophthalmology113:70-76,20068)DiestelhorstM,LarssonL-I,forTheEuropeanLatanoprostFixedCombinationStudyGroup:A12weekstudycomparingthefixedcombinationoflatanoprostandtimololwiththeconcomitantuseoftheindividualcomponentsinpatientswithopenangleglaucomaandocularhypertension.BrJOphthalmol88:199-203,20049)SchumanJS,KatzGJ,LewisRAetal:Efficacyandsafetyoffixedcombinationoftravoprost0.004%/timolol0.5%ophthalmicsolutiononcedailyforopen-angleglaucomaorocularhypertension.AmJOphthalmol140:242-250,200510)HughesBA,BacharachJ,CravenERetal:Athree-month,multicenter,double-maskedstudyofthesafetyandefficacyoftravoprost0.004%/timolol0.5%ophthalmicsolutioncomparedtotravoprost0.004%ophthalmicsolutionandtimolol0.5%dosedconcomitantlyinsubjectswithopenangleglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma14:392-399,200511)KyyronenK,UrttiA:EffectsofepinephrinepretreatmentandsolutionpHonocularandsystemicabsorptionofocularlyappliedtimololinrabbits.JPharmSci79:688-691,1990***1194あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(150)