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裂孔原性網膜剝離症例数の季節変動と関連する気候因子の検討

2014年9月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科31(9):1403.1406,2014c裂孔原性網膜.離症例数の季節変動と関連する気候因子の検討竹渓友佳子*1稲用和也*2間山千尋*3朝岡亮*3村田博史*3野本洋平*1*1総合病院国保旭中央病院眼科*2東京警察病院眼科*3東京大学大学院医科学研究科感覚・運動機能医学講座IdiopathicRetinalDetachmentFrequencyHasSeasonalVariationandIsCorrelatedwithClimate─SurveyinJapan─YukakoTaketani1),KazuyaInamochi2),ChihiroMayama3),RyoAsaoka3),HirofumiMurata3)andYoheiNomoto1)1)DepartmentofOphthalmology,AsahiGeneralHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TokyoMetropolitanPoliceHospital,3)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolTheUniversityofTokyo裂孔原性網膜.離の発症率は夏期に高まることがこれまで海外から数多く報告されているが,わが国での詳細な報告はほとんどみられない.今回筆者らは2007年1月から2011年12月までに旭中央病院を受診し,手術に至った特発性裂孔原性網膜.離271例をレトロスペクティブに検討し,裂孔原性網膜.離の発症率と気候因子との関連を調べた.発症率は既報と同様に,夏に高く冬に低くなる傾向がみられ,4.9月(夏期)と10.3月(冬期)の季節ごとの日照時間と有意な正の相関(r=0.71,p=0.02)があることが示され,温度や湿度との間には有意な相関はみられなかった.網膜.離症例数の季節変動の要因として,夏に屋外での活動性が高まることや日照による縮瞳の影響が強まることなどが推測された.Severalstudieshavereportedthatrhegmatogenousretinaldetachment(RRD)hasahighincidenceinsummerandcorrelateswithclimatefactors.However,therehasbeennosuchreportinJapan.Inthisstudy,weexaminedtheseasonalvariationofRRDfrequencyandtheinfluenceofclimate.Medicalrecordsof271patientswhohadundergonesurgeryforidiopathicRRDatAsahiGeneralHospitalfromJanuary2007toDecember2011wereretrospectivelyreviewed.TheincidenceofRRDwasdetermined,andseasonalvariationandcorrelationwithclimatefactorswereexamined.RRDoccurredmostfrequentlyinearlysummerandleastfrequentlyinwinter.Itsfrequencyshowedsignificantcorrelationwithincreasedsunshinehours(r=0.71,p<0.05).ThesefindingscouldreflecttheincreasedopportunityforinfluenceofoutdooractivitiesandmiosisontheoccurrenceofRRD.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(9):1403.1406,2014〕Keywords:裂孔原性網膜.離,季節変動,日照時間.rhegmatogenousretinaldetachment,seasonalvariation,sunshinehours.はじめに網膜.離の発症率は夏期に高まることがヨーロッパ1,2),アジア3),アフリカ4),中東5,6)など海外から複数報告されているが,わが国では1992年に蔭山らが大分県で気温との関係を調査しているのみである7).総合病院国保旭中央病院は千葉県東部に位置し近隣の網膜.離手術を行っている他施設から40km以上離れ,約57万人の住民を診療圏としている.就業者の多くが第1次産業に属しており人口変動が少ないため,この地域における裂孔原性網膜.離の発症率の評価に適した条件をもっていると考えられる.より広い地域・多施設での大規模な調査では対象症例数を増やすことができるが,狭い地域で検討を行うことで詳細な気候因子と症例数の関係を解析することが可能になる.本研究では,5年間の期間中に旭中央病院で裂孔原性網膜.離(RRD)の観血的手術に至った症例数の季節変動と,気候に関係する因子との相関について検討した.〔別刷請求先〕竹渓友佳子:〒289-2511千葉県旭市イ1326総合病院国保旭中央病院眼科Reprintrequests:YukakoTaketaniM.D.,DepartmentofOphthalmology,AsahiGeneralHospital,AsahiI1326Chiba289-2511,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(155)1403 I対象および方法2007年1月から2011年12月に旭中央病院においてRRDに対する観血的手術を施行した症例をレトロスペクティブに検討した.発症から1カ月以上経過していると推定される陳旧性のRRD,明らかな感染や外傷を契機とする網膜.離,増殖糖尿病網膜症や増殖硝子体網膜症に伴う牽引性網膜.離,明らかな原因裂孔のない漿液性網膜.離,再.離症例,および12歳以下の小児例は除外した.RRDの症例数は月ごと,および既報2,6,8)にならい4.9月(夏期)/10.3月(冬期)と定義し季節ごとに計数した.RRDの症例数と各月ごと,および夏期と冬期に分けた季節ごとの平均気温,平均湿度,日照時間,降水量との関係をSpearmanの順位相関係数により検討した.なお,気候因子の統計値は気象庁が千葉県全体の平均値として公開しているデータ10)を使用した.日照時間は天候による日射量を考慮し,直達日射量が0.12kW/m2以上の日光が地表を照射した時間と定義されている10).II結果対象は271例271眼,男性176例(65%),女性95例(35%)で,症例数は男性が有意に多かったが(p<0.05),平均年齢は全体で56.0±15.0(13.87)歳であり,男性(55.3±13.8),女性(57.0±16.1)で男女間に有意差は認められなかった.人口当たりのRRD発症率は9.5人/10万人と推定された.手術術式の内訳は硝子体茎離断術(白内障手術,輪状締結を併施したものを含む)が66%,バックルによる網膜復位術が28%,その他が6%であった.原因裂孔の性状は,症例数(眼)30252015101404あたらしい眼科Vol.31,No.9,2014501月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月図1月ごとの裂孔原性網膜.離症例数弁状裂孔(萎縮性円孔併存を含む)が87%,萎縮性円孔が13%であった.月ごとに平均したRRD症例数は6月に最も多く,ついで12月に多く,1月・9月・11月が最も少なかった(図1).気候因子と症例数の月ごとの変動を図2に示す.既報にならい4.9月を夏期と10.3月を冬期と定義した場合,症例数は,5年間の合計ではそれぞれ145例(54%)と126例(46%)であり有意差はなかった(p=0.19).RRD症例数と気候関連因子との間には,月ごとの検討では有意な相関を認めなかったが(p>0.28),各年の夏期と冬期を単独に解析した検討では症例数と日照時間の間にのみ強い相関(r=0.71,p=0.02)が認められた(図3).III考按本研究の対象地域である千葉県東部は農業などの第一次産業従事者の数が多く,地域で最大の都市である銚子市の第一次産業就業率は約11%で全国平均の4.5%(http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kouhou/useful/u18.htm)の2倍以上となっている.近隣に網膜.離手術を行っている他施設がなく,住民の行動様式が多彩な大都市圏や,降雪地域や大きな景勝地を有する地域などに比べ,年間を通して季節による人口変動が比較的小さいと推測される.また,日本は諸外国に比べ比較的はっきりした季節ごとの気候変化をもっており,わが国でRRDと気候因子の相関を検討することは有意義と考えられる.今回の検討で対象期間中のRRDの年間発症率は9.5人/10万人と推定され,台湾におけるnational-wideの調査3)での発症率(7.8.10.8人/10万人)や北京における大規模調査11)での発症率(7.30.8.63人/10万人),熊本における調査12):2011年:2010年:2009年:2008年:2007年:合計(156) 図2裂孔原性網膜.離症例数と気候因子症例数はそれぞれ2007.2011年の月ごとの5年分の合計数を示しており,日照時間,降水量,湿度,気温はそれぞれ2007.2011年の月ごとの5年平均値を表す.250200150100500190.56149.5171.3171.66170.12132.16152.4193.06144.74125.54129.12183.7440.786.198.2132.7160.4145.485.5122.1210.519.89181.48.1417.2219.6426.5432.0829.0817.124.4242.139.1618.216.286.38症例数(眼)6.987.913.8618.7617.6426.0627.4224.1618.8613.5691919212628292319202120261日照時間(h)降水量(mm/月)23456789101112日照時間(h/月)降水量(mm/月)湿度(%)気温(℃)250200150100500190.56149.5171.3171.66170.12132.16152.4193.06144.74125.54129.12183.7440.786.198.2132.7160.4145.485.5122.1210.519.89181.48.1417.2219.6426.5432.0829.0817.124.4242.139.1618.216.286.38症例数(眼)6.987.913.8618.7617.6426.0627.4224.1618.8613.5691919212628292319202120261日照時間(h)降水量(mm/月)23456789101112日照時間(h/月)降水量(mm/月)湿度(%)気温(℃)38363432302826242220189008501,0001,0501,1001,150日照時間(h)図3日照時間と裂孔原性網膜.離症例数の散布図各年の夏期(4.9月)/冬期(10.3月)の季節ごとの検討(2007.2011年).夏期(4.9月)冬期(10.3月),症例数:期間中の5年分加算合計数.800850100症例数(眼)湿度(%)90気温(℃)80706050403020100年季節症例数日照時間2007夏期321,001.5冬期23978.72008夏期20853.6冬期291,019.62009夏期25850.6冬期24851.12010夏期371,097.1冬期23834.72011夏期311,017.9冬期271,064.7症例数(眼)日照時間:期間中の5年加算合計日照時間(h).Spearmanの順位相関係数=0.711,p=0.02.(発症率10.4人/10万人)とほぼ同等であったことは,地域の網膜.離発症例のほとんどが本研究の対象となっており,今回の検討結果が妥当であることを示唆していると考えられる.また,性別では男性のほうがRRDの発症率が1.85倍高く(p<0.01),台湾3)やレバノン6),オランダなど海外の報告と同様の傾向であった.性差の原因として男性のほうが屋外作業に従事する時間が長くより活動的であり,日照に多くさらされることが関連すると推測されている.(157)RRD発症率の季節変動に関する海外からの報告は1945年から2011年の間に17報みられ,そのうち12報で1年を4.9月(夏期)と10.3月(冬期)に分けた季節ごとの検討がなされ,夏期の発症率が高いことが報告されているが,今回の調査では夏期(4.9月)と冬期(10.3月)の発症率に有意差はなかった(p=0.19).気温の変化をみると,図2からもわかるように,4.9月は平均気温が高く,10.3月は気温が低くなっており,1年を暖かい時期と寒い時期に分ける場合,既報の分類が妥当であると考えられる.また,春とあたらしい眼科Vol.31,No.9,20141405 秋に同じような気候因子の時期があることや,網膜.離の発症過程にはある程度の時間経過がかかると推測されることから,1年をさらに細分化した時期ごとに発症率を解析することは,気候因子との関連を検討するには望ましくないと考えられる.RRD発症率が夏期に高い傾向を示す理由として,RRDの発症と眼内に入る光量や日照時間との関連が示唆されている1,2,6).RRDの発症機序として,屋外での日射が強い縮瞳を生じさせて周辺部の網膜・硝子体の牽引を強め,RRDを誘発する可能性が示唆されている8).また,ドイツ1),台湾3)での報告ではRRD発症率と気温との間に正の相関が認められている.眼表面の温度は体幹温度よりも環境温度と強く相関するため9),気温の上昇により硝子体の液化が進み,屋外での活動性の増加も加わってPVD(後部硝子体.離)とRRDが生じやすくなっている可能性が考えられている4).本研究では,統計学的有意差はなかったものの既報と同様にRRDの発症率は夏期に高まる傾向があり,症例数と日照時間には有意な正の相関があった(図3,r=0.7,p=0.02).季節変動を5年間の平均値でみるとRRD症例数の多い4.6月,12月は日照時間が長く(図2),1年ごとにみると2008年以外は夏期に症例数が増加する傾向が比較的顕著であるが,2008年は逆に冬期に症例数が多い傾向がみられた.2008年は例年と異なり夏期(4.9月)よりも冬期(10.3月)のほうが日照時間が長くなっており(夏期853.6時間,冬期1,019.6時間),これらの結果はRRDと日照時間との関連を示唆するものと考えられる.今回筆者らは,一施設における裂孔原性網膜.離の季節変動を検討し,症例数は夏期に増加する傾向があり日照時間との間に有意な正の相関のあることを認めた.網膜.離の発症メカニズムは多様であり,発症後に症状の進展する速度,患者が眼科を受診し手術を実施するまでの期間も一定ではなく,RRD発症に関与する因子を手術日に基づく検討から推測することには限界がある.また,RRD発症の季節変動を気候に関係する因子のみで説明できるとは考えにくい.しかし,諸外国の報告と同様,本研究でも日照時間とRRD発症の相関が認められたことは,RRD発症における日照の影響を強く推測させる結果と考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)ThelenU,GerdingH,ClemensS:Rhegmatogenousretinaldetachments.Seasonalvariationandincidence.Ophthalmologe94:638-641,19972)GhisolfiA,VandelliG,MarcoliF:Seasonalvariationsinrhegmatogenousretinaldetachmentasrelatedtometeorologicalfactors.Ophthalmologica192:97-102,19863)LinHC,ChenCS,KellerJJetal:Seasonalityofretinaldetachmentincidenceanditsassociationswithclimate:an11-yearnationwidepopulation-basedstudy.ChronobiolInt28:942-948,20114)GauthierA,BruyasG:VariationssaisonnieresdelafrequencedudecollementdelaretineenAlgerie.BullSocFrOphtalmol3:404-408,19475)AlSamarraiAR:SeasonalvariationsofretinaldetachmentamongArabsinKuwait.OphthalmicRes22:220223,19906)MansourAM,HamanRN,KanaanMetal:SeasonalvariationofreinaldetachmentinLebanon:OphthalmicRes41:170-174,20097)陰山誠,中塚和夫:裂孔原性網膜.離発症の季節的要因に関する検討.眼臨86:1972-1975,19928)KrausharMG,SteinbergJA:Mioticsandretinaldetach-ment:upgradingthecommunitiystandard.SurvOphthalmol35:311-316,19919)KatsimprisJM,XirouT,ParaskevopoulosKetal:Effectoflocalhypothermiaontheanteriorchamberandvitreouscavitytemperature:invivostudyinrabbits.KlinMonatsblAugenheilkd220:148-151,200310)気象庁http://www.jma.go.jp/jma/press/tenko.html11)LiX;BeijingRhegmatogenousRetinalDetachmentStudyGroup:IncidenceandepidemiologicalcharacteristicsofrhegmatogenousretinaldetachmentinBeijing,China.Ophthalmology110:2413-2417,200312)SasakiK,IdetaH,TonemotoJetal:EpidemiologiccharacteristicsofrhegmatogenousretinaldetachmentinKumamoto,Japan.GraefesArchClinExpOphthalmol233:772-776,1995***1406あたらしい眼科Vol.31,No.9,2014(158)

正常人での眼圧の季節変動

2009年5月31日 日曜日

———————————————————————-Page1(105)6850910-1810/09/\100/頁/JCLS19回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科26(5):685688,2009cはじめに眼圧には季節変動があるといわれている.正常人の眼圧の季節変動に関しては多数の報告15)があるが,プロスペクティブに検討した報告1)は少ない(表1).これらの報告に共通しているのは,正常眼の眼圧には季節変動があり,12月から2月にかけて高く,7月から9月にかけて低いことである.しかし眼圧の測定方法は,Schiotz眼圧計1),Goldmann圧平式眼圧計24),非接触型眼圧計5)とそれぞれ異なる.また対象は同一症例を1年間にわたって経過観察した報告は少なく1),健康診断などでその期間に得られた多数例の結果をレトロスペクティブに検討している報告が多い25).眼圧の季節変動を検討する際は個人差を排除する必要があり,そのためには同一症例での比較が好ましいと考える.そこで今回筆者らはプロスペクティブに,正常人の同一症例を1年間にわたり毎月眼圧を測定し,眼圧の季節変動を検討した.I対象および方法2007年1月から12月まで,毎月眼圧を測定できた正常人48例48眼を対象とした.男性22例,女性26例,年齢は〔別刷請求先〕設楽恭子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KyokoShidara,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN正常人での眼圧の季節変動設楽恭子*1井上賢治*1若倉雅登*1井上治郎*1富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医学部眼科学第二講座SeasonalVariationofIntraocularPressureinNormalSubjectsKyokoShidara1),KenjiInoue1),MasatoWakakura1),JiroInouye1)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)2ndDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicine目的:プロスペクティブに,正常人における眼圧の季節変動の有無を検討する.対象および方法:2007年1月から12月に毎月眼圧を測定できた正常人48例48眼を対象とした.眼圧は毎月20±3日にGoldmann圧平式眼圧計で測定した.季節の振り分けは春35月,夏68月,秋911月,冬122月とし,各季節の平均眼圧値を比較した.さらに年間の眼圧変動幅が小さい(4mmHg以下,13例)症例と大きい(5mmHg以上,35例)症例に分け,各季節の平均眼圧値を比較した.結果:各季節の眼圧は全症例では春14.4±2.7mmHg,夏14.1±2.5mmHg,秋13.4±2.5mmHg,冬14.5±2.9mmHgで,秋の眼圧が有意に低かった.眼圧変動幅が小さい症例では各季節の眼圧に差がなく,大きい症例では秋の眼圧が有意に低かった.結論:正常人の眼圧には季節変動がある.眼圧は秋に低い傾向が認められた.Weprospectivelyinvestigatedtheintraocularpressure(IOP)in48eyesof48normalsubjects(males:22eyes,females:26eyes;meanage:39.1±10.0yrs).WecheckedIOPviaGoldmannapplanationtonometeronthe20thofeverymonth(±3days)for1yearandcomparedthemeanIOPsoftheseasons.WedenedspringasMarchtoMay,summerasJunetoAugust,autumnasSeptembertoNovemberandwinterasDecembertoFebru-ary.Wedividedthesubjectsintotwogroups(IOPvariationmorethan5mmHgorlessthan4mmHg)andcom-paredthemeanIOPforeachseason.ThemeanseasonalIOPsforallsubjectswerespring:14.4±2.7mmHg,sum-mer:14.1±2.5mmHg,autumn:13.4±2.5mmHgandwinter:14.5±2.9mmHg.ThemeanIOPforautumnwassignicantlylowerthanthemeansforotherseasons;itwasalsosignicantlylowerthanforotherseasonsinsub-jectswhoseIOPvariedmorethan5mmHg.ThisstudysuggeststhatIOPofnormaleyesundergoesseasonalvaria-tion.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(5):685688,2009〕Keywords:季節変動,眼圧,前向き試験,正常人.seasonalvariation,intraocularpressure,prospective,normalsubjects.———————————————————————-Page2686あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009(106)2258歳,39.1±10.0歳(平均±標準偏差)であった.正常人の判定は,近視や乱視以外の眼科的疾患を有さず,眼底検査で視神経乳頭陥凹拡大など緑内障性の変化を認めず,Humphrey静的視野検査で異常がなく,かつ初回眼圧値が21mmHg以下とした.眼圧の測定方法は毎月20±3日の午前中に,Goldmann圧平式眼圧計で同一検者が同一の細隙灯顕微鏡を用いて測定した.眼圧は両眼測定したが,解析には右眼のデータを用いた.なお,検者には対象の前月までの眼圧値がわからない状況とした.1年間にわたり測定された眼圧値を以下の3項目で検討した.1)全例での年間の眼圧変動の有無.2)全例での眼圧の季節変動の有無.3)年間の眼圧の変動幅が4mmHg以下と5mmHg以上に分け,眼圧の季節変動の有無.季節の振り分けは気象庁のホームページと過去の報告3)により春は35月,夏は68月,秋は911月,冬は122月とした.ただし,年間の眼圧の変動幅は1年間で月別の眼圧の最高値と最低値の差とした.検定方法はANOVA(analysisofvari-ance,分散分析)およびBonferroni/Dunnet法を用いた.調査の実施にあたり対象には調査の主旨を説明し,インフォームド・コンセントを得た.II結果全症例での年間の眼圧変動はなかった(図1).全症例での各季節の眼圧は春14.4±2.7mmHg,夏14.1±2.5mmHg,秋13.4±2.5mmHg,冬14.5±2.9mmHgであった(図2).秋の眼圧は春,夏,冬に比べて有意に低かった(p<0.0001).年間の変動幅が4mmHg以下の症例は13例(27.1%),男性3例,女性10例,年齢は2251歳,34.0±10.6歳であった.各季節の眼圧は春13.5±2.9mmHg,夏13.8±2.9mmHg,秋13.3±3.0mmHg,冬13.4±2.9mmHgであった(図3).季節ごとで変動はなかった.年間の眼圧の変動幅が5mmHg以上の症例は35例(72.9%),男性19例,女性16例,年齢は2358歳,40.9±9.2歳であった.各季節の眼圧は,春14.9±2.9mmHg,夏14.3±2.4mmHg,秋13.4±2.4mmHg,冬15.0±2.9mmHgであった(図4).季節ごとの眼圧変動を認め,秋が春,夏,冬に比べて有意に低かった(p<0.0001).表1正常眼の眼圧変動地域対象(人)最高眼圧(mmHg)時期最低眼圧(mmHg)時期Blumenthal1)イスラエル6317.7±0.51,2月14.1±0.47,8月Klein2)アメリカ4,92615.714月15.279月逸見3)山梨県1915.72,4月13.69月Giufre4)イタリア1,06215.4±4.4冬14.3±3.4秋森5)岩手県6,33612.1±2.712月11.0±2.58月01月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月2月眼圧(mmHg)201816141210図1年間の眼圧変動眼圧図3年間の変動幅が4mmHg以下の症例での各季節の眼圧***眼圧図2全症例での各季節の眼圧*p<0.0001,ANOVAおよびBonferroni/Dunnet.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009687(107)III考按正常人の眼圧の季節変動に関する報告がある15).Blu-menthalら1)はイスラエルで63人の正常人の眼圧をSchiotz眼圧計で1年間のうち8回以上は測定して比較した.眼圧は11月から2月にかけて有意に高く,7月と8月が低かった.Kleinら2)はアメリカで住民健診での4,926人(男性2,135人,女性2,721人)の眼圧をGoldmann圧平式眼圧計で測定して比較した.眼圧は1月から4月にかけて有意に高く,7月から9月にかけて低かった.Giufreら4)はイタリアで住民健診での1,062人(男性474人,女性588人)の眼圧をGold-mann圧平式眼圧計で測定して比較した.眼圧は冬が春,夏,秋に比べて有意に高かった.日本では逸見ら3)は19人の正常人の眼圧をGoldmann圧平式眼圧計で測定して比較した.眼圧は2月と4月が高く,7月から9月にかけて低かった.森ら5)は集団検診で6,336人(男性3,687人,女性2,649人)の眼圧を非接触型眼圧計で測定して比較した.眼圧は12月が高く,8月が低かった.12月の眼圧は11月を除いた4月から10月までのすべての月に対して有意に高かった.しかし対象月は4月から12月までで,1月から3月までは調査から除外されていた.いずれの報告15)も眼圧は季節変動を有し,冬が高かった.今回の1年間にわたる正常人48名の眼圧変動は各月ごとには差はなかったが,9月から12月にかけて眼圧が低い傾向を認めた.これは眼圧には季節変動を呈するという過去の報告15)と一致するが,冬に眼圧が高くはなく,秋に眼圧が低かった.さらに,今回は年間の眼圧の変動幅での季節変動を検討した.年間の眼圧の変動幅が5mmHg以上の変動の大きい症例では眼圧は季節変動を呈しており,そのような症例が72.9%存在した.しかし,今回は症例数が少なく,また60歳以上の高齢者が対象に含まれていないため今後さらなる検討が必要である.ヒトの眼圧調整機序については自律神経機能が深く関与していると考えられ,第一は,交感神経のa受容体刺激により毛様体血管が収縮して限外濾過が減少する.第二は,毛様体のb受容体を介してATP(アデノシン三リン酸)よりサイクリックAMP(アデノシン一リン酸)を生じる過程が房水産生に重要な役割を果たし,b遮断薬が房水産生を抑制する.第三は,副交感神経刺激により毛様体筋が収縮し線維柱帯間隙を拡大することによって房水排出率を増加させることが知られている6).交感神経機能は寒冷にさらされたときに亢進し,血中および尿中カテコラミン含量は冬に有意な上昇が認められ,そのため冬に交感神経機能が亢進すると考えられている.その結果,カテコラミンの上昇がb受容体を介した房水産生を増加させ,寒冷期に眼圧が上昇すると考えられている7,8).気象庁から発表されたデータによると,2007年の年平均気温は全国的に高く,東京も同様で,さらに記録的な暖冬であった9).特に,1月,2月,8月,9月は例年に比し平均気温は1.5度高く,4月と7月は低温であった.今回,季節の振り分けを春は35月,夏は68月,秋は911月,冬は122月としており,春の気温は例年通りであり,夏は7月が低く8月が高かったことから気温は例年通り,秋は9月が例年以上に気温が高く,冬も1月,2月に気温が高かったことから1年を通してみると,例年よりも秋と冬の気温が高かったことがわかる.このことが,今回秋の眼圧が他の季節に比して低かったことの一因と考えられる.また,冬は過去の報告15)と同様に眼圧が高い傾向は認めたが,有意差がなかったのは,冬が例年より気温が高かったことが影響していると考えられる.逸見ら3)によると過去の報告で眼圧の季節変動を認めているのはいずれも年間の平均気温の差が15℃以上の地域である.2007年の東京の年平均気温は,最低気温は2月の8.6℃,最高気温は8月の29.0℃で,最高と最低気温で15℃以上の差がある.日本では年間の寒暖の差があり,冬に気温が下がるので眼圧の季節変動が起こりやすいと考えられる.今回筆者らは,プロスペクティブに正常人の眼圧変動を調査した.正常人には従来から指摘されているとおり眼圧の季節変動があり,秋に低かった.今後は緑内障患者での眼圧の季節変動を検討する予定である.文献1)BlumenthalM,BlumenthalR,PeritzEetal:Seasonalvariationinintraocularpressure.AmJOphthalmol69:608-610,19702)KleinBEK,KleinR,LintonKLPetal:Intraocularpres-sureinanAmericancommunity.InvestOphthalmolVisSci33:2224-2228,19923)逸見知弘,山林茂樹,古田仁志ほか:眼圧の季節変動.日眼会誌98:782-786,19944)GiufreG,GiammancoR,DardanoniGetal:Prevalenceofglaucomaanddistributionofintraocularpressureinapopulation.ActaOphthalmolScand73:222-225,19955)森敏郎,谷藤泰寛,玉田康房ほか:集団検診受診者から***0春秋冬夏眼圧(mmHg)201816141210図4年間の変動幅が5mmHg以上の症例での各季節の眼圧*p<0.0001,ANOVAおよびBonferroni/Dunnet.———————————————————————-Page4688あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009(108)測定した眼圧の分析.あたらしい眼科14:437-439,19976)BartelesSP,RothO,JumbrattMMetal:Pharmacologicalefectsoftopicaltimololintherabbiteye.InvestOphthal-molVisSci19:1189-1197,19807)長滝重智,比嘉敏明:房水産生機構.緑内障の薬物療法(東郁郎編),p12-19,ミクス,19908)古賀貴久,谷原秀信:緑内障と眼圧の季節変動.臨眼55:1519-1522,20019)気象庁.平成20年報道発表資料.気象統計情報:http://www.date.jma.go.jp***