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タフルプロスト点眼薬のβ 遮断点眼薬への追加効果

2010年7月30日 金曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(99)959《第20回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科27(7):959.962,2010cはじめに緑内障の進行を予防する効果的な治療方法として,エビデンスが得られているのは,眼圧下降のみである1).1999年にプロスト系プロスタグランジン(PG)関連薬が臨床の場に登場して以来,これまで,長年,使用されてきたb遮断薬に代わり,PG関連薬が第一選択となる症例が増えている.その理由として,PG関連薬は,1日1回の点眼で強力な眼圧下降効果が得られること,全身への副作用が少ないことがあげられる2).現在,国内では4種類のプロスト系PG関連薬が臨床使用されている.そのなかで,タフルプロスト点眼薬は,唯一,国内で開発されたプロスト系PG関連薬であり3),強力な眼圧下降効果が示されている4,5).眼圧下降機序には,房水産生,経Schlemm管流出路,経ぶどう膜強膜流出路が関与するが,各薬剤により房水動態に及ぼす影響は異なる.緑内障の薬物治療は,通常,単剤の点眼薬から開始する6)が,単剤では,目標眼圧に到達しない症例も多数ある.眼圧下降薬を併用する場合,各薬剤の作用機序を考慮して選択する必要がある.たとえば,房水産生を抑制するb遮断薬には,房水流出を促進するPG関連薬を組み合わせることが選択肢の一つである.しかし,臨床では,個体の薬剤反応性も大きく,薬剤の相加効果,相殺効果は必ずしも理論どおりにはいかない7).これまで,わが国ではb遮断薬にタフルプロスト点眼薬を追加投与した臨床報告はない.今回,(広義)開放隅角緑〔別刷請求先〕比嘉利沙子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:RisakoHiga,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANタフルプロスト点眼薬のb遮断点眼薬への追加効果比嘉利沙子*1井上賢治*1若倉雅登*1富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医学部眼科学第二講座AdditiveEffectofTafluprostwithb-BlockerRisakoHiga1),KenjiInoue1),MasatoWakakura1)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)2ndDepartmentofOphthalmology,UniversityofTohob遮断点眼薬を3カ月間以上単剤使用している原発開放隅角緑内障患者にタフルプロスト点眼薬を追加投与した21例21眼の有効性と安全性を検討した.眼圧は,追加前,投与1カ月後,3カ月後を比較した.問診と細隙灯顕微鏡所見より安全性を確認した.眼圧は,追加前18.0±2.0mmHg,1カ月後15.7±1.6mmHg,3カ月後15.2±2.2mmHgで,タフルプロスト点眼薬追加後,有意に下降した(p<0.0001).眼圧下降幅は,1カ月後2.2±1.7mmHg,3カ月後2.8±1.8mmHgで,両者に有意差はなかった.眼圧下降率は,1カ月後12.0±8.0%,3カ月後15.6±9.1%で,両者に有意差はなかった.副作用として,タフルプロスト点眼薬追加後より1例に眼瞼発赤を認めた.タフルプロスト点眼薬をb遮断薬に追加投与した場合,眼圧は有意に下降し,眼圧下降効果は3カ月間持続した.安全性も良好であった.In21eyesof21glaucomapatientstreatedwithb-blockermonotherapy,weevaluatedtheefficacyandsafetyoftafluprostaddition.Intraocularpressure(IOP)wasmeasuredbeforeandat1and3monthsaftertafluprostaddition.Safetywasjudgedonthebasisofquestionnaireresponsesandslitlampfindings.IOPdecreasedsignificantly,from18.0±2.0mmHgto15.7±1.6mmHgafter1month,andto15.2±2.2mmHgafter3months.IOPreductionwas2.2±1.7mmHgafter1monthand2.8±1.8mmHgafter3months;therewerenosignificantdifferences.IOPreductionrateswas12.0±8.0%after1monthand15.6±9.1%after3months;therewerenosignificantdifferences.Adverseeffectssuchaslidrednesswereobservedin1patient.Additionalstudyisthereforeneededtofurtherestablishtheefficacyandsafetyofadjunctiveuseoftafluprostwithb-blockerfor3months.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(7):959.962,2010〕Keywords:タフルプロスト,b遮断薬,追加効果,眼圧,有効性,安全性.tafluprost,b-blocker,additiveeffect,intraocularpressure,efficacy,safety.960あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010(100)内障患者を対象とし,b遮断薬にタフルプロスト点眼薬を追加投与した際の有効性と安全性を検討した.I対象および方法登録期間は2009年1月から8月までで,井上眼科病院で行った.症例の選択基準は,①(広義)開放隅角緑内障患者,②(広義)b遮断点眼薬を3カ月間以上単剤使用している患者,③20歳以上で同意能力がある患者,④文書で同意が得られた患者の4項目をすべて満たしていることを条件とした.副腎皮質ステロイド(点眼または内服)使用中のほか,3カ月以内の内眼手術,角膜屈折矯正手術,虹彩炎の既往歴のある症例は除外した.点眼は,使用中のb遮断薬(1日1回の点眼薬は朝点眼)にタフルプロスト点眼薬を1日1回夜に追加投与した.眼圧は,Goldmann圧平式眼圧計で,追加前,投与1カ月後,3カ月後に,診療時間内(9時から17時)の同一時間帯に同一検者が測定した.眼圧の解析は,1例1眼とし,両眼とも選択基準を満たした症例では,追加前の眼圧が高い眼,同値の場合は右眼を解析眼とした.眼圧は,b遮断薬単剤使用中の3回の平均値を基準値とし,1カ月後,3カ月後と比較した.統計学的解析には,repeatedANOVAおよび多重比較(Bonferroni/Dunnet法)を用いた.眼圧下降幅,眼圧下降率を算出し,それぞれ投与1カ月後と3カ月後を比較した.統計学的解析には,対応のあるt検定を用いた.有意水準を0.05以下とした.安全性については,問診と細隙灯顕微鏡の前眼部所見より判定した.本臨床研究は,井上眼科病院倫理審査委員会の承認(2008年11月20日取得)を得て実施した.II結果登録数は,22例33眼であった.そのうち,1例は,タフルプロスト点眼後より眼瞼発赤を認め点眼を中止としたため,脱落症例とした.解析症例数は,21例21眼(pseudophakia4例4眼を含む)であった.経過病型は,原発開放隅角緑内障7例(33%),正常眼圧緑内障14例(67%)であった.性別は男性7例,女性14例,年齢は63.8±16.1歳(平均±標準偏差)(20.86歳),観察期間は3.2±0.4カ月(2.6.4.0カ月)であった.追加前の平均眼圧は18.0±2.0mmHg(15.22mmHg)であった.Humphrey視野中心30-2プログラムSITA-standardのmeandeviation(MD)値は,.6.54±4.83(.18.01..0.37dB)であった.使用しているb遮断薬は,熱応答ゲル化,イオン応答ゲル化,水溶性を含むマレイン酸チモロールが10眼(47%),持続型を含む塩酸カルテオロールが6眼(29%),ニプラジロールが3眼(14%),塩酸レボブノロールが2眼(10%)であった(図1).1.有効性眼圧は,追加前18.0±2.0mmHg,投与1カ月後15.7±1.6mmHg,3カ月後15.2±2.2mmHgであった.眼圧は,投与1カ月後,3カ月後とも,追加前と比較して,有意に下降した(p<0.0001)(図2).眼圧下降幅は,1カ月後2.2±1.7mmHg,3カ月後2.8±1.8mmHgで,有意差を認めなかった(p=0.21)(図3).眼圧下降率は,1カ月後12.0±8.0%,3カ月後15.6±9.1%で,有意差を認めなかった(p=0.18)(図4).眼圧下降率10%未水溶性マレイン酸チモロール(1日2回朝夕点眼)ニプラジロール(1日2回朝夕点眼)塩酸カルテオロール(1日2回朝夕点眼)塩酸レボブノロール(1日2回朝夕点眼)熱応答ゲル化マレイン酸チモロール(1日1回朝点眼)イオン応答ゲル化マレイン酸チモロール(1日1回朝点眼)持続型塩酸カルテオロール(1日1回朝点眼)4眼(19%)4眼(19%)3眼(14%)3眼(14%)2眼(10%)2眼(10%)3眼(14%)図1使用しているb遮断点眼薬20181614120追加前1カ月後眼圧(mmHg)3カ月後22****図2タフルプロスト点眼薬追加前後の眼圧眼圧は点眼前に比較して,点眼投与1カ月後および3カ月後で有意に下降した.repeatedANOVAおよび多重比較(Bonferroni/Dunnet法)**p<0.0001.64201カ月後眼圧下降幅(mmHg)3カ月後53178NS図3タフルプロスト点眼薬追加後の眼圧下降幅(101)あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010961満が8眼(38.1%),20%以上が9眼(42.9%),30%以上の症例はなかった.2.安全性脱落症例1例(4.8%)は,タフルプロスト点眼開始時より,眼瞼発赤がみられたが,点眼中止により改善した.2例(9.5%)は,b遮断薬使用中より,軽度の表層角膜炎を認めたが,タフルプロスト点眼薬追加投与による悪化はみられなかった.結膜充血の自覚は,なしか軽微であり,点眼継続不可能な症例はなかった.また,眼症状以外の全身的副作用は,自覚的に認めなかった.III考按b遮断点眼薬単剤では,眼圧下降効果が不十分と判断した場合,眼圧下降効果が高いPG関連薬への切り替え8)またはPG関連薬や炭酸脱水酵素阻害薬などの追加投与を行う6).b遮断薬には,short-termescape,long-termdriftの2層性の眼圧変化が生じることが知られている9).今回は,b遮断薬を3カ月間以上単剤使用している患者で,さらに安定した眼圧が持続している症例を選択した.b遮断薬では,眼圧の変動が大きいが,本研究では点眼時間と眼圧測定時間を一貫することはできなかった.眼圧測定時間により,ピーク値あるいはトラフ値を測定している可能性がある.追加投与前の基準値となる眼圧は,眼圧変動も考慮して,b遮断薬使用期間中の3回の平均値とした.追加投与後の眼圧は,個々の症例において,同一時間帯で測定した.わが国では,b遮断薬にタフルプロスト点眼薬を追加投与した臨床報告はない.海外では,b遮断薬にタフルプロスト点眼薬を追加投与した臨床報告が一報10)ある.Egorovら10)は,チモロール点眼薬使用時の眼圧が22.30mmHgの緑内障,高眼圧症患者にタフルプロスト点眼薬を追加投与した場合,眼圧下降幅は6.22.6.79mmHgと有意に下降したと報告している.本研究では,投与3カ月後の眼圧下降幅は2.8±1.7mmHgであった.既報との眼圧下降幅の差は,追加投与前の眼圧の違いが大きな要因と考える.b遮断薬に他のPG関連薬を追加投与した臨床報告も散見される11,12).中井ら11)は,b遮断薬にラタノプロスト点眼薬を追加投与した場合,眼圧下降率は19.4±10.3%と報告している.Orengo-Naniaら12)は,b遮断薬にトラボプロスト点眼薬を追加投与した場合,眼圧下降幅は5.7.7.2mmHg,眼圧下降率は23.1.27.7%と報告している.試験デザインが異なるため,単純に数値を比較することはできないが,b遮断薬に他のPG関連薬を追加投与すると,有意に眼圧が下降することが示されている.タフルプロスト点眼薬の単独投与では,桑山ら5)は投与1カ月後の下降幅は6.6±2.5mmHg(投与前眼圧23.8±2.3mmHg)であったと報告している.タフルプロスト点眼薬は,第1剤として使用した場合に比べ,本研究のように第2剤目として使用した場合では,眼圧下降幅は小さくなることが推察される.眼圧下降薬を追加する場合,同じ作用機序を有する薬剤では,理論上,眼圧下降に対する相加効果はない.しかし,臨床では,薬剤の相加効果,相殺効果は必ずしも理論どおりにはいかない.副交感神経刺激薬であるピロカルピンは,経Schlemm管流出路の排出は促進するが,経ぶどう膜強膜流出路からの流出は減少させる.一方,PG関連薬は経ぶどう膜強膜流出路からの流出を促進する.一見,両薬剤は,相反する作用機序を有するようにみえるが,Fristromら7)は,ピロカルピンとラタノプロストを併用した場合の眼圧下降に対する相加効果を報告している.実際に,眼圧下降薬の併用療法を行う場合,作用機序や薬剤のもつ眼圧下降率のみでは,眼圧下降効果を予想することはむずかしい.本研究では,投与3カ月後の眼圧下降率は,15.6±9.1%であった.30%以上の眼圧下降が得られた症例はなかったが,20%以上の眼圧下降が得られた症例は9眼(42.9%)であった.一方,眼圧下降率が10%未満のノンレスポンダーも8眼(38.1%)存在したため,標準偏差値は大きくなったと考える.タフルプロスト点眼薬のおもな副作用は,結膜充血・眼充血(27.3%),眼掻痒症(9.1%),眼刺激(7.3%)と報告されている4).そのうち,中等度以上の副作用は,紅斑および眼瞼紅斑の2例(3.6%)のみと報告されている4).今回,1例(4.8%)は眼瞼発赤がみられ点眼薬を中止したため除外症例とした.この症例は,タフルプロスト点眼薬の中止により,症状は改善している.自覚的な結膜充血は,なしか軽微であり,点眼薬の継続は除外症例を除き,全例とも可能であった.虹彩や眼瞼の色素沈着や睫毛異常などのPG関連薬特有の眼合併症は,今回の経過観察期間中にはみられなかったが,今後,注意深く観察していく必要がある.緑内障治療は,長期にわたる薬物療法が中心であり,眼圧1カ月後眼圧下降率(%)3カ月後30NS20100402515535図4タフルプロスト点眼薬追加後の眼圧下降率962あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010(102)下降効果を最大に得るには,点眼薬のアドヒアランスも重要な要素である.現在,b遮断薬と各PG関連薬の合剤の臨床報告13,14)も散見される.今後,これらの臨床成績にも注目したい.結論として,タフルプロスト点眼薬は,b遮断点眼薬に追加投与した場合,有意に眼圧が下降し,眼圧下降効果は3カ月間持続した.点眼薬の安全性も良好であった.文献1)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudy-Group:Comparisonofglaucomatousprogressionbetweenuntreatedpatientswithnormal-tensionglaucomaandpatientswiththerapeuticallyreducedintraocularpressure.AmJOphthalmol126:487-497,19982)MishimaHK,MasudaK,KitazawaYetal:Acomparisonoflatanoprostandtimololinprimaryopen-angleglaucomaandocularhypertension.A12-weekstudy.ArchOphthalmol114:929-932,19963)NakajimaT,MatsugiT,GotoWetal:NewfluoroprostaglandinF2aderivativeswithprostanoidFP-receptoragonisticactivityaspotentocular-hypotensiveagents.BiolPharmBull26:1691-1695,20034)桑山泰明,米虫節夫:0.0015%DE-085(タフルプロスト)の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした0.005%ラタノプロストとの第III相検証的試験.あたらしい眼科25:1595-1602,20085)TakagiY,NakajimaT,ShimazakiAetal:PharmacologicalcharacteristicsofAFP-168(Tafluprost),anewprostanoidFPreceptoragonist,asanocularhypotensivedrug.ExpEyeRes78:767-776,20046)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン(第2版).日眼会誌110:777-814,20067)FristromK,NilssonSE:InteractionofPhXA41,anewprostaglandinanalogue,withpilocarpine.Astudyonpatientswithelevatedintraocularpressure.ArchOphthalmol111:662-665,19938)WatsonP,StjernschantzJ,LatanoprostStudyGroup:Asix-months,randomized,double-maskedstudycomparinglatanoprostwithtimololinopen-angleglaucomaandocularhypertension.Ophthalmology103:126-137,19969)BogerWP,PuliafitoCA,SteinertRFetal:Long-termexperiencewithtimololophthalmicsolutioninpatientswithopenangleglaucoma.Ophthalmology58:259-267,197810)EgorovE,RopoA:Adjunctiveuseoftafluprostwithtimololprovidesadditiveeffectsforreductionofintraocularpressureinpatientswithglaucoma.EurJOphthalmol19:214-222,200911)中井正基,井上賢治,若倉雅登ほか:bブロッカー点眼薬にラタノプロストを追加した症例の眼圧下降効果.あたらしい眼科22:693-696,200512)Orengo-NaniaS,LandryT,VonTressMetal:Evaluationoftravoprostasadjunctivetherapyinpatientswithuncontrolledintraocularpressurewhileusingtimolol0.5%.AmJOphthalmol132:860-868,200113)ArendKO,RaberT:Observationalstudyresultsinglaucomapatientsundergoingregimenreplacementtofixedcombinationtravoprost0.004%/timolol0.5%inGerman.JOcularPharmacoTher24:414-420,200814)RossiGC,PasinettiGM,BracchinoMetal:Switchingfromconcomitantlatanoprost0.005%andtimolol0.5%toafixedcombinationoftravoprost0.004%/timolol0.5%inpatientswithprimaryopen-angleglaucomaandocularhypertension:a6-month,multicenter,cohortstudy.OpinPharmacoTher10:1705-1711,2009***

ソフトコンタクトレンズ上から点眼可能な抗アレルギー剤(C3AL)の有効性および安全性の臨床的検討

2009年8月31日 月曜日

———————————————————————-Page1(137)11430910-1810/09/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科26(8):11431152,2009c〔別刷請求先〕宮永嘉隆:〒134-0088東京都江戸川区西葛西5-4-9西葛西・井上眼科病院Reprintrequests:YoshitakaMiyanaga,M.D.,NishikasaiInoueEyeHospital,5-4-9Nishikasai,Edogawa-ku,Tokyo134-0088,JAPANソフトコンタクトレンズ上から点眼可能な抗アレルギー剤(C3AL)の有効性および安全性の臨床的検討宮永嘉隆*1,a村上晶*2中安清夫*3木村一弘*4勝海修*5佐野研二*6工藤昌之*7樋口裕彦*8糸井素純*9,b*1西葛西・井上眼科病院*2順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科*3中安眼科クリニック*4井上眼科病院付属駿河台診療所*5西葛西井上眼科クリニック*6あすみが丘佐野眼科*7道玄坂糸井眼科医院*8ひぐち眼科*9糸井眼科医院(a:治験調整医師,b:医学専門家)ClinicalEvaluationofEcacyandSafetyofC3AL,anOphthalmicSolutionInstillablewithoutSoftContactLensRemovalYoshitakaMiyanaga1),AkiraMurakami2),KiyooNakayasu3),KazuhiroKimura4),OsamuKatsumi5),KenjiSano6),MasayukiKudo7),HirohikoHiguchi8)andMotozumiItoi9)1)NishikasaiInoueEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,JuntendoHospital,JuntendoUniversitySchoolofMedicine,3)NakayasuEyeClinic,4)SurugadaiClinic,InoueEyeHospital,5)NishikasaiInoueEyeClinic,6)AsumigaokaSanoEyeClinic,7)DogenzakaItoiEyeClinic,8)HiguchiEyeClinic,9)ItoiEyeClinicC3ALは防腐剤として塩化ベンザルコニウムを含まず,ソフトコンタクトレンズの上から点眼可能な「目のかゆみ」などの外眼部炎症症状に有効な一般用医薬品の点眼薬として開発された.今回,ソフトコンタクトレンズを使用しており,装用中に「目のかゆみ」などの外眼部炎症に起因する自覚症状を有する患者104例に,ソフトコンタクトレンズの上からC3ALを2週間投与し,自覚症状に対する有効性および安全性について検討した.その結果,C3ALの点眼による自覚症状の改善率は,「目のかゆみ」で87.3%,「目の疲れ」で78.2%,「目のかわき」で83.3%,「目のかすみ」で81.6%,「異物感」で85.7%であった.また,点眼薬の副作用は「上眼瞼の皮膚のただれ」1件(発現率1.0%)のみで,その他の副作用は一切認められなかった.以上より,C3ALは外眼部炎症に伴う自覚症状の改善に有効であり,ソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能な点眼薬であることが確認された.C3ALisanover-the-counter(OTC)ophthalmicsolutionforimprovingmildsymptomsofexternalocularinammation,suchaseyeitchiness,withouttheneedforsoftcontactlensremoval.TheecacyandsafetyofC3ALwereevaluatedin104patientswithmildexternalocularinammationwhousedsoftcontactlensesandnoticedsubjectivesymptomsofeyeitchinessetc.whilewearingthecontactlenses.C3ALwasadministeredfor2weeksinthepresenceofsoftcontactlenses.Improvementratesforvarioussymptomswere:eyeitchiness87.3%,eyefatigue78.2%,eyedryness83.3%,blurredvision81.6%andforeignbodysensation85.7%.Therewasonly1instanceofadversereaction:soreuppereyelid(incidence:1.0%).TheseresultssuggestthatC3ALiseectiveinimprovingmildsymptomsofexternalocularinammation,andissafeenoughtopermitinstillationwithoutsoftcontactlensremoval.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(8):11431152,2009〕Keywords:C3AL,ソフトコンタクトレンズの上からの点眼,外眼部炎症性疾患,アレルギー,安全性,一般用医薬品.C3AL,instillationwithoutremovingsoftcontactlenses,externalocularinammatorydisease,allergy,safety,over-the-counterdrug.———————————————————————-Page21144あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(138)はじめに近年,1日使い捨てソフトコンタクトレンズや頻回交換ソフトコンタクトレンズなどの登場により,ソフトコンタクトレンズ使用者が急増した.ソフトコンタクトレンズ使用者の多くは,軽度のドライアイや軽微な外眼部炎症に伴う自覚症状を伴っており,ソフトコンタクトレンズ上からの点眼薬を希望する人も少なくない.しかし,医療用医薬品・一般用医薬品を問わず,多くの点眼薬はソフトコンタクトレンズ上からの点眼は禁忌である.他覚所見が乏しいケースでは,ソフトコンタクトレンズの装用に伴う「目のかゆみ」,「目のかわき」,「目の疲れ」などの自覚症状に対して医薬品を処方するには,さまざまな制約があり,一般用医薬品の存在は必要不可欠である.一部,「目のかわき」や「目の疲れ」に対しては,ソフトコンタクトレンズ上からの点眼が可能な一般用医薬品の点眼薬(以下,「一般用点眼薬」とする)が存在するが,「目のかゆみ」に対しては,ソフトコンタクトレンズ上からの点眼が可能な一般用点眼薬はこれまで存在しなかった.ソフトコンタクトレンズ装用時に,「目のかゆみ」を生じた場合は,一般的にソフトコンタクトレンズをはずして点眼することが推奨されている2).しかし,レンズケアの問題や経済的な理由により,ソフトコンタクトレンズをはずさずに点眼薬を使用する人や,点眼薬を使用できないために目をこすってしまう人も少なくない.このような行為は,結果的に角結膜上皮を傷つけてしまい,症状を悪化させる可能性がある.また,ソフトコンタクトレンズをはずして点眼し,そのままレンズケアを行わないでレンズを再装用したためにトラブルにあう人も少なくない.このような状況のなか,「目のかゆみ」に対して有効なソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能な点眼薬が望まれていた.そこで,医療機関での眼科的治療に至らない軽度のアレルギー性結膜炎などの外眼部炎症性疾患に伴う,「目のかゆみ」などの症状に対して,コンタクトレンズの上から点眼可能な新しい一般用点眼薬C3ALが開発された.C3ALは有効成分としてグリチルリチン酸二カリウム0.125%および塩酸ピリドキシン0.010%を含有しており,防腐剤としてソフトコンタクトレンズ上からの点眼においても安全性が高いとされるソルビン酸カリウム3,4)を配合している.C3AL配合成分のソフトコンタクトレンズへの吸着および残存については,含水性ソフトコンタクトレンズのグループIIVより各1種類と非含水性ソフトコンタクトレンズ1種類の計5種類を選択して,C3ALへの浸漬による吸着実験と生理食塩水への浸漬による放出実験を行い,レンズへの配合成分の残存は認められないことを確認した.ソフトコンタクトレンズの形状,外観,ベースカーブ,直径,レンズ度数,含水率といった物性にも影響はなかった.本試験では,軽度の外眼部炎症性疾患を伴うソフトコンタクトレンズ使用者で,装用中に「目のかゆみ」,「目の疲れ」,「目のかわき」,「目のかすみ(目やにの多いときなど)」,「異物感」の自覚症状を有する患者を対象として,C3ALの自覚症状に対する有効性および安全性について検討した.I試験方法1.医療機関および試験期間本試験は表1に示した7医療機関で2005年5月より同年11月の間に実施された.なお,本試験は治験審査委員会で審査・承認された後,ヘルシンキ宣言の倫理の概念,薬事法第14条第3項および同法第80条の2に規定する基準,ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」を遵守して実施された.2.対象試験期間中に表1に示す医療機関に来院した軽度の外眼部炎症性疾患(アレルギー性結膜炎,慢性結膜炎,乾性角結膜炎など)の患者で,ソフトコンタクトレンズ(表2,グループIIV)をほぼ毎日,終日装用または連続装用しており,装用中に「目のかゆみ」,「目の疲れ」,「目のかわき」,「目のかすみ(目やにの多いときなど)」,「異物感」の自覚症状を有する15歳以上の患者を対象とした(ただし,「目のかゆみ」の自覚症状を有さない患者は対象から除外した).なお,ソフトコンタクトレンズは,ほぼ毎日,終日装用ま表1実施機関および担当医師実施機関担当医師西葛西井上眼科クリニック勝海修,山田はづき,久間木哲子順天堂大学医学部附属順天堂医院村上晶,土至田宏中安眼科クリニック中安清夫井上眼科病院付属駿河台診療所木村一弘あすみが丘佐野眼科佐野研二道玄坂糸井眼科医院工藤昌之ひぐち眼科樋口裕彦表2ソフトコンタクトレンズのFDA分類グループ分類基準I含水率が50%未満で非イオン性であるものII含水率が50%以上で非イオン性であるものIII含水率が50%未満でイオン性であるものIV含水率が50%以上でイオン性であるもの※原材料ポリマーの構成モノマーのうち,陰イオンを有するモノマーのモル%が1%以上であるものをイオン性,1%未満であるものを非イオン性とする.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091145(139)たは連続装用していることを採用基準とした.治験責任医師または治験分担医師は,試験開始前に試験内容について被験者に十分に説明を行い,自由意思による同意を文書により得た(被験者が未成年者の場合は本人と同様に代諾者から文書による同意を得た).3.試験薬C3ALは100ml中にグリチルリチン酸二カリウムを0.125gと塩酸ピリドキシンを0.010g含有する点眼薬である.4.投与方法ソフトコンタクトレンズの上から,C3ALを1回12滴,1日56回,2週間点眼させ,投与開始時,1週間後,2週間後に,自覚症状の問診および眼科的検査を行った(表3).被験者には試験開始前のコンタクトレンズの使用状況を確認し,レンズケアを変更しないように指導した.試験期間中は,すべての点眼薬(医療用,一般用を問わず),並びにステロイド剤,非ステロイド系消炎鎮痛剤,抗精神病剤,抗ヒスタミン剤,抗アレルギー剤,眼精疲労などの効能を有するビタミン剤およびATP(アデノシン三リン酸)製剤など,C3ALの評価に影響を及ぼすと考えられる薬剤(外皮用剤による局所投与は除く)の併用は禁止した.5.観察,検査項目a.患者背景性別,年齢,診断名,ソフトコンタクトレンズの使用経験年数,現在使用している(試験薬の投与期間中に装用する)ソフトコンタクトレンズの種類と使用経験年月日,装用状況を調査した.b.自覚症状目のかゆみ,目の疲れ,目のかわき,目のかすみ(目やにの多いときなど),異物感の5項目について,表4に示す基準で,なし(0),軽度(1),中等度(2),重度(3)の4段階で判定した.表3試験スケジュール項目投与開始時1週間後(7±2日後)2週間後(14±3日後)・中止時患者背景○──症状程度自覚症状目のかゆみ,目の疲れ,目のかわき,目のかすみ(目やにの多いときなど),異物感○○○他覚所見眼瞼結膜充血,眼瞼結膜浮腫,眼瞼結膜濾胞,上眼瞼結膜乳頭増殖,眼球結膜充血,眼球結膜浮腫,輪部充血,角膜上皮障害,角膜浮腫,角膜血管新生フィッティング検査○○○コンタクトレンズ矯正視力検査○─○コンタクトレンズの表面検査○○○有効性自覚症状別改善度─○○安全性有害事象(副作用)─○○概括安全度──○表4自覚症状およびその程度症状程度目安目のかゆみ3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)かゆくて我慢できないかゆい少しかゆいが我慢できるかゆくない目の疲れ3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)疲れて我慢できない疲れる少し疲れるが我慢できる疲れはない目のかわき3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)かわいて我慢できないかわく少しかわくが我慢できるかわかない目のかすみ(目やにの多いときなど)3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)多量にでて朝,瞼がくっついている眼脂が多くて拭う必要あり眼脂が粘つく感じほとんどない異物感3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)たえずゴロゴロして眼が開けられないゴロゴロするが努力すれば眼が開けられるときどきゴロゴロするない———————————————————————-Page41146あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(140)c.他覚所見眼瞼結膜充血,眼瞼結膜浮腫,眼瞼結膜濾胞,上眼瞼結膜乳頭増殖,眼球結膜充血,眼球結膜浮腫,輪部充血,角膜上皮障害,角膜浮腫,角膜血管新生の10項目について,表5の基準で判定した.なお,角膜上皮障害は原則としてフルオレセイン染色を行い観察した.d.コンタクトレンズ矯正視力検査使用したソフトコンタクトレンズによる矯正視力(コンタクトレンズ矯正視力)検査と追加矯正視力(コンタクトレンズ最高矯正視力)検査を実施した.e.フィッティング検査フィッティング検査は,細隙灯顕微鏡を用い,レンズフィッティング,安定位置および軸の回転(トーリックレンズのみ)について,それぞれ次の基準で評価した.フィッティング:Normal,Loose,Tight安定位置:中央,上方,下方,耳側方,鼻側方表5他覚所見およびその程度症状程度目安眼瞼結膜充血3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)眼瞼結膜全体(上・下)の発赤で,個々の血管が識別不能眼瞼結膜全体(上・下)に多数の血管拡張眼瞼の一部分に数本の血管拡張所見なし眼瞼結膜浮腫3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)上・下眼瞼結膜が水泡状に腫脹上・下眼瞼結膜が全体にびまん性に薄く腫脹する上・下眼瞼結膜にわずかに腫脹がある所見なし眼瞼結膜濾胞3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)下眼瞼全体(円蓋部も含む)に全面にある下眼瞼全体(円蓋部も含む)に10十数個程度認める下眼瞼結膜円蓋部に数個認める所見なし上眼瞼結膜乳頭増殖3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)瞼板部全面に直径0.61mmのものを認める瞼板部全面に直径0.30.5mmのものを認める瞼板部に一部,直径0.10.2mmのものを認める所見なし眼球結膜充血3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)全体の血管が拡張して白眼の存在がわかりにくい多数の血管拡張がある数本の血管拡張がある所見なし眼球結膜浮腫3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)結膜が膨隆し瞼裂外へ突出全体に薄くびまん性浮腫を認める一部分に浮腫を認める所見なし輪部充血3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)全体の血管が拡張している多数の血管拡張があるわずかに血管拡張がある所見なし角膜上皮障害3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)面状またはびらん点状多数で広範囲なもの(びまん性)点状少数で限局性のもの(スマイルマークパターンを含む)なし角膜浮腫3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)角膜全体の浮腫実質の浮腫(Descemet膜皺襞を含む)上皮の浮腫なし角膜血管新生3(重度)2(中等度)1(軽度)0(なし)角膜輪部から2mm以上で多方向または実質内血管侵入角膜輪部から2mm以上角膜輪部から2mm未満なし———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091147(141)軸の回転※:回転なし,時計回りに()°回転,反時計回りに()°回転※:トーリックレンズの場合のみ実施f.コンタクトレンズの表面検査コンタクトレンズの表面検査は,細隙灯顕微鏡を用い,キズおよび汚れについてそれぞれ次の基準で評価した.キズ:0:なし(正常な取り扱いでも発生する最表面の微細なキズは,なしと評価する)1:軽度(局所的に観察される浅いキズ)2:中等度(広範囲に観察されるキズ)3:重度(装用上問題となるキズ)汚れ:0:なし1:軽度(局所的に観察される汚れ)2:中等度(広範囲に観察される汚れ)3:重度(装用上問題となる汚れ)6.評価項目a.有効性有効性の主要評価項目は自覚症状別改善度とし,1週間後,2週間後および中止時に評価を行った.投与開始時と比較した各症状の程度の推移は,次の判定基準に従い4段階で評価し,「軽減」と「消失」に該当する症例の割合を改善率として算出した.なお,有効性の評価は,投与開始前の自覚症状が左右眼で異なる場合は自覚症状の重いほうの眼を,同程度の場合は右眼をそれぞれ評価対象眼として行った.・消失:(3,2,1→0)・軽減:(3→2),(3,2→1)・不変:(3→3),(2→2),(1→1)・悪化:(0→1,2,3),(1→2,3),(2→3)(*症状の推移が(0→0)の場合,「開始日の症状なし」とした.)b.安全性安全性は,副作用の発現率により評価した.試験期間中に発現した有害事象について,「試験薬との関連性なし」,「試験薬との関連性不明」,「試験薬との関連性あるかもしれない」,「試験薬と明らかに関連性あり」の4段階で評価し,「関連性なし」と判断されたもの以外を副作用とした.試験終了時または中止時には,副作用内容を考慮して,概括安全度を「安全」,「ほぼ安全」,「やや問題あり」,「問題あり」,「非常に問題あり」の5段階で判定し,「安全」に該当する症例の割合を概括安全率として評価した.7.評価対象有効性については,1週間後(7±2日)または2週間後(14±3日後)のいずれかの来院日で自覚症状別改善度を評価された症例を対象とし,各症状の改善率とその95%信頼区間を算出した.安全性については,投与開始から2週間後(14±3日後)まで投薬された症例を対象とし(ただし,途中中止例・逸脱例についても,有害事象が発現した場合には安全性の評価対象に含めることとした),有害事象および副作用の発現率,概括安全率を算出した.II結果1.被験者の内訳本試験に組み入れられた総症例数は104例であり,全例にC3ALが投与された.このうち1例(2週間交換レンズ装用者)は,投与開始9日目に,洗浄の際にソフトコンタクトレンズを破損し,レンズの交換を行ったため,担当医師の指示により中止した.また,1例(1カ月交換ソフトコンタクトレンズ使用者)は,1週間後の来院日にレンズ洗浄時についたと考えられるキズがレンズに認められたことから,レンズを交換し,試験を継続したが,この症例は逸脱例として取り扱った.なお,これら2例は,1週間後の自覚症状別改善度のデータは得られたため,有効性については1週間後のみ採用とした(有効性評価対象症例数:1週間後104例,2週間後102例).安全性については,2週間後まで試験が継続表6患者背景背景因子症例数(%)性別男性23(22.1)女性81(77.9)年齢1519歳6(5.8)2029歳54(51.9)3039歳31(29.8)4049歳11(10.6)50歳2(1.9)平均値(最小値最大値)29.5(1656歳)診断名アレルギー性結膜炎86(82.7)慢性結膜炎4(3.9)乾性角結膜炎5(4.8)アレルギー性結膜炎,慢性結膜炎2(1.9)アレルギー性結膜炎,乾性角結膜炎7(6.7)ソフトコンタクトレンズの使用経験年数3カ月以上1年未満5(4.8)1年以上5年未満20(19.2)5年以上10年未満37(35.6)10年以上15年未満27(26.0)15年以上15(14.4)平均値(最小値最大値)8.5年(5カ月27年)———————————————————————-Page61148あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(142)されず,かつ2例ともに有害事象の発現が認められなかったため,評価対象から除外した(安全性評価対象症例数:102例).2.患者背景表6に患者背景,表7に試験期間中に使用したソフトコンタクトレンズの内訳を示した.対象者の年齢は1656歳であり,診断名は「アレルギー性結膜炎」が82.7%と最も多かった.試験に用いられたソフトコンタクトレンズの種類は,「頻回交換ソフトコンタクトレンズ」が67.3%と最も多かった.ソフトコンタクトレンズのFDA(米国食品医薬品局)分類でみると,グループ「I」,「II」,「IV」のレンズを使用していた.ソフトコンタクトレンズの装用状況では,「終日装用」が102例(98.1%)であり,「終日装用」における1日の平均装用時間は平均13.1時間であった.1週間の装用日数は,全例が週6日以上装用していた.なお,有効性の評価対象眼は,「右眼」が93例(89.4%)で,「左眼」が11例(10.6%)であった.3.有効性1週間後の自覚症状別の改善率は,それぞれ,「目のかゆみ」75.0%,「目の疲れ」66.1%,「目のかわき」68.6%,「目のかすみ(目やにの多いときなど)」70.3%,「異物感」85.7%であった(表8).また,2週間後の自覚症状別の改善率は,それぞれ,「目のかゆみ」87.3%,「目の疲れ」78.2%,「目のかわき」83.3%,「目のかすみ(目やにの多いときなど)」表7試験期間中に使用したソフトコンタクトレンズの内訳項目カテゴリー症例数(%)使用経験年数3カ月以上6カ月未満17(16.4)6カ月以上1年未満16(15.4)1年以上3年未満36(34.6)3年以上5年未満17(16.4)5年以上18(17.3)平均値(最小値最大値)2.4年(3カ月10年)種類使い捨て1日4(3.9)1週間2(1.9)その他0(0.0)(計)6(5.8)頻回・定期交換2週間70(67.3)1カ月23(22.1)3カ月0(0.0)その他0(0.0)(計)93(89.4)コンベンショナル(従来型)5(4.8)FDA分類I32(30.8)II28(26.9)III0(0.0)IV44(42.3)装用状況1日の平均装用時間終日装用10時間未満10(9.6)10時間15時間未満47(45.2)15時間24時間未満45(43.3)終日装用症例数102(98.1)平均値(最小値最大値)13.1(618時間)連続装用24時間2(1.9)1週間の装用日数5日以下0(0.0)6日8(7.7)7日96(92.3)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091149(143)81.6%,「異物感」85.7%であった(表9).2週間後の「目のかゆみ」について,患者背景因子別に評価したところ(表10),診断名「アレルギー性結膜炎」で改善率が89.3%(75/84例)であった.ソフトコンタクトレンズのグループ別の改善率は,「I」で87.5%(28/32例),「II」で88.9%(24/27例),「IV」で86.0%(37/43例)であった.4.安全性有害事象は,102例中14例(18件)に発現した(発現率:13.7%).頻度の高かった有害事象は眼瞼結膜充血(4件:3.9%)で,次いで目のかわき,目のかすみ,異物感,角膜上皮障害(各3件:2.9%),眼球結膜充血(1件:1.0%)であった.点眼時の刺激感の報告はなかった.これらの有害事象のうち,レンズケアの不足や,ソフトコンタクトレンズ装用による一時的な症状出現といった理由により,13例(17件)については試験薬との因果関係はないと最終的に判断された.有害事象のうち,副作用と判断されたものは,試験薬との因果関係が不明と判定された「上眼瞼の皮膚のただれ(両眼)」1件のみであり,副作用の発現率は1.0%(1/102例)であった.この副作用発現症例については,プレドニゾロン眼軟膏0.25%の外用塗布により,試験終了後も症状の悪化と軽快をくり返したが,左上眼瞼の症状は投与終了から約3週間後に,右上眼瞼の症状は投与終了から約5週間後に消失を確認した.この症例はアトピー性皮膚炎を合併しており,以前より同症状をくり返していた.概括安全度は,副作用が発現した1例で「やや問題あり」(副作用が発現し,副作用に対する処置を必要としたが,試験薬投与の継続が可能)と判定された以外は,全例(101/102例)で「安全」と判定され,概括安全率は99.0%であった.コンタクトレンズ視力検査については,試験薬投与前後において問題となる変化は認められず,フィッティング検査およびコンタクトレンズの表面検査についても,試験期間中に問題は認められなかった.他覚所見においても,試験期間中問題となる所見はみられなかった(表11).III考察従来,ソフトコンタクトレンズ装用中に自覚する「目のかゆみ」などの外眼部炎症症状に対して,点眼薬を使用する場合には,ソフトコンタクトレンズをはずしてから点眼する必要があった.今回開発されたC3ALは,ソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能である抗炎症成分配合の「目のかゆみ」に対応した初めての一般用点眼薬として開発された.そこで一般臨床試験を実施し,C3ALの「目のかゆみ」などの自覚症状に対する有効性と安全性について検討した.自覚症状をもつ軽度の外眼部炎症性疾患(アレルギー性結膜炎,慢性結膜炎,乾性角結膜炎など)の患者を対象に,ソフトコンタクトレンズの上から,1回12滴,1日56回,2週間C3ALを点眼した結果,自覚症状に対する改善率は「目のかゆみ」,「目のかわき」,「目のかすみ」および「異物感」の4つの自覚症状については80%以上であり,「目の疲れ」についても78.2%の改善率が得られた.C3ALの点眼による副作用は「上眼瞼の皮膚のただれ(両眼)」の1件のみで,発現率1.0%,概括安全率99.0%であ表8自覚症状別改善度(1週間後)自覚症状症例数消失軽減不変悪化改善率(%),(95%信頼区間)目のかゆみ10470826075.0(66.783.3)目の疲れ5633419066.1(53.778.5)目のかわき8655426168.6(58.878.4)目のかすみ(目やにの多いときなど)3726010170.3(55.585.0)異物感352825085.7(74.197.3)表9自覚症状別改善度(2週間後)自覚症状症例数消失軽減不変悪化改善率(%),(95%信頼区間)目のかゆみ10287213087.3(80.893.7)目の疲れ5541212078.2(67.389.1)目のかわき8466411383.3(75.491.3)目のかすみ(目やにの多いときなど)383105281.6(69.393.9)異物感352823285.7(74.197.3)———————————————————————-Page81150あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(144)った.コンタクトレンズに関する検査(コンタクトレンズ矯正視力検査,フィッティング検査,コンタクトレンズの表面検査)および他覚所見においても,C3ALの点眼による副作用はみられなかった.以上のことから,C3ALは「目のかゆみ」をはじめ,「目のかわき」などといった自覚症状に対して有効であり,ソフトコンタクトレンズの上から点眼しても表10「目のかゆみ」に対する背景因子別改善度(2週間後)項目症例数消失軽減不変悪化改善率(%),(95%信頼区間)性別男性231913087.0(73.2100.0)女性7968110087.3(80.094.7)年齢1519歳6402066.7(28.9100.0)2029歳534526088.7(80.197.2)3039歳312704087.1(75.398.9)4049歳10901090.0(71.4100.0)50歳22000100.0診断名アレルギー性結膜炎847419089.3(82.795.9)慢性結膜炎4301075.0乾性角結膜炎55000100.0アレルギー性結膜炎,慢性結膜炎22000100.0アレルギー性結膜炎,乾性角結膜炎7313057.1(20.593.8)ソフトコンタクトレンズの使用経験年数3カ月1年未満55000100.01年5年未満201415075.0(56.094.0)5年10年未満353113091.4(82.2100.0)10年15年未満272403088.9(77.0100.0)15年151302086.7(69.5100.0)使用経験年月数3カ月6カ月未満171502088.2(72.9100.0)6カ月1年未満141202085.7(67.4100.0)1年3年未満363204088.9(78.699.2)3年5年未満171412088.2(72.9100.0)5年181413083.3(66.1100.0)種類使い捨て1日4202050.01週間22000100.0頻回・定期交換2週間695928088.4(80.996.0)1カ月221903086.4(72.0100.0)コンベンショナル55000100.0FDA分類I322714087.5(76.099.0)II272403088.9(77.0100.0)IV433616086.0(75.796.4)1日の平均装用時間10時間未満99000100.010時間15時間未満463817084.8(74.495.2)15時間24時間未満453816086.7(76.796.6)24時間22000100.01週間の装用日数6日8512075.0(45.0100.0)7日9482111088.3(81.894.8)———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.26,No.8,20091151(145)安全な薬剤であることが確認された.ソフトコンタクトレンズの上から点眼薬を投与すると,点眼薬中の成分がレンズに吸着,蓄積し,レンズの変形や薬剤による角結膜への影響の可能性がある.しかし,医療用点眼薬の研究では,点眼薬の成分や防腐剤などの添加物のソフトコンタクトレンズへの吸着や蓄積性について,臨床上問題となることはないとの報告がある58).塩酸レボカバスチン点眼液9,10)では,頻回交換ソフトコンタクトレンズや1日使い捨てソフトコンタクトレンズについて試験を行い,コンタクトレンズの上から点眼しても安全であることが報告されている.このような医療用点眼薬とは異なり,一般用点眼薬では医師による指導や定期検査が行われないため,より安全性の高いものが望まれる.今回,一般用点眼薬として開発されたC3ALは,ソフトコンタクトレンズへの成分の吸着やレンズの物性への影響がないことに加え,臨床試験においてC3ALによる副作用はほとんど認められなかったことから,ソフトコンタクトレンズの上から点眼できる安全な薬剤であることが示された.一般に外眼部の炎症症状が軽度の場合には,一般用点眼薬による対処を行っている人が多いと考えられ,ソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能なC3ALは,「目表11他覚所見の推移他覚所見の程度0:なし1:軽度2:中等度3:重度眼瞼結膜充血投与開始時45(44.1)56(54.9)1(1.0)0(0.0)1週間後71(69.6)30(29.4)1(1.0)0(0.0)2週間後79(77.5)23(22.5)0(0.0)0(0.0)眼瞼結膜浮腫投与開始時72(70.6)28(27.5)2(2.0)0(0.0)1週間後89(87.3)13(12.7)0(0.0)0(0.0)2週間後95(93.1)7(6.9)0(0.0)0(0.0)眼瞼結膜濾胞投与開始時34(33.3)63(61.8)5(4.9)0(0.0)1週間後41(40.2)59(57.8)2(2.0)0(0.0)2週間後49(48.0)51(50.0)2(2.0)0(0.0)上眼瞼結膜乳頭増殖投与開始時73(71.6)27(26.5)2(2.0)0(0.0)1週間後76(74.5)25(24.5)1(1.0)0(0.0)2週間後78(76.5)23(22.5)1(1.0)0(0.0)眼球結膜充血投与開始時77(75.5)25(24.5)0(0.0)0(0.0)1週間後95(93.1)7(6.9)0(0.0)0(0.0)2週間後101(99.0)1(1.0)0(0.0)0(0.0)眼球結膜浮腫投与開始時87(85.3)15(14.7)0(0.0)0(0.0)1週間後102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)2週間後102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)輪部充血投与開始時96(94.1)6(5.9)0(0.0)0(0.0)1週間後99(97.1)3(2.9)0(0.0)0(0.0)2週間後100(98.0)2(2.0)0(0.0)0(0.0)角膜上皮障害投与開始時89(87.3)13(12.7)0(0.0)0(0.0)1週間後93(91.2)9(8.8)0(0.0)0(0.0)2週間後97(95.1)5(4.9)0(0.0)0(0.0)角膜浮腫投与開始時102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)1週間後102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)2週間後102(100.0)0(0.0)0(0.0)0(0.0)角膜血管新生投与開始時97(95.1)5(4.9)0(0.0)0(0.0)1週間後98(96.1)4(3.9)0(0.0)0(0.0)2週間後98(96.1)4(3.9)0(0.0)0(0.0)———————————————————————-Page101152あたらしい眼科Vol.26,No.8,2009(146)のかゆみ」などの不快感を自覚する人にとって,有用なものであると考えられる.今後このようなソフトコンタクトレンズの上から点眼が可能な一般用点眼薬の開発がいっそう望まれるが,一般用点眼薬については安全性を最重視すべきであり,症状が改善したら点眼をやめる,点眼薬を使い続けても症状が良くならない場合や,充血などが生じた場合などには,すぐに点眼薬の使用を中止し,眼科を受診するように指導を徹底するなどといった,一般消費者に対する啓蒙活動が必要不可欠であろう.文献1)高村悦子,雑賀寿和,藤島浩ほか:アレルギー性結膜炎とコンタクトレンズ.日コレ誌37:248-253,19952)水谷聡:コンタクトレンズとケア溶液,点眼薬─問題点とその対策─.日コレ誌37:35-39,19953)﨑元卓:治療用コンタクトレンズへの防腐剤の吸着.日コレ誌35:177-182,19934)水谷聡,伊藤康雄,白木美香ほか:コンタクトレンズと防腐剤の影響について(第1報)─取り込みと放出─.日コレ誌34:267-276,19925)百瀬隆行,伊藤延子:トラニラスト(リザベンR)点眼液による巨大乳頭結膜炎に対する効果とソフトコンタクトレンズへの吸着.あたらしい眼科18:1425-1428,20016)百瀬隆行,岩崎和佳子,安田勉:DisodiumCromogly-cate(インタールR)点眼によるソフトコンタクトレンズへの吸着について.眼臨81:1401-1404,19877)小玉裕司,北浦孝一:ソフトコンタクトレンズ装用上における点眼使用の安全性について.日コレ誌42:9-14,20008)小玉裕司:コンタクトレンズ装用上におけるアシタザノラスト水和物点眼液(ゼペリンR点眼液)の安全性.あたらしい眼科20:373-377,20039)小玉裕司:塩酸レボカバスチン点眼液(リボスチンR点眼液0.025%)の毎日交換ディスポーザブル・ソフトコンタクトレンズ(dailyDSCL)装用眼における角結膜に及ぼす影響.あたらしい眼科22:231-234,200510)渡邉潔:頻回交換ソフトコンタクトレンズ装用者にみられるアレルギー結膜炎に対する塩酸レボカバスチン点眼液の臨床効果.日コレ誌47:54-57,2005***

ブナゾシン塩酸塩点眼液(デタントールR 0.01%点眼液)使用成績調査における安全性および有効性の検討

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1(123)4050910-1810/09/\100/頁/JCLSあたらしい眼科26(3):405412,2009cはじめに現在,緑内障の薬物治療においては,b遮断薬やプロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連薬が第一選択薬として用いられているが,単剤では十分な眼圧下降が得られず,多剤併用を要する症例も少なくない.また,長期にわたる治療では副作用などの問題で薬剤の変更を余儀なくされる場合もある.そのため,緑内障治療には複数の作用機序の異なる治療薬から患者の状態に応じて選択できることが望ましい.デタントールR0.01%点眼液(以下,「本剤」と略す)は参天製薬株式会社が開発し,2001年9月に発売した緑内障・高眼圧症治療点眼薬である.本剤は,ブナゾシン塩酸塩を有効成分とし,選択的交感神経a1受容体遮断作用を有する唯〔別刷請求先〕樋口直子:〒533-8651大阪市東淀川区下新庄3-9-19参天製薬株式会社市販後調査グループReprintrequests:NaokoHiguchi,PMSGroup,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-9-19Shimoshinjo,Higashiyodogawa-ku,Osaka533-8651,JAPANブナゾシン塩酸塩点眼液(デタントールR0.01%点眼液)使用成績調査における安全性および有効性の検討樋口直子*1宮本悦代*1神田佳子*1岡本紳二*1橋本公子*1國廣英一*1石田智恵美*2柳井知子*2福本充*2*1参天製薬株式会社市販後調査グループ*2参天製薬株式会社安全性管理室SafetyandEcacyofBunazosinHydrochlorideOphthalmicSolution(DetantolR0.01%OphthalmicSolution)inaPost-marketingObservationalStudyNaokoHiguchi1),EtsuyoMiyamoto1),YoshikoKanda1),ShinjiOkamoto1),MasakoHashimoto1),EiichiKunihiro1),ChiemiIshida2),TomokoYanai2)andMitsuruFukumoto2)1)PMSGroup,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)Drug&DeviceSafetyInformationManagementOce,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.ブナゾシン塩酸塩点眼液(デタントールR0.01%点眼液)の市販後の使用実態下における安全性および有効性を検討するため,ブナゾシン塩酸塩点眼液が新たに投与された緑内障および高眼圧症患者を対象とし,中央登録方式による前向きな使用成績調査を実施した.852施設より6,740例を収集した.副作用発現症例率は4.11%(254/6,178)で,おもな副作用は眼充血(結膜充血を含む)107件などの眼障害が233例(3.77%)279件であった.眼圧は,平均観察期間76.5日で,投与開始時19.2±5.8mmHgに対して2.7±5.0mmHgの有意な下降を示した(p<0.001).ブナゾシン塩酸塩点眼液は市販後の使用実態下においてもその安全性および有効性が確認され,緑内障および高眼圧症治療の第二選択薬として有用な薬剤であると考えられた.Toclarifythesafetyandecacyofbunazosinhydrochlorideophthalmicsolution(DetantolR0.01%ophthalmicsolution)inareal-worldsetting,weprospectivelyperformedthispost-marketingobservationalstudyonpatientswithglaucomaorocularhypertensionwhowereadministeredbunazosinhydrochlorideforthersttime.Atotalof6,740caseswerecollectedfrom852medicalinstitutions.Theincidenceofadversedrugreactions(ADR)was4.11%(254/6,178).AstomajorADR,279eyedisorderswerenotedin233patients(3.77%)includedhyperaemia(1.73%).Meanintraocularpressurewassignicantlydecreasedby2.7±5.0mmHgatamean76.5daysafteradminis-tration,ascomparedto19.2±5.8mmHgbeforeadministration(p<0.001).Thisstudyshowsbunazosinhydrochlo-rideophthalmicsolutiontobesafeandeectiveasasecond-linedrugforthetreatmentofglaucomaorocularhypertension,inareal-worldsetting.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(3):405412,2009〕Keywords:ブナゾシン塩酸塩点眼液,使用成績調査,安全性,有効性.bunazosinhydrochlorideophthalmicsolution,post-marketingobservationalstudy,safety,ecacy.———————————————————————-Page2406あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(124)一の緑内障治療薬で,ブドウ膜強膜流出路からの房水流出を促進することで眼圧を下降させる13).本剤は他の緑内障治療薬で効果不十分な場合,または副作用などにより他の緑内障治療薬の使用が継続できない場合に使用される第二選択薬であり,おもに併用あるいは他の緑内障治療薬から切り替えて使用されるが,このような使用状況における開発時のデータは限られている4,5).今回,承認後6年間の再審査期間中に,本剤の市販後の使用実態下における安全性および有効性に関する情報収集を目的とした使用成績調査を実施した.その結果を基に,使用状況による影響も含め,本剤の安全性および有効性につき検討したので報告する.I対象および方法1.調査方法本調査は「医薬品の市販後調査の基準に関する省令(GPMSP)」および「医療用医薬品の使用成績調査等の実施方法に関するガイドライン」に従い,目標症例数を6,000例,調査期間を2001年9月2004年8月で実施した.調査対象は,本調査の契約を締結した医療機関にて本剤が新たに投与された症例とし,中央登録方式にて実施した.すなわち,医療機関との契約締結日以降,本剤を投与開始した症例について投与開始から2週間以内に症例登録し,登録症例について標準4週間の観察期間終了後,調査票に記入することとした.調査項目は,患者背景,緑内障治療歴,本剤の投与状況,併用薬剤,眼圧などの臨床経過,有害事象とした.2.安全性の検討本剤の投与中または投与後に発現した医学的に好ましくないすべての事象を有害事象とし,有害事象のうち本剤との因果関係が否定できないものを副作用とした.収集症例のうち,登録の不備および初診以降来院がなく有害事象の有無を確認できなかった症例を除いた集団を安全性解析対象とし,副作用の種類,重篤度,発現率などを検討した.また,安全性に影響を及ぼす要因を探索するため,要因別の副作用発現率を検討した.さらに,本剤と併用される可能性の高いb遮断点眼薬やPG関連点眼薬では角膜障害の副作用が知られているため68),角膜障害の発現状況について検討した.なお,副作用用語はMedDRA/J(MedicalDictionaryforReg-ulatoryActivities/Japaneseedition:ICH国際医薬用語集日本語版)のVer.8.1を用いて集計した.3.有効性の検討有効性の指標には眼圧変化値(最終観察時眼圧値投与開始時眼圧値)を用いた.安全性解析対象症例のうち,効能・効果外使用および眼圧変化値評価不能症例を除いた集団を有効性解析対象とし,眼圧の推移を検討した.有効性評価対象眼は,本剤投与眼のうち,投与開始時眼圧値の高いほうの眼を,同じ場合には右眼とした.有効性に影響を及ぼす要因を探索するため,要因別,使用状況別の眼圧の推移を検討した.なお,眼圧および眼圧下降度は平均±標準偏差mmHgで示した.4.統計解析手法要因別の副作用発現率の検討にはc2検定を,眼圧の推移には対応のあるt検定を使用し,また,投与開始時眼圧値と眼圧変化値との関連性を検討するため,ピアソン(Pearson)の積率相関係数と回帰係数を求めた.有意水準は両側5%とした.II結果1.症例構成(図1)852施設より6,740例の調査票を収集した.このうち,登録の不備および初診以降来院なしの症例562例を除く6,178例を安全性解析対象症例とした.また,安全性解析対象症例より効能・効果外使用および眼圧変化値評価不能の症例727例を除いた5,451例を有効性解析対象症例とした.2.安全性a.副作用発現状況(表1)安全性解析対象症例6,178例における副作用発現率は4.11%(254/6,178)で,承認時までの臨床試験における副作用発現率3.30%(17/515)と比較して有意差は認められなかった(p=0.435,c2検定).おもな副作用の種類は,眼障害233例(3.77%)279件で,内訳は,眼充血(結膜充血を含む)107件,眼刺激および霧視が各16件,角膜炎15件,角膜びらんおよび眼の異物感が各14件,眼そう痒症および眼瞼炎が各12件,眼痛および点状角膜炎が各10件などであった.重篤な副作用は脳梗塞1件であった.本症例は85歳,女性で,本剤投与開始後1カ月以内に脳梗塞を発症し,本剤投与継続中に軽快した.b.要因別副作用発現状況(表2)検討した要因のうち,性別,年齢別,医薬品副作用歴有無別,緑内障薬物治療歴有無別および本剤1日平均投与回数別安全性解析対象除外症例562例安全性解析対象症例6,178例有効性解析対象除外症例727例有効性解析対象症例5,451例調査票収集症例6,740例図1症例構成———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009407(125)の副作用発現率に有意差が認められた.性別では女性,年齢別では65歳未満の非高齢者,医薬品副作用歴有無別では副作用歴「有」,緑内障薬物治療歴有無別では治療歴「有」で副作用発現率が高かったが,要因ごとの層別における副作用の種類に差は認められなかった.本剤1日平均投与回数別では,1日2回投与の症例が99.2%(6,129/6,178)を占めていたが,1日2回未満の副作用発現率が最も高く,投与回数の多い層で副作用が多いわけではなかった.緑内障治療点眼薬の併用が安全性に及ぼす影響を検討したところ,併用の有無で副作用発現率に有意差は認められず,表1副作用発現状況一覧表承認時迄の状況使用成績調査計安全性解析対象症例数5156,1786,693副作用発現症例数17254271副作用発現件数27308335副作用発現症例率3.30%4.11%4.05%副作用の種類承認時迄の状況使用成績調査計副作用種類別発現症例(件数)率(%)精神障害1(0.02)1(0.01)不眠症1(0.02)1(0.01)神経系障害2(0.39)11(0.18)13(0.19)異臭感頭痛頭皮異常感覚脳梗塞浮動性めまい2(0.39)1(0.02)7(0.11)1(0.02)1(0.02)1(0.02)1(0.01)9(0.13)1(0.01)1(0.01)1(0.01)眼障害16(3.11)233(3.77)249(3.72)アレルギー性眼瞼炎アレルギー性結膜炎ブドウ膜炎角膜びらん角膜炎角膜障害角膜上皮欠損角膜浸潤乾性角結膜炎眼そう痒症眼の異物感眼の違和感眼の乾燥感眼圧迫感眼乾燥眼刺激眼充血(結膜充血を含む)眼精疲労眼痛眼部不快感眼瞼そう痒症眼瞼炎眼瞼下垂眼瞼紅斑眼瞼湿疹眼瞼皮膚炎1(0.19)1(0.19)1(0.19)4(0.78)4(0.73)11(2.14)1(0.19)1(0.02)5(0.08)1(0.02)14(0.23)15(0.24)2(0.03)2(0.03)1(0.02)1(0.02)12(0.19)14(0.23)3(0.05)3(0.05)1(0.02)1(0.02)16(0.26)107(1.78)1(0.02)10(0.16)1(0.02)2(0.03)12(0.19)2(0.03)1(0.02)1(0.02)8(0.13)1(0.01)6(0.09)1(0.01)14(0.21)16(0.24)2(0.03)2(0.03)1(0.01)1(0.01)13(0.19)18(0.27)3(0.04)3(0.04)1(0.01)1(0.01)20(0.30)118(1.76)2(0.03)10(0.15)1(0.01)2(0.03)12(0.18)2(0.03)1(0.01)1(0.01)8(0.12)副作用の種類承認時迄の状況使用成績調査計副作用種類別発現症例(件数)率(%)眼障害(つづき)眼瞼浮腫強膜炎結膜炎結膜出血結膜乳頭状増殖結膜浮腫結膜濾胞点状角膜炎虹彩毛様体炎霧視網膜静脈閉塞流涙増加涙液分泌低下1(0.19)1(0.19)2(0.03)1(0.02)1(0.02)2(0.03)1(0.02)1(0.02)1(0.02)10(0.16)2(0.03)16(0.26)1(0.02)3(0.05)1(0.02)2(0.03)1(0.01)1(0.01)2(0.03)1(0.01)1(0.01)2(0.03)10(0.15)2(0.03)17(0.25)1(0.01)3(0.04)1(0.01)心臓障害4(0.06)4(0.06)動悸4(0.06)4(0.06)血管障害2(0.03)2(0.03)高血圧潮紅1(0.02)1(0.02)1(0.01)1(0.01)呼吸器,胸郭および縦隔障害1(0.02)1(0.01)喘息1(0.02)1(0.01)胃腸障害2(0.03)2(0.03)悪心2(0.03)2(0.03)全身障害および投与局所様態2(0.03)2(0.03)気分不良浮遊感1(0.02)1(0.02)1(0.01)1(0.01)臨床検査6(0.10)6(0.09)眼圧上昇血圧上昇血圧低下4(0.06)1(0.02)1(0.02)4(0.06)1(0.01)1(0.01)———————————————————————-Page4408あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(126)発現率を高めるような種類の併用薬もなかった.また,併用薬剤数別の検討で発現率に有意差が認められたが,薬剤数が多いほど発現率が高いという傾向はなかった.c.角膜障害発現状況(表3)角膜障害の発現率は0.71%(44/6,178)であった.内訳は,角膜炎15件,角膜びらん14件,点状角膜炎10件などで,重篤なものはなかった.緑内障治療点眼薬の併用が角膜障害表2要因別副作用発現状況一覧表要因症例数副作用発現症例数副作用発現症例率(%)検定安全性解析対象症例6,1782544.11性男性女性2,6023,576831713.194.78p=0.002年齢平均:67.7歳65歳未満65歳以上2,0314,147991554.873.74p=0.041使用理由緑内障高眼圧症その他複数疾患5,461634127122724034.163.7904.23p=0.869合併症無有不明・未記載1,5124,5181485619353.704.273.38p=0.375医薬品副作用歴無有不明・未記載4,87791238916367243.347.356.17p<0.001緑内障薬物治療歴無有不明・未記載1,5864,555374620712.904.542.70p=0.006本剤1日平均投与回数平均:2.0回2回未満2回2回超256,129244250016.004.080p=0.007緑内障治療併用点眼薬無有不明・未記載1,9974,181378217214.114.112.70p=1.000薬剤種類プロスタグランジン関連点眼薬無有3,2992,8791231313.734.55p=0.119b遮断点眼薬無有4,0012,177188664.703.03p=0.002ab遮断点眼薬無有5,787391242124.183.07p=0.347交感神経作動点眼薬無有6,1255325134.105.66p=0.824副交感神経作動点眼薬無有6,04613224954.123.79p=1.000炭酸脱水酵素阻害点眼薬無有5,532646237174.282.63p=0.058薬剤数無1剤2剤3剤4剤5剤1,9972,5111,24838536182118467014.114.703.691.820100p<0.001検定手法:c2検定(不明・未記載を除く).———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009409(127)発現に及ぼす影響を検討したところ,併用の有無および併用薬剤数別で発現率に有意差は認められず,発現率を高めるような種類の併用薬もなかった.3.有効性a.眼圧の推移有効性解析対象症例5,451例における眼圧変化値は2.7±5.0mmHgで,投与開始時の19.2±5.8mmHgから最終観察時(平均観察期間76.5日)の16.5±5.0mmHgへ有意な下降を示した(p<0.001).また,投与開始時眼圧値と眼圧変化値には相関が認められ(r2=0.340,p<0.001,y=0.494x+6.802),投与開始時眼圧値が高いほど眼圧変化値は大きかった(図2).b.要因別使用状況別の眼圧の推移(表4)性別,使用理由別,投与開始時眼圧値別,緑内障薬物治療歴有無別でそれぞれ眼圧の推移を検討した.眼圧変化値は,各要因とも投与開始時眼圧値に相応した差は認められるものの,いずれの層も有意な下降を示した.使用状況別として,他の緑内障治療薬から切り替えて本剤を使用した場合,すでに使用されている緑内障治療薬に本剤を追加投与した場合,および少なくとも最終観察時に他の緑内障治療薬を併用していた場合についてそれぞれ検討した.他剤から切り替えて本剤を使用した症例は14.0%(763/5,451)であり,前治療薬の種類は,PG関連点眼薬(切り替え症例の45.5%),b遮断点眼薬(38.8%)が多かった.眼圧変化値は,切り替え例全体で1.0±4.9mmHg,前治療薬の種類別で0.92.8mmHgで,いずれも有意な下降を示した.他剤への追加併用で本剤を使用した症例は44.1%(2,404/5,451)であり,被併用薬剤の種類は,PG関連点眼薬(追加併用症例の67.5%),b遮断点眼薬(53.2%)が多かった.眼圧変化値は,追加併用症例全体で2.7±4.0mmHg,被併用20-15-10-505100510152025303540投与開始時眼圧値(mmHg)眼圧変化値(mmHg)r=-0.583y=-0.494x+6.802r2=0.340p<0.001図2投与開始時眼圧値と眼圧変化値の散布図表3角膜障害発現状況要因症例数角膜障害発現検定症例数症例率(%)安全性解析対象症例6,178440.71併用薬剤数無1剤2剤3剤4剤5剤1,9972,5111,2483853611316132000.650.641.040.5200p=0.748併用薬剤種類プロスタグランジン関連点眼薬無有3,2992,87918260.550.90p=0.130b遮断点眼薬無有4,0012,17731130.770.60p=0.525ab遮断点眼薬無有5,7873914130.710.77p=1.000交感神経作動点眼薬無有6,125534310.701.89p=0.841副交感神経作動点眼薬無有6,0461324400.730p=0.645炭酸脱水酵素阻害点眼薬無有5,5326464040.720.62p=0.960検定手法:c2検定.———————————————————————-Page6410あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(128)薬剤の種類別で2.53.5mmHgと,いずれも有意な下降を示した.他の緑内障治療薬を最終観察時に併用していた症例は67.4%(3,675/5,451)であった.内訳は,1剤併用2,252例(併用症例の61.3%),2剤併用1,095例(29.8%),3剤併用299例(8.1%)で,4剤以上の併用も29例あった.投与開始時眼圧値は,併用症例が19.8±6.0mmHg,非併用症例(本剤単剤治療症例)が18.0±5.3mmHgと併用症例のほうが高く,また,併用薬剤数が多いほど高かった.投与開始時眼圧値に相応した眼圧変化値の差は認められたものの,併用薬の有無あるいは併用薬剤数にかかわらず眼圧は有意な下降を示した.III考按現在,臨床に供されているおもな緑内障治療薬の種類には,房水産生抑制作用を有するb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬(carbonicanhydraseinhibitor:CAI),房水流出促進作用を有するPG関連薬,房水産生抑制と房水流出促進作用を併せもつab遮断薬があり,a1遮断薬である本剤は房水流出促進系の薬剤に分類される.このうち,緑内障治療の第一選択薬はb遮断薬,PG関連薬およびab遮断薬であり,CAIおよびa1遮断薬は第二選択薬に位置付けられる.第二選択薬の多くは緑内障治療の2剤目,3剤目として使われるため,他剤併用時の安全性および有効性の検討が必要だが,表4要因別使用状況別の眼圧推移要因症例数眼圧値眼圧変化値(mmHg)検定投与開始時(mmHg)最終観察時(mmHg)有効性解析対象症例5,45119.2±5.816.5±5.02.7±5.0p<0.001性男性女性2,3063,14520.0±6.418.7±5.417.0±5.316.2±4.82.9±5.52.5±4.5p<0.001p<0.001使用理由緑内障高眼圧症4,84660518.8±5.922.6±4.016.2±5.118.8±3.72.6±5.03.8±4.7p<0.001p<0.001投与開始時眼圧値15mmHg未満15mmHg以上20mmHg未満20mmHg以上25mmHg未満25mmHg以上1,1001,8861,73872712.3±1.717.0±1.421.7±1.429.4±6.212.0±2.715.4±3.018.6±3.821.1±7.20.3±2.41.6±2.93.1±3.78.2±8.8p<0.001p<0.001p<0.001p<0.001緑内障薬物治療歴無有不明・未記載1,3904,0342720.0±7.018.9±5.319.2±9.115.8±4.516.8±5.115.0±4.34.2±6.02.2±4.44.2±7.3p<0.001p<0.001p=0.006他剤からの切替無有4,68876319.5±5.917.5±5.316.5±4.916.4±5.53.0±4.91.0±4.9p<0.001p<0.001前治療薬種類(重複集計)プロスタグランジン関連点眼薬b遮断点眼薬ab遮断点眼薬炭酸脱水酵素阻害点眼薬3472961354517.2±5.417.7±5.117.5±5.419.6±6.316.3±4.916.4±5.716.1±4.916.8±6.40.9±4.91.3±5.11.4±4.22.8±8.1p<0.001p<0.001p<0.001p=0.027他剤への追加併用無有3,0472,40419.1±6.319.3±5.216.4±5.116.6±4.92.7±5.62.7±4.0p<0.001p<0.001被併用薬剤種類(重複集計)プロスタグランジン関連点眼薬b遮断点眼薬ab遮断点眼薬炭酸脱水酵素阻害点眼薬1,6221,27823132219.3±5.119.8±5.219.0±4.821.8±6.816.6±4.817.1±5.116.5±4.618.3±6.22.7±4.12.7±4.22.5±3.53.5±5.2p<0.001p<0.001p<0.001p<0.001緑内障治療併用点眼薬無有1,7763,67518.0±5.319.8±6.015.8±4.716.9±5.12.2±4.32.9±5.2p<0.001p<0.001薬剤数1剤2剤3剤4剤5剤2,2521,09529928119.0±5.320.6±6.622.4±7.024.5±5.147.016.2±4.517.8±5.718.3±5.919.4±7.120.02.8±4.62.9±5.94.1±6.25.1±8.727.0p<0.001p<0.001p<0.001p=0.004平均±標準偏差.検定手法:対応のあるt検定(投与開始時との比較).———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009411開発時に把握できる事項は限られる.したがって,市販後の使用実態下において,種々の使用状況における安全性および有効性を検討し,適正使用情報として提供することが重要と考える.本調査では,使用状況別に十分検討できるよう,目標症例数6,000例にて実施し,その結果,全国852施設より6,740例の調査票を収集した.安全性は6,178例において検討し,副作用は254例(4.11%)308件に認められた.1990年以降に上市された他の緑内障治療点眼薬,ベタキソロール塩酸塩,ニプラジロール,イソプロピルウノプロストンおよびラタノプロストの市販後の調査における副作用発現率はそれぞれ10.17%(ベトプティックR添付文書),8.07%(ハイパジールRコーワ添付文書),13.70%(レスキュラRインタビューフォーム),25.5%(キサラタンR添付文書)であり,調査時期や調査方法の違いを考慮する必要はあるものの,本剤の副作用発現率はこれらの薬剤と比べ高いものではなかった.おもな副作用の種類は眼障害で,233例(3.77%)に認められた.このうち,最も高頻度であったのは眼充血(結膜充血を含む)で,発現率は1.73%であったが,重篤なものはなかった.眼充血は,本剤のa1遮断作用により,眼局所の末梢血管が拡張して起こるものと考えられた.全身性の副作用に関しては,b遮断点眼薬で全身性の副作用が問題とされていること9),また,本剤の有効成分ブナゾシン塩酸塩の内服薬は高血圧治療薬として使用され,起立性低血圧,動悸などの副作用が知られていることから,循環器系副作用の発現状況を検討した.本調査における循環器系副作用は,動悸4件,高血圧,潮紅,血圧上昇および血圧低下が各1件であり,いずれも非重篤であった.安全性に影響を及ぼす要因の検討で,性別,年齢別,医薬品副作用歴有無別などで副作用発現率に有意差が認められたが,各層別の副作用の種類に差はなく,安全性に影響を与える患者集団は見当たらなかった.また,他の緑内障治療薬の併用についても,本剤の安全性に影響を及ぼすような薬剤はなく,併用薬剤数と副作用発現率との間にも一定の傾向は認められなかった.b遮断点眼薬やPG関連点眼薬では角膜障害の副作用が知られており68),これらの併用時には発現頻度が高まるとの報告もあることから6),角膜障害の発現状況を検討した.本調査において,角膜炎,角膜びらんなどの角膜障害の発現率は0.71%であった.前述の4種類の緑内障治療薬では,市販後の調査において,ベタキソロール塩酸塩で角膜びらん,角膜炎などの角膜障害が1.50%,ニプラジロールで表層角膜炎が1.17%,イソプロピルウノプロストンで角膜びらん,角膜炎などの角膜症状が5.49%,およびラタノプロストで点状表層角膜炎が4.8%,角膜びらんが2.5%認められている.副作用用語の集計方法,調査方法などに違いはあるものの,本剤の角膜障害発現率はこれらの薬剤と比べ高いものではなかった.また,緑内障治療薬の併用の有無,薬剤数および種類と角膜障害発現との関連を検討したが,併用による影響は認められなかった.有効性は5,451例において検討した.本剤投与後に眼圧は平均2.7mmHg下降し,投与開始時眼圧値が高いほど眼圧の下降は大きかった.有効性に影響を及ぼす要因として,性別,使用理由別などの要因別に眼圧の推移を検討したところ,いずれの層も有意な眼圧の下降を示した.各層別で眼圧下降度にやや差が認められたものの,いずれも投与開始時眼圧値に相応したものと推察された.使用状況別では,他の緑内障治療薬から切り替えて本剤を使用した症例は14.0%で,眼圧は切り替え後に平均1.0mmHg下降した.また,他の緑内障治療薬への追加併用で本剤を使用した症例は44.1%で,眼圧は本剤追加後に平均2.7mmHg下降した.なお,被併用薬剤の種類により眼圧の下降は2.53.5mmHgとやや差が認められた.併用効果が最も小さかったものはab遮断薬で,投与開始時眼圧値は19.0mmHgであった.一方,最も大きかったものはCAIで,投与開始時眼圧値は21.8mmHgであった.これより,眼圧変化値の差は投与開始時眼圧値に相応したもので,本剤の追加併用効果は被併用薬剤の種類には関連しないと考えられた.以上の調査結果より,デタントールR0.01%点眼液は,市販後の使用実態下においても安全性および有効性が確認され,他の緑内障治療薬と併用した場合にも,その種類にかかわらず安全性に問題点を認めず,明らかな眼圧下降を示したことから,緑内障・高眼圧症治療の第二選択薬として有用な薬剤であると考えられた.謝辞:稿を終えるにあたり,本調査にご協力賜り,貴重なデータをご提供いただきました多数の先生方に厚く御礼申し上げます.文献1)NishimuraK,KuwayamaY,MatsugiTetal:SelectivesuppressionbyBunazosinofalpha-adrenergicagonistevokedelevationofintraocularpressureinsympathecto-mizedrabbiteyes.InvestOphthalmolVisSci34:1761-1766,19932)景山正明,西村和夫,松木雄ほか:家兎における塩酸ブナゾシン点眼液の眼圧下降作用機序.眼紀46:1066-1070,19953)西村和夫,白沢栄一,木下満紀子ほか:a1遮断点眼剤Bunazosinのウサギおよびネコにおける眼圧下降作用.日眼会誌95:746-751,19914)土坂寿行,金恵媛,石綿丈嗣ほか:塩酸ブナゾシン(DE-(129)———————————————————————-Page8412あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009070)点眼液,b遮断剤からの切り替え試験.眼臨88:1562-1568,19945)東郁郎,北澤克明,塚原重雄ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対する塩酸ブナゾシン点眼液とマレイン酸チモロール点眼液の併用効果の検討─塩酸ジピベフリン点眼液との比較─.あたらしい眼科19:261-266,20026)高橋奈美子,籏福みどり,西村朋子ほか:抗緑内障点眼薬の単剤あるいは2剤併用の長期投与による角膜障害の出現頻度.臨眼53:1199-1203,19997)橘信彦,木村泰朗,石井るみ子ほか:イソプロピルウノプロストン(レスキュラ)点眼液によると思われる角膜上皮障害.あたらしい眼科13:1097-1101,19968)田聖花,中島正之,植木麻理ほか:ラタノプロストによると考えられる角膜上皮障害.臨眼55:1995-1999,20019)福地健郎:緑内障の治療─緑内障の薬物治療,緑内障治療薬・交感神経阻害剤b遮断薬.眼科44:1458-1463,2002(130)***