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リパスジル点眼液の患者背景別眼圧下降効果

2018年8月31日 金曜日

《第28回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科35(8):1114.1116,2018cリパスジル点眼液の患者背景別眼圧下降効果鈴木加奈子*1白戸勝*2北村裕太*2山本修一*2*1千葉ろうさい病院眼科*2千葉大学大学院医学研究院眼科学CE.cacyofRipasudilonVariousPatientBackgroundsKanakoSuzuki1),SuguruShirato2),YutaKitamura2)andShuichiYamamoto2)1)DepartmentofOphthalmology,ChibaRosaiHospital,2)DepartmentofOphthalmology,ChibaUniversity目的:リパスジル点眼液の眼圧下降効果を患者背景別に検討する.対象および方法:リパスジル点眼が追加処方された症例のうちC6カ月以上経過観察できたC54例C78眼を対象とし,男女別,年齢別,点眼投薬数別,投与前眼圧別,病型別に投与後C6カ月の眼圧下降率を検討した.また,有意に眼圧下降を示した背景について投与後1,3,6カ月の眼圧の推移を検討した.結果:全症例の投与後C6カ月の平均眼圧下降率はC14.9%で有意な眼圧下降を認めた(p<0.001).病型別では広義原発開放隅角緑内障C13.2%に対しステロイド緑内障C41.3%,投与前眼圧別ではC15CmmHg未満C4.0%に対してC21CmmHg以上C26.6%で,有意差を認めた(p<0.05).年齢別,男女別,投薬数別では有意差がみられなかった.結論:リパスジル点眼液は投与前眼圧値が高い症例,ステロイド緑内障でとくに高い眼圧下降率を示した.CPurpose:Weretrospectivelyexaminedthee.cacyofripasudilonvariouspatientbackgrounds.Methods:78eyesCofC54CpatientsCwhoCwereCprescribedCripasudilCandCobservedCforCmoreCthanC6CmonthsCwereCeligibleCforCthisstudy.CAtC1,C3CandC6CmonthsCafterCprescriptionCofCripasudil,CweCexaminedCintraocularCpressure(IOP)changeCwithregardtovariousbackgrounds:sex,age,numberofeyedropsprescribed,baselineIOPandappearanceofdisease.Results:IOPCsigni.cantlyCreducedCtoC14.9%ClowerCthanCbaselineCatC6CmonthsCafterCprescription(p<0.001).CThehighbaselineIOPgrouphadahighrateofIOPreductioncomparedtothelowbaselinegroups(p<0.05).Theste-roid-inducedCglaucomaCgroupChadCaChighCrateCofCIOPCreductionCcomparedCtoCtheCprimaryCopen-angleCglaucomagroup(p<0.01).Conclusion:Additionofripasudile.ectivelyreducesIOP,especiallyinhighbaselineIOPandste-roid-inducedglaucoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(8):1114.1116,C2018〕Keywords:リパスジル,緑内障,患者背景,ステロイド緑内障.Ripasudil,glaucoma,backgroundsofpatients,steroid-inducedglaucoma.Cはじめにリパスジル点眼液は,線維柱帯-Schlemm管を介する主経路からの房水排出を促進する作用を有する1).その作用機序は,Schlemm管内皮細胞の巨大空胞の増加2),線維柱帯細胞の骨格・収縮変化1),線維柱帯における細胞外マトリクス産生抑制3),細胞間接着の変化2)が関与している.治験では単剤投与,プロスタグランジン関連点眼薬,b遮断点眼薬,プロスタグランジン/チモロール点眼への追加投与が行われ,良好な眼圧下降効果が得られている4,5).リパスジル点眼薬は,既存の眼圧下降点眼薬とは異なる機序で奏効するため,その効果の特性も異なる可能性が考えられる.臨床的にリパスジル点眼薬が追加投与され,良好な眼圧下降効果を得られることが報告されているが5),筆者らは患者背景別に検討することで効果の特性を明らかにすることを考えた.今回,リパスジル点眼液を追加処方された症例の眼圧下降効果を患者背景別,病型別に後ろ向きに検討した.CI対象および方法2015年4月1日.2016年5月20日に千葉大学医学部附属病院に通院中でリパスジル点眼液を追加処方され,6カ月以上経過を追えたC54例C78眼を対象とした.配合剤点眼薬はC2剤,アセタゾラミド内服は錠数にかかわ〔別刷請求先〕鈴木加奈子:〒260-8677千葉県千葉市中央区亥鼻C1-8-1千葉大学医学部附属病院眼科Reprintrequests:KanakoSuzuki,DepartmentofOphthalmology,ChibaUniversity,1-8-1Inohana,Chuou-ku,Chiba-shi,Chiba260-8677,JAPAN1114(108)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(108)C11140910-1810/18/\100/頁/JCOPY性別年齢別投与前値別投薬数別男女<6565≦<1515~2121≦4剤目5剤目7剤目(55)(23)(28)(50)(12)(51)(15)(16)(60)(2)投与前眼圧(mmHg18.019.018.318.312.817.724.418.018.417.5)n0-5-10-15(%)-20-25-30※-35※p<0.05(Mann-Whitney’sUtest)図1眼圧下降率(患者背景別)らずC2剤として解析した.それぞれの患者について,リパスジル点眼液投与前眼圧と投与後1,3,6カ月後の眼圧を後ろ向きに調査し,患者背景別,病型別に投与前と投与後C6カ月の眼圧下降率を比較した.また,眼圧下降率に有意差を認める背景,病型について投与前から投与後C6カ月までの眼圧推移を検討した.眼圧下降率の比較にはCMann-Whitney’sUtestを用い,眼圧推移の投与前と投与後の比較はCpairedCt-testを用い,いずれもp<0.05を有意水準とした.CII結果対象は男性C38例C55眼,女性C16例C23眼,年齢はC66.0C±13.0歳(平均値C±標準偏差)だった.リパスジル点眼液はC4剤目として投与されたものがC16眼(20.5%),5剤目がC60眼(76.9%),7剤目がC2眼(2.6%)だった.病型は広義原発開放隅角緑内障(primaryCopen-angleCglaucoma:POAG)56眼,閉塞隅角緑内障C1眼,落屑緑内障C6眼,ステロイド緑内障C5眼,ぶどう膜炎C5眼,血管新生緑内障C2眼,サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)網膜炎に伴う眼圧上昇C1眼,外傷性緑内障C1眼であった.全症例の眼圧経過は投与前,投与後C1カ月,3カ月,6カ月でそれぞれC18.3C±4.1,15.5C±3.6,15.5C±3.5,15.2C±4.1mmHgで,いずれの時点でも有意な眼圧下降を認めた(p<0.001).また,全症例の投与後C6カ月での眼圧下降率はC14.9C±22.3%であった.患者背景別では,性別,年齢別,投薬数別で眼圧下降率に有意差を認めなかったが,投与前眼圧別ではC15CmmHg未満4.0%C±26.3%,15CmmHg以上C21CmmHg未満C14.1C±20.3%,21CmmHg以上C26.6C±21.7%であり,投与前眼圧の高い群で有意に眼圧下降率が高かった(p<0.05)(図1).投与前眼圧別の眼圧推移は,15CmmHg以上C21CmmHg未満,21CmmHg広義落屑ぶどうPOAG緑内障膜炎n(56)(6)(5)投与前眼圧(mmHg)17.718.018.40-10-20(%)-30-40-50-60※※ステロイド50%以上の緑内障周辺虹彩前癒着(5)(3)20.022.0※※p<0.01(Mann-Whitney’sUtest)図2眼圧下降率(病型別)以上の両群で投与前眼圧と比較して投与後いずれの時点でも有意な眼圧下降を示したのに対し(p<0.01),15CmmHg未満の群は投与後すべての時点で有意な眼圧下降を示さなかった.病型別の投与後C6カ月での眼圧下降率は広義CPOAG13.2C±17.1%,落屑緑内障C13.1C±28.7%,ぶどう膜炎C21.1C±49.8%,ステロイド緑内障C41.3C±23.2%,50%以上の周辺虹彩前癒着を認める症例C9.1C±4.5%だった.広義CPOAGを基準に考えると,ステロイド緑内障は有意に高かった(p<0.01)(図2).広義CPOAGの眼圧推移は投与前眼圧と比べ,投与後いずれの時点でも有意な眼圧下降を示した(p<0.01)のに対し,ステロイド緑内障は術後C1カ月,6カ月で有意であったものの(p<0.05),術後C3カ月で有意差はみられなかった.しかし,ステロイド緑内障は広義CPOAGに比べ,術後C6カ月の時点で大きな眼圧下降幅を示した.C(109)あたらしい眼科Vol.35,No.8,2018C1115III考按今回リパスジル点眼の眼圧下降効果を患者背景別,病型別に調査してみたところ,投与前眼圧値別において眼圧が高い群で他の群より眼圧下降率がよいこと,病型別ではステロイド緑内障で広義CPOAGより眼圧下降率が高いことが示された.緑内障治療薬ではベースライン眼圧が高いほど,眼圧下降効果が強調される傾向にあるが,リパスジルに関しても承認前臨床試験においてベースライン眼圧が優位な背景因子であることは証明されており6),今回も同様の結果となった.ステロイド緑内障については,今回の調査ではC5例とも点眼ではなくステロイド内服による眼圧上昇を認めた患者であった.標本数がC5例と少なかったため投与後C3カ月の眼圧下降に有意差を認めなかったものの,投与後C6カ月で眼圧下降幅は広義CPOAGより大きくなった.ステロイド投与によって線維柱帯における細胞外マトリクス産生が活発になると報告されており7),ステロイド緑内障の眼圧上昇の原因と考えられる.リパスジルは線維柱帯において細胞外マトリクスの産生を抑制する作用を有しているため3),この病型においてとくに高い眼圧下降を発揮したと考えられる.病型別ではぶどう膜炎の症例も有意差は認めないものの高い眼圧下降率を示した.今回はすべての症例でステロイド点眼をしており,前眼部炎症は軽快していたため,ステロイドによる眼圧上昇であった可能性は否定できない.リパスジルにはぶどう膜炎に対して消炎効果を認めるとの報告や8),ROCK阻害薬は実験的に白血球接着や炎症細胞浸潤を抑制することで抗炎症作用をもつことが示されており9),本症例は明らかな炎症は認めなかったが,リパスジルが消炎による眼圧下降にも寄与していたと考えられる.また,広範囲周辺虹彩前癒着のある患者についてもC3例のみであるが検討した.線維柱帯に直接作用する範囲が狭いため予想どおり低い眼圧下降率となったが,有意差は認めなかった.リパスジル点眼液は投与前眼圧が高い症例,ステロイドによる眼圧上昇を認める症例に対して高い眼圧下降率を示した.今回の調査ではとくに病型別で十分な標本数を得られず,6カ月と短期の経過観察期間であったため,今後も調査を継続することが必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)HonjoCM,CTaniharaCH,CInataniCMCetCal:E.ectsCofCRho-associatedproteinkinaseinhibitorY-27632onintraocularpressureCandCout.owCfacility.CInvestCOphthalmolCVisCSciC42:137-144,C20012)KamedaT,InoueT,InatamiMetal:Thee.ectofRho-associatedCproteinCkinaseCinhibitorConCmonkeyCSchlemm’sCcanalCendothelialCcells.CInvestCOphthalmolCVisCSciC53:C3098-3103,C20123)FujimotoCT,CInoueCT,CKamedaCTCetCal:InvolvementCofCRhoA/Rho-associatedkinasesignaltransductionpathwayinCdexamethasone-inducedCalterationsCinCaqueousCoutC.ow.InvestOphthalmolVisSciC53:7097-7108,C20124)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:Phase1clinicaltrialsCofCaCselectiveCRhoCkinaseCinhibitor,CK-115.CJAMACOphthalmolC131:1288-1295,C20135)InoueK,SetogawaA,IshidaKetal:IntraocularpressurereductionCwithCandCprescriptionCpatternsCofCripasudil,CaCRhoCkinaseCinhibitor.CAtarashiiCGankaC33:1774-1778,C20166)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:One-yearcliniC-calCevaluationCofC0.4%Cripasudil(K-115)inCpatientsCwithCopen-angleCglaucomaCandCocularChypertension.CActaCOph-thalmolC94:e26-e34,C20167)RohenCJW,CLinnerCE,CWittmerCRCetCal:ElectronCmicro-scopicCstudiesConCtheCtrabecularCmeshworkCinCtwoCcasesCofcorticosteroidglaucoma.ExpEyeResC17:19-31,C19738)YasudaCM,CTakayamaCK,CKandaCTCetCal:ComparisonCofCintraocularpressure-lowinge.ectsofripasudilhydrochlo-rideChydrateCforCin.ammatoryCandCcorticosteroid-inducedCocularhypertension.PLoSOneC12:e0185305,C20179)UchidaCT,CHonjoCM,CYamagishiCRCetCal:TheCanti-in.am-matoryCe.ectCofCripasudil(K-115),CaCRhoCkinase(ROCK)Cinhibitor,onendotoxin-induceduveitisinrats.InvestOph-thalmolVisSciC58:5584-5593,C2017***(110)C