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細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査(2005,2007,2009 および2014年のまとめ)

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):875.887,2016c細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査(2005,2007,2009および2014年のまとめ)末信敏秀*1松崎薫*2小山英明*2岸直子*2松本哲*2秦野寛*3*1千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部*2株式会社LSIメディエンス*3ルミネはたの眼科InvestigationofBacterialIsolatesRecoveredfromOcularInfections,RegardingSusceptibilityToshihideSuenobu1),KaoruMatsuzaki2),HideakiKoyama2),NaokoKishi2),SatoruMatsumoto2)andHiroshiHatano3)1)MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)LSIMedienceCorporation,3)LumineHatanoEyeClinic細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のgatifloxacin(GFLX)および他の点眼用抗菌薬に対する感受性動向を検討するため,2005年,2007年,2009年および2014年の各1年間に,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より分離された2,498菌株を対象に,GFLXおよびその他の点眼用抗菌薬に対する感受性を測定した.グラム陽性菌では,計4回の調査を通じてGFLXに対する感受性の低下は認められず,moxifloxacin(MFLX)およびtosufloxacin(TFLX)に対する感受性とほぼ同等であった.また,2014年分離株のうちStreptococcusspp.およびEnterococcusspp.はlevofloxacin(LVFX)よりも,Corynebacteriumspp.はMFLXおよびLVFXよりも,GFLXに高い感受性を示した.一方,グラム陰性菌においても,GFLXに対する感受性の低下は認められず,LVFXおよびTFLXに対する感受性とほぼ同等であった.また,2014年分離株のうちPseudomonasaeruginosaはMFLXよりもGFLXに高い感受性を示した.以上,2004年の発売から10ヵ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性に経年的な耐性化傾向は認められなかったことから,GFLXは細菌性外眼部感染症に対して有用な抗菌薬であると考えられた.Isolatesrecoveredfromocularinfectiouspatientsbetween2005and2014wereassessedinvitroregardingtheirsusceptibilitiestogatifloxacin(GFLX)andotherophthalmicantimicrobialagents.TheinvitroactivityofGFLXagainsttheisolateswascomparedtothatoflevofloxacin(LVFX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX)andcefmenoxime(CMX).TheactivitiesofGFLXagainstgram-positiveand-negativebacteriascarcelychangedduringtheinvestigationperiod.TheactivityofGFLXagainstgram-positiveisolatewasalmostequaltothoseofMFLXandTFLX.Againstgram-negativeisolates,GFLXantibacterialactivitywasalmostequaltothoseofLVFXandTFLX.SinceGFLXdidnotexhibitdiminishedactivityduringtheperiodofthisinvestigation,theagentisconcludedtobepotentlyactiveagainstbacterialisolatesfromocularinfectiouspatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):875.887,2016〕Keywords:ガチフロキサシン,感受性,サーベイランス,フルオロキノロン,眼感染症.gatifloxacin,susceptibility,surveillance,fluoroquinolones,ocularinfection.はじめにGatifloxacin(GFLX)点眼薬が2004年に上市されてから10年が経過するなか,筆者らは2005年,2007年および2009年の計3回,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性を検討し,経年的な耐性化傾向を認めなかったことを報告した1).現時点においても,GFLXをはじめとするフルオロキノロン系点眼薬は,細菌性外眼部感染症に対する第一選択薬の座を譲っていない.言い換えれば,フルオロキノロン系薬に代わる新しい作用機序をもつ有用な抗菌薬が,世に登場していないともいえる.フルオロキノロン系薬は,細菌のDNA合成に関与するDNAgyraseおよびtopoisomeraseIVという酵素を阻害することで抗菌活性を示し,GFLXでは,〔別刷請求先〕末信敏秀:〒541-0046大阪市中央区平野町2-5-8千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2-5-8Hiranomachi,Chuo-ku,Osaka541-0046,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(115)875 表1試験菌株各回の収集株数試験菌目標収第1回第2回第3回第4回集株数(2005年)(2007年)(2009年)(2014年)StaphylococcusStaphylococcusaureus(Methicillin-susceptibleS.aureus:MSSA,100100100100100Methicillin-resistantS.aureus:MRSA)CoagulasenegativeStaphylococcus(CNS)100100100100100StreptococcusStreptococcuspneumoniae5050505050Streptococcusspecies(S.pneumoniae以外)2525252525Enterococcusspecies2525252525Corynebacteriumspecies2525252525Moraxella(Branhamella)catarrhalis2525252525EnterobacteriaceaeCitrobacterspecies1010101010Klebsiellaspecies1010101010Serratiaspecies2525252525Morganellamorganii1010101010NonglucosefermentativegramnegativerodPseudomonasaeruginosa5050505050Pseudomonasspecies(P.aeruginosa以外)2525252525Sphingomonaspaucimobilis2576187Stenotrophomonasmaltophilia1010101010Acinetobacterspecies2525252525Haemophilusinfluenzae5050505050嫌気性菌Propionibacteriumacnes5050505050計640622621633622キノロン環8位のメトキシ基が両酵素の阻害活性を高め,変異株の出現頻度低減に寄与することで,耐性菌が生じにくいことが示唆されている2).一方,抗菌薬にとって,その使用量に伴う耐性化は一般的に不可避である.したがって,継続的に新規作用機序を有する抗菌薬の創薬が必要である一方,既存薬の適正使用を推進し耐性化を最小限に止めることが重要である.すなわち,医療現場における適正使用の根拠となる「推定起因菌の感受性動向」の情報に基づいて,適切な抗菌薬が選択される必要がある.そこで筆者らは,継続して眼科臨床分離株の感受性を監視し,感受性動向の情報を医療現場と共有することが重要であると考え,前回報告の2009年から5ヵ年が経過した2014年に分離された細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のGFLXおよび他の点眼用抗菌薬に対する感受性を検討することを目的として,4回目の調査を実施したので報告する.なお,本調査は感受性動向を把握することを主たる目的とすることから,過去の成績1)とあわせて報告する.876あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016I材料および方法1.試験薬剤今回の試験では,継続的な感受性動向の調査対象薬剤としてgatifloxacin(GFLX),levofloxacin(LVFX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX)およびcefmenoxime(CMX)に加え,erythromycin(EM)およびtobramycin(TOB)の7薬剤を用いた.なお,Staphylococcusspp.にはoxacillin(MPIPC),StreptococcuspneumoniaeにはpenicillinG(PCG),Haemophilusinfluenzaeにはampicillin(ABPC)を追加した.2.試験菌株表1に示した菌種について,各回(1年間)における目標収集株数を設定し,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より検体採取,分離,同定された順に,目標株数に達するまでの収集菌株(総数2,498株)を試験菌株とした.試験菌株は分離後,最小発育阻止濃度(MIC)測定時まで保存液(スキムミルク)中にて.70℃以下で保存した.なお,これらの試験菌株は,「疫学研究に関する倫理指針」(平成14(116) 年文部科学省・厚生労働省告示第2号)を遵守して使用した.3.薬剤感受性測定試験菌株の薬剤感受性測定は,ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute(CLSI)に準じた微量液体希釈法にて実施した.微量液体希釈法による測定にはフローズンプレート(栄研化学)を使用した.測定培地は,S.pneumoniae,Streptococcusspp.およびCorynebacteriumspp.については,2%ウマ溶血液添加cation-adjustedMuellerHintonbroth(CAMHB)を用い,H.influenzaeにはHTMbroth(hematin15μg/mL,b-NAD15μg/mLおよびyeastextract0.5%添加CAMHB)を用い,その他の好気性菌にはCAMHBを用いた.嫌気性菌については,5%馬溶血液添加brucellabroth(hemin5μg/mLおよびvitaminK11μg/mLも添加)を用いた.好気性菌は約5×104.1×105CFU/well,嫌気性菌は約1.2×105CFU/wellとなるように各wellに菌を接種後,好気性菌は35℃,20.24時間,好気培養,嫌気性菌は35℃,46.48時間,嫌気培養を行った.判定は,対照に用いた薬剤不含有培地における菌の発育を確認した後,菌の発育が認められない最小薬剤濃度をMICとした.4.耐性基準各菌種の耐性の定義はCLSIの基準に従い,以下のとおりとした.S.aureusは,MPIPCのMIC値が2μg/mL以下のものをsusceptible(MSSA),4μg/mL以上のものをresistant(MRSA)とした.coagulasenegativeStaphylococcus(CNS)は,MPIPCのMIC値が0.25μg/mL以下のものをsusceptible(MSCNS),0.5μg/mL以上のものをresistant(MRCNS)とした.S.pneumoniaeはPCGのMIC値が0.06μg/mL以下のものをsusceptible(PSSP),0.12.1μg/mLのものをintermediate(PISP),2μg/mL以上のものをresistant(PRSP)とした.5.GFLXと対象薬剤のMIC値の相関過去3回の調査結果から,GFLXのMICrangeが比較的幅広いことが予測される菌種について,GFLXと対象薬剤のMIC値との相関について検討した.すなわち,第4回調査の分離株のうち,S.aureusおよびCNS(各100株)に対するMPIPC,CMX,EMおよびTOBのMIC値との相関をSpearman順位相関係数を用いて検討した(JMP10forWindows,SASInstituteInc,Cary,NorthCarolina,USA).同様に,Corynebacteriumspp.(25株)およびPseudomonasaeruginosa(50株)についてはCMX,EMおよびTOBのMIC値との相関について検討した.また,MIC値相関の検討では,羽藤らの報告3)を参考に,(117)分位点密度を等高線パターンとして描出(同JMP10)し,視覚的な評価を試みた.II結果1.グラム陽性菌2005年(第1回),2007年(第2回),2009年(第3回)および2014年(第4回)の各年に外眼部感染症患者から分離された菌株に対する各種抗菌薬のMICの成績を表2に示した.その結果,4回の調査においてS.aureus100株に占めるMRSAの割合は20%程度で,GFLXのMIC90は32.128μg/mLであり大きな変動は認められず,MFLXのMIC90は32.64μg/mL,LVFXおよびTFLXのMIC90は,それぞれ>128および>16μg/mLであった.また,MSSAに対するGFLXのMIC90は0.12.0.25μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬と同様に大きな変動は認められなかった.CNSに占めるMRCNSの割合は40%程度であり,GFLXのMIC90は2μg/mLで,過去3回の調査成績と変化はなかった.また,MSCNSについては,GFLXのMIC90は0.12.2μg/mLであり,第4回調査でもっとも高かったが,他のフルオロキノロン系薬についても同様の傾向を示した.PSSPおよびPISPに対するGFLXのMIC90は4回の調査を通じて0.25.0.5μg/mLであり,MFLXおよびTFLXと同等であった.また,PRSPの収集株数は,すべての調査において10株未満と少なかったが,GFLXのMICはPSSPおよびPISPに対するMICとほぼ同等であった.Streptococcusspp.に対するGFLXのMIC90は4回の調査を通じて0.5μg/mLであり,変動は認められなかった.また,他のフルオロキノロン系薬においてもMIC90の著明な変動は認められなかったが,第4回調査におけるGFLXのMIC90(0.5μg/mL)はLVFX(2μg/mL)より低かった.Enterococcusspp.に対するGFLXのMIC90は0.5.1μg/mLであり,上昇は認められなかった.他のフルオロキノロン系薬においてもMIC90の変動は認められなかったが,第4回調査におけるGFLXのMIC90は0.5μg/mLであり,LVFXの2μg/mLより低かった.一方,CMXのEnterococcusspp.に対するMIC90は4回の調査すべてにおいて>128μg/mLであった.Corynebacteriumspp.に対するGFLXのMIC90は8.16μg/mLであり,第4回調査のGFLXのMIC90(8μg/mL)は,LVFXおよびMFLXの64μg/mLおよび32μg/mLより低かった.ただし,CMXのMIC90は0.25.1μg/mL,TOBでは2μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも低値を示した.計4回の調査におけるP.acnesに対するGFLXのMIC90は0.25.0.5μg/mLであり,MFLXと同等で他のフルオロキノロン系薬よりも低値であった.また,CMXのMIC90は0.25.0.5μg/mLでありあたらしい眼科Vol.33,No.6,2016877 表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび他の対象薬のMIC推移MIC:μg/mL菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90グラム陽性菌MSSAGFLX≦0.06-4≦0.060.12≦0.06-20.120.12≦0.06-40.120.25≦0.06-320.120.25第1回(81株)LVFX0.12-80.250.250.12-40.250.250.12-80.250.50.12->1280.250.5第2回(78株)TFLX≦0.06-8≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.12≦0.06->16≦0.060.25第3回(76株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-16≦0.060.12第4回(81株)CMX1-4221-2121-2220.5-422EM0.25->1280.5>128TOB0.25-640.516MRSAGFLX0.12->1284128≦0.06-642320.12->12881280.12-64464第1回(19株)LVFX0.25->1288>1280.25->1288>1280.25->12832>1280.25->12816>128第2回(22株)TFLX≦0.06->164>16≦0.06->164>16≦0.06->16>16>16≦0.06->16>16>16第3回(24株)MFLX≦0.06-128264≦0.06-32232≦0.06-128864≦0.06-64864第4回(19株)CMX8->128>128>1284->12864>1288->128>128>1284->12816>128EM0.5->128>128>128TOB0.5->1281>128MSCNSGFLX≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-20.121≦0.06-20.120.12≦0.06-20.122第1回(60株)LVFX0.12-80.120.250.12-80.2520.12-40.250.250.12-80.254第2回(52株)TFLX≦0.06-16≦0.06≦0.06≦0.06->16≦0.062≦0.06-4≦0.06≦0.06≦0.06-8≦0.064第3回(60株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.5≦0.06-1≦0.060.12≦0.06-2≦0.061第4回(60株)CMX0.25-20.510.25-10.510.25-10.510.25-10.51EM0.12->1280.25128TOB≦0.06->1280.2516MRCNSGFLX≦0.06-212≦0.06-222≦0.06-6412≦0.06-3212第1回(40株)LVFX0.12-16240.12-16480.12->128480.12->12844第2回(48株)TFLX≦0.06-1624≦0.06->1648≦0.06->1628≦0.06->1644第3回(40株)MFLX≦0.06-40.51≦0.06-412≦0.06-3212≦0.06-3211第4回(40株)CMX2-16480.5-164161-8481-16416EM0.25->12864>128TOB0.12->128864PSSPGFLX0.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.25第1回(38株)LVFX0.25-10.510.25-1110.5-1110.5-111第2回(32株)TFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.12第3回(29株)MFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25第4回(30株)CMX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.50.250.25EM≦0.06->1284>128TOB8-321632菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90グラム陽性菌MSSAGFLX≦0.06-4≦0.060.12≦0.06-20.120.12≦0.06-40.120.25≦0.06-320.120.25第1回(81株)LVFX0.12-80.250.250.12-40.250.250.12-80.250.50.12->1280.250.5第2回(78株)TFLX≦0.06-8≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.12≦0.06->16≦0.060.25第3回(76株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-16≦0.060.12第4回(81株)CMX1-4221-2121-2220.5-422EM0.25->1280.5>128TOB0.25-640.516MRSAGFLX0.12->1284128≦0.06-642320.12->12881280.12-64464第1回(19株)LVFX0.25->1288>1280.25->1288>1280.25->12832>1280.25->12816>128第2回(22株)TFLX≦0.06->164>16≦0.06->164>16≦0.06->16>16>16≦0.06->16>16>16第3回(24株)MFLX≦0.06-128264≦0.06-32232≦0.06-128864≦0.06-64864第4回(19株)CMX8->128>128>1284->12864>1288->128>128>1284->12816>128EM0.5->128>128>128TOB0.5->1281>128MSCNSGFLX≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-20.121≦0.06-20.120.12≦0.06-20.122第1回(60株)LVFX0.12-80.120.250.12-80.2520.12-40.250.250.12-80.254第2回(52株)TFLX≦0.06-16≦0.06≦0.06≦0.06->16≦0.062≦0.06-4≦0.06≦0.06≦0.06-8≦0.064第3回(60株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.5≦0.06-1≦0.060.12≦0.06-2≦0.061第4回(60株)CMX0.25-20.510.25-10.510.25-10.510.25-10.51EM0.12->1280.25128TOB≦0.06->1280.2516MRCNSGFLX≦0.06-212≦0.06-222≦0.06-6412≦0.06-3212第1回(40株)LVFX0.12-16240.12-16480.12->128480.12->12844第2回(48株)TFLX≦0.06-1624≦0.06->1648≦0.06->1628≦0.06->1644第3回(40株)MFLX≦0.06-40.51≦0.06-412≦0.06-3212≦0.06-3211第4回(40株)CMX2-16480.5-164161-8481-16416EM0.25->12864>128TOB0.12->128864PSSPGFLX0.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.25第1回(38株)LVFX0.25-10.510.25-1110.5-1110.5-111第2回(32株)TFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.12第3回(29株)MFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25第4回(30株)CMX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.50.250.25EM≦0.06->1284>128TOB8-321632(118) (119)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016879第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)菌名(株数)DrugMICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90PISPGFLX0.12-0.250.250.250.12-0.250.250.250.12-0.250.250.250.12-0.50.250.5第1回(10株)LVFX第2回(14株)TFLX第3回(15株)MFLX第4回(13株)CMXEMTOBPRSPGFLX第1回(2株)LVFX第2回(4株)TFLX第3回(6株)MFLX第4回(7株)CMXEMTOBStreptococcusspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBEnterococcusspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBCorynebacteriumspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOB0.5≦0.06≦0.060.250.2510.120.120.5≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.510.250.258≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.120.1210.510.250.2521211>1281612816320.50.50.120.120.5─────0.250.50.120.12≦0.060.510.250.251288324160.120.50.120.121─────0.510.250.250.25120.50.5>12816648320.50.5≦0.06≦0.060.120.2510.120.120.5≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.2510.250.251≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.120.1210.520.50.540.520.50.54120.50.5>128>128>128>166410.50.120.120.25─────0.250.50.120.12≦0.060.510.50.5640.250.50.50.250.2510.120.120.5─────0.510.250.25≦0.06120.50.5>128166416320.250.5≦0.06≦0.06≦0.060.2510.120.120.50.120.25≦0.06≦0.06≦0.060.2510.250.258≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.250.12140.520.250.252120.50.5>12832>128>16640.50.50.120.120.5─────0.2510.120.12≦0.060.510.50.51280.250.50.250.120.2510.120.121─────0.510.250.250.25120.50.5>12816128>16320.50.-15≦0.06-0.25≦0.06-0.25-0.50.121->1288-320.250.-150.120.120.-251->12816-32-0.50.120.-225≦0.06-0.5≦0.06-0.25≦0.06-2≦0.06->1282-320.-251–0.50.25-0.50.258->128->1280.258->128≦0.06-16≦0.06-128≦0.06->16≦0.06-32≦0.06-2≦0.06->128≦0.06-810.120.120.25216───────0.510.250.25≦0.06≦0.06160.510.250.25128>12816832160.120.12≦0.0610.250.250.5>12832───────0.520.250.250.254320.520.50.5>128>128>128864832182 第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)菌名(株数)DrugMICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90P.acnesGFLX0.250.250.250.25-0.50.250.50.25-0.50.250.50.25-0.50.250.5第1回(50株)LVFX第2回(50株)TFLX第3回(50株)MFLX第4回(50株)CMXEMTOB-0.50.250.5-10.12-0.25≦0.06-0.50.510.25≦0.060.510.250.50.-150.12-20.25-0.5≦0.06-0.50.510.250.12110.50.250.-150.5-10.25-0.5≦0.06-0.50.510.250.12110.50.50.-150.510.-1511-0.50.250.250.5≦0.06-0.50.120.50.120.120.1216-646464グラム陰性菌M.(B.)catarrhalisGFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBCitrobacterspp.GFLX第1回(10株)LVFX第2回(10株)TFLX第3回(10株)MFLX第4回(10株)CMXEMTOBKlebsiellaspp.GFLX第1回(10株)LVFX第2回(10株)TFLX第3回(10株)MFLX第4回(10株)CMXEMTOBSerratiaspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOB≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.250.250.250.50.120.120.120.120.511120.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.060.120.12≦0.06≦0.06≦0.060.120.250.50.250.250.50.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.50.250.25110.250.50.5110.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.250.120.120.250.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.50.250.2510.25≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.50.250.2510.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.120.250.120.1211122≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.120.120.120.250.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.06≦0.060.120.120.50.250.250.51≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-10.50.-1120.25-0.250.120.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06-0.12≦0.0664->1281280.-1250.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.0664>1281280.50.250.5≦0.06-0.50.12≦0.06-0.250.12≦0.06-0.250.12≦0.06-0.50.25≦0.06-0.50.1264->1281280.-4252≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.061280.5≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06>1280.50.250.120.120.50.25>1284(120) 菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90M.morganiiGFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-1≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第1回(10株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06第2回(10株)TFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-2≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第3回(10株)MFLX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-40.120.5≦0.06-0.120.120.12≦0.06-0.250.120.25第4回(10株)CMX≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06EM128>128>128>128TOB0.250.50.50.5P.aeruginosaGFLX0.25-320.520.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第1回(50株)LVFX0.25-640.510.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第2回(50株)TFLX0.12->160.250.50.12-40.250.50.12-20.250.50.12-20.250.25第3回(50株)MFLX0.5-128140.5-16120.5-8120.5-812第4回(50株)CMX16->128163216-12832648->12816648->1283232EM64->128>128>128TOB0.25-20.51Pseudomonasspp.GFLX≦0.06-0.50.120.5≦0.06-40.510.12-10.51≦0.06-10.120.5第1回(25株)LVFX≦0.06-0.50.120.25≦0.06-40.50.50.12-10.51≦0.06-10.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-10.250.5≦0.06-0.50.250.5≦0.06-0.50.120.25第3回(25株)MFLX≦0.06-10.251≦0.06-8120.25-2120.12-20.251第4回(25株)CMX0.12-12816640.5->1283212816-128326416-643264EM8->12832>128TOB≦0.06-0.5≦0.060.5S.paucimobilisGFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-10.121≦0.06-0.5──第1回(7株)LVFX0.12-1──≦0.06-2──0.12-20.2520.12-1──第2回(6株)TFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.5──第3回(18株)MFLX≦0.06-0.5──≦0.06-2──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.25──第4回(7株)CMX2-32──1->128──2->128326416-64──EM2-4──TOB0.12-1──S.maltophiliaGFLX0.25-40.51≦0.06-320.540.25-2110.25-111第1回(10株)LVFX0.5-40.520.12-32140.5-2120.5-212第2回(10株)TFLX0.12-20.51≦0.06->160.520.12-10.50.50.12-0.50.50.5第3回(10株)MFLX0.12-20.251≦0.06-320.520.12-10.50.50.25-0.50.50.5第4回(10株)CMX2->128128>12832->128128>1284->128128>12832->128128>128EM128->128128>128TOB8->128128>128菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90M.morganiiGFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-1≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第1回(10株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06第2回(10株)TFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-2≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第3回(10株)MFLX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-40.120.5≦0.06-0.120.120.12≦0.06-0.250.120.25第4回(10株)CMX≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06EM128>128>128>128TOB0.250.50.50.5P.aeruginosaGFLX0.25-320.520.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第1回(50株)LVFX0.25-640.510.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第2回(50株)TFLX0.12->160.250.50.12-40.250.50.12-20.250.50.12-20.250.25第3回(50株)MFLX0.5-128140.5-16120.5-8120.5-812第4回(50株)CMX16->128163216-12832648->12816648->1283232EM64->128>128>128TOB0.25-20.51Pseudomonasspp.GFLX≦0.06-0.50.120.5≦0.06-40.510.12-10.51≦0.06-10.120.5第1回(25株)LVFX≦0.06-0.50.120.25≦0.06-40.50.50.12-10.51≦0.06-10.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-10.250.5≦0.06-0.50.250.5≦0.06-0.50.120.25第3回(25株)MFLX≦0.06-10.251≦0.06-8120.25-2120.12-20.251第4回(25株)CMX0.12-12816640.5->1283212816-128326416-643264EM8->12832>128TOB≦0.06-0.5≦0.060.5S.paucimobilisGFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-10.121≦0.06-0.5──第1回(7株)LVFX0.12-1──≦0.06-2──0.12-20.2520.12-1──第2回(6株)TFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.5──第3回(18株)MFLX≦0.06-0.5──≦0.06-2──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.25──第4回(7株)CMX2-32──1->128──2->128326416-64──EM2-4──TOB0.12-1──S.maltophiliaGFLX0.25-40.51≦0.06-320.540.25-2110.25-111第1回(10株)LVFX0.5-40.520.12-32140.5-2120.5-212第2回(10株)TFLX0.12-20.51≦0.06->160.520.12-10.50.50.12-0.50.50.5第3回(10株)MFLX0.12-20.251≦0.06-320.520.12-10.50.50.25-0.50.50.5第4回(10株)CMX2->128128>12832->128128>1284->128128>12832->128128>128EM128->128128>128TOB8->128128>128(121)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016881 菌名(株数)Drug第1回(2005年)MICrangeMIC50MIC90第2回(2007年)MICrangeMIC50MIC90第3回(2009年)MICrangeMIC50MIC90第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90Acinetobacterspp.GFLX≦0.06-16≦0.060.25第1回(25株)LVFX≦0.06-160.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06->16≦0.060.12第3回(25株)MFLX≦0.06-16≦0.060.25第4回(25株)CMX4-1281632EMTOBH.influenzaeGFLX≦0.06≦0.06≦0.06第1回(50株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06第2回(50株)TFLX≦0.06≦0.06≦0.06第3回(50株)MFLX≦0.06≦0.06≦0.06第4回(50株)CMX≦0.06-0.5≦0.060.5EMTOBABPC0.12->1280.54≦0.06-0.5≦0.060.12≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.25≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.121-641664≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.250.50.12-160.54≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.124-641632≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.120.50.12-6414≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.250.120.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.064-3216324-6416160.25-20.51≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.250.52-16880.25-4220.12->128132収集株数が10株未満であった場合は,MIC50およびMIC90を算定せず.フルオロキノロン系薬と同程度であったが,EMのMIC値は全株で0.12μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも低値を示した.2.グラム陰性菌計4回の調査のM.(B.)catarrhalisに対するGFLXのMIC90は0.06μg/mL以下であり,LVFX,TFLXおよびMFLXと同等であった.Citrobacterspp.に対するGFLXのMIC90は,第2回調査で0.5μg/mLと高値であった以外は0.06μg/mL以下であり,上昇を認めなかった.Klebsiellaspp.に対するGFLXのMIC90は,計4回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFXおよびTFLXと同等であった.Serratiaspp.に対するGFLXのMIC90については,0.25.0.5μg/mLであり,上昇を認めなかった.M.morganiiに対するGFLXのMIC90は≦0.06.0.25μg/mLであり,第2回調査におけるMIC90がやや高かったが,他のフルオロキノロン系薬も同様の傾向であった.P.aeruginosaに対するGFLXのMIC90は0.5.2μg/mLで大きな変動はなく,他のフルオロキノロン系薬と同様の傾向であった.また,第4回調査におけるGFLXのMIC90は0.5μg/mLであり,MFLXの2μg/mLより低かった.Pseudomonasspp.に対するGFLXのMIC90についても0.5.1μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬のMIC90とほぼ同等であった.S.paucimobilisについては,第3回調査を除いて収集株数が少なくMIC90は算出していないが,MICrangeは≦0.06.1μg/mLであり,TFLXおよびMFLXと同等であった.S.maltophiliaに対するGFLXの計4回の調査におけるMIC90は1.4μg/mLであり,第2回調査で若干の上昇を認めたが,他のフルオロキノロン系薬と同様に経年的なMIC90の上昇は認められなかった.Acinetobacterspp.に対するGFLXの過去4回の調査におけるMIC90は≦0.06.0.25μg/mLであり,LVFX,TFLXおよびMFLXとほぼ同等であった.H.influenzaeに対するGFLXのMIC90は,計4回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFXおよびTFLXと同等であった.一方,MFLXではMICが0.12μg/mLを示す菌株が認められた.3.GFLXと対象薬剤のMIC値の相関図1に示したとおり,S.aureusに対するGFLXのMIC値は,MPIPCおよびCMXと相関が認められた.MPIPCとの比較では,MSSAとMRSAで等高線パターンが異なり,MSSAではGFLXのMIC値として0.12μg/mL付近の分位点密度がもっとも高く,MRSAでは4μg/mL付近でもっとも高かった.その他の対象薬剤との比較では,GFLXあるいは対象薬剤のいずれかに低感受性である群,両方に低感受性である群の存在が認められた.一方,CNSでは,GFLXのMIC値はMPIPCおよびTOBと相関が認められた(図2).MSCNSおよびMRCNSでは,それぞれGFLXのMIC値と(122) 図1S.aureus(100株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%して0.12および2μg/mL付近の分位点密度がもっとも高く,等高線パターンはX軸方向に大きく拡がっていた.その他の対象薬剤との比較においても,等高線パターンはX軸方向に拡大していた.図3,4に示したとおり,Corynebacteriumspp.(25株)およびP.aeruginosa(50株)では,GFLXと対象薬剤のMIC値に相関は認められなかった.Corynebacteriumspp.およびP.aeruginosaに対するGFLXのMIC値としては,それぞれ8および0.5μg/mL付近で分位点密度がもっとも高かった.また,Corynebacteriumspp.ではX軸あるいはY軸方向への等高線拡大が認められた一方で,P.aeruginosaでの等高線には拡大が認められなかった.III考按細菌感染症の治療の多くは,病巣の塗抹検鏡から起因菌を(123)予測し,経験的治療(empirictherapy)として抗菌薬の投与が開始される.ついで,培養による起因菌の同定ならびに薬剤感受性の検査結果に基づく抗菌薬の最適化が図られ,標的治療(definitivetherapy)へと移行する.このような治療方針は,外眼部における細菌感染症も例外ではなく,経験的治療としては,広域抗菌スペクトラムを有するフルオロキノロン系薬の点眼剤が汎用されている.1987年のOFLXの登場にはじまり,現在では,第4世代フルオロキノロン4.6)と称されるGFLXおよびMFLXが臨床使用されている.MRSAやMRCNSのGFLXおよびMFLXに対する耐性化は,LVFXおよびTFLXに対する耐性化とは異なり段階的7.9)で,GFLXまたはMFLX感性株のなかにはLVFX耐性株が存在する9).10ヵ年の調査では,GFLXおよびMFLXのMIC90がLVFXに比して若干低く,またGFLXおあたらしい眼科Vol.33,No.6,2016883 図2CoagulaseNegativeStaphylococcus(CNS)(100株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%よびMFLXのMIC90の推移に明らかな上昇傾向は認められなかったが,MRSAに対する抗菌活性がMRCNSに比べ弱い傾向にあった.また,S.aureusに対するGFLXのMIC値はMPIPCおよびCMXと相関したことから,mecA(MPIPC,CMXなどへの耐性化に関与する遺伝子)獲得株では,同時にgrlA(topoisomeraseIVをコードする遺伝子)およびgyrA(DNAgyraseをコードする遺伝子)に変異を有する確率が高いことが示唆された.さらにEMおよびTOBではMIC90が高かったことから,MRSAが起因菌であると判明した際は,クロラムフェニコールなどの感受性を示す抗菌薬の選択を考慮すべきと考えられた.このほか,分位点密度等高線パターンの検討から,S.aureusは多様な薬剤感受性パターンを示し,第4回調査ではMSSAのなかにフルオロキノロン系薬全般のMIC値が高い株が存在したことから,引き続き注視する必要がある.CNSに対するフルオロキノロン系薬のMIC90は,過去3回の調査においては,いずれもMSCNSに比してMRCNSで高かったが,第4回調査におけるMSCNSおよびMRCNSに対するフルオロキノロン系薬のMIC90は同程度であった.したがって,MSCNSの薬剤感受性動向にも注視する必要があると考えられる.ただし,分位点密度等高線パターンから,GFLXはCMX,EMおよびTOBに比して優秀な抗菌活性を有しているといえる.一方,CNSに対するGFLXのMIC値は,S.aureusと同様にMPIPCおよびCMXと相関(CMXとは弱い相関)するとともに,TOBとも相関した.したがって,GFLX耐性(あるいは低感受性)のCNSでは,(124) あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016885(125)程度であった.グラム陰性菌に対するフルオロキノロン系薬のMIC値は,他の系統の薬剤に比べて低く,耐性化も認められず,優れた抗菌活性を示した.グラム陰性菌のうち,とくに角膜炎の起因菌として重要なP.aeruginosaについても耐性化傾向は認められなかった.また,P.aeruginosaに対して,第4回調査の対象薬剤としたTOBはGFLXと同程度のMIC90を示し,GFLXよりも高感受性の株も存在したことから,P.aeruginosaが起因菌として疑われる場合は,GFLXとTOBの組合せが有効であると考えられた.一方,P.aerugi-nosaの分位点密度等高線パターンは非常に特徴的であり,EMに対しては,全株が感受性を示さないという傾向が認められた.P.acnesは,フルオロキノロン系薬に高い感受性を示し,10ヵ年の調査を通じて感受性の低下傾向はみられなかった.一方,第4回調査のP.acnes全株がEMに対して高い感受性を示したことから,P.acnesが起因菌である場合はEMも有効な選択肢であると考えられた.aac(6’)-aph(2’’)(アミノグリコシドへの耐性化遺伝子)10)を有する確率が高いことが示唆された.S.pneumoniaeに対するフルオロキノロン系薬の抗菌活性はPSSP,PISPおよびPRSPに対して同等であり,PCGに対する耐性度には影響されなかった.また,S.pneumoniaeを含むレンサ球菌属に対してはb-ラクタム系およびマクロライド系が第一選択薬として推奨5)されているが,GFLXは同程度の抗菌活性を示した.Corynebacteriumspp.に対するフルオロキノロン系薬のMICrangeは比較的幅広く,抗菌活性は優秀とは言い難いが,フルオロキノロン系薬のなかではGFLXおよびTFLXのMIC90が低かった.一方,Corynebacteriumspp.に対してもっとも強い抗菌活性を示した薬剤はCMXであり,GFLXのMIC値とも相関しなかったことから,Corynebac-teriumspp.を起因菌とする場合はCMXが最適な選択肢であると考えられた.また,第4回調査の対象薬剤としたEMおよびTOBの抗菌活性については,CMXについでTOBが高く,EMでは低感受性株の存在を認めたがGFLXと同図3Corynebacteriumspp.(25株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016885(125)程度であった.グラム陰性菌に対するフルオロキノロン系薬のMIC値は,他の系統の薬剤に比べて低く,耐性化も認められず,優れた抗菌活性を示した.グラム陰性菌のうち,とくに角膜炎の起因菌として重要なP.aeruginosaについても耐性化傾向は認められなかった.また,P.aeruginosaに対して,第4回調査の対象薬剤としたTOBはGFLXと同程度のMIC90を示し,GFLXよりも高感受性の株も存在したことから,P.aeruginosaが起因菌として疑われる場合は,GFLXとTOBの組合せが有効であると考えられた.一方,P.aerugi-nosaの分位点密度等高線パターンは非常に特徴的であり,EMに対しては,全株が感受性を示さないという傾向が認められた.P.acnesは,フルオロキノロン系薬に高い感受性を示し,10ヵ年の調査を通じて感受性の低下傾向はみられなかった.一方,第4回調査のP.acnes全株がEMに対して高い感受性を示したことから,P.acnesが起因菌である場合はEMも有効な選択肢であると考えられた.aac(6’)-aph(2’’)(アミノグリコシドへの耐性化遺伝子)10)を有する確率が高いことが示唆された.S.pneumoniaeに対するフルオロキノロン系薬の抗菌活性はPSSP,PISPおよびPRSPに対して同等であり,PCGに対する耐性度には影響されなかった.また,S.pneumoniaeを含むレンサ球菌属に対してはb-ラクタム系およびマクロライド系が第一選択薬として推奨5)されているが,GFLXは同程度の抗菌活性を示した.Corynebacteriumspp.に対するフルオロキノロン系薬のMICrangeは比較的幅広く,抗菌活性は優秀とは言い難いが,フルオロキノロン系薬のなかではGFLXおよびTFLXのMIC90が低かった.一方,Corynebacteriumspp.に対してもっとも強い抗菌活性を示した薬剤はCMXであり,GFLXのMIC値とも相関しなかったことから,Corynebac-teriumspp.を起因菌とする場合はCMXが最適な選択肢であると考えられた.また,第4回調査の対象薬剤としたEMおよびTOBの抗菌活性については,CMXについでTOBが高く,EMでは低感受性株の存在を認めたがGFLXと同図3Corynebacteriumspp.(25株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90% 以上,2004年の発売から10ヵ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性について検討した結果,経年的な耐性化傾向は認められなかった.したがって,GFLX点眼薬は現時点においても,外眼部感染症に対して有用であると考えられ,今後も外眼部感染症に対する経験的治療(empirictherapy)の主軸として使用されることに問題はないと考えられる.また,第4回調査の分離菌のうちStreptococcusspp.,Enterococcusspp.,Corynebacteriumspp.およびP.aeruginosaは,他のフルオロキノロン系薬に比してGFLXに高い感受性を示した.このうち,Corynebacteriumspp.は重篤な角膜炎の起因菌11)として,P.aeruginosaはコンタクトレンズ装着に伴う角膜炎の起因菌12)として問題視されている.一方,Streptococcusspp.およびEnterococcusspp.は外眼部感染症の起因菌のみならず,濾過胞感染13)や術後眼内炎14)の起因菌としても重要であることから,GFLXは外眼部感染症に対する経験的治療のほか,周術期管理においても有用な選択肢であると考えられる.しかしながら,近年ではフルオロキノロン系薬耐性菌の出現と増加7,15,16)に加886あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016図4P.aeruginosa(50株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%え,新しい抗菌薬開発のモチベーションが世界的に減衰17)しており,新規作用機序を有する抗菌薬の登場には時間を要すると考えられる.したがって,現存の抗菌薬に対する耐性菌の拡大を最小化することがきわめて重要であり,さらなる抗菌薬の適正使用の推進が必要と考えられる.適正使用は,適切な抗菌薬の選択に始まる.すなわち,推定起因菌の感受性に関する最新情報18),各抗菌薬の製剤としての特性も考慮し,経験的治療を開始することが非常に重要である.加えて,当該起因菌の薬剤感受性結果に基づく抗菌薬の最適化,投与期間の最短化への介入も重要である19).今回,筆者らは,眼科臨床由来の2005,2007,2009および2014年分離株の感受性について報告したが,引き続き,感受性動向を監視し,最新情報を医療現場と共有していく必要があると考える.文献1)末信敏秀,石黒美香,松崎薫ほか:細菌性外眼部感染症(126) 分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査.あたらしい眼科28:1321-1329,20112)FukudaH,KishiiR,TakeiMetal:Contributionofthe8-methoxygroupofgatifloxacintoresistanceselectivity,targetpreference,andantibacterialactivityagainstStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother45:1649-1653,20013)羽藤晋,南川洋子,山田昌和:結膜.から分離されたブドウ球菌に対する二変量ノンパラメトリック密度を用いた薬剤感受性分布解析.あたらしい眼科24:663-667,20074)ChawlaB,AgarwalP,TandonRetal:Invitrosusceptibilityofbacterialkeratitisisolatestofourth-generationfluoroquinolones.EurJOphthalmol20:300-305,20105)井上幸次,大橋裕一,浅利誠志ほか:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版作成委員会:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版.日眼会誌117:467-509,20136)DuggiralaA,JosephJ,SharmaSetal:Activityofnewerfluoroquinolonesagainstgram-positiveandgram-negativebacteriaisolatedfromocularinfections:Aninvitrocomparison.IndianJOphthalmol55:15-19,20077)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,20108)NoguchiN,OkiharaT,NamikiYetal:Susceptibilityandresistancegenestofluoroquinolonesinmethicillin-resistantStaphylococcusaureusisolatedin2002.IntJAntimicrobAgents25:374-379,20059)星最智:正常結膜.から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科27:512-517,201010)MartineauF,PicardFJ,LansacNetal:CorrelationbetweentheresistancegenotypedeterminedbymultiplexPCRassaysandtheantibioticsusceptibilitypatternsofStaphylococcusaureusandStaphylococcusepidermidis.AntimicrobAgentsChemother44:231-238,200011)DasS,RaoAS,SahuSKetal:Corynebacteriumsppascausativeagentsofmicrobialkeratitis.BrJOphthalmol:bjophthalmol-2015-306749PublishedOnlineFirst:13November201512)KondaN,MotukupallySR,GargPetal:Microbialanalysesofcontactlens-associatedmicrobialkeratitis.OptomVisSci91:47-53,201413)YamamotoT,KuwayamaY,KanoKetal:Clinicalfeaturesofbleb-relatedinfection:a5-yearsurveyinJapan.ActaOphthalmol91:619-624,201314)鈴木崇,戸所大輔,小早川信一郎ほか:腸球菌による白内障術後眼内炎の臨床像の検討.日眼会誌118:22-27,201415)EguchiH,KuwaharaT,MiyamotoTetal:High-levelfluoroquinoloneresistanceinophthalmicclinicalisolatesbelongingtothespeciesCorynebacteriummacginley.JClinMicrobiol46:527-532,200816)HooperDC:Mechanismsoffluoroquinoloneresistance.DrugResistUpdat2:38-55,199917)InfectiousDiseasesSocietyofAmerica:The10x’20initiative:pursuingaglobalcommitmenttodevelop10newantibacterialdrugsby2020.ClinInfectDis50:10811083,201018)OliveiraAD,Hofling-LimaAL,BelfortRJretal:Fluoroquinolonesusceptibilitiestomethicillin-resistantandsusceptiblecoagulase-negativeStaphylococcusisolatedfromeyeinfection.ArqBrasOftalmol70:286-289,200719)厚生労働省医政局地域医療計画課:「薬剤耐性菌対策に関する提言」の送付について.事務連絡,平成27年4月1日***(127)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016887

細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査

2011年9月30日 金曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(101)1321《原著》あたらしい眼科28(9):1321?1329,2011cはじめにOfloxacin(OFLX)点眼薬が1987年に上市されて以降,現在までにnorfloxacin(NFLX),lomefloxacin(LFLX),levofloxacin(LVFX),gatifloxacin(GFLX),tosufloxacin(TFLX)ならびにmoxifloxacin(MFLX)が点眼液として開発され,フルオロキノロン系抗菌薬の点眼薬が細菌性外眼部感染症に対する第一選択となって久しい.これらフルオロキノロン系抗菌薬は,細菌のDNA合成に関与するDNAgyraseおよびtopoisomeraseIVという両酵素を阻害することで抗菌活性を示し,また,各薬剤のキノロ〔別刷請求先〕末信敏秀:〒541-0046大阪市中央区平野町2-5-8千寿製薬株式会社開発本部育薬企画部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,Post-MarketingSurveillanceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2-5-8Hiranomachi,Chuo-ku,Osaka541-0046,JAPAN細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査末信敏秀*1石黒美香*1松崎薫*2池田文昭*2秦野寛*3*1千寿製薬株式会社開発本部育薬企画部*2三菱化学メディエンス株式会社化学療法研究室*3ルミネはたの眼科InvestigationofBacterialIsolatesRecoveredfromOcularInfectionsRegardingSusceptibilitytoGatifloxacinandOtherAntimicrobialAgentsToshihideSuenobu1),MikaIshikuro1),KaoruMatsuzaki2),FumiakiIkeda2)andHiroshiHatano3)1)Post-MarketingSurveillanceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)ChemotherapyDivision,MitsubishiChemicalMedienceCorporation,3)LumineHatanoEyeClinic細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のgatifloxacin(GFLX)および他の点眼用抗菌薬に対する感受性動向を検討するため,2005年,2007年および2009年の各1年間に,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より分離された1,911菌株を対象に,GFLXおよびその他の点眼用抗菌薬に対する感受性を測定した.グラム陽性菌では,過去3回の調査を通じてGFLXに対する感受性の低下は認められず,moxifloxacin(MFLX)およびtosufloxacin(TFLX)に対する感受性とほぼ同等であり,また,他のフルオロキノロン系薬に対してよりもやや高い感受性を示す傾向が認められた.一方,グラム陰性菌においても,3回の調査を通じてGFLXに対する感受性の低下は認められず,levofloxacin(LVFX)およびTFLXに対する感受性とほぼ同等で,他のフルオロキノロン系薬に対してよりもやや高い感受性を示す傾向が認められた.以上,2004年の発売から5カ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性に経年的な耐性化傾向は認められなかったことから,GFLXは細菌性外眼部感染症に対して有用な抗菌薬であると考えられた.Isolatesrecoveredfromocularinfectiouspatientsbetween2005and2009wereassessedinvitroregardingtheirsusceptibilitiestogatifloxacin(GFLX)andotherophthalmicantimicrobialagents.TheinvitroactivityofGFLXagainsttheisolateswascomparedtothatoflevofloxacin(LVFX),ofloxacin(OFLX),lomefloxacin(LFLX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX)andcefmenoxime(CMX).TheactivitiesofGFLXagainstgram-positiveandnegativebacteriascarcelychangedduringtheinvestigationalperiod.TheactivityofGFLXagainstgrampositiveisolatewasalmostequaltothoseofMFLXandTFLX,andwashigherthanotherquinolones.Againstgram-negativeisolates,GFLXantibacterialactivitywasalmostequaltothoseofLVFXandTFLX,andmayhavebeenslightlystrongerthanotherquinolones.Sinceitdidnotexhibitdiminishedactivityduringtheperiodofthisinvestigation,GFLXisconcludedtobepotentlyactiveagainstbacterialisolatesfromocularinfectiouspatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(9):1321?1329,2011〕Keywords:ガチフロキサシン,感受性,サーベイランス,フルオロキノロン,眼感染症.gatifloxacin,susceptibility,surveillance,fluoroquinolones,ocularinfection.1322あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(102)ン環における構造上の相違が両酵素に対する阻害活性に影響を及ぼす.GFLXの構造上の特徴は,キノロン環7位に3-メチルピペラジニル基および8位にメトキシ基を有することであり,3-メチルピペラジニル基による増強効果は比較的小さいと考えられる一方で,8位メトキシ基はDNAgyrase阻害活性の向上に寄与している1).すなわち,DNAgyraseおよびtopoisomeraseIVに対する阻害活性強度が近似することで,両酵素を同程度かつ強力に阻害2)(デュアル・インヒビター)する結果,Staphylococcusaureus2,3),Streptococcuspneumoniae4)あるいはEscherichiacoli5)などに対する抗菌活性が増強しているものと考えられる.同時に,8位メトキシ基は両酵素の変異株の出現頻度低減にも寄与していることから,耐性菌が生じにくいことが示唆されている6).このような特徴を有するGFLXは,2004年に点眼薬として上市されているが,抗菌薬の宿命として,耐性菌の発現は一般的に不可避であることから,今回筆者らは,細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のGFLXおよび他の点眼用抗菌薬に対する感受性動向を検討するため,上市以降の5年間に計3回の感受性調査を実施したので報告する.I材料および方法1.試験薬剤今回の試験では,gatifloxacin(GFLX),levofloxacin(LVFX),ofloxacin(OFLX),lomefloxacin(LFLX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX),cefmenoxime(CMX)の7薬剤を用いた.なお,Staphylococcusにはoxacillin(MPIPC),StreptococcuspneumoniaeにはpenicillinG(PCG),Haemophilusinfluenzaeにはampicillin(ABPC)を追加した.2.試験菌株表1に示したとおり,2005年,2007年および2009年の各1年間における目標収集株数を設定し,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より検体採取,分離,同定された順に目標株数に達するまでの収集菌株(総数1,911株)を表1試験菌株試験菌各回の目標収集株数収集株数第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)StaphylococcusStaphylococcusaureus(Methicillin-susceptibleS.aureus:MSSA,Methicillin-resistantS.aureus:MRSA)100100100100Coagulase-negativeStaphylococcus(CNS)100100100100StreptococcusStreptococcuspneumoniae50505050Streptococcusspecies(S.pneumoniae以外)25252525Enterococcusspecies25252525Corynebacteriumspecies25252525Moraxella(Branhamella)catarrhalis25252525Neisseriagonorrhoeae10500EnterobacteriaceaeCitrobacterspecies10101010Klebsiellaspecies10101010Serratiaspecies25252525Morganellamorganii10101010Nonglucosefermentativegram-negativerod(NFR)Pseudomonasaeruginosa50505050Pseudomonasspecies(P.aeruginosa以外)25252525Sphingomonaspaucimobilis257618Stenotrophomonasmaltophilia10101010Acinetobacterspecies25252525HaemophilusHaemophilusinfluenzae50505050Haemophilusaegyptius10101010嫌気性菌Propionibacteriumacnes50505050計660637631643(103)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111323試験菌株とした.試験菌株は分離後,最小発育阻止濃度(MIC)測定時まで保存液(スキムミルク)中にて?70℃以下で保存した.なお,これらの試験菌株は,文部科学省および厚生労働省より公表された「疫学研究に関する倫理指針」を遵守して使用した.3.薬剤感受性測定試験菌株の薬剤感受性測定は,ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute(CLSI)に準じた微量液体希釈法ならびに寒天平板希釈法(Neisseriagonorrhoeaeのみ)にて実施した.微量液体希釈法による測定には,フローズンプレート(栄研化学)を使用した.測定培地は,S.pneumoniae,Streptococcusspp.およびCorynebacteriumspp.については,2%ウマ溶血液添加cation-adjustedMuellerHintonbroth(CAMHB)を用い,H.influenzaeおよびH.aegyptiusにはHTMbroth(hematin15μg/mL,b-NAD15μg/mLおよびYeastExtract5%添加CAMHB)を用い,その他の好気性菌にはCAMHBを用いた.嫌気性菌については,5%ウマ溶血液添加Brucellabroth(hemin5μg/mLおよびvitaminK11μg/mLも添加)を用いた.好気性菌は約5×104~1×105CFU(colonyformingunit)/well,嫌気性菌は約1~2×105CFU/wellとなるように各wellに菌を接種後,好気性菌は35℃,20~22時間,好気培養,嫌気性菌は35℃,46~48時間,嫌気培養を行った.N.gonorrhoeaeの感受性は寒天平板希釈法により測定し,測定培地として1%DGS含有GCagar(GS寒天培地)を用いて約104CFU/spotとなるように菌を接種し,35℃,5%CO2条件下で20~24時間培養を行った.判定は,対照に用いた薬剤不含有培地における菌の発育を確認した後,菌の発育が認められない最小薬剤濃度をMICとした.4.耐性基準各菌種の耐性の定義はCLSIの基準に従い,以下のとおりとした.S.aureusは,MPIPCのMIC値が2μg/mL以下のものをsusceptible(MSSA),4μg/mL以上のものをresistant(MRSA)とした.Coagulase-negativeStaphylococcus(CNS)は,MPIPCのMIC値が0.25μg/mL以下のものをsusceptible(MSCNS),0.5μg/mL以上のものをresistant(MRCNS)とした.S.pneumoniaeはPCGのMIC値が0.06μg/mL以下のものをsusceptible(PSSP),0.12~1μg/mLのものをintermediate(PISP),2μg/mL以上のものをresistant(PRSP)とした.II結果1.グラム陽性菌2005年(第1回),2007年(第2回)および2009年(第3回)の各年に外眼部感染症患者から分離された菌株に対する各種抗菌薬のMICの成績を表2に示した.過去3回の調査においてMSSAに対するGFLXのMIC90は0.12~0.25μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬と同様に大きな変動は認められなかった.MRSAに対するGFLXのMIC90は32~128μg/mLであり大きな変動は認められず,MFLXのMIC90は32~64μg/mL,他のフルオロキノロン系薬のMIC90は>16または>128μg/mLであった.MSCNSについては,第3回調査におけるGFLXのMIC90は0.12μg/mLであり,第1回調査の成績と同等であったが,第2回調査のみ1μg/mLと高値であった.MRCNSについては,第3回調査におけるGFLXのMIC90は2μg/mLとMFLXと同等であり,過去2回の調査成績と変化はなかった.PSSPおよびPISPに対するGFLXのMIC90は過去3回の調査を通じて0.25μg/mLであり,MFLXおよびTFLXと同等であった.一方,PRSPの第1回,第2回および第3回において収集された菌株数は,それぞれ2株,4株および6株と少なかったが,GFLXのMICはPSSPおよびPISPに対するMICとほぼ同等であった.Streptococcusspp.およびEnterococcusspp.に対するGFLXのMIC90は3回の調査を通じて各々0.5および1μg/mLであり,変動は認められなかった.他のフルオロキノロン系薬においてもMIC90の変動は認められなかった.一方,CMXのEnterococcusspp.に対するMIC90は3回の調査すべてにおいて>128μg/mLであった.Corynebacteriumspp.に対するGFLXのMIC90も過去3回の調査を通じて16μg/mLでありフルオロキノロン系薬のなかでは低値であったが,CMXのMIC90は0.25~0.5μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも低値を示した.過去3回の調査におけるP.acnesに対するGFLXのMIC90は0.25~0.5μg/mLであり,MFLXと同等で他のフルオロキノロン系薬よりも低値であった.2.グラム陰性菌過去3回の調査のM.(B.)catarrhalisに対するGFLXのMIC90は0.06μg/mL以下であり,LVFX,TFLXおよびMFLXと同等であった.N.gonorrhoeaeは第1回調査においてのみ5株が収集されたが,GFLXのMICrangeは0.25~2μg/mLであり,フルオロキノロン系薬のなかで最も低値を示した.第3回調査のCitrobacterspp.に対するGFLXのMIC90は0.06μg/mL以下で第1回調査成績と同等であったが,第2回調査では0.5μg/mLと高値であり,同様の傾1324あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(104)表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび対照薬のMIC推移(1)MIC:μg/mL菌名(株数)Drug第1回第2回第3回MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90グラム陽性菌MSSA第1回(81株)第2回(78株)第3回(76株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.061???????4816>128824≦0.060.250.51≦0.06≦0.0620.120.250.51≦0.06≦0.062≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.061???????2481282120.120.250.51≦0.06≦0.0610.120.250.51≦0.06≦0.062≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.061???????48161284220.120.250.51≦0.06≦0.0620.250.5120.120.122MRSA第1回(19株)第2回(22株)第3回(24株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.120.250.51≦0.06≦0.068???????>128>128>128>128>16128>128481612842>128128>128>128>128>1664>128≦0.060.250.51≦0.06≦0.064???????64>128>128>128>1632>1282816128426432>128>128>128>1632>1280.120.250.51≦0.06≦0.068???????>128>128>128>128>16128>12883264>128>168>128128>128>128>128>1664>128MSCNS第1回(60株)第2回(52株)第3回(60株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.25???????28161281622≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.50.120.250.51≦0.06≦0.061≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.25???????2816128>16410.120.250.51≦0.06≦0.060.51243220.51≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.25???????248644110.120.250.51≦0.06≦0.060.50.120.250.51≦0.060.121MRCNS第1回(40株)第2回(48株)第3回(40株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.062???????21632128164161243220.5424864418≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.5???????21632>128>164162486441428161288216≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.061???????64>128>128>128>16328148322142816128828PSSP第1回(38株)第2回(32株)第3回(29株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.120.250.52≦0.06≦0.06≦0.06???????0.51280.250.250.250.250.5140.120.120.120.251280.120.120.250.120.250.52≦0.06≦0.06≦0.06???????0.51280.250.250.250.251280.120.120.120.251280.120.120.250.120.514≦0.06≦0.06≦0.06???????0.51280.250.250.50.251280.120.120.120.251280.250.250.25PISP第1回(10株)第2回(14株)第3回(15株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.120.512≦0.06≦0.060.25???????0.251280.120.1210.250.5140.120.120.50.250.5140.120.1210.120.514≦0.06≦0.060.12???????0.251280.120.1210.250.5140.120.120.250.251280.120.120.50.120.512≦0.06≦0.06≦0.06???????0.251280.250.1210.250.5140.120.120.50.251280.120.121PRSP第1回(2株)第2回(4株)第3回(6株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.251280.120.120.5──────────────0.251240.120.120.5???????0.524160.50.54──────────────0.25124?80.120.120.5?4──────────────(105)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111325菌名(株数)Drug第1回第2回第3回MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90Streptococcusspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06≦0.06???????0.512160.250.2520.250.5180.120.12≦0.060.51280.250.250.25≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06≦0.06???????0.524160.50.540.250.5140.120.12≦0.060.51280.250.25≦0.060.120.250.52≦0.06≦0.06≦0.06???????0.524160.250.2520.251280.120.12≦0.060.51280.250.250.25Enterococcusspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.51240.250.258???????124811>1280.51240.250.2512812480.50.5>1280.251240.250.251???????12480.50.5>1280.51280.50.56412480.50.5>1280.251240.250.258???????12480.50.5>1280.51280.50.512812480.50.5>128Corynebacteriumspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.060.120.5≦0.06≦0.06≦0.06???????16128>12812816320.583264324160.121664128648320.5≦0.06≦0.060.120.5≦0.06≦0.06≦0.06???????>128>128>128>128>166410.250.5120.50.250.251664>12812816320.25≦0.06≦0.060.120.5≦0.06≦0.06≦0.06???????32>128>128>128>16640.50.250.5120.250.120.2516128>128>128>16320.5P.acnes第1回(50株)第2回(50株)第3回(50株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.250.250.51410.25≦0.060.250.51410.250.50.250.5120.120.25≦0.06???????0.512820.50.50.250.51410.250.120.512410.50.250.250.510.50.25≦0.06???4???0.51210.50.50.250.51410.250.120.512410.50.50.250.520.50.12≦0.06??????0.51410.250.5グラム陰性菌M.(B.)catarrhalis第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.250.12?0.25≦0.06?0.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?1≦0.06?1≦0.06?0.5N.gonorrhoeae第1回(5株)第2回(0株)第3回(0株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.250.5180.250.5≦0.06???????281664440.25──────────────Citrobacterspp.第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????0.250.250.50.50.250.50.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.120.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????0.50.250.510.2511≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.50.250.50.50.2510.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.120.12≦0.060.120.25≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.25表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび対照薬のMIC推移(2)MIC:μg/mL1326あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(106)菌名(株数)Drug第1回第2回第3回MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90Klebsiellaspp.第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.120.25≦0.060.120.25≦0.06≦0.06≦0.060.120.12≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.120.25≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.120.12≦0.060.120.12≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06?0.25≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.250.12?0.25≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.25≦0.06?0.12≦0.06?0.5≦0.06≦0.06?0.12Serratiaspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????1124120.5≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.120.50.250.50.50.250.50.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????0.50.512110.50.250.120.250.250.120.250.120.50.250.50.50.2510.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????11241220.120.120.250.250.120.250.120.50.250.50.50.250.51M.morganii第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.12≦0.060.120.120.120.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????1122240.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.250.120.250.250.250.50.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06≦0.06?0.25≦0.06≦0.06?0.12≦0.06≦0.06?0.25≦0.06?0.12≦0.06?1≦0.06?0.12P.aeruginosa第1回(50株)第2回(50株)第3回(50株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.250.250.50.50.120.516???????3264128>128>16128>1280.50.5120.2511621240.54320.250.250.50.50.120.516???????8816164161280.50.5120.2513211220.52640.250.250.50.50.120.58???????448828>1280.50.5110.2511611220.5264Pseudomonasspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12???????0.50.5110.2511280.120.120.250.25≦0.060.25160.50.250.510.25164≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5???????448818>1280.50.5110.2513210.5120.521280.120.120.250.5≦0.060.2516???????11240.521280.50.5110.2513211220.5264S.paucimobilis第1回(7株)第2回(6株)第3回(18株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.251≦0.06≦0.062???????0.51280.50.532──────────────≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.061???????124812>128──────────────≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.062???????124822>1280.120.250.51≦0.06≦0.063212481164S.maltophilia第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.250.5120.120.122???????448822>1280.50.5120.50.25128124411>128≦0.060.120.251≦0.06≦0.0632???????32326464>1632>1280.51240.50.5128448822>1280.250.5120.120.124???????224811>12811240.50.512812440.50.5>128表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび対照薬のMIC推移(3)MIC:μg/mLあたらしい眼科Vol.28,No.9,20111327向が他のフルオロキノロン系薬でも認められた.Klebsiellaspp.に対するGFLXのMIC90は,過去3回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFXおよびTFLXと同等であった.Serratiaspp.に対するGFLXのMIC90については,すべての調査を通じて0.5μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬と同様の傾向であった.M.morganiiに対するGFLXのMIC90は≦0.06~0.25μg/mLであり,第2回調査におけるMIC90がやや高かったが,他のフルオロキノロン系薬も同様の傾向であった.P.aeruginosaに対するGFLXのMIC90は1~2μg/mLで大きな変動はなく,他のフルオロキノロン系薬と同様の傾向であった.Pseudomonasspp.に対するGFLXのMIC90についても0.5~1μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬のMIC90とほぼ同等であった.S.paucimobilisについては,第3回調査におけるGFLXのMIC90は1μg/mLであり,TFLXおよびMFLXと同等であった.なお,S.paucimobilisは第1回および第2回調査時の収集株数が各々7株および6株と少なかったが,第3回調査のGFLXのMICとほぼ同等であった.S.maltophiliaに対するGFLXの過去3回の調査におけるMIC90は1~4μg/mLであり,第2回調査で若干の上昇が認められたが,他のフルオロキノロン系薬と同様に経年的なMIC90の上昇は認められなかった.Acinetobacterspp.に対するGFLXの過去3回の調査におけるMIC90は0.12~0.25μg/mLであり,LVFX,TFLXおよびMFLXとほぼ同等であった.ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌に対するCMXのMIC90は32~>128μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも高値であった.H.influenzaeおよびH.aegyptiusに対するGFLXのMIC90は,計3回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFX,OFLXおよびTFLXと同等であった.一方,LFLXおよびMFLXではMICが0.12μg/mLを示す菌株(H.influenzae)が認められた.III考按細菌感染症の治療において,病巣擦過物の塗抹検鏡および培養による起炎菌の同定ならびに抗菌薬に対する感受性を確認して有効な抗菌薬が選択されるべきであるが,実際には検査結果を待たずして経験的治療が開始されることが多い.細菌性外眼部感染症においても,広域抗菌スペクトラムを有するフルオロキノロン系薬の点眼剤が汎用されているが,近年ではフルオロキノロン系薬耐性菌の出現と増加が報告されており7?9),起炎菌の感受性動向を調査することは,非常に重要になっている10).フルオロキノロン系薬の作用標的は,DNAgyraseおよびtopoisomeraseIVであるが,両酵素のQRDR(quinolone(107)菌名(株数)Drug第1回第2回第3回MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90Acinetobacterspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.064???????161632128>1616128≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06160.250.5110.120.2532≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.061???????0.50.5110.25164≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06160.120.250.51≦0.060.1264≦0.06?0.12≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06160.120.250.51≦0.060.1232≦0.06?0.250.12?0.50.25?1≦0.06≦0.06?0.124?64H.influenzae第1回(50株)第2回(50株)第3回(50株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMXABPC≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.54≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.250.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.54≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.121≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.54≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.5≦0.06?0.5≦0.06?0.50.12?>1280.12?160.12?64H.aegyptius第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.5≦0.06?0.25≦0.06?0.5収集株数が10株未満であった場合は,MIC50およびMIC90を算定せず.表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび対照薬のMIC推移(4)MIC:μg/mL1328あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011resistance-determinationregion)にアミノ酸置換をひき起こす遺伝子変異が耐性化に密接に関連している.Noguchiら11)は,2002年に分離されたMRSA100株の97%がgrlA(topoisomeraseIVをコードする遺伝子)あるいはgyrA(DNAgyraseをコードする遺伝子)に変異を有し,いずれか一方の変異株ではLVFXへの感受性低下が認められたが,GFLXおよびMFLXに対する感受性の低下はほとんどなく,grlAおよびgyrA両遺伝子が変異することによりGFLXおよびMFLXに対しても高度耐性化したと報告している.今回の調査においても,MRSAに対するGFLXおよびMFLXのMIC90は,他のフルオロキノロン系薬に比して低い傾向が認められた.同様にMcDonaldら7)は,CNSにおけるフルオロキノロン系薬への耐性化についてもMRSAと同様に段階的であり,はじめにLVFXおよびTFLXに耐性化し,ついでGFLXおよびMFLXにも耐性化することを報告している.星12)は正常結膜?から分離されたMRCNSにおけるフルオロキノロン系薬耐性率がMSCNSに比して有意に高いことに加え,GFLXまたはMFLX感性株のなかにはLVFX耐性株が存在することを報告している.今回の調査においても,MRCNSに対するGFLXおよびMFLXのMIC90は,他のフルオロキノロン系薬よりも低い傾向にあり,CNSのGFLXおよびMFLXに対する耐性率は,LVFXに対する耐性率と相違したとするLingminら13)の報告と一致している.このような耐性率相違の要因としては,LVFXの一次作用標的がtopoisomeraseIVであるのに対し,その化学構造に共通してキノロン環8位にメトキシ基を有するGFLXおよびMFLX14)では,DNAgyraseおよびtopoisomeraseIVの両酵素をバランスよく強力に阻害する2,7)ことが反映されているものと考えられる.一方,S.pneumoniaeに対するフルオロキノロン系薬の抗菌活性はPSSP,PISPおよびPRSPに対して同等であり,PCGに対する耐性度には影響されなかった.Corynebacteriumspp.はtopoisomeraseIVを欠くことから,主としてgyrA変異によりフルオロキノロン系薬に対する耐性が獲得されると考えられている8).今回の調査においてGFLXが比較的高い抗菌活性を示した要因としては,GFLXのDNAgyraseに対する阻害活性が変異の影響を受け難いためと考えられる.山中ら15)も,Corynebacteriumspp.ではgyrAにコードされるSer-83およびAsp-87のアミノ酸変異パターンによってフルオロキノロン耐性度が変化し,両アミノ酸が変異したフルオロキノロン高度耐性株に対してGFLXのMICが最も低かったことを報告している.なお,Corynebacteriumspp.に対して最も強い抗菌活性を示した薬剤はCMXであり,小林らの報告16)と同様であった.グラム陰性菌およびP.acnesはフルオロキノロン系薬に高い感受性を示し,3回の調査を通じて感受性の低下傾向はみられず,多剤耐性株(MDRP)の出現が問題視されているP.aeruginosaについても耐性化傾向は認められなかった.以上,2004年の発売から5カ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性について検討した結果,経年的な耐性化傾向は認められなかった.したがって,GFLX点眼薬は,現時点においてもなお,外眼部感染症に対して有用であると考えられた.一方,抗菌薬にとって,その使用頻度に伴う耐性化は一般的に不可避であり,継続して眼科臨床分離株の感受性を監視し,感受性動向の情報を医療現場と共有することが肝要であると考えられた.一般に,抗菌薬耐性はCLSIの基準に基づき論じられることが多いが,CLSIのブレークポイントは全身性抗菌薬を対象としており,点眼抗菌薬について同様の基準が適応できるか明らかではない.点眼抗菌薬の臨床効果と分離株の感受性との関係についても,引き続き検討していく必要があると考えられる.文献1)TakeiM,FukudaH,KishiiRetal:ContributionoftheC-8-MethoxygroupofgatifloxacintoinhibitionoftypeIItopoisomerasesofStaphylococcusaureus.AntimicrobAgentsChemother46:3337-3338,20022)TakeiM,FukudaH,KishiiRetal:Targetpreferenceof15quinolonesagainstStaphylococcusaureus,basedonantibacterialactivitiesandtargetinhibition.AntimicrobAgentsChemother45:3544-3547,20013)FukudaH,HoriS,HiramatsuK:Antimicrobialactivityofgatifloxacin(AM-1155,CG5501,BMS-206584),anewlydevelopedfluoroquinolone,againstsequentiallyacquiredquinolone-resistantmutantsandthenorAtransformantofStaphylococcusaureus.AntimicrobAgentsChemother42:1917-1922,19984)KishiiR,TakeiM,FukudaHetal:Contributionofthe8-methoxygrouptotheactivityofgatifloxacinagainsttypeIItopoisomerasesofStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother42:1917-1922,19985)LuT,ZhaoXandDricaK:Gatifloxacinactivityagainstquinolone-resistantgyrase:allele-specificenhancementofbacteriostaticandbactericidalactivitiesbytheC-8-methoxygroup.AntimicrobAgentsChemother43:2969-2974,19996)FukudaH,KishiiR,TakeiMetal:Contributionofthe8-methoxygroupofgatifloxacintoresistanceselectivity,targetpreference,andantibacterialactivityagainstStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother45:1649-1653,20017)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,20108)EguchiH,KuwaharaT,MiyamotoTetal:High-levelfluoroquinoloneresistanceinophthalmicclinicalisolatesbelongingtothespeciesCorynebacteriummacginleyi.JClinMicrobiol46:527-532,2008(108)あたらしい眼科Vol.28,No.9,201113299)HooperDC:Mechanismsoffluoroquinoloneresistance.DrugResistUpdat2:38-55,199910)OliveiraAD,Hofling-LimaAL,BelfortRJretal:Fluoroquinolonesusceptibilitiestomethicillin-resistantandsusceptiblecoagulase-negativeStaphylococcusisolatedfromeyeinfection.ArqBrasOftalmol70:286-289,200711)NoguchiN,OkiharaT,NamikiYetal:Susceptibilityandresistancegenestofluoroquinolonesinmethicillin-resistantStaphylococcusaureusisolatedin2002.IntJAntimicrobAgents25:374-379,200512)星最智:正常結膜?から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科27:512-517,201013)LingminHMS,ChristopherNT,HerminiaMK:One-dayapplicationoftopicalmoxifloxacin0.5%toselectforfluoroquinolone-resistantcoagulase-negativeStaphylococcus.JCataractRefractSurg35:1715-1718,200914)DilekI,DavidCH:MechanismsandfrequencyofresistancetogatifloxacinincomparisontoAM-1121andciprofloxacininStaphylococcusaureus.AntimicrobAgentsChemother45:2755-2764,200115)山中千尋,江口洋:コリネバクテリウムの分子疫学について教えてください.あたらしい眼科26:226-228,200916)小林寅喆,松崎薫,志藤久美子ほか:細菌性眼感染症患者より分離された各種新鮮臨床分離株のLevofloxacin感受性動向について.あたらしい眼科23:237-243,2006(109)***

ボリコナゾール眼局所投与の使用経験

2010年4月30日 金曜日

———————————————————————-Page1(115)5310910-1810/10/\100/頁/JCOPY46回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科27(4):531534,2010cはじめに抗真菌化学療法剤の開発には,種々の転機があった.1960年代にアンホテリシンBが初めて臨床導入され,Fusa-rium属やAspergillus属など重症眼感染症に有効な抗真菌薬として汎用された.しかし,その強い副作用から眼科医には扱いにくい薬剤であった.さらに主として酵母を対象としてフルシトシンが開発されたが,長期使用に伴い高頻度で耐性株が出現した.つぎに第一世代のアゾール系(イミダゾール)〔別刷請求先〕佐々木香る:〒860-0027熊本市西唐人町39番地出田眼科病院Reprintrequests:KaoruAraki-Sasaki,M.D.,Ph.D.,IdetaEyeHospital,39Nishi-Tohjinmachi,KumamotoCity860-0027,JAPANボリコナゾール眼局所投与の使用経験佐々木香る*1砂田淳子*2浅利誠志*2園山裕子*1子島良平*3宮井尊史*3宮田和典*3出田隆一*1*1出田眼科病院*2大阪大学附属病院感染制御部*3宮田眼科病院EcacyandSafetyof1%VoriconazolEyedropsKaoruAraki-Sasaki1),AtsukoSunada2),SeishiAsari2),HirokoSonoyama1),RyoheiNejima3),TakashiMiyai3),KazunoriMiyata3)andRyuichiIdeta1)1)IdetaEyeHospital,2)DepartmentofInfecionControlandPrevention,OsakaUniversityHospital,3)MiyataEyeHospital目的:角膜真菌症に対するボリコナゾール(VRCZ)の眼局所への使用経験において,有用性,安全性,保存性に関する知見を報告する.方法:出田眼科病院,宮田眼科病院にてVRCZ点眼液(生理食塩水を用いて1%の点眼液に調整)を処方した角膜真菌症8例(平均年齢74歳)における臨床的効果を検討するとともに,うち4例において分離株に対する各種抗真菌薬の感受性を比較した.また,レトロスペクテイブに薬剤毒性による臨床所見の有無を調べた.さらに,調整後のVRCZ点眼液の安定性について滴下法を用いて確認した.結果:VRCZは,水溶性で容易に溶解可能であり,結晶の析出は認められなかった.さらに冷凍冷蔵保存にて固形物の析出は認めなかった.分離された株はFusariumsolani3株,Beauveriabassiana2株,Aspergillusavus1株,Penicillium1株,Scedosporium1株であり,臨床的にはVRCZ点眼液は全例で有用であった.VRCZを含む感受性試験を施行できた4株に対してVRCZは高度感受性を有していた.VRCZ点眼液の使用期間は平均6カ月であったが,この間薬剤毒性による臨床所見は認められなかった.点眼液調整後3週間冷蔵保存したVRCZ点眼液の薬剤感受性を検討したところ,抗真菌活性の低下は認めず,5週間冷凍保存した点眼液についても良好な抗真菌活性を示した.結論:VRCZ点眼液は種々の糸状真菌に対し良好な感受性を示し,薬剤毒性を認めず,調整後も長期にわたりその抗真菌活性を持続することから角膜真菌症の治療に有用であると考えられる.Purpose:Toreportontheecacy,safetyandstoragestabilityof1%voriconazoleyedrops(VRCZ-ed)inthetreatmentofkeratomycosis.Methods:EightpatientswithkeratomycosisweretreatedwithVRCZ-edatIdetaEyeHospitalandMiyataEyeHospital.Ecacywasobservedclinicallyandsensitivitytotheisolatedfungi(Fusari-umsolani,Beauveriabassiana,Aspergillusavus,PenicilliumandScedosporium)wastestedbyE-testTMandAstyTM.Drugtoxicitywascheckedbyslit-lampexamination.Results:VRCZ-edwasclear,withnoprecipitationafterfreezingandthawing.VRCZ-edwaseectiveinallcasesandsensitivetoallisolatedfungi.Notoxickeratopa-thywasobservedduring6months’treatmentwithVRCZ-ed.VRCZ-edmaintaineditsecacyfor3weeksafterdilutionand5weeksafterfreezing.Conclusion:VRCZ-edisusefulforitsecacy,safetyandstoragestability.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(4):531534,2010〕Keywords:ボリコナゾール,角膜真菌症,感受性,抗真菌薬.voriconazol,cornealmycosis,sensitivity,antimy-coticdrug.———————————————————————-Page2532あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(116)抗真菌薬であるミコナゾールが開発され,さらに安定性を目指して第二世代アゾール系であるトリアゾール系化合物,フルコナゾールおよびイトラコナゾールが開発された.ボリコナゾール(以下,VRCZ)は第三世代アゾール系のトリアゾール化合物として,これらアゾール系抗真菌薬の弱点を改良し開発された1).すでに,VRCZの全身投与は各種糸状菌による角膜炎,眼内炎の分離株33株に対して良好な感受性を有することが報告されている2,3).また,1%に調整したVRCZ点眼液は,従来治療に難渋していたFusarium属やAspergillus属による角膜炎に対して良好な効果を示したという報告が散見される47).そこで,VRCZ点眼液の効果に関するデータを集積する意味で,筆者らの施設における使用経験を報告するとともに,1%VRCZ点眼液の有効性,安全性および安定性に関する検討を行った.I方法対象は宮田眼科病院,出田眼科病院においてVRCZ点眼液にて加療した角膜真菌症8例8眼,男性4例,女性4例,平均年齢74歳であった.VRCZ点眼液はブイフェンドTM200mg静注用製剤を無菌的に生理食塩水で1%溶液に調整して作製した.検討項目は1%VRCZ点眼液の有効性,安全性,保存性である.VRCZ点眼液の有効性については,臨床的効果および分離株を用いた薬剤感受性測定および点眼濃度に基づく薬剤感受性試験にて判定した.薬剤感受性測定は,E-testTMおよびAstyTMを用い,VRCZおよびその他の抗真菌薬:アンホテリシンB(AMPH-B),フルシトシン(5-FC),フルコナゾール(FLCZ),イトラコナゾール(ITCZ),ミコナゾール(MCZ),ミカファンギン(MCFG)の測定を行った.また,点眼濃度に基づく薬剤感受性測定は,RPMI培地上に菌を塗布し,実際に臨床で点眼として使用されている薬剤濃度液を滴下し,25℃および35℃で4日間培養して観察した.VRCZに関しては1%溶液の阻止円が大きすぎるため,希釈して検討した.VRCZ点眼液の安全性については,臨床経過上の薬剤毒性による表層性角膜炎の有無について記載した.さらにVRCZ点眼液の安定性については,1%に調整したVRCZ点眼液を冷蔵(4℃)下にて1,2,3週間,冷凍(20℃)下にて5週間保存したものを材料とし,滴下法にて眼科臨床症例より分離されたScedosporium株を用いて感受性の変化を検討した.なお,全症例においてVRCZの点滴投与を3日から1週間併用した.II結果1.代表症例(症例1)57歳,女性.つき目による角膜真菌症でScedosporiumが分離された.前眼部所見を図1に示す.角膜中央に表層性の羽毛状病巣を示し,前房蓄膿を認めた.1%VRCZ点眼×1時間毎,0.1%MCZ点眼1日6回,ピマリシン(PMR)軟膏1日1回,加えてVRCZ点滴を1週間施行したところ病巣は改善したが,翼状片の術後瘢痕部位が菲薄化したため,治療的角膜移植を施行した.移植後も含め6カ月間にわたりVRCZ点眼液を続行したが,図2のように薬剤毒性による表層性角膜炎および充血は認めなかった.この分離菌に対するE-testTMを図3に,点眼濃度に基づく感受性試験結果を図4に示す.いずれもVRCZに良好な感受性を示した.2.VRCZの各種真菌株に対する感受性分離された8株の内訳は,Penicillium1例,Beauveria2例,Scedosporium1例,Aspergillus1例,Fusarium3例で図1症例1の前眼部所見57歳,女性.Scedosporiumが分離された.角膜中央に表層性の羽毛状病巣を示し,前房蓄膿を認めた.図2症例1のVRCZ点眼6カ月後の所見治療的角膜移植施行後も含め,6カ月間にわたりVRCZ点眼を続行した.薬剤毒性による表層性角膜炎および充血は認めなかった.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010533(117)あった.このうち,感受性試験を施行できた6株(VRCZに対しては4株)のE-testTM,AstyTMによる最小発育阻止濃度(MIC)を表1に示す.比較的表在性で比較的進行が遅いグループ(Penicillium,Beauveria,Scedosporium)と,進行が非常に速く重篤な角膜深在性真菌症を生じるグループ(Aspergillus,Fusarium)に分けると,AMPH-Bは後者,MCZ,MCFGは前者に低いMICを示した.FLCZはいずれに対しても高いMICを示した.一方,VRCZは4株すべてに対して,低いMICを呈した.点眼濃度に基づく感受性試験では,すべて症例1と同様に希釈したVRCZ溶液に一番大きな阻止円を認めた.3.VRCZ点眼液の臨床的有効性,安全性VRCZ点眼液短期間投与で治療的角膜移植に至った1例を除いた7例では,全例で病巣の縮小を認め,VRCZ点眼液は臨床的に有効であることが確認された.治療的角膜移植に至った5例を含む全例において,平均投与期間6カ月の間,VRCZ点眼液による薬剤毒性表層性角膜炎や遷延性上皮欠損は認められなかった.4.VRCZ点眼液の保存性1,2,3週間冷蔵保存,5週間冷凍保存したVRCZ点眼液は,図5のようにScedosporiumに対して,阻止円形成は良好であり,薬剤効力の劣化は認められなかった.III考按VRCZは,FLCZの一つのトリアゾール分子を4-フルオロピリジン基で置換しaメチル基を添加した構造となっている.そのため,脂溶性を獲得し,広いスペクトラムを有する.すでにFusarium,Aspergillusに対して,VRCZ点眼が有効である報告がなされている17)が,今回さらに種々の病原性をもつ糸状菌8株に対し,良好なMICを呈することがVRCZITCZFLCZ5-FCAMPH-B図3Scedosporiumに対する各抗真菌薬によるEtestTMVRCZに大きな阻止円を認める.PMRMCZMCFCVRCZ0.05%FLCZAMPH-B図4各種抗真菌薬の点眼濃度に基づく感受性試験結果株はScedosporium,接種薬液量50μl,RPMI培地,25℃,4日間培養.コントロール冷蔵保存3週間冷蔵保存2週間冷蔵保存1週間冷凍保存5週間図5VRCZ点眼液の劣化試験1,2,3週間冷蔵保存,5週間冷凍保存したVRCZ点眼液は,同程度の阻止円を認めた.抗真菌薬20μl,RPMI培地,4日間培養.0.05%VRCZ周囲に大きな阻止円を認める.表1抗真菌薬に対する分離6株の感受性のまとめ分離菌AMPHFLCZITCZMCZMCFGVRCZPenicillium>32>256>32>220.125Scedosporium1664>80.25>160.047Beauberia82560.250.50.50.5Aspergillus0.5>640.062<0.03Fusarium0.5>64>8>32>16Fusarium1>64>8>16>164(E-testTM,AstyTMによるMIC)(μg/ml)———————————————————————-Page4534あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(118)明らかとなった.E-testTMとAstyTMを合わせて評価することには問題はあるが,MCFGおよびMCZはE-testTMが存在せず,一定の傾向をみるために2法による結果を合わせて評価した.さらに,点眼濃度に基づく感受性試験を施行した4株において,希釈したVRCZ点眼液が,最も大きな阻止円を認めたことは,その有用性を裏付けるものと思われる.平均6カ月という長期投与にもかかわらず,全例で薬剤毒性による表層性角膜炎を認めなかったことは眼科臨床において非常に使いやすい点眼液であるといえる.角膜移植後という上皮が不安定な状態においても,副作用を認めなかったことは特記すべきと思われた.VRCZ点眼液投与後24分経過時点におけるVRCZの前房内濃度,硝子体内濃度は各々6.49μg/ml,0.16μg/mlであり,良好な浸透度を有していることが報告されている8).深部へ進みやすい糸状真菌角膜炎においては,一定の前房内濃度を維持できることは大きな長所であるといえる.今回,8例全例においてVRCA点眼とともに,VRCZの静脈内投与を施行したが,全身投与における血中濃度と比して点眼濃度が明らかに高いことを考慮すると,点眼投与が主として奏効したと考えられる.VRCZ点眼液は適応外使用であり,各々の施設における倫理委員会での承認を得て使用する必要はあるが,眼という特殊性,血管欠如という角膜の特殊性を考えると,有効であり副作用の少ないVRCZ点眼液は安心して点眼として使用できる薬剤であると示唆された.薬剤が高価であることが臨床使用において一つの問題点であるが,今回の検討から点眼に調整後,冷蔵保存で3週間,冷凍保存で5週間劣化することなく良好な感受性を有することが明らかとなり,コストの面からも使用しやすくなったと考えられる.VRCZの欠点をあげるとすれば,無効である菌種の存在と全身投与による副作用である.文献的にはVRCZによる効果の認めにくい菌としてMucorがあげられる.しかし,現在の日本における角膜真菌症においてMucorはまれであり,VRCZ点眼液は難治性角膜真菌症の第一選択薬といってよいと考えられた.真菌は通常自然耐性であるが,近年FLCZ耐性Candidaが増加しており,CDR1,MDR1,ERG11などの遺伝子異常が注目されている913).VRCZに対しても耐性を獲得しない保障はないが,現在のところはまだ報告がない.ただし,CandidaにおいてFLCZに対するMICが高いものほど,VRCZに対するMICも高い傾向にあり注意を要する14).また,全身投与による副作用としては,内服投与の20%において視覚異常が報告されている.これは原因不明だが,60分ほどの一過性の羞明で出現するといわれている.今回の点眼液投与においては,もともと真菌症による視力低下もあり,視覚異常の訴えは認められなかった.しかし,その他腎毒性,催奇形性などがあるため,点眼液といえども重度の腎障害を有する患者および妊婦への投与は慎重にすべきである.1%VRCZ点眼液は各種糸状菌に有効であり,薬剤毒性も少なく,調整後長期保存が可能であり,角膜真菌症に非常に有用である.文献1)宮崎泰可,宮崎義継,河野茂:特集:真菌症治療薬の新しい展開.ボリコナゾール.化学療法の領域19:231-235,20032)MarangonFB,MillerD,GiaconiJAetal:Invitroinvesti-gationofvoriconazolesusceptibilityforkeratitisandendophthalmitisfungalpathogens.AmJOphthalmol137:820-825,20043)中村彰宏,河野久,岩崎瑞穂ほか:天理よろづ相談所病院で分離された酵母様真菌に対する抗真菌薬の抗菌力について─新規トリアゾール系抗真菌薬ボリコナゾールと既存抗真菌薬の比較─.化学療法の領域23:1613-1617,20074)松永次郎,山本昇伯,熊谷直樹ほか:従来の抗真菌薬に抵抗を示した角膜真菌症に対しボリコナゾールが有効であった1例.臨眼61:1705-1709,20075)竹澤美貴子,小幡博人,石崎こずえほか:ボリコナゾールが奏功した角膜真菌症の1例.臨眼61:1267-1270,20076)JhanjiV,SharmaN,MannanRetal:Managementoftunnelfungalinfectionwithvoricoanzole.JCataractRefractSurg33:915-917,20077)JonesA,MuhtasebM:Useofvoriconazoleinfungalker-atitis.JCataractRefractSurg34:183-184,20088)VemulakondaGA,HariprasadSM,MielerWFetal:Aqueousandvitreousconcentrationsfollowingtopicaladministrationof1%voriconazoleinhumans.ArchOph-thalmol126:18-22,20089)田辺公一,新見京子,新見昌一:病原真菌の薬剤耐性に関する新しい分子機構.日本臨牀66:2273-2278,200810)掛屋弘,宮崎泰可,宮崎義継ほか:カンジダ属の抗真菌薬剤耐性を中心に.日本医真菌学会雑誌44:87-92,200311)山口英世:病原真菌における抗真菌薬耐性.医学のあゆみ209:556-563,200412)CitakS,OzcelikB,CesurSetal:InvitrosusceptibilityofCandidaspeciesisolatedfrombloodculturetosomeanti-fungalagents.JpnJInfectDis58:44-46,200513)藤田信一:各種抗真菌薬の血液由来Candida属に対する抗真菌活性.日本化学療法学会雑誌55:257-267,200714)RuhnkeM,Schumidt-WesthausenA,TrautmannM:Invitroactivitiesofvoriconazoleaganistuconazole-susceptibleand-resistantCandidaalbicansisolatesfromoralcavitiesofpatientswithhumanimmunodeciencyvirusinfection.AntimicrobAgentsChemother41:575-577,1997***