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未熟児網膜症に対するラニビズマブ治療後再燃の関連因子

2024年4月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科41(4):452.457,2024c未熟児網膜症に対するラニビズマブ治療後再燃の関連因子前原央恵*1,2今永直也*1宮里智子*2澤口翔太*1湧川空子*1大城綾乃*1大庭千明*3吉田朝秀*4古泉英貴*1*1琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座*2沖縄県立南部医療センター・こども医療センター眼科*3沖縄県立南部医療センター・こども医療センター新生児内科*4琉球大学大学院医学研究科育成医学講座CClinicalFactorsRelatedtoRecurrenceofRetinopathyofPrematurityAfterIntravitrealRanibizumabInjectionTherapyHisaeMaehara1,2),NaoyaImanaga1),TomokoMiyazato2),ShotaSawaguchi1),SorakoWakugawa1),AyanoOshiro1),ChiakiOhba3),TomohideYoshida4)andHidekiKoizumi1)1)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,2)DepartmentofOphthalmology,OkinawaSouthernMedicalCenterandChildren’sMedicalCenter,3)DepartmentofInclusionMedicine,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,4)DepartmentofNeonatology,OkinawaSouthernMedicalCenterandChildren’sMedicalCenterC目的:未熟児網膜症(ROP)に対するラニビズマブ硝子体内注射(IVR)の再燃にかかわる因子について検討した.対象および方法:対象はC2019年C4月.2022年C3月に出生した超低出生体重児C94例.治療適応となるCROP(TR-ROP)の発症,IVR後の再燃に関する因子を後ろ向きに検討した.初回および再燃時の治療適応はCEarlyCTreatmentCforCROPStudyの基準に準じ,初回治療およびC1回目の再燃時の治療にはCIVR0.2Cmgを行った.結果:46例がCTR-ROPとなり,TR-ROP発症に関連する因子は,在胎週数,出生体重,持続陽圧呼吸療法の期間であった(すべてCp<0.05).初回CIVRでの寛解群C27例と再燃群C19例では,再燃群は初回治療時のCstageが低く,zoneが狭く,出生から初回治療までの期間が有意に短かった(すべてCp<0.05).再燃群のうちC14例がC2回目のCIVRで寛解したが,5例がC2回目の再燃をきたし,2回再燃群は再燃後寛解群に比べて出生からC2回目治療までの期間が有意に短かった(p<0.01).結論:早期のIVR,低いstage,狭いCzoneはCIVR後の再燃と関連していた.CPurpose:ToCinvestigateCfactorsCassociatedCwithCtheCrecurrenceCofCretinopathyCofprematurity(ROP)afterCintravitrealranibizumab(IVR)injectionCtherapy.CMethods:InCthisCretrospectiveCstudy,CweCreviewedCtheCrecordsCof94extremely-lowbirthweight(BW)infantsbornbetweenApril2019andMarch2022toexploretheriskfac-torsfortreatment-requiringROP(TR-ROP)andrecurrenceafterIVRinjection.Results:ClinicalfactorsinvolvedinCdevelopingCTR-ROPCwereCgestationalCage,CBW,CandCdurationCofCcontinuousCpositiveCairwayCpressureCtherapy.CAfterCinitialCtreatment,CtheCrecurrencegroup(19patients)hadCaClowerCstageCatCtheC.rstCtreatment,CaCnarrowerCzone,andasigni.cantlyyoungerpostmenstrualageatthetimeofthe.rsttreatment(allp<0.05)thantheremis-siongroup(27patients).Afterthesecondtreatment,therecurrencegroup(5patients)hadasigni.cantlyyoungerpostmenstrualageatthetimeofthesecondtreatment(p<0.01)thantheremissiongroup(12patients).Conclu-sion:RecurrenceofTR-ROPafterIVRinjectionmaybeassociatedwithyoungerpostmenstrualageatthetimeofIVRinjection,lowerstage,andnarrowerzone.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(4):452.457,C2024〕Keywords:未熟児網膜症,ラニビズマブ,抗血管内皮増殖因子,硝子体内注射.retinopathyofprematurity,ra-nibizumab,vascularendothelialgrowthfactor,intravitrealinjection.Cはじめに熟児における網膜血管の発達異常を特徴とし,日本だけでな未熟児網膜症(retinopathyofprematurity:ROP)は,未く世界の小児失明原因の上位を占める1).治療はこれまで網〔別刷請求先〕前原央恵:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原C207琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座Reprintrequests:HisaeMaehara,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0215,JAPANC452(86)膜冷凍凝固術や網膜光凝固術が主体であり,網膜.離を生じた場合には網膜硝子体手術を行っていた.近年では,抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法が新しい選択肢として加わるようになった.RAINBOWstudyにおいて,ROPに対する治療としてラニビズマブ硝子体内注射(intravitrealranibizumab:IVR)の有効性が示され2),わが国でもC2019年にCIVRが承認された.しかし,IVR投与後に網膜症の再燃(reactivation)を生じ,複数回治療が必要な症例が存在する.治療を要するCROP(treatment-requiringROP:TR-ROP)発症にかかわる因子として,在胎週数,出生体重,晩期循環不全,長期間の陽圧呼吸,輸血歴3.5)などが知られているが,抗CVEGF薬硝子体内注射後にどのような小児が再燃するリスクが高いかは,明確なコンセンサスは得られていない.本研究の目的はCROPに対するIVR後の再燃に関する因子について検討したので報告する.CI対象および方法本研究は琉球大学病院の倫理委員会(承認番号:2040)の承認を受け,ヘルシンキ宣言に示された原則に従って実施された.本研究のオプトアウトは,琉球大学病院の施設審査委員会による承認後,病院のウェブサイトに表示されオプトアウトの機会を提供した.2019年C11月.2022年C3月に琉球大学病院および沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで出生し,ROPスクリーニング検査を受けた超低出生体重児(出生体重1,000Cg未満)の診療録を後ろ向きにレビューした.眼底所見の評価は右眼を用いたが,今回の検討では片眼のみCROPおよびCTR-ROPを発症した症例はなく,TR-ROPは全症例で両眼同時に治療が行われていた.死亡例など新生児集中治療室を退院できなかった症例は除外した.初回および再燃時の治療適応はCEarlyCTreatmentCforCRetinopathyCofCPrema-turity(ETROP)Studyを遵守した.すなわち,pre-thresh-oldROPtype1zoneI,anystageROPwithplusdisease,またはCzoneI,stage3,withCorCwithoutCplusdisease,またはCzoneII,stageC2CorC3ROP,withCplusdisease以上の症例を治療対象とした.AggressiveROP症例については,stageやCzoneにかかわらず,治療を行った.治療は全例において,初回治療およびC1回目の再燃時はCIVR0.2Cmgを,2回目の再燃時は網膜光凝固術を施行した.TR-ROP発症やCROP再燃に関連する全身因子の候補として,ベースラインを反映するC3因子(在胎週数,出生体重,性別),出生時の呼吸循環機能を反映するC2因子(アプガー指数C1分,Apgar指数C5分),循環機能を反映するC4因子(敗血症の既往,赤血球濃厚液輸血単位数,結紮術を要する動脈管開存の既往,晩期循環不全の既往),呼吸機能を反映するC4因子(新生児呼吸窮迫症候群の既往,持続陽圧呼吸療法の期間,高流量経鼻酸素療法離脱までの期間,慢性肺疾患の有無),中枢神経循環能を反映する因子(脳室内出血の既往),感染症を反映するC3因子(臨床的絨毛膜羊膜炎の既往,組織学的絨毛膜羊膜炎の既往,子宮内感染の既往),その他入院時に受けた手術件数をあげた.また,眼局所要因として,aggressiveROP,ROP治療週数,治療時のCstage,zone,plusdiseaseを採用した.まず,TR-ROP発症にかかわる因子を同定するため,ROP未発症および自然消退ROP群とCTR-ROP群に分けてC2群間で臨床要因を比較した.また,再燃および再々燃にかかわる因子を同定するため,初回寛解群と再燃群,およびC2回治療群とC3回治療群を比較した.統計解析は,2群間比較ではCWilcoxonCrankCsumtest,CFisher’sexacttestを使用し,両群比較を行った.TR-ROPの検討では在胎週数,出生体重でCp値を補正した.0.05以下のCp値は,統計的に有意であるとみなされた.初回治療後およびC2回目治療後の再燃に関する因子の予測能を評価するため,それぞれについて統計学的に有意な要因で受信者動作特性(receiverCoperatingCcharacteristiccurve:ROC)曲線を作成し,areaundercurve(AUC)を算出,モデルの正当性を評価した.CII結果全症例C94例C94眼の臨床的特徴を表1に示す.TR-ROPはC46眼(48.9%)に発症し,ROP未発症および治療を要さず自然消退したCROPはC48眼(51.1%)であった.両群間の比較において,TR-ROP発症に関連する因子は,在胎週数,出生体重,持続陽圧呼吸療法の期間,持続陽圧呼吸療法+高流量経鼻酸素離脱の期間のC4項目で有意差を認めた(すべてp<0.05)(表2).TR-ROPのうち,初回CIVRで寛解を得た症例はC27眼(58.7%),再燃を生じた症例はC19眼(41.3%)であり,両群間において在胎週数,出生体重,その他全身的な要因は有意差を認めなかったが(表3),眼局所要因として,ROP治療週数,治療時のCstage,zoneで有意差を認めた(すべてCp<0.05)(表4).また,2回CIVRを必要とした症例で,寛解を得た症例はC14眼(73.7%),再々燃を生じ最終的に網膜光凝固術を要した症例はC5眼(26.3%)であり,こちらも両群間において全身的な要因は有意差を認めなかったが(表3),ROP治療週数のみで有意差を認めた(p<0.01)(表4).初回IVR後の寛解症例と再燃症例の比較において,AUCはC0.842であり,Youden’sindexにおけるCROP治療週数のカットオフ値はC35.0週であった.また,2回目CIVR後の寛解症例と再燃症例の比較において,AUCはC0.900であり,YoudenC’sindexにおけるCROP治療週数のカットオフ値はC41.4週であった(図1).表1全症例の臨床的特徴平均±標準偏差範囲眼数C94在胎週数(週)C26.2±2.122.3.C31.9出生体重(g)C739.6±168.8366.C998女性の割合(%)51(C54.3)出生時の呼吸循環機能Apgar指数C1分Apgar指数C5分C3.24±1.87C5.41±1.711.81.8循環機能敗血症(%)赤血球濃厚液輸血単位数(単位)結紮術を要する動脈管開存(%)晩期循環不全(%)10(C10.6)C4.33±4.0017(C18.1)3(3C.2)0.2C1呼吸機能新生児呼吸窮迫症候群(%)持続陽圧呼吸療法(日)持続陽圧呼吸療法+高流量経鼻酸素療法(日)慢性肺疾患(%)90(C95.7)C57.8±38.3C85.4±42.782(C87.2)5.2C705.2C70中枢神経循環能脳室内出血(stage)C0.55±1.010.4臨床的絨毛膜羊膜炎(%)32(C34.0)C感染症組織学的絨毛膜羊膜炎(stage)0.78±1.070.3子宮内感染(%)8(8C.5)その他入院時に受けた手術件数AggressiveROP(%)C0.64±1.319(9C.6)0.7表2未熟児網膜症(ROP)未発症+自然消退ROP群と治療を要するROP群の比較未発症+在胎日数・出生体重補正オッズ比自然消退CROPCTR-ROPp値(95%信頼区間)p値眼数(%)C48C46在胎週数(週)C27.5±1.8C25.0±1.6<C0.001*出生体重(g)C815.8±146.3C660.0±154.5<C0.001*女性の割合(%)28(C58.3)23(C50.0)C0.535†0.880(C0.278.C2.453)C0.730Apgar指数C1分C3.81±1.99C2.65±1.55C0.003*0.973(C0.701.C1.351)C0.871Apgar指数C5分C5.24±1.65C4.57±1.60<C0.001*0.686(C0.442.C1.063)C0.091敗血症(%)2(4C.2)8(C17.4)C0.048†1.032(C0.145.C7.350)C0.975赤血球濃厚液輸血単位数(単位)C2.46±2.73C6.23±4.20<C0.001*1.206(C0.965.C1.508)C0.100結紮術を要する動脈管開存(%)4(8C.3)20(C43.5)C0.016†2.3589(C0.650.C10.315)C0.177晩期循環不全(%)1(2C.1)2(4C.3)C0.613†0.671(C0.012.C36.098)C0.845新生児呼吸窮迫症候群(%)44(C91.7)46(C100)C0.117†999.999(C0.001.C999.999)C0.984持続陽圧呼吸療法(日)C42.9±38.4C73.3±31.6<C0.001*1.020(C1.005.C1.036)C0.010持続陽圧呼吸療法+高流量経鼻酸素療法(日)C64.8±38.5C106.9±36.0<C0.001*1.024(C1.008.C1.040)C0.003慢性肺疾患(%)37(C77.1)45(C97.8)C0.004†7.609(C0.797.C72.605)C0.078脳室内出血(stage)C0.29±0.71C0.83±1.20C0.025†1.181(C0.670.C2.080)C0.565臨床的絨毛膜羊膜炎(%)8(C16.7)24(C52.2)<C0.001C†1.746(C0.535.C5.693)C0.356組織学的絨毛膜羊膜炎(stage)C0.65±1.10C0.91±1.03C0.039†0.825(C0.493.C1.380)C0.464子宮内感染(%)4(8C.3)4(8C.7)C1.000†0.636(C0.085.C4.732)C0.658入院時に受けた手術件数C0.38±1.04C0.93±1.50C0.015†1.337(C0.874.C2.045)C0.181平均±標準偏差.*Wilcoxonranksumtest,†Fisher’sexacttest.CIII考按在胎週数,出生体重,持続的陽圧呼吸療法期間および高流量経鼻酸素療法離脱までの期間であったが,CROPに対する本研究ではCROPに対するCIVR後の再燃因子を検討した.IVR後の再燃にかかわる因子は全身要因では有意差は認め超低出生体重児におけるCTR-ROP発症にかかわる因子は,ず,初回CIVR後の再燃に関わる因子は,出生から治療まで表3初回および2回目のラニビズマブ硝子体内注射後の寛解群と再燃群の全身要因の比較初回ラニビズマブ硝子体内注射後2回ラニビズマブ硝子体内注射後寛解群再燃群p値寛解群再燃群p値眼数(%)C27C19C14C5在胎週数(週)C25.2±1.7C24.6±1.2C0.215*C24.8±1.2C24.0±1.4C0.253*出生体重(g)C679.4±179.7C632.4±107.8C0.300*C643.4±84.8C601.6±165.3C0.327*女性の割合(%)4(C14.8)5(C26.3)C0.456†2(C14.3)3(C60.0)C0.088†Apgar指数C1分14(C51.9)9(C47.4)C1.000†7(C50.0)2(C40.0)C1.000†Apgar指数C5分C2.74±1.65C2.53±1.43C0.792*C2.71±1.49C2.00±1.22C0.633*敗血症(%)7(C25.0)1(5C.3)C0.115†C4.57±1.12C4.20±1.10C0.754*赤血球濃厚液輸血単位数(単位)C6.22±5.14C6.37±2.45C0.334C5.86±2.51C7.80±1.79C0.271*結紮術を要する動脈管開存(%)8(C29.6)5(C26.3)C1.000†8(C57.1)2(C40.0)C0.632†晩期循環不全(%)2(7C.4)C0C0.504†C0C0C0.635†新生児呼吸窮迫症候群(%)27(C100)19(C100)C1.000†14(C100)5(1C00)C1.000†持続陽圧呼吸療法(日)C74.3±37.9C71.8±20.5C0.349*C71.2±23.8C73.4±7.0C0.512*持続陽圧呼吸療法+高流量経鼻酸素療法(日)C105.3±42.5C109.1±25.0C0.255*C109.6±27.1C107.6±20.4C0.521*慢性肺疾患(%)26(C96.3)19(C100)C1.000†14(C100)5(1C00)C1.000†脳室内出血(stage)C0.81±1.21C0.84±1.21C0.946†C0.86±1.29C0.80±1.10C0.730†臨床的絨毛膜羊膜炎(%)11(C40.7)13(C68.4)C0.080†10(C71.4)3(C60.0)C0.173†組織学的絨毛膜羊膜炎(stage)C0.74±0.94C1.16±1.12C0.130†C1.21±1.19C1.00±1.00C0.273†子宮内感染(%)1(3C.6)3(C15.8)C0.292†2(C15.4)1(C20.0)C0.206†入院時に受けた手術件数C0.85±1.26C1.05±1.81C0.619†C0.57±0.85C2.40±3.05C0.294†平均±標準偏差.*Wilcoxonranksumtest,†Fisher’sexacttest.表4初回および2回目のラニビズマブ硝子体内注射後の寛解群と再燃群の局所要因の比較初回ラニビズマブ硝子体内注射後2回ラニビズマブ硝子体内注射後寛解群再燃群p値寛解群再燃群p値眼数(%)C27C19C14C5ROP治療週数(週)C36.9±2.7C34.0±1.5<C0.001*C43.9±2.7C40.9±1.3C0.009*CStage1C3C5C0C0CStageCStage2C1C4C0.045†C3C2C0.570†CStage3C23C10C11C3CZone1C10C17C0C0CZoneCZone2C17C2<C0.001C†C14C5C1.000†CZone3C0C0C0C0CPlusdiseaseC26C17C0.561C14C5C1.000†CAggressiveROP4(C14.8)5(C26.3)C0.456†2(C14.3)3(C60.0)C0.088†平均±標準偏差.*Wilcoxonranksumtest,†Fisher’sexacttest.Cの日数,治療時のCzoneとCstageであり,2回CIVR後の再燃にかかわる因子は,出生から治療までの日数のみだった.これまでの検討でCTR-ROP発症にかかわる因子は多数報告されており,Eckertらは在胎週数,出生体重,輸血歴,酸素投与,体重増加量がCROP発症の要因であると報告し,彼らのCROC曲線におけるCAUCはC0.88であった4).Arimaらは在胎週数,出生体重,晩期循環不全,陽圧呼吸がCROP発症の要因であると報告し,そのCAUCはC0.95であった5).筆者らの検討では在胎週数,出生体重,持続陽圧呼吸療法の期間で有意差を認め,AUCはC0.891であり,Arimaらの検討に近いCAUCが得られ,ROP発症モデルはほぼ同等であった.高濃度酸素投与はCROP発症の主要な危険因子であることは広く知られているが6,7),超低出生体重の症例においても,より短い在胎週数,低い出生体重,陽圧呼吸を併用した長期の酸素投与はCTR-ROP発症のリスクにかかわることが示され,該当する症例はCROPの重症化に十分留意すべきである.初回CIVR治療後の再燃において,本研究における再燃症例はC19/46眼(41.3%),再燃までの平均期間はC63.8C±13.6日であった.同様にCIVRのみを使用した検討において,再燃率はC20.9.64%,再燃までの平均期間は約C55日と報告2,8,9)されており,既報と同等の再燃率で,再燃までの期間がややab1.001.000.750.75感度0.50感度0.500.250.250.000.001-特異度1-特異度図1ラニビズマブ硝子体内注射後の未熟児網膜症再燃に関する受診者動作特性曲線a:初回ラニビズマブ硝子体内注射(IVR)後の未熟児網膜症(ROP)再燃に関する受信者動作特性(ROC)曲線.Areaundercurve(AUC)はC0.842(p<0.001)で,ROP治療週数のカットオフ値はC35.0週であった.b:2回目CIVR後のCROP再燃に関するCROC曲線.AUCはC0.900(p=0.046)であり,ROP治療週数0.000.250.500.751.000.000.250.500.751.00のカットオフ値はC41.4週であった.長い傾向にあった.未熟児における診療は,国際的に生存率,酸素使用方法,ROPの認知度,眼科医のCROP診療の習熟度などさまざまな差異があり1,10),一概にはいえないが,筆者らの検討では超低出生体重児を対象としており,再燃までの期間の増加につながった可能性がある.TR-ROPに対するCIVR加療は,一定症例の再燃がみられること,再燃までの期間がやや長いため,IVR後は長期間の慎重な経過観察を要することを念頭に,治療後のフォローアップを行う必要がある.これまで,ROPに対する抗CVEGF治療後の治療後再燃のリスク要因は,全身要因として短い在胎週数1),低出生体重1),低CApgar指数11),治療後の酸素使用8),多胎児があり,局所要因として,広範囲の網膜新生血管8)および無血管領域11),網膜出血12)の存在であると報告されている.近年では,Iwahashiらがわが国におけるCTR-ROPに対する抗VEGF治療後の再燃リスクとして,35週未満の治療とCaggressiveROPを挙げている9).本検討でもCIVR後の再燃因子には早期のCIVR投与,治療時のCzoneとCstageが関連しており,ROC曲線におけるカットオフ値もCIwahashiらの報告9)と同様のC35.0週であった.超低出生体重児におけるROP治療後の再燃因子においても,出生後早期の治療,低いCstageあるいは狭いCzoneで治療が必要な症例,すなわち広範囲の網膜虚血の存在は,ROPの再燃を引き起こす可能性が高い.早期のCIVR療法は一過性に眼内の抗CVEGF濃度を低下させCROPを消退させるが,月齢が低いと呼吸機能や循環動態が未熟なため引き続きの高濃度酸素にさらされることで,生理的な網膜血管の発達が促されず,さらに広範囲の虚血がCVEGF濃度の上昇を引き起こし,再燃につながるものと思われる.また,同様に再燃症例においても,より早期のCIVR追加療法は再々燃のリスクがあり,早期にCIVR再投与を必要とした症例は,血管伸長が完了し活動性疾患が消失するまで,厳密な経過観察を行うことが推奨される.今回の検討ではCIVR後の全身および局所の明らかな合併症は認められなかった.近年,米国を中心とした多施設研究でも,抗CVEGF薬硝子体内注射後の硝子体出血,白内障形成,結膜炎,結膜下出血,角膜.離などの合併症はC0.9%とまれで,眼内炎や網膜.離のような重篤な合併症はみられなかったと報告されている10).一方で,Type1ROPに対するIVRは,網膜光凝固術よりも高い再燃率を示した報告13)もあり,漫然とCIVRを使用することは避けるべきであるが,ROPに対する抗CVEGF療法は全身状態不良で網膜光凝固術までの時間稼ぎや,破壊的な網膜光凝固術を必要とする領域を減少させることが可能であることも事実である.筆者らの検討でも初回CIVRがC32.7週以前の症例は全例再燃したが,逆にC38.3週以降の症例は全例寛解を認めている.2回目のIVRにおいてもC40.3週以前の症例は全例再燃,42.9週以降の症例は全例寛解を認めた.このことから,特定の週数以降であれば,ROPの鎮静化に破壊的な網膜光凝固術を回避する目的で,積極的なCIVR治療を検討してもよいと思われる.今回,ROPに対するラニビズマブ治療後再燃の関連因子を呈示した.TR-ROPに対するCIVRは,多くの症例で破壊的な網膜光凝固術を行うことなく鎮静化を得られたが,再燃症例も多数存在した.未熟児に対する抗CVEGF薬硝子体内注射は,全身的な影響,薬剤の選択,投与量など,まだ多くの議論の余地がある.わが国でも新しくアフリベルセプトが認可され,今後は治療の選択肢が増えるが,疾患の特徴を踏まえた治療戦略が必要である.文献1)TsaiAS,ChouHD,LingXCetal:Assessmentandman-agementofretinopathyofprematurityintheeraofanti-vascularCendothelialCgrowthfactor(VEGF)C.CProgCRetinCEyeResC88:101018,C20222)StahlCA,CLeporeCD,CFielderCACetal:RanibizumabCversusClaserCtherapyCforCtheCtreatmentCofCveryClowCbirthweightCinfantswithretinopathyofprematurity(RAINBOW):anopen-labelCrandomisedCcontrolledCtrial.CLancetC394(10208):1551-1559,C20193)BinenbaumG,YingGS,QuinnGEetal:TheCHOPpostC-natalCweightCgain,CbirthCweight,CandCgestationalCageCreti-nopathyCofCprematurityCriskCmodel.CArchCOphthalmolC130:1560-1565,C20124)EckertCGU,CFortesCFilhoCJB,CMaiaCMCetal:ACpredictiveCscoreCforCretinopathyCofCprematurityCinCveryClowCbirthweightpreterminfants.Eye(Lond)C26:400-406,C20125)ArimaM,TsukamotoS,FujiwaraKetal:Late-onsetcir-culatorycollapseandcontinuouspositiveairwaypressureareCusefulCpredictorsCofCtreatment-requiringCretinopathyCofprematurity:aC9-yearCretrospectiveCanalysis.CSciCRepC7:3904,C20176)TinW,WariyarU:Givingsmallbabiesoxygen:50yearsofuncertainty.SeminNeonatolC7:361-367,C20027)HigginsRD:OxygenCsaturationCandCretinopathyCofCpre-maturity.ClinPerinatolC46:593-599,C20198)LyuCJ,CZhangCQ,CChenCCLCetal:RecurrenceCofCretinopa-thyCofCprematurityCafterCintravitrealCranibizumabCmono-therapy:timingCandCriskCfactors.CInvestCOphthalmolCVisCSciC58:1719-1725,C20179)IwahashiCC,CUtamuraCS,CKuniyoshiCKCetal:FactorsCasso-ciatedwithreactivationafterintravitrealbevacizumaborranibizumabCtherapyCinCinfantsCwithCretinopathyCofCpre-maturity.RetinaC41:2261-2268,C202110)PatelCNA,CAcaba-BerrocalCLA,CHoyekCSCetal:PracticeCpatternsandoutcomesofintravitrealanti-VEGFinjectionforCretinopathyCofprematurity:anCinternationalCmulti-centerstudy.OphthalmologyC129:1380-1388,C202211)LingKP,LiaoPJ,WangNKetal:Ratesandriskfactorsforrecurrenceofretinopathyofprematurityafterlaserorintravitrealanti-vascularendothelialgrowthfactormono-therapy.RetinaC40:1793-1803,C202012)HuQ,BaiY,ChenXetal:RecurrenceofretinopathyofprematurityCinCzoneCIICstageC3+afterCranibizumabCtreat-ment:aCretrospectiveCstudy.CJCOphthalmolC2017:C5078565,C201713)ChangCE,CJosanCAS,CPurohitCRCetal:ACnetworkCmeta-analysisCofCretreatmentCratesCfollowingCbevacizumab,Cranibizumab,a.ibercept,andlaserforretinopathyofpre-maturity.OphthalmologyC129:1389-1401,C2022***

抗血管内皮増殖因子薬硝子体注射が有効であった 増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の血管新生緑内障の1 例

2022年4月30日 土曜日

《第26回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科39(4):501.505,2022c抗血管内皮増殖因子薬硝子体注射が有効であった増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の血管新生緑内障の1例森秀夫宮保浩子大阪市立総合医療センター眼科CACaseofNeovascularGlaucomaafterVitrectomyforProliferativeDiabeticRetinopathyE.ectivelyTreatedbyRepeatedAnti-VascularEndothelialGrowthFactorInjectionsHideoMoriandHirokoMiyaboCDepartmentofOphthalmology,OsakaCityGeneralHospitalC抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体内注射が眼圧制御と視力維持に有効であった血管新生緑内障(NVG)のC1例を報告する.症例は長期間糖尿病を放置したC72歳,男性.左眼視力は生来不良であった.今回右眼に白内障と増殖糖尿病網膜症を発症し,視力はC0.4に低下した.硝子体出血は認めなかった.球後麻酔下に白内障併施硝子体手術を施行中に不穏興奮状態となり,手術は中止に至った.術後は硝子体出血が著明であり,軽度の認知症の合併が判明した.全身麻酔での再手術を施行し,半年後視力C0.8を得た.手術C9カ月後CNVG(眼圧C40CmmHg)を発症した.濾過手術の前処置として抗CVEGF薬を硝子体内注射すると眼圧はC10CmmHg台に下降し,虹彩新生血管は消失した.認知症患者の唯一眼であり,濾過手術は中止した.その後C3.4カ月間隔でC2度CNVGが再燃し,その都度注射により眼圧制御と視力維持を得ている.NVGへの抗CVEGF薬注射は,手術の出血軽減目的の前処置として位置づけられるが,症例によっては継続注射が有効な場合もありうると思われた.CPurpose:Toreportacaseofneovascularglaucoma(NVG)aftervitrectomyforproliferativediabeticretinopa-thyCthatCwasCsuccessfullyCtreatedCbyCrepeatedCintravitrealCanti-vascularCendothelialCgrowthfactor(anti-VEGF)Cinjections.Casereport:A72-year-oldmalewithdiabetesmellitus(DM)presentedproliferativediabeticretinopa-thyinhisrighteye.Visualacuity(VA)(Snellenchart)inhisrighteyewas0.4,whilethatinhisleft-eyewaspoorsinceCchildhood.CHeChadCnotCundergoneCtreatmentCforCDMCforCaClongCtime.CForCtreatment,CvitrectomyCcombinedCwithCcataractCsurgeryCunderCretrobulbarCanesthesiaCwasCperformed.CHowever,CtheCpatientCbecameCagitatedCandCuncontrollablemid-surgery,sotheoperationwasdiscontinued.Postoperatively,markedvitreoushemorrhagewasobserved,andhewasdiagnosedwithmilddementia.Reoperationwassuccessfullyperformedundergeneralanes-thesia.At6-monthspostoperative,hisright-eyeVAimprovedto0.8,yetat9-monthspostoperative,NVGwithanintraocularpressure(IOP)of40CmmHgdeveloped.Anti-VEGFwasinjectedintravitreallyasanadjuncttherapyto.ltrationsurgery.TheIOPloweredto10-somethingmmHg,andtheirisneovascularizationdisappeared.SincethepatientChadCdementiaCandConlyChadCvisionCinChisCrightCeye,CtheCplannedC.ltrationCsurgeryCwasCcancelled.CNVGCrecurredtwiceatanintervalof3or4months,yetwassuccessfullytreatedeachtimeviainjectionofanti-VEGF.Conclusion:AlthoughCintravitrealCanti-VEGFCinjectionCisCgenerallyCconsideredCanCadjunctCtherapyCforCtheCreduc-tionofintraoperativehemorrhageinNVGpatients,repeatedinjectionscane.ectivelytreatrecurrentNVGinsomecases.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(4):501.505,C2022〕Keywords:糖尿病網膜症,血管新生緑内障,抗血管内皮増殖因子,硝子体内注射,認知症,唯一眼.diabeticreti-nopathy,neovascularglaucoma,anti-vascularendothelialgrowthfactor,intravitrealinjection,dementia,onlyeye.C〔別刷請求先〕森秀夫:〒630-0136奈良県生駒市白庭台C6-10-1白庭病院眼科Reprintrequests:HideoMori,M.D.,DepartmentofOphthalmology,ShiraniwaHospital,6-10-1Shiraniwadai,IkomaCity,Nara630-0136,JAPANC図1初診時右眼眼底写真黄斑近傍の硬性白斑を認める.明瞭な新生血管は認めない.はじめに血管新生緑内障(neovascularglaucoma:NVG)は糖尿病網膜症眼や網膜中心静脈閉塞症などの失明原因として重要である1).NVGに対する抗血管内皮増殖因子(vascularendo-thelialgrowthfactor:VEGF)薬の硝子体内注射は,汎網膜光凝固(panretinalphotocoagulation:PRP)や手術治療などの補助療法としての位置づけが一般的であるが1.3),今回唯一眼に発症したCNVGに対し抗CVEGF薬(アフリベルセプト)の継続的硝子体注射が眼圧コントロールと視力維持に有効であった症例を経験したので報告する.CI症例患者はC20年余り前に糖尿病を指摘され,短期間治療して血糖値が下がり,その後自己判断で治療せず放置していた72歳,男性.生来左眼の視力は不良であった.今回右眼の視力不良のため運転免許の更新ができず近医を受診し,糖尿病網膜症としてC2019年C8月下旬当科を紹介受診した.初診時視力はCVD=0.1(0.4×+2.25D(.cyl2.0DAx90°),VS=0.01(0.02×+2.0D(.cyl2.0DAx80°),眼圧は両眼ともC12CmmHgで,両眼に前.下白内障を認め,散瞳はC4Cmmと不良であった.虹彩新生血管は認めなかった.右眼眼底には黄斑近傍に硬性白斑を認め(図1),光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)にて硝子体による黄斑牽引と黄斑浮腫を認めた(図2).周辺網膜の視認性は不良であったが,著明な増殖膜は認めなかった.左眼眼底には黄斑を含む網脈絡膜萎縮を認めた(図3).散瞳不良かつ白内障があり,合併症の理解も不十分であったため,蛍光眼底造影(.uoresceinangiography:FA)は施行しなかった.なお,初診時空腹時血糖C132Cmg/dl,HbA1c7.1%,糖尿病腎症C2期であった.同年C9月初旬,水晶体再建術併施硝子体手術を球後麻酔にて施行した.後部硝子体は未.離で鼻側,上方,下方の中間周辺部に数カ所血管性増殖による癒着を認めた(図4).増殖膜を切除し,PRPを開始すると不穏興奮状態となり,手術開始よりC40分余りで中止に至った.術後は硝子体出血により眼底透見不能となり,軽度の認知症の存在も判明したため,初回手術のC16日後,全身麻酔で再手術(硝子体出血切除,黄斑部内境界膜.離,PRP)を施行した2).術後経過は良好でC6カ月後のC2020年C3月にはCRV=0.4(0.8C×.0.25D(.cyl0.5DAx90°)を得,黄斑形態も改善したため(図5),当科は終診とし近医での管理とした.このとき眼圧は16CmmHgであった.この後運転免許更新ができ,眼科的には無症状であったこと,COVID-19の外出自粛期間であったことなどから,実際には近医を受診していなかった.手術9カ月後のC5月末,霧視を自覚して術後初めて近医を受診し,NVG(眼圧C27CmmHg)を指摘され,降圧点眼C1剤を処方されてC6月初旬当科を紹介再診した.再診時,瞳孔縁全周に軽度の新生血管(前眼部写真では不明瞭)を認め,眼圧は40CmmHgであった.前房深度は正常で,矯正視力はC0.5であった.血糖値はC154Cmg/dl,HbA1c6.3%であった.認知症かつ唯一眼であるため全身麻酔による線維柱帯切除術をC5日後に予定したが,その前処置として即日アフリベルセプト2Cmgを硝子体内注射し,降圧薬点眼をC3剤とした.翌日から眼圧はC10CmmHg台に下降し,虹彩新生血管は消失した.その後C1カ月経過を観察したが変化はなかった.線維柱帯切除術にはさまざまな合併症のリスクがあり4),高齢,認知症,唯一眼であることを考慮して手術は中止とし,降圧薬点眼C3剤を続行しつつ近医にて週C2回眼圧をチェックし,NVGの再燃があればアフリベルセプト硝子体内注射で対処する方針とした.初回注射のC4カ月後虹彩新生血管が再発し,眼圧C31mmHgとなったためC2回目の硝子体内注射を施行し,新生血管の消失と眼圧正常化を得た.さらにそのC3カ月半後(2021年C1月中旬)新生血管の再燃と眼圧上昇(32CmmHg)をきたしたためC3回目の硝子体内注射を施行し,新生血管の消失と眼圧正常化を得た.この経過中視力はC0.5.0.8を維持しており,3回目の注射後現在まで約C2カ月を経過したが再発をきたしていない.CII考按本症例は認知症を伴う唯一眼に増殖糖尿病網膜症を発症し,硝子体手術により良好な視力を得た後,COVID-19の外出自粛も相まって無治療となり,術後C9カ月でCNVGを発症した.線維柱帯切除術を予定し,その前処置として施行したアフリベルセプト硝子体内注射が眼圧下降,視力維持に有効であったため手術を中止し,NVGの再燃の都度アフリベ図2初診時右眼OCT黄斑浮腫と硝子体牽引を認める.視力C0.4.図3初診時左眼OCT黄斑を含む網脈絡膜萎縮を認め,生来視力はC0.02と不良.ルセプト硝子体内注射を継続中のC1例である.NVGではあるが虹彩新生血管の程度は軽症で,明瞭な隅角閉塞も認めないことが良好な眼圧コントロールの要因と思われる.本症例はスリットランプでの詳細な観察で虹彩新生血管を認めたが,カラー前眼部撮影では明瞭に記録できなかった.近年発達した光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)を前眼部に応用することにより,微細な虹彩新生血管を非侵襲的に描出し,その消長を追えた報告があり5),今後の普及が望まれる.NVGに対する抗CVEGF薬の硝子体内注射は,PRPの補助治療や手術での出血リスクを軽減する前処置として位置づけられる1.3).アフリベルセプトの薬剤添付文書にも「長期的な眼圧管理にあたっては標準的な治療法の併用を考慮する」と記載されている.本症例は硝子体手術時にCPRPを施行したが,術後C9カ月でCNVGを発症したことから,網膜無灌流領域の残存あるいは新たな発生が考えられ,アフリベルセプトが奏効している期間内にCFAGによる精査とレーザー凝固の追加が求められ図4右眼術中所見鼻側の血管性増殖膜を.で示す..は視神経乳頭.図5右眼術後半年のOCT黄斑形態の改善を認める.視力C0.8.る1,2).しかし,小瞳孔,認知症による理解力低下,唯一眼であることなどから実施できなかった.NVGの手術術式としてはわが国では線維柱帯切除術が選択されることが多い1.3,6)が,合併症として術中術後の前房硝子体出血,脈絡膜.離,術後の浅前房,低眼圧,上脈絡膜出血,濾過胞感染など種々の危険がある4).NVGに対する抗CVEGF薬投与の研究では,視力不良のNVG26眼をランダムにベバシズマブC2.5Cmg硝子体内注射群(14眼)とCsham群(生理食塩水結膜下注射,12眼)とに振り分け,4週ごとにC3回注射し,前向きに半年間観察したところ,前者に有意な眼圧下降と新生血管の退縮がみられた7)ことより,抗CVEGF薬はCNVGの手術治療の補助療法となりうるとしている.硝子体内注射群には眼圧C30CmmHg以上が10眼含まれ,4眼が注射後C21CmmHg以下に下降している.また,日本人を対象としたアフリベルセプトC2Cmgの第CIII相試験(VEGA試験)8)では,眼圧C25CmmHg超のCNVG50例に硝子体内注射がなされた結果,75.9%がC1回の注射でC13週間にわたり眼圧コントロールが得られ,この眼圧下降効果はアセタゾラミド内服に依存しないことが確認された(VEN-ERA試験)9).本症例はアフリベルセプト注射時に無硝子体眼であった.ウサギ10)やサル11)での動物実験では,無硝子体眼は抗VEGF薬の排出が正常眼より早いという報告があるが,臨床的に糖尿病黄斑浮腫に対する抗CVEGF薬の効果を無硝子体眼と有硝子体眼で比較した研究では,両者に差はなかったとされる12).今回の症例では初回のアフリベルセプト注射後4カ月,2回目の注射後C3.5カ月でCNVG再燃により再注射しているので,有硝子体眼の加齢黄斑変性に対する投与間隔と差はないと思われる.また,今回の症例のアフリベルセプト投与間隔は,有硝子体眼のCNVGが対象のCVEGA試験8)で示された効果持続期間と遜色ないか,それを上回る投与間隔であった.増殖糖尿病網膜症に対する抗CVEGF薬硝子体内注射の合併症として牽引性網膜.離の発症が知られているが13),本症例はもともと増殖膜の活動性は低く,さらに硝子体手術によって中間周辺部に認めた増殖膜は切除しており,牽引性.離が発症する危険はきわめて低い.本症例は初診時黄斑に硝子体牽引と浮腫がみられたため,内境界膜.離を施行2)し,視力と黄斑形態に改善がみられたが,牽引のないびまん性の糖尿病黄斑浮腫の場合,内境界膜.離は視力予後に無関係との報告がある14).本症例はCNVG発症後アフリベルセプトの継続注射をすることで,9カ月にわたりCNVGのコントロールと良好なCqual-ityCoflifeが得られているが,今後も綿密な経過観察が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)赤木忠道:血管新生緑内障の治療.糖尿病網膜症診療のすべて.(北岡隆,吉村長久編),p312-317,医学書院,C20132)鈴間潔:硝子体手術.糖尿病網膜症診療のすべて.(北岡隆,吉村長久編),p276-287,医学書院,20133)SaitoCY,CHigashideCT,CTakedaCHCetal:ClinicalCfactorsCrelatedtorecurrenceofanteriorsegmentneovasculariza-tionCafterCtreatmentCincludingCintravitrealCbevacizumab.CAmJOphthalmolC149:964-972,C20104)AllinghamCRR,CDamjiCKF,CFreedmanCSFCetal:FilteringCsurgery,CPreventionCandCmanagementCofCcomplications.In:ShieldsC’CTextbookCofCGlaucoma.C6thCed,Cp501-511,CLippincottWilliams&Wilkins,Philadelphia,20115)野川千晶,坪井孝太郎,瓶井資弘:前眼部CopticalCcoher-encetomographyCangiographyによる虹彩新生血管の経時的観察ができたC2症例.日眼会誌124:802-807,C20206)野崎実穂,鈴間潔,井上真ほか:日韓糖尿病網膜症治療の現状についての比較調査.日眼会誌C117:735-742,C20137)YazdaniS,HendiK,PakravanMetal:Intravitrealbeva-cizumabCforCneovascularCglaucoma.CACrandomizedCcon-trolledstudy.JGlaucomaC18:632-637,C20098)InataniCM,CHigashideCT,CMatsushitaCKCetal:IntravitrealCa.iberceptCinCJapaneseCpatientsCwithCneovascularCglauco-ma:TheVEGArandomizedclinicaltrial.AdvTherC38:C1116-1129,C20219)InataniM,HigashideT,MatsushitaKetal:E.cacyandsafetyCofCintravitrealCa.iberceptCinjectionCinCJapaneseCpatientsCwithCneovascularglaucoma:OutcomesCfromCtheCVENERAstudy.AdvTherC38:1106-1115,C202110)CristoforidisCJB,CWilliamsCMM,CWangCJCetal:AnatomicCandpharmacokineticpropertiesofintravitrealbevacizum-abandranibizumabaftervitrectomyandlensectomy.Ret-inaC33:946-952,C201311)KakinokiCM,CSawadaCO,CSawadaCTCetal:E.ectCofCvitrec-tomyConCaqueousCVEGFCconcentrationCandCpharmacoki-neticsCofCbevacizumabCinCmacaqueCmonkeys.CInvestCOph-thalmolVisSciC53:5877-5880,C201212)芹沢聡志,井上順治,井上賢治:無硝子体眼における糖尿病黄斑浮腫に対する抗血管内皮増殖因子薬硝子体内投与の治療効果の検討.日眼会誌123:115-120,C201913)ArevaloCJF,CMaiaCM,CFlynnCJrCHWCetal:TractionalCreti-naldetachmentfollowingintravitrealbevacizumab(Avas-tin)inpatientswithsevereproliferativediabeticretinopa-thy.BrJOphthalmolC92:213-216,C200814)KumagaiCK,CHangaiCM,COginoCNCetal:E.ectCofCinternalClimitingCmembraneCpeelingConClong-termCvisualCoutcomesCfordiabeticmacularedema.RetinaC35:1422-1428,C2015***

難治性糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与の短期成績

2017年2月28日 火曜日

《第21回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科34(2):264.267,2017c難治性糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与の短期成績石田琴弓加藤亜紀太田聡平野佳男野崎実穂吉田宗徳小椋祐一郎名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学Short-termOutcomeofIntravitrealA.iberceptforDiabeticMacularEdemaKotomiIshida,AkiKato,SatoshiOta,YoshioHirano,MihoNozaki,MunenoriYoshidaandYuichiroOguraDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,NagoyaCityUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences目的:糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与の治療効果を検討した.対象および方法:糖尿病黄斑浮腫に対しアフリベルセプト硝子体内投与を行い,6カ月以上経過観察できた11例15眼(非増殖糖尿病網膜症7例9眼,増殖糖尿病網膜症4例6眼)を対象とした.平均年齢は58.3歳,平均観察期間は8.7カ月であった.必要に応じて追加投与を行い,矯正視力,中心網膜厚,黄斑体積を検討した.結果:平均投与回数は2.9回であった.最終受診時において,投与前と比較して平均視力はlogMAR視力で0.49から0.38(p<0.05)に,中心網膜厚は526μmから433μmに(p<0.05),黄斑体積は13.6mm3から12.3mm3(p<0.01)にいずれも有意に改善を示した.結論:糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与は,視力および黄斑浮腫の改善に有効であった.Purpose:Toreportthee.cacyofintravitreousinjectionofa.ibercept(IVA)forthetreatmentofdiabetimacularedema.PatientsandMethod:Enrolledwere15eyeswithdiabeticmacularedema(9eyeswithnon-pro-liferativediabeticretinopathy,6eyeswithproliferativevitreoretinopathy)thatunderwentIVAandwerefollowedupfor6monthsorlonger.Meanagewas58.3years;averagefollow-upperiodwas8.7months.Alleyesunder-wentIVAintheprorenata(PRN)regimenandbest-correctedvisualacuity(BCVA)measurement;centralreti-nalthickness(CRT)andmaculavolume(MV)onopticalcoherencetomographyweremeasuredperiodically.Results:ThemeanIVAfrequencywas2.9times.Atlastvisit,logMARBCVAsigni.cantlyimprovedfrom0.49to0.38(p<0.05),CRTdecreasedfrom526μmto433μm(p<0.05)andMVdecreasedfrom13.6mm3to12.3mm3(p<0.01),comparedtobaseline.Conclusion:Intravitrealinjectionofa.iberceptisane.ectivetreatmentfordiabeticmacularedema.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(2):264.267,2017〕Keywords:アフリベルセプト,抗血管内皮増殖因子,糖尿病黄斑浮腫,光干渉断層計.a.ibercept,antivascularendothelialgrowthfactor,diabeticmaculaedema,opticalcoherencetomographyはじめに糖尿病網膜症は先進国において主要な成人の失明原因である.わが国においても,若生ら1)の視覚障害の原因調査で糖尿病網膜症は2位(15.6%)を占めている.糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の重症度にかかわらず発症し,直接視力低下の原因となるため,その治療は重要である.糖尿病黄斑浮腫に対しては毛細血管瘤に対する直接凝固や,閾値下凝固を含む格子状凝固,あるいはステロイド局所投与,硝子体手術が施行されてきたが,治療に抵抗することも少なくない.2014年に抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)製剤であるラニビズマブとアフリベルセプトが相次いで糖尿病黄斑浮腫の治療薬として承認され,重要な役割を果たしている.ラニビズマブはVEGFに対する中和抗体のFab断片で2),アフリベルセプトはVEGF受容体-1およびVEGF受容体-2の細胞外ドメインとヒトIgG1のFcドメインからなる遺伝子組換え融合糖蛋白質であり,VEGF-A,VEGF-B,胎盤成長因子などのVEGFファミリーに高い親和性を有するとされている3).〔別刷請求先〕加藤亜紀:〒467-8601名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学Reprintrequests:AkiKato,M.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,NagoyaCityUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences,1Kawasumi,Mizuho-cho,Mizuho-ku,Nagoya467-8601,JAPAN264(122)今回筆者らは糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内注射後の視力,滲出性変化への影響を評価したので報告する.I対象および方法対象は2014年11月.2015年3月に名古屋市立大学病院で,他の治療で改善が困難な糖尿病黄斑浮腫に対し,アフリベルセプト2mg硝子体内注射を施行し,6カ月以上経過観察できた11例15眼である.投与前視力が小数視力で1.2以上の症例,無硝子体眼は対象から除外した.平均年齢58.3±3.3歳,平均観察期間8.7±0.3カ月(6.10カ月)であった.病型の内訳は非増殖糖尿病網膜症7例9眼,増殖糖尿病網膜症4例6眼であった.全例において糖尿病黄斑浮腫に対して治療歴があり,トリアムシノロン後部Tenon.下投与11例13眼,網膜光凝固12例14眼,(毛細血管瘤に対する直接凝固11眼,格子状閾値下凝固2眼,汎網膜光凝固7眼)ラニビズマブ硝子体内注射5例6眼であった(重複含む).初回アフリベルセプト投与後は原則毎月診察を行い,矯正視力,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)(シラスHD-OCT,ZEISS社)から,小数視力で2段階以上の視力低下あるいはOCTで黄斑部浮腫の残存または増悪が認められた場合はアフリベルセプトの追加投与を行った(prorenata:PRN投与).また症例によっては他の治療法を併用した.矯正視力およびOCTによる中心網膜厚,黄斑体積を後ろ向きに検討した.視力変化は,小数視力をlogarithmofminimalangleofresolution(logMAR)視力に換算したうえで0.3以上の差を改善または悪化とし,それ以外を不変とした.またCRTは20%以上の変化を改善,悪化とした.logMAR視力,中心網膜厚,黄斑体積の投与前と投与後の統計的比較には,Dunnett’stestを用いて,p<0.05を有意差ありとした.II結果平均投与回数は2.9±0.32であった.アフリベルセプト投与前後の最高矯正視力の変化を図1に示す.平均logMAR視力は,投与前0.49±0.08に対し,投与後最高時では0.26±0.08で有意に改善を認めた.また投与後最高視力においては,視力が改善した症例5眼(33%),不変が10眼(67%)で悪化した症例はなかった.投与後1カ月,3カ月,6カ月,最終受診時ではそれぞれ,0.34±0.05,0.36±0.06,0.39±0.08,0.39±0.08で,いずれの時点においても術前と比較して有意に改善を認めた(図2).最終受診時における視力変化は改善2眼(13%),不変13眼(87%)で悪化した症例はなかった(図3).平均中心網膜厚は投与前526±37μm,投与後1カ月,3カ月,6カ月,最終受診時ではそれぞれ,353±21μm,431±50μm,473±45μm,443±47μmで,投与前と比較し1カ月と最終受診時で有意に改善を認めた(図4).投与後最良中心網膜厚は改善が11眼(73%),不変が4眼(26%)で悪化した症例はなかった.最終受診時の中心網膜厚は改善7眼(47%),不変7眼(47%)で悪化1眼(6%)であった.平均黄斑体積は投与前13.6±0.46mm3,投与後1カ月,3カ月,6カ月後,最終受診時はそれぞれ11.9±0.31mm3,12.2±0.53mm3,12.1±0.53mm3,12.3±0.50mm3で,いずれの時点においても術前と比較して有意に改善を認めた(図4).経過観察中に,黄斑浮腫に対してアフリベルセプト以外の治療を行った症例は7例8眼で,トリアムシノロン後部Tenon.下注射2例2眼,トリアムシノロン硝子体内注射1例1眼,毛細血管瘤に対する直接凝固4例4眼,格子状閾値下凝固1例2眼,硝子体手術1例1眼(重複含む)であった.経過観察中に浮腫が消失し,その後再発しなかった症例は3例3眼で,2例はアフリベルセプト投与直後に毛細血管瘤に対する直接凝固を併用した症例,1症例はアフリベルセプト投与の2週間前に直接凝固を施行していた症例であった.6例9眼は浮腫が一度は消失したが,経過観察中に浮腫が再発し追加治療を行った.3例3眼は経過観察中,一度も浮腫の改善が得られなかった.経過観察中に,眼内炎,水晶体損傷,網膜.離,網膜裂孔など,直接アフリベルセプト硝子体内投与が関与したと思われる合併症はみられなかった.両眼加療中の患者1例で経過観察中に網膜中心動脈閉塞症を発症した.左眼へのアフリベルセプト投与3日後,右眼へのアフリベルセプト投与2カ月後に急に右眼視力が光覚弁にまで低下,蛍光眼底造影検査で右眼の著明な動脈の灌流遅延を認めた.その後視力は発症前程度にまで改善した.この症例は血糖値のコントロールが不安定で,前増殖型ではあったが,比較的無灌流領域の広い症例であった.またその他の重篤な有害事象は認めなかった.III考按今回筆者らは他の治療で改善が困難な難治性糖尿病黄斑浮腫に対してアフリベルセプト硝子体内投与を施行した.約9カ月間での平均投与回数は約3回で,アフリベルセプト後,最高視力はlogMAR視力で0.49から0.26に有意に改善,また33%の症例で視力が0.3以上改善した.経過観察中の平均視力は投与前と比較し有意に改善していた.中心網膜厚は最良時において73%が投与前と比較して改善し,平均中心網膜厚は最終受診時において投与前と比較して有意に改善していた.また平均黄斑体積も視力と同様,経過観察中投与前と比較し有意に改善していた.経過観察中浮腫の再発を認めなかったのは3眼(20%)で,9眼(60%)は浮腫が再発し,1.201.000.800.600.400.20アフリベルセプト投与後最高視力投与前136最終受診時(カ月)0.200.400.600.801.001.20図2アフリベルセプト投与後の視力の推移(logMAR)矯正視力は投与前と比較していずれの時点においても有意に改善を認めた(**p<0.01,*p<0.05,Dunnett’stest,bar±SE).アフリベルセプト投与前視力(logMAR)図1アフリベルセプト投与前視力と投与後最高視力(logMAR)全症例のアフリベルセプト投与前と投与後の最高視力を示す.60015.0526中心網膜厚黄斑体積13.6473431433*12.3**353**12.2**12.1**11.9**中心網膜厚(μm)黄斑体積(mm3)50014.0最高視力40013.0最終視力30012.020011.0投与前136最終受診時(カ月)図4アフリベルセプト投与後の中心網膜厚・黄斑体積の推移中心網膜厚は投与前と比較して1カ月,最終受診時,有意に改善を認めた.黄斑体積は投与前と比較していずれの時点においても有意に改善を認めた(**p<0.01,*p<0.05,Dunnett’stest,bar±SE).ト2mgを4週間ごとに5回投与後,8週ごとに連続投与した群では100週目で10文字程度改善し(VISTA11.1文字,VIVID9.4文字),15文字以上改善を維持していた割合は(VISTA33%VIVID31%)であったとしている.一方でRESTOREstudy6)やREVEALstudy7)ではPRN投与方式でラニビズマブ単独投与と黄斑部に対する網膜光凝固の併用の比較をしている.いずれも1年後において視力改善は6文字程度(RESTORE:IVR単独群6.1文字,併用群5.9文字,REVEAL:IVR単独群6.6文字,併用群6.4文字)で,ラニビズマブ投与回数は7回であったとしている.また網膜光凝固を併用した群と,しなかった群では結果に差はなかったと報告している.今回の筆者らの検討では,logMARでの0.02の変化をETDRS視力の1文字と換算したとき,最高視力は0.23改0%20%40%60%80%100%図3最高視力時・最終受診時における視力改善度logMAR視力で0.3以上の変化を改善・悪化としたとき,最高視力時は改善が33%,最終受診時は改善13%,残りは不変で悪化した症例はなかった.残りの3眼(20%)は経過観察中浮腫が残存した.糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF薬の有効性はすでに大規模臨床試験で示されている.わが国で最初に承認されたラニビズマブ0.5mg硝子体内投与については,RISEandRIDE試験4)として知られる毎月ラニビズマブ硝子体内投与(intravitrealranibizumab:IVR)の有効性を評価した報告で,24カ月後においてETDRS視力で12文字(RIDE12.0文字,RISE11.9文字)の改善を認め,36カ月後でも11文字(RIDE11.4文字,RISE11.0文字)程度の改善を認めたとしている.また36カ月後15文字以上の改善を維持していた割合は約40%(RIDE40.2%,RISE41.6%)であったとしている.アフリベルセプトにおいても連続投与に関する報告がされており,VISTAandVIVID試験5)においてアフリベルセプ善で約11.5文字改善しており,0.3以上の改善すなわち15文字以上の改善がえられた症例は33%で,最高視力時だけを比較すると,アフリベルセプトの連続投与での改善度に近いが,最終視力はlogMARで0.1の改善,ETDRSに換算すると5文字の改善にとどまり,15文字以上改善した症例も13%になり,PRN投与による既報と同等かそれ以下であると考えられる.投与回数も1年で約4回の計算になり,他の試験と比較すると少ない.実臨床においてたとえPRN方式であったとしても,医師が必要と判断したときに必ずしも患者が治療を希望するとは限らない.患者によっては金銭的な理由からステロイドの局所投与や,網膜光凝固を選択する場合も少なくない.よって可能な限り治療回数と,治療費を抑えることが必要になる.当院では以前から,インドシアニングリーン蛍光眼底造影を利用した毛細血管瘤の直接凝固8)を積極的に行っており,今回追加治療の必要なかった症例はいずれも治療の前後に直接凝固の治療歴があった.網膜光凝固の併用は差がないとの報告も多いが6,7),近年追尾システムを導入した網膜光凝固機器による網膜光凝固の併用でラニビズマブの投与回数を少なくできたとの報告がされており9),抗VEGF治療に毛細血管瘤に対する直接凝固を併用することは糖尿病黄斑浮腫の治療に有用であると思われる.今回の症例では5例6眼にラニビズマブ硝子体内投与の既往があった.糖尿病黄斑浮腫の治療において,現在わが国で認可されているどちらの薬剤の治療効果が高いかは興味深いところであるが,ベバシズマブ,ラニビズマブ,アフリベルセプト3剤の治療効果を比較したprotocolTとよばれる検討10,11)においては,治療開始後1年目では視力が20/50以下の群ではアフリベルセプトは他の群と比較して有意に視力改善がみたれたが,2年目では,3群の視力改善度も投与回数もともに差はなく,また合併症についても3群間で大きな差はみられなかったとしており,今回の症例においても長期経過を検討する必要があると思われる.今回,網膜中心動脈閉塞症と思われる所見を呈した症例が1例あった.両眼治療中で,左眼へのアフリベルセプト投与3日後,右眼へのアフリベルセプト投与2カ月後に右眼に症状が出現し,その後無治療で視力は発症前程度にまで改善したことから,動脈の完全閉塞が生じていたかどうかは定かではないが,抗VEGF薬による加療は眼内炎,網膜裂孔,水晶体損傷など眼への直接的な侵襲によるもののみならず,全身の血流,あるいは今回のように眼局所の血流にも影響を及ぼす可能性があり,注意深い経過観察が必要である.アフリベルセプトは糖尿病黄斑浮腫に対して他の治療に抵抗する症例においても浮腫の改善に有効であった.しかし効果は一時的で,大部分の症例において浮腫が再発し,追加治療が必要であった.視力改善を維持するためには投与回数を増やしたほうが良いとも思われるが,実臨床の場ではむずかしい部分もあり,併用療法も含め今後さらなる検討が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)若生里奈,安川力,加藤亜紀ほか:日本における視覚障害の原因と現状.日眼会誌118:495-501,20142)FerraraN,GerberHP,LeCouterJ:ThebiologyofVEGFanditsreceptors.NatMed9:669-676,20033)HolashJ,DavisS,PapadopoulosNetal:VEGF-Trap:aVEGFblockerwithpotentantitumore.ects.ProcNatlAcadSciUSA99:11393-11398,20024)BrownDM,NguyenQD,MarcusDMetal:Long-termoutcomesofrenibizumabtherapyfordiabeticmaculaedema:the36-monthresultsfromtwophaseIIItrials:RISEandRIDE.Ophthalmology120:2013-2022,20135)BrownDM,Schmidt-ErfurthU,DoDVetal:Intravitreala.iberceptfordiabeticmacularedema:100-weekresultsfromtheVISTAandVIVIDstudies.Ophthalmology122:2044-2052,20156)MitchellP,BandelloF,Schmidt-ErfurthUetal:TheRESTOREstudy:ranibizumabmonotherapyorcombinedwithlaserversuslasermonotherapyfordiabeticmacularedema.Ophthalmology118:615-625,20117)IshibashiT,LiX,KohAetal:TheREVEALStudy:Ranibizumabmonotherapyorcombinedwithlaserversuslasermonotherapyinasianpatientswithdiabeticmacularedema.Ophthalmology122:1402-1415,20158)OguraS,YasukawaT,KatoAetal:Indocyaninegreenangiography-guidedfocallaserphotocoagulationfordia-beticmacularedema.Ophthalmologica234:139-150,20159)LieglR,LangerJ,SeidenstickerFetal:Comparativeevaluationofcombinednavigatedlaserphotocoagulationandintravitrealranibizumabinthetreatmentofdiabeticmacularedema.PLoSONE9:e113981,201410)DiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork:A.iber-cept,bevacizumab,orranibizumabfordiabeticmacularedema.NEnglJMed372:1193-1203,201511)WellsJA,GlassmanAR,AyalaARetal:A.ibercept,bevacizumab,orranibizumabfordiabeticmacularedema:Two-yearresultsfromacomparativee.ectivenessran-domizedclinicaltrial.Ophthalmology123:1351-1359,2016***