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眼底所見と対比した放射線および糖尿病網膜症の網膜の病理学的観察

2011年2月28日 月曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(123)277《原著》あたらしい眼科28(2):277.285,2011c眼底所見と対比した放射線および糖尿病網膜症の網膜の病理学的観察木村毅*1溝田淳*2安達惠美子*3*1きむら眼科*2帝京大学医学部眼科学講座*3千葉大学大学院医学研究院視覚病態学Clinico-pathologicalChangesoftheRetinainRadiationandDiabeticRetinopathyTsuyoshiKimura1),AtsushiMizota2)andEmikoUsami-Adachi3)1)KimuraOphthalmologicInstitute,2)DepartmentofOphthalmology,TeikyoUniversitySchoolofMedicine,3)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofMedicine,ChibaUniversity目的:眼底所見の類似する放射線網膜症(以下,RR)と糖尿病網膜症(以下,DR)の網膜の臨床病理学的研究を行い,両者を対比検討する.さらに両者に共通な毛細血管瘤の形態を観察しその成因を考察する.方法:実体顕微鏡,光学および電子顕微鏡観察.症例:(1)RR.54歳,男性.1977年7月,篩骨洞癌のため左眼を含む照射野に総量10,000rdsのコバルト照射を施行,1年後左眼球摘出を施行,実体顕微鏡下にRRが認められた.(2)DR.68歳,女性.コントロール不良の糖尿病患者.1976年左眼白内障術後,絶対緑内障を併発,やむなく左眼球摘出を施行した.実体顕微鏡下にてDRが認められた.結果:RRの眼底では乳頭から黄斑部にかけて浮腫状網膜混濁を認めるが,この本態は神経線維層内の神経線維の腫大,変性であった.そして内,外顆粒層,網状層,視細胞層の配列の不整や細胞要素の変性は両者にみられ,多様であるがそれぞれの特異性はなかった.血管内皮細胞の変化は扁平化,有窓化が両者にみられ血管閉塞も観察される.毛細血管瘤壁の構造は毛細血管類似であったが,なかには基底膜がきわめて菲薄で,内皮細胞は丈が高く,核が大きく幼若とみなされるものもあった.これらは血管瘤以外の毛細血管と異なり,基底膜に沿って並列に増殖した内皮細胞と推測された.結論:RRもDRも網膜各層の不整や細胞質内小器官の広範囲な変性など病態は多様性に富むが,それぞれの変化に特異性はなかった.血管内皮細胞の変性は顕著であった.毛細血管瘤壁には内皮細胞,その菲薄な基底膜ともに幼若なものとみなされるものも観察され,それらは基底膜に沿った増殖が推測された.Clinico-pathologicalchangesoftheretinawereexaminedinoneeyewithradiationretinopathy(RR;case1,54yearsold,male)andoneeyewithdiabeticretinopathy(DR;case2,68yearsold,female).Lightandelectronmicroscopyandbinocularmicroscopywereperformedonthetwoeyes.Theeyeincase1hadbeentreatedformalignantorbitaltumorwithX-irradiation(cobalt)of10,000radsdeliveredtothetumorarea,includingthefelloweye,overaperiodof3months.After1yeartheeyewasenucleatedandbinocularmicroscopyofthefundusrevealedRR,showingretinaledema,hemorrhages,softexudatesandmicroaneurysms.Theeyeincase2wasobtainedfromabsoluteglaucoma.BinocularmicroscopyshowedDR.Histopathologicalexaminationoftheretinasinthesecasesdisclosedthatthecytoplasmicorganellesinthecellsofthenervefiberlayer,innerandouterplexiformlayers,nuclearlayersandphotoreceptorshaddegeneratedanddecreased.Thenucleiofthosecellsappearedtoberelativelyresistanttoirradiation.Damagetotheendothelialcellsinretinalvesselswasprominent.Theseendothelialcellswerethinandfenestrated;somewerelost.Theendothelialcellsinthewallsofmicroaneurysmshadnumerouscytoplasmicorganelles,largenucleiandthinbasementmembranes.Thesefeaturessuggestthatthesecellswereyoungtypeandhadproliferatedinlinearfashionalongthebasementmembrane.Asaresultofthisproliferation,thecapillarylumenappearedtoenlarge.TheRR-relatedpathologicalchangesintheretinaweresimilartothoseofDR;itwasimpossibletodifferentiatethefindingsofRRfromthoseofDR.Theendothelialdamageappearedtohavecausedsecondarychangesintheretina.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(2):277.285,2011〕〔別刷請求先〕木村毅:〒421-0206焼津市上新田829-1きむら眼科Reprintrequests:TsuyoshiKimura,M.D.,KimuraOphthalmologicInstitute,829-1Kamishinden,Yaizu-shi,Shizuoka-ken421-0206,JAPAN278あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(124)はじめに放射線網膜症(以下,RR)と糖尿網膜症(以下,DR)は眼底所見がやや類似している.これらの網膜症の患者眼での病理組織学的観察は,トリプシン消化法による血管樹伸展標本が多く1)光学および電子顕微鏡(以下,光顕,電顕)を用いた研究は少ない2.4).特に眼底所見と対比した臨床病理学的報告はきわめて少ない5).今回眼底所見と対比したRRの網膜病変をDRのそれと比較し,光顕,電顕的観察からそれぞれ多様性に富む網膜病変と顕著な血管変化について検討した.そして毛細血管瘤の形態について観察しその成因についても考察する.I症例1.RR(症例1)54歳,男性.1977年7月弘前大学医学部附属病院耳鼻咽喉科にて篩骨洞扁平上皮癌と診断された.その後,同病院放射線科にて左眼を含む照射野に3カ月間総量10,000rdsのコバルト照射を受けた.照射前の検眼鏡所見ではScheie1の網膜動脈硬化症以外に異常所見はみられなかった.照射後より左眼角膜炎を併発,1年後重篤な角膜潰瘍のため眼痛,高度の視力障害を訴えやむなく左眼球摘出を施行した.摘出後の眼球は切半し前眼部は角膜,虹彩,水晶体が癒着し一塊となっていた.後極部は実体顕微鏡による眼底所見では図1に示したごとく,乳頭から黄斑部にかけての浮腫状混濁,綿花様白斑,網膜出血,毛細血管瘤などがみられ,RRの眼底所見であった.2.DR(症例2)68歳,女性.10年来コントロール不良の糖尿病に罹患.1976年糖尿病白内障のため某病院眼科にて左眼白内障手術を受けた.術後,左眼緑内障を併発.5年後弘前大学医学部附属病院眼科にて諸種治療にもかかわらず高度の視力障害,眼痛を訴え絶対緑内障の診断でやむなく左眼球摘出を施行した.摘出眼球は赤道部で切半し,後極部網膜の実体顕微鏡観察では網膜小出血,毛細血管瘤,硬性白斑が認められた.右眼の検眼鏡観察でも同様の網膜病変が認められDRと診断された.以上の症例は2例とも眼球摘出前,治療,研究に対するインフォームド・コンセントを行い同意を得たうえで施行している.II方法症例は1,2とも摘出眼球は前眼部と後極部に切半し0.1Mリン酸バッファーを含む2.5%グルタールアルデヒド溶液に前固定.実体顕微鏡による眼底写真撮影後,毛細血管瘤その他検索部位の病変部を小片に分離した.そして0.1Mリン酸バッファーを含む1%四酸化オスミウムで後固定,エタノール系列で脱水後エポン包埋しPorterBlumミクロトームにて1μmの準超薄切片,超薄切片を作製した.準超薄切片は1%トルイジンブルー染色を施行し,光顕用標本とし,超薄切片は酢酸ウラン,クエン酸鉛の二重染色後,日立電子顕微鏡にて観察した.III結果1.RR(症例1)図1のaのRRの眼底写真における綿花様白斑部とその近くの動脈の光顕所見を図2に示した.トルイジンブルーに濃染するcytoidbodyの集落と著しい神経線維の腫大がみられる.そして網膜各層配列の不整がみられる.この綿花様白斑の付近の動脈は内皮下組織が肥厚し内腔は狭細となっている.内皮細胞は扁平化している.図3はこの動脈壁の電顕所見である.肥厚した内皮下組織には高電子密度の小顆粒状物質の蓄積がみられ,扁平化した内皮細胞には有窓化が認められる.図4は図1のbにおける神経線維層であるが,神経線維は腫大し細胞質内小器官は変性,崩壊している.Densebodyもしばしば認められる.漿液の貯留も細胞間に少ないが存在する.図5はこの症例の小静脈の所見である.内皮細胞は扁平化し,外膜はやや肥厚している.このような内皮細胞は毛細血管にも広くみられる.図6は外層の視細胞層であるが,この部位では比較的細胞配列は良いが細胞質内小器官が広範囲に変性している.外境界膜には顕著な変化はみられ〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(1):000.000,2010〕Keywords:放射線網膜症,糖尿病網膜症,網膜毛細血管瘤,網膜血管病,電子顕微鏡.radiationretinopathy,diabeticretinopathy,retinalmicroaneurysm,retinalvasculardisease,electron-microscopy.図1RR(症例1)の実体顕微鏡による眼底写真乳頭から黄斑部にかけての浮腫状網膜混濁,網膜出血,綿花様白斑が認められる.(125)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011279図2図1のa部位の綿花様白斑部と動脈の光顕所見右側の綿花様白斑部ではトルイジンブルーに濃染される偽核をもつcytoidbodyの集落と神経線維の腫大が認められる.左側の動脈は内皮下組織(*印)の肥厚のため内腔は狭搾しており内皮細胞は扁平化している.(トルイジンブルー染色,×200)図3図2の部位の動脈の電顕所見肥厚した内皮下組織(*印)には左上挿図のごとく高電子密度の小顆粒状物質の蓄積が認められる.内皮細胞は有窓化(右下挿図)している.中膜筋層には顕著な変化は認められない.DB:高電子密度物質,G:グリア細胞,S:平滑筋細胞.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色)280あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(126)図4図1のb部位の神経線維層の電顕所見神経線維は腫大し細胞質内小器官は変性,崩壊している.Densebodyもしばしばみられる.細胞間質の漿液の貯留は比較的少ない.ILM:内境界膜,NF:神経線維.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,bar=1μm)図5RR(症例1)の神経線維層内の小静脈の所見内皮細胞は扁平化しており外膜はやや肥厚している.L:内腔.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,bar=1μm)(127)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011281図6図5と同一症例の視細胞層の所見細胞配列は比較的良いが,細胞質内小器官は広範囲に変性している.外境界膜(ELM)には異常はみられない.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,bar=1μm)図7DR(症例2)の網膜の光顕所見内層の層構造はほとんど消失しておりグリア細胞によって置換されている.外層の層構造は不整である.矢印は毛細血管瘤.V:硝子体.(トルイジンブルー染色,×200)282あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(128)ない.2.DR(症例2)図7は症例2の網膜の光顕所見である.網膜内層の層構造は消失しグリア細胞(Muller細胞)によって置換されている.外層は部位によって残存している.このような層構造の配列の乱れや消失は同一症例の網膜でも部位によってさまざまで多様性に富んでいる.図8は別の網膜部位である.内顆粒層,内網状層などの細胞要素の核,胞体,突起などに著変はない.細胞質内小器官の変性は広範囲に認められる.図9は同症例の網膜の光顕所見であるが,この部位では網膜下腔の形成が認められる.そして各層の配列は不整であり,内節,外節は変性,消失している.図10はこのような部位の外層の電顕所見であるが,内節は萎縮しミトコンドリアの変性がみられ外節は消失している.図11は同症例の毛細血管閉塞所見で内腔はMuller細胞突起が充満し基底膜も崩壊過程である.図12は毛細血管と毛細血管瘤との移行部付近の毛細血管像であり,内皮細胞はpinocytosisなど活性な所見を呈している.基底膜はやや肥厚し空胞形成がみられ,本例に普遍的な毛細血管基底膜を示している.図13は症例2の毛細血管瘤の電顕所見である.この所見で最も顕著なところはその菲薄な基底膜で空胞形成も認めないことである.このような基底膜は血管瘤を形成していない毛細血管にはみられない形態であった.そして内皮細胞は丈が高く核が胞体の割に大きく細胞質内小器官に富んでいる.内皮細胞は連続して基底膜に沿っており,管壁の内外に遊離したものは認められなかった.IV考按1.網膜病変の多様性RRの眼底変化は照射後通常数カ月から5年くらいまでに出現する.これらの変化は網膜出血,浮腫,毛細血管瘤などでDRに類似している.本例でも認められる乳頭および網膜浮腫は大部分神経線維の腫大,変性に由来するものであり,本質的には綿花様白斑と同じ性状のものである.その他漿液の貯留もしばしばみられる.このような変化は視束内神経線維も同様に障害される.神経線維の変性,崩壊はRRのみでなく,症例2のDRにも広くみられるが,この例は絶対緑内障眼のため,その影響も大きいことが考えられる.RRとDRも網膜の層構造の不整や細胞要素の変化は部位によってさまざまで多様性に富んでいる.そして各細胞の細胞質内小図8DR(症例2)の内顆粒層,内網状層(IP)の所見この部位では細胞の胞体,突起は比較的良いが各細胞質内小器官は広範囲に変性している.核は顕著な異常はみられない.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,bar=1μm)図9図7と同一症例の別の部位の光顕所見網膜各層の配列は不整で外節はほとんど消失している.マクロファージを含む網膜下腔(SR)が認められる.(トルイジンブルー染色,×200)(129)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011283図11DR(症例2)における毛細血管閉塞所見内腔は侵入したMuller細胞(M)によって閉塞され,残存する基底膜も崩壊過程となっている.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,bar=1μm)図12DR(症例2)毛細血管瘤との移行部近くの毛細血管所見内皮細胞(E)はpinocytosis(矢印)などやや活性の所見を呈している.基底膜(BM)は軽度に肥厚し空胞形成が認められる.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,bar=1μm)図10図9の内節(IS)の電顕所見内節は萎縮しミトコンドリアは変性している.外節は消失している.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,bar=1μm)284あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(130)器官の変性は広範囲であり,特に視細胞内節,外節の変性は顕著である.このような変化の多様性は両者に共通であり,それぞれの変化に特異性がなく,病態だけではRRとDRの区別は不可能である.2.網膜血管の変化図2に示した動脈壁の内皮下組織の肥厚であるが,この所見は硬化性変化とは異なる.弾性板のない網膜動脈では硬化性変化として一般にみられるアテローム変性による内膜肥厚はなく,中膜筋層の変化が主体である.中膜における膠原線維,プロテオグリカンの増加,平滑筋細胞の変性,崩壊を硬化の主病変とする6).図2,3の動脈壁にはそのような所見はなく,肥厚した内皮下組織に高電子密度の物質の蓄積があるのみである.この動脈内皮細胞は有窓型であり透過性亢進状態を表している.このような有窓型内皮細胞は硝子体内増殖組織内の血管にみられることはよく知られている7)が,病的状態では網膜動脈,静脈,毛細血管にも存在する8).このような内皮細胞の扁平化はDRにもRRにも認められることが報告されている5).そしてこれらの病変はすべての血管に及んでいるが,小血管ほど障害は著しく,内皮細胞障害から内腔へのグリア細胞侵入による血管閉塞所見が認められる.そして最終的には基底膜も崩壊する.近年,DRにおいて白血球が血管内皮細胞に密着して内皮細胞増殖因子を誘導するとする説9)が提唱されているが,今回の観察では血管内外に白血球増多は認められなかった.3.網膜毛細血管瘤つぎにRRにもDRにもみられる毛細血管瘤の構造についての記載は少ないが電顕的研究が報告されている2,4,10).しかし毛細血管瘤の成因に関しては一致した見解はない.現在までのうち最も注目され定説化されている説として毛細血管周皮細胞の変性,崩壊のためその部位が血流の圧力によって膨隆し,血管瘤を生ずるとするトリプシン消化法による血管樹伸展標本からの記載がある1).しかし,標本がトリプシン消化法によるものであり,周皮細胞に支持組織としての役割があるかどうか証明されておらず,周皮細胞の変性,崩壊は腎性高血圧網膜症でも多く認められ6),DRに特異的なものではない.本症例(DR)の血管瘤以外の毛細血管では内皮細胞はやや扁平な部位が多いが,基底膜は空胞形成のある通常の成人網膜毛細血管基底膜とほぼ同様である.このような毛細血管が血管瘤を形成すると,内腔拡張とともに図13に示したごとく内皮細胞は丈が高く基底膜は菲薄になり空胞形成はみられない.このような基底膜は既存のものが薄く伸展した状態とは考えにくく,内皮細胞の形態とともに幼若なものと図13DR(症例2)の毛細血管瘤の電顕所見内皮細胞(E)は丈が高く核が胞体に比べて大きい.基底膜(矢印)はきわめて菲薄で空胞形成はみられない.これらの内皮細胞は幼若なタイプとみなされ,内皮細胞が基底膜に沿って並列に増殖したかにみられる.挿図は毛細血管から急激に内腔が拡張し毛細血管瘤に移行する光顕所見.E:内皮細胞,P:周皮細胞.(酢酸ウラン・クエン酸鉛染色,挿図はトルイジンブルー染色,×400)(131)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011285みなされる.したがって内皮細胞は基底膜に沿って並列に増殖し,それによって内腔が拡張したものと推測される.本例の毛細血管瘤内皮細胞がすべて同じ形態をもつわけではないので,期間が経過すれば内腔はそのままでも内皮細胞も通常のものになると考えられる.以上の観察から,①RRもDRも網膜の層構造の不整や細胞要素の変性など病態が多様性に富んでいるが,それぞれの特異性はみられない.さらに各層を構成するどの細胞要素にも広範囲に細胞質内小器官の変性がみられる.②両者とも血管内皮細胞の変性がみられ,検眼鏡による網膜病変は二次的変化と考えられる.③毛細血管瘤のなかにはその形態が他の毛細血管のそれと異なり,菲薄な基底膜をもち丈の高い,核の大きな内皮細胞を有するものもあった.これらの内皮細胞は幼若なタイプとみなされ,基底膜に沿って並列に増殖する結果,内腔が拡張すると推測された.文献1)CoganDG,ToussaintD,KuwabaraT:Retinalvascularpatterns.IV.Diabeticretinopathy.ArchOphthalmol66:366-367,19612)KimuraT:Ultrastructureofcapillariesinhumandiabeticretinopathy.JpnJOphthalmol18:403-417,19743)KimuraT:Electronmicroscopyofhumanretinalhaemorrhagesinhypertensionanddiabetes.JpnJOphthalmol16:266-282,19724)YamashitaT,RosenDA:Electronmicroscopicstudyofdiabeticcapillaryaneurysm.ArchOphthalmol67:785-790,19625)ArcherDB,AmoakuWM,GradinerTA:Radiationretinopathy─Clinical,histopathological,ultrastructuralandexperimentalcorrelations.Eye5:239-251,19916)KimuraT,MizotaA,FujimotoN:Lightandelectronmicroscopicstudiesonhumanretinalbloodvesselsofpatientswithsclerosisandhypertension.AnnOphthalmol26:151-158,20067)木村毅,ChenCC,PatzA:硝子体内増殖組織の光学および電子顕微鏡的研究.日眼会誌83:255-265,19798)木村毅,松橋英昭,石井敦子:人眼網膜血管における透過性亢進の形態学的研究.特に有窓型内皮細胞とアテローム変性の存在について.日眼会誌87:1199-1211,19829)石田晋,山城健児,臼井智彦:網膜浮腫,虚血,血管新生を制御する白血球の重要性について.日眼会誌108:193-201,200410)宇賀茂三,清水敬一郎,林正雄:糖尿病罹患網膜における毛細血管瘤の電子顕微鏡的観察.日眼会誌81:1716-1722,1977***