874(12あ2)たらしい眼科Vol.28,No.6,20110910-1810/11/\100/頁/JC(O0P0Y)《第21回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科28(6):874.878,2011c〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN多施設による緑内障患者の実態調査2009年度版―薬物治療―井上賢治*1塩川美菜子*1増本美枝子*1野口圭*1澤田英子*1南雲はるか*1若倉雅登*1添田尚一*2富田剛司*3*1井上眼科病院*2西葛西井上眼科病院*3東邦大学医学部眼科学第二講座CurrentStatusofTherapyforGlaucomaatPrivatePracticesandPrivateOphthalmologyHospitalsin2009KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),MiekoMasumoto1),KeiNoguchi1),HidekoSawada1),HarukaNagumo1),MasatoWakakura1),ShoichiSoeda2)andGojiTomita3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)2ndDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicine緑内障患者の治療に関する実態を本試験の趣旨に賛同した施設で調査し,2007年に行った前回調査と比較する.本試験の趣旨に賛同した30施設に2009年11月24日~30日に外来受診した緑内障,高眼圧症患者3,074例3,074眼を対象とした.緑内障病型,手術既往歴,使用薬剤を調査した.緑内障病型は,正常眼圧緑内障45.4%,(狭義)原発開放隅角緑内障32.4%,原発閉塞隅角緑内障8.6%であった.使用薬剤数はなし9.9%,1剤48.4%,2剤24.3%,3剤12.8%,4剤3.9%,5剤0.7%であった.単剤例(1,489例)はラタノプロスト37.6%,タフルプロスト10.0%,トラボプロスト8.0%,ウノプロストン7.7%,ゲル化チモロール7.2%であった.2剤例(749例)はプロスタグランジン(PG)関連薬+b遮断薬58.6%,PG関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬20.0%であった.前回調査と比較して単剤例はPG関連薬が増加し,b遮断薬が減少した.2剤例はPG関連薬+b遮断薬が最多であったが,今回はPG関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬が増加した.Weinvestigatedthecurrentstatusofglaucomatherapyatprivatepracticesandophthalmichospitals.Includedinthisstudywere3,074patientswithglaucomaandocularhypertensionwhovisited30privatepracticesandhospitalsduringtheweekofNovember24,2009.Theresultswerecomparedwiththoseofapreviousstudyperformedin2007.Ofthesepatients,45.4%hadnormal-tensionglaucoma,32.4%hadprimaryopen-angleglaucomaand8.6%hadprimaryangle-closureglaucoma.Onedrugalonewasprescribedin48.4%ofcases,2drugsin24.3%,3in12.8%,4in3.9%and5in0.7%.Inpatientsreceivingmonotherapy,latanoprost(37.6%),tafluprost(10.0%),travoprost(8.0%),unoprostone(7.7%)andgel-formingtimolol(7.2%)wereprescribed.Prostaglandinanalogandbeta-blockingagentwereusedincombinationin58.6%ofcases.Topicalcarbonicanhydraseinhibitorwasusedasanadjuncttoprostaglandinanalogin20.0%ofcases.Inpatientsreceivingmonotherapy,prostaglandinanalogswereincreasedandbeta-blockingagentsweredecreased.Inpatientsreceivingcombinationtherapy,prostaglandinanalog+carbonicanhydraseinhibitorwasincreased.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(6):874.878,2011〕Keywords:眼科診療所,眼科専門病院,緑内障治療薬,治療の実際.privatepractice,ophthalmichospital,glaucomamedication,currentstatus.(123)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011875はじめにわれわれ眼科医師は,日本緑内障学会が作成した緑内障診療ガイドライン1)に基づいて緑内障を診断し,病型を分類し,治療を開始し,その治療の効果を判定し,治療法の見直しを行っている.緑内障治療として現在のところ唯一根拠が明確に示された治療法が眼圧下降である2~5).眼圧下降療法の第一選択は薬物治療である.そのため緑内障患者に対して薬物を投与する際に日本における緑内障の頻度や薬物治療の現状を知ることは重要である.日本の緑内障の疫学調査として多治見スタディの報告がある6).また過去に,国立大学病院や公的中核病院での緑内障治療の実態に関する報告がなされた7,8).さらに慢性疾患診療支援システム研究会に登録された緑内障患者と国立大学病院で加療中の緑内障患者の新規処方の報告が近年なされた9).眼科医療の前線である一般眼科診療所や眼科専門病院においての緑内障ならびに高眼圧症に対する治療の実態は不明であったので,筆者らは2007年に調査を行い報告した10).前回調査より2年8カ月間が経過し,新しい緑内障点眼薬も使用可能になった.そこで今回,一般眼科診療所ならびに眼科専門病院での緑内障治療の実態について再調査を行った.I対象および方法この調査は,調査の趣旨に賛同した30施設において,2009年11月24日から同30日までの間に行った.調査に参加した施設を表1に示す.この調査期間内に,調査施設の外来を受診した緑内障および高眼圧症患者全例を対象とした.緑内障の診断と治療は,緑内障診療ガイドライン1)に則り,各施設の判断で行った.片眼のみの緑内障または高眼圧症患者では罹患眼を,両眼罹患している場合は右眼を調査対象眼とした.これらの各施設にあらかじめ調査票を送付し,診療録から診察時の年齢,性別,病型,使用薬剤,緑内障手術既往を調査した.各施設からすべての調査票を集計センター(井上眼科病院内)に回収し集計を行った.使用薬剤については,単剤,2剤に分けて検討した.すべての結果を2007年に行った前回調査の結果10)と比較した(c2検定).II結果対象は3,074例3,074眼(男性1,264例,女性1,810例),年齢は66.9±13.1歳(平均±標準偏差,15~99歳)であった.病型は,正常眼圧緑内障1,396例(45.4%),(狭義)原発開放隅角緑内障996例(32.4%),原発閉塞隅角緑内障265例(8.6%),続発緑内障224例(7.3%),高眼圧症162例(5.3%)などであった(図1).緑内障手術は231例(7.5%)が行っていた.術式は線維柱帯切除術が198例(6.4%),線維柱帯切開術が14例(0.5%),線維柱帯切除術と線維柱帯切開術の両方の手術が5例(0.2%),隅角癒着解離術が5例(0.2%),周辺虹彩切除術が4例(0.1%),隅角癒着解離術と線維柱帯切除術と線維柱帯切開術の両方の手術が1例(0.03%)であった.何らかの眼圧下降手術を行ってあるものの,術式不明の症例が4例(0.1%)あった.緑内障および高眼圧症に対する薬剤数は,平均1.5±1.0剤で,その内訳は1剤が1,489例(48.4%),2剤が749例(24.3%),3剤が393例(12.8%),4剤が120例(3.9%),5剤が20例(0.7%)であった(図2).正常眼圧緑内障で経過観察中の症例,高眼圧症で緑内障性視神経症を認めず,視野が正常であるため経過観察のみ行っている症例,すでに濾過手術などの眼圧下降手術を施行してある症例などで,無投薬表1参加施設北海道ふじた眼科クリニック宮城県鬼怒川眼科医院埼玉県石井眼科クリニックやながわ眼科東京都お茶の水・井上眼科クリニックえづれ眼科江本眼科おおはら眼科おがわ眼科駒込みつい眼科とやま眼科中沢眼科医院西葛西井上眼科病院はしだ眼科クリニックみやざき眼科もりちか眼科クリニック後藤眼科社本眼科菅原眼科クリニック千葉県あおやぎ眼科おおあみ眼科のだ眼科麻酔科医院吉田眼科金山眼科高根台眼科神奈川県さいとう眼科眼科中井医院中川眼科熊本県むらかみ眼科クリニック沖縄県ガキヤ眼科(順不同・敬称略)NTG1,396例45.4%POAG996例32.4%PACG265例8.6%続発緑内障224例7.3%OH162例5.3%その他31例1.0%図1病型の内訳876あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(124)であったものが303例(9.9%)であった.使用薬剤の内訳は,プロスタグランジン関連薬が2,164例と圧倒的に多く,ラタノプロスト1,450例,タフルプロスト284例,トラボプロスト204例,ウノプロストン145例,ビマトプロスト81例で使用されていた(表2).すべてのb遮断薬ならびにab遮断薬合わせて1,493例で使用されていた.ゲル化チモロール411例,水溶性チモロール325例,持続型カルテオロール251例,カルテオロール122例,ニプラジロール121例などであった.炭酸脱水酵素阻害薬の点眼薬はブリンゾラミド392例,ドルゾラミド324例で使用されていた.炭酸脱水酵素阻害薬の内服薬は98例で使用されていた.単剤のみ使用している症例の使用薬剤は,ラタノプロスト560例(37.6%),タフルプロスト149例(10.0%),イオン応答ゲル化チモロール123例(8.3%),トラボプロスト119例(8.0%),ウノプロストン114例(7.7%),水溶性チモロール102例(6.9%)などであった(図3).2剤併用症例の組み合わせは,プロスタグランジン関連薬+b遮断薬が最も多く439例(58.6%),プロスタグランジン関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬は150例(20.0%),b遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬は54例(7.2%)などであった(図4).今回の調査の結果を2007年の前回調査の結果10)と比較すると,病型(前回は正常眼圧緑内障47.4%,原発開放隅角緑内障34.3%,原発閉塞隅角緑内障7.2%,続発緑内障6.1%,表2使用薬剤の内訳PG関連薬ラタノプロストタフルプロストトラボプロストウノプロストンビマトプロスト1,450眼284眼204眼145眼81眼(2,164眼)b遮断薬(ab遮断薬含む)ゲル化チモロール水溶性チモロール持続型カルテオロールカルテオロールニプラジロールチモロールレボブノロール塩酸ベタキソロールb後発品ニプラジロール後発品411眼325眼251眼122眼121眼104眼75眼43眼26眼15眼(1,493眼)炭酸脱水酵素阻害薬ブリンゾラミドドルゾラミドアセタゾラミド392眼324眼98眼a1遮断薬塩酸ブナゾシン209眼副交感神経刺激薬ピロカルピン21眼交感神経遮断薬ジピべフリン25眼4剤120例3.9%5剤20例0.7%1剤1,396例48.4%2剤996例24.4%3剤393例12.8%0剤303例9.9%図2使用薬剤数PG関連薬+b遮断薬58.6%PG関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬20.0%その他21.4%図42剤併用例の内訳PG関連薬65.6%b遮断薬30.4%その他ベタキソロール1.3%4.0%カルテオロール1.6%持続性カルテオロール5.6%水溶性チモロール6.9%ゲル化チモロール8.3%ビマトプロスト2.4%トラボプロスト8.0%タフルプロスト10.0%ラタノプロスト37.6%ウノプロストン7.7%レボブノロール2.3%ニプラジロール3.7%b後発品0.7%図3使用薬物内訳(単剤例)(125)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011877高眼圧症3.7%)に違いはなかった.使用薬剤数(前回は平均1.5±1.0剤で,なし11.9%,1剤44.7%,2剤27.5%,3剤12.1%,4剤3.3%,5剤0.4%,6剤0.1%)に違いはなかった.単剤例の内訳は,前回はプロスタグランジン関連薬53.4%(ラタノプロスト47.6%,ウノプロストン5.8%),b遮断薬(ab遮断薬を含む)36.3%(カルテオロール9.7%,チモロール7.3%,ゲル化チモロール7.1%,ニプラジロール6.2%など)で,今回はプロスタグランジン関連薬(65.6%)が有意に増加し,b遮断薬(30.4%)が有意に減少した(p<0.0001).2剤併用例の内訳は,前回はプロスタグランジン関連薬+b遮断薬54.5%,プロスタグランジン関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬15.6%で,今回はプロスタグランジン関連薬+b遮断薬58.6%は同等であったが,プロスタグランジン関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬20.0%が有意に増加した(p<0.01).III考按今回の調査の緑内障病型は広義の原発開放隅角緑内障が約80%を占めた.正常眼圧緑内障は45.4%,狭義の原発開放隅角緑内障は32.4%であった.2000年から2001年に行われた多治見スタディ6)においても広義の原発開放隅角緑内障が約80%を占めており,今回と同様であった.広義の原発開放隅角緑内障の頻度は前回調査(2007年)と同様であり,広義の原発開放隅角緑内障患者が圧倒的に多く,10年間においてもその頻度が変わっていないことが判明した.緑内障の眼圧下降療法として薬物(点眼薬,内服薬),レーザー,手術があげられる.眼圧下降効果と副作用(合併症)を考えると,通常第一選択は薬物治療となる.しかし点眼薬の種類は非常に多種にわたりその選択は容易ではない.強力な眼圧下降作用と1日1回点眼の利便性を有するプロスタグランジン関連薬が第一選択薬として使用されることが近年多くなっている7~10).単剤を使用して眼圧下降効果が不十分な場合は,他剤に切り替えるか,他剤を追加投与することになる1).これをくり返していくと多剤併用症例となる.石澤らは大学病院における正常眼圧緑内障,原発開放隅角緑内障,偽落屑緑内障に対する薬物治療の実態を報告した7).使用薬剤数は1剤39%,2剤33%,3剤20%,4剤7%,5剤1.5%で,薬物数は3剤までで92%であった.平均使用薬剤数を計算すると2.0±1.0剤である.清水らは大学病院およびその関連病院における薬物治療の実態を正常眼圧緑内障,原発開放隅角緑内障,その他の緑内障の3つの群に分けて調査した8).使用薬剤数は正常眼圧緑内障では1剤60.6%,2剤29.8%,3剤9.6%で,原発開放隅角緑内障では1剤25.6%,2剤32.7%,3剤31.0%,4剤以上10.7%で,その他の緑内障では1剤23.0%,2剤37.8%,3剤31.1%,4剤以上8.1%で,薬物数は3剤までで90~100%であった.柏木らは慢性疾患診療支援システム研究会に登録された緑内障患者と国立大学病院で加療中の緑内障患者の2000年1月から2008年6月までの9年間の新規処方の実態を報告した9).患者当たりの年間緑内障点眼薬は検討期間中において1.5種類から2.2種類であった.今回と前回の調査から点眼薬を使用していない患者を除外すると,平均使用薬剤数は今回が1.7±0.9剤,前回が1.7±0.9剤である.大学病院やその関連病院と比べると平均使用薬剤数は一般眼科診療所や眼科専門病院では同等かやや少ない可能性がある.その理由として一般眼科診療所では緑内障手術を行っておらず,多剤併用例で手術適応の患者を紹介していることが考えられる.2剤併用例については,石澤らはプロスタグランジン関連薬+b遮断薬65.5%,プロスタグランジン関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬12.6%,b遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬6.9%などと報告した7).清水らは正常眼圧緑内障ではプロスタグランジン関連薬+ab遮断薬42.2%,プロスタグランジン関連薬+b遮断薬29.7%,プロスタグランジン関連薬+a1遮断薬23.3%,プロスタグランジン関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬6.7%,原発開放隅角緑内障ではプロスタグランジン関連薬+b遮断薬47.3%,プロスタグランジン関連薬+a1遮断薬20.0%,プロスタグランジン関連薬+ab遮断薬12.7%,プロスタグランジン関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬12.7%などと報告した8).b遮断薬にab遮断薬を含めて考えると,前回調査の結果10)と過去の報告7,8)とは同様であった.今回の調査ではプロスタグランジン関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬が増加していた.その理由として,高齢化社会を迎え,b遮断薬にみられる呼吸器系や循環器系への全身性副作用が出現する心配が少ない炭酸脱水酵素阻害薬が使用されつつあることがあげられる.また,プロスタグランジン関連薬に追加投与した際の夜間の眼圧下降効果は,炭酸脱水酵素阻害薬がb遮断薬より強力である11,12)ことも一因と考えられる.前回と今回の調査の間に2年8カ月間の期間があり,この間に持続型カルテオロール(2007年7月発売),トラボプロスト(2007年10月発売),タフルプロスト(2008年12月発売),ビマトプロスト(2009年10月発売)が使用可能となった.柏木らはプロスタグランジン関連薬のうち2006年まではラタノプロストが全体の約90%を占めていたが,2008年ではラタノプロストは72.5%に低下し,トラボプロストが20%となったと報告した9).2007年に行った筆者らの前回調査10)においても単剤例でのプロスタグランジン関連薬のうち,ラタノプロストは89%で,今回はラタノプロスト67.0%,タフルプロスト13.1%,トラボプロスト9.4%であった.多種のプロスタグランジン関連薬が使用可能となり,プロスタグランジン関連薬全体の使用頻度は今後も増加することが,しかしラタノプロストの使用頻度は今後も減少することが予想されるが,最終的にどの点眼薬が最も使用される878あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(126)かは不明である.井上眼科病院(1,468例)と他の29施設(1,606例)を比較すると,男女比は井上眼科病院(男性46.3%,女性53.7%)のほうが他の施設(男性36.4%,女性63.6%)に比べ男性が多かった.平均年齢は井上眼科病院(64.7±13.3歳)のほうが他の施設(68.9±12.7歳)に比べ若かった.病型は井上眼科病院で原発開放隅角緑内障が,他の施設で原発閉塞隅角緑内障が多かった.緑内障手術既往例は井上眼科病院のほうが他の施設に比べ多かった.単剤使用例では井上眼科病院ではゲル化チモロール,ラタノプロストが,他の施設ではイソプロピルウノプロストン,トラボプロスト,タフルプロスト,ビマトプロストが多かった.2剤併用症例では井上眼科病院と他の施設の間に差はなかった.井上眼科病院と他の施設の間に病型や使用薬剤に差がみられたが,その原因として緑内障手術を施行している井上眼科病院では重症例が多い可能性,井上眼科病院の患者は通院歴が長いために古くから使用されている薬剤が依然として使用されている可能性などが考えられる.今回は3,074症例全体の使用薬剤について調査を行った.緑内障の病型の違いによる使用薬剤に関しては前回調査13)同様に今回も現在解析中である.対象患者の眼圧については,各施設で眼圧の測定方法が異なるため,調査項目には入れなかった.今回の実態調査をまとめると,一般眼科診療所や眼科専門病院における緑内障患者の典型的患者像は(広義)原発開放隅角緑内障が多い,手術既往がない,プロスタグランジン関連薬単剤による治療を行っていることがわかった.2年8カ月前に行った前回調査と比較すると,単剤例ではプロスタグランジン関連薬がますます使用され,2剤併用例ではプロスタグランジン関連薬+b遮断薬の使用頻度が相変わらず高いが,プロスタグランジン関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬が増えてきた.謝辞:本調査に参加し,診療録の調査,集計作業にご協力いただいた各施設の諸先生方に,深く感謝します.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第2版.日眼会誌110:777-814,20062)TheAGISInvestigators:TheAdvancedGlaucomaInterventionStudy(AGIS)7:Therelationshipbetweencontrolofintraocularpressureandvisualfielddeterioration.AmJOphthalmol130:429-440,20003)LichterPR,MuschDC,GillespieBWetal:fortheCIGTSStudyGroup:InterimclinicaloutcomesintheCollaborativeInitialGlaucomaTreatmentStudycomparinginitialtreatmentrandomizedtomedicationsorsurgery.Ophthalmology108:1943-1953,20014)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyGroup:Comparisonofglaucomatousprogressionbetweenuntreatedpatientswithnormal-tensionglaucomaandpatientswiththerapeuticallyreducedintraocularpressure.AmJOphthalmol126:487-497,19985)HeijlA,LeskeMC,BengtssonBetal:Reductionofintraocularpressureandglaucomaprogression:resultsfromtheEarlyManifestGlaucomaTrial.ArchOphthalmol120:1268-1279,20026)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:fortheTajimiStudyGroupandJapanGlaucomaSociety:Theprevalenceofprimaryopen-angleglaucomainJapanese:theTajimiStudy.Ophthalmology111:1641-1648,20047)石澤聡子,近藤雄司,山本哲也:一大学附属病院における緑内障治療薬選択の実態調査.臨眼69:1679-1684,20068)清水美穂,今野伸介,片井麻貴ほか:札幌医科大学およびその関連病院における緑内障治療薬の実態調査.あたらしい眼科23:529-532,20069)柏木賢治,慢性疾患診療支援システム研究会:抗緑内障点眼薬に関する最近9年間の新規処方の変遷.眼薬理23:79-81,200910)中井義幸,井上賢治,森山涼ほか:多施設による緑内障患者の実態調査─薬物治療─.あたらしい眼科25:1581-1585,200811)TamerC,OksuzH:Circadianintraocularpressurecontrolwithdorzolamideversustimololmaleateadd-ontreatmentsinprimaryopen-angleglaucomapatientsusinglatanoprost.OphthalmicRes39:24-31,200712)LiuJH,MedeirosFA,SlightJRetal:Comparingdiurnalandnocturnaleffectsofbrinzolamideandtimololonintraocularpressureinpatientsreceivinglatanoprostmonotherapy.Ophthalmology116:449-454,200913)塩川美菜子,井上賢治,森山涼ほか:多施設による緑内障患者の実態調査─正常眼圧緑内障と原発開放隅角緑内障.臨眼62:1699-1704,2008***