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Wavefront-guided Laser In Situ Keratomileusis による回折型多焦点眼内レンズ挿入眼における屈折誤差矯正:術前波面収差解析装置の比較

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):895.897,2016cWavefront-guidedLaserInSituKeratomileusisによる回折型多焦点眼内レンズ挿入眼における屈折誤差矯正:術前波面収差解析装置の比較中村邦彦*1,2大木伸一*2田中みちる*2弓山里穂*2ビッセン宮島弘子*2南慶一郎*2*1たなし中村眼科クリニック*2東京歯科大学水道橋病院眼科Wavefront-guidedLaserInSituKeratomileusisRefractionCorrectionfollowingImplantationofDiffractiveMultifocalIntraocularLenses:ComparisonofWaveformAberrometerExaminationsKunihikoNakamura1,2),ShinichiOki2),MichiruTanaka2),RihoYumiyama2),HirokoBissen-Miyajima2)andKeiichiroMinami2)1)TanashiNakamuraEyeClinic,2)DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeSuidobashiHospital回折型多焦点眼内レンズ挿入眼のwavefront-guidedlaserinsitukeratomiluesis(WFG-LASIK)による屈折誤差矯正において,波面収差解析装置による違いを検討した.波面収差解析装置iDesignとWaveScan(AbbotMedicalOptics)を用いて術前検査を行った.WFG-LASIK可能率,術中に虹彩紋理認証(IR)ができた率(IR率)を調べた.術後の自覚屈折,視力,コントラスト感度に差がないか比較した.対象は,iDesign検査症例は24例32眼,WaveScan検査症例は25例32眼であった.IR下でWFG-LASIK可能率は,iDesign検査症例(62.5%)がWaveScan検査症例(15.6%)より有意に高かった(p=0.0001).術後の自覚屈折,視力,コントラスト感度には差はなかった.新しい波面収差解析装置を用いたWFG-LASIKは乱視矯正には有効であると考えられた.Inwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusis(WFG-LASIK)refractioncorrectionsfollowingimplantationofdiffractivemultifocalintraocularlenses,twowavefrontaberrometers,iDesignandWaveScan(AbbotMedicalOptics)werecompared.RatesatwhichWFG-LASIKwasselectedinpreoperativeexaminationsandirisregistration(IR)wasactivatedduringablationswerecalculated.Manifestrefractions,visualacuitiesbeforeandafterWFG-LASIK,andpostoperativecontrastsensitivitywerecompared.InusesofiDesign,WFG-LASIKwithIRcouldbeconductedin62.5%ofeyes,asignificantlyhighernumberthanwithWaveScan(15.6%,p=0.0001).Therewasnosignificantdifferenceinmanifestrefractions,visualacuitiesorcontrastsensitivity.WFG-LASIKwithuseofthenewwavefrontaberrometerwaseffectiveforrefractivecorrections.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):895.897,2016〕Keywords:回折型多焦点眼内レンズ,屈折補正,wavefront-guidedLASIK,波面解析装置.diffractivemultifocalintraocularlens,refractioncorrection,wavefront-guidedlaserinsitukeratomiluesis,wavefrontaberrometer.はじめに可能となり,多くの臨床成績が報告されている1,2).良好な回折型多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)を挿入遠近裸眼視力を得るためには,術後の屈折誤差を最小にするすることにより,術後に良好な遠方および近方の裸眼視力がことが求められる.IOL度数による屈折誤差や残留角膜乱視得られ,患者の術後QOL(qualityoflife)が改善することががある場合には,laserinsitukeratomiluesis(LASIK)によ〔別刷請求先〕中村邦彦:〒101-0061東京都千代田区三崎町2-9-18東京歯科大学水道橋病院眼科Reprintrequests:KunihikoNakamura,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeSuidobashiHospital,2-9-18Misaki-cho,Chiyoda-ku,Tokyo101-0061,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(135)895 る屈折誤差矯正が行われることが多い.とくに,LASIKによる視機能の低下を最小限にするために,波面収差解析結果を用いたwavefront-guided(WFG)LASIKが選択される.WFG-LASIKの優位性は広く知られており,回折型多焦点IOL挿入後の屈折誤差矯正にも使用されている3).また,このWFG-LASIKでは眼球回旋の影響を抑制するため,虹彩紋理を使ったaxisregistration法であるirisregistration(IR)が用いられる4).IRの効果は,術前に行う波面収差解析機器の性能に依存し,虹彩紋理の認識率が重要となる.VISXレーザーシステム(AbbotMedicalOptics:AMO)では,波面収差解析装置WaveScan(AMO)を用いて波面収差測定していたが,近年,測定精度が向上した波面収差解析装置iDesign(AMO)が開発された.波面収差の高精度化に加えて,虹彩紋理の認識率の増加も期待される.しかし,国内外で両機器の比較を行った報告はほとんどない.本研究では,回折型多焦点IOL挿入眼に対してWFGLASIKによる屈折誤差矯正を行った症例の診療記録から,2種類の波面収差解析装置の虹彩紋理認識率,術後の視力と屈折値を比較検討した.I対象および方法回析型多焦点IOL挿入後に,2012年以降に東京歯科大学水道橋病院にてWFG-LASIKを用いて屈折誤差矯正を行った.2012年1月.2013年7月には,波面収差解析装置WaveScanを用いて術前検査を行い,2013年8月.2014年6月には波面収差解析装置iDesignを用いた.対象を使用した波面収差解析装置により2群に分けた.波面収差解析装置iDesignとWaveScanは,ともにHartman-Shack式の波面収差装置であり,その解析点数はそれぞれ1,275点,240点と,iDesignのほうが,高精度の収差測定が可能となった.さらに,虹彩紋理と角膜輪部の認証性能も向上された.LASIK術前に,2つの波面解析装置で検査を行い,両解析機器において,WFG-LASIKが可能となった割合(WFG可能率)を検討した.表1WFG-LASIK術前後の自覚屈折と視力iDesign群WaveScan群(n=24)(n=16)術前:.0.29±0.82術前:0.06±1.31自覚等価球面度数(D)術後:.0.23±0.31術後:.0.24±0.36術前:.1.07±0.64術前:.0.97±0.78自覚円柱度数(D)術後:.0.36±0.34術後:.0.30±0.34平均遠方視力術前:0.56/1.22術前:0.48/1.17(裸眼/矯正)術後:0.97/1.19術後:0.95/1.16平均近方視力術前:0.46/0.68術前:0.49/0.72(裸眼/遠方矯正下)術後:0.78/0.71術後:0.62/0.70896あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016LASIK手術は,フェムト秒レーザーIntraLaseRFSレーザー(AMO)にてフラップを作製した.WFG-LASIK可能眼に対しては,IRを試みた後に,エキシマレーザーSTARS4IR(AMO)を用いて正視狙いでレーザー照射を行った.WFG-LASIKが可能でなかった眼に対しては,conventionalLASIK(C-LASIK)照射を行った.WFG-LASIK可能眼に対して,IRが使用可能であったか割合(IR可能率)を調べた.WFG-LASIK可能眼に対して,術後1カ月における検査結果を調査した.検討事項は,自覚屈折(透過球面度数と円柱度数),遠方視力(裸眼,矯正),近方視力(裸眼,遠方矯正下),コントラスト感度とした.コントラスト感度は,CSV-1000(VectorVision)を用いて輝度85cd/m2下で測定した.術前後の比較にはWicoxon符号順位和検定,両群の比較には,Mann-WhitneyU検定を用いた.p<0.05を有意差ありとした.結果は,平均±標準偏差で表示した.II結果対象症例は49例64眼で,WaveScanを用いた症例は25例32眼(平均年齢:64.7±7.3年,以下,WaveScan群),iDesignを用いた症例は24例32眼(平均年齢:65.1±12.5年,iDesign群)であった.挿入IOLの内訳は,アポダイズド回折型多焦点IOLReSTORR(Alcon)が34眼,TecnicMultifocalR(AMO)が26眼,それ以外が4眼であった.WFG可能率は,iDesign群は75.0%,WaveScan群は50.0%だった.WFG-LASIK照射時にIRができたIR可能率は,それぞれ,83.8%,31.3%と,iDesign群が有意に高かった(p=.0012,Fisher直接確率).この結果から,各群の全症例に対して,IR下でWFG-LASIK可能であった割合を求めると,iDesign群は62.5%に対してWaveScan群は15.6%と,iDesign群が有意に高かった(p=.0001).WFG-LASIK可能であった症例(iDesign群24眼,WaveScan群16眼)における,術前後の自覚屈折と視力の結果を表1に示す.自覚等価球面度数と自覚円柱度数において,両群で術前後の有意に変化がみられた(p<.03,<0.001)が,術後において群間差はなかった.視力においては,遠方,近方とも両群で裸眼視力は術後に有意に改善した(p<.001,<.003)が,術後において群間差はなかった.術後のコントラスト感度を図1に示す.測定可能症例数は,iDesign群は11眼,WaveScan群は15眼であった.全空間周波数において,群間に差はなかった.III考按回折型多焦点IOL挿入後のLASIKによる屈折誤差補正の効果を,2種類の波面収差測定装置で比較した.iDesign群(136) は,IR下でのWFG-LASIK照射がより高い割合で実施できた.しかし,自覚屈折,裸眼視力,コントラスト感度において,波面収差測定装置による差異はみられなかった.LASIKによる屈折誤差補正は,回折型多焦点IOLでは有効であったことは,Jendritzaらも報告している3).Muftuogluらは,アポダイズ回折型多焦点IOLの屈折誤差補正において,conventionalLASIKとWFG-LASIKによる術後視力の差がないと報告している5).一方,多焦点IOL挿入眼において,IRとWFG-LASIKを使用することで術後収差に有意な改善はみられないが,大きな劣化はないことが報告されている3).本検討でも,WFG-LASIKによる屈折誤差が有効であると示唆された.iDesign群では,IR有のWFG-LASIKが62.5%の症例で可能であった.屈折誤差のうち球面度数成分はLASIKにより比較的安定して矯正できるが,円柱度数成分では度数に加えて軸ずれが問題となる.仰位への姿勢変化による眼回旋(平均4.4±2.8°程度)により生じた軸ずれにより,1°の軸ずれに対して約3%,乱視矯正効果が低下する6).IRにより眼回旋の影響を最小限にすることが可能であるが4),本検討では,WaveScan群は84.4%でIRが行われていなかったにもかかわらず,自覚円柱度数に差はなかった.これは,矯正度数が,比較的低かったためと考えられた.混合乱視症例の検討では,IR機能有無効果は,高次収差,術後視機能に影響することが検証されている7).多焦点IOLへの適用となる角膜乱視度数は,トーリック多焦点IOLの開発に伴って拡大しつつある.高度な角膜乱視を有するためにトーリック多焦点IOLを挿入した場合,IRなどのaxisregistration法を用いたLASIK乱視矯正を選択することが必須になると予想される.より度数の高い円柱度数を矯正する場合は,IR機能が重要となるため,IR可能率が高いiDesignの使用が望ましいと考える.【文献】1)AgrestaB,KnorzMC,KohnenTetal:Distanceandnearvisualacuityimprovementafterimplantationofmultifocalintraocularlensesincataractpatientswithpresby2.01.51.00.50.0空間周波数図1iDesign群とWaveScan群のコントラスト感度全周波数において有意な群間差はなかった.opia:asystematicreview.JRefractSurg28:426-435,20122)deVriesNE,NuijtsRM:Multifocalintraocularlensesincataractsurgery:literaturereviewofbenefitsandsideeffects.JCataractRefractSurg39:268-278,20133)JendritzaBB,KnorzMC,MortonS:Wavefront-guidedexcimerlaservisioncorrectionaftermultifocalIOLimplantation.JRefractSurg24:274-279,20084)MoshirfarM,ChenMC,EspandarLetal:EffectofirisregistrationonoutcomesofLASIKformyopiawiththeVISXCustomVueplatform.JRefractSurg25:493-502,20095)MuftuogluO,PrasherP,ChuCetal:Laserinsitukeratomileusisforresidualrefractiveerrorsafterapodizeddiffractivemultifocalintraocularlensimplantation.JCataractRefractSurg35:1063-1071,20096)SuzukiA,MaedaN,WatanabeHetal:Usingareferencepointandvideokeratographyforintraoperativeidentificationofastigmatismaxis.JCataractRefractSurg23:1491-1495,19977)KhalifaM,El-KatebM,ShaheenMS:Irisregistrationinwavefront-guidedLASIKtocorrectmixedastigmatism.JCataractRefractSurg35:433-437,2009対数コントラスト感度iDesignWaveScan3cpd6cpd12cpd18cpd***(137)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016897