《第29回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科36(6):810.815,2019cEX-PRESS併用濾過手術の術後中期成績柴田真帆豊川紀子木村英也黒田真一郎永田眼科CMid-termOutcomesofEX-PRESSGlaucomaFilteringSurgeryMahoShibata,NorikoToyokawa,HideyaKimuraandShinichiroKurodaCNagataEyeClinicC目的:EX-PRESS併用濾過手術の術後中期成績の検討.対象および方法:2012年C11月以降,永田眼科においてEX-PRESS併用濾過手術(単独手術)を施行した連続症例C85例C97眼を対象とし,術後C3年までの眼圧,緑内障点眼数,目標眼圧ごとのC3年生存率を病型別に検討した.結果:病型は開放隅角緑内障(POAG)21眼,落屑緑内障(EXG)40眼,続発開放隅角緑内障C23眼,血管新生緑内障C12眼,混合緑内障C1眼であった.全症例の術前眼圧はC28.7±9.7mmHg,術C3年後の眼圧はC14.7±6.0CmmHgであり,45.1±3.2%の眼圧下降率を認め,全病型で有意な眼圧下降を認めた.点眼スコアは全病型で術後有意に減少した.点眼加療を含む目標眼圧(12CmmHg,14CmmHg)ごとのC3年生存率は,POAGでそれぞれC53.3,69.6%,EXGでC16.8%,29.2%であり,POAGに比較してCEXGの生存率が有意に低かった.結論:EX-PRESS併用濾過手術において術後C3年までどの病型においても有効な眼圧下降が得られた.EXGはCPOAGに比較して術後生存率が有意に不良であった.CPurpose:Toevaluatemid-termoutcomesofEX-PRESSglaucomaC.lteringsurgery.Subjectsandmethods:CTheCmedicalCrecordsCofCglaucomaCpatientsCwhoCunderwentCconsecutiveCEX-PRESSC.lteringCsurgeryCafterC2012werereviewed.Analyzedwere97eyesof85subjects.Weinvestigatedintraocularpressure(IOP),glaucomamedi-cationsCandCadditionalCinterventionsCbyCglaucomaCtypes.CSurgicalCsuccessCwasCde.nedCasCIOPC.12CmmHgCandC14CmmHgwithorwithoutglaucomamedications.Results:Includedwere21eyeswithprimaryopen-angleglauco-ma(POAG),40eyeswithexfoliationglaucoma(EXG),12eyeswithneovascularglaucoma,23eyeswithsecondaryglaucoma(SG),andConeCeyeCwithCcombinedCglaucoma.CTheCoverallCmeanCIOPCdecreasedCfromC28.7±9.7toC14.7±6.0CmmHg,Cwith45.1%CIOPCreduction.CTheCmeanCpostoperativeCIOPCwasCsigni.cantlyCreducedCinCeachCglaucomaCtype,comparedtobaselineIOP.Surgicalsuccessratesat3yearswere53.3and69.6%inPOAG,16.8and29.2%inCEXG,CandC39.1and52.1%inSG.Conclusion:AfterCEX-PRESSCimplantation,Csigni.cantCIOPCreductionCwasCfoundineachglaucomatype.SurgicalsuccessratesinEXGwerelowercomparedtoPOAG.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)36(6):810.815,C2019〕Keywords:エクスプレス,濾過手術,眼圧,病型別比較.EX-PRESS,C.lteringsurgery,intraocularpressure,comparisonbetweenglaucomatypes.CはじめにEX-PRESSGlaucomaFiltrationDevice(Alcon社,以下,EX-PRESS)は調節弁をもたないステンレス製のCglaucomadrainagedeviceである.EX-PRESS併用濾過手術は,強膜弁下から前房内へCEX-PRESSを穿刺留置することで,EX-PRESSを通して前房水を結膜下に導き,新たな房水流出路を形成して眼圧を下降させる術式である.従来の線維柱帯切除術と比較して術中の前房開放時間が短く,流出路の大きさを標準化でき,虹彩切除が不要であることから,線維柱帯切除術に伴う術中の眼球虚脱や術後の過剰濾過や前房内出血といった合併症を軽減できるとされる1).術後眼圧下降効果について,海外ではCEX-PRESS併用濾過手術と線維柱帯切除術の比較検討で両者はほぼ同等と報告されている1.3).国内の報告でも線維柱帯切除術と同様の眼圧下降効果が報告されているが,術後短期成績についての報告が多い.EX-PRESSを通しての流出路は流出量が一定に〔別刷請求先〕柴田真帆:〒631-0844奈良市宝来町北山田C1147永田眼科Reprintrequests:MahoShibata,M.D.,Ph.D.,NagataEyeClinic,1147Kitayamada,Horai,Nara-city,Nara631-0844,JAPANC810(106)制限されることから,術後の過剰濾過が防げる一方,流出量が少ないため長期では濾過不全が起こる可能性がある.今回,EX-PRESS併用濾過手術の術後中期成績として,術後3年の眼圧下降効果について病型別に検討した.CI対象および方法2012年C11月以降,永田眼科においてCEX-PRESS併用濾過手術(単独手術)を施行した連続症例C85例C97眼を対象とした.診療録から後ろ向きに,術後C3年までの眼圧,緑内障点眼数,手術既往歴,術後追加手術介入の有無を調査し,術後眼圧,緑内障点眼数,目標眼圧ごとのC3年生存率を病型・手術既往別に検討した.本研究は永田眼科倫理委員会で承認された.EX-PRESS併用濾過手術の術式を以下に記す.上方円蓋部基底結膜切開後,3.0.3.5CmmC×3.0.3.5Cmmの強膜C1/3層強膜弁を作製した.0.04%マイトマイシンCCをC4分塗布し生理食塩水で洗浄後,強膜弁下にC25CG針で虹彩と平行に前房内へ穿刺し,同穿刺部よりCEX-PRESSを挿入した.強膜弁はC4針縫合とし,結膜を角膜輪部で水平縫合,閉創した.検討項目を以下に示す.EX-PRESS併用濾過手術前の眼圧と緑内障点眼数,術後C1,3,6,9,12,18,24,30,36カ月後の眼圧と緑内障点眼数,目標眼圧(12,14,20mmHg)ごとのC3年生存率を病型別に検討した.緑内障点眼数について,炭酸脱水酵素阻害薬内服はC1剤,配合剤はC2剤と計算し,合計点数を点眼スコアとした.さらに手術既往別(白内障手術のみ,白内障と緑内障手術)に目標眼圧(12,14mmHg)ごとのC3年生存率を検討した.生存率における死亡の定義は,緑内障点眼薬の有無にかかわらず,術後C1カ月以降C2回連続する観察時点でそれぞれの目標眼圧を超えた時点,もしくは濾過胞再建術を含む追加観血的手術が施行された時点とした.術後のレーザー切糸とニードリングは死亡に含めず,眼圧値は処置前の値を採用した.解析方法として,病型間の比較にはCKruskal-Wallis検定とCc2検定を用い,術後眼圧と点眼スコアの推移についてはCone-wayanalysisofvariance(ANOVA)とCDunnettの多重比較を行った.生存率についてはCKaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成し,群間の生存率比較にはCLog-rank検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.CII結果表1に全症例の患者背景を示した.男性C46例C57眼,女性C39例C40眼,平均年齢C74.6C±10.9歳,術前平均眼圧C28.7C±9.7CmmHg,術前平均点眼スコアC3.3C±1.0剤(平均C±標準偏差)であった.手術既往歴として白内障手術,緑内障手術,硝子体手術既往のあるものを含み,手術既往眼はC97眼中C94眼であった.緑内障病型は原発開放隅角緑内障(primaryopen-angleCglaucoma:POAG)21眼,落屑緑内障(exfolia-tionglaucoma:EXG)40眼,血管新生緑内障(neovascularglaucoma:NVG)12眼,続発開放隅角緑内障(secondaryopen-angleCglaucoma:SG)23眼,混合緑内障C1眼であった.表2に緑内障病型の内訳を示した.術前平均眼圧,術前平均点眼スコア,緑内障手術既往歴は病型間で有意差を認めなかった.混合緑内障はC1眼であり,以降の病型別検討から除いた.図1に病型別の眼圧経過を示した.眼圧値は濾過胞再建術もしくは追加観血的手術が施行された場合はそれまでの値を採用した.術後眼圧は,いずれの病型でも術前と比較してすべての観察期間で有意な下降を認めた(p<0.01,CANOVA+Dunnett’stest).すべての病型を含む全症例の術C3年後の平均眼圧はC14.7C±6.0CmmHg,平均眼圧下降率はC45.1%であった.術後の緑内障点眼スコアは,いずれの病型でも術前と比較表1患者背景平均年齢(歳)C74.6±10.9(42.92)男/女46例57眼/39例40眼術前眼圧(mmHg)C28.7±9.7(14.65)術前点眼スコア*C3.3±1.0(0.6)手術既往眼なし/あり3眼/94眼白内障手術94眼(IOL92眼,無水晶体眼C2眼)濾過手術9眼流出路再建術32眼硝子体手術17眼(重複あり)緑内障病型POAG/EXG/NVG/SG/混合緑内障21眼C/40眼C/12眼C/23眼C/1眼IOL:intraocularClens,POAG:primaryCopen-angleCglaucoma,EXG:exfoliationCglau-coma,NVG:neovascularglaucoma,SG:secondaryopen-angleglaucoma.*:炭酸脱水酵素阻害薬内服をC1剤,配合剤をC2剤と計算した.表2緑内障病型内訳緑内障病型CPOAGCEXGCNVGCSGp値眼数C21C40C12C23年齢(歳)C72.5±12.1C80.9±6.3C61.2±8.9C71.2±9.8<C0.001*術前眼圧(mmHg)C25.7±8.7C28.5±9.3C35.0±12.7C28.3±8.6C0.06*点眼スコアC3.2±1.1C3.3±1.3C3.3±0.9C3.5±0.7C0.88*緑内障手術既往眼(%)11(52)20(50)2(17)6(26)C0.06†濾過手術既往眼C3C2C2C2流出路再建術既往眼C8C18C0C4硝子体手術既往眼(%)4(19)0(0)6(50)7(30)<C0.001C†*:Kruskal-Wallis検定,C†:c2検定.Ca100151005101520253035405生存期間(月)080生存率(%)眼圧(mmHg)306025402020術前1M3M6M9M12M18M24M30M36M観察期間(月)図1病型別眼圧経過術後,いずれの病型でも術前と比較してすべての観察期間で有意な眼圧下降を認めた(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest).生存率(%)8060402000510152025303540生存期間(月)図2病型別生存曲線生存率(%)a:術後眼圧C12CmmHg以下.術C3年後の生存率はCPOAG,C40SG,EXGでそれぞれC53.3%,39.1%,16.8%であり,POAG群とCEXG群間で有意差を認めた(p=0.013,Log-ranktest).20b:術後眼圧C14CmmHg以下.術C3年後の生存率はCPOAG,C0SG,EXGでそれぞれC69.6%,52.1%,29.2%であり,POAG群とCEXG群間で有意差を認めた(p=0.019,CLog-ranktest).図3病型別生存曲線%であり,POAG群とCEXG群間で有意差を認めた(p=0.013,C0510152025303540生存期間(月)術後眼圧C20CmmHg以下とした生存曲線を示した.術C3年後の生存率はCPOAG,EXG,SG,NVGでそれぞれC89.4%,79.8%,78.2%,75.0%であり,病型別に有意差を認めなかった(p=0.74,Log-ranktest).しすべての観察期間で有意な減少を認めた(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest).すべての病型を含む全症例の術C3年後の平均点眼スコアはC0.99C±1.2であった.図2にCKaplan-Meier生命表解析を用いた目標眼圧(12,14CmmHg)ごとの生存曲線を病型(POAG,SG,EXG)別に示した.成功基準をC12CmmHg以下とした場合,術C3年後の生存率はCPOAG,SG,EXGでそれぞれC53.3%,39.1%,16.8Log-ranktest)(図2a).成功基準をC14CmmHg以下とした場合,術C3年後の生存率はCPOAG,SG,EXGでそれぞれ69.6%,52.1%,29.2%であり,POAG群とCEXG群間で有意差を認めた(p=0.019,Log-ranktest)(図2b).図3に成功基準をC20CmmHg以下とした生存曲線を示した.術C3年後の生存率はCPOAG,EXG,SG,NVGでそれぞれ89.4%,79.8%,78.2%,75.0%であり,病型別に有意差を認めなかった(p=0.74,Log-ranktest).表3に手術既往別(白内障手術のみ,白内障と緑内障手術既往)の眼数と術前後の眼圧を示した.手術既往として白内障手術のみのもの(以下,白内障手術群)はC40眼,白内障表3手術既往別内訳術前眼圧最終眼圧病型内訳(眼)既往手術眼数(mmHg)(mmHg)CPOAGCEXGCNVGCSG混合緑内障白内障C40C26.8±8.6C15.4±7.27C2058C0白内障+緑内障C36C30.6±11.4C13.8±5.59C2015C1Cと緑内障手術既往眼(以下,白内障緑内障手術群)はC36眼Ca100であった.過去の緑内障手術は下方流出路再建術がC29眼,C80濾過手術がC7眼であった.無水晶体眼・硝子体手術既往眼・緑内障硝子体手術既往眼は手術既往別検討から除いた.今回の症例に水晶体.外摘出術既往眼は含まれていなかった.白内障手術群の術前眼圧はC26.8C±8.6CmmHg,術C3年後の平均眼圧はC15.4C±7.2CmmHgであり,すべての観察期間で有意な眼圧下降を認めた(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest).白内障緑内障手術群の術前眼圧はC30.6C±11.4CmmHg,術3年後の平均眼圧はC13.8C±5.5CmmHgであり,すべての観察期間生存率(%)40200生存期間(月)b100010203040で有意な眼圧下降を認めた(p<0.01,CANOVA+Dunnett’sCtest).白内障手術群と白内障緑内障手術群の病型内訳に有意差を認めなかった(p=0.35,Cc2検定).図4にCKaplan-Meier生命表解析を用いた目標眼圧(12,生存率(%)14CmmHg)ごとの生存曲線を手術既往別に示した.成功基準をC12CmmHg以下とした場合,術C3年後の生存率は白内障群,白内障緑内障群でそれぞれC30.4%,40.2%であり,有意差を認めなかった(p=0.43,CLog-ranktest)(図4a).成功基準をC14CmmHg以下とした場合,術C3年後の生存率は白内障群,白内障緑内障群でそれぞれC43.8%,45.8%であり,有意差を認めなかった(p=0.86,Log-ranktest)(図4b).CIII考按EX-PRESS併用濾過手術の術後C3年成績を検討した.点眼加療を含むC3年後の平均眼圧はC14.7C±6.0CmmHg,平均眼圧下降率はC45.1%であり,術前と比較し有意な眼圧下降を認め,既報と矛盾しない結果2.5)であった.3年後の点眼スコアはC0.99C±1.2であり,術前と比較し有意な減少を認め,既報と矛盾しない結果1.3)であった.病型別検討では,今回検討したCPOAG,EXG,SG,NVGのすべての病型において期間中有意な眼圧下降効果が示された.病型別生存率について,わが国における術後中期成績としてCIshidaら6)はC15CmmHg以下のC2年生存率はCPOAGでC79.4%と報告し,今回のCPOAGの結果は既報に矛盾しないと考える.病型別生存率の比較において,12,14CmmHg以下の生存率はCEXGがCPOAGに比較して有意に低い結果であった.EX-PRESSの予後不良因子として緑内障手術歴が報告され,結膜瘢痕による濾過胞形成不全によることが示唆されている7)が,今回検討したCPOAG,EXGとCSGで緑内障手00510152025303540生存期間(月)図4手術既往別生存曲線a:術後眼圧C12CmmHg以下.術C3年後の生存率は白内障群,白内障緑内障群でそれぞれC30.4%,40.2%であり,有意差を認めなかった(p=0.43,Log-ranktest).Cb:術後眼圧C14CmmHg以下.術C3年後の生存率は白内障群,白内障緑内障群でそれぞれC43.8%,45.8%であり,有意差を認めなかった(p=0.86,Log-ranktest).CP+I:phacoemulsi.cationCandCaspiration+intraocularClensCimplantation,CP+I+gla:phacoemulsi.cationCandCaspiration+intraocularlensimplantation+glaucomasurgery.術既往眼数(濾過手術既往眼数,流出路再建術既往眼数)に有意差を認めなかった(それぞれCp=0.45,p=0.08,Cc2検定).今回の結果に緑内障手術既往の関与は少ないと考える.これまでCEX-PRESSの術後成績を病型別に検討した報告は少ない.横佐古ら8)はCEX-PRESS術後短期成績ではあるが多変量解析でCEXGが予後不良因子の一つであったとしている.一方,線維柱帯切除術においてCEXGはCPOAGに比較して術後成績が不良であるという報告が散見される9.12).Limら10)は線維柱帯切除術後C1年の術後成績にはCPOAGとCEXGで差がないが,5年の長期成績ではCEXGの成績が有意に不良であったと報告している.EXGでは前房内生理活性物質であるCtransformingCgrowthfactor-betaの前房内濃度上昇の報告13.15),線維柱帯切除術後Cblood-aqueousbarrierの破綻が大きいという報告16)があり,これらが線維柱帯切除術の術後結膜瘢痕,ひいては術後成績に影響する可能性が示唆されている.さらにCIgarashiら11)はCEXGで前房内に炎症性サイトカインであるCautotaxin濃度が高く,これが濾過胞線維化を促進し,線維柱帯切除後の濾過胞維持不全の一因であったと報告している.筆者らの検討はCEX-PRESS術後であるが,同じ濾過手術の一つとして考えるならば,POAGに比較してCEXGの成績が不良であったことは,これらによる濾過胞維持不全が一因である可能性が考えられる.今回の病型別検討でCNVGにおけるC20CmmHg以下の術後3年生存率はC75.0%であり,POAG,EXGやCSGと有意差を認めなかった.既報では,術後短期ではあるがCNVGに対するCEX-PRESS術後C6カ月のC21CmmHg未満生存率はC78%であり,硝子体手術既往眼は予後不良であったとしている17).また,線維柱帯切除術においてCNVGに対する術後C2年のC21mmHg未満生存率はC58.2%であり,やはり硝子体手術既往眼が予後不良であったとしている18).筆者らの結果は既報と比較して良好であるが,今回のCNVG症例は少数であり,全症例に術前抗血管内皮増殖因子の硝子体注射が施行されていること,硝子体手術既往眼は半数(12眼中C6眼)であること,術後にも抗血管内皮増殖因子の硝子体注射や網膜光凝固術の施行があったこと,糖尿病網膜症など原疾患鎮静化の程度など患者背景が多岐にわたり,背景因子との関連についての検討はむずかしいと考えられた.今後さらなる臨床データの蓄積が必要であると考える.今回の手術既往別検討では,緑内障手術既往の有無はCEX-PRESSの術後成績に影響しなかった.EX-PRESSの術後成績に関する予後不良因子として緑内障手術歴が報告7)されているが,これは緑内障手術後の上方結膜瘢痕による濾過胞形成不全によることが示唆されている.今回の検討のうち白内障緑内障手術群C36眼中C29眼(81%)が下方からの流出路再建術の術後であった.今回の検討では上方結膜が温存されていた症例が多かったため,EX-PRESSの術後成績に影響が少なかったと考えられ,下方からの流出路再建術はCEX-PRESSの術後成績に影響しない可能性が示唆された.本研究は後ろ向き研究であり,その性質上結果の解釈には注意を要する.EX-PRESS併用濾過手術の適応,術後眼圧下降効果不十分による追加点眼や追加観血的手術介入の適応と時期を含め,これらは病型と病期に基づく主治医の判断によるものであり,評価判定が統一されていない.また,手術既往が多様な症例を含むため,背景因子との詳細な関連についても今後多数例での検証が必要であり,本研究の結果の解釈には限界があると考える.EX-PRESS併用濾過手術の術後C3年までは,どの病型においても有効な眼圧下降効果が得られた.術後眼圧C12CmmHg,14CmmHg以下のC3年生存率は,EXGがCPOAGに比較して有意に低かった.今後,さらに長期の経過について検討が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)NetlandCPA,CSarkisianCSRCJr,CMosterCMRCetal:Random-ized,Cprospective,CcomparativeCtrialCofCEX-PRESSCglauco-maC.ltrationCdeviceCversustrabeculectomy(XVTstudy)C.AmJOphthalmolC157:433-440,C20142)deJongL,LafumaA,AguadeASetal:Five-yearexten-sionofaclinicaltrialcomparingtheEX-PRESSglaucomaC.ltrationCdeviceCandCtrabeculectomyCinCprimaryCopen-angleglaucoma.ClinOphthalmolC5:527-533,C20113)Gonzalez-RodribuezCJM,CTropeCGE,CDrori-WagschalCLCetal:ComparisonCofC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