———————————————————————- Page 1(99)ツ黴 990910-1810/10/\100/頁/JCOPYツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴 あたらしい眼科 27(1):99 104,2010cはじめに緑内障の有病率は加齢に伴い増加するため1 3),高齢者の緑内障点眼薬の使用頻度も必然的に増加すると考えられる.最近,筆者らは緑内障点眼容器の構造や薬液の性状が使用感に深く関わることを報告した4).具体的には,手指の精緻な運動能力に劣ると考えられる高齢者5)においては,長期使用のなかで,緑内障点眼薬を不快に感じている割合が多く,また点眼薬間における使用感の差が大きいことが明らかとなっ〔別刷請求先〕兵頭涼子:〒791-0952 松山市朝生田町 1-3-10南松山病院眼科Reprint requests:Ryoko Hyodo, Department of Ophthalmology, Minamimatsuyama Hospital, 1-3-10 Asoda-cho, Matsuyama, Ehime 791-0952, JAPAN圧力センサーによる緑内障点眼薬の点眼のしやすさの評価兵頭涼子*1林康人*1~3溝上志朗*2,3川﨑史朗*2,3吉川啓司*4大橋裕一*2*1 南松山病院眼科*2 愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻高次機能制御部門感覚機能医学講座視機能外科学 *3 愛媛大学視機能再生学(南松山病院)寄附講座*4 吉川眼科クリニックGlaucoma Eyedrop Usability Evaluation by Tactile Pressure SensorRyoko Hyodo1), Yasuhito Hayashi1 3), Shiro Mizoue2,3), Shiro Kawasaki2,3), Keiji Yoshikawa4) and Yuichi Ohashi2)1)Department of Ophthalmology, Minamimatsuyama Hospital, 2)Department of Ophthalmology, Medicine of Sensory Function, Ehime University Graduate School of Medicine, 3)Division of Visual Function Regeneration, Ehime University School of Medicine, 4)Yoshikawa Eye Clinic緑内障点眼薬〔キサラタンR点眼液(Xa),チモプトールR点眼液 0.5%(Tm),チモプトールR XE 点眼液 0.5%(TmXE),リズモンRTG 点眼液 0.5%(RmTG),ミケランR点眼液 2%(Mk),デタントールR点眼液(Dt),トルソプトR点眼液 1%(Ts),エイゾプトR点眼液(Az)〕を 1 滴落とすために必要な圧力の定量を試みた.Pressureツ黴 Pro le System 社製ツ黴 DigiTactsツ黴 Tactileツ黴 Pressureツ黴 Sensor を示指と点眼容器側面(2 指法)または底面(3 指法)の間に挟み,示指にかかる圧力を経時的に計測し,加圧開始から滴下までに要した時間の平均(平均滴下時間;n=5)と示指にかかった最大圧力の平均値(平均最大押し圧力;n=5)を算出した.2 指法では平均滴下時間は 1.7 秒(Dt)から 3.6 秒(RmTG)と幅があり,平均最大押し圧力にも幅〔731 g/cm2(Dt)から 3,544 g/cm2(Az)〕があることがわかった.3 指法に変えると,Xa,Tm,RmTG,Dt,Ts と Az で有意に平均最大押し圧力を減少させることができたが,Mk では有意に平均最大押し圧力を増加させ,RmTG では有意に平均滴下時間が延長した.これら緑内障点眼薬の不均一性が 1 滴を正確に落とすことを困難にしていると考えられる.We sought to evaluate pressures required in squeezing one drop from glaucoma eyedrop containers〔XalatanR(Xa), TimoptolR 0.5%(Tm), TimoptolR XE 0.5%(TmXE), RysmonRTG 0.5%(RmTG), MikelanR 2%(Mk), Detan-tolR(Dt),ツ黴 TrusoptR(Ts),ツ黴 AzoptR(Az)〕.ツ黴 DigiTactsツ黴 Tactileツ黴 Pressureツ黴 Sensors(Pressureツ黴 Pro leツ黴 Systems,ツ黴 Inc.)were inserted between the indexツ黴 nger and the sides(two- nger method)or bottom(three- nger method)of each bot-tle for continuous pressure measurements against the indexツ黴 nger. We calculated average duration between initia-tionツ黴 ofツ黴 squeezingツ黴 andツ黴 commencementツ黴 ofツ黴 dropping(n=5), and the average maximum pressure(n=5)in both methods, for each type of eyedrops. In the two- ngers method there was a variation in average duration〔1.7 sec(Dt)-3.6ツ黴 sec(RmTG)〕andツ黴 averageツ黴 maximumツ黴 pressures〔731 g/cm2(Dt)-3,544 g/cm2(Az)〕. The three- nger methodツ黴 showedツ黴 signi cantlyツ黴 decreasedツ黴 averageツ黴 maximumツ黴 pressureツ黴 inツ黴 Xa,ツ黴 Tm,ツ黴 RmTG,ツ黴 Dt,ツ黴 Tsツ黴 andツ黴 Az,ツ黴 but signi cantly increased average maximum pressure in Mk and average duration in RmTG. These variations in the di erent types of glaucoma eyedrops may cause di culty in properly squeezing out a single drop.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)27(1):99 104, 2010〕Key words:点眼容器,圧力センサー,緑内障,高齢者,ユーザビリティ.eye drop bottle, pressure sensor, glau-coma, elderly patient, usability.———————————————————————- Page 2100あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(100)た.緑内障点眼治療のアドヒアランス向上のためには点眼しやすい容器であることが好ましく,そのためにも,高齢者に優しい点眼容器の開発を製薬会社に促すことが必要である.しかしながら,これまで,点眼容器の使用感について定量化する方法がなかったため,具体的な数値目標を設定することができなかった.そこで,今回,点眼容器の性状を定量的に評価することを目的とした点眼容器押し圧測定システムを開発した.そして,使用頻度の高い緑内障点眼薬 8 剤を対象として,点眼薬別に滴下までに要する時間と指にかかる圧力を,点眼指導の際にたびたび議論となる 2 指法と 3 指法の間で比較検討したので報告する.I対象および方法1. 圧力計測システムの準備Pressureツ黴 Pro leツ黴 Systems 社(米国ロサンゼルス)製 Digi-Tactsツ黴 Tactileツ黴 Pressureツ黴 Sensor(センシング圧力パッド直径10 mm)(以下,触覚センサー)を付属インターフェイスボード経由で,付属の専用解析ソフトをインストールしたパナソニック社製ノート型パーソナルコンピュータ(CF-W2)のUSB ポートに接続した.さらに,Pressureツ黴 Pro leツ黴 Systems社国内総代理店有限会社シスコム社(東京)の協力により,インターフェイスボードと触覚センサーをつなぐケーブルを延長し点眼動作に支障をきたさないように改良を施した(図1 A ).2. 点眼薬の準備点眼薬は表 1 に示す 8 剤〔キサラタンR点眼液(Xa),チモプトールR点眼液 0.5%(Tm),チモプトールRXE 点眼液0.5%(TmXE),リズモンRTG 点眼液 0.5%(RmTG),ミケランR点眼液 2%(Mk),デタントールR点眼液(Dt),トルソプトR点眼液 1%(Ts),エイゾプトR点眼液(Az)〕を使用し,その容器の形状を図 1C に示す.なお,測定時は容器のラベルを 離し,薬液の内容量は開封直後の状態で行った.3. 点眼薬押し圧力の計測本調査の趣旨を理解し,あらかじめ十分にトレーニングされた 1 人の検者が各薬剤 1 滴を滴下するまでの,指先にかかる圧力の変化を触覚センサーにより経時的に記録した.測定は,容器側面を母指と示指で押す方法(2 指法),および側面を母指と中指で把持し,容器の底面を示指で押す方法(3 指ACaabcdef5cm1cmbcBab図 1点眼容器押し圧力測定装置と緑内障点眼容器の形状A:圧力測定装置の概要(a).直径1 c mの圧力センサー部(b)でとらえた圧力は電気信号に変換されて,専用のデバイスを通し,パーソナルコンピュータの USB ポートに接続される.圧力波形は専用のソフトウェア(c)により,グラフに描出されると同時に,0.03 秒ごとの圧力がテキストファイルで保存される.B:点眼の 2 指法(a)と 3 指法(b).C:点眼容器の形状.a:Xa,b:Tm,TmXE と Ts,c:RmTG,d:Mk,e:Dt と f:Az.a と e の矢頭は 2 指法で押した部分を示す.———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010101(101)法)について行った(図 1B).計測は各薬剤についてそれぞれ連続で 5 回行った.押し始めのタイミングはパーソナルコンピュータの操作者が指示を出し,滴下時の波形を確認した.4. データの解析加圧開始から滴下までに要した時間と,示指にかかった最大押し圧力の平均値を算出した.さらに,押し圧力の波形より,加圧開始から最大押し圧力の 90%まで達する時間(a)と最大押し圧力の 90%まで達してから滴下までに要した時間を(b)とした場合,b/a<0.5 を釣鐘型,0.5 ≦ b/a ≦ 1 を中間型,b/a>1 を台形型に分類した.なお,統計解析は点眼薬間の比較は対応のない t 検定を使用し,2 指法と 3 指法の比較には対応のある t 検定を使用した.なお,p<0.05 の場合,有意であると判定した.II結果緑内障点眼薬 8 剤を用い,2 指法と 3 指法により点眼時に示指にかかる圧力を,加圧開始時を基点とし,経時的に 5 回の平均押し圧力を算出した(図 2).加圧より 1 滴の滴下までに要した平均滴下時間と,最大の押し圧力の平均を表 2 に示す.2 指法においては,平均滴下時間は最短の Dt(1.7±0.2秒)から,最長の RmTG(3.6±0.6 秒)まで幅があり,平均最大の押し圧力も最小の Dt(731±22 g/cm2)から Az(3,544±64 g/cm2)まで幅があった.また 3 指法では,平均滴下時間は最短の Dt(1.8±0.2 秒)から,最長の RmTG(4.5±0.4秒)まで幅があった.平均最大の押し圧力も最小の RmTGA1,0001231212123(秒)12123(g/cm2)F1,000(g/cm2)BC2指法3指法3指法3指法2指法3指法2指法3指法1,000(g/cm2)1,000(g/cm2)(秒)(秒)1212312312121233(秒)(秒)(秒)D1,0001231212123456(g/cm2)2指法2指法3指法2指法3指法2指法3指法2指法(秒)(秒)E1,000(g/cm2)H4,000(g/cm2)G1,000(g/cm2)図 22指法と3指法における押し圧力の経時変化加圧開始を 0 秒としたときの各時間における押し圧力の 5 回の平均を縦軸にプロットした.A:Xa,B:Tm,C:TmXE,D:RmTG,E:Mk,F:Dt,G:Ts,H:Az.エラーバーは標準偏差を示す.表 1調査の対象となった緑内障点眼薬商品名薬剤名剤形A) キサラタン0.005% latanoprost水性点眼薬B) チモプトール点眼液 0.5%0.5% timolol maleate水性点眼薬C) チモプトール XE 点眼液 0.5%0.5% timolol maleateゲル化点眼薬D) リズモン TG 点眼液 0.5%0.5% timolol maleateゲル化点眼薬E) ミケラン点眼液 2%2.0% carteolol hydrochloride水性点眼薬F) デタントール点眼液0.01% bunazosin hydrochloride水性点眼薬G) トルソプト点眼液 1%1.0% dorzolamide hydrochloride水性点眼薬H) エイゾプト点眼液1.0% brinzolamide懸濁性点眼薬———————————————————————- Page 4102あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(102)(415±36 g/cm2)から Az(2,444±486 g/cm2)まで幅があった.緑内障点眼薬 8 剤間での平均滴下時間の有意差検定の結果を表 3 に,最大の押し圧力の平均の有意差検定の結果を表4 に示す.2 指法から 3 指法に変えると平均最大の押し圧力は,Xa,Tm,RmTG,Dt,Ts,Az において有意に(p<0.05)低下したが,逆に Mk では有意に(p<0.05)上昇した.また,同様に 2 指法から 3 指法に変えたときの平均滴下時間は,RmTG では有意に(p<0.05)延長した(図 3).III考按緑内障管理における点眼治療の重要性6)については言を待たないが,その成否にはアドヒアランスが大きな鍵を握っている.以前に筆者らが報告した点眼薬使用感のアンケート調査4)においても,点眼薬間で使用感に大きなばらつきがあり,表 3緑内障点眼薬8剤間での平均滴下時間の有意差検定XaTmTmXERmTGMkDtTsAzXa>> >> >Tmツ黴 <ツ黴ツ黴ツ黴 TmXEツ黴 < >ツ黴 RmTG>>>>> >Mkツ黴ツ黴 <><<Dt<<<<<<<Tsツ黴 >< >>Azツ黴ツ黴 < >ツ黴 斜線より右上半分が 2 指法,左下半分が 3 指法の結果.左 1 列目の点眼薬が上 1 行目の点眼薬に対して有意に(p<0.05)長い場合(>),短い場合(<),有意差なし(p≧0.05)を( )として表記した.表 4緑内障点眼薬8剤間での最大の押し圧力の有意差検定XaTmTmXERmTGMkDtTsAzXaツ黴 >>><<Tm> >>><<TmXE>>>>><<RmTG<<< ><<Mk>> >><<Dt <<><<<Ts>> ><><Az>>>>>>> 斜線より右上半分が 2 指法,左下半分が 3 指法の結果.左 1 列目の点眼薬が上 1 行目の点眼薬に対して有意に(p<0.05)大きい場合(>),小さい場合(<),有意差なし(p≧0.05)を( )として表記した.表 2最大押し圧力の平均と平均滴下時間商品名2 指法3 指法最大押し圧(g/cm2)滴下時間(秒)最大押し圧(g/cm2)滴下時間(秒)A) キサラタン1,335±173.5±0.4 823±139*3.0±0.4B) チモプトール点眼液 0.5%1,419±832.3±0.81,066±29*2.4±0.4C) チモプトール XE 点眼液 0.5%1,363±322.7±0.71,224±157*2.3±0.3D) リズモン TG 点眼液 0.5%1,071±833.6±0.6 415±36*4.5±0.4*E) ミケラン点眼液 2% 780±602.2±0.21,354±94*2.5±0.6F) デタントール点眼液 731±221.7±0.2 540±60*1.8±0.2G) トルソプト点眼液 1%1,753±293.1±0.31,218±35*3.1±0.5H) エイゾプト点眼液3,544±642.5±0.22,444±486*2.7±0.2*:2 指法から 3 指法に変えたときに有意差があるもの.———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010103(103)特定の点眼薬で患者が点眼を不快に感じているという結果が得られた.そのなかで,容器が硬いという評価が多かったAz では,今回の検討においても,平均最大押し圧力は最大値を示しており,定量化の試みの妥当性を示すものと考える.ここで問題になるのは,高齢者が使用しやすいと感じる容器の平均最大押し圧力と平均滴下時間である.点眼薬使用感のアンケート調査によって評価の高かった Dt,Tm の平均最大押し圧力が 1,000 g/cm2付近,平均滴下時間が 2 秒付近にあることを考えると,これらの領域に至適条件が存在すると予想されるが,今後の検討に結論を委ねたい.今回の検討により,点眼薬によっては,2 指法が点眼しやすいものと 3 指法が点眼しやすいものが存在する可能性が示唆された.特に,RmTG では 3 指法を用いると平均滴下時間が著明に延長するため,3 指法には向かないことが明らかである.一方,Xa においては,逆に 3 指法に変えることにより,平均最大押し圧力と平均滴下時間をともに減少させた.人の手の構造から,コントロール可能な示指の押し圧力は 3 指法より 2 指法のほうが大きいと予想されるが,これまでに比較検討を行った報告はない.筆者らのシステムでの測定範囲は 8,000 g/cm2までであり,正常の成人では 2 指法の場合,測定範囲を超えてしまう.この疑問を検証するためには測定システムの改変が必要である.さらに,今回の検討により,押し圧力の波形には釣鐘型と台形型の 2 型があることも判明した.このうち,釣鐘型を示すものは押し圧力が最大になった直後に薬液が滴下しており,薬剤がノズルの先端に留まりにくいことを示している.一方,台形型は最大押し圧力に達してから滴下までに時間がかかっており,薬剤の粘性が高いため,滴がノズル先端に留まりやすいと考えられる.その結果,滴下には最大押し圧力付近の押し圧力を維持する必要があるため,使用感を損なっていると想像できる(図 4).薬剤の粘性は点眼容器の形状とともに重要な因子と考えられる.メーカーに調査を依頼した結果,以下のデータを得た.Tmツ黴 1.01 mm2/s(参天製薬株式会社インタビューフォーム),TmXEツ黴 66 mPa・s(25℃,単位 mPa・s は mm2/s を密度で割ったもの,大塚製薬株式会社資料), RmTG 56 mPa・s(10℃,大塚製薬株式会社資料),Mkツ黴 0.99 mPa・s(25℃,大塚製薬株式会社資料),Tsツ黴 45 135 mm2/s(萬有製薬株式会社インタビューフォーム),Azツ黴 323 360 mPa・s(20℃,日本アルコン株式会社依頼財団法人日本食品センター分析試図 4押し圧力の波形:釣鐘型と台形型筆者らが現在考えている仮説を示す.2 指法では Dt,Mk と Tm は釣鐘型を示し,RmTG,Ts と TmXE は台形型を示す.Xa と Az はその中間に属す.釣鐘型薬剤滴がノズル先端に留まりにくいミケランデタントールリズモンTGトルソプトエイゾプトチモプトールチモプトールXE2指法の場合キサラタン押し圧が最大に達したらすぐに滴下する押し圧が最大に達して台形型容器の性状ノズル先端に薬剤滴が留まりやすい留まる時間は押し圧の維持が必要薬剤の粘性硬い柔らかい高い低い傾向滴下まで時間がかかる4,0003,0002,0001,000エイゾプトトルソプトキサラタンリズモンTGチモプトールチモプトールXEデタントールミケラン1234(秒)(g/cm2)図 3 2指法から3指法に変更したときの最大押し圧力の平均と平均滴下時間の変化———————————————————————- Page 6104あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(104)験成績書),Xa と Dt はデータが存在しなかった.Tm とTmXE は点眼容器が同じで薬剤の粘性が異なることから,平均最大押し圧力と平均滴下時間の差は,薬剤の粘性によるものである.したがって Az は粘性の高いことも,平均最大押し圧力と平均滴下時間に影響していると考えられる.今回の結果から明らかなように,点眼に必要な押し圧力と滴下までに必要な時間には大きなばらつきがある.このばらつきは,特に多剤の点眼を必要とする高齢患者にとって,1滴を確実に滴下することを困難にしているものと考えられる.元来,点眼容器は補助具7)がなくとも,いかなる年齢においても,簡便で確実な 1 滴が点眼できるように設計されているべきものであり,ユニバーサルデザイン化が大いに望まれる.今後さらに,点眼しやすい押し圧力と,さらに心地よい滴下時間を検討することにより,具体的な数値目標を設定し,より良い点眼容器の作製の動きを活性化したい.文献 1) Iwase A, Araie M, Tomidokoro A et al:Prevalence and causes of low vision and blindness in a Japanese adult population:theツ黴 Tajimiツ黴 Study.ツ黴 Ophthalmology 113:1354-1362, 2006 2) Suzuki Y, Iwase A, Araie M et al:Risk factors for open-angle glaucoma in a Japanese population:the Tajimi Study. Ophthalmology 113:1613-1617, 2006 3) Yamamoto T, Iwase A, Araie M et al:The Tajimi Study report 2:prevalence of primary angle closure and sec-ondary glaucoma in a Japanese population. Ophthalmology 112:1661-1669, 2005 4) 兵頭涼子,溝上志朗,川﨑史朗ほか:高齢者が使いやすい緑内障点眼容器の検討.あたらしい眼科 24:371-376, 2007 5) Mathiowetz V, Kashuman N, Volland G et al:Grip and pinch strength:Normative data for adult. Arch Phys Med Rehabil 66:69-74, 1985 6) 青山裕美子:教育講座ツ黴 緑内障の点眼指導とコメディカルへの期待ツ黴 緑内障と失明の重み.看護学雑誌 68:998-1003, 2004 7) 沖田登美子,加治木京子:看護技術の宝箱ツ黴 高齢者の自立点眼をめざした点眼補助具の作り方.看護学雑誌 69:366-368, 2005***