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糖尿病患者の糖尿病健康手帳およびデータシートの持参率:病識の向上と内科-眼科間連携

2011年9月30日 金曜日

1354(13あ4)たらしい眼科Vol.28,No.9,20110910-1810/11/\100/頁/JC(O0P0Y)《原著》あたらしい眼科28(9):1354?1360,2011c糖尿病患者の糖尿病健康手帳およびデータシートの持参率:病識の向上と内科-眼科間連携小林博国立病院機構関門医療センター眼科DataNotebookSubmissionRateinDiabeticPatients:ImprovementofPatientConscientiousnessandCooperationbetweenInternistsandOphthalmologistsHiroshiKobayashiDepartmentofOphthalmology,KanmonMedicalCenterNationalHospitalOrganization目的:内科診療の内容を記載した糖尿病健康手帳(手帳)および採血検査結果表などのデータシート(データシート)を持参することが眼科診療に大切であることを説明し,それらの持参率を,患者の病識とその向上を検討する目的のために調査した.また,糖尿病健康手帳および採血検査結果表などのデータシート(データシート)の持参は,内科-眼科間診療連携の一助になると考えられた.方法:対象は,18カ月間に少なくとも3回以上受診する予定のある糖尿病患者373名(67.3±10.2歳,女性163名,男性210名)である.眼科への内科での治療内容の提供が眼科治療において不可欠であることを説明し,受診時に糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録物を持参してもらうように受診の度ごとに依頼した.受診時に記録を持参したか否かを調査した.結果:373名中337名(90.3%)が調査を完了した.登録時では121名(35.9%)が記録を持参した.6,12および18カ月後では76.4%,79.5%,81.4%の患者が記録を持参し,調査期間が長くなるほど持参率は有意に上昇した(p<0.0001).登録時,12および18カ月後では糖尿病専門医に受診している患者のうち54.7%,85.3%,87.2%の患者が持参したのに対して,非専門医に受診している患者では20.3%,74.6%,76.6%の患者が持参した.糖尿病専門医に受診している患者は,非専門医に受診している患者に比較して,いずれの時期においても,有意に高率に持参していた(登録時:p<0.0001;12カ月後:p=0.0050;18カ月後:p=0.0030).糖尿病専門医受診患者群および非専門医受診患者群ともに,糖尿病健康手帳を有している患者が有していない患者に比べて高率に持参した(糖尿病専門医受診患者群:p=0.0006;非専門医受診患者群:p<0.0001).結語:眼科への内科での治療内容の提供が眼科治療において不可欠であり,その記録を持参することが重要であることを説明した後は,記録を持参する率は著しく向上し,患者の病識も改善したと考えられた.糖尿病患者の病識の向上において眼科医の果たせる役割の余地は大きく,積極的に係わることが必要であると考えられた.Purpose:Improvementofpatientconscientiousnessandcooperationbetweeninternistsandophthalmologistshavebeenadvocated,topreventandcontrolretinopathyinpatientswithdiabetesmellitus.Theaimofthepresentstudywastoassesshowpatientssubmittedinformationtoophthalmologistsregardingthestatusoftheirdiabetes.Methods:Enrolledinthisstudywere373patientsscheduledforatleast3visitsduring18months.Thesurveymainlyconcernedhowtheysubmittedtheirdiabeticinformationtoophthalmologistsandwhethertheybroughtanotebookordatasheetinwhichtheyhadwrittentheirpersonaldiabetichistory.Results:Ofthe373patients,337(90.3%)completedfollow-up.Atbaseline,121patients(35.9%)broughttheirdiabeticdata.At6,12and18months,76.4%,79.5%and81.4%ofthepatientssubmittedtheirdata,respectively,thesubmissionrateincreasingsignificantlyovertime.Patientswhowerereferredtodiabetesspecialistsbroughttheirdatamorefrequentlythandidthosewhowerereferredtonon-specialists.Inbothcases,thepatientswithdiabetesdatanotebookssubmittedtheirdataatasignificantlyhigherratethandidthosewhohadnonotebooks.Conclusions:Anexplanationoftheimportanceofcooperationbetweeninternistsandophthalmologistsresultedinmarkedimprovementofpatients’〔別刷請求先〕小林博:〒752-8510下関市長府外浦町1-1国立病院機構関門医療センター眼科Reprintrequests:HiroshiKobayashiM.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KanmonMedicalCenterNationalHospitalOrganization,1-1Chofusotoura-cho,Shimonoseki752-8510,JAPAN(135)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111355はじめに糖尿病患者における大規模臨床研究で,網膜症の発症および進展には血糖コントロールが緊密に関与していることが報告されている1,2).糖尿病や緑内障などの無症候性の慢性疾患では,コンプライアンスが不良になることが知られており,それによって視機能が悪化することが報告されている3,4).網膜症の発症および進展を予防するためには,患者の病識を向上させる必要がある.内科-眼科の医療連携が重要であるとの認識のもとに,双方向性の情報提供が重要視され,糖尿病情報提供書の配付が提唱されている5,6).これを利用している比率が低いことが報告されており,それを補完するために,糖尿病健康手帳,糖尿病眼手帳を介しての情報の相互提供システムが開発されているが,利用率が低いのが現状である7~10).今回,内科診療の内容を記載した糖尿病健康手帳および採血検査結果表などのデータシート(データシート)を持参することが眼科診療に大切であることを患者に説明し,それらの持参率を,患者の病識を検討する目的のために調査した.また,糖尿病健康手帳およびデータシートの持参は,内科-眼科間診療連携の一助になると考えられた.I方法対象は,平成18年9月?19年3月に受診し,18カ月間に少なくとも3回以上経過観察が可能であると考えられる患者のうち,無作為に抽出した糖尿病患者373名を登録した.糖尿病の定義は糖尿病学会ガイドラインに拠った11).本研究に関しては,院内臨床研究委員会で承認を得た後,患者からは文書にてインフォームド・コンセントを得た.登録時に,対象患者に対してすべて,眼底カラー写真撮影および光干渉断層計検査を含む眼科的検査を施行した.光干渉断層計検査はOCT3000(Humphrey)のFastMacularThicknessProgramを用いて行い,中心窩の網膜厚は,中心1mmの平均網膜厚とした.登録時に,糖尿病の罹病期間,ヘモグロビン(Hb)A1C,現在通院している医療機関,投薬内容,あるいは透析の有無について調査した.投薬内容は薬剤手帳および薬局から支給されるデータシートを持参してもらい,確認した.煩雑になることを避けるために,内服,インスリン,インスリン+内服に分類した.医療機関が糖尿病専門施設であるかは,糖尿病学会ホームページで開示されている施設とした.内科医師から患者への糖尿病状況の説明のしかた,糖尿病健康手帳などの記録の保有あるいは持参の有無を調べた.糖尿病健康手帳などの記録を保有していない場合,採血検査結果表などのデータシートを受け取っているか否かを調査した.それを本院に持参しているかを確認した.糖尿病健康手帳などあるいは採血検査結果表などのデータシートの記録物を持参しない場合は,口頭で回答してもらった.糖尿病の重症度の分類は糖尿病眼手帳を登録時に同時に配布したため,福田分類に従った.経過観察:眼科への内科での治療内容の提供が眼科治療において不可欠であることを受診のたびごとにくり返して説明し,次回の診察時を診療の必要の程度に応じて予約し,その際に糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどをできる限り持参してもらうように依頼した.手術前後などで頻回に受診が必要な場合でも毎回持参してもらうようにしたが,今回の研究での記録を持参したか否かについては1カ月に1回とした.糖尿病健康手帳の配布も考慮したが,今回の研究の目的が内科の診療内容の記録物の持参に関する現状の把握であるため,配布は取りやめ,伝達方法は各医療施設に任せることとした.中止例・脱落例は,(1)死亡あるいは疾病のために受診できない場合,(2)予定された診察を許容できる範囲内で受けなかった場合とした.統計解析:コンプライアンスを評価する研究においては,標本のサイズが小さいほど,コンプライアンスが良好になることが知られており12),そのため,解析対象症例数を少なくとも200例とした.連続変数の検定には,両側Studentt-検定を用いた.分割表の検定には,c2検定,Fisher検定を用いた.p<0.05を統計上有意とした.登録時,6カ月後,12カ月後および最終受診時での糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録を持参したか否かに関する因子の解析については,これらを目的変数,年齢,性,糖尿病罹病期間,HbA1C,糖尿病のために受診している医療機関が糖尿病専門施設であるか否か,施設が病院か診療所であるか,透析の有無,服薬内容,糖尿病以外の全身疾患あるいは網膜症以外の眼疾患の有無,視力,眼圧,網膜症の程度,中心網膜厚を説明変数として,林のI類を用いて重回帰分析を施行した13,14).diabeticdatasubmission.Ophthalmologistsshouldplayamajorroleinsuchimprovementofconscientiousnessandcooperation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(9):1354?1360,2011〕Keywords:糖尿病,病識の向上,内科-眼科連携,糖尿病データ持参.diabetesmellitus,consciousnessimprovement,cooperationbetweeninternistsandophthalmologists,bringingpersonaldiabeticdata.1356あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(136)II結果373名の糖尿病患者を登録し,表1にその背景をまとめた.平均年齢は67.3±10.2歳であり,HbA1Cは7.3±1.9%,糖尿病罹病期間は15.2±9.9年であった.373名中337名(90.3%)の患者が予定通り調査を完了し,3回以上受診した.中止・脱落例は,転医5名,死亡3名,予約時に来院しなかった26名,長期に入院していた2名であった.糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録を持参した患者数の変化登録時において,糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録物を持参した患者は123名(32.9%)であった.調査期間18カ月間における平均受診回数は7.1±3.0回(平均受診間隔2.5±1.3カ月)であり,総受診回数2,412回中1,891回(78.4%)で記録を持参した.調査開始後1回目,2回目,3回目および9回目以降での受診時における記録の持参率は65.0%,71.8%,76.0%,89.5%であり,受診回数が増加するほど,持参率は有意に向上した(p<0.0001)(図1).6カ月後,12カ月後,18カ月後および最終診察時での持参率は,76.4%,79.5%,81.4%であり,時間経過とともに改善した(p<0.0001)(図2).どのような患者がこれらの記録を持参しているかについて調べるために多変量解析を施行した.その結果,登録時,6カ月後,12カ月後および最終診察時のいずれの時期においても,糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録の持参は,糖尿病専門医を受診しているか否かに有意に相関していた(表2).患者背景に関しては,糖尿病専門医受診患者群が有意に若年であった以外,その他の性,HbA1C,糖尿病罹病期間,投薬内容には,両群間に有意差がなく,矯正視力,網膜症,中心網膜厚でも差異がなかった(表3).登録時にお表1登録患者の背景患者数373名年齢(歳)67.3±10.2(18~87)性女性163名,男性210名HbA1C(%)7.3±1.9(4.8~13.1)不明79名糖尿病罹病期間(年)15.2±9.9(0.5~45)透析患者数19名(5.1%)処方内容内服のみインスリンのみインスリン+内服なし246名(66.0%)87名(23.3%)23名(6.2%)17名(4.6%)糖尿病専門医受診165名(44.2%)受診している専門医医療施設(診療所/病院)39(19/20)非専門医受診212名(56.8%)受診している非専門医医療施設(診療所/病院)72(48/24)受診回数7.1±3.0回(1?18回)糖尿病健康手帳保有持参221(59.2%)120(32.2%)採血検査結果などのデータシート保有持参94(25.2%)3(0.8%)糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録を持参123(32.9%)視力良好な眼不良な眼0.662(0.01~1.5)0.345(0.01~1.0)眼圧高い方の眼(mmHg)低い方の眼(mmHg)14.9±3.5(8~37)13.1±3.0(6~21)中心網膜厚厚い方の眼(μm)薄い方の眼(μm)296±124(140~857)237±86(105~750)網膜症の重症度右眼左眼A0A1A2A3A4A5B1B2B3B4B5不明110(29.5%)50(13.4%)12(3.2%)124(33.2%)14(3.8%)23(6.2%)1(0.3%)6(1.6%)4(1.1%)15(4.0%)7(1.9%)5(1.3%)115(39.8%)49(13.1%)12(3.2%)126(33.9%)18(4.8%)21(5.6%)1(0.3%)6(1.6%)5(1.3%)10(2.7%)9(2.4%)5(1.3%)全身合併症心筋梗塞/狭心症脳血管障害腎機能障害(透析を含む)呼吸器疾患神経学的異常58名(15.5%)5名(1.3%)27名(7.2%)2名(0.5%)3名(0.8%)眼合併症偽水晶体症視神経萎縮加齢黄斑変性開放隅角緑内障/高眼圧症閉塞隅角緑内障新生血管緑内障中心網膜静脈閉塞網膜静脈分枝閉塞網膜動脈分枝閉塞黄斑浮腫黄斑上膜硝子体手術105名(14.1%)6眼(0.8%)5眼(0.7%)42眼(5.6%)4眼(0.5%)15眼(2.0%)2眼(0.3%)15眼(2.0%)2眼(0.3%)212眼(28.4%)8眼(1.1%)42眼(5.6%)(137)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111357いて糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録を持参した患者は,糖尿病専門医受診患者群では82名(54.7%),非専門医受診患者群では39名(20.9%)であり,両群間に有意差がみられた(p<0.0001).調査開始後1回目,2回目,3回目および9回目以降での記録の持参率は,糖尿病専門医受診患者群では75.3%,75.3%,83.3%,95.8%,非専門医受診患者群では56.7%,67.4%,70.1%,83.9%であり,両群ともに受診回数が増加すると持参率は有意に上昇した(両群ともp<0.0001)(表1).1~4回目では専門医受診患者群は有意に良好であった(p<0.05).6カ月後,12カ月後,18カ月後および最終診察時では,専門医受診患者群では81.6%,85.3%,87.2%,88.0%,非専門医受診患者群では72.0%,74.6%,76.6%,78.1%であり,両群とも時間経過とともに持参率は有意に改善した(両群ともにp<0.0001)(表2).いずれの時期においても,糖尿病専門受診患者群の持参率は非専門医受診患者群に比較して有意に高かった(6カ月後:p=0.0278,12カ月後:p=0.0133,18カ月後:p=0.0110,最終診察時:p=0.0171).糖尿病健康手帳を有している患者は,手帳を有していない患者に比較して有意に高率に持参した(全例:p<0.0001,糖尿病専門医受診患者群:p=0.0006,非専門医受診患者群:p<0.0001)(表4).III考按内科診療の内容を記載した糖尿病健康手帳および採血検査結果表などのデータシートを持参することが眼科診療に大切であることを説明することによって,それらの持参率は著しく改善され,患者の病識の向上に役立ったと考えられた.眼科医が働きかけをしない状況では,糖尿病患者において,糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録物でHbA1Cなどの診療内容が確認できたものは36%であった.患者が「眼科は眼科,内科は内科」と,両者を関連付けていないと思われた.患者に対して,治療にあたっては内科-眼科の連携が大切であることを説明して,病識を高めることが重要であると考えられた.眼科医が働きかけをしない状況では,患者が糖尿病専門医に受診している場合のほうが非専門医に受診している場合に比較して,糖尿病健康手帳あるいはデータ10090807060504030200123456789+記録の持参率回数:全例:糖尿病専門医受診患者群:非専門医受診患者群図1糖尿病健康手帳あるいは採血検査結果表などのデータシートなどの記録物の持参率の受診回数による変化全例は■と実線,糖尿病専門医受診患者群は□と破線,非専門医受診患者群は○と点線で示した.0369121518最終時期(月)受診時1009080706050403020記録の持参率:全例:糖尿病専門医受診患者群:非専門医受診患者群図2糖尿病健康手帳あるいは採血検査結果表などのデータシートなどの記録物の持参率の期間による変化受診患者数が50名以上の時期のみを示した.全例は■と実線,糖尿病専門医群は□と破線,非専門医群は○と点線で示した.表2登録時,6カ月後,12カ月後および最終受診時での糖尿病健康手帳あるいはデータシートを持参したか否かに関する因子の重回帰分析の結果症例数因子重相関係数rF値p値切片勾配登録時3370.35046.8490.00000.2090.3386カ月後305受診医療機関が糖尿病専門医であるか否か0.1174.2170.04090.7070.10112カ月後337受診医療機関が糖尿病専門医であるか否か0.1134.2710.03950.7550.91018カ月後310受診医療機関が糖尿病専門医であるか否か0.1194.4780.03510.7590.940最終337受診医療機関が糖尿病専門医であるか否か0.1447.0070.00850.7770.1091358あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(138)シートを有意に高率に持参した.糖尿病専門医のほうが,非専門医に比較して積極的に患者に働きかけて,患者の病識の向上および内科-眼科の連携を図ろうとしていることによると考えられた.しかし,専門医が勤務している医療機関に通院している患者のなかでも差異がみられた.当院眼科に通院している28名全員が糖尿病健康手帳および糖尿病眼手帳を持参してくる医療機関もあれば,別の医療機関ではデータを口頭で教えているのみであり,医療機関あるいは個々の医師の間に大きな温度差が感じられた.糖尿病健康手帳の保有率,持参率ともに,従来の報告に比較して有意に低かった5~9).今回の調査の以前は,患者に対して筆者らが内科-眼科間連携を働きかけず,糖尿病健康手帳あるいはデータシートなどの記録を持参してくるように依頼しなかったことに起因すると考えられた.筆者らが内科-眼科間の治療内容の交換が糖尿病網膜症の治療に必須であり,データが記載された記録を持参してくれるように患者に依頼した後は65%に上昇し,さらに説明をくり返すことによって約90%に改善した.眼科医の説明によって,患者の表3糖尿病専門医受診患者群および非専門医受診患者群の背景糖尿病専門医受診患者群非専門医受診患者群患者数150187年齢64.5±10.269.5±10.0<0.0001性男性87,女性63男性101,女性860.5HbA1C(%)7.4±1.87.1±1.40.1糖尿病罹病期間(年)15.4±9.515.1±10.10.8受診回数7.3±2.86.9±3.10.2透析7(4.6%)12(6.4%)0.5処方内容内服90(59.3%)130(69.5%)0.1インスリン44(29.3%)36(19.3%)内服+インスリン11(7.3%)10(5.3%)なし6(4.0%)11(5.9%)糖尿病手帳保有123(82.0%)86(46.0%)<0.0001持参80(53.3%)38(20.3%)<0.0001データシート持参18(12.0%)68(36.4%)<0.0001糖尿病手帳あるいはデータシート持参82(54.7%)39(20.9%)<0.0001視力良好な眼0.6830.6420.7不良な眼0.3560.3410.8眼圧高い方の眼15.3±3.914.6±3.50.1低い方の眼13.4±3.412.9±3.00.2中心網膜厚厚い方の眼282±123304±1240.1薄い方の眼227±88244±840.1網膜症の分類右眼左眼右眼左眼A035(23.3%)36(24.0%)58(31.0%)58(31.0%)0.1A123(15.3%)23(15.3%)20(10.7%)19(10.2%)A24(2.7%)4(2.7%)8(4.3%)7(3.7%)A347(31.3%)50(33.3%)72(38.5%)68(36.4%)A49(6.0%)10(6.7%)5(2.7%)6(3.2%)A511(7.3%)10(6.7%)10(5.3%)10(5.3%)B10(0.0%)0(0.0%)1(0.5%)1(0.5%)B23(2.0%)3(2.0%)4(2.1%)3(1.6%)B33(2.0%)4(2.7%)1(0.5%)1(0.5%)B48(5.3%)4(2.7%)4(2.1%)6(3.2%)B54(2.7%)4(2.7%)3(1.6%)5(2.7%)不明3(2.0%)2(1.3%)2(1.1%)3(1.6%)(139)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111359糖尿病および糖尿病網膜症に対する病識が向上したと考えられた.しかし,患者に説明して記録物を持参しても,つぎの機会には持参しないこともあり,継続してその重要性を説明する必要があると思われた.くり返して説明することによって,専門医受診患者群と非専門医受診患者群間の差が縮小したことを考えると,糖尿病患者の病識の向上において眼科医の果たせる役割の余地は大きく,積極的に係わることが必要であると思われた.緑内障点眼薬においても,患者が受診するたびごとに,医師がコンプライアンスに関する質問をして,コンプライアンスを重要視していることを示すことがコンプライアンスの改善に繋がることが報告されている13).本研究と並行して糖尿病眼手帳の持参についても調査したため,糖尿病網膜症の分類として糖尿病眼手帳に採用されている福田分類を用いた.本研究では,福田分類で通常の分布と異なっており,A3が最も多くなっていた.調査を施行した医療機関では,糖尿病専門医が勤務していなかったため,初期の網膜症が少なく,汎網膜光凝固などの処置を必要とする患者が多くなっていたためと考えられた.本研究の第一の問題点は,患者の手帳の提出は双方向であるべきであるのに対して,今回の研究が糖尿病健康手帳あるいはデータシートを眼科医に持参されるかを評価した単方向性であることである.そのため,患者が内科医に眼科での治療内容を記載されている糖尿病眼手帳を持参しているかについては,現在実施しており,終了した際には早急に報告する予定である.第二の問題点は,患者の受診回数が3~18回と広く分布しており,受診間の期間も1~6カ月とさまざまである.そのために,患者の意識も多様化していると考えられ,煩雑な結果となってしまったことである.第三の問題点としては,本研究が情報の伝達に関して施行されたものであり,伝達された情報をどのように活かしていくかが更なる課題になると考えられた.今回,眼科への内科での治療内容の提供が眼科治療において不可欠であり,その記録を持参することが重要であることを説明することで,記録を持参する率は,著しく向上した.糖尿病患者の病識の向上や内科-眼科間医療連携において眼科医の果たせる役割の余地は大きく,積極的に係わることが必要であると考えられた.本研究の一部は,第61回日本臨床眼科学会,第110回日本眼科学会総会で発表した.文献1)山下英俊,大橋靖雄,水野佐智子:網膜症経過観察プログラムに関する報告書.厚生科学研究21世紀型医療開拓推進研究事業「糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する研究(JDCS)」平成14年度総括・分担研究報告書,p16-33,20032)MiyazakiM,KuboM,KiyoharaYetal:ComparisonofdiagnosticmethodsfordiabetesmellitusbasedonprevalenceofretinopathyinaJapanesepopulation:HisayamaStudy.Diabetologia47:1411-1415,20043)DimatteoMR:Variationsinpatients’adherencetomedicalrecommendations:aquantitativereviewof50yearsofresearch.MedCare42:197-206,2004表4糖尿病専門医受診患者群および非専門医受診患者群における糖尿病健康手帳あるいは採血検査結果表などのデータシートの持参率糖尿病専門医受診患者群非専門医受診患者群p値計患者数150187337登録時糖尿病健康手帳保有123(82.0%)86(46.0%)<0.0001211(62.6%)持参80(53.3%)38(20.3%)<0.0001118(35.0%)採血検査結果表などのデータシート保有18(12.0%)68(36.4%)<0.000186(25.5%)持参2(1.3%)1(0.5%)0.93(0.9%)糖尿病健康手帳あるいは採血検査結果表などのデータシートを持参82(54.7%)39(20.9%)<0.0001121(35.9%)調査時全例での糖尿病健康手帳あるいは採血検査結果表などのデータシートを持参946/1,111(85.1%)945/1,302(72.6%)<0.00011,891/2,412(78.4%)登録時に糖尿病健康手帳を有している患者の手帳を持参787/900(87.4%)505/629(80.3%)0.00011,292/1,529(84.5%)糖尿病健康手帳を有していない患者が採血検査結果表などのデータシートを持参159/211(75.4%)440/672(65.5%)0.0063599/883(67.8%)1360あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(140)4)StewartWC:Factorsassociatedwithvisuallossinpatientswithadvancedglaucomatouschangesintheopticnervehead.AmJOphthalmol116:176-181,19935)山名泰生:糖尿病眼合併症対策の努力.チーム医療の重要性.眼科の立場から.日本糖尿眼学会雑誌3:43-46,19986)菅原岳史,金子能人:岩手合併症研究会のトライアル糖尿病網膜症教室におけるアンケート結果.眼紀55:197-201,20047)善本三和子,加藤聡,松元俊:糖尿病眼手帳についてのアンケート調査.眼紀55:275-280,20048)船津英陽,福田敏雅,宮川高一ほか:眼科医・内科医・コメディカルの連携を目指して糖尿病眼手帳.眼紀56:242-246,20059)杉紀人,山上博子,斉藤由香ほか:糖尿病眼手帳による患者教育への有用性.臨眼58:329,200510)大野敦,植木彬夫,住友秀孝ほか:糖尿病網膜症の管理に関するアンケート調査眼科医と内科医の調査結果の比較.眼紀58:616-621,200711)日本糖尿病学会(編):糖尿病治療ガイドライン2010.南江堂,201012)SchwartzGF:Complianceandpersistencyinglaucomafollow-uptreatment.CurrOpinOphthalmol16:114-121,200513)柳井春夫,高木廣文編著:多変量解析ハンドブック.現代数学社,198614)奥野忠一,久米均,多賀敏郎ほか:多変量解析法(改訂版).日科技連,198115)SchwartzGF:Complianceandpersistencyinglaucomafollow-uptreatment.CurrOpinOphthalmol16:114-121,2005***