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真性小眼球症の水晶体再建術後に悪性緑内障を繰り返した1例

2024年8月31日 土曜日

《第34回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科41(8):987.991,2024c真性小眼球症の水晶体再建術後に悪性緑内障を繰り返した1例林有紀*1,2臼井審一*2谷川彰*2,3河本晋平*2岡崎智之*2藤野貴啓*2河嶋瑠美*2崎元晋*2,4丸山和一*2,5松下賢治*2西田幸二*2,5*1市立貝塚病院眼科*2大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科(眼科学)*3淀川キリスト教病院眼科*4大阪大学大学院医学系研究科眼免疫再生医学共同研究講座*5大阪大学先導的学際研究機構生命医科学融合フロンティア研究部門CACaseofNanophthalmoswithRecurrentMalignantGlaucomaafterCataractSurgeryYukiHayashi1,2)C,ShinichiUsui2),AkiraTanikawa2,3)C,ShimpeiKomoto2),TomoyukiOkazaki2),TakahiroFujino2),RumiKawashima2),SusumuSakimoto2,4)C,KazuichiMaruyama2,5)C,KenjiMatsushita2)andKohjiNishida2,5)1)DepartmentofOphthalmology,KaizukaCityHospital,2)DepartmentofOphthalmology,OsakaUniversityGraduateSchoolofMedicine,3)DepartmentofOphthalmology,YodogawaChristianHospital,4)DepartmentofOcularImmunologyandRegenerativeMedicine,OsakaUniversityGraduateSchoolofMedicineFacultyofMedicine,5)IntegratedFrontierResearchforMedicalScienceDivision,InstituteforOpenandTransdisciplinaryResearchInitiatives(OTRI)C,OsakaUniversityC目的:真性小眼球症は眼球容積が小さいが水晶体の大きさは正常であることが多く,そのため閉塞隅角症をきたしやすい.今回,眼内レンズ挿入眼で悪性緑内障を繰り返したC1例を経験したので報告する.症例:50歳代,男性.前医で両眼高眼圧に対して前部硝子体切除術併用水晶体再建術を施行後C1年で眼圧コントロール困難となり,大阪大学病院に紹介された.両眼浅前房で隅角は閉塞しており,悪性緑内障が疑われた.両眼に前部硝子体切除・後.切開・周辺虹彩切除・隅角癒着解離術・線維柱帯切開術を同時に行ったところ,左眼は改善したが,右眼は眼内レンズ後方に線維膜が形成され,早期に再発した.そこでCYAGレーザーにより虹彩切除部から線維膜を切開していったんは改善したが後日再発したため,大きく切開して消炎を強化したところ病状は安定した.結論:眼内レンズ挿入眼の真性小眼球症は,前房と硝子体腔に確実な交通路を作製することで悪性緑内障の再発を抑制できる.CPurpose:Toreportacaseofnanophthalmoswithrepeatedmalignantglaucomainanintraocularlens(IOL)CimplantedCeye.CCasereport:ThisCstudyCinvolvedCaC50-year-oldCmaleCdiagnosedCwithCmalignantCglaucomaCdueCtoCrecurrentangleclosureat1yearafteranteriorvitrectomywithIOLimplantationforelevatedintraocularpressure.AfterCsimultaneousCbilateralCanteriorCvitrectomy,CposteriorCcapsulotomy,CperipheralCiridectomy,Cgoniosynechialysis,Candtrabeculotomy,thelefteyeimproved,yeta.broticmembraneformedbehindtheIOLintherighteye,whichrecurredCearly.CTheC.broticCmembraneCwasCremovedCfromCtheCiridectomyCsiteCusingCaCYAGClaser,CyetCafterCimprovementCthereCwasCrecurrenceCofCtheC.broticCmembrane.CTheCconditionCstabilizedCafterCaClargerCincisionCwasCmadeCwithCenhancedCanti-in.ammatoryCtreatment.CConclusion:InCcasesCofCnanophthalmosCinCanCIOL-implantedCeye,CtheCrecurrenceCofCmalignantCglaucomaCcanCbeCreducedCbyCcreatingCaCsuccessfulCtra.cCchannelCbetweenCtheCanteriorchamberandthevitreouscavity.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(8):987.991,C2024〕Keywords:真性小眼球症,悪性緑内障,YAGレーザー,線維膜.nanophthalmos,malignantglaucoma,YAGlaser,.broticmembrane.Cはじめにを真性小眼球症とよぶ1).小眼球症の多くは隅角が閉塞し,小眼球症は,眼軸長が短く通常より眼球容積が小さいが水加齢とともに肥厚した水晶体が虹彩を前方に押すことで瞳孔晶体の大きさは正常で,とくに他の先天異常を伴わないものブロックを誘発するが,その機序は多因子性と考えられてい〔別刷請求先〕臼井審一:〒565-0871大阪府吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科(眼科学)Reprintrequests:ShinichiUsui,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,OsakaUniversityGraduateSchoolofMedicine,2-2Yamadaoka,Suita,Osaka565-0871,JAPANC右眼左眼efgh図1初診時検査所見超音波生体顕微鏡による前眼部断層像(Ca,d),前眼部光干渉断層計による断層画像(Cb,c),視神経乳頭部の眼底写真(e,h),Humphrey静的量的視野検査中心C30-2のパターン偏差(Cf,g),後眼部光干渉断層計による黄斑部神経節細胞複合体(GCC)厚マップ(Ci,j)を示す.両眼とも眼内レンズは前方に偏位し,前房は浅い.左眼は視神経乳頭陥凹拡大に伴い下方優位に上下のCGCC厚が菲薄化し,上方優位に視野障害が進行していた(中心前房深度:←→).る2).今回,真性小眼球症の水晶体再建術後C1年で悪性緑内障を発症し,硝子体手術および下方の虹彩切除を施行で一時的には改善したが,線維膜の増殖により悪性緑内障を再発し,YAGレーザーによる線維膜切開が奏効したC1例を経験したので報告する.CI症例患者:50歳代,男性.主訴:両眼の眼圧上昇.家族歴:なし.既往歴:なし.現病歴:両眼真性小眼球症による狭隅角に対してレーザー周辺虹彩切開術の既往があった.その後に両眼高眼圧となり,前医で前部硝子体切除術および水晶体再建術の同時手術が行われ,緑内障点眼加療下で眼圧は下降したが,術後C1年で眼圧コントロール困難となり,手術目的で大阪大学病院へ紹介された.前医での診断は,右眼閉塞隅角症,左眼閉塞隅角緑内障であった.当院初診時の視力は右眼C0.5p(0.8C×sph+2.25D(cyl.0.75DAx80°),左眼C0.4(0.6CpC×sph+2.75D(cyl.1.50DAx65°)であった.治療薬は両眼にカルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼薬C1日C1回,ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合点眼薬C1日C2回,リパスジル塩酸塩水和物点眼薬C1日C2回で,アセタゾラミドC250CmgをC1錠内服中であったが,眼圧図2術後経過右眼術後C8日目(Ca)と左眼術後C5日目(Cb)の前眼部光干渉断層計による断層画像を示す.右眼の前房深度はC2.1Cmmと浅く(Ca),眼内レンズ後方に増殖した線維膜をCYAGレーザーで切開し一旦改善したが(Cc,f),再び線維膜が増殖して浅くなったため(Cd,g),今度は広範囲に線維膜を切開したところ安定した(Ce,h)(f,g,hは前眼部光干渉断層計による断層画像).右眼C3時方向(鼻側)隅角は,1回目のCYAGレーザー切開後に若干開大したが,その後閉塞し,2回目のYAGレーザー後は大きく開大した(Cf,g,hの矢印).左眼は術後から安定して前房は深く隅角も開大しており,経過は良好である(Cb).(中心前房深度:両端矢印,線維膜およびCYAGレーザー切開部:点円,鼻側隅角:矢印).はCGoldmann圧平眼圧計で右眼C30CmmHg,左眼C25CmmHgと高値であった.前医で白内障手術の際に.内固定された眼内レンズは両眼ともに+40.00D(YA-60BBR,HOYA製)でハイパワーであった.眼軸長は右眼C17.37Cmm左眼C16.99mmで,両眼とも短眼軸であった.前眼部所見は両眼浅前房で隅角は狭く,ほぼ全周に虹彩前癒着をきたし,左眼は虹彩後癒着も認めた.前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)による中心前房深度は右眼C2.1Cmm左眼C1.5Cmmで,超音波生体顕微鏡(ultrasoundCbiomicrosco-py:UBM)では眼内レンズが前方へ偏位し浅前房で,とくに左眼は顕著であった(図1a~d).眼底所見では,左眼の視神経乳頭陥凹が拡大し,後眼部COCTを用いた黄斑部神経節細胞複合体(ganglionCcellcomplex:GCC)厚は下方優位に上下の網膜神経線維層が菲薄化していた(図1e,h,i,j).Humphrey静的量的視野検査(中心C24-2SITA-Standard)を行ったところ,meandeviation(MD)値は右眼がC.1.38CdBで正常範囲であったが,左眼はC.19.77CdBで上方優位に視野障害が進行していた(図1f,g).病態に悪性緑内障の要素が含まれると考えられたため,前房と前部硝子体を交通させる手術を行った.麻酔法は,本症例が小眼球症であることを考慮し,脈絡膜滲出や脈絡膜出血の併発を回避するため全身麻酔下で片眼ずつ別日に右眼から行った.手術はC3ポートを毛様体扁平部に設置し,25ゲージ硝子体カッターを用いて前部硝子体を切除した.後.を大きめに切開し,10時方向のサイドポートから同じくC25ゲージ硝子体カッターを用いて下方の周辺虹彩を切除後,硝子体側からも切除して硝子体腔と前房を交通させた.その後,隅角癒着解離術および眼内法による線維柱帯切開術を追加して手術を終了した.最初に行った右眼の術翌日は前房が深く,眼圧は緑内障点眼なしで10CmmHgに下降した.しかし,術後C8日目に中心前房深度がC2.1Cmmまで浅くなり,隅角は閉塞傾向であった(図2a).このとき左眼高眼圧に対してアセタゾラミド(250Cmg)1錠を再び内服中であったが,右眼の眼圧はC20CmmHgに上昇した.右眼は下方の周辺虹彩を切除していた部位の眼内レンズ表1右眼の術前・術後経過眼圧(mmHg)中心前房深度(mm)等価球面度数(D)緑内障治療薬術前C30C2.1+1.875ミケルナ,アイラミド,グラナテック,ダイアモックス術後8日C20C2.1+1.625ダイアモックス術後C1カ月C18C2.03+1.875キサラタン,アゾルガ,グラナテック,ダイアモックス1回目CYAGレーザー直後C18C2.63C─キサラタン,アゾルガ,グラナテック1回目CYAGレーザーC1週C14C2.24+2.75アゾルガ1回目CYAGレーザーC3週C20C1.93+1.5アゾルガ2回目CYAGレーザーC1週C14C2.77+4.0なしD:diopter(ジオプター).カルテオロール塩酸塩・ラタノプロスト配合点眼薬(ミケルナ),ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合点眼薬(アイラミド),リパスジル塩酸塩水和物点眼薬(グラナテック),アセタゾラミド(ダイアモックス),ラタノプロスト(キサラタン),ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩配合点眼液(アゾルガ).後方に線維膜が張っており,悪性緑内障が再発した原因と考えられた.そこでCYAGレーザーを用いて線維膜を一部切開したところ,直後の中心前房深度はC2.63Cmmに改善し,隅角の一部も開大した(図2c,f).しかし,その後に再び線維膜が増殖し,レーザー施行後C3週間目には前房深度がC1.93mmまで浅くなり隅角も再び閉塞したため,再度CYAGレーザーを用いて線維膜を広範囲に切開したところ,前房は深くなり隅角も開大し,1週間後の中心前房深度はC2.77Cmm,眼圧も緑内障点眼薬を使用することなくC14CmmHgまで下降した(図2d,e,g,h).線維膜増殖を抑制する目的でC0.1%ベタメタゾン点眼液C1日C4回を漸減しながら約C2カ月間継続して消炎したところ,その後は再発なく経過した.なお,前房深度が浅くなるたびに,本人は近視化を自覚し,等価球面度数も変化していた(表1).左眼については術翌日から安定して前房は深く隅角も開大し,眼圧は緑内障点眼なしでC15mmHgに下降した(図2b).経過中に眼圧がC20CmmHgまで上昇したが前房深度は維持できており,ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩配合点眼液による治療によりC15mmHgに下降し,以後は上昇することなく安定した.術後約半年の矯正視力は右眼(0.7C×sph+4.50D(cyl.1.0DCAx105°),左眼(0.8CpC×sph+5.50D),眼圧は両眼C14CmmHgで,経過は良好である.CII考按今回,両眼の小眼球症で水晶体再建術後に悪性緑内障を繰り返したC1例を経験した.悪性緑内障は毛様体の前方回旋や硝子体腔内への房水異常流入などによって生じる硝子体の前方変位に起因する閉塞隅角と推定されている3).正確な発症機序はいまだ不明であるが,Zinn小帯・水晶体・前部硝子体・毛様体のすべてが病態生理に関与していると考えられている4).通常,有水晶体眼で発症するが,稀に無水晶体眼や偽水晶体眼でも起こりうる5).偽落屑症候群のようにCZinnC990あたらしい眼科Vol.41,No.8,2024小帯が弱い症例では眼内レンズ挿入眼でも前方偏位により発症する可能性がある.本症例のように小眼球による狭い後房のスペースに+40ジオプターで厚みのある眼内レンズを挿入した場合,わずかなレンズの前方偏位でも房水動態に異常が生じやすいと考えられる.実際に,紹介時の前房深度は極端に浅くはなく,周辺虹彩が眼内レンズで持ち上げられて嵌まり込むような形で隅角閉塞をきたしていた.本症例は,閉塞隅角による高眼圧に対して前部硝子体切除を併用した水晶体再建術により一旦改善したが,術後C1年で悪性緑内障を発症した.これに対して硝子体切除術および下方の虹彩切除術により後房から前房への交通が解除されて一時的に改善したが,術後早期に眼内レンズの後方に線維膜が増殖し,前房と硝子体腔の交通が閉ざされたため悪性緑内障を再発したと考えられる.悪性緑内障に対する治療はアトロピン点眼による毛様体の弛緩や高張浸透圧薬による硝子体容積の減少が有効であるが再発例も多く,有水晶体眼には水晶体摘出術,偽水晶体眼や無水晶体眼にはCYAGレーザー,前部硝子体切除,水晶体.切開を施行することが推奨されている3,6).本症例と同じく硝子体切除術後に悪性緑内障を発症した報告では,眼内レンズの支持部が前房と前部硝子体腔の交通路に重なって生じた症例を除くと,いずれも線維膜の増殖による交通路の閉塞が原因と考えられ,YAGレーザーを用いた線維膜切開により悪性緑内障は解除されている7).本症例も同様の病態と考えられるが,小眼球では前方の眼球容積が著しく小さいため,厚みのある眼内レンズを挿入した場合は交通路を維持することが一層むずかしく,後.付近に生じた線維膜を広範囲に切開することで再発を防止することができた.また,デキサメタゾン点眼をC2カ月間と長めに継続して消炎を行ったことで,線維膜の増殖を抑制できた可能性がある.つぎに,先に行った右眼が術後に悪性緑内障の再発を繰り返したのに対して,左眼は再発しなかったことについて考察する.本症例に対する硝子体手術は左右でそれぞれ別の術者(118)が執刀し,緑内障手術は両眼ともに同一術者が行った.術者はいずれも十分な手術経験のある専門医であった.左眼は術前に虹彩後癒着で前房深度も浅く右眼とは条件が異なっていたこともあり,右眼よりも前房硝子体切除を周辺まで十分に行ったことが再発防止に繋がったと考えられる.一般に,悪性緑内障に対する外科的治療は,今回のように経毛様体扁平部からアプローチする他に前房側から前部硝子体へアプローチする術式が報告があり,いずれも周辺虹彩とCZinn小帯および前部硝子体を切除し前房と硝子体腔を確実に貫通させると再発例は少ないことが報告されているが,本症例のような小眼球症例では,それでも再発しやすい可能性があることを考慮する必要がある8).最後に,緑内障手術を併用したことについて考察する.本症例では,隅角癒着解離術と眼内法による線維柱帯切開術を併用した.両眼とも,術中に周辺虹彩前癒着を認めていたため,隅角癒着解離術は行う必要があると考えられた.また,隅角癒着解離術のみでは眼圧下降が不十分な可能性もあり,線維柱帯切開術を併用したところ安定した眼圧下降が得られた.なお,本症例のように小眼球で悪性緑内障を発症したときは眼内レンズの前方偏位に伴って等価球面度数が近視化するため,自覚的な変化に気付きやすいことをあらかじめ患者に説明しておくことで,治療の遅れを回避できると思われる.CIII結論真性小眼球症は,水晶体再建術に前部硝子体切除と後.切開および周辺虹彩切開を施した後でも線維膜の増殖により悪性緑内障を発症することがあり,前房と硝子体腔を確実に交通させることが重要である.利益相反:崎元晋,FIV:大塚製薬松下賢治,PI:メニコン西田幸二,FIV:HOYA,大塚製薬,参天製薬,メニコン,ロート製薬,レイメイ該当なし(林有紀,臼井審一,谷川彰,河本晋平,岡崎智之,藤野貴啓,河嶋瑠美,丸山和一)文献1)CarricondoCPC,CAndradeCT,CPrasovCLCetal:Nanophthal-mos:ACreviewCofCtheCclinicalCspestrumCandCgenetics.CJOphthalmolC2018:2735465;doi:10.1155/2018/2735465,C20182)YangCN,CJinCS,CMaCLCetal:TheCpathogenesisCandCtreat-mentCofCcomplicationsCinCnanophthalmos.CJCOphthalmolC2020:6578750.Cdoi:10.1155/2020/6578750,C20203)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌126:85-177,C20224)XuCQQ,CWangCWW,CZhuCJCetal:AnCunusualCcaseCofCmalignantCglaucomaCwithCciliaryCdetachment.CIntCJCOph-thalmolC14:1988-1992,C20215)SadeghiCR,CMomeniCA,CFakhraieCGCetal:ManagementCofCmalignantCglaucoma.CJCCurrCOphthalmolC34:389-397,C20236)DebrouwereCV,CStalmansCP,CVanCCalsterCJCetal:Out-comesCofCdi.erentCmanagementCoptionsCforCmalignantglaucoma:aCretrospectiveCstudy.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC250:131-141,C20127)DaveCP,CRaoCA,CSenthilCSCetal:RecurrenceCofCaqueousCmisdirectionCfollowingCparsCplanaCvitrectomyCinCpseudo-phakicCeyes.CBMJCCaseCRepC2015:bcr2014207961.doi:C10.1136/bcr-2014-207961,C20158)PakravanCM,CEsfandiariCH,CAmouhashemiCNCetal:Mini-vitrectomy;aCsimpleCsolutionCtoCaCseriousCcondition.CJOphthalmicVisResC13:231-235,C2018***

小児の真性小眼球症の黄斑隆起所見

2021年11月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科38(11):1344.1347,2021c小児の真性小眼球症の黄斑隆起所見浅野真美加近藤寛之産業医科大学眼科学教室CMacularFoldsinPediatricPatientswithNanophthalmosMamikaAsanoandHiroyukiKondoCDepartmentofOphthalmology,UniversityofOccupationalandEnvironmentalHealthC目的:小児期の真性小眼球症C2例にみられた黄斑隆起所見を報告する.症例:症例C1はC4歳,男児.視力は右眼(0.08),左眼(0.08),両眼眼軸長はC17Cmmであった.光干渉断層計(OCT)画像で両眼黄斑隆起を認め,中心窩無血管帯は消失していた.弱視治療を行い,7歳時視力は右眼(0.6),左眼(0.9)へ改善した.OCT画像による中心窩の網膜内層遺残の程度を,中心外(pIRL)と中心窩での網膜内層の厚み(fIRL)の比(fIRL/pIRL)で経時的にみたところ,4歳時とC7歳時で右眼はC1.60からC1.25,左眼はC1.32からC1.20へ両眼とも減少を認めた.症例C2はC3歳,女児.視力は右眼(0.1),左眼(0.1),眼軸長は右眼C16.69Cmm,左眼C16.70Cmmであった.OCT画像で両眼黄斑隆起を認めた.弱視治療を行い,5歳時視力は右眼(0.3),左眼(0.3)へ改善した.OCT画像によるCfIRL/pIRL比はC3歳時とC5歳時で,右眼はC1.16からC1.15,左眼はC1.27からC1.14へ減少した.結論:真性小眼球症では黄斑隆起所見を認めることがある.眼球の解剖学的成長に伴い黄斑隆起は経時的に平坦化していく可能性がある.CPurpose:ToCreportCtheCclinicalCcourseCofCpediatricCpatientsCwithCnanophthalmos.Cases:CaseC1CinvolvedCaC4-year-oldCboyCwithCaCvisualacuity(VA)ofC0.08ODCandC0.08OS.CInCbothCeyes,CtheCaxiallength(AL)wasC17.00CmmCwithCmacularCfolds.CAmblyopiaCtherapyCresultedCinChisCVACimprovingCtoC0.6CODCandC0.9COSCatC7-yearsCold.CFromC4-toC7-yearsCold,CtheCfovealCversusCparafovealCthicknessCratioCofCtheCinnerCretinallayers(fIRL/pIRL)Chadchangedfrom1.60Cto1.25CODandfrom1.32to1.20COS,respectively.Case2involveda3-year-oldgirlwithaVAof0.1inbotheyesandanALof16.69CmmODand16.70CmmOS.OpticalcoherencetomographyexaminationrevealedCmacularCfoldsCinCbothCeyes.CAmblyopiaCtherapyCresultedCinCherCVACimprovingCtoC0.3CODCandC0.3COSCatC5-yearsCold.CFromC3-toC5-yearsCold,CtheCfIRL/pIRLCratioChadCchangedCfromC1.16CtoC1.15CODCandCfromC1.27CtoC1.14COS,Crespectively.Conclusion:InCpediatricCnanophthalmosCeyes,CtheCfIRL/pIRLCratioCcanCbeCdecreasedCwithCanatomicalgrowthoftheeyeballduringchildhood.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)38(11):1344.1347,C2021〕Keywords:真性小眼球症,黄斑隆起,弱視,経時的変化.nanophthalmos,CmacularCfolds,Camblyopia,CclinicalCcourse.Cはじめに真性小眼球症は,眼杯裂の閉鎖後に眼球の発育が停止し,眼球の容積が正常のC2/3以下であり,他の身体的異常を伴わないものと定義されている1).馬島らは小眼球を年齢別の眼軸長で分類し,1歳でC19Cmm以下,成人ではC20.4Cmm以下とした2).高度遠視,強膜肥厚,uvealeffusion,閉塞隅角緑内障,黄斑低形成などが高頻度で合併するといわれている3).近年,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)の発達に伴い,真性小眼球症の黄斑部の解剖学的構造異常が検討され,黄斑部に隆起性病変を認めるという特徴が報告されている4.8).今回,筆者らは,真性小眼球症のC2症例を経験し,OCTを用いて隆起性病変の経時的変化を観察したので報告する.CI症例[症例1]4歳,男児〔別刷請求先〕浅野真美加:〒807-8555福岡県北九州市八幡西区医生ヶ丘C1-1産業医科大学眼科学教室Reprintrequests:MamikaAsano,DepartmentofOphthalmology,UniversityofOccupationalandEnvironmentalHealth,1-1,Iseigaoka,Yahatanishi-ku,Kitakyushu-shi,Fukuoka807-8555,JAPANC1344(106)右眼左眼主訴:とくになし.初診:2017年C8月.現病歴:痒みで前医受診時に眼底異常を指摘され,当科初診となった.家族歴なし.初診時所見:視力は,右眼C0.06(0.08C×sph+15.5D(cylC.1.5DAx180°),左眼C0.07(0.08C×sph+15.5D(cyl.1.0DAx175°)であり,高度遠視を認めた.眼軸長は両眼とも17Cmmと短眼軸であった.前眼部に異常は認めなかった.硝子体はベール状の混濁を認めた.両視神経は発赤,中心窩反射は認めなかった.経過:2017年C11月に全身麻酔下での眼底検査を施行した.眼底所見(図1上段)では,視神経乳頭が偽乳頭浮腫様に腫脹し辺縁が不整であったが,血管の拡張・蛇行は認めなかった.黄斑部には明瞭な黄斑色素を認めた.OCT所見(図1下段)は両眼とも網膜内層が皺襞様に隆起していた.網膜前膜を疑う高輝度反射は認めず,En-face画像でも網膜硝子体の境界面には皺襞はみられなかったが,中心窩無血管帯(fovealCavascularzone:FAZ)を認めなかった.網膜電図には異常所見を認めず,蛍光眼底造影検査では上下網膜血管の走行は非対称であった.眼鏡による弱視治療を行い,7歳時の視力は右眼(0.6C×sph+15.5D(cyl-1.0DAx180°),左眼(0.9CpC×sph+15.5D(cyl-1.0DAx180°)まで向上した.OCT画像による中心窩の網膜内層遺残の程度を評価するにあたり,中心窩での網膜内層の厚み(fovealCinnerCretinallayer:fIRL)はCfovealbuldgeがみられるところを中心窩とみなし,その位置で内境界膜内側から内顆粒層外側までの長さを計測した.また,中心外の網膜内層の厚み(parafovealCinnerretinallayer:pIRL)は中心窩からC1,000Cμm鼻側で同様に計測した.網膜内層遺残の程度は中心窩と中心外での網膜内層の厚さの比(fIRL/pIRL比)で評価した9,10).その結果,fIRL/pIRL比はC4歳(2017年C8月)時とC7歳(2020年11月)時では右眼はC1.60からC1.25,左眼はC1.32からC1.20となり,両眼とも中心窩の網膜内層遺残は減少を示した.[症例2]3歳,女児主訴:母からみてよく目を細める.初診:2018年C8月.現病歴:幼稚園で視力不良を疑われ,前医受診.精査目的に当科紹介受診となった.家族歴なし.初診時所見:視力は,ハンドルにて右眼(0.1),左眼(0.1)であった.眼圧は右眼C10CmmHg,左眼C15CmmHgであった.前眼部,中間部透光体に特記すべき異常は認めなかった.初診時は児の協力が得られず,眼底の詳細な検査は困難であった.眼軸長は右眼C16.69mm,左眼C16.70Cmmであった.経過:4歳(2019年C8月)時には眼底検査が可能となった.右眼左眼眼底所見(図2上段)で両眼偽乳頭浮腫様を認め,明瞭な黄斑色素を認め,中心窩反射は認めなかった.OCT所見(図2下段)で網膜内層の皺襞様隆起を認め,網膜に網膜前膜などによる牽引を認めなかった.眼鏡による弱視治療を行い,5歳時での視力は右眼(0.3C×sph+17.0D(cyl.1.5DAx150°),左眼(0.3C×sph+16.0D(cyl.1.5DAx25°)へ改善を認めた.OCT画像によるCfIRL/pIRL比は,3歳(2018年3月)時と5歳(2020年9月)の時点では,右眼1.16から1.15に,左眼はC1.27からC1.14となり,若干の減少を認めた.CII考按本症例では,2症例ともに網膜内層遺残と外層肥厚による隆起性病変を呈していた.真性小眼球症ではCBoyntonらは,発育過程で眼球壁に対して網膜,とくに黄斑部が余剰となり,黄斑隆起を生じると報告した11).1998年CSerranoらは,真性小眼球症では,肥厚した強膜は感覚網膜の発達を妨げないが,脈絡膜と網膜色素上皮の発達を妨げるため,黄斑部の隆起を生じると報告している12).2007年にCWalshらは,FAを用いて真性小眼球症ではCFAZの消失もしくは著しい縮小がみられたとしており,本症例C1に一致した13).2020年のCOkumichiらの報告では,対象C49C±13歳の成人例C5名C8眼において深層CFAZ面積と視力に相関を認めると報告されたが,症例数が少なく,相関を認める理由は不明であった14).また,視力と浅層CFAZ面積や眼軸長,fIRL/pIRL比に相関は認めなかったと報告されている14).真性小眼球症において網膜の隆起性病変に関する報告は複数存在するが,筆者らが調べた限り,小児の真性小眼球症のOCT所見を経時的に示した報告はなかった4.8).今回,筆者らは,全身麻酔下での眼底検査を行うことで小児における真性小眼球症のCOCT所見と視力の経時的変化を追うことができた.症例C1,2ともに年齢が上がるにつれ,fIRL/pIRL比は低下を認めた.また,症例C1,2ともに視力の向上も認めた.筆者らの症例では眼軸長は経時的な測定を行っていないが,眼球の解剖学的成長に伴い,fIRL/pIRL比が低下し,黄斑隆起は経時的に平坦化していく可能性が示された.真性小眼球症における網膜のCOCT所見による経時的変化は今後も検討していく必要があると考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)Duke-ElderS:NormalCandCabnormalCdevelopment,CPartC2CCongenitalCdeformities.CSystemCofCOphthalmology,CVol-ume3,p488-495,MosbyCompany,StLouis,19642)MajimaA:MicrophthalmosCandCitsCpathogenicCclassi-.cation.日眼会誌C98:1180-1200,C19943)DemircanCA,CYesilkayaCA,CAltanCCCetal:FovealCavascu-larzoneareameaurementswithopticalcoherencetomog-raphyCangiographyCinCpatientsCwithCnanophthalmos.CEyeC33:445-450,C20194)BijlsmaWR,vanSchooneveldMJ,VanderLelijAetal:COpticalcoherencetomography.ndingsfornanophthalmiceyes.RetinaC28:1002-1007,C20085)DemircanA,AltanC,OsmanbasogluOAetal:SubfovealchoroidalCthicknessCmeasurementsCwithCenhancedCdepthCimagingCopticalCcoherenceCtomographyCinCpatientsCwithCnanophthalmos.BrJOphthalmolC98:345-349,C20146)YalcindaC.FN,CAtillaCH,CBatio.luF:OpticalCcoherenceCtomographyC.ndingsCofCretinalCfoldsCinCnanophthalmos.CaseReportsinOphthalmologicalMedicine:20117)MansourAM,StewartMW,YassineSWetal:Unmea-surableCsmallCsizeCsuper.cialCandCdeepCfovealCavascularCzoneCinnanophthalmos:theCcollaborativeCnanophthalmosCOCTAstudy.BrJOphthalmolC103:1173-1178,C20198)HelvaciogluCF,CKapranCZ,CSencanCSCetal:OpticalCcoher-encetomographyofbilateralnanophthalmoswithmacularfoldsCandChighChyperopia.CCaseCReportsCinCOphthalmologi-calMedicine:20149)MatsushitaI,NagataT,HayashiTetal:Fovealhypopla-siainpatientswithsticklersyndrome.AmAcadOphthal-molC124:896-902,C201710)MaldonadoRS,O’ConnellRV,SarinNetal:DynamicsofhumanCfovealCdevelopmentCafterCprematureCbirth.COph-thalmologyC118:2315-2325,C201111)BoyntonCJR,CPurnellEW:BilateralCmicrophthalmosCwith-outCmicrocorneaCassociatedCwithCunusualCpapillomacularCretinalCfoldsCandChighChyperopia.CAmCJCOphthalmolC79:C820-826,C197512)SerranoJC,HodgkinsPR,TaylorDSIetal:Thenanoph-thamicmacula.BrJOphthalmolC82:276-279,C199813)WalshCMK,CGoldbergMF:AbnormalCfovealCavascularCzoneCinCnanophthalmos.CAmCJCOphthalmolC143:1067-1068,C200714)OkumichiCH,CItakuraCK,CYuasaCYCetal:FovealCstructureCinCnanophthalmosCandCvisualCacuity.CIntCOphthalmolC41:C805-813,C2020C***