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ラタノプロスト,カルテオロール併用からラタノプロスト/ カルテオロール配合点眼薬への変更3 年間の調査

2023年7月31日 月曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(7):946.949,2023cラタノプロスト,カルテオロール併用からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更3年間の調査坂田苑子*1井上賢治*1塩川美菜子*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CThree-YearSafetyandE.cacyofSwitchingtoLatanoprost/CarteololFixedCombinationfromConcomitantuseSonokoSakata1),KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(LCFC)のC3年間の効果と安全性を後向きに検討した.対象および方法:ラタノプロストとカルテオロール中止後CLCFCに変更した原発開放隅角緑内障,高眼圧症C43例を対象とした.変更前と変更後C6カ月ごとの眼圧とC12カ月ごとの視野をC3年間評価した.中止例を調査した.結果:眼圧は変更12カ月後C14.7±1.9CmmHg,24カ月後C14.5±2.3CmmHg,36カ月後C13.8±2.7CmmHgで,変更前C15.0±2.6CmmHgと同等だった.Humphrey30-2視野CMD値は変更C36カ月後(.7.22±4.37CdB)のみ変更前(.6.95±4.58CdB)に比べて進行した.中止例はC14例(32.6%)で,副作用C5例(結膜炎C2例,結膜充血,異物感,眼瞼炎各C1例)などだった.結論:併用からCLCFCへの変更後C3年間で眼圧に有意な差は認めず,安全性はおおむね良好だった.CPurpose:ToCretrospectivelyCinvestigateCtheCsafetyCandCe.cacyCofClatanoprost/carteololC.xedCcombination(LCFC)administeredovera3-yearperiod.PatientsandMethods:Thisretrospectivestudyinvolved43patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertensionwhoswitchedtoLCFCfromtheconcomitanttherapyoflatanoprostCandCcarteolol.CIntraocularpressure(IOP)andCvisual.eld(VF)wereCevaluatedCatCbaselineCandCforC3CyearsCpostswitch(i.e.,CIOPCatCbaselineCandCeveryC6months;VFCatCbaselineCandCeveryC12months).CDropoutCpatientsCwereCinvestigated.CResults:AtCbaselineCandCatC12,C24,CandC36CmonthsCpostCswitch,CIOPCwasC15.0±2.6CmmHg,C14.7±1.9CmmHg,C14.5±2.3CmmHg,CandC13.8±2.7CmmHg,Crespectively,CthusCillustratingCnoCsigni.cantCdi.erenceCinCIOPCpostCswitchCfromCthatCatCbaseline.CTheCVFCmeanCdeviationvalue(Humphrey30-2)progressedConlyCafter36-months(.7.22±4.37CdB)comparedCwithCthatCatbaseline(.6.95±4.58CdB).COfCtheC43Cpatients,C14(32.6%)droppedout,andadversereactionsoccurredin5ofthedropoutpatients(conjunctivitisin2patients,andconjunctivalChyperemia,CforeignCbodyCsensation,CandCblepharitisCinC1Cpatienteach).CConclusions:ThereCwasCnoCsigni.cantCchangeCinCIOPCatC3CyearsCafterCswitchingCfromCconcomitantCtherapyCtoCLCFC,CandCtheCsafetyCofCusingCLCFCwasfoundtobesatisfactory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(7):946.949,C2023〕Keywords:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,眼圧,副作用,視野障害,長期.latanoprost/carteolol.xedcombination,intraocularpressure,adversereaction,visual.elddefects,long-term.Cはじめに緑内障診療ガイドライン第C5版では,緑内障点眼薬治療において目標眼圧に達していない場合は点眼薬の変更あるいは追加することが推奨されている1).点眼薬の追加を繰り返すと,多剤を併用することになる.多剤併用患者では,点眼薬数が増加するに従ってアドヒアランスが低下することが報告されている2)ので,アドヒアランスを考慮する必要がある.アドヒアランス向上をめざして配合点眼薬が開発された.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を含有するラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が,2017年C1〔別刷請求先〕坂田苑子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:SonokoSakata,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-SurugadaiChiyoda-kuTokyo101-0062,JAPANC946(98)月より使用可能となった.そこで筆者らは,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を併用使用している患者で,両点眼薬を中止してラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更した際のC3カ月間3),1年間4)の眼圧下降効果と安全性について報告した.これらの報告でラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の良好な眼圧下降効果,高い安全性,患者のアドヒアランスの向上が示された.しかし,緑内障点眼薬治療は長期にわたるため,長期的な効果と安全性の検討が必要である.そこで,今回これらの報告3,4)と同じ患者を対象としてラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬のC3年間の眼圧下降効果,視野への影響,安全性を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2017年C1.9月に井上眼科病院に通院中の外来患者で,ラタノプロスト点眼薬(キサラタン,ファイザー)(夜C1回点眼)と持続性カルテオロール点眼薬(ミケランCLA,大塚製薬)(朝C1回点眼)をC1カ月間以上併用治療している原発開放隅角緑内障と高眼圧症患者を対象とした.炭酸脱水酵素阻害薬,a1遮断薬,Ca2作動薬,ROCK阻害薬の併用も可能とするが,点眼薬変更前からC1カ月間以上同一薬剤で治療中の場合に限定した.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止し,washout期間なしでラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(ミケルナ,大塚製薬)(朝C1回点眼)に変更した.使用中のほかの点眼薬は継続とした.眼圧の変化,視野への影響,有害事象を評価した.眼圧に関しては,変更前と変更C6,12,18,24,30,36カ月後のGoldmann平眼圧計で測定した眼圧を調査し比較した.変更36カ月後の眼圧変化量を調査した.具体的には変更C36カ月後の眼圧が変更前と比べてC2CmmHg以上下降,2CmmHg未満の変化,2CmmHg以上上昇のC3群に分けた.視野への影響は,変更前と変更C12,24,36カ月後に施行したCHumphrey視野検査プログラム中心C30-2CSITAStandardのCmeandeviation(MD)値を調査し比較した.自動視野計データファイリングシステムCBeeFilesを使用し,変更前から変更C36カ月後までの視野のCMDスロープを算出し,進行の有無を内蔵ソフトで判定した.変更C36カ月後までの副作用,投与中止例を調査した.統計学的解析はC1例C1眼で行った.両眼該当症例は投与前眼圧の高い眼,眼圧が同値の場合は右眼,片眼該当症例は患眼を解析に用いた.変更前と変更C6,12,18,24,30,36カ月後の眼圧,変更前と変更C12,24,36カ月後のCMD値の比較にはCANOVA,BonferroniCandDunn検定を用いた.統計学的検討における有意水準は,BonferroniandDunn検定において補正を行ったため眼圧の比較はCp<0.0024,MD値の比較はp<0.0083とした.本研究は井上眼科病院倫理審査委員会で承認された.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.CII結果対象はC43例C43眼で,性別は男性C21例,女性C22例,年齢はC67.9C±11.1歳(平均値C±標準偏差),38.90歳だった.病型は原発開放隅角緑内障(狭義)25例,正常眼圧緑内障17例,高眼圧症C1例だった.使用点眼薬数はC2.5C±0.7剤,2.4剤だった(表1).MD値はC.6.95±4.58CdB,C.16.53.+0.75CdBだった.眼圧は変更C6カ月後C14.7C±2.2mmHg,12カ月後C14.7C±1.9mmHg,18カ月後C14.4C±2.5CmmHg,24カ月後C14.5C±2.3mmHg,30カ月後C13.8C±2.3CmmHg,36カ月後C13.8C±2.7mmHgで,変更前C15.0C±2.6CmmHgと統計学的に有意な差を認めなかった(図1).変更C36カ月後の眼圧変化量は,変更前と比べてC2CmmHg以上下降C11例(38.0%),2CmmHg未満C15例(51.7%),2mmHg以上上昇C3例(10.3%)だった(図2).MD値は変更C12カ月後C.7.12±4.05CdB,24カ月後C.7.20C±4.37CdB,36カ月後C.7.22±4.37dBで,変更前C.6.95±4.58CdBと比べてC36カ月後のみが有意に進行していた(p=0.0004)(表2).変更C36カ月後までのCMDスロープが得られた症例はC21例で,MDスロープが有意に悪化していたのはC4例(19.0%)だった.副作用はC5例(11.6%)で出現し,内訳は変更C5日後に異物感,変更C3カ月後に眼瞼炎,変更C6カ月後に結膜充血,変更C14カ月後に結膜炎,変更C32カ月後に結膜炎の各C1例だった.投与中止例はC14例(32.6%)で,内訳は副作用C5例,転医C3例(変更C12カ月後,変更C27カ月後,変更C32カ月後),眼圧上昇C2例(変更前C16CmmHgが変更C3カ月後C22CmmHg,変更前C18CmmHgが変更C19カ月後C21CmmHg),白内障手術施行C2例(変更C19カ月後,変更C22カ月後),来院中断C1例(変更C29カ月後),被験者都合C1例(変更C9日後)だった.副作用が出現した症例では,異物感と結膜充血の症例はラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬を中止し,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬に戻したところ症状は消失した.眼瞼炎の症例は,ラタノプロスト点眼薬のみに変更したところ症状は消失した.結膜炎の症例は,2例ともラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬を中止したところ症状は消失した.そのうちのC1例は眼圧が上昇したため,その後ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を併用使用した.変更C3カ月後に眼圧が上昇した症例では,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬に戻したところ眼圧はC14CmmHgに下降した.変更C19カ月後に眼圧が上昇した症例では,リパスジル点眼薬を追加したと表1対象の使用薬剤薬剤数使用薬剤症例数C2ラタノプロスト+カルテオロールC25Cラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミドC73ラタノプロスト+カルテオロール+ブリモニジンCラタノプロスト+カルテオロール+ドルゾラミドC32ラタノプロスト+カルテオロール+ブナゾシンC1Cラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミド+ブリモニジンC24ラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミド+ブナゾシンC3CmmHg20181614121086420n=39変更前変更6カ月後表2変更前後のMD値MD値(dB)変更前(n=31)C.6.95±4.58変更C12カ月後(n=22)C.7.12±4.05変更C24カ月後(n=23)C.7.20±4.37変更C36カ月後(n=21)C.7.22±4.37BonferroniandDunn検定,*p<0.0083ころ眼圧はC15CmmHgに下降した.CIII考按(文献C3より作成)CNSn=3814.4±2.5n=3313.8±2.3n=3613.8±2.7n=31n=29変更変更変更変更変更12カ月後18カ月後24カ月後30カ月後36カ月後図1変更前後の眼圧BonferroniandDunn検定.2mmHg以上上昇(3例,10.3%)*図2変更36カ月後の眼圧変化量今回ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更したところ,36カ月間にわたり眼圧は変更前と比べて統計学的有意差はなく,安定した値であった.良田らはプロスタグランジン関連点眼薬とCb遮断点眼薬を中止して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更したところ,眼圧は変更前(13.8C±1.3mmHg)と変更C3カ月後(13.7C±2.4CmmHg)で同等だったと報告した5).今回の調査では,変更前後の薬剤成分が同一であることが眼圧の維持に寄与したと考えられる.しかし,変更により眼圧が上昇し,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が中止となった症例もC2例存在したので,変更後の注意深い経過観察が必要である.今回の変更と同様の組み合わせによる長期的な効果と安全性の報告はない.筆者らはラタノプロスト点眼薬とチモロール点眼薬を中止して,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬に変更した症例のC3年間の効果と安全性を報告した6).変更前後の眼圧は変更前と変更C6,12,18,24,30カ月後は同等で,変更C36カ月後は変更前に比べて有意に下降していた.変更C36カ月後の眼圧を変更前と比べるとC2CmmHg以上下降C13%,2CmmHg未満C77%,2CmmHg以上上昇C10%だった.今回も変更C36カ月後の眼圧を同様に比較するとC2mmHg以上下降C38.0%,2CmmHg未満C51.7%,2CmmHg以上上昇C10.3%だった.眼圧が上昇したり下降したりする症例もあり,変更後も眼圧の推移には注意を要する.今回の症例での変更前後のCMD値の比較では,変更前と変更C12,24カ月後は同等だったが,36カ月後には有意に進行していた.CollaborativeCNormalCTensionCGlaucomaStudy(CNTGS)においても,治療により眼圧下降C30%を達成していてもC3年間で約C20%の症例で視野障害が進行している7).そのため変更C36カ月後のCMD値の進行は今回の点眼薬の変更が原因ではないと考えられる.今回のC36カ月間の検討でもC19.0%の症例でCMDスロープが有意に悪化していた.長期的な経過観察におけるCMD値の進行はある程度は仕方がないと考える.しかし,今回の症例では,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更後に視野障害進行により中止となった症例はなく,臨床的には視野への影響はおおむね良好である.投与中止例は今回はC32.6%だった.ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬への変更の報告6)での投与中止例はC38.3%で,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬とラタノプロスト/チモロール配合点眼薬はほぼ同等の安全性を有すると考えられる.今回の症例での副作用は異物感,眼瞼炎,結膜充血,結膜炎で,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の特定使用成績調査の中間解析結果8)に報告されている副作用と類似していた.また,今回の副作用はいずれも重篤ではなく,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の中止により症状が速やかに消失したので,安全性は良好であると考えられる.しかし,変更C12カ月後以降にも結膜炎がC2例出現しており,長期に使用してから副作用が出現する可能性もある.長期的に慎重に経過観察を行う必要がある.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬をラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更後のC36カ月間の経過を後ろ向きに調査した.眼圧はC36カ月間にわたり安定し,安全性はおおむね良好だった.このような点眼薬の変更は副作用が出現しないかぎりアドヒアランスの面からも有効で,推奨できる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)InoueK,ShiokawaM,IwasaMetal:Short-terme.cacyandCsafetyCofCaClatanoprost/carteololC.xedCcombinationCswitchedCfromCconcomitantCtherapyCtoCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertention.CJGlaucomaC27:1175-1180,C20184)正井智子,井上賢治,塩川美菜子ほか:ラタノプロスト+カルテオロールからラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更による長期投与.あたらしい眼科C36:804-809,C20195)良田浩氣,安樂礼子,石田恭子ほか:カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼液の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科C36:1083-1086,C20196)InoueK,OkayamaR,HigaRetal:E.cacyandsafetyofswitchingCtoClatanoprost0.005%-timololCmaleate0.5%C.xed-combinationCeyedropsCfromCanCun.xedCcombinationCfor36months.ClinOphthalmolC8:1275-1279,C20147)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CThee.ectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmolC126:498-505,C19988)山本哲也,真鍋寛,冨島さやかほか:カルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト配合点眼液(ミケルナ配合点眼液)の使用実態下における安全性と有効性特定使用成績調査の中間解析結果.臨眼C75:449-461,C2021***

線維柱帯切開術眼外法と眼内法の術後成績比較 西

2023年5月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科40(5):693.696,2023c線維柱帯切開術眼外法と眼内法の術後成績比較西田崇下川翔太郎藤原康太小栁俊人村上祐介園田康平九州大学大学院医学研究院眼科学分野CComparisonofPostoperativeOutcomesbetweenTrabeculotomyAbExternoCandAbInternoCTakashiNishida,ShotaroShimokawa,KohtaFujiwara,YoshitoKoyanagi,YusukeMurakamiandKoh-HeiSonodaCDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalSciences,KyushuUniversityC目的:線維柱帯切開術眼外法(LOT-ext)とマイクロフックを用いた眼内法(LOT-int)の術後C2年間の成績を比較した.対象および方法:2017年C1月.2018年C12月に九州大学病院においてCLOT-extおよびCLOT-intを白内障手術と同時に行った患者を後ろ向きに抽出し,術後C1年以上経過観察できたC39例C39眼(LOT-ext:20眼,LOT-int:19眼)を対象とした.術後C6,12,18,24カ月時点での術後眼圧値,および術後合併症の有無について両術式間で比較した.結果:術後の平均眼圧下降値および平均眼圧下降率は術式間で差はなかった.また,生存時間分析でも術後眼圧値は術式間で差はなかった.術後合併症は,LOT-extでニボーを伴う前房出血(p=0.001)および術後C1カ月以内の眼圧スパイクが有意に多かった(p=0.002).結論:LOT-extとCLOT-intの眼圧下降効果に違いはなかった.LOT-extは術後前房出血の頻度および術後眼圧スパイクがCLOT-intより多くみられ,術後管理により注意を要する.CPurpose:ToCcompareCtheCpostoperativeCoutcomesCbetweentrabeculotomy(LOT)abexterno(LOT-ext)andCLOTabinternoCusingamicrohook(μLOT-int).CSubjectsandMethods:Weretrospectivelyinvestigated39eyesof39patientswhounderwentLOT-extCorμLOT-intCwithcataractsurgeryatKyushuUniversityHospitalfromJanu-ary2017toDecember2018andwhowerefollowedupformorethan1-yearpostoperative.At6-,12-,18-,and24-monthsCpostoperative,Cintraocularpressure(IOP)andCsurgery-relatedCcomplicationsCwereCcomparedCbetweenCthetwomethods.Results:Our.ndingsrevealednodi.erenceinpostoperativeIOPbetweenthetwotechniques,yetCpostoperativeCcomplicationsCwereCsigni.cantlyChigherCinCLOT-extCwithCanteriorCchamberChemorrhageCwithniveau(p=0.001)andCIOPCspikesCwithinC1-monthpostoperative(p=0.002)C.CConclusions:OurC.ndingsCrevealedCnodi.erenceinIOPreductionbetweenLOT-extCandμLOT-int,yetLOT-extChadahigherfrequencyofpostopera-tiveanteriorchamberhemorrhagewithneveauandpostoperativeIOPspikesthanLOT-int,thusrequiringmoreattentioninpostoperativemanagement.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(5):693.696,C2023〕Keywords:緑内障,線維柱帯切開術,眼内法,眼外法,眼圧,術後合併症.glaucoma,trabeculotomy,abinterno,abexterno,IOP,postoperativecomplications.Cはじめに線維柱帯切開術眼外法(trabeculotomyCabexterno:LOT-ext)は,1960年にCSmithによって初めて報告された1).LOT-extは線維柱帯切除術(trabeculectomy:LEC)と比較すると眼圧下降は劣るが術後合併症は少なく,初期.中期緑内障のよい手術適応として,とくにわが国で多く行われている2).隅角異常を伴う小児緑内障や角膜混濁を伴う症例では隅角観察,線維柱帯の同定が困難であるため,LOT-extが必要である.一方,近年,結膜切開を行わないCLOTとして,マイクロフックやCiStentを用いた線維柱帯切開法眼内法(trabeculotomyCabinterno:LOT-int)などの低侵襲緑内障手術(minimallyCinvasiveCglaucomasurgery:MIGS)が報告されており3,4),LOT-extに比べて手技が簡便であることからCLOT-intが選択されるケースが近年増加している.しかし,両者の術式選択に際する明確な基準はなく,LOT-extとCLOT-intの手術成績を比較した報告は少ない5).そこで,筆者らは九州大学病院におけるCLOT-extとCLOT-intの手術成績を後ろ向きに比較した.〔別刷請求先〕村上祐介:〒812-8582福岡市東区馬出C3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野Reprintrequests:YusukeMurakami,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalSciences,KyushuUniversity,3-1-1Maidashi,Higashi-ku,Fukuoka812-8582,JAPANCI対象および方法本研究はヘルシンキ宣言の理念に従い行われ,九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(2019-056).2017年C1月.2018年C12月に九州大学病院において,白内障手術とCLOT-extもしくは谷戸氏マイクロフックを用いたCLOT-intを併用して行った患者について後ろ向きにカルテ情報を取得し,手術後C1年以上の経過観察が可能であったものを対象とした.同一患者で両眼ともCLOTを行っている場合は先に手術を行った眼を対象とした.術式の選択には明確な基準はなく,患者ごとに各術者の判断で決定した.LOT-extはおもに緑内障専門医が選択しており,LOT-intは緑内障非専門医がより積極的に選択している傾向があった.LOT-extは,白内障手術後に円蓋部基底の結膜切開(6-8時)後に,4C×3Cmmの強膜四角フラップ・3C×3Cmmの内側フラップを作製し,線維柱帯を露出させた.トラベクロトームを2方向に挿入し,線維柱帯を約C120°切開した.LOT-intは,白内障手術を角膜切開で行ったあとに隅角鏡で線維柱帯を確認し,角膜切開創またはサイドポートより谷戸氏マイクロフックを挿入し,鼻側.上方および鼻側.下方の線維柱帯を計C120.180°切開した.術後成績の検討項目は術後眼圧を用いた.術後C6,12,18,24カ月における両術式の眼圧下降値,眼圧下降率について比較した.術後C18,24カ月時点では追跡可能であった患者を対象とし,再手術を行った症例は再手術を行う時点までを対象とし再手術以降は対象から除いた.また,Kaplan-Meier法を用いて生存時間分析を行った.術後の眼圧値によりC3段階の基準を設け(基準1:21mmHg未満,基準C2:18mmHg未満,基準C3:15mmHg未満)を設け,術後C6,12,18,24カ月時点で基準以上になった時点を死亡と定義した.また,追加手術を行った場合も死亡と定義した.Logrank検定を行い術式間に生存率の差があるかを検討した.眼圧測定は非接触式眼圧計の測定結果を用いた.緑内障点眼数は配合薬の点眼はC2本,炭酸脱水酵素阻害薬を内服している場合は点眼スコアC1としてカウントした.また,術後合併症については既報5)を参考にニボーを形成する前房出血の有無,眼圧スパイク(術後C1カ月以内の眼圧C30CmmHg以上)の有無,2段階以上の視力低下の有無,低眼圧(術後眼圧C4mmHg以下)の有無,術後の緑内障再手術の有無についてデータを取得した.LOT-extとCLOT-int群間の患者背景,平均術後眼圧下降値・平均眼圧下降率の比較,および術後合併症の比較には,Wlicoxonの順位和検定またCFisherの正確検定を用いた.II結果LOT-extはC19症例,LOT-intはC20症例であった.手術時の平均年齢はCLOT-extでC69.5歳,LOT-intでC68.4歳で両群間に差はなかった.両術式間で性別,術前眼圧,術前視力,術前緑内障点眼数,術前CMD値,緑内障病型の割合に有意差は認めなかった(表1).術後眼圧下降値の平均値±標準偏差は術後6,12,18,24カ月時点においてCLOT-extでC.2.2±3.7CmmHg,C.3.2±4.9mmHg,C.3.6±4.7CmmHg,C.3.5±4.3CmmHg,LOT-intでC.3.5±6.2CmmHg,C.3.7±4.9CmmHg,C.5.7±8.1CmmHg,C.5.0±4.5CmmHgであった.各時点において両術式間で眼圧下降値に有意差を認めなかった(図1a).術後眼圧下降率の平均値±標準偏差は術後C6,12,18,24カ月時点においてCLOT-extでC10.2C±22.6%,14.3C±27.6%,17.5C±20.9%,C17.4±17.6%,LOT-intでC14.6C±28.5%,19.6C±22.3%,C27.2±29.0%,24.2C±18.6%であった.眼圧下降率においても各時点において両術式間で眼圧下降値に有意差を認めなかった(図1b).術後眼圧値による死亡の定義を眼圧C21CmmHg以上,18mmHg以上,15CmmHg以上として生存時間分析を行った(図2).眼圧C21CmmHg以上を死亡と定義した場合,平均生存期間±標準誤差はCLOT-extでC1.9C±0.08年,LOT-intで1.9年C±0.06年であった.眼圧C18CmmHg以上を死亡と定義した場合,平均生存期間±標準誤差はCLOT-extでC1.8C±0.09年,LOT-intでC1.9年C±0.06年であった.眼圧C15CmmHg以上を死亡と定義した場合,平均生存期間±標準誤差はCLOT-extでC1.7C±0.13年,LOT-intでC1.7年C±0.13年であった.いずれの定義においても術式間で生存率に有意な差はなかった.いずれにおいても両術式で生存率に有意差を認めなかった(図2).術後合併症について表2に示す.ニボーを伴う前房出血はLOT-extにおいてC73.7%,LOT-intにおいてC20.0%であり有意にCLOT-extで多かった(p=0.002).眼圧スパイクはLOT-extでC57.9%,Lot-intでC10.0%であり有意にCLOT-extで多かった.低眼圧,視力低下,緑内障再手術については両群で有意差を認めなかった.CIII考察本研究ではCLOT-extとCLOT-intの両術式間で術後C2年においても,術後眼圧に有意差は認めなかった.本研究と同様に,LOT-extと谷戸氏マイクロフックを用いたCLOT-intの術後C1年時点の成績を比較したCMoriらの報告では,両術式で眼圧下降効果に差はなかった5).また,LOT-extとCKahookCDualBladeを用いたCLOT-intとの術後成績を比較した廣岡らの報告でも,両術式で眼圧下降効果に差はなかっ表1手術時の患者背景眼外法(n=19)眼内法(n=20)CpvalueC年齢(歳)(*)(†)C69.5±8.6C68.4±11.1C0.75性別(男/女)C12/7C11/9C0.75眼圧(mmHg)(*)C14.7±5.6C15.3±6.8C0.98緑内障点眼数(本)(*)C3.3±1.2C3.6±1.1C0.48炭酸脱水酵素阻害薬内服症例(†)C1C2C0.58HFA30-2MD値(dB)(*)C.14.0±8.3C.10.9±8.7C0.18矯正視力(logMAR)(*)C.0.17±0.43C.0.16±0.35C0.82角膜厚(μm)(*)C527±36C509±39C0.32眼軸長(mm)(*)C24.7±1.9C24.6±1.3C0.74病型開放隅角緑内障(†)12(63.2%)14(70.0%)C0.74続発緑内障(†)7(36.8%)6(30.0%)C0.74C平均値C±標準偏差,HFA:HumphreyCFieldAnalyzer,(*)Wilcoxonの順位和検定,(†)Fisherの正確検定.Cap=0.73p=0.68p=0.70p=0.45bp=0.72p=0.61p=0.39p=0.51平均術後眼圧下降率(%)806040200-20-40平均眼圧下降値(mmHg)-5-10-15-20-25-3061218246121824術後期間(月)術後期間(月)図1術後眼圧下降値と術後眼圧下降率a:平均術後眼圧下降値の経過.b:平均術後眼圧下降率の経過.a基準1b基準2c基準31.01.01.00.80.80.8生存率(%)0.60.40.60.40.60.40.20.20.20000.51.01.52.000.51.01.52.000.51.01.52.0観察期間(年)観察期間(年)観察期間(年)線維柱帯切開術眼外法線維柱帯切開術眼内法図2生命表解析(Kaplan-Meier法)による線維柱帯切開術の2年生存率死亡の定義として,基準C1はC21mmHg,基準C2はC18mmHg,基準C3はC15CmmHgを超えた時点または追加手術を行った場合と定義した.表2術後合併症の割合眼外法(n=19)眼内法(n=20)p値(*)ニボーを伴う前房出血(%)(*)眼圧スパイク(%)(*)低眼圧(%)(*)視力低下(%)(*)緑内障再手術(%)14(C73.7)11(C57.9)2(C10.5)14(C73.7)0(0)4(C20.0)C2(C10.0)C3(C15.0)C8(C40.0)C3(7C.7)C0.0010.0021.00.0530.23(*)Fisherの正確検定.たと結論づけている6).一方で,LOT-extとCTrabectomeを用いたCLOT-intの術後眼圧の比較を行ったCKinoshita-Nakanoらの報告では,術後C1年および術後C2年時点においてCLOT-extの眼圧下降が有意に大きかった(7).短期的な眼圧下降効果にはデバイスごとの違いがある可能性があり,今後さらなる検討が必要である.術後合併症についてはCLOT-extでニボーを伴う前房出血および眼圧スパイクが有意に多い結果となった.LOT-extにおけるニボーを伴う前房出血はC20.91%5,6,8)と幅広く報告されており,本研究ではC73.7%に前房出血を認めた.一方で谷戸氏マイクロフックを用いたCLOT-intにおけるニボーを伴う前房出血はC16%と報告されており5),本研究では20%であった.前房出血は房水静脈からの血液逆流によるもので,術終了時の眼圧との圧較差により生じる.LOT-extでニボーを伴う前房出血の頻度が高かった要因としては,ロトームによる線維柱帯切開後に眼圧が大きく下降するため,フラップ縫合までの時間に血液逆流が多く生じること,また症例によっては創部からの漏出が術後一過性にあり5),血液逆流が遷延した可能性が考えられた.本研究ではCLOT-extにおいて眼圧スパイクも有意に多く認めた.本研究では術後1カ月以内の早期における眼圧スパイクを対象としており眼圧スパイクをきたした症例では全例薬物投与(炭酸脱水酵素阻害薬内服,緑内障点眼)により眼圧スパイクは速やかに改善した.本研究において,術後C2年の時点でCLOT-intとCLOT-extの眼圧下降効果に両群間で有意差はなかった.LOT-extは術後前房出血および一過性眼圧スパイクを生じる割合が多く,術後管理により注意を要する.文献1)SmithR:ACnewCtechniqueCforCopeningCtheCcanalCofCSch-lemm.CPreliminaryCreport.CBrCJCOphthalmolC44:370-373,C19602)TaniharaH,NegiA,AkimotoMetal:Surgicale.ectsoftrabeculotomyCabCexternoConCadultCeyesCwithCprimaryCopenCangleCglaucomaCandCpseudoexfoliationCsyndrome.CArchOphthalmolC111:1653-1661,C19933)TanitoCM,CSanoCI,CIkedaCYCetal:Short-termCresultsCofCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CaCnovelCminimallyCinvasiveCglaucomaCsurgeryCinCJapaneseeyes:initialCcaseCseries.ActaOphthalmologicaC95:e354-e360,C20174)Arriola-VillalobosCP,CMartinez-de-laCCasaCJM,CDiaz-ValleCDCetal:CombinedCiStentCtrabecularCmicro-bypassCstentCimplantationandphacoemulsi.cationforcoexistentopen-angleCglaucomaCandcataract;aClong-termCstudy.CBrJOphthalmolC96:645-649,C20125)MoriCS,CMuraiCY,CUedaCKCetal:ACcomparisonCofCtheC1-yearCsurgicalCoutcomesCofCabCexternoCtrabeculotomyCandmicrohookabinternotrabeculotomyusingpropensityscoreanalysis.BMJOpenOphthalmolC5:e000446,C20206)廣岡一行,合田衣里奈,木内良明:線維柱帯切開術CabexternoとCKahookCDualBladeを用いた線維柱帯切開術の術後成績.日眼会誌124:753-758,C20207)Kinoshita-NakanoE,NakanishiH,Ohashi-IkedaHetal:CComparativeCoutcomesCofCtrabeculotomyCabCexternoCver-susCtrabecularCablationCabCinternoCforCopenCangleCglauco-ma.JpnJOphthalmolC62:201-208,C20188)FukuchiCT,CUedaCJ,CNakatsueCTCetal:TrabeculotomyCcombinedCwithCphacoemulsi.cation,CintraocularClensCimplantationandsinusotomyforexfoliationglaucoma.JpnJOphthalmolC55:205-212,C2011***

ブリモニジン酒石酸塩0.1%点眼液 使用成績調査のまとめ

2022年8月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科39(8):1139.1147,2022cブリモニジン酒石酸塩0.1%点眼液使用成績調査のまとめ川口えり子*1坂本祐一郎*1末信敏秀*1新家眞*2*1千寿製薬株式会社*2神奈川歯科大学附属横浜クリニックPost-MarketingStudyof0.1%BrimonidineTartrateOphthalmicSolutionErikoKawaguchi1),YuichiroSakamoto1),ToshihideSuenobu1)andMakotoAraie2)1)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd,2)KanagawaDentalUniversityYokohamaClinicCブリモニジン酒石酸塩点眼液(アイファガン点眼液C0.1%)の安全性および有効性を検討するため,承認後の使用成績調査にて,最長C24カ月にわたりプロスペクティブな観察を行った.副作用発現率はC15.43%(720/4,666例)であり,おもな副作用はアレルギー性結膜炎をはじめとする眼局所の事象であった.眼圧評価対象C2,625例における投与開始時の平均眼圧はC16.5C±4.7CmmHgであった.投与開始C3カ月.24カ月までの平均眼庄下降率はC13.5.15.2%であり,いずれの観察時点においても有意な眼圧下降が認められた(p<0.0001).また,病型,併用薬剤,切替薬剤にかかわらず,投与開始以降有意な眼圧下降を示した.ブリモニジン酒石酸塩点眼液の安全性および有効性に問題は認められず,有用であると考えられた.CPurpose:Toevaluatethesafetyande.cacyofbrimonidinetartrateophthalmicsolution(AIPHAGANCRCOph-thalmicSolution0.1%)forthetreatmentofglaucoma.PatientsandMethods:Inthisprospective,observational(uptoC24months)post-marketingCstudyCconductedCinCJapan,CaCtotalCofC4,666CglaucomaCpatientsCwereCincluded.CResults:OfCtheC4,666Cpatients,CtheCincidenceCrateCofCadverseCdrugreactions(ADRs)was15.43%(n=720patients),themainADRswereoculartopicaleventssuchasallergicconjunctivitis.Themeanintraocularpressure(IOP)inthe2,625patientswhowereincludedinanalysesofthechangesofIOPwas16.5±4.7CmmHgatbaseline.InCaddition,CAIPHAGANRCOphthalmicCSolution0.1%Csigni.cantlyCreducedCIOPCatCallCobservationalpoints(p<0.0001)C,andtheaveragerateofIOPreductionfrom3-to24-monthspoststartofadministrationrangedfrom13.5%to15.2%.Moreover,thelevelofIOPreductionwasnotin.uencedbyglaucomatype,concomitantdisorder,ordrugusedbeforeswitching.Conclusion:Our.ndingssuggestthatAIPHAGANCROphthalmicSolution0.1%issafeande.ectiveforthetreatmentofglaucoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(8):1139.1147,C2022〕Keywords:ブリモニジン,アイファガン点眼液C0.1%,安全性,有効性,眼圧.brimonidine,AIPHAGANoph-thalmicsolution0.1%,safety,e.cacy,intraocularpressure.はじめに緑内障は,わが国の失明原因の第C1位1)であり,緑内障診療ガイドライン2)では,「視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」と定義されている.治療方法には薬剤治療,レーザー治療,手術治療などがあるが,通常,緑内障治療薬の単剤投与より開始され,さらなる眼圧下降を求めて作用機序の異なる緑内障治療薬との併用や他の治療が実施される.ブリモニジン酒石酸塩はアドレナリンCa2受容体に選択的に作用し,房水産生の抑制およびぶどう膜強膜流出路を介した房水流出の促進により眼圧を下降させると考えられており3),わが国においては,2012年C1月にC0.1%ブリモニジン酒石酸塩(アイファガン点眼液C0.1%)として承認された.本剤は,それまでの緑内障治療薬とは異なる作用機序を有していたため,製造販売後においてはプロスタグランジン関連薬をはじめとする種々の緑内障治療薬と組み合わせて使用されることが想定された.また,緑内障以外の既往症や併用薬などのため,臨床試験では除外対象となっていた患者にも,承認後は広く投与される.このような上市後の使用実態に即〔別刷請求先〕川口えり子:〒541-0048大阪市中央区瓦町C3-1-9千寿製薬株式会社信頼性保証本部医薬情報企画部Reprintrequests:ErikoKawaguchi,MedicalInformationPlanningDepartment,Safety&QualityManagementDivision,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-1-9Kawara-machi,Chuo-ku,Osaka541-0048,JAPANCして本剤の有効性および安全性を検証することを目的として使用成績調査を実施した.CI調査の方法と成績1.調査方法「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(厚生労働省令第C17l号)に則り,中央登録方式によるプロスペクティブな観察研究を実施した(2012年C12月.2017年C12月).本剤の使用成績調査(以降,本調査)にかかる契約を締結した医療機関にて,目標症例数C3,000例として,2012年C12月.2015年C9月に初めて本剤投与を開始した緑内障または高眼圧症患者を登録対象とした.観察期間はC12カ月以上,最長C24カ月であり,調査項目は,患者背景(性別,年齢,合併症,既往歴,眼手術歴,前治療薬),併用薬,併用療法,眼科検査結果(投与開始前およびC3カ月ごとの眼圧,視野検査),有害事象とした.なお,本調査は介入を行わない観察研究であるため,本剤投与以前の緑内障治療内容,併用薬,併用療法,眼科検査機器や測定方法に制限は設けなかった.本調査は,独立行政法人医薬品医療機器総合機構による審査を経て実施した.C2.評価方法安全性については,本剤投与開始以降,少なくともC1回以上の観察が可能であった症例を対象として,副作用発現状況を評価した.また,本剤の特徴的な副作用である「アレルギー性結膜炎」については,「性別」「年齢」「アレルギー性疾患既往の有無」「角膜障害の有無」「結膜疾患の有無」「眼瞼疾患の有無」「他の緑内障治療薬の有無」「b遮断薬併用の有無」「緑内障治療薬以外の併用薬の有無」および「併用薬剤数」を共変量として,強制投入法によるロジスティクス多変量解析を行い,アレルギー性結膜炎発現のリスクを検討した.有効性については,眼圧評価対象症例の投与前眼圧と投与24カ月までのC3カ月ごとの眼圧値を対応のあるCt検定で評価した(Bon.eroni補正).眼圧推移対象症例は,投与開始からC360日以上,緑内障治療内容を変更することなく,本剤を継続投与した症例とした.評価眼はC1例C1眼とし,両眼投与症例においては投与開始時点の眼圧が高い方の眼(同値である場合は右眼)とした.さらに,本剤投与期間中に同一の測定法(Humphrey視野計,中心C30-2プログラムのSITA-StandardまたはCSITA-Fast)にて,5回以上視野検査を実施した眼を対象として,測定法ごとにC1年当たりのCmeandeviation(MD)値の変化量をCLinearMixedModelで推定した.すべての解析について,有意水準は両側5%とした.C3.結果全国C481の医療機関にてC4,886例が登録され,安全性評価対象症例としてC4,666例,眼圧評価対象症例としてC2,625例を収集した(図1).安全性評価対象症例の患者背景は表1に示したとおりであり,平均年齢はC68.7歳,原発解放隅角緑内障がもっとも多かった.また,最終観察時点である投与24カ月まで投与継続された症例はC3,074例であったことから,本調査における投与継続率はC65.9%であった.一方,最終観察時点までに投与中止に至ったC1,592例の中止理由は,再診なしC678例,副作用C520例,効果不十分C182例,有害事象C82例,その他C130例であった.C4.安全性副作用発現率はC15.43%(720/4,666例)であった.このうち,重篤な副作用はC11例C12件(眼圧上昇C4件,視野障害の進行C2件,糖尿病網膜症の増悪,糖尿病,糖尿病性腎症の悪化,脳血栓症,右大腿骨骨折および左上腕骨骨折各C1件)が認められたが,本剤と明確な関連があると判定された事象はなかった.おもな副作用(発現率C0.1%以上)は表2に示したとおりであり,アレルギー性結膜炎C241例(5.17%)をはじめ,結膜充血C102例(2.19%),眼瞼炎C88例(1.89%),結膜炎C50例(1.07%),点状角膜炎C48例(1.03%)など,眼局所における事象が多く認められた.眼局所以外では,浮動性めまいC21例(0.45%)および傾眠C14例(0.30%)が主たる事象であった.なお,アレルギー性結膜炎,結膜充血,霧視,浮動性めまいなど,自覚的な事象では,副作用による中止率が高い傾向にあった(表2).ロジスティクス多変量解析は,安全性評価対象症例C4,666例のうち,共変量とした背景因子に「不明」を含むC251症例を除いたC4,415例を対象とした.背景因子ごとのアレルギー性結膜炎の発現状況については,「性別」「アレルギー性疾患既往の有無」「結膜疾患の有無」および「緑内障治療薬以外の併用薬の有無」のC4因子で有意差が認められ,性別では「女性」,アレルギー性疾患既往の有無および結膜疾患の有無では「あり」のオッズ比が高かった.表には示していないが,結膜疾患の内訳としては,86.3%(909/1,053症例)において眼乾燥(Sjogren症候群を含む)あるいはアレルギー性結膜炎(季節性アレルギーおよび眼のアレルギーを含む)が認められ,それぞれの罹患症例におけるアレルギー性結膜炎の発現率は,眼乾燥でC6.77%(p=0.0400),アレルギー性結膜炎でC14.47%(p<0.0001)であり,非罹患症例に比して発現率が有意に高かった(Cc2検定).一方,「緑内障治療薬以外の併用薬の有無」では,「あり」のオッズ比が,「なし」より低かった(表3).C5.有効性図2に示したとおり,眼圧評価症例C2,625例の投与前眼圧はC16.5mmHg,投与C3.24カ月までの眼圧はC13.5.13.9mmHgであり,観察期間を通して安定した眼圧下降が認められた(p<0.0001).眼圧変化量は.2.9.C.2.6CmmHg,眼図1症例構成全国C481の医療機関にて登録されたC4,886例のうち,本剤投与後C1回以上観察のあったC4,666例を安全性評価対象症例として,副作用発現状況を確認した.また,本剤投与開始後,緑内障治療内容を変更することなく,360日以上継続投与した2,625例を眼圧評価対象症例として,3カ月ごとの眼圧推移を確認した.表1患者背景項目分類症例数(n=4,666)性別男2,118(45.4%)女2,548(54.6%)年齢(歳)平均±標準偏差C68.7±13.0最小値.最大値7.97病型*1原発開放隅角緑内障2,017(43.2%)正常眼圧緑内障1,926(41.3%)原発閉塞隅角緑内障165(3.5%)続発緑内障277(5.9%)高眼圧症185(4.0%)その他95(2.0%)合併症(眼)あり2,502(53.6%)なし2,164(46.4%)合併症(眼部以外)あり1,431(30.7%)なし2,440(52.3%)不明795(17.0%)眼手術歴あり1,671(35.8%)なし2,958(63.4%)不明37(0.8%)併用薬あり4,123(88.4%)なし533(11.4%)不明10(0.2%)併用療法あり178(3.8%)なし4,454(95.5%)不明34(0.7%)*1:本剤投与開始時点で緑内障・高眼圧症に罹患していなかったC1例を除外した.(131)あたらしい眼科Vol.39,No.8,2022C1141表2おもな副作用および中止状況副作用*1*2発現症例数(発現率%)中止症例数*3(中止率%)眼部665(C14.25)C.アレルギー性結膜炎241(C5.17)209(C86.72)結膜充血102(C2.19)90(C88.24)眼瞼炎88(C1.89)65(C75.58)結膜炎50(C1.07)36(C72.00)点状角膜炎48(C1.03)18(C37.50)霧視26(C0.56)23(C88.46)眼の異常感24(C0.51)19(C79.17)眼圧上昇22(C0.47)5(C22.73)眼乾燥21(C0.45)4(C19.05)眼そう痒症18(C0.39)17(C94.44)眼痛12(C0.26)10(C83.33)アレルギー性眼瞼炎10(C0.21)9(C90.00)眼刺激9(C0.19)6(C66.67)眼の異物感9(C0.19)9(C100.00)結膜濾胞8(C0.17)8(C100.00)視野欠損8(C0.17)1(C12.50)角膜びらん7(C0.15)5(C71.43)眼瞼紅斑6(C0.13)5(C83.33)眼瞼浮腫6(C0.13)5(C83.33)虹彩炎5(C0.11)0(C0.00)(その他)46(C.)C.眼部以外63(C1.35)C.浮動性めまい21(C0.45)19(C90.48)傾眠14(C0.30)10(C71.43)(その他)44(C.)C.*1:副作用名はCICH国際医療用語集CMedDRA/JCVersion20.1のCPT(基本語)を用いて分類した.*2:発現率C0.1%以上の事象を対象とした.*3:中止症例に複数の副作用が発現していた場合,すべての副作用の中止例数として計数した.圧変化率は.15.2.C.13.5%であった.このうち,本剤を新規で単剤投与したC357例の投与前眼圧はC17.2CmmHg,投与3.24カ月の眼圧はC13.8.14.2CmmHg,眼圧変化量はC.3.3..3.1mmHg,眼圧変化率はC.17.2.C.16.1%であった.その他,病型別,併用薬剤別,切替薬剤別で眼圧推移を検討した結果,投与後のすべての時点で有意な眼圧低下が認められた(図3~6).1年当たりのCMD値の変化量について,評価眼はC194例194眼(SITA-Standard群:54眼,SITA-Fast群:140眼)であった.測定法ごとの推定変化量はCSITA-Standard群は0.19CdB(標準誤差C0.14,p=0.1829),SITA-Fast群はC.0.08CdB(標準誤差C0.11,p=0.4507)であり,両群ともに有意な変化は認められなかった.CII考察本調査で認められた副作用の多くは眼局所における非重篤C1142あたらしい眼科Vol.39,No.8,2022な事象であった.ブリモニジン点眼投与時における代表的な事象である眼局所アレルギー反応の発現率は,既報においてはC9.25.7%である4.6).本調査においても,主たる眼局所事象はアレルギー反応であり,うちアレルギー性結膜炎の発現率はC5.17%であった.多変量解析によるアレルギー性結膜炎のリスク分析においては,結膜疾患あり,アレルギー性疾患既往あり,女性の集団におけるオッズ比が,1.805(p=0.0099),2.112(p=0.0087),1.810(p<0.0001)と有意に高かった.多変量解析対象症例で認められた主たる結膜疾患は,眼乾燥あるいはアレルギー性結膜炎であり,罹患症例における発現率が高かった.Manniら5)は,ブリモニジン点眼(0.2%)による眼局所アレルギー反応は,点眼薬に対するアレルギー既往を有する患者に多く認められ,また,眼局所アレルギー反応を示した患者では涙液量が有意に減少していたことを報告しており,類似した結果であったと考える.なお,女性のオッズ比が高かった要因としては,女性におけるアレルギー性疾患の既往あるいは結膜疾患の合併率が,それぞれ,60.7%あるいはC65.4%であり,男性における合併率(39.4%あるいはC34.6%)に比して高かったことに起因すると推察された.一方,緑内障治療薬以外の併用薬ありのオッズ比はC0.573(p=0.0427)であり,併用薬なしに比して有意に低かったが,おもな併用薬は人工涙液,角膜保護薬,ステロイド薬,抗アレルギー薬であった.このうち,ステロイド薬あるいは抗アレルギー薬の併用がアレルギー性結膜炎の発症あるいは増悪を抑制しうることは想像できるものの,他の併用薬による影響については,さらなる検討が必要と考える.このような併用薬による影響については,Cb遮断薬の点眼併用によるブリモニジン点眼起因の眼局所アレルギー反応の低減について言及されている7.9).そこで,多変量解析の変数としてCb遮断薬の点眼併用有無を組み入れたが,併用例におけるオッズ比はC1.114(p=0.5439)であり,低減傾向は認められなかった.これは,本調査が使用成績調査という性質上,併用薬に制限を設けておらず,本剤投与期間中に併用薬の変更が生じた症例が含まれるなど,既報と条件が異なるためと考えられた.一方,全身的な副作用としては,浮動性めまいC21例(0.45%)および傾眠C14例(0.30%)が代表的であったが,その発現率は,アドレナリンCa2受容体刺激作用を有する血圧降下剤(メチルドパ水和物錠,クロニジン塩酸塩錠,グアナベンズ酢酸塩錠)を上回るものではなかった3).以上のように,本調査においては,新たな安全性リスクを認めなかったが,最長C24カ月の観察期間においてC34.1%(1,592/4,666例)が本剤による治療から離脱しており,このうちC11.1%(520/4,666例)が副作用発現を理由として本剤投与を中止していた.Sherwoodら8)は,ブリモニジン点眼(0.2%)の12カ月観察における有害事象による投与中止率がC30.6%で(132)表3アレルギー性結膜炎の多変量解析結果背景因子オッズ比95%信頼区間p値男1C..性別女C1.810C1.348-2.430<0.0001*40歳未満C1C..年齢40歳以上C65歳未満C65歳以上C75歳未満C5.618C5.885C0.771-40.954C0.807-42.907C0.08860.080375歳以上C3.273C0.447-23.976C0.2432アレルギー性疾患既往*1なしCありC1C1.805C.1.153-2.826C.*0.0099角膜障害*2なしCありC1C1.121C.0.700-1.795C.0.6351結膜疾患*3なしCありC1C2.112C.1.208-3.690C.*0.0087眼瞼疾患*4なしCありC1C2.412C.0.957-6.081C.0.0619他の緑内障治療薬*5なしCありC1C0.599C.0.348-1.031C.0.0644Cb遮断薬の併用*5なしCありC1C1.114C.0.786-1.580C.0.5439緑内障治療薬以外の併用薬*5なしCありC1C0.573C.0.335-0.982C.*0.0427なしC1C..1剤C1.424C0.745-2.722C0.2847併用薬剤数*52剤C3剤C1.352C0.651C0.629-2.907C0.250-1.694C0.43960.37934剤以上C0.896C0.322-2.498C0.8340*1:本剤投与開始時点で以下のいずれかを合併している,または既往のある症例.アレルギー性結膜炎,アレルギー性眼瞼炎,アトピー性白内障,季節性アレルギー,アトピー性皮膚炎,アレルギー性皮膚炎,接触皮膚炎,アレルギー性鼻炎,薬疹,喘息.*2:本剤投与開始時点で以下のいずれかを合併している症例.角膜炎,角膜障害,眼乾燥,眼球乾燥症,Sjogren症候群,点状角膜炎,角膜びらん,潰瘍性角膜炎,真菌性角膜炎,角膜症,角膜浮腫,角膜白斑,角膜混濁,眼部単純ヘルペス,角膜血管新生,円錐角膜,角膜変性,角膜ジストロフィー,角膜瘢痕,ヘルペス眼感染.*3:本剤投与開始時点で以下のいずれかを合併している症例.眼乾燥,Sjogren症候群,眼球乾燥症,アレルギー性結膜炎,季節性アレルギー,眼のアレルギー,結膜炎,結膜充血,細菌性結膜炎,眼充血,結膜弛緩症.*4:本剤投与開始時点で以下のいずれかを合併している症例.アレルギー性眼瞼炎,眼瞼炎,眼瞼湿疹,マイボーム腺機能不全,眼瞼内反,眼瞼けいれん,眼瞼皮膚弛緩症,瞼板腺炎,霰粒腫,麦粒腫.*5:アレルギー性結膜炎発現症例では,当該事象発現までに眼部に使用した薬剤(発現時点で投与を中止していた薬剤を含む),未発現症例では,本剤投与期間中に眼部に使用したすべての薬剤を対象とした.あったと報告しており,本調査における投与中止率は既報をた,投与開始C3カ月後までの眼圧下降率は,全症例でC14.6上回るものではなかった.しかし,緑内障治療は永続を前提%,原発開放隅角緑内障でC15.9%,正常眼圧緑内障でC12.0とすることに鑑みると,本剤による治療中止後の治療選択肢%であり,いずれも統計学的に有意であった.緑内障治療のを用意しておくことも肝要であると考えられた.目的は,患者の視覚の維持,それに伴う生活の質の維持であ有効性について,2,625例における投与開始から投与C24り,現在,エビデンスの伴う唯一確実な治療法は眼圧下降でカ月までの眼圧推移の検討においては,病型,併用薬剤,切ある2).すなわち,視野障害に対する眼圧下降効果について替薬剤など,いずれの因子の影響も認められなかった.まは,1CmmHgの眼圧下降によりC10%視野障害の進行が抑制25全体(n=2,625)新規単剤投与(n=357)20(*有意差あり)眼圧(mmHg)15100投与期間(月)投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧眼圧変化量t検定変化率眼圧変化量t検定変化率(mmHg)(mmHg)(mmHg)(p)(%)(mmHg)(mmHg)(p)(%)眼圧評価対象症例C16.5±4.7C13.8±3.7C.2.7<C0.0001C.14.6C13.6±3.7C.2.7<C0.0001C.14.5新規単剤投与症例C17.2±5.0C13.8±3.9C.3.1<C0.0001C.17.1C14.0±3.8C.3.2<C0.0001C.17.2C図2眼圧推移(全体・新規)眼圧推移対象症例(全体)およびアイファガンを新規単剤投与した症例(新規)では,投与開始後,安定した眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は全体.14.5%,新規C.17.2%であった.C30POAG(n=1,136)NTG(n=1,182)PACG(n=69)SG(n=114)25眼圧(mmHg)OH(n=121)(*有意差あり)2015100投与前投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧(mmHg)眼圧(mmHg)変化量(mmHg)t検定(p)変化率(%)眼圧(mmHg)変化量(mmHg)t検定(p)変化率(%)CPOAGCNTGCPACGCSGCOHC18.0±4.6C14.0±2.9C16.6±5.8C20.2±6.7C22.5±3.8C14.9±3.8C12.2±2.7C13.4±3.7C15.3±4.9C18.0±3.5C.3.2.1.8.3.5.5.2.4.4<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C.15.9C.12.0C.16.7C.23.4C.18.0C14.6±3.8C12.1±2.6C13.4±3.1C14.9±4.8C18.0±3.3C.3.1.2.0.3.3.5.3.4.6<C0.0001C<C0.0001C=0.0004C<C0.0001C<C0.0001C.15.4C.12.5C.14.8C.21.8C.19.3POAG:原発開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障,PACG:閉塞隅角緑内障,SG:続発緑内障,OH:高眼圧症.図3眼圧推移(病型別)病型にかかわらず安定した眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は,POAG15.4%,NTG12.5%,PACG14.8%,SG21.8%,OH19.3%であった.投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧眼圧変化量t検定変化率眼圧変化量t検定変化率(mmHg)(mmHg)(mmHg)(p)(%)(mmHg)(mmHg)(p)(%)PG関連薬C16.0±4.2C13.4±3.1C.2.7<C0.0001C.14.9C13.2±3.2C.2.6<C0.0001C.14.5Cb遮断薬C15.4±4.3C13.3±3.2C.2.3<C0.0001C.12.1C13.1±3.2C.2.3<C0.0001C.12.0CCAIC19.2±3.8C15.7±3.3C.3.3C0.0006C.16.0C15.0±3.0C.3.6C0.0167C.16.7PG関連薬:プロスタグランジン関連薬,Cb遮断薬:交感神経Cb受容体遮断薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬.図4眼圧推移(併用薬剤別1)併用薬の種類にかかわらず安定した眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は,PG関連薬C14.5%,Cb遮断薬C12.0%,CAI16.7%であった.C25PG関連薬+β遮断薬(n=122)PG関連薬・β遮断薬配合剤(n=289)PG関連薬+CAI(n=99)20眼圧(mmHg)b遮断薬・CAI配合剤(n=73)15(*有意差あり)100投与前投与期間(月)投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧(mmHg)眼圧変化量(mmHg)(mmHg)t検定(p)変化率(%)眼圧変化量(mmHg)(mmHg)t検定(p)変化率(%)PG関連薬+b遮断薬CPG関連薬・Cb遮断薬配合剤CPG関連薬+CAICb遮断薬・CAI配合剤C16.8±5.4C16.1±4.5C17.3±4.7C17.4±5.7C14.0±4.8C13.5±3.7C14.7±3.4C14.2±3.6C.3.0.2.7.2.5.3.2<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C.15.8C.15.2C.12.6C.15.2C13.7±4.0C13.0±3.2C14.9±4.5C13.7±3.4C.2.9.3.0.1.8C.3.7<C0.0001C<C0.0001C0.0003C<C0.0001C.15.6.16.9.9.8C.16.9図5眼圧推移(併用薬剤別2)2剤あるいは配合剤を併用した場合も有意な眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は,PG関連薬+b遮断薬C15.6%,PG関連薬・Cb遮断薬配合剤C16.9%,PG関連薬+CAI9.8%,Cb遮断薬・CAI配合剤C16.9%であった.(*有意差あり)PG関連薬(n=189)b遮断薬(n=103)CAI(n=113)遮断薬(n=66)投与期間(月)投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧(mmHg)眼圧(mmHg)変化量(mmHg)t検定(p)変化率(%)眼圧(mmHg)変化量(mmHg)t検定(p)変化率(%)PG関連薬Cb遮断薬CCAICa1遮断薬C15.1±4.0C16.9±4.4C15.9±4.7C14.9±3.6C13.5±3.3C14.0±3.1C13.6±4.7C12.9±2.8C.1.5.2.7.2.1.1.9<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C.7.8C.14.2C.12.8C.12.1C12.8±3.2C14.0±3.3C13.3±3.6C13.2±3.2C.2.2.2.9.2.5.1.5C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C0.0103C.12.5C.15.8C.13.9C.7.9a1遮断薬:交感神経Ca1受容体遮断薬.図6眼圧推移(切替薬剤別)他剤単剤からアイファガン単剤,他剤併用のうちC1剤またはC1成分をアイファガンへ切り替えた症例を含む.切替薬剤の種類にかかわらず有意な眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は,PG関連薬C12.5%,Cb遮断薬C15.8%,CAI13.9%,Ca1遮断薬C7.9%であった.され10),日本人に多くみられる正常眼圧緑内障11)では,30%の眼圧下降により視野障害の進行が抑制される12).本調査における本剤投与の開始は,主として追加あるいは他剤からの切替であり,2.6.2.9mmHgの眼圧低下が認められた.また,正常眼圧緑内障においてもC1.7.2.0CmmHgの眼圧低下が認められたことから,第二選択薬として,目標眼圧の達成に貢献できるものと考えられた.CIII結論本調査の結果,承認時までに得られていない安全性に関する新たなリスクは認められなかった.有効性においては,病型,併用薬,切替薬剤に関係なく,投与C24カ月まで安定した眼圧下降効果が得られることが確認できた.以上より,本剤は使用実態下においても有用な薬剤であると考えられ,緑内障治療において重要な役割を果たすことが期待される.謝辞:本調査にご協力を賜り,貴重なデータをご提供いただきました全国の先生方に,深謝申し上げます.利益相反:川口えり子,坂本祐一郎,末信敏秀(カテゴリーE:千寿製薬)文献1)MorizaneCY,CMorimotoCN,CFujiwaraCACetal:IncidenceCandCcausesCofCvisualCimpairmentCinJapan:theC.rst-nation-wideCcompleteCenumerationCsurveyCofCnewlyCcerti.edCvisuallyCimpairedCindividuals.CJpnCJCOphthalmolC63:26-33,C20192)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版)3)独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ(医療用医薬品情報検索)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/CiyakuSearch/4)SchumanCJS,CHorwitzCB,CChoplinCNTCetal:AC1-yearCstudyCofCbrimonidineCtwiceCdailyCinCglaucomaCandCocularChypertension.ArchOphthalmolC115:847-852,C19975)ManniCG,CCentofantiCM,CSacchettiCMCetal:DemographicCandclinicalfactorsassociatedwithdevelopmentofbrimo-nidineCtartrate0.2%-inducedCocularCallergy.CJCGlaucomaC13:163-167,C20046)BlondeauCP,CRousseauJA:AllergicCreactionsCtoCbrimoni-dineCinCpatientsCtreatedCforCglaucoma.CCanCJCOphthalmolC37:21-26,C20027)MotolkoMA:ComparisonCofCallergyCratesCinCglaucomaCpatientsCreceivingCbrimonidine0.2%CmonotherapyCversusC.xed-combinationCbrimonidine0.2%-timolol0.5%Cthera-py.CurrMedResOpinC24:2663-2667,C20088)SherwoodMB,CravenER,ChouCetal:Twice-daily0.2%CbrimonidineC.0.5%CtimololC.xed-combinationCtherapyCvsCmonotherapyCwithCtimololCorCbrimonidineCinCpatientsCwithCglaucomaCorCocularChypertension.CArchCOphthalmolC124:1230-1238,C20069)新家眞,福地健郎,中村誠ほか:ブリモニジン/チモロール配合点眼剤の原発開放隅角緑内障(広義)および高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科C37:345-352,C202010)HeijlCA,CLeskeCM,CBengtssonCBCetal:ReductionCofCintra-ocularpressureandglaucomaprogression.ArchOphthal-molC120:1268-1279,C200211)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryCopen-angleCglaucomaCinJapan:theCTajimiCstudy.COphthalmologyC111:1641-1648,C200412)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CComparisonCofCglaucomatousCprogressionCbetweenCuntreatedCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucomaCandCpatientsCwithCtherapeuticallyCreducedCintraocularCpres-sures.AmJOphthalmolC126:487-497,C1998***

緑内障患者の配合剤への変更によるアドヒアランスの検討

2022年8月31日 水曜日

《第32回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科39(8):1125.1129,2022c緑内障患者の配合剤への変更によるアドヒアランスの検討迫菜央子辻拓也西原由華佐々木研輔春田雅俊吉田茂生久留米大学医学部眼科学講座CExaminationofTreatmentAdherenceAfterChangingtoCombinationEyeDropsinGlaucomaPatientsNaokoSako,TakuyaTsuji,YukaNishihara,KensukeSasaki,MasatoshiHarutaandShigeoYoshidaCDepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicineC目的:PG関連薬/Cb遮断薬配合剤(PG/Cb),a2刺激薬/炭酸脱水酵素阻害薬配合剤(Ca2/CAI)への変更によるアドヒアランスを検討する.対象および方法:対象はCPG関連薬,Cb遮断薬/炭酸脱水酵素阻害薬配合剤,Ca2刺激薬を点眼している患者C21例C30眼.病型は原発開放隅角緑内障C13眼,落屑緑内障C7眼,続発緑内障C2眼,正常眼圧緑内障C2眼,血管新生緑内障C2眼,高眼圧症C2眼,原発閉塞隅角緑内障C1眼,小児緑内障C1眼であった.PG/CbおよびCa2/CAIへの変更前後の視力,眼圧などを検討した.変更前後でアンケートを行った.結果:点眼忘れの回数は変更前C0.33C±0.71回から変更C1カ月後C0.10C±0.29回と有意に減少した(p=0.04).副作用は掻痒感C1例,結膜炎C2例,霧視C3例であった.75%の患者は変更後がよいと回答した.変更前,変更後C1,3カ月で視力,眼圧に有意差はなかった.結論:変更後は高い満足度が得られ,アドヒアランス向上が期待できる.CPurpose:ToCinvestigateCtreatmentCadherenceCafterCchangingCtoCtheCcombinationCofCPG/bandCa2/CAICeyeCdropsCinCglaucomaCpatients.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC30CeyesCofC21CglaucomaCpatientsCwhoCwereinstilledwithPGpreparation,b/CAIanda2agonist.Ofthe31eyes,therewere13primaryopen-angleglau-comaeyes,7exfoliationglaucomaeyes,2secondaryglaucomaeyes,2normal-tensionglaucomaeyes,2neovascu-larizationglaucomaeyes,2ocularhypertensioneyes,1primaryangle-closureglaucomaeye,and1childhoodglau-comaCeye.CVisualacuity(VA)andCintraocularpressure(IOP)preCandCpostCswitchingCtoCPG/bandCa2/CAICwereCexamined.CACpatientCquestionnaireCwasCconductedCpreCandCpostCswitch.CResults:TheCmeanCnumberCofCpatientsCwhoCforgotCtoCinstillCwasCreducedCfromC0.33±0.71CatCbeforeCswitchingCtoC0.10±0.29CatC1CmonthCthechange(p=0.04)C.CSideCe.ectsCwereitching(1patient)C,conjunctivitis(2patients)C,CandCblurredvision(3patients)C.COfCtheC21Cpatients,75%saidthattheswitchwasgood,andnodi.erenceinVAandIOPwasobservedpostswitch.Conclu-sion:AfterchangingtoPG/banda2/CAIcombinationeyedrops,highsatisfactionwasobtainedandadherencetotreatmentimproved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(8):1125.1129,C2022〕Keywords:ブリモニジン酒石酸塩/ブリンゾラミド配合点眼液,眼圧,副作用,アドヒアランス.brinzolamide/Cbrimonidine.xedcombination,intraocularpressure,sidee.ects,adherence.Cはじめにエビデンスに基づいた唯一確実な緑内障治療は眼圧下降であり,点眼加療が果たす役割は大きい.しかし,緑内障は多くの場合きわめて慢性的に経過する進行性の疾患で,治療効果を実感しにくいこともあり,長期にわたってアドヒアランスを維持することがむずかしい1).とくに多剤点眼が必要な患者においては,配合点眼液を使用して点眼回数や眼局所の副作用を軽減し,アドヒアランスとCQOLの向上をめざすべきと考える.アイラミド配合懸濁性点眼液(千寿製薬)は交感神経Ca2受容体刺激薬(以下,Ca2刺激薬)であるブリモニジン酒石酸塩と炭酸脱水酵素阻害薬(carbonicCanhydraseinhibitor:CAI)であるブリンゾラミドの配合点眼液で,国内では初めてとなる薬剤の組み合わせである.プロスタグランジン関連〔別刷請求先〕辻拓也:〒830-0011福岡県久留米市旭町C67久留米大学医学部眼科学講座Reprintrequests:TakuyaTsujiCM.D.,DepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicine,67Asahi-machi,Kurume-city,Fukuoka830-0011,JAPANC薬点眼液(以下,PG関連薬),交感神経Cb受容体遮断薬/CAI配合点眼液(以下,Cb遮断薬/CAI配合点眼液),a2刺激薬の多剤点眼を処方されている患者では,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼液,Ca2刺激薬/CAI配合点眼液に処方を変更することで,1日の点眼回数をC5回からC3回へ減らすことができる.今回,久留米大学病院眼科でCPG関連薬,Cb遮断薬/CAI配合点眼液,Ca2刺激薬を含む多剤点眼を処方されていた緑内障患者にこの処方変更を試み,視力,眼圧,角結膜,自覚症状,アドヒアランスへの影響を調査したので報告する.CI対象および方法久留米大学病院眼科にてC2020年C8月.2021年C1月に,PG関連薬,Cb遮断薬/CAI配合点眼液,Ca2刺激薬を含む多剤点眼を処方されていた緑内障患者で,十分なインフォームド・コンセントののち,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼液,Ca2刺激薬/CAI配合点眼液への処方変更を希望したC21例C30問診表(変更前)問1①最近1か月で点眼を忘れてしまったことはありますか?□はい何回忘れましたか?□1回ぐらい□2回ぐらい□3回ぐらい□4回以上ちなみにどの点眼でしたか?()□いいえ②前の質問で「はい」を選択した方へ。1.忘れる時間帯はいつが多いですか?□朝□昼□夕方□寝る前2.理由は何ですか?□点眼する時間帯□点眼回数□点眼本数□さし心地□点眼瓶の操作性(さしにくい)□副作用□忙しい□その他()問2現在の眼の症状は如何ですか?①充血は?(ない012345ある)②刺激は?(ない012345ある)③かゆみは?(ない012345ある)④痛みは?(ない012345ある)⑤かすみは?(ない012345ある)⑥眼のくぼみは?(ない012345ある)⑦まつ毛の伸びは?(ない012345ある)眼を対象とした.なお,PG関連薬からCPG関連薬/Cb遮断薬配合点眼液への処方変更は,変更前後でCPG関連薬が同一成分となるように処方した.変更前にCROCK阻害薬も処方されていた場合は,変更後も使用を継続した.本研究は久留米大学医に関する倫理委員会の承認を得て行い(研究番号C21023),対象症例の診療録を後ろ向きに調査した.薬剤スコアは緑内障点眼薬C1成分をC1点,アセタゾラミド内服C1錠につきC1点とした.矯正視力は,変更前,変更後C1カ月,変更後C3カ月に測定し,それぞれClogMAR視力に変換して統計処理を行った.眼圧は変更前,変更後C1カ月,変更後C3カ月にCGoldmann圧平眼圧計(GoldmannCapplanationtonometer:GAT)を用いて測定した.診療録を用いて変更後に新たに生じた副作用を調査するとともに,変更前,変更後C1カ月の角膜・結膜スコアをそれぞれC3点満点で評価した.アンケート調査は回答結果を主治医には伝えないことを事前に説明したうえで,変更前,変更後C1カ月に診療に直接関与しない研究補助員が聴取した.アンケートの質問項目を問診表(変更後)問1①点眼を変更して、最近1か月で点眼を忘れてしまったことはありますか?□はい何回忘れましたか?□1回ぐらい□2回ぐらい□3回ぐらい□4回以上□いいえ②前の点眼に比べて点眼忘れは減りましたか?□減った□変わらない□増えた③その理由をお聞かせください。④前の質問で「はい」を選択した方へ。1.忘れる時間帯はいつが多いですか?□朝□昼□夕方□寝る前2.理由は何ですか?□点眼する時間帯□点眼回数□点眼本数□さし心地□点眼瓶の操作性(さしにくい)□副作用□忙しい□その他()問2変更する前と比べて、眼の症状に変化はありましたか?①充血は?(ない012345ある)②刺激は?(ない012345ある)③かゆみは?(ない012345ある)④痛みは?(ない012345ある)⑤かすみは?(ない012345ある)⑥眼のくぼみは?(ない012345ある)⑦まつ毛の伸びは?(ない012345ある)問3①変更する前と後ではどちらが良いですか?□変更した後の方が良い□同じ□変更する前の方が良い②その理由をお聞かせ下さい(複数回答可)□1日の点眼回数が少ない□充血しない□しみない□かゆくない□痛くない□かすまない□点眼瓶が使いやすい□薬代が安い□その他図1変更前,変更後1カ月のアンケート図1に示す.変更前,変更後C1カ月,変更後C3カ月の視力,眼圧の比較にはCANOVA,変更前,変更後C1カ月の角膜・結膜スコア,自覚症状の比較には対応のあるCt検定,変更前,変更後C1カ月の点眼忘れの回数の比較にはCWilcoxonCsigned-rankCtestを用いた.統計解析ソフトはCJMP(Ver16.1)を使用し,すべての解析において危険率C5%未満を有意差ありと判断した.CII結果対象はC21例C30眼で,性別は男性C12例C17眼,女性C9例13眼であった.平均年齢はC68.8C±5.0歳であった.平均薬剤スコアはC4.6C±0.2点であった.Humphrey自動視野計中心プログラムC24-2の平均Cmeandeviation値はC.12.7±2.6CdBであった.病型の内訳は,原発開放隅角緑内障C13眼,落屑緑内障C7眼,続発緑内障C2眼,正常眼圧緑内障C2眼,血管新生緑内障C2眼,高眼圧症C2眼,原発閉塞隅角緑内障C1眼,小児緑内障C1眼であった(表1).logMAR視力は変更前C0.16C±0.56,変更後C1カ月C0.17C±0.58,変更後C3カ月C0.19C±0.60,GATによる眼圧は変更前Ca1.91.713.4±2.3CmmHg,変更後C1カ月C13.0C±3.4CmmHg,変更後C3カ月C14.0C±3.3CmmHgであった.視力,眼圧ともに,変更前,変更後C1カ月,変更後C3カ月の間で有意差を認めなかった(図2a,b).PG関連薬とCb遮断薬ごとの内訳では,タフルプロストからタフルプロスト/チモロールへの変更はC12眼表1対象(21例30眼)病型原発開放隅角緑内障落屑緑内障続発緑内障正常眼圧緑内障血管新生緑内障高眼圧症原発閉塞隅角緑内障小児緑内障13眼7眼2眼2眼2眼2眼1眼1眼性別(男/女)12例17眼C/9例13眼年齢C68.8±5.0歳薬剤スコアC4.6±0.2点Humphrey自動視野計中心プログラム24-2CMD値C.12.7±2.6CdBCNS20b1.5NS1510眼圧(mmHg)1.31.10.90.70.50.3logMAR視力50.1-0.1-0.30変更前変更後1カ月変更後3カ月変更前変更後1カ月変更後3カ月NSc20-0.5d20NS15101510眼圧(mmHg)眼圧(mmHg)5500変更前変更後1カ月変更後3カ月変更前変更後1カ月変更後3カ月図2視力,眼圧の推移a:logMAR視力,Cb:GAT,Cc:タフルプロスト/チモロールへ変更したC12眼のCGAT,Cd:ラタノプロスト/チモロールへ変更したC13眼のCGAT.すべてにおいて変更前,変更後C1カ月,3カ月で有意差はなかった.(117)あたらしい眼科Vol.39,No.8,2022C1127a充血b刺激c掻痒感5NS5NS5NS4443331.71.721.2±1.7221.01.00.81.20.5±1.70.6±1.0111000-1-1-1変更前変更後1カ月変更前変更後1カ月変更前変更後1カ月d疼痛e霧視fくぼみNS54NS55443331.51.51.3±1.22220.30.70.2±0.7111000-1-1-1変更前変更後1カ月変更前変更後1カ月変更前変更後1カ月g睫毛の伸び5NS4321.01.80.5±1.210-1変更前変更後1カ月Pairedt-test図3自覚症状の変化すべての項目において変更前,変更後C1カ月で有意差はなかった.図4変更前後でどちらがよいかで,GATは変更前C13.0C±2.7CmmHg,変更後C1カ月C12.5C±3.0CmmHg,変更後C3カ月C13.5C±1.5CmmHgといずれも有意差はなかった(図2c).ラタノプロストからラタノプロスト/チモロールへの変更はC13眼で,GATは変更前C13.8C±2.2CmmHg,変更後C1カ月C12.9C±2.3CmmHg,変更後C3カ月C14.3±5.0CmmHgといずれも有意差はなかった(図2d).トラボプロストからトラボプロスト/チモロール,ラタノプロストからラタノプロスト/カルテオロールへの変更はそれぞれC2眼であり,統計解析は行わなかった.点眼変更後に新たに副作用を認めた症例はC6例(28.5%)あった.内訳は掻痒感C1例(4.8%),結膜炎C2例(9.5%),霧視C3例(14.3%)であった.掻痒感を自覚したC1例ではアイラミド配合懸濁性点眼液の中止を余儀なくされた.角膜スコアは,変更前C0.53C±0.92点,変更後C1カ月C0.43C±0.84点で,変更前後で有意差を認めなかった.結膜スコアは,変更前にC1点以上だった症例はC1眼のみで,変更前のC2点から変更後C1カ月でC1点になった.変更前,変更後C1カ月での自覚症状のアンケート結果を図3に示す.充血,刺激,かゆみ,痛み,かすみ,眼のくぼみ,まつげの伸びのすべての項目で,変更前後で有意差を認めなかった.変更後C1カ月のアンケートでは,「変更後が変更前よりもよい」がC75%,「変更前が変更後よりもよい」がC15%,「変更前後で同じ」がC10%であった(図4).患者の自己申告による点眼忘れの回数は,変更前C0.33C±0.71回,変更後C1カ月C0.09C±0.29回で,変更後に有意に点眼忘れの回数が減少した(p=0.043).III考按緑内障診療ガイドライン(第C4版)では,緑内障の多剤点眼は副作用の増加やアドヒアランスの低下につながることがあり,アドヒアランスの向上のために配合点眼液の使用も考慮すべきと提言している1).今回,久留米大学病院眼科で,PG関連薬,Cb遮断薬/CAI配合点眼液,Ca2刺激薬を含む多剤点眼を処方されていた緑内障患者に対し,配合点眼液をCb遮断薬/CAIのC1種類からCPG関連薬/Cb遮断薬とCa2刺激薬/CAIのC2種類に増やすことで,点眼数および点眼回数を減らすことを試みた.本研究では処方変更の前後で,視力,眼圧に有意な変化を認めなかった.ブリモニジン酒石酸塩とブリンゾラミドの薬剤の組み合わせにおいて,配合点眼液と単剤併用の比較で眼圧下降効果は同等であったことが報告されている2).また,PG関連薬とCb遮断薬の薬剤の組み合わせにおいて,トラボプロスト/チモロール,タフルプロスト/チモロールの配合点眼液ではそれぞれの単剤併用と比べて眼圧下降効果は同等であったが3,4),ラタノプロスト/チモロールの配合点眼液では単剤併用と比べて眼圧下降効果が劣っていたと報告されている5).チモロールの単剤がC1日C2回点眼であるのに対し,配合点眼液ではチモロールがC1日C1回点眼となるため眼圧下降効果が減弱する可能性が指摘されている6).今回の処方変更でもCb遮断薬の点眼回数が変更前のC2回から変更後はC1回と減っているが,処方変更後も同等の眼圧下降効果が得られたのは,点眼忘れの回数が有意に減少するなどアドヒアランスが改善したことも一因としてあるのではないかと思われる.配合点眼液による点眼回数の減少は,アドヒアランスの向上だけでなく,点眼液に含まれる防腐剤などによる角結膜上皮障害を軽減する効果も期待される.ただし,本研究での角膜・結膜スコアは変更前後で明らかな有意差を認めなかった.また,アンケート調査でも,充血,刺激,かゆみ,痛み,かすみ,眼のくぼみ,まつげの伸びのすべての項目で,自覚症状は変更前後で明らかな有意差を認めなかった.今回の処方変更に対するアンケート調査で,「変更後のほうがよい」と答えた症例はC75%であり,そのおもな理由は点眼回数の減少であった.一方で,「変更前のほうがよい」と答えた症例もC15%あり,そのおもな理由は霧視であった.緑内障点眼の耐えられない副作用の一つとして霧視をあげている報告もあり7),もともと懸濁液を含まない多剤点眼からアイラミド配合懸濁性点眼液を含む処方に変更する場合は,点眼後に一過性に霧視を自覚する可能性があることについて十分に説明する必要があると思われる.緑内障の点眼加療は,単剤投与から始めて目標眼圧に達しなければ薬剤変更あるいは追加を行うことが基本であるが,実際の臨床では多剤点眼を処方されている緑内障患者も多い.本研究の結果から,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼液およびCa2刺激薬/CAI配合点眼液への処方変更による点眼数および点眼回数の減少は,点眼加療の効果とアドヒアランスを維持したうえで,患者の満足度向上にもつながる可能性があると思われる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C20182)Gandol.CSA,CLimCJ,CSanseauCACCetal:RandomizedCtrialCofbrinzolamide/brimonidineversusbrinzolamideplusbri-monidineforopen-angleglaucomaorocularhypertension.AdvTherC31:1213-1227,C20143)InoueCK,CSetogawaCA,CHigaCRCetal:OcularChypotensiveCe.ectandsafetyoftravoprost0.004%/timololmaleate0.5%C.xedCcombinationCafterCchangeCofCtreatmentCregimenCfromb-blockersandprostaglandinanalogs.ClinOphthal-molC6:607-612,C20124)桑山泰明,DE-111共同試験グループ:0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたオープンラベルによる長期投与試験.あたらしい眼科C32:133-143,C20155)QuarantaL,BiagioliE,RivaIetal:ProstaglandinanalogsandCtimolol-.xedCversusCun.xedCcombinationsCorCmono-therapyCforopen-angleCglaucoma:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CJCOculCPharmacolCTherC29:382-389,C20136)WebersCA,BeckersHJ,ZeegersMPetal:TheintraocuC-larpressure-loweringe.ectofprostaglandinanalogscom-binedCwithCtopicalCbeta-blockertherapy:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.COphthalmologyC117:2067-2074,C20107)ParkCMH,CKangCKD,CMoonCJCetal:NoncomplianceCwithCglaucomaCmedicationCinCKoreanpatients:aCmulticenterCqualitativestudy.JpnJOphthalmolC57:47-56,C2013***

プロスラグランジン関連薬投与有無別Trabeculotomy Ab Interno,白内障同時手術成績

2022年8月31日 水曜日

《第32回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科39(8):1114.1118,2022cプロスラグランジン関連薬投与有無別TrabeculotomyAbInterno,白内障同時手術成績市岡伊久子市岡博市岡眼科CComparingtheResultsofTrabeculotomyAbInternoCombinedwithCataractSurgerywithorwithoutPreoperativeProstaglandinGlaucomaMedicationIkukoIchiokaandHiroshiIchiokaCIchiokaeyeclinicC目的:術前プロスタグランジン関連薬(以下,PG)点眼がCtrabeculotomyabinternoの術後成績に影響するか否かを後ろ向きに調査した.対象および方法:Trabeculotomyabinterno+白内障手術を施行しC1年以上経過観察した患者のうち,術前にCPGを使用していないC26人C26眼をCPG(.)群,術前にCPGを使用していたC67人C67眼をCPG(+)群として,点眼前,術前眼圧,Humphrey視野CMD値,術C1年後眼圧,生存率(点眼再開なくC15CmmHg未満を生存とする)につき調査した.結果:眼圧は術前,術後ともCPG(.)群,PG(+)群間に有意差を認めなかったが,術前→C1年後眼圧,下降眼圧(%)はCPG(.)群がC15.4±4.0C→C12.1±2.5,3.7±3.6(24%),PG(+)群がC14.3±2.6C→C12.0±2.6,C2.3±3.1(16%)とCPG(.)群の眼圧下降が大きく,6カ月目まで下降眼圧に有意差を認めた(p<0.05).術後C1年目までの点眼開始例はCPG(.)群はC0眼,PG(+)群C12眼に認めたが,生存率に有意差は認めなかった(p=0.072).結論:PG(.)群のほうがCPG(+)群に比し下降眼圧が大きく,PG(+)群に点眼薬再開例が多く,trabeculotomyCabCinterno+白内障手術は術前CPG点眼をしていない患者のほうが予後がよいと思われた.CPurpose:ToCretrospectivelyCcompareCintraocularpressure(IOP)loweringCe.cacyCinCeyesCthatCunderwenttrabeculotomy(LOT)abinternocombinedwithcataractsurgerywithorwithoutpreoperativeprostaglandin(PG)Cglaucomamedication.SubjectsandMethods:Thisretrospectivestudyinvolved93eyesof93patientsthatunder-wentLOTabinternocombinedwithcataractsurgerywithPGglaucomamedication[PG(+),67eyes]andwith-outCPGCglaucomamedication[PG(.),C26eyes]administeredCpriorCtoCsurgery.CInCallC93Ceyes,CweCreviewedCIOP(mean±SD)atbaselineandat1-yearpostoperative,aswellasthepercentagerateofglaucomamedicationadmin-isteredpostsurgery.Results:Nosigni.cantdi.erenceofpre-andpostoperativeIOPwasfoundbetweenthetwogroups.CAtC1-yearCpostoperative,CmeanCIOPCinCthePG(+)groupChadCdecreasedCfromC14.3±2.6CmmHgCtoC12.0±2.6CmmHg[i.e.,C2.3±3.1CmmHg(16%)],CwhileCthatCinCthePG(.)groupChadCdecreasedCfromC15.4±4.0CmmHgCtoC12.1±2.5mmHg[i.e.,3.7±3.6CmmHg(24%)].Asigni.cantdi.erenceofIOPdecreasewasfoundbetweenthetwogroupsupuntil6-monthspostoperative(p<0.05).InthePG(+)groupandPG(.)group,thepercentagerateofglaucomamedicationadministrationpostsurgerywas7%and0%,respectively(p=0.072).CConclusion:Postsur-gery,Csigni.cantCIOPCdecreaseCandCaClowerCpercentageCrateCofCglaucomaCmedicationsCusedCwasCobservedCinCbothCgroups,yetbetteroutcomeswerefoundinthePG(.)group.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(8):1114.1118,C2022〕Keywords:緑内障手術,線維柱帯切開術眼内法,眼圧,プロスタグランジン関連薬,線維柱帯切開術術後成績.Cglaucomasurgery,trabeculotomyabinterno,intraocularpressure,prostaglandinglaucomamedication,successrateoftrabeculotomy.C〔別刷請求先〕市岡伊久子:〒690-0003島根県松江市朝日町C476-7市岡眼科Reprintrequests:IkukoIchioka,M.D.,Ichiokaeyeclinic,476-7Asahi-machi,Matsue,Shimane690-0003,JAPANC1114(104)はじめに低侵襲眼圧下降手術,minimallyCinvasiveCglaucomaCsur-gery(MIGS)の一つとして線維柱帯切開術眼内法(trabecu-lotomyCabinterno.以下,LOTCabinterno)が白内障手術との同時手術として普及してきている.当院でも緑内障点眼薬投与中の白内障手術時には眼圧コントロール良好例であっても点眼薬を中止,減少させる目的でCLOTabinternoを同時に施行しているが,術前点眼内容により術後効果に差があると思われた.緑内障ガイドライン1)では開放隅角緑内障は目標眼圧を設定し単剤より眼圧下降薬を投与し,多剤投与にて眼圧コントロール不良,または視神経,視野所見の悪化を認めるときに手術を考慮するとされている.また,点眼薬についてはプロスタグランジン関連薬(以下,PG薬)がもっとも優れた眼圧下降効果,点眼回数より第一選択薬として使用されていると記載されている.LOTCabinterno手術時,PG薬使用期間が長い患者では線維柱帯切開術時の血液逆流が少ない印象がある.PG薬はぶどう膜強膜流出路である副流出路の流出を増加させる点眼薬2.3)だが,主経路に対してはむしろ流出低下をきたす可能性も考えられる4).主経路再建術であるCLOTabinternoがCPG薬投与により手術効果が低下するかどうかを調査した報告はない.今回当院でのCLOTCabinterno手術成績をCPG薬投与の有無別に後ろ向きに調査し,1年後までの成績を比較検討した.CI対象および方法対象は当院で2016年2月.2019年12月にLOTCabinternoと白内障手術を同時施行したC93人(男性C30人,女性C63人)で,平均年齢C75.4C±7.8歳である.術前にCPG薬を投与していたCPG(+)群C67眼とCPG薬を投与していないCPG(.)群C26眼に分けた(合計C93眼,右眼C52眼,左眼C41眼).両眼手術例は先に手術を施行した眼のデータのみ使用した.手術はすべて同一術者により施行された.眼内レンズ挿入後に上方切開創よりCShinskyフック(直)を挿入し,SwanJacobゴニオプリズムを用い下方約90°の線維柱帯を切開した.術前,術後C1.3,6,12カ月後の眼圧と眼圧下降薬数,術後合併症,再手術の有無を後ろ向きに調査した.また,点眼薬投与前のベースライン眼圧,初診時と術前のCHum-phrey視野Cmeandeviation(MD)値についても調査した.術前術後の眼圧をCFriedman検定を用い評価,術後C1年間の眼圧下降幅を群別に比較検討(Mann-WhitneyU検定),PG(.)群の術前点眼薬別についても調査,検討した(Kruskal-Wallis検定).術後の投薬は全例いったん眼圧下降薬をすべて中止し,眼圧がC15CmmHgを超えた時点,または光干渉断層計(OCT)や静的視野検査で明らかな進行を認めた時点で点眼薬を再投与,追加しており,術前CPG薬の有無別に術後点眼薬を開始した場合を死亡と定義し,Kapran-Meierの生存曲線およびCLogranktestを用い評価した.調査については島根県医師会倫理審査委員会の承認を得た.CII結果PG(C.)群は緑内障点眼薬投与なしC6眼,イソプロピルウノプロストンC13眼,Cb遮断薬7眼の計26眼でCPG(+)群は全例プロスタグランジンCF2Ca誘導体(PG)薬C1剤使用例67眼である.PG(C.)群とCPG(+)群の年齢,初診時と術前のCHumphrey視野CMD,点眼前眼圧,術前眼圧を表1に示す.年齢,初診時CMD,術前CMD値に両群で有意差はなく,点眼前ベースライン眼圧(mmHg)はCPG(C.)群C17.4C±4.6,PG(+)群C18.0C±3.2とCPG(+)群が高く,術前眼圧(mmHg)はCPG(C.)群C15.4C±4.0,PG(+)群C14.3C±2.6とPG(C.)群のほうが高めだが,点眼前眼圧,術前眼圧ともに2群に有意差は認めなかった(Mann-WhitneyU検定).術後1年の眼圧はPG(C.)群C12.1C±2.5,PG(+)群C12.0C±2.6,計C12.0C±2.6CmmHgで両群とも術後C1カ月からC1年目まで術前とは有意な眼圧低下を認めた(p<0.01,Friedman検定).術後C1.6カ月までCPG(C.)群の平均眼圧がCPG(+)群よりやや低かったが両群の眼圧に有意差はなかった(図1).平均下降眼圧はCPG(+)群に比しCPG(C.)群で大きく,術後C6カ月間は下降眼圧に有意差を認めた(1,2カ月Cp<0.01,3,6カ月p<0.05,Mann-WhitneyU検定)(図2).表1PG(.)群とPG(+)群の背景年齢(歳)初診時CMDHumphrey視野術前CMDHumphrey視野点眼前眼圧(mmHg)術前眼圧(mmHg)PG(C.)群(2C6眼)C72.7±7.8(49.82)C.3.2±4.9(.14.4.+1.5)C.4.8±5.2(.17.6.+1.2)C17.4±4.6(8.26)C15.4±4.0(9.26)PG(+)群(6C7眼)C76.5±7.6(59.91)C.2.7±3.2(.11.5.+3.5)C.4.9±4.5(.20.4.+0.5)C18.0±3.2(11.24)C14.3±2.6(9.20)CMann-WhitneyU検定Cp=0.98Cp=0.57Cp=0.20Cp=0.95Cp=0.21年齢,初診時,術前CMD,点眼前眼圧,術前眼圧すべてで両群間に有意差を認めなかった.(Mann-WhitneyU検定)(105)あたらしい眼科Vol.39,No.8,2022C1115p<0.01(Friedman検定)図1PG薬有無別点眼前,術前,術後の眼圧経過両群とも術後C1カ月からC1年目まで術前とは有意な眼圧低下を認めた(p<0.01,Friedman検定).**:p<0.01(Mann-WhitneyU検定)*:p<0.05(Mann-WhitneyU検定)図2PG点眼薬有無別の眼圧経過平均下降眼圧幅はCPG(+)群に比しCPG(C.)群で大きく,術後C6カ月目まで平均下降眼圧に有意差を認めた.(1,2カ月p<0.01,3,6カ月p<0.05,Mann-WhitneyU検定)1年後の平均下降眼圧はCPG(C.)群がC3.7C±3.6,PG(+)群がC2.3C±3.1,計C2.7C±3.3CmmHgとCPG(C.)群はC24%,PG(+)群はC16%,全体でC18%の眼圧下降率であった.なお,PG(C.)群の内訳別C1年後下降眼圧は術前降眼圧薬なし(6眼)4.2C±5.0CmmHg,イソプロピルウノプロストン±7.遮断薬(6眼)3Cb1.9mmHg,C±(11眼)3.65.0mmHgでC術前点眼薬を使用していない例で下降眼圧が大きいが症例数が少なく,内訳別の下降眼圧に有意差は認めなかった(Krus-kal-Wallis検定).点眼薬は術前平均C0.96剤が術C1年後C0.1剤となり,1年後にCPG(C.)群では点眼薬を再投与した例はなく,PG(+)群ではC8眼にC1剤,4眼にC2剤再投与していた.生存率分析では点眼薬投与していない生存率はCPG(C.)群C100%,PG(+)群C93%でありCLogrank検定でCp=0.072で有意差は認めなかった(図3).術後合併症は術後C20CmmHg以上の一過性眼圧上昇をCPG(C.)群ではC26眼中C1眼,PG(+)群ではC67眼中C7眼に認め,術後早期の前房洗浄施行例がCPG(+)群にC1眼あった.両群とも他の合併症や追加緑内障手術が必要になった例はなかった.CIII考按LOTCabinternoはC2017年にCTanitoらが眼内から施行する,MIGSとして報告した方法で,白内障手術との同時手術成績で眼圧がC16.4C→C11.8CmmHg(28%),投薬数C2.4C→C2.1剤と報告した5).近年白内障手術との同時手術として一般的になってきていると思われる.今回の手術成績は術後C1年で2.7CmmHg,18%の眼圧下降,0.96C→C0.1剤への投薬減少と既報5,6)と遜色のない効果を得ていた.今回,後ろ向き調査のため術前CPG薬の有無はランダムに点眼薬を振り分けているわけではないがCPG薬非投与群は初回点眼薬選択の際あえてCPG薬を避けイソプロピルウノプロストン,Cb遮断薬(カルテオロール)を意図的に処方していた例である.また,術前点眼薬を投与していない症例は白内障による視力低下を初診時より認めた緑内障例で,点眼薬を開始せず早期に同時手術を施行した例である.PG(C.)群C26眼,PG(+)群C67眼と症例数に差があるが,初診時眼圧,初診時CHumphrey視野CMD値,術前眼圧,術前CMD値はC2群に有意差は認めなかった.中等度進行例も含まれるがおもにC1剤点眼投与症例で軽度から中等度の緑内障であり,LOTabinternoのよい適応例と思われる.術後は両群とも術前に比し有意な眼圧下降を認めた.1年後下降眼圧はCPG(C.)群がC3.7C±3.6CmmHg(24%),PG(+)群がC2.3±3.1CmmHg(16%)とCPG(C.)群に良好な眼圧下降を認めた.1年間の術後眼圧は両群に有意差を認めず,PG(C.)群の眼圧下降効果はCPG(+)群のPG薬+LOTCabCinterno効果に相当すると思われた.しかし,1年間に眼圧がC15mmHg未満で点眼薬を再開しなかった生存率がCPG(C.)群100%,PG(+)群C93%で,症例数の違いもありCp=0.072と有意差を認めなかったが,PG(C.)群のほうが術後のコントロールが良好だと思われた.術前点眼薬別の術後一過性眼圧上昇,前房出血については線維柱帯切開術の特徴として一定の割合できたす可能性があるが,両群とも追加緑内障手術が必要になった例はなかった.今回降眼圧薬を投与していなかったC6眼は平均C4.2CmmHgともっとも良好な眼圧降下を得た.PG(C.)群中では点眼薬投与なし,Cb遮断薬,イソプロピルウノプロストン順に眼圧下降を認めたが,症例数の違いもあり有意差は認めなかった.イソプロピルウノプロストンはCPG関連薬ではあるが,イオンチャンネル開口薬で緑内障患者の主経路からの房水流出の促進効果があるとされている.Cb遮断薬点眼例も術後下降眼圧が大きく,PG薬以外の点眼薬は眼圧下降効果が少ないため,手術効果が高かった可能性がある.TanitoらもCLOTabinterno効果は術前眼圧が高い群で下降率が高いことを報告6)しており,PG薬投与群のほうが術前眼圧が低いことが効果が劣る一因と思われた.筆者らは以前,術前点眼薬別に術後眼圧を調査しており,点眼薬数が多いほど術後眼圧が高い傾向があり,点眼薬を使1.00.80.60.40.20.0TimeNumberatriskPG(-)25242424232323PG(+)67666161555555p=0.072(Logrank検定)図3PG薬有無別生存率PG(C.)群では点眼薬を再開した例はなく,眼圧C15CmmHgで点眼薬を再開した例を死亡とすると生存率はCPG(C.)群C100%,PG(+)群はC3%であったが,両群に有意差は認めなかった.(p=0.072,Logrank検定)用していなかった例では,点眼薬C1剤,2剤使用例と下降眼圧に有意差を認めることを報告した7).今回の結果では,点眼薬C1剤使用例でもCPG(C.)群は(+)群に比し下降眼圧が有意に大きいだけではなく,術後C1年間の点眼薬開始も抑えられていた.線維柱帯を経由する房水排出は圧依存性でコントロールされていることが知られている8).PG薬は緑内障ガイドラインからも第一選択薬とされており,もっとも良好な眼圧下降効果が得られる薬剤であるが,奏効機序はぶどう膜強膜流出促進である2,3).TrueGabeltBAらはサルの実験でCPG薬使用によりぶどう膜強膜流出が増加し眼圧が下降するが線維柱帯を経由する房水流出量はコントロールに比し1/3程度に減少すると報告している4).緑内障の原因として傍CSchlemm管結合組織での細胞外マトリクス蓄積,線維柱帯細胞の虚脱,Schlemm管の狭小化などが多数報告されており8.10),このような変化は徐々に悪化すると思われる.また,Grieshaberらは線維柱帯以降の流出路の機能の悪化がcanaloplastyの効果に影響すると報告11),Hannらは開放隅角緑内障ではCSchlemm管と集合管に狭小化を認めることを報告12)している.Johnsonらは濾過手術後にCSchlemm管狭窄がみられることを報告し,房水が線維柱帯,Schlemm管を迂回し濾過胞に流出することで傍CSchlemm管結合組織,集合管への細胞外マトリックスの異常沈着が起きることを報告している13).PG薬も主流出路の流出量が減少し,同様の変化をきたしている可能性が考えられる.また,プロスタグランジンCFC2aはCFP受容体に作用し肺線維症の原因となるProbability024681012という報告14)もあり,PG薬投与による主経路に対する長期の組織変化については不明だが,線維柱帯の流出障害の一因となっている可能性も考えられる.2019年,Gazzardらは選択的レーザー線維柱帯形成術(selectiveClaserCtrabeculo-plasty:SLT)と点眼治療を比較し,治療後C3年でCSLT群74.2%は点眼追加なしで目標眼圧を達成し,SLT群(93%)は点眼薬群(91.3%)より多い症例で目標眼圧を達成,緑内障追加手術が必要であった例はCSLT群C0例に対し点眼薬群11例だったと報告している15).房水流出主経路の治療として早期治療がより良好な結果を得られるという点では今回のLOTabinternoの手術結果と類似している.以前より線維柱帯切開術は外側切開で施行されており,術前眼圧はC20CmmHg以上の例に施行することが多く,術後眼圧はC12.16CmmHgの報告が多いが,線維柱帯,Schlemm管,また集合管.上強膜静脈までの流出路機能障害の程度によって結果が左右されると思われる.PG薬は眼圧下降作用が強く緑内障治療として必要不可欠な薬ではあるが,白内障合併例などでは房水流出主経路の機能低下が悪化する前に早期のCLotCabinternoも選択に入れると良好な効果が得られる可能性があると思われた.今回CPG薬使用有無の両群の症例数に差があり,前向き試験ではないため点眼薬選択基準もランダムではない可能性があった.また,点眼薬投与せずに手術した症例も少なく,経過観察期間がC1年と短いため,PG点眼薬の有無や点眼薬投与なしでの手術効果の検証をするには症例数を増やし調査,検討する必要があると思われた.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C20182)CrawfordCK,CKaufmanPL:PilocarpineCantagonizesCpros-taglandinCF2Calpha-inducedCocularChypotensionCinCmon-keys.Evidenceforenhancementofuveoscleralout.owbyprostaglandinCF2Calpha.CArchCOphthalmolC105:1112-1116,C19873)NilssonSFE,SamuelssonM,BillAetal:Increaseduveo-scleralout.owasapossiblemechanismofocularhypoten-sionCcausedCbyCprostaglandinCF2Calpha-1-isopropylesterCinCtheCcynomolgusCmonkey.CExpCEyeCResC48:707-716,C1989C4)TrueCGabeltCBA,CKaufmanPL:ProstaglandinCF2aincreasesCuveoscleralCout.owCinCtheCcynomolgusCmonkey.CExpEyeResC49:389-402,C19895)TanitoCM,CIkedaCY,CFujiharaE:E.ectivenessCandCsafetyCofCcombinedCcataractCsurgeryCandCmicrohookCabCinternotrabeculotomyinJapaneseeyeswithglaucoma:reportofaninitialcaseseries.JpnJOphthalmolC61:457-464,C20176)TanitoCM,CSugiharaCK,CTsutsuiCACetal:E.ectsCofCpreop-erativeCintraocularCpressureClevelConCsurgicalCresultsCofCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomy.CJCClinCMedC10:C3327,C20217)市岡伊久子,市岡博:TrabeculotomyCAbInterno,白内障同時手術の術後C1年の成績,術前術後の点眼数の変化より.あたらしい眼科38:1085-1089,C20218)StamerWD,AcottTS:Currentunderstandingofconven-tionalCout.owCdysfunctionCinCglaucoma.CCurrCOpinCOph-thalmolC23:135-143,C20129)VecinoE,GaldosM,BayonAetal:Elevatedintraocularpressureinducesultrastructuralchangesinthetrabecularmeshwork.CJCCytolCHistolCS3,doi:10,C4172/2157-7099,C201510)YanX,LiM,ChenZetal:Schlemm’scanalandtrabecuC-larCmeshworkCinCeyesCwithCprimaryCopenCangleCglauco-ma:ACcomparativeCstudyCusingChigh-frequencyCultra-soundbiomicroscopy.PLoSOneC11:e0145824,C201611)GrieshaberMC,PienaarA,OlivierJetal:Clinicalevalua-tionoftheaqueousout.owsysteminprimaryopen-angleglaucomaforcanaloplasty.InvestOphthalmolVisSciC51:C1498-1504,C201012)HannCCH,CVercnockeCAJ,CBentleyCMDCetal:AnatomicCchangesinSchlemm’scanalandcollectorchannelsinnor-malCandCprimaryCopen-angleCglaucomaCeyesCusingClowCandChighCperfusionCpressures.CInvestCOphthalmolCVisCSciC55:5834-5841,C201413)JohnsonCDH,CMatsumotoY:SchlemmC’sCcanalCbecomesCsmallerCafterCsuccessfulC.ltrationCsurgery.CArchCOphthal-molC118:1251-1256,C200014)OgaCT,CMatsuokaCT,CYaoCCCetal:ProstaglandinCF2areceptorCsignalingCfacilitatesCbleomycin-inducedCpulmo-naryC.brosisCindependentlyCofCtransformingCgrowthCfac-tor-b.NatMedC15:1426-1430,C200915)GazzardG,KonstantakopoulouE,Garway-HeathDetal:CSelectivelasertrabeculoplastyversuseyedropsfor.rst-lineCtreatmentCofCocularChypertensionCandCglaucoma(LiGHT):amulticentrerandomisedcontrolledtrial.Lan-cetC393:1505-1516,C2019***

正常眼圧緑内障に対する白内障同時線維柱帯切開術の 3 年成績

2022年7月31日 日曜日

《第32回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科39(7):968.973,2022c正常眼圧緑内障に対する白内障同時線維柱帯切開術の3年成績柴田真帆豊川紀子植木麻理黒田真一郎永田眼科CThree-YearOutcomesofTrabeculotomywithPhacoemulsi.cationinNormalTensionGlaucomaMahoShibata,NorikoToyokawa,MariUekiandShinichiroKurodaCNagataEyeClinicC目的:正常眼圧緑内障に対する白内障同時線維柱帯切開術の術後C3年成績を検討する.対象および方法:永田眼科においてC2015年C1月.2017年C12月に,正常眼圧緑内障に対して白内障同時線維柱帯切開術を施行した患者のうち,6カ月以上経過観察できたC59眼を対象とした.診療録から後ろ向きに眼圧,緑内障薬の点眼数,3年生存率,平均偏差(meandeviation:MD)値,併発症について検討した.結果:術前眼圧C15.4±1.8はC3年後C12.5±2.3CmmHgへ有意に下降した.14,12CmmHg以下C3年生存率はそれぞれC77.2%,32.3%,眼圧下降率C20%,30%以上のC3年生存率はそれぞれC32.5%,18.6%であった.術前後C3回以上視野測定のできたC16眼では,MDスロープが.0.51±0.9から術後.0.0075±0.9CdB/Yへ有意に改善した.このうち術後CMDスロープが.0.5CdB/Y以上のものを停止群(13眼),それ未満のものを進行群(3眼)とした場合,それぞれの術後眼圧経過に有意差はなかったが,進行群では有意に術前CMDスロープが低値であった.併発症として一過性高眼圧をC5眼に認めた.結論:正常眼圧緑内障に対する白内障同時線維柱帯切開術は,術後有意な眼圧下降を認め視野障害進行抑制効果があったが,術前に視野障害進行の速かった例では術後も進行する傾向がみられた.CPurpose:ToCevaluateCtheC3-yearCoutcomesCoftrabeculotomy(LOT)withCphacoemulsi.cationCinCnormal-ten-sionglaucoma(NTG)patients.CSubjectsandMethods:WeCretrospectivelyCreviewedCtheCmedicalCrecordsCofC59CNTGCeyesCthatCunderwentCLOTCwithCphacoemulsi.cationCatCtheCNagataCEyeCClinic,CNara,CJapanCbetweenCJanuaryC2015CandCDecemberC2017CandCthatCcouldCbeCfollowedCforCatCleastC6-monthsCpostoperative.CIntraocularCpressure(IOP),glaucomamedications,meandeviation(MD),surgicalsuccess,andpostoperativecomplicationswereinvesti-gated.Surgicalsuccesswasde.nedasanIOPof≦14CmmHgand12CmmHg,andanIOPreductionof≧20%Cand≧30%CbelowCbaselineCwithCorCwithoutCglaucomaCmedications.CResults:AtC3-yearsCpostoperative,CmeanCIOPCwasC12.5±2.3CmmHg,CaCsigni.cantCreductionCcomparedCtoCthatCatbaseline(15.4±1.8CmmHg),CandCtheCsurgicalCsuccessCratesCwere77.2%(IOP≦14CmmHg),32.3%(IOP≦12CmmHg),32.5%(IOPCreduction≧20%),Cand18.6%(IOPreduction≧30%).In16eyesthathadundergonepreoperativeandpostoperativevisual.eldexaminationatleast3Ctimes,CtheCmeanCMDCslopeCsigni.cantlyCimprovedCfromC.0.51±0.9CdB/YCpreoperativelyCtoC.0.0075±0.9CdB/Ypostoperatively.Whenthose16eyesweredividedintoanon-progressgroup(postoperativeMDslope≧.0.5CdB/CY,C13eyes)andCaCprogressgroup(postoperativeCMDCslope<.0.5CdB/Y,C3eyes),CnoCsigni.cantCdi.erenceCinCtheCcourseofpostoperativeIOPwasfoundbetweenthetwogroups,whereasthemeanpreoperativeMDslopeintheprogressgroupwassigni.cantlylowerthanthatinthenon-progressgroup.PostoperativecomplicationsincludedIOPCspikesCof>30CmmHg(n=5eyes).Conclusions:InCNTGCpatients,CLOTCwithCphacoemulsi.cationCshowedCsigni.cante.cacyinreducingIOPandsuppressionofvisual.eldprogressupto3-yearspostoperative.However,incaseswithahighervisual.eldprogressionrate,visual.eldtendedtoprogressevenaftersurgery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(7):968.973,C2022〕Keywords:線維柱帯切開術,正常眼圧緑内障,眼圧,視野障害進行.trabeculotomy,normaltensionglaucoma,intraocularpressure,visual.eldprogression.C〔別刷請求先〕柴田真帆:〒631-0844奈良市宝来町北山田C1147永田眼科Reprintrequests:MahoShibata,M.D.,Ph.D.,NagataEyeClinic,1147Kitayamada,Horai,Nara-city,Nara631-0844,JAPANC968(114)はじめに線維柱帯切開術(trabeculotomy.以下,LOT)は,傍Schlemm管内皮網組織を切開し房水流出抵抗を下げることで眼圧を下降させる生理的房水流出路再建術である.これまで白内障との同時手術を含め多数の長期成績1.6)が示され,Schlemm管外壁開放術(sinusotomy:SIN)と深層強膜弁切除(deepsclerectomy:DS)の併用で術後一過性高眼圧の減少と眼圧下降増強効果が報告されている2.6).適応病型は原発開放隅角緑内障(primaryCopenangleCglaucoma:POAG),小児緑内障,落屑緑内障,ステロイド緑内障とされるが,正常眼圧緑内障(normalCtensionglaucoma:NTG)に限定した術後成績報告は少ない.これはCPOAGに対するLOT単独の術後眼圧がC18mmHg前後1),白内障手術(phacoemulsi.cationCandCintraocularClensimplantation:CPEA+IOL)+LOT+SIN+DSの術後眼圧が15mmHg前後3,4)であることから適応症例に限界があるためと考えられ,NTGに対するCLOTの術後成績評価は十分ではなかった.今回,NTGに対するCPEA+IOL+LOT+SIN+DSの3年成績を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2015年C1月.2017年C12月に永田眼科において,NTGに対しCPEA+IOL+LOT+SIN+DSを施行した連続症例C72眼のうち,術後C6カ月以上経過観察できたC59眼を対象とした(経過観察率C82%).緑内障手術既往眼は含まれていない.診療録から後ろ向きに,術後C3年までの眼圧,緑内障治療薬の点眼数,平均偏差(meandeviation:MD)値,目標眼圧(12,14CmmHg以下,眼圧下降率C20%,30%以上)におけるC3年生存率,術後追加手術介入の有無と併発症を調査,検討した.本研究は永田眼科倫理委員会で承認された.NTGの診断基準は,無治療もしくは緑内障治療薬を中止しC3回以上の眼圧測定でC21CmmHgを超えないもので,正常開放隅角,緑内障性視神経乳頭変化と対応する視野変化があり,視神経乳頭の変化を起こしうる他疾患なし,の条件を満たすものである7).CPEA+IOL+LOT+SIN+DSの術式は既報5)に準じ,すべての症例でCLOTを下方象限で施行しCSINとCDSを併用,CPEA+IOLは上方角膜切開で施行した.検討項目は,術前の眼圧と緑内障治療薬数,術後1,3,6,12,18,24,30,36カ月目の眼圧と緑内障治療薬数,目標眼圧をC12,14CmmHg以下,眼圧下降率C20%,30%以上としたC3年生存率,術前後のCMD値とCMDスロープ,術後合併症とした.MDスロープについては,術前後でCHumphrey視野検査CSITA-Standard30-2が信頼性のある結果(固視不良<20%,偽陽性<33%,偽陰性<33%)でC3回以上測定できたC16眼について検討し,術前後で比較した.緑内障治療薬数について,炭酸脱水酵素阻害薬内服はC1剤,配合剤点眼はC2剤として計算し,合計点数を点眼スコアとした.生存率における死亡の定義は,緑内障治療薬の有無にかかわらず,術後C3カ月以降C2回連続する観察時点でそれぞれの目標眼圧を超えた時点,もしくは追加観血的手術が施行された時点とした.解析方法として,術後眼圧と点眼スコアの推移にはCone-wayanalysisofvariance(ANOVA)とDunnettの多重比較,生存率についてはCKaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成した.術前後のCMDスロープの比較には対応のあるCt検定,術後CMDスロープの差による群間比較にはCt検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.CII結果表1に全症例の患者背景を示す.42例C59眼の平均年齢はC73.5±5.6歳,平均ベースライン眼圧はC17.3C±2.6CmmHg,術前平均点眼スコアC2.1C±1.1による術前平均眼圧はC15.4C±1.8mmHg,術前平均CMD値はC.11.9±7.7CdB(平均C±標準偏差)であった.図1に眼圧経過を示す.術C3年後の平均眼圧はC12.5C±2.3CmmHgであり,術後すべての観察期間で有意な下降を認めた(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest).図2に点眼スコア経過を示す.術前C2.1C±0.1の点眼スコアは術C3年後C1.2C±0.2(平均C±標準誤差)であり,すべての観察期間で有意な減少を認めた(p<0.01,CANOVA+Dun-nett’stest).図3にCKaplan-Meier生命表解析を用いた目標眼圧(12,14mmHg)ごとの生存曲線を示す.成功基準を12,14CmmHg以下とした場合,術C3年後の生存率はそれぞれ32.3%,77.2%であった.図4にCKaplan-Meier生命表解析を用いた目標眼圧下降率(20,30%)ごとの生存曲線を示す.成功基準を眼圧下降率20%,30%以上とした場合,術C3年後の生存率はそれぞれ32.5%,18.6%であった.図5に術前後CMDスロープの平均値比較と散布図を示す.MDスロープについては,術前後でCHumphrey視野検査30-2がC3回以上測定できたC16眼について検討し,平均CMDスロープは術前.0.51±0.9から術後C.0.0075±0.9CdB/Yへ有意に改善した(p=0.02,pairedttest).視野平均観察期間は術前後でそれぞれC95.5C±54.5カ月,37.1C±13.4カ月であった.症例ごとの術前後CMDスロープ値を散布図に示した.術後も.0.5CdB/Yを超える視野障害進行例をC3眼認めた.術後CMDスロープ値がC.0.5CdB/Y以上のものを停止群(13眼),それ未満のものを進行群(3眼)とした場合,進行群で術前CMDスロープが有意に低値であった.年齢,術前眼圧,術前点眼スコア,術前CMD値,術後眼圧経過には群間で有表1患者背景症例数42例眼数59眼平均年齢C73.5±5.6(5C9.C87)歳男:女17:2C5右:左33:2C6ベースライン眼圧C17.3±2.6(1C2.C20)CmmHg術前眼圧C15.4±1.8(1C1.C19)CmmHg術前点眼スコアC2.1±1.1(0.4)術前CMD値C.11.9±7.7(C.0.86.C.31.84)CdB(mean±SD)(range)C20意差を認めなかった(表2).併発症として,30mmHgを超える一過性高眼圧をC5眼(8.5%)に認めたが,炭酸脱水酵素阻害薬内服もしくは一時的緑内障治療薬の点眼追加による保存的加療のみで軽快した.3Cmmを超える前房出血を認める症例はなかった.経過中に追加緑内障手術を必要とした症例はなかった.CIII考按NTGに対するCPEA+IOL+LOT+SIN+DSの術後3年成績を検討した.平均眼圧はC15.4C±1.8CmmHgからC3年後に眼圧(mmHg)181614121086420術前1M3M6M12M18M24M30M36M観察期間(mean±SD)n595959595552515049図1眼圧経過術後すべての観察期間で有意な下降を認めた(*p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest).C2018点眼スコア1614121086420術前1M3M6M12M18M24M30M36M観察期間(mean±SD)n595959595552515049図2点眼スコア経過術後すべての観察期間で有意な減少を認めた(*p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest).100908077.2%7060504032.3%302014mmHg以下1012mmHg以下00510152025303540生存期間(M)図312,14mmHg以下3年生存率12,14CmmHg以下C3年生存率はそれぞれC32.3%,77.2%であった.生存率(%)生存率(%)1009080706050403020100020%mmHg以下30%mmHg以下32.5%18.6%510152025303540生存期間(M)図4眼圧下降率20%,30%以上3年生存率眼圧下降率C20%,30%以上C3年生存率はそれぞれC32.5%,18.6%であった.12.5±2.3CmmHgと有意に下降し,PEA+IOL+LOT+SIN+DSはCNTGに対しても有意な眼圧下降が得られる術式と考えられた.POAGにおけるCPEA+IOL+LOT+SIN+DSの報告3,4)と比較すると,今回の結果ではC14CmmHg以下C3年生存率がC77.2%であり,術前眼圧値が低いため眼圧値による生存率は良好であった.しかし,眼圧下降率C20%以上・30%以上C3年生存率はそれぞれC32.5%,18.6%であり,NTGにおいてCPEA+IOL+LOT+SIN+DSは10台前半の眼圧を目標とするには限界がある術式と考えられた.術後MDslope(dB/Y)術前後のCMDスロープ比較では,術前C.0.51±0.9CdB/YCから術後.0.0075±0.9CdB/Yへ有意な改善が得られた.今-3-2-10123回の研究では術前平均CMDスロープがC.0.51±0.9CdB/Yと術前MDslope(dB/Y)視野障害進行は緩徐であり,症例群にはCMD値の低い白内障による感度低下症例を含むため,術後CMDスロープの改善は白内障手術による感度上昇の可能性があるが,今回のように術前ベースライン眼圧がChighteenの場合,PEA+IOL+LOT+SIN+DSは眼圧下降効果と点眼スコアの減少とともに,視野障害進行抑制効果がある可能性が考えられた.しかし,術後視野障害進行群と停止群の比較では,術後の眼圧経過は両群で同等であったが術前CMDスロープ値に有意差を認め,術前視野障害進行の早い症例では,PEA+IOL+術前術後p値MDスロープ(dB/Y)-0.51±0.9-0.0075±0.90.02*(mean±SD)(*pairedttest)図5術前後のMDスロープ比較○初期:MD≧.6dB,●中期:C.12dB≦MD<C.6dB,▲後期:MD<.12CdB.平均CMDスロープは術後有意に改善した.術後C.0.5CdB/Yを超える視野進行例(点線で囲む)をC3眼認めた.表2術後MDスロープ値による比較停止群進行群術後CMDスロープC術後CMDスロープp値≧.0.5CdB/Y<.0.5CdB/Y眼数C133年齢(歳)C72.3±5.5C65.0±4.4C0.05術前眼圧(mmHg)C15.0±1.8C14.7±1.5C0.77術前点眼スコアC2.5±0.8C2.0±1.0C0.34術前CMD値(dB)C.9.07±5.1C.8.50±2.5C0.79術前CMDslope(dB/Y)C.0.19±20.7C.1.91±0.7C0.001*術後平均眼圧C12.0±0.4C11.6±1.1C0.27(1.36M)(mmHg)術後平均眼圧下降率C18.9±2.7C21.9±6.9C0.29(1.36M)(%)術後CMDslope(dB/Y)C0.34±0.6C.1.52±0.3C0.0005*LOT+SIN+DSは視野障害進行抑制効果が弱いと考えられた.視野障害進行の早い患者には,濾過手術を選択せざるを得ないかもしれない.視野障害進行のあるCNTGに手術加療を行い術後の視野障害進行阻止を検証した報告8.13)は多いが,いずれも線維柱帯切除術である.長期の視野障害進行抑制にはC20%以上の眼圧下降もしくはC10CmmHg未満の眼圧維持が必要であると報告8)されている.NTGにおける眼圧下降の有効性を検証したCCollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaCStudy(CNTGS)の報告14,15)では,濾過手術によるC20%の眼圧下降で視野C5年維持率がC80%であったとされ,この報告はCNTGへの濾過手術を意義の高いものにした.しかし,濾過手術では低眼圧による視力低下や濾過胞感染など術後合併症による視機能への影響も無視できない16,17).今回の研究でCPEA+IOL+LOT+SIN+DSの術後併発症は一過性高眼圧のみであった.NTGはきわめて経過の長い慢性疾患であり,手術加療の適応には患者別の判断が必要とされる.視野障害進行程度,白内障進行の有無,年齢や余命などを考慮した場合,患者によってはCPEA+IOL+LOT+SIN+DSの適応があると考えられた.本研究にはいくつかの限界がある.本研究は後ろ向き研究であり,その性質上結果の解釈には注意を要する.術式選択の適応,術後眼圧下降効果不十分症例に対する追加点眼や追加手術介入の適応と時期は,病期に基づく主治医の判断によるものであり,評価判定は事前に統一されていない.また,象が少数例であることから,今後多数例での検討が必要であると考える.今回の研究でCMDスロープ比較は術前後にHumphrey視野検査C30-2がC3回以上測定できたC16眼について検討したが,視野障害進行判定にはC5回の視野測定が必要であるとの報告18)があり,視野障害進行判定が不十分であった可能性がある.また術後C6カ月以上経過観察できた症(mean±SD)(*t-test)例群であり,手術から最終視野検査までの期間は進行群(884C±90Cdays)と停止群(1,166C±430Cdays)で統計的有意差はないが(p=0.23,CMann-WhitneyCUtest),視野障害進行判定には術後観察期間が不十分であった可能性があり,今後さらなる長期観察が必要であると考える.今回の検討の結果,NTGに対するCPEA+IOL+LOT+SIN+DSは術後有意な眼圧下降を認め,視野障害進行抑制効果があり,患者によっては適応があると考えられた.一方,術前に視野障害進行の速い患者では術後も進行する可能性があり,時機を逸することなく濾過手術を選択せざるをえないと思われた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)TaniharaH,NegiA,AkimotoMetal:Surgicale.ectsoftrabeculotomyCabCexternoConCadultCeyesCwithCprimaryCopenCangleCglaucomaCandCpseudoexfoliationCsyndrome.CArchOphthalmolC111:1653-1661,C19932)溝口尚則,黒田真一郎,寺内博夫ほか:開放隅角緑内障に対するシヌソトミー併用トラベクロトミーの長期成績.日眼会誌C100:611-616,C19963)松原孝,寺内博夫,黒田真一郎ほか:サイヌソトミー併用トラベクロトミーと同一創白内障同時手術の長期成績.あたらしい眼科19:761-765,C20024)後藤恭孝,黒田真一郎,永田誠:原発開放隅角緑内障におけるCSinusotomyおよびCDeepCSclerectomy併用線維柱帯切開術の長期成績.あたらしい眼科C26:821-824,C20095)豊川紀子,多鹿三和子,木村英也ほか:原発開放隅角緑内障に対する初回CSchlemm管外壁開放術併用線維柱帯切開術の長期成績.臨眼C67:1685-1691,C20136)南部裕之,城信雄,畔満喜ほか.:下半周で行った初回Schlemm管外壁開放術併用線維柱帯切開術の術後長期成(118)績.日眼会誌C116:740-750,C20127)TheCJapanCGlaucomaCSocietyCGuidelinesCforGlaucoma(4thEdition)C.NipponGankaGakkaiZasshiC122:5-53,C20188)AoyamaA,IshidaK,SawadaAetal:TargetintraocularpressureCforCstabilityCofCvisualC.eldClossCprogressionCinCnormal-tensionglaucoma.JpnJOphthalmolC54:117-123,C20109)KosekiN,AraieM,ShiratoSetal:E.ectoftrabeculecto-myonvisual.eldperformanceincentral30degrees.eldinCprogressiveCnormal-tensionCglaucoma.COphthalmologyC104:197-201,C199710)ShigeedaCT,CTomidokoroCA,CAraieCMCetal:Long-termCfollow-upCofCvisualC.eldCprogressionCafterCtrabeculectomyCinCprogressiveCnormal-tensionCglaucoma.COphthalmologyC109:766-770,C200211)HagiwaraCY,CYamamotoCT,CKitazawaY:TheCe.ectCofCmitomycinCtrabeculectomyontheprogressionofvisual.eldCdefectCinCnormal-tensionCglaucoma.CGraefesCArchCClinExpOphthalmolC238:232-236,C200012)BhandariCA,CCabbCDP,CPoinoosawmyCDCetal:E.ectCofCsurgeryConCvisualC.eldCprogressionCinCnormal-tensionCglaucoma.OphthalmologyC104:1131-1137,C199713)NaitoT,FujiwaraM,MikiTetal:E.ectoftrabeculecto-myConCvisualC.eldCprogressionCinCJapaneseCprogressiveCnormal-tensionCglaucomaCwithCintraocularCpressure<15CmmHg.PLoSOneC12:e0184096,C201714)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CComparisonCofCglaucomatousCprogressionCbetweenCuntreatedCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucomaCandCpatientsCwithCtherapeuticallyCreducedCintraocularCpres-sures.AmJOphthalmolC126:487-497,C199815)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup.:CThee.ectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentCofCnormal-tensionCglaucoma.CAmCJCOphthalmolC126:498-505,C199816)BindlishCR,CCondonCGP,CSchlosserCJDCetal:E.cacyCandCsafetyCofCmitomycin-CCinprimaryCtrabeculectomy:.ve-yearfollow-up.OphthalmologyC109:1336-1341,C200217)YamamotoCT,CSawadaCA,CMayamaCCCetal:TheC5-yearCincidenceCofCbleb-relatedCinfectionCandCitsCriskCfactorsCafterC.lteringCsurgeriesCwithCadjunctiveCmitomycinC:CcollaborativeCbleb-relatedCinfectionCincidenceCandCtreat-mentstudy2.OphthalmologyC121:1001-1006,C201418)DeCMoraesCCG,CLiebmannCJM,CGreen.eldCDSCetal:RiskCfactorsCforCvisualC.eldCprogressionCinCtheClow-pressureCglaucomaCtreatmentCstudy.CAmCJCOphthalmolC154:702-711,C2012C***

スクリーニング用眼圧計としてOcular Response Analyzer G3 を用いた際の測定値の信頼度の検討

2022年7月31日 日曜日

《第32回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科39(7):959.962,2022cスクリーニング用眼圧計としてOcularResponseAnalyzerG3を用いた際の測定値の信頼度の検討杉浦奈津美丸山勝彦瀧利枝金谷楓八潮まるやま眼科CEvaluationoftheMeasurementReliabilitywhenUsingtheOcularResponseAnalyzerforIntraocularPressureScreeningExaminationsNatsumiSugiura,KatsuhikoMaruyama,ToshieTakiandKaedeKanayaCYashioMaruyamaEyeClinicC対象および方法:スクリーニングとしてライカート社のCOcularResponseAnalyzer(以下,ORA)G3を用いて眼圧測定を行った症例C747例C1,488眼,平均年齢C53.5C±20.4歳(レンジC6.94歳)を対象に,信頼度を表す係数CWave-formCScoreが推奨値であるC6に満たない症例の割合を算出した.結果:測定値の平均±標準偏差(レンジ)は,Goldmann圧平眼圧計による眼圧値に相当する眼圧値CIOPgがC14.9C±4.8CmmHg(1.0.63.2CmmHg),角膜ヒステリシスで補正した眼圧値CIOPccはC16.2C±4.7mmHg(3.2.73.6mmHg),角膜ヒステリシスはC9.7C±1.5CmmHg(0.0.20.6mmHg),WaveformScoreはC7.3C±1.5(0.1.9.7)であり,WaveformScoreがC6未満の割合はC18%であった.結論:スクリーニング用眼圧計としてCORAを用いた場合,信頼性のある結果が得られる割合は約C8割である.CPurpose:ToCevaluateCintraocularpressure(IOP)measurementCreliabilityCwhenCusingCtheCOcularCResponseAnalyzer(ORA)(ReichertOphthalmicInstruments)forIOPscreeningexaminations.SubjectsandMethods:Weretrospectivelyanalyzed1,488eyesof747subjects(meanage:53.5C±20.4years,range:6-94years)whoseIOPwasCmeasuredCusingCtheCORACforCtheCIOPCscreeningCexamination.CTheCrateCofCmeasurementsCwithCaCWaveformCScoreoflessthan6,whichimpliesanunreliablemeasurement,wascalculated.Results:Themean±standarddevi-ationCofCGoldman-estimatedCIOP,Ccorneal-compensatedCIOP,CcornealChysteresis,CandCWaveformCScoreCwasC14.9±4.8mmHg(range:1.0C-63.2mmHg)C,C16.2±4.7mmHg(range:3.2C-73.6mmHg)C,C9.7±1.5CmmHg(range:0.0C-20.6CmmHg)C,CandC7.3±1.5(range:0.1-9.7)C,Crespectively.CTheCpercentageCrateCofCeyesCwithCaCWaveformCScoreCofCless-than6was18%.Conclusion:Our.ndingsrevealedthattheORAproducedreliableIOPmeasurementsin80%CofthecaseswhounderwentanIOPscreeningexamination.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(7):959.962,C2022〕Keywords:OcularResponseAnalyzer,信頼度,WaveformScore,眼圧,角膜ヒステリシス.OcularResponseAnalyzer,reliability,WaveformScore,intraocularpressure,cornealhysteresis.Cはじめにライカート社のCOcularResponseAnalyzer(ORA)G3は,緑内障の発症1,2),あるいは進行3.6)に影響するとされるパラメータ,角膜ヒステリシスが測定できる非接触型眼圧計であり,近年,緑内障診療に活用されることが多くなってきている.眼圧測定は一般診療でもルーチンに行われる検査であるが,スクリーニング用眼圧計としてCORAG3を用いた際の測定値の信頼度についてはこれまで報告がない.本研究の目的は,スクリーニング用眼圧計としてCORAを用いた際の測定値の信頼度を検討することである.CI対象および方法対象は,2021年C3月C1日.5月C15日に八潮まるやま眼科でスクリーニングとしてCORAG3を用いて眼圧測定を行ったC747例C1,488眼である.男性C287例,女性C460例,年齢はC53.5C±20.4歳(レンジC6.94歳),右眼はC745眼,左眼は〔別刷請求先〕丸山勝彦:〒340-0822埼玉県八潮市大瀬C5-1-152階八潮まるやま眼科Reprintrequests:KatsuhikoMaruyama,M.D.,Ph.D.,YashioMaruyamaEyeClinic,2F,5-1-15,Oze,Yashio-shi,Saitama340-0822,JAPANC743眼であった.これらを対象に,患者に応じて開瞼を補助しながらC3回測定を行い,平均値を解析に使用した.測定結果として,CORAG3ではCGoldmann圧平眼圧計による眼圧値に相当するCIOPg,角膜ヒステリシスで補正した眼圧値CIOPcc,角膜ヒステリシス,信頼度を示す係数であるCWaveformCScoreが出力される.今回はCWaveformScoreが推奨値である「6」に満たない症例の割合を算出した.なお,同一症例に複数回測定を行っている場合には初回の結果を解析に用いた.本研究は日本医師会倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号CR3-8).C70060050040030020010000.0~5.0~10.0~15.0~4.99.914.919.9II結果測定値の平均±標準偏差(レンジ)は,IOPgがC14.9±4.8mmHg(1.0.63.2CmmHg),IOPccはC16.2±4.7CmmHg(3.2.73.6CmmHg),角膜ヒステリシスはC9.7±1.5CmmHg(0.0.20.6CmmHg),WaveformScoreはC7.3±1.5(0.1.9.7)となり,それぞれ図1~4のように分布していた.WaveformCScoreがC3未満だったのはC2%,3台が3%,4台が5%,5台がC8%,6台が17%,7台が30%,8台が29%,9台が6%であり,6未満の割合はC18%であった.67345421977441303520.0~25.0~30.0~35.0~40.0~24.929.934.939.9症例数症例数測定値(mmHg)図1IOPgの分布平均±標準偏差(レンジ):14.9±4.8CmmHg(1.0.63.2mmHg)C9008007006005004003002001000888293246202362190.0~5.0~10.0~15.0~20.0~25.0~30.0~35.0~40.0~4.99.914.919.924.929.934.939.9測定値(mmHg)図2IOPccの分布平均±標準偏差(レンジ):16.2±4.7CmmHg(3.2.73.6mmHg)症例数90080070060050040030020010008453482144740226110.0~2.0~4.0~6.0~8.0~10.0~12.0~14.0~16.0~18.0~1.93.95.97.99.911.913.915.917.9角膜ヒステリシス(mmHg)図3角膜ヒステリシスの分布平均±標準偏差(レンジ):9.7±1.5CmmHg(0.0.20.6mmHg)C50044342826012276874359154003002001000症例数0.0~0.91.0~1.92.0~2.93.0~3.94.0~4.95.0~5.96.0~6.97.0~7.98.0~8.99.0~10.0WaveformScore図4WaveformScoreの分布平均±標準偏差(レンジ):7.3±1.5(0.1.9.7)CIII考按い.Ayalaら7)は平均年齢C56.5±16.0歳の健常者C266例を対象として検討を行っており,WaveformScoreの平均はC7.39ORAで得られる測定値の信頼度に関する報告は多くはなC±1.32(2.8.9.7)だったと報告している.また,Lamら8)は健常者C64例(平均年齢C26.3C±6.8歳)を対象とした検討で,貢献し,重症化の回避などによる医療経済的効果につながる各症例に対し両眼C4回測定を行った計C512回分の測定値を可能性がある.今後,さらに多数例を対象とした多施設での解析した結果,WCaveformScoreの平均はC5.49(1C.58.9C.06)検証が必要である.だったと報告している.しかし,これらの報告で使用されているCORAはCversion2.04であり,現在普及しているCG3で利益相反:利益相反公表基準に該当なしの信頼度はこれまで明らかではなかった.そのため今回,G3で検討を行ったが,CWaveformScoreの平均値やレンジは既報と同等かそれ以上の結果が得られた.また,本報告は文献年齢や眼疾患の有無などの背景もさまざまな症例に対し,ス1)CongdonCNG,CBromanCAT,CBandeen-RocheCKCetal:CCen-クリーニングとして行う眼圧検査にCORAG3を用いた検討tralCcornealCthicknessCandCcornealChysteresisCassociatedCであり,実臨床に沿った結果といえるが,およそC8割で信頼withCglaucomaCdamage.CAmCJCOphthalmolC141:C868-875,C性のある測定が可能であることがわかった.C2006CORAG3の測定精度は通常の非接触型眼圧計と同様に,2)AbitbolCO,CBoudenCJ,CDoanCSCetal:CCornealChysteresisCmeasuredCwithCtheCOcularCResponseCAnalyzerCinCnormalC眼表面のコンディションや固視,瞬目,睫毛などの影響を受andCglaucomatousCeyes.CActaCOphthalmolC88:C116-119,Cけると考えられる.本報告の対象にも信頼度が低い症例がみ2010Cられたが,その原因については今回検討していない.今後,3)DeCMoraesCCG,CHillCV,CTelloCCCetal:CLowerCcornealChys-どの因子がどれくらい信頼度に影響するか研究を進めたいとteresisisassociatedwithmorerapidglaucomatousvisual.eldprogression.JGlaucomaC21:C209-213,C2012C考えている.4)MedeirosCFA,CMeira-FreitasCD,CLisboaCRCetal:CCornealC本報告は単一施設での後ろ向き研究であり,結果の解釈にhysteresisCasCaCriskCfactorCforglaucomaCprogression:CaCは各種バイアスの影響を加味しなければならない.たとえprospectivelongitudinalstudy.OphthalmologyC120:C1533-ば,閉瞼が強い症例や瞼裂が狭い症例,睫毛が長い症例など1540,C2013C5)ZhangCC,CTathamCAJ,CAbeCRYCetal:CCornealChysteresisに対して開瞼の補助を行う明確な基準はなく,今回の測定値andprogressiveretinalnerve.berlayerlossinglaucoma.はそのときの検者の判断に任せた結果である.また,今回はCAmJOphthalmolC166:C29-36,C2016CORAG3で測定を行った全症例を対象としたため,眼表面6)SusannaCN,Diniz-FilhoA,DagaFBetal:CAprospectiveに異常がある症例など,測定精度が低いと想定される症例もlongitudinalCstudyCtoCinvestigateCcornealChysteresisCasCaCriskfactorforpredictingdevelopmentofglaucoma.AmJ対象に含んでいる.さらに,C4名の検者が測定を担当したが,OphthalmolC187:C148-15,C2018C検者ごとの結果は明らかではない.このようにいくつかの問7)AyalaM,ChenE:Measuringcornealhysteresis:thresh-題点はあるが,緑内障診療に有用な角膜ヒステリシスが測定oldCestimationCofCtheCwaveformCscoreCfromCtheCOcularC可能なCORAは,日常診療のスクリーニング用としても十分ResponseCAnalyzer.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC250:C1803-1806,C2012C活用できる眼圧計と考えられた.CORAG3のスクリーニン8)LamCAK,CChenCD,CTseJ:CTheCusefulnessCofCwaveformCグ用眼圧計としての信頼性が確認できれば,将来的には緑内scoreCfromCtheCocularCresponseCanalyzer.COptomCVisCSciC障の早期発見や,進行の危険因子を有する患者の早期発見に87:C195-199,C2010***

広義原発開放隅角緑内障におけるカルテオロール/ラタノプロスト 配合点眼剤単独への変更による1 年間の長期眼圧下降効果

2022年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科39(6):830.834,2022c広義原発開放隅角緑内障におけるカルテオロール/ラタノプロスト配合点眼剤単独への変更による1年間の長期眼圧下降効果杉本識央白鳥宙中元兼二西尾侑祐飛田悠太朗中野優治山崎将志大石典子武田彩佳高野靖子高橋浩日本医科大学眼科学教室COne-YearClinicalE.cacyofCarteolol/LatanoprostFixedCombinationinPrimaryOpenAngleGlaucomaandNormalTensionGlaucomaShioSugimoto,NakaShiratori,KenjiNakamoto,YusukeNishio,YutaroTobita,YujiNakano,MasashiYamazaki,NorikoOhishi,AyakaTakeda,YasukoTakanoandHiroshiTakahashiCDepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchoolC目的:広義原発開放隅角緑内障(POAG)におけるカルテオロール/ラタノプロスト配合点眼剤(以下,CAR/LAT)単独への変更によるC1年間の眼圧下降効果を後ろ向きに検討する.対象および方法:プロスタグランジン関連薬(以下,PG)単剤または異種のCPG/b遮断薬配合剤(以下,PG/b)単独からの切り替えで,CAR/LATを新規に処方した広義POAG患者のうち,緑内障手術歴のない連続C65例を対象とした.変更前と変更C1カ月後,3カ月後,6カ月後,12カ月後の眼圧をそれぞれ比較した.結果:PGからの変更では,眼圧(平均±標準偏差)は,変更前C14.9±3.2CmmHgに対して変更C12カ月後C12.8±2.1CmmHgで,変更前と比べて変更後のすべての時点で有意な眼圧下降を認めた(p<0.05).異種のCPG/bからの変更では,有意な変化はなかった(p=0.30).結論:広義CPOAGにおいて,PG単剤からCCAR/LATへの変更では,1年間有意な眼圧下降が得られ,また,異種のCPG/b単独からの変更では有意な眼圧変化はない.CPurpose:ToCinvestigateCtheClong-termCintraocularpressure(IOP)-loweringCe.ectCofCswitchingCtoCcarteolol/Clatanoprost.xedcombination(CAR/LAT)onlyinpatientswithprimaryopenangleglaucoma(POAG)ornormaltensionglaucoma(NTG).Methods:Inthisretrospectivestudy,themedicalrecordsof65patients(65eyes)withPOAGorNTGwhowerenewlyprescribedCAR/LATafterswitchingfromprostaglandinanalogue(PG)orpros-taglandinanalogue/beta-blocker(PG/b)timolol.xedcombination.IOPwascomparedbetweenatbaselineandat1-,3-,6-,CandC12-monthsCpostCswitch.CResults:IOPCwasCsigni.cantlyCdecreasedCatC12-monthsCpostswitch(12.8±2.1mmHg)inCcomparisonCwithCthatCatCbeforeCswitchingCfromPG(14.9±3.2mmHg)(p<0.05).CHowever,CnoCsigni.cantdi.erenceinIOPwasfoundbetweenpreandpostswitchfromPG/b(p=0.30).CConclusion:IOPwassigni.cantlydecreasedafterswitchingfromPGtoCAR/LATandwasmaintainedafterswitchingfromPG/bfor1year.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(6):830.834,C2022〕Keywords:カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼剤,眼圧,変更,原発開放隅角緑内障.carteolol/latanoprost.xedcombination,intraocularpressure,switching,primaryopenangleglaucoma.Cはじめに現在,緑内障治療における視野維持効果についてエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧下降であり,薬物治療が第一選択となる1).開放隅角緑内障の薬物治療においては,プロスタグランジン関連薬(以下,PG)が眼圧下降効果と点眼回数,副作用の面で良好な忍容性により第一選択薬としてもっとも使用されており,続いてCb遮断薬も第一選択になりうるとされる1).単剤での効果が不十分であるときには併用療法を検討するが,併用療法の際には患者のアドヒアランスやCQOLも考慮すべきであるため,配合点眼の使用がすす〔別刷請求先〕杉本識央:〒113-8603東京都文京区千駄木C1-1-5日本医科大学眼科学教室Reprintrequests:ShioSugimoto,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NipponMedicalSchool,1-1-5Sendagi,Bunkyo-ku,Tokyo113-8603,JAPANC830(134)められる1,2).カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼剤(以下,CAR/LAT)はCPGとCb遮断薬の配合点眼剤(以下,PG/Cb)の一つであり,また,Cb遮断薬としてカルテオロールを含有する唯一のCPG/Cbである.他のCPG/Cbに含有されるCb遮断薬であるチモロールと比較して,カルテオロールには眼表面の麻酔作用がほとんどないためにドライアイを生じにくく3),呼吸器系および循環器系の副作用を引き起こしにくい4,5)などのメリットがあり,実臨床において広く使用されているが,1年以上の眼圧下降効果に関する報告は少ない.そこで今回,広義原発開放隅角緑内障(primaryCopenangleCglaucoma:POAG)を対象に,CAR/LAT単独への変更によるC1年間の眼圧下降効果を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2017年C1月.2018年C12月に日本医科大学付属病院緑内障外来で,PG単独または異種のCPG/Cbからの切り替えでCAR/LATを新規に処方した広義CPOAG患者のうち,緑内障手術歴のない連続C65例を対象とし,カルテレビューにより後ろ向きに調査した.前投薬(PGまたは異種のCPG/Cb)からCCAR/LATに切り替えた際の,変更前の眼圧と,変更C1カ月後(C±1週間),3カ月後(C±1カ月),6カ月後(C±1カ月),12カ月後(C±1カ月)の眼圧をそれぞれ比較した.眼圧測定は全例CGoldmann圧平式眼圧計を用い,測定時間が同じ時間帯(C±2時間)の眼圧値を採用した.眼圧の比較は,全対象での検討,前投薬がCPGまたはCPG/Cbでの種類別の検討および前投薬がCPGの症例のなかで病型分類別の検討を行った.なお,前投薬からCCAR/LATへの切り替えの際,原則として夜点眼を指示した.解析はC1例C1眼とし,両眼点眼症例は,乱数表を用いて対象眼をランダムに選択した.眼圧比較には反復測定分散分析,HsuのCMCB検定を用いた.有意確率はCp<0.05(両側検定)とした.眼圧下降率は欠損値がある場合には当該症例を除いて計算した.副作用で脱落した症例はC4例で,脱落した時点で眼圧の解析からは除外した.なお,本研究は日本医科大学付属病院の倫理委員会で承認を得た(受付番号CR1-05-1135).CII結果対象はC65例C65眼で,患者背景を表1に示す.広義CPOAGにおいて,PG単剤からの変更例(n=40)では,CAR/LATへの変更前の眼圧C14.9C±3.2CmmHg(n=40)に対して,変更C1カ月後C12.9C±2.1CmmHg(n=21),3カ月後C13.2C±2.6CmmHg(n=36),6カ月後C13.1C±2.0CmmHg(n=35),12カ月後C12.8C±2.1CmmHg(n=32)で,変更前に対する変更C1カ月後,3カ月後,6カ月後,12カ月後の平均眼圧変化値(下降率)はそれぞれC.2.1±2.1CmmHg(14.0%),C.1.9±2.8CmmHg(12.8%),.1.5±2.7CmmHg(10.3%),.1.9±3.1CmmHg(12.8%)であり,変更前と比較して変更後のすべての時点で眼圧は有意に下降していた(図1).PG単剤からの変更例のうち病型分類が狭義CPOAGの症例(n=17)では,CAR/LATへの変更前C17.6C±2.3CmmHg(n=17)に対して,変更C1カ月後C14.0C±2.1CmmHg(n=9),3カ月後C14.6C±2.5CmmHg(n=17),6カ月後C13.8C±2.1CmmHg(n=14),12カ月後C13.6C±1.7CmmHg(n=13)で,変更前に対する変更C1カ月後,3カ月後,6カ月後,12カ月後の平均眼圧変化値(下降率)はそれぞれC.2.9±1.8CmmHg(17.2%),C.3.0±3.1CmmHg(17.1%),3.4C±2.6CmmHg(19.9%),.3.6C±3.3CmmHg(20.9%)であり,すべての時点において有意な眼圧下降効果を認めた(p<0.05).一方で,病型分類が正常眼圧緑内障(normalCtensionglaucoma:NTG)の症例での眼圧の推移は,CAR/LATへの変更前C12.8C±2.0CmmHg(n=23)に対して,変更C1カ月後C12.0C±2.4CmmHg(n=12)で,3カ月後C11.9C±2.1CmmHg(n=19),6カ月後C12.6C±1.8CmmHg(n=21),12カ月後C12.3C±2.2CmmHg(n=19)であり,変更前に対する変更C1カ月後,3カ月後,6カ月後,12カ月後の平均眼圧変化値(下降率)はそれぞれC.1.6±2.4CmmHg(11.0%),C.1.0±2.2CmmHg(7.8%),.0.2±1.9CmmHg(2.3%),C.0.7±2.5CmmHg(5.3%)であり,変更C1カ月後の時点では眼圧は有意に下降していた(図2).広義CPOAGにおける異種のCPG/Cbからの変更例(n=25)では,CAR/LATへの変更前C14.5C±2.5CmmHg(n=25)に対して,変更C1カ月後C13.8C±2.9CmmHg(n=10),3カ月後C13.3±3.2CmmHg(n=22),6カ月後C13.4C±3.0CmmHg(n=23),12カ月後C14.4C±3.1CmmHg(n=20)で,変更前に対する変更C1カ月後,3カ月後,6カ月後,12カ月後の平均眼圧変化値(下降率)はそれぞれC.0.3±2.1CmmHg(2.1%),.1.3C±2.6CmmHg(8.9%),.1.4±2.4CmmHg(9.5%),.0.7±2.3CmmHg(4.0%)であり,すべての時点で眼圧変化は有意ではなかったが(p=0.30),1年間にわたって同程度の眼圧下降効果を維持した(図3).中止・脱落した症例は,副作用があったC4例(6.2%)のみであった.その内訳は,変更後C1カ月までに喘鳴,眼瞼色素沈着,眼瞼炎がそれぞれC1例ずつ,変更C9カ月後に結膜充血がC1例あり,それぞれ投薬中止となった.喘鳴の症例はトラボプロストからの変更例であり,トラボプロストに戻したところ症状は消失した.眼瞼色素沈着の症例はラタノプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬からの変更例であり,変更後C1カ月の時点で症状の進行の訴えがあり,ドルゾラミド/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬へ変更したところ症状は軽快した.眼瞼炎の症例はラタノプロスト/チモロール表1患者背景(平均値±標準偏差)C2014.9±3.2***p<*0.05年齢C61.7±12.5歳C18*13.2±2.612.9±2.113.1±2.0眼圧(mmHg)男性/女性30例/35例病型原発開放隅角緑内障(狭義):20例108n=40n=21n=36n=35n=32正常眼圧緑内障:45例6前投薬PG:40例42平均偏差+標準偏差ラタノプロスト35眼タフルプロスト3眼トラポプロスト2眼CPG/b:25例ラタノプロスト・チモロール12眼タフルプロスト・チモロール10眼トラポプロスト・チモロール3眼CMDC.3.9±5.3CdB中心角膜厚C559.1±47.6CμmCPG:PG関連薬.PG/Cb:PG/Cb遮断薬.MD:Humphrey視野プログラム中心C30-2SITA-standardによる平均偏差0変更前1M3M6M12M図1広義POAGにおけるPG単剤からCAR/LATへの変更例の眼圧の推移広義CPOAGにおいてCCAR/LATに変更後,眼圧はすべての時点で変更前より有意に下降していた(反復測定分散分析およびCHsuのCMCB検定,p<0.05).CNS14.4±3.11816眼圧(mmHg)141210864*p<0.05(n=17)20181620眼圧(mmHg)141210図3異種のPG/bからCAR/LATへの変更例の眼圧の推移8CAR/LATに変更後,すべての時点で有意な眼圧変化はなく,1C64年間にわたって同程度の眼圧下降効果を維持した(反復測定分散C2分析およびCHsuのCMCB検定,p<0.05)C0図2PG単剤からCAR/LATへの変更例の病型分類別眼圧の変更は同程度の眼圧下降効果を維持した.変更前1M3M6M12M推移CAR/LATに変更後,NTG群では変更C1カ月後で,狭義CPOAG群ではすべての時点で,眼圧は変更前より有意に下降していた(反復測定分散分析およびCHsuのCMCB検定,p<0.05).マレイン酸塩配合点眼薬で,眼瞼炎がありCCAR/LATに変更した症例であり,変更後も症状継続したため,投薬中止したところ症状は消失した.結膜充血の症例はラタノプロストからの変更例であり,タフルプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬へ変更したところ症状は軽快した.CIII考按今回の研究では,広義CPOAGにおいてCPG単剤からCAR/LAT単独への変更はC1年間有意な眼圧下降が得られていた.NTGでは変更後C1カ月,狭義CPOAGではすべての時点で有意な眼圧下降があった.また,異種のCPG/CbからのPG単剤からCCAR/LATへの変更による眼圧下降効果に関する既報によると,広義CPOAG,高眼圧症を対象にした国内第CIII相試験6)ではラタノプロストからの変更前眼圧C20.1C±1.9CmmHgに対して眼圧下降幅は4週間後2.7C±0.2mmHg,8週間後C2.9CmmHgC±0.2CmmHgであった.中牟田らの広義POAG,続発緑内障を対象にした報告7)ではラタノプロストからの変更前眼圧C16.0C±2.8CmmHgに対して眼圧下降幅はC1カ月後C2.5C±1.4CmmHg,3カ月後C2.5C±1.7CmmHg,松村らの広義CPOAGを対象にした報告8)ではラタノプロストからの変更前眼圧C15.9C±2.9CmmHgに対して眼圧下降幅はC1カ月後C2.4±1.4mmHg,3カ月後C2.6C±1.7mmHg,6カ月後C2.3C±1.8CmmHg,12カ月後C2.3C±1.8CmmHgであった.本研究の広義CPOAGでの検討では,PG単剤からの変更で,変更前C14.9±3.2mmHgに対して眼圧下降幅はC1カ月後C2.1C±2.1mmHg,3カ月後C1.9C±2.8mmHg,6カ月後C1.5C±2.7mmHg,12カ月後C1.9C±3.1CmmHgであり,本研究の結果は既報に比(136)べやや眼圧下降が劣っていた.その原因として,まず既報と試験デザインおよび病型が異なることに加え,本研究では変更前眼圧が既報より低かったことが考えられる.また,本研究においても,NTGでは効果が弱いものの広義CPOAGとしては,その短期で得られた眼圧下降効果は変更C1年後まで維持されていた.このように,広義CPOAGにおいてCPG単剤からCCAR/LATへの変更は眼圧下降作用において少なくともC1年間にわたって有効といえる.ベースライン眼圧別のCCAR/LATの眼圧下降効果の検討に関して,国内第CIII相試験6)においてラタノプロストからの変更ではベースライン眼圧が高いほうが眼圧下降幅も大きかったことが報告されている.本研究においても,PG単剤からCCAR/LATへ変更後の病型分類別の眼圧下降幅は,狭義CPOAG(変更前C17.6C±2.3mmHg)では,変更C1カ月後2.9CmmHg,3カ月後C3.0CmmHg,6カ月後C3.4CmmHg,12カ月後C3.6CmmHgで,いずれも統計学的に有意な下降であったのに対し,NTG(変更前C12.8C±2.0CmmHg)では,変更C1カ月後C1.6mmHg,3カ月後C1.0mmHg,6カ月後C0.2mmHg,12カ月後C0.7CmmHgであり,変更C1カ月後を除き有意な下降はなかった.本研究のCNTG症例の変更前眼圧平均12.8CmmHgはかなり低い眼圧であるため,変更C1カ月後を除き有意な眼圧下降効果が得られなかった原因であると考えた.異種のCPG/CbからCCAR/LATへ変更による眼圧下降効果に関する既報は,髙田ら9)のトラボプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬からの変更でC3カ月後まで同等の眼圧下降効果であったとの報告,Inoueら10)のラタノプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬からの変更でC3カ月後まで同等の眼圧下降効果であったとの報告などがある一方で,勝部ら11)のラタノプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬からの変更C6カ月後に平均C1.6CmmHgの有意な眼圧下降を認めたという報告もある.本研究では異種CPG/Cbからの変更C1カ月後,3カ月後,6カ月後,12カ月後のすべての時点で変更前から有意な眼圧変化はなく,1年間にわたって同様の眼圧下降効果を維持した.本研究でのCCAR/LATの副作用は,喘鳴,眼瞼色素沈着,眼瞼炎,結膜充血がそれぞれC1例ずつで,副作用出現率は6.2%であり,国内第CIII相試験6)でのC6.8%とほぼ同等であった.喘鳴の症例はCb遮断薬であるカルテオロールによる副作用と考えられ,トラボプロストへ変更したところ症状は消失した.当該患者は処方前の問診で喘息の既往歴はなかった.山野ら12)は,カルテオロールを開始後の喘息症状の出現率は,既往に喘息がある症例でC61.9%,既往に喘息がない症例でC1.2%であったと報告しており,問診で喘息の既往歴が確認されない場合にもCb遮断薬の全身性副作用にはあらためて留意する必要がある.眼瞼色素沈着はラタノプロストの副作用と考えられ,眼瞼炎や結膜充血もそれぞれCCAR/LATの既知の副作用である.CAR/LATはカルテオロールとラタノプロストの配合点眼剤であるため,点眼回数やアドヒアランスの面でのメリットがある反面,使用時にはC2成分の副作用への注意が必要である.本研究におけるC1年間での脱落例はわずかC4例(6.2%)であり,CAR/LAT単独治療は高い継続率であった.本研究の限界は,後ろ向きな調査であるため,評価期間に眼圧が測定されていない欠測値が少なからずあることである.しかし,本研究は後ろ向きではあるものの連続症例での検討で,変更C1カ月後を除けばその他の測定時点ではC80%以上の症例数があった.また,中止・脱落症例はわずかC4例でいずれもCCAR/LATの副作用による中止で,眼圧下降効果が不良と判断されて中止となった症例はなかったことから,解析結果に大きな影響はなかったと考える.結論として,広義CPOAG患者において,PG単剤または異種のCPG/CbからCCAR/LAT単独治療への変更は,1年間有意な眼圧下降あるいは同程度の眼圧下降効果が得られ有用であった.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌C122:5-53,C20182)Oltho.CCM,CSchoutenCJS,CvanCdeCBorneCBWCetal:Non-compliancewithocularhypotensivetreatmentinpatientswithCglaucomaCorCocularChypertensionCanCevidence-basedCreview.OphthalmologyC112:953-961,C20053)YabuuchiY,HashimotoK,NakagiriNetal:Antiarrhyth-micCpropertiesCofC5-(3-tert-butylamino-2-hydroxy)pro-poxy-3,4-dihydrocarbostyrilhydrochloride(OPC-1085)C,anewlysynthesized,potentbeta-adrenoreceptorantagonist.CClinExpPharmacolPhysiolC4:545-559,C19774)NetlandPA,WeissHS,StewartWCetal:Cardiovasculare.ectsoftopicalcarteololhydrochlorideandtimololmale-ateCinCpatientsCwithCocularChypertensionCandCprimaryCopen-angleCglaucoma.CNightCStudyCGroup.CAmCJCOphthal-molC123:465-477,C19975)佐野靖之,村上新也,工藤宏一郎:気管支喘息患者に及ぼすCb-遮断薬点眼薬の影響:CarteololとCTimololとの比較.現代医療C16:1259-1263,C19846)YamamotoCT,CIkegamiCT,CIshikawaCYCetal:Randomized,Ccontrolled,CphaseC3CtrialsCofCcarteolol/latanoprostC.xedCcombinationCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.AmJOphthalmolC171:35-46,C20167)中牟田爽史,井上賢治,塩川美菜子ほか:ラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール塩酸塩配合点眼液への変更.臨眼C73:729-735,C20198)松村理世,井上賢治,塩川美菜子ほか:ラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更による長期投与.あたらしい眼科C37:467-470,C20209)髙田幸尚,宮本武,岩西宏樹ほか:他剤配合点眼からカルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト配合点眼薬へ変更後の角膜上皮障害の変化.臨眼C72:1579-1584,C2018モロールマレイン酸塩配合点眼液からカルテオロール塩酸10)InoueCK,CPiaoCH,CIwasaCMCetal:Short-termCe.cacyCand塩/ラタノプロスト配合点眼液への切替え効果.臨眼C73:CsafetyCofCswitchingCfromCaClatanoprost/timololC.xedCcom-777-785,C2019Cbinationtoalatanoprost/carteolol.xedcombination.Clin12)山野千春,小林秀之,古田英司ほか:ミケランCR(カルテオCOphthalmolC14:1207-1214,C2020ロール塩酸塩)点眼液使用患者の既往と喘息関連事象の発11)勝部志郎,添田尚一,大越貴志子ほか:ラタノプロスト/チ生に関する検討.あたらしい眼科C34:445-449,C2017***

健康成人を対象としたビルベリー/松樹皮抽出物配合食品摂取 による眼圧への影響の検討

2022年2月28日 月曜日

《原著》あたらしい眼科39(2):251.257,2022c健康成人を対象としたビルベリー/松樹皮抽出物配合食品摂取による眼圧への影響の検討髙木泰孝*1島田久生*2沖上裕美*3庄司信行*4*1参天製薬株式会社日本事業開発統括部日本メディカルアフェアーズグループ*2参天製薬株式会社研究開発本部臨床開発統括部臨床開発グループ*3参天製薬株式会社研究開発本部製剤技術統括部*4北里大学医学部眼科学COcularHypotensiveE.ectofaSupplementContainingBilberryandMaritimePineBarkCombinationExtractsinJapaneseHealthyVolunteersYasutakaTakagi1)CHisaoShimada2)CHiromiOkigami3)andNobuyukiShoji4),,1)JapanMedicalA.airsGroup,JapanBusinessDivision,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)ClinicalDevelopmentGroup,ResearchandDevelopmentDivision,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,3)PharmaceuticalTechnologyDevelopmentDivision,ResearchandDevelopmentDivision,SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,4)DepartmentofOphthalmology,FacultyofMedicine,KitasatoUniversityCビルベリー/松樹皮抽出物配合食品(被験食品)の眼圧に対する影響を検討するため,眼圧C20CmmHg以上の健康成人において,無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施した.被験者C47名に被験食品とプラセボ食品を無作為に割付し,1日C1回C1粒C12週間摂取させた.眼圧は来院時のC9.11時に非接触型眼圧計で測定した.被験食品群,プラセボ群の両群で,無作為化後の全測定時点において摂取前に比べ統計学的に有意な眼圧下降が認められた.前値で補正した眼圧変化値は,4週後のみ両群間に統計学的な有意差がみられ,被験食品群で大きかった.被験食品と因果関係なしと判断された有害事象がC1件(下痢/胃腸障害)に認められた.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は忍容性もよく眼圧下降が認められた.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は,眼圧を下降させることで眼の健康維持に貢献する可能性が示唆された.CPurpose:ToCevaluateCtheCe.ectsCofCaCsupplementCcontainingCtheCcombinationCofCbilberryCandCmaritimeCpineCbarkCextractsConCintraocularpressure(IOP)C,CaCrandomized,Cdouble-blind,Cplacebo-controlled,CparallelCstudyCwasCconductedinJapanesehealthyvolunteerswhoseIOPwasover20CmmHg.Methods:Thisstudyinvolved47eligi-blevolunteersubjectswhowererandomlyselectedtoundergoextract-supplementtesting(testgroup)orplacebocontrol(controlgroup)onceCdailyCforC12weeks(1Cgraineach)C.CAtCeachCvisit,CIOPCwasCmeasuredCbyCnon-contactCtonometeratbetween9-o’clockAMto11-o’clockAM.Results:Inboththetestandcontrolgroup,theIOPwassigni.cantlyCdecreasedCfromCthatCatCbaselineCatCallCmeasuringCpointsCafterCrandomization.CIOPCchangesCfromCbase-lineadjustedbybaselineIOPwassigni.cantlydi.erentbetweenthetwogroupsonlyat4weeks,andwasgreaterintestgroup.Therewerenoadversereactionswithnocausalrelationtothetestgroup.Conclusion:Thesupple-mentcontainingextractsofbilberryandmaritimepinebarkcombinationiswell-toleratedandhasanocularhypo-tensivee.ect.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(2):251.257,C2022〕Keywords:ビルベリー抽出物,松樹皮抽出物,サプリメント,眼圧,健康成人.bilberryextract,barkofthemaritimepineextract,supplement,intraocularpressure,healthyvolunteer.Cはじめに生活できる年齢をさす「健康寿命」は,2016年時点で男性日本人の平均寿命は年々伸びており,2018年では男性は72.14歳,女性は74.79歳(2016年の平均寿命は男性81.25歳,女性はC87.32歳となっている1).一方,自立して80.98歳,女性C87.14歳)となっており,平均寿命とは男性〔別刷請求先〕髙木泰孝:〒530-8552大阪府大阪市北区大深町C4-20参天製薬株式会社日本事業開発統括部日本メディカルアフェアーズReprintrequests:YasutakaTakagi,Ph.D.,JapanMedicalA.airsGroup,MedicalA.airs,JapanBusinessDivision.SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.,4-20Ofukacho,Kitaku,Osaka,Osaka530-8552,JAPANCでC8年,女性でC11年以上と大きな開きがある2).「健康寿命」を伸ばすため,加齢に伴う種々の身体機能の低下を抑制するアンチエイジングのセルフケアに対する関心が高まり,セルフケアの方法の一つとしてサプリメントが位置づけられてきている.また,アンチエイジングのセルフケアとしてだけではなく,疾患に対する治療を受けつつ,その治療をサポートし,治療効果を高めるために,サプリメントを用いるという考え方も受け入れられつつある.加齢により眼も同様に機能低下が進行する(眼精疲労,老視など).また,加齢性の眼疾患(白内障,緑内障,加齢黄斑変性など)も知られている.眼の機能低下に対しては,現在,ブルーベリーアントシアニン,ゼアキサンチン,アスタキサンチンが視力回復やピント調節のために,ルテインがブルーライトからの保護や加齢黄斑変性の予防に機能性表示食品として用いられている.一方,眼疾患に対しては,海外での大規模臨床試験の結果,治療に組み込まれているサプリメントが存在する疾患領域(加齢黄斑変性)と,緑内障のようにサプリメントのエビデンスが不足していることで明確に推奨されず,また機能性表示食品として製品が存在しない疾患領域が存在する.今回使用するアントシアニンC36%以上で規格化されたビルベリー抽出物食品(Mirtoselect)とプロシアニジンC70C±5%で規格化された松樹皮抽出物食品(Pycnogenol,HorphagResearch社,スイス)の配合食品ミルトジェノール(Indena社,イタリア)は,1日C2回(1日C2粒)摂取により眼圧下降が得られること3),1日C1回3)あるいはC1日C2回4)の摂取によりラタノプロストの眼圧下降に対し上乗せ効果があるとともに網膜中心動脈の収縮期血流を増加させること5,6)が報告されている.この配合食品の主成分である松樹皮抽出物のピクノジェノールは,網膜血流を改善させること7)や神経分化モデル細胞であるCPC12細胞での細胞死を抑制することが報告されている8).一方,ビルベリー抽出物の含有成分は,ビルベリーの産地や収穫時期により大きく異なり,市販されているビルベリー抽出物の成分・含量が大きく異なることが知られており9),また,摂取前眼圧が日本人の平均眼圧より高いことから,海外で確認されているビルベリー/松樹皮抽出物配合食品による眼圧下降効果4,5)がそのまま日本人でも示されるかどうかは不明である.そこで,眼圧がC20CmmHg以上の高眼圧症や緑内障とは診断されていない日本人健康成人を対象に,無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験でビルベリー/松樹皮抽出物配合食品ミルトジェノールの眼圧下降を検討した.I対象および方法1.対象対象はC20歳以上C74歳以下の男女で,おもな除外基準は,緑内障性の視神経乳頭障害が認められる者,眼圧ならびに眼圧測定に影響する疾患(炎症性疾患,角膜疾患など)を有する者,眼圧に影響する薬剤(ステロイド,眼圧下降薬,ED治療薬,向精神薬)の過去C4週間以内の使用歴がある者,抗酸化を標榜するサプリメント(松樹皮抽出物,ビルベリー,カシス,ルテイン,アスタキサンチン,ビタミンCE)の継続的な摂取習慣のある者とした.この条件を満たす志願者のなかから,試験責任医師が試験参加妥当と判断し,摂取前(Visit-2)において少なくとも片眼の眼圧値がC20CmmHg以上の者C40名を対象とした.本研究は,「ある程度の高眼圧状態を有し,眼圧下降に関して無治療の健康成人」というきわめて限定的な対象者を被験者としたため,探索的であり,被験食品とプラセボ食品の群間の有意差検出を目的とした例数設計は実施せず,根拠となる既報もないことから,実施可能性を考慮し必要例数を設定した.なお,本研究は「ヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)」「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」およびその他関連規制や試験研究所を遵守し実施し,試験実施医療機関の治験審査委員会で承認された同意説明文書での説明後,文書による同意を得て行われた.C2.被験薬品被験食品はアントシアニンC36%以上で規格化されたビルベリー抽出物食品(Mirtoselect)90CmgとプロシアニジンC70C±5%で規格化された松樹皮抽出物食品(Pycnogenol)40Cmgを含む配合食品C1粒である.ビルベリー抽出物,松樹皮抽出物を含まないプラセボ食品を対照とした.C3.試験方法試験スケジュールを図1に示す.本研究は,無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験で,被験者はビルベリー/松樹皮抽出物配合食品(被験食品群)あるいはプラセボ食品(プラセボ群)のC12週摂取に無作為に割付られた.なお,被験食品は,1粒をC1日量として設定した.割付は,割付責任者が行い,識別不能性を確認したのち,試験食品対応表ならびにエマージェンシーキーを作製し,厳封のまま開鍵まで割付責任者が保管した.被験者は事前検査(Visit-1),摂取前(Visit-2),摂取4,8,12週後(それぞれCVisit-3,Visit-4,Visit-5)に来院し,眼圧検査は全来院時に,血圧,脈拍,血液検査,尿検査はCVisit-1およびCVisit-5に,被験者背景,眼科検査(細隙灯顕微鏡検査,眼底検査)はCVitit-1に施行した.眼圧は,非接触型眼圧計を用いて,各来院時のC9時.11時の間に測定した.なお,眼圧の評価眼は,摂取前検査時(Visit-2)で眼圧の高いほうの眼とし,両眼の眼圧が同じVisit-1事前検査Visit-3Visit-4Visit-5Visit-2摂取前(Visit-2)への登録割付→摂取前摂取4週後摂取8週後摂取12週後本試験への選抜被験者の割付/試験食品の配布場合は右眼を評価眼とした.被験食品の摂取状況および有害事象調査には被験者日誌を用いた.C4.評価方法・統計解析統計解析は,SASCsoftwareCVer9.4(SASCinstituteCInc.,USA)またはCSPSSCStatisticsCVerC19Cforwindows(日本IBM)を用いた.有効性の主要評価項目は,12週時点における摂取前眼圧からの変化値および変化率とした.副次的評価項目は,4週,8週時点における摂取前眼圧からの変化値および変化率,12週までの「眼圧変化値・時間曲線下面積」,12週時点の眼圧が「2CmmHg以上」「3CmmHg以上」「10%以上」「15%以上」低下した人数とした.摂取前からの変化値および変化率については,群間比較および摂取前後の比較を行った.「眼圧変化値C.時間曲線下面積(CΔCAUC0-12w)」は,台形法を用いて,摂取前からの眼圧変化値の時間曲線下面積を算出し,群間比較を行った.なお,作用機序の考察や副次効果の説明の観点から,相関関係の解析や層別解析などさまざま統計解析を行えるものとした.眼圧値および摂取前からの眼圧変化値の経時比較には対応のあるCt検定を,群間比較には対応のないCt検定を,前値で補正した眼圧変化値の群間比較には共分散分析を使用し,有意水準は5%とした.安全性の主要評価項目は,副作用の集計(発現件数,発現率(副作用発現例数/解析対象例数))とし,副次的評価項目は,有害事象の発現件数,発現率(有害事象発現例数/解析対象例数),生理学検査ならびに生化学検査の異常変動の有無とした.安全性項目の経時比較に対応のあるCt検定,群間比較に対応のないCt検定を使用し,有意水準はC5%とした.有害事象は,責任医師が被験食品との因果関係を「なし」「多分なし」「多分あり」「あり」のC4段階に判定し,「多分あり」「あり」と判定された有害事象を副作用とした10).判定基準の詳細は以下のとおりである.「なし」:時間的に明白な関係がほとんどないと考えられる場合,他の要因(合併症,併用薬,併用食品など)の可能性が明確に考えられる場合.「多分関連なし」:否定しきれないが,時間的な関係が明確でないか,他の要因(合併症,併用薬,併用食品など)の可能性が大きいと考えられる場合.「多分関連あり」:時間的に明白な関係があり,そのうえ他の要因(合併症,併用薬,併用食品など)の関与がほぼ除外される場合.「関連あり」:時間的に明白な関係があり,そのうえ他の要因(合併症,併用薬,併用食品など)の関与が明確に除外される場合.なお,所定の試験スケジュールや内容をすべて終了した被験者のうち,試験食品の摂取率がC80%以下の場合や,検査結果やデータの信頼性に大きな問題が生じた場合は該当被験者を解析対象から除外することとした.CII結果1.被験者背景試験期間はC2017年C1.6月で,被験食品群C23例(男性C13例,女性C10例,平均年齢C53.6C±11.4歳),プラセボ群C24例(男性C10例,女性C14例,平均年齢C49.0C±10.2歳)が試験に組み入れられ,全例が試験を完了した.被験者背景(年齢,性別)は,群間に差がなかった.被験者日誌で確認された試験期間中の摂取状況は,1回摂取忘れがC2例,2回摂取忘れがC1例であり,摂取率は全例でC95%以上であった.また,検査結果やデータの信頼性に大きな問題が生じた被験者はなく,有効性のCPPS解析は全例を解析対象とした.安全性解析(FAS解析)は,割付け後のデータがない者を除くとしていたため,全被験者C47例を解析対象とした.C2.眼圧摂取前眼圧には,両群に有意な差は認められなかった(p=0.578,対応のないCt検定).被験食品群の眼圧は,摂取前のC21.90C±0.38CmmHgから,4週後C19.96C±0.48CmmHg,8週後C20.23C±0.34CmmHg,12週後C19.83C±0.51CmmHgといずれも摂取前に比べ統計学的に有意(p<0.001,対応あるCt検定)に低下し,プラセボ群の眼圧は,摂取前のC22.18C±0.32mmHgから,4週後C21.16C±0.38mmHg,8週後C20.74C±0.43CmmHg,12週後C20.53C±0.44CmmHgといずれも投与前に比べ統計学的に有意(p<0.001,対応あるCt検定)に低下した.摂取前からの眼圧変化値は,被験食品群およびプラセボ群ともいずれの測定点でも負の値となり,統計学的に有意(p<0.01,対応あるCt検定)であった(図2).被験食品群の眼圧変化幅は,いずれの測定点でもプラセボ食品群の眼圧変化幅より大きかったが,群間に統計学的に有意な差は認められなかった(t検定).摂取前からの眼圧変化値について前値補正(共分散分析)を行ったところ,摂取C4週後では被験食品群がプラセボ群に比して統計学的に有意な(p=0.0410)低値を示すことが確認された(表1)が,摂取C8週およびC12週では群間に統計学的に有意な差は認められなかった.被験食品群の眼圧変化率は,4週後C.8.8±1.8%,8週後C.7.2±1.8%,12週後でC.9.3±2.2%であったが,群間差は認められなかった(対応あるCt検定).摂取C12週までの眼圧値・時間曲線下面積は,プラセボ群眼圧変化値(mmhg)1.00プラセボ食品(n=24)被験食品(n=23)0.00**-1.00**#****平均値±標準誤差-2.00******:p<0.001(vs摂取前,対応のあるt検定)#:p<0.05(vsプラセボ食品,共分散分析)-3.00摂取前4週後8週後12週後図2眼圧変化値の推移眼圧は,被験食品あるいはプラセボ食品の摂取前,摂取後C4週,8週およびC12週後に非接触型眼圧計を用いて測定した.のC253.01C±4.28mmHg・weekに対し,被験食品群ではC244.23±4.14CmmHg・weekであり,眼圧変化値・時間曲線下面積は,プラセボ群のC.18.57±3.44CmmHg・weekに対し,被験食品群では.13.13±2.76mmHg・weekであった.12週時の眼圧が「2CmmHg以上低下」「3CmmHg以上低下」「10%以上低下」「15%以上低下」した人数は,被験食品群23例中それぞれC9例,8例,9例,6例であり,プラセボ群24例中それぞれ,12例,7例,10例,3例であった.摂取前眼圧と摂取C12週後眼圧の散布図から得られた回帰直線は,評価眼ではCy=0.5873x+6.964(RC2=0.1946)で,非評価眼ではCy=0.3362x+11.935(RC2=0.0578)であった(図3).C3.安全性有害事象は被験食品群のC23例中C7例(30.4%)8件(34.8%),プラセボ群のC24例中C6例(25.0%)6件(25.0%)に認められ,被験食品群の有害事象は眼障害C2件(8.7%),感染症C4件(17.4%),胃腸障害C2件(8.7%),プラセボ群の有害事象は感染症C5件(20.8%),迷路障害C1件(4.2%)であった.摂取食品との因果関係が「あり」「たぶんあり」とされた副作用は認められず,重篤な有害事象も認められなかった.摂取食品との因果関係が完全には否定できない有害事象(「たぶんなし」)としては下痢がC1件発生した.下痢の程度は軽度,症状はC2日間継続したが,被験食品摂取を継続し無処置で回復した.被験食品群では摂取前に比べ,拡張期血圧,体重,平均赤血球容積(MCV),平均赤血球血色素量(MCH),平均赤血球血色素濃度(MCHC),g-グルタミルトランスペプチダーゼが有意に減少し,グルコヘモグロビン(HbA1c)が有意に増加した(表2).プラセボ群では摂取前に比べ,血圧(拡張期,収縮期),脈拍,MCV,MCH,MCHC,総コレステロール,低比重リポプロテイン(LDL)コレステロールが有意に減少し,HbA1cが有意に増加した(表2).CIII考按本研究では,眼圧C20CmmHg以上の日本人健康成人において,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品摂取により,摂取前表1眼圧変化値の推移被験食品群(n=23)p値1)プラセボ群(n=24)p値1)p値2)摂取C4週後C.1.94±0.38C0.0000C.1.02±0.26C0.0007C0.0410摂取C8週後C.1.67±0.41C0.0006C.1.44±0.35C0.0004C0.4659摂取C12週後C.2.07±0.48C0.0003C.1.65±0.36C0.0002C0.3833(平均値±標準誤差)1)Vs摂取前,対応のあるCt検定.2)ベースライン眼圧値を共変量とした共分散分析.眼圧は,被験食品あるいはプラセボ食品の摂取前,摂取後C4週,8週およびC12週後に非接触型眼圧計を用いて測定した.表2変動が認められた臨床検査値一覧被験食品群プラセボ群摂取前摂取後C12週摂取前摂取後C12週収縮期血圧(mmHg)C124.2±3.5C120.7±3.41)C124.2±3.5C120.7±3.41)拡張期血圧(mmHg)C81.3±3.0C79.9±2.8C76.3±2.7C74.0±2.71)脈拍(回/分)C68.0±2.5C67.1±2.4C71.8±2.2C68.8±2.31)体重(kg)C3.12±1.99C62.93±2.00C55.42±2.122)C55.23±2.112)平均赤血球容積(fL)C91.30±1.01C91.73±1.021)C91.05±0.82C91.55±0.781)平均赤血球血色素量(pg)C30.50±0.42C30.15±0.411)C30.38±0.29C30.10±0.271)平均赤血球血色素濃度(%)C33.40±0.19C32.84±0.161)C33.38±0.14C32.90±0.131)Cg-グルタミルトランスペプチダーゼ(U/L)C43.8±7.9C37.9±7.61)C28.0±5.8C26.1±5.2グルコヘモグロビン(%)C5.59±0.11C5.75±0.111)C5.48±0.11C5.64±0.121)総コレステロール(mg/dL)C223.5±7.1C217.5±6.9C213.5±6.3C204.3±6.21)低比重リポプロテインC132.0±5.1C131.3±5.1C118.0±6.4C113.8±6.32)(平均値±標準誤差)1)Vs摂取前,対応のあるCt検定.2)Vs被験食品群摂取C12週後,t検定.と比較して眼圧を低下させることが明らかとなった.眼圧下降幅はC4週後のみ両群間に統計学的な有意差がみられ,被験食品群で大きかった.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の眼圧下降に関する海外の報告は,緑内障あるいは高眼圧症の患者を対象としたものであり,健康成人での眼圧下降の報告はない.本報告は,健康成人におけるビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の眼圧下降の初めての報告となる.本研究はエビデンスレベルの高い無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験であり,本研究にて健康食品による眼圧下降が健康成人で示せたことは意義があると考える.本研究では,プラセボ群の眼圧が摂取前に比べ有意に下降していた.プラセボによる変動は一般にプラセボ効果と知られており,今回のプラセボ群での変動(1.6CmmHg)はプラセボ効果の範囲内と考えられる.今回は,対象が眼圧測定経験の少ない健常人であること,健常人としては眼圧が高めであったことが,プラセボ効果が大きくなった可能性があると考える.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の摂取により,いずれの測定点でも摂取前に比べ有意に眼圧が下降し,その下降は10%未満であった.また,プラセボ群との比較ではC1測定点でのみ有意差が認められ,その眼圧下降幅はいずれの測定点でもプラセボ食品群より大きく,すべてC1CmmHg以上であった.これらのことから,眼圧下降作用のプラセボに対する優越性や実薬対照との非劣性で承認される眼圧下降薬と比べると,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の眼圧下降は,継続しているものの弱いことが推定される.したがって,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は,眼圧は下降させるものの緑内障の治療には不十分であり,あくまで眼圧が高めの人の眼圧を下げることにより眼の健康維持に役立つサプリメントとして認知されるものと考える.一方,点眼以外で眼圧が下降する食品であるため,点眼を忘れがちな患者や点眼操作がうまくできていない可能性がある患者など,点眼治療のみではコンプライアンス不良が疑われる患者などで,点眼薬の眼圧下降を補助するような使い方もあるかもしれない.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の成分であるピクノジェノールまたはその代謝物が一酸化窒素(NO)産生を促進すること11,12),一酸化窒素が主経路からの房水流出を促進すること3)が報告されている.したがって,一酸化窒素が主経路による房水流出を促進させることにより,眼圧が下降する可能性が示唆されているが,詳細は不明である.本研究では,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の眼圧下降作用が摂取前眼圧に依存するかを検討するため作成した摂取前眼圧と摂取後眼圧から得られた回帰直線から,評価眼,非評価はともに摂取前眼圧値が高いほど被験物質の摂取後の眼圧下降効果が強いことが示され,摂取前眼圧がC18CmmHg以下など比較的眼圧が低い場合は眼圧下降が得られにくい可能性が示唆されている(図3).このため,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は,眼圧が高めの健康成人が眼の健康維持のためセルフケアとして摂取すると眼圧下降効果が得られる可能性が考えられる.一方,緑内障患者では全身の抗酸化能が低下しているとの報告もあり13),ビルベリーや松樹皮エキスの抗酸化作用により全身の抗酸化能を改善させ,緑内障の病態の改善を期待できるかもしれない.また,海外では,眼圧下降薬のラタノプロストやドルゾラミドを使用している高眼圧症患者の摂取において,眼圧下降が報告されている5,14).よって,緑内障の治療を受けている患者で,薬剤による眼圧摂取後眼圧(mmHg)摂取後眼圧(mmHg)2826242220181616182022242628摂取前眼圧(mmHg)2826242220181616182022242628b:非評価眼y=0.3362x+11.935r2=0.0578摂取前眼圧(mmHg)図3摂取前眼圧および摂取後眼圧の分布評価眼(Ca),非評価眼(Cb)(それぞれC23眼)の摂取前と摂取C12週後の眼圧実測値から作成.下降をサポートするための摂取も一つのオプションとなるかもしれない.今後の研究により,ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品を摂取すべき対象や摂取が望ましい疾患などが明らかになっていくことを期待する.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品のC12週の摂取では,副作用は認められなかった.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品は購入者が自分の意思で摂取するものであるが,軽微な副作用が起こりうることを購入者には知らせておく必要があると思われる.本研究には,被験食品の眼圧下降作用を検出するための例数設計がされておらず,被験食品の摂取時間および摂取後の眼圧測定までの時間を規定していないという制限がある.眼圧下降作用の詳細については,さらなる研究が必要と考える.ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品の日本人における眼圧の下降が確認されたものの,その下降幅は緑内障治療薬に比べ弱いため,緑内障治療薬の代替えとしてではなく,眼圧上昇を防ぐ可能性のある眼の健康維持を目的とする健康補助食品として使用されることが推奨されると考えられる.CIV結論ビルベリー/松樹皮抽出物配合食品のC12週摂取により,日本人健康成人において摂取前に比べ有意に眼圧が下降した.ビルベリー抽出物/松樹皮抽出物配合食品は,忍容性もよく,眼圧を下降させることで眼の健康維持に貢献する可能性が示唆された.利益相反本臨床試験は,参天製薬株式会社の資金提供により実施された.筆者の髙木泰孝,島田久生,沖上裕美は参天製薬株式会社の社員である.筆者の庄司信行は,参天製薬のアドバイザーである.謝辞:本稿の作成にあたり,試験実施を担当いただいた医療法人社団信濃会信濃坂クリニック院長(試験担当医師)武士仁彦先生,スタッフの皆様,一連のモニタリング業務を担当していただいた株式会社CTESホールディングス臨床研究事業本部臨床試験管理部管理室の早川優子氏,統計解析計画を監修いただいた関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科講師の竹田竜嗣博士に深く感謝いたします.本試験に関与した参天製薬の社員に感謝いたします.文献1)厚生労働省:平成C30年簡易生命表の概況(政府の統計令和元年C7月C30日).https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/Chw/life/life18/dl/life18-15.pdf2)厚生労働省:健康寿命のあり方に関する有識者研究会,「健康寿命のあり方に関する有識者研究会報告書」(2019年C3月).Chttps://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000495323.Cpdf3)SteigerwaltCJrCRD,CBelcaroCG,CMorazzoniCPCetal:E.ectsCofMirtogenolonocularblood.owandintraocularhyper-tensionCinCasymptomaticCsubjects.CMolCVisC14:1288-1292,C20084)SteigerwaltCJrCRD,CBelcaroCG,CMorazzoniCPCetal:Mirto-genolpotentiateslatanoprostinloweringintraocularpres-sureCandCimprovesCocularCbloodC.owCinCasymptomaticCsubjects.ClinOphthalmol,C2010:471-476,C20105)SteigerwaltR,BelcaroG,CesaroneMRetal:OcularandretrobulbarCbloodC.owCinCocularChypertensivesCtreatedCwithCtopicalCtimolol,CbetaxololCandCcarteolol.CJCOculCPhar-macolTherC25:537-540,C20096)GaoCB,CChangCC,CZhouCJCetal:PycnogenolCprotectsCagainstCrotenone-inducedCneurotoxicityCinCPC12CcellsCthroughregulatingNF-kB-iNOSsignalingpathway.DNACellBiolC34:643-649,C20157)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:ComparisonCofCglaucomatousCprogressionCbetweenCuntreatedCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucomaCandCpatientsCwithCtherapeuticallyCreducedCintraocularCpres-sures.AmJOphthalmolC126:498-505,C19988)KayserCOCandCWarzechaH:PharmaceuticalCbiotechnolo-gy:DrugCdiscoveryCandCclinicalCapplications.CJohnCWileyC&Sons,Inc.,NJ,USA,20129)関澤春仁,野上紀恵,河野圭助:ベリー類のアントシアニン含量の比較.東北農業研究60:225-226,C200710)吉富克則,古川裕之,宮本謙一:臨床試験において収集される有害事象情報の実態調査.臨床薬理39:99-104,C200811)NishiokaCK,CHidakaCT,CNakamuraCSCetal:Pycnogenol,CFrenchCmaritimeCpineCbarkCextract,CaugmentsCendotheli-um-dependentCvasodilationCinChumans.CHypertensionCResC30:775-780,C200712)UhlenhutCK,CHoggerP:FacilitatedCcellularCuptakeCandCsuppressionofinduciblenitricoxidesynthasebyametab-oliteCofCmaritimeCpineCbarkextract(Pycnogenol)C.CFreeCRadicBiolMedC53:305-313,C201213)TanitoCM,CKaidzuCS,CTakaiCYCetal:StatusCofCsystemicCoxidativeCstressesCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaandpseudoexfoliationsyndrome.PLoSOneC7:Ce49680,C201214)GizziC,Torno-RodriguezP,BelcaroGetal:MirtogenolRCsupplementationCinCassociationCwithCdorzolamide-timololCorClatanoprostCimprovesCtheCretinalCmicrocirculationCinCasymptomaticCpatientsCwithCincreasedCocularCpressure.CEurRevMedPharmacolSciC21:4720-4725,C2017***

ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の処方パターンと 短期効果

2022年2月28日 月曜日

《原著》あたらしい眼科39(2):226.229,2022cブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の処方パターンと短期効果井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CExaminationofthePrescriptionsandShort-TermE.cacyofBrinzolamide/BrimonidineFixedCombinationEyeDropsforGlaucomaKenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BBFC)処方症例の特徴と短期効果を後向きに調査する.対象および方法:2020年C6.9月にCBBFCが新規に処方されたC138例の患者背景と処方パターンを調査した.変更症例では変更前後の眼圧を比較した.結果:原発開放隅角緑内障C85例,正常眼圧緑内障C35例,その他C18例だった.眼圧はC15.3±5.0CmmHg,使用薬剤数はC3.6±1.3剤だった.BBFC変更C121例,追加C4例,変更追加C13例だった.変更薬剤はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬C62例,ブリンゾラミド点眼薬C29例などだった.眼圧はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更症例では変更前C14.2±3.0CmmHgと変更後C14.9±4.4CmmHgで同等だった.中止例はC14例(10.1%)で眼圧上昇C5例,掻痒感C3例などだった.結論:BBFC処方は同成分同士,含有薬剤からの変更が多かった.眼圧は同成分同士の変更では変化なく,安全性も良好だった.CPurpose:ToCinvestigateCpatientCcharacteristicsCandCshort-termCe.cacyCofCbrinzolamide/brimonidineC.xedcombination(BBFC)eyeCdropsCforCglaucoma.CSubjectsandmethods:ThisCretrospectiveCstudyCinvolvedC138patientsnewlyprescribedwithBBFCinwhomintraocularpressure(IOP)beforeandafterswitchingwereinvesti-gatedandcompared.Results:Inthe138patients,thediagnosiswasprimaryopen-angleglaucomain85,normal-tensionglaucomain35,andotherin18.ThemeanIOPvaluewas15.3±5.0CmmHg,andthemeannumberofmedi-cationsCusedCwasC3.6±1.3.CPrescriptionCpatternsCwereswitching(121patients),adding(4patients),CandCadding/switching(13patients).CInCtheCswitchingCgroup,C62CpatientsCswitchedCfromCbrinzolamide+brimonidineCandC29CpatientsCswitchedCfromCbrinzolamideCalone.CInCtheCpatientsCwhoCswitchedCfromCbrinzolamide+brimonidine,CnoCsigni.cantCdi.erenceCofCmeanCIOPCwasCobservedCbetweenCpreCandpostCswitching(i.e.,C14.2±3.0CandC14.9±4.4CmmHg,Crespectively).CPostCadministration,C14patients(10.1%)wereCdiscontinued.CConclusions:BBFCCwasCusedasswitchingfromallorpartofthesameingredients.Therewasnosigni.cantdi.erenceinIOPpostswitch-ingbetweenthesameingredients,andthesafetywassatisfactory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(2):226.229,C2022〕Keywords:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,処方パターン,眼圧,安全性,変更.brimonidine/brinzol-amide.xedcombination,prescriptionspattern,intraocularpressure,safety,switching.Cはじめに低下が問題となる2).そこでアドヒアランス向上のために配緑内障点眼薬治療においてはアドヒアランス維持,向上が合点眼薬が開発された.わが国ではC2010年にラタノプロス重要である.アドヒアランス低下は緑内障性視野障害の進行ト/チモロール配合点眼薬が使用可能になり,2019年C12月に関与している1).また,多剤併用治療ではアドヒアランスまでにC7種類が上市された.このC7種類の配合点眼薬の特徴〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC226(94)は,すべての配合点眼薬にCb遮断点眼薬が配合されていることである.Cb遮断点眼薬の眼圧下降効果は強力である3).しかし,循環器系や呼吸器系の全身性副作用が出現することがあり,コントロール不十分な心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II・III度),心原性ショックのある患者,重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者では使用禁忌である.そのためCb遮断点眼薬を配合しない配合点眼薬の開発が望まれていた.2020年C6月にブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬を配合したブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(アイラミド)が使用可能となり,日本で実施された治験において良好な眼圧下降効果と高い安全性が報告された4,5).しかし,臨床現場でどのような患者にブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が使用されているかを調査した報告は過去にない.そこで今回,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された患者について,その処方パターン,短期的な眼圧下降効果と安全性を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2020年C6.9月に井上眼科病院に通院中でブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(1日C2回朝夜点眼)が新規に投与された緑内障あるいは高眼圧症患者C138例C138眼(男性70例,女性C68例)を対象とした.平均年齢はC68.2C±10.5歳(平均C±標準偏差)(33.87歳)であった.緑内障病型は原発開放隅角緑内障C85例,正常眼圧緑内障C35例,続発緑内障14例(ぶどう膜炎C7例,落屑緑内障C6例,血管新生緑内障C1例),原発閉塞隅角緑内障C1例であった.投与前眼圧は投与時の眼圧,投与後眼圧は投与後初めての来院時,2.3C±0.9カ月後,1.4カ月後に測定した.投与前眼圧はC15.3C±5.0mmHg,8.43CmmHgであった.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された症例を,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が追加投与された症例(追加群),前投薬を中止してブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が投与された症例(変更群),複数の薬が変更,追加となった症例(変更追加群)に分けた.変更群では変更した点眼薬を調査した.変更群ではブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬,ブリンゾラミド点眼薬から変更した症例についてはおのおの投与前後の眼圧を比較した.投与後の副作用と中止症例を調査した.配合点眼薬は薬剤数C2剤として解析した.診療録から後ろ向きに調査を行った.片眼該当症例は罹患眼,両眼該当症例は投与前眼圧が高いほうの眼を対象とした.変更前後の眼圧の比較には対応のあるCt検定を用いた.有意水準はCp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.図1変更症例の変更前薬剤II結果全症例のうち追加群はC4例(2.9%),変更群はC121例(87.7%),変更追加群はC13例(9.4%)であった.追加群は正常眼圧緑内障C2例,原発開放隅角緑内障C1例,続発緑内障(血管新生緑内障)1例であった.追加前眼圧はC19.5C±9.7CmmHg(14.34CmmHg),追加後眼圧はC13.3C±4.7CmmHg(9.20CmmHg)で,眼圧は追加前後で同等であった(p=0.100).使用薬剤はなしがC3例,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬がC1例であった.副作用出現症例と中止症例はなかった.変更追加群は原発開放隅角緑内障C9例,正常眼圧緑内障C2例,続発緑内障(ぶどう膜炎)2例であった.変更追加前眼圧はC20.5C±9.6CmmHg(10.43CmmHg),変更追加後眼圧はC15.0C±3.7CmmHg(10.20CmmHg)で,眼圧は変更追加前後で同等であった(p=0.051).使用薬剤数はC3.0C±1.8剤であった.変更追加後の副作用はC1例(眼刺激)で出現した.中止症例は眼圧下降不十分C1例,眼刺激C1例,眼圧が下降したため追加C1カ月以内に中止C1例であった.変更群の変更した点眼薬の内訳はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬C62例(51.2%)(以下,A群),ブリンゾラミド点眼薬C29例(24.0%)(以下,B群),ブリモニジン点眼薬C14例(11.6%)(以下,C群),その他C16例(13.2%)(以下,その他群)であった(図1).各群の変更前の平均薬剤数は,A群C4.3C±0.8剤,B群C3.1C±0.8剤,C群C2.8C±0.9剤,その他群C3.5C±1.1剤であった.平均使用点眼薬(ボトル)数は変更前CA群C3.7C±0.7本,B群C2.5C±0.7本,C群C2.4C±0.8本,変更後CA群C2.7C±0.7本,B群C2.5C±0.7本,C群C2.4C±0.8本であった.1日の平均点眼回数は,変更前CA群C6.2C±1.2回,B群C3.8C±1.2回,C群C4.0C±1.4回,変更後CA群C4.2C±0.7回,B群C3.8C±1.2回,C群C4.0C±1.4回であった.薬剤変更理由は,A群はアドヒアランス向上,B群,C群は眼圧下降不十分であった.その他群の変更理由は,視野障害進行C8例,眼圧下降不十分C4例,アドヒアランス向上C3例,副作用発現A群(ブリモニジン点眼薬+B群(ブリンゾラミド点眼薬からの変更)30ブリンゾラミド点眼薬からの変更)**p<0.00013025252015105201510500C群(ブリモニジン点眼薬からの変更)NS30変更前変更後変更前変更後眼圧(mmHg)16.12514.420151050変更前変更後図2変更症例の眼圧変化(*p<0.05,対応のあるCt検定)(不整脈)1例であった.眼圧はCA群では変更前C14.2C±3.0mmHg,変更後C14.9C±4.4CmmHgで,変更前後で同等であった(p=0.119)(図2).B群では変更前C15.0C±3.6CmmHg,変更後C12.6C±2.8CmmHgで,変更後に有意に下降した(p<0.0001).C群では変更前C16.1±5.6CmmHg,変更後C14.4C±4.3CmmHgで,変更前後で同等であった(p=0.150).投与後に副作用はC11例(8.0%)で出現した.その内訳は変更追加群では眼刺激C1例,変更群ではCA群で掻痒感C2例,視力低下C1例,結膜充血C1例,掻痒感+結膜充血C1例,B群で掻痒感C2例,掻痒感+眼瞼発赤C1例,めまいC1例,C群で眼刺激C1例であった.中止症例はC14例(10.1%)であった.その内訳は変更追加群で眼圧下降C1例,眼刺激C1例,眼圧下降不十分C1例,変更群ではCA群で眼圧上昇C3例,視力低下1例,掻痒感C1例,B群で掻痒感C1例,掻痒感+眼瞼発赤C1例,めまいC1例,C群で眼刺激C1例,眼圧上昇C1例,その他群で眼圧上昇C1例であった.CIII考按ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された症例を検討したが,さまざまな処方パターンがみられた.ブリモニジン/チモロール配合点眼薬の処方パターンの報告6)では,変更群がC93.7%を占めていた.変更群の変更した点眼薬の内訳は,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬+ブリモニジン点眼薬からブリモニジン/チモロール配合点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬への変更C53.4%,Cb遮断点眼薬18.3%,ブリモニジン点眼薬C8.3%などであった.ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターンの報告7)では,変更群がC85.1%を占めていた.変更群の変更した点眼薬の内訳は,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬C43.4%,Cb遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬C34.9%,Cb遮断点眼薬16.9%,炭酸脱水酵素阻害点眼薬C4.2%などであった.同成分同士の変更がブリモニジン/チモロール配合点眼薬C53.3%,ブリンゾラミド点眼薬/チモロール配合点眼薬C78.3%と多く,今回(51.2%)もほぼ同様の結果であった.今回のブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更(A群)では眼圧は変更前後で同等だった.海外で行われたブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬とブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬併用の比較試験において眼圧下降は同等であった8).ただし海外のブリモニジン点眼薬の濃度はC0.2%で,日本のC0.1%製剤とは異なる.A群では平均使用薬剤数はC1剤,1日の平均点眼回数はC2.0回減少したので患者の点眼の負担は減少したと考えられる.一方,今回のブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更(B群)では眼圧は変更後に有意に下降し,眼圧下降幅はC1.7C±4.2mmHg,眼圧下降率はC7.6C±20.2%であった.日本で行われた治験では,ブリンゾラミド点眼薬からの変更では眼圧は変更C4週間後に有意に下降し,ピーク時の眼圧下降幅はC3.7C±2.1CmmHg,眼圧下降率はC18.1±10.3%であった4).今回のブリモニジン点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更(C群)では眼圧は変更前後で同等だった.日本で行われた治験ではブリモニジン点眼薬からの変更では眼圧は変更C4週間後に有意に下降し,ピーク時の眼圧下降幅はC2.9C±2.0CmmHg,眼圧下降率はC14.8C±10.3%であった5).今回の調査では日本で行われた治験5)より眼圧下降は不良であったが,変更前の使用薬剤数がC2.8C±0.9剤と多剤併用であったためと考えられる.また日本で行われた治験においても眼圧下降幅はブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更した薬剤としてブリンゾラミド点眼薬症例(3.7C±2.1CmmHg)のほうがブリモニジン点眼薬症例(2.9C±2.0CmmHg)よりも大きかった.つまりブリモニジン点眼薬のほうがブリンゾラミド点眼薬よりも眼圧下降効果が強い可能性がある.メタアナリシスにおいても眼圧下降のピーク値はブリモニジン点眼薬(6.1CmmHg)はブリンゾラミド点眼薬(4.4mmHg)より強力であった9).今回変更後に副作用はC11例(8.0%)で出現した.その内訳は掻痒感C4例,眼刺激C2例,視力低下C1例,結膜充血C1例,めまいC1例,掻痒感+結膜充血C1例,掻痒感+眼瞼発赤1例であった.日本で行われたブリンゾラミド点眼薬からの変更の治験では副作用はC8.8%に出現した4).その内訳は霧眼C8.2%,点状角膜炎C2.7%,結膜充血C0.5%,眼脂C0.5%,眼の異物感C0.5%,眼刺激C0.5%,眼瞼炎C0.5%,眼乾燥C0.5%,硝子体浮遊物C0.5%などであった.日本で行われたブリモニジン点眼薬からの変更の治験では副作用はC12.9%に出現した5).その内訳は霧視C6.7%,眼刺激C2.8%,結膜充血C1.1%,眼の異常感C1.1%,結膜炎C1.1%,アレルギー性結膜炎0.6%,結膜浮腫C0.6%,眼脂C0.6%,点状角膜炎C0.6%などであった.副作用に関して今回調査と治験4,5)の結果を比較すると今回調査では掻痒感が多かったが,それ以外はほぼ同等だった.中止症例は今回はC10.1%であったが,治験では有害事象による中止症例はなかった4,5).今回,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に処方された患者を調査した.ブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更がもっとも多く,ブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬からの変更が続いた.ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬からの変更とブリモニジン点眼薬からの変更では投与後に眼圧に変化はなく,ブリンゾラミド点眼薬からの変更では投与後に眼圧は有意に下降した.副作用はC8.0%に出現したが,重篤ではなかった.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬は短期的には良好な眼圧下降効果と高い安全性を示した.今後は長期的な経過観察による検討が必要である.文献1)ChenPP:BlindnessCinCpatientsCwithCtreatedCopen-angleCglaucoma.OphthalmologyC110:726-733,C20032)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)LiCT,CLindsleyCK,CRouseCBCetal:ComparativeCe.ective-nessCofC.rst-lineCmedicationsCforCprimaryCopen-angleglaucoma:Asystematicreviewandnetworkmeta-analy-sis.OphthalmologyC123:129-140,C20164)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科C37:1299-1308,C20205)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第CIII相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験.あたらしい眼科C37:1289-1298,C20206)小森涼子,井上賢治,國松志保ほか:ブリモニジン/チモロール配合点眼薬の処方パターンと短期的効果.臨眼C75:C521-526,C20217)井上賢治,藤本隆志,石田恭子ほか:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン.あたらしい眼科C32:C1218-1222,C20158)Gandol.CSA,CLimCJ,CSanseauCACCetal:RandomizedCtrialCofbrinzolamide/brimonidineversusbrinzolamideplusbri-monidineforopen-angleglaucomaorocularhypertension.AdvTherC31:1213-1227,C20149)VanderValkR,WebersCA,SchoutenJSetal:Intraocu-larpressure-loweringe.ectsofallcommonlyusedglauco-madrugs:aCmeta-analysisCofCrandomizedCclinicalCtrials.COphthalmologyC112:1177-1185,C2005***