‘眼球運動障害’ タグのついている投稿

右外転神経麻痺後に左動眼神経麻痺,右動眼神経麻痺を 呈した頭蓋底腫瘍の1 例

2022年2月28日 月曜日

《原著》あたらしい眼科39(2):244.247,2022c右外転神経麻痺後に左動眼神経麻痺,右動眼神経麻痺を呈した頭蓋底腫瘍の1例鈴木綜馬*1,2井田洋輔*2日景史人*2伊藤格*1橋本雅人*3大黒浩*2*1市立室蘭総合病院眼科*2札幌医科大学眼科学講座*3中村記念病院眼科CACaseofaSkullBaseTumorthatCausedAbnormalitiesofOcularMotilitySoumaSuzuki1,2),YosukeIda2),FumihitoHikage2),KakuItoh1),MasatoHashimoto3)andHiroshiOhguro2)1)DepartmentofOphthalmology,MuroranCityGeneralHospital,2)DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,3)DepartmentofOphthalmology,NakamuraMemorialHospitalC三叉神経腫瘍の増大,および末梢性CT細胞リンパ腫(PTCL)の髄膜播種に付随して多彩な眼球運動障害を呈した症例を経験した.症例はC76歳,女性.20XX年,複視を自覚し当科を受診した.既往歴で左三叉神経腫瘍およびPTCLがあった.初診時に右外転神経麻痺を認めたが,1カ月後に自然軽快と同時に左動眼神経麻痺を認めた.頭部MRIで左三叉神経腫瘍の海綿静脈洞への拡大がみられ,ガンマナイフにより左動眼神経麻痺は改善した.その後,右動眼神経麻痺が出現した.全身精査にてCPTCLの髄膜播種を含めた多発転移が確認された.眼球運動障害が多彩に変化した原因として三叉神経腫瘍増大とCPTCLの髄膜播種が関連したと考えられた.CPurpose:Toreportacaseofskullbasetumorthatcausedabnormalitiesofocularmotility.Case:A76-year-oldCwomanCwithCaChistoryCofCleftCtrigeminalCnerveCtumorCandCperipheralCT-celllymphoma(PTCL)presentedCinC20XXwiththeprimarycomplaintofdiplopia.Atinitialpresentation,shehadrightsixth-nervepalsy,yet1-monthlateritresolvedwithouttreatment.However,shesimultaneouslyhadleftthird-nervepalsy.AheadMRIexamina-tionrevealedanenlargedlefttrigeminalnervetumorinvadingthecavernoussinus.TreatmentwithGammaKniferadiosurgeryCreducedCtheCtumorCsize,CandCtheCleftCthird-nerveCpalsyCresolved.CHowever,CimmediatelyCafterwards,Cshepresentedwithrightthird-nervepalsy.Asubsequentwholebodyexaminationrevealedmeningealdissemina-tionofPTCL.Conclusion:Inthiscase,ourdiagnosisrevealedthattheenlargementoflefttrigeminalnervetumorandmeningealdisseminationofPTCLcausedabnormalitiesofocularmotility.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(2):244.247,C2022〕Keywords:三叉神経腫瘍,末梢性CT細胞リンパ腫(PTCL),眼球運動障害,ガンマナイフ,髄膜播種.trigeminalnervetumor,peripheralT-celllymphoma(PTCL),ocularmovementabnormalities,gammaknifetherapy,menin-gealdissemination.Cはじめに末梢性CT細胞リンパ腫(peripheralCT-celllymphomas:PTCL)は,胸腺での分化成熟を経て末梢組織に移動したCT細胞に由来する種々のリンパ系腫瘍の総称であり,aggres-sivelymphomasに分類される1).PTCLはわが国ではリンパ系腫瘍の約C10%を占め1),病変部位としては末梢のリンパ節が多いが,骨髄,肝臓,脾臓などにも浸潤を認めることがある.節外病変では,皮膚や消化管が多い.化学療法抵抗性であり,5年生存率C20.30%と予後不良である2).今回,筆者らは縦隔原発のCPTCLで髄腔内播種に伴い,多彩な眼球運動障害をきたした症例を経験したので報告するCI症例患者:76歳,女性.主訴:複視,眼位異常.全身既往歴:特記事項なし.〔別刷請求先〕鈴木綜馬:〒060-8543北海道札幌市中央区南C1条西C17丁目札幌医科大学眼科学講座Reprintrequests:SoumaSuzuki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,17Chome,Minami1Jonishi,Chuoku,Sapporo-shi,Hokkaido060-8543,JAPANC244(112)家族歴:特記事項なし.眼既往歴:白内障.現病歴:20XX年,縦隔原発のステージCIVのCPTCLと診断され,他院血液内科で化学療法を受け寛解状態であった.1年後に左顔面のしびれを自覚し,脳神経外科で海綿静脈洞付近の左三叉神経腫瘍を指摘された.当時,脳神経外科ではPTCL寛解からC1年程度経過していたこと,三叉神経腫瘤は脳外科的に良性腫瘤のことが圧倒的に多く,その場合にはガンマナイフ治療が非常に効果的であるため3),ガンマナイフ治療を検討されていた.同年C9月末にC2週間前からの複視および眼位異常を主訴に当科を受診した.初診時所見:視力:右眼C0.03(n.c.),左眼C0.2(0.4C×1.25D(cyl.1.0DAx65°),眼圧は右眼15mmHg,左眼18mmHg,前眼部は両眼に帯状角膜変性,中間透光体は両眼にCEmery-Little分類CIII度程度の白内障,左眼の眼底には異常を認めず,右眼に網脈絡膜萎縮および後部ぶどう腫を認めた.相対的瞳孔求心路障害は陰性で,瞳孔は左右同大であり,眼球運動は右眼の外転障害を認めた.臨床経過:脳神経外科受診よりC2週間後の受診であり,新規の頭蓋内腫瘍や動脈瘤の発生の可能性は低いと考え,原因不明の右外転神経麻痺と診断し,経過観察とした.初診から4週間後に,左眼瞼下垂を自覚し再度受診した.眼球運動は,右外転障害は改善していたが,左眼は上,下,内転ともに制限を認め左動眼神経麻痺を認めた.相対的瞳孔求心路障害は左眼で陽性であった.左三叉神経腫瘍をフォローしていた脳神経外科での頭蓋内精査を依頼した.脳神経外科受診時のMRI画像(図1)で,くも膜下腔を走行する両側の動眼神経が確認でき,さらに左三叉神経腫瘍が海綿静脈洞後部に浸潤し,左動眼神経を障害している所見を認めた.したがって,左動眼神経麻痺の原因は左三叉神経腫瘍の海綿静脈洞浸潤にガンマナイフ開始時よるものと診断した.脳神経外科で行われたガンマナイフ治療により,治療前にみられた左三叉神経腫瘍は照射からC2カ月後の時点で著明に縮小した(図2).ガンマナイフ治療C1週間後の受診時,左動眼神経麻痺は一部改善し,眼瞼下垂も軽減していたが,右眼において眼瞼下垂・眼球運動障害を認め,右動眼神経麻痺を認めた.この時点で,初診時より右外転神経麻痺,左動眼神経麻痺,右動眼神経麻痺を発症しており,眼球運動障害の原因神経が多彩な変化をきたしていたため,頭蓋内の再精査を脳神経外科・血液内科に依頼した.全身検索の結果,PET-CTで頭蓋底に集積所見が指摘され,さらに髄液細胞診では,変性膨化した異型リンパ球の小集団が認められ,PTCLの所見と一致した(図3).以上の所見か図1脳神経外科受診時の0.7mm厚の薄スライス高速グラジエントフィールドエコー法(CISS)による頭部冠状断連続写真くも膜下腔を走行する両側の動眼神経(C.)が描出され,海綿静脈洞後部まで追跡可能である.また,左三叉神経腫瘍が海綿静脈洞後部に浸潤する所見があり,左動眼神経を障害している.ガンマナイフ治療2カ月後図2初診から4週間後に行われたガンマナイフ治療前後のCISS画像所見脳神経外科で行われた左三叉神経腫瘍へのガンマナイフ治療により,治療前にみられた左三叉神経腫瘍が照射からC2カ月後の時点で著明に縮小している.図3髄液細胞診像左は異型リンパ球の小集団が認められ,リンパ球の核にくびれを認め(C.),PTCLの所見と一致した.右の画像では変性膨化したリンパ腫様の細胞集団を認め,PTCLの髄腔内播種が強く示唆された.ら,PTCLの髄腔内播種と診断した.その後,血液内科にてメトトレキサートの髄注,および大量メトトレキサート療法を行ったが,全身状態の悪化に伴い,現在はホスピスに転院されている.CII考按本症においては,右外転神経麻痺に続き左動眼神経,右動眼神経麻痺が連続して出現した.一般的に動眼神経麻痺の病因としては,糖尿病,脂質異常症などによる神経栄養血管の虚血によるものがもっとも多く,交通事故などの重度の頭部外傷,脳動脈瘤,脳内出血,脳腫瘍などでも発症し,まれではあるが先天性のものなども存在する.また,外転神経麻痺の病因は動眼神経麻痺と同じく虚血性のものが多いが,外転神経は解剖学的に橋─延髄移行部から斜台に至る長い距離を上行することから,単に脳腫瘍など遠隔病変による脳圧亢進や感染によっても発症する.しかしながら,本症における眼症状は左右および障害神経が経時的に変化したことから,虚血や脳圧亢進,感染などで一元的に説明することは困難である.まれではあるが,動眼神経麻痺と外転神経麻痺を同時発症する疾患としてCoculomotor-abducenssynkinesis(OAS)がある.OASは異なる外眼筋が協調して同時に収縮することで生じるとされている.過去の報告では脳幹出血を起こし,外転神経麻痺に拮抗する内直筋の異常な神経支配が生じた17歳,男性症例3)や右外転時に右外直筋と上眼瞼挙筋の同時収縮を認めたC4歳,男児の症例が報告されている4).しかし,OASは頭部外傷を契機に発症することが多く,本症例の経過にはそぐわないと考えられた.Meckel腔に発生する腫瘍は,三叉神経由来の良性腫瘍である三叉神経鞘腫が一般的である.三叉神経腫瘍は良性腫瘍のことが圧倒的に多く,その場合ガンマナイフが非常に効果的であるため3),全摘出術よりガンマナイフが選択されることが多い.ガンマナイフの三叉神経鞘腫に対する反応はきわめて遅く,12.18カ月横ばいで推移して,その後縮小していくが3),本症例は腫瘍がC1カ月程度で縮小しており,三叉神経鞘腫としては結果が合致しなかった.一方,中枢神経の悪性リンパ腫に対するガンマナイフの効果は数カ月で急速に縮小し,場合によっては消失するなど両疾患で違いが認められる4,5).本症例の三叉神経腫瘍はガンマナイフによりC2カ月余りで縮小したこと,その直後に髄腔内播種として再発したことから,三叉神経鞘腫の可能性は低く,リンパ腫(PTCL)であった可能性が高いと推察した.悪性リンパ腫の脳神経の単神経発症はまれであるが,動眼神経と三叉神経の発症が多いとされている4).また,悪性リンパ腫全体では頭蓋内から末梢への進展以外にも,本症例のように頭蓋外から中枢側へ進展した報告もある6,7).頭蓋外から進展するケースでは初期にCMeckel腔の異常を画像にて指摘された報告もあり7,8),本症例も眼科受診前から三叉神経腫瘍を指摘されていた.Meckel腔に発生する悪性リンパ腫に関しては,中枢性原発悪性リンパ腫の報告はあるが,本症例のようなCPTCLの頭蓋底転移はきわめてまれである.CIII結語多彩な眼球運動障害を呈した症例を経験した.元来指摘されていた三叉神経腫瘍と眼球運動障害が,PTCLの髄腔内播種で一元的に説明できると考えられた.文献1)LymphomaCStudyCGroupCofCJapanesePathologist:TheCworldChealthCorganizationCclassi.cationCofCmalignantClym-phomainJapan:incidenceofrecentlyrecognizedentities.PatholIntC50:696-702,C20002)直江知樹,朝長万左男,中村栄男ほか:WHO血液腫瘍分類─CWHO分類C2008をうまく活用するために.医薬ジャーナル社,20103)山本昌昭:ガンマナイフの適応と治療成績.神経研究の進歩C57:664-678,C20014)赤座実穂,常深泰司,三條伸夫ほか:左三叉神経障害にて発症したと思われる悪性リンパ腫のC1例.臨床神経C49:C432-436,C20095)NakatomiH,SasakiT,KawamotoSetal:Primarycarve-nousCsinusCmalignantClymphomaCtreatedCbyCgammmaCkniferadiosurgery:caseCreportCandCreviewCofCtheClitera-ture.SurgeNeurolC46:272-279,C19966)IplikciogluAC,DincC,BikmazKetal:Primalylympho-maofthetrigeminalnerve.BrJNeurosurgC20:103-105,C20067)LaineCFJ,CBraunCIF,CJensenCMECetal:PerineuralCtumorCextensionCthroughCtheCforamenovale:evaluationCwithCMRimaging.RadiologyC174:65-71,C19908)AbdleAzizKM,vanLoverenHR:PrimarylymphomaofMeckel’sCcaveCmimickingCtrigeminalschwannnoma:caseCreport.NeurosurgeryC44:859-862,C1999***

眼窩先端部症候群を合併した眼部帯状疱疹の1例

2019年10月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科36(10):1326.1329,2019c眼窩先端部症候群を合併した眼部帯状疱疹の1例川端真理子*1,2福岡秀記*1向井規子*1,3奥村峻大*1,3岩間亜矢子*1外園千恵*1*1京都府立医科大学眼科学教室*2京都市立病院眼科*3大阪医科大学眼科学教室CACaseofOrbitalApexSyndromewithHerpesZosterOphthalmicusMarikoKawabata1,2),HidekiFukuoka1),NorikoMukai1,3),TakahiroOkumura1,3),AyakoIwama1)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospital,3)DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollegeC症例はC68歳,男性.左眼部帯状疱疹と眼球運動障害を発症した.水痘帯状疱疹ウイルス血清抗体価の上昇と,磁気共鳴画像法ガドリニウム造影検査にて動眼神経および滑車神経の炎症と視神経周囲炎を認めたため,眼窩先端部症候群と診断した.帯状疱疹に対する治療は新規作用機序の抗ヘルペスウイルス薬であるアメナメビル内服を使用し,さらにステロイドミニパルス療法(125Cmg/日)に加え大量ステロイドパルス療法(1,000Cmg/日)を施行することで発症C2カ月で改善を得た.本症例では適切な検査とステロイドパルス療法を行ったことにより,早期の眼合併症状改善と早期の社会復帰につなげることができた.CPurpose:ToCreportCaCrareCcaseCofCorbitalCapexCsyndromeCwithCherpesCzosterophthalmicus(HZO).CCaseReport:A68-year-oldmalepresentedwithHZOontheleftsideofhisfaceandophthalmoplegiainhislefteye.UponCexamination,ChisCserumCvaricella-zostervirus(VZV)antibodyCtiterCwasCincreased,CandCmagneticCresonanceCimagingshowedgadoliniumenhancementintheleftopticperineuritis,oculomotornerve,andpulley-liketrochlea.HeCwasCdiagnosedCasCorbitalCapexCsyndromeCsecondaryCtoCHZO.CAfterCaC2-monthCsystemicCtreatmentCwithCame-namevir,CaCnovelCantiviralCagentCagainstCVZVCandCherpesCsimplexCvirus,CandCsteroidCpulseCtherapy,CtheCpatient’sCconditionCimproved.CConclusions:WeCconcludeCthatCophthalmoplegiaCsecondaryCtoCHZOCshowedCearlyCimprove-mentviatheproperchoiceofexaminationsandsubsequenttherapy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)36(10):1326.1329,C2019〕Keywords:眼部帯状疱疹,眼球運動障害,視神経周囲炎,眼窩先端部症候群,アメナメビル.herpesCzosterCoph-thalmicus,ophthalmoplegia,opticperineuritis,orbitalapexsyndrome,amenamevir.Cはじめに帯状疱疹とは水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zostervirus:VZV)が原因となるウイルス感染症であり,一次感染によって神経節に潜伏していたCVZVが,なんらかの原因で再活性化されることで発症する.そのなかでも眼部帯状疱疹は,三叉神経節に潜伏したCVZVが再活性化し,三叉神経第C1枝支配領域の帯状疱疹として発症する.眼部帯状疱疹は眼瞼を含む広範な皮疹に加えて角膜炎,虹彩炎・ぶどう膜炎や結膜炎などを認めることが多いが,ほかにも動眼神経,外転神経,滑車神経麻痺による外眼筋麻痺を引き起こすこともある.まれではあるが中枢神経内感染などによる神経症の合併も報告されている1).帯状疱疹の治療薬としては長年,抗ヘルペスウイルス薬であるアシクロビル,バラシクロビル塩酸塩,ファムシクロビルが用いられてきたが,2017年より新規作用機序をもつアメナメビルが処方可能となった.既報では,帯状疱疹による外眼筋麻痺に対して,従来の抗ヘルペスウイルス薬に加えてステロイド内服や静脈投与での加療が中心に行われているが,その治療方針は確立するに至っていない.今回,眼窩先端部症候群を合併した眼部帯状疱疹に対し,アメナメビルとステロイドパルス療法により著明な改善を得た症例を経験したので報告する.〔別刷請求先〕川端真理子:〒604-8845京都市中京区壬生東高田町C1-2京都市立病院眼科Reprintrequests:MarikoKawabata,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospital,1-2Higashi-Takada,Mibu,Nakagyo-ku,Kyoto604-8845,JAPANC1326(104)図19方向眼位左眼は外転方向以外の運動障害を認める.図2初診時前眼部写真およびフルオレセイン染色(左眼)毛様充血と,5時からC8時にかけての角膜周辺部に浮腫と上皮障害を認める.I症例68歳,男性.特記すべき既往歴はなし.左眼痛と充血を自覚し前医を受診した.点状表層角膜炎および虹彩炎と診断され,0.1%フルオロメトロン左眼C4回/日点眼を開始された.2病日に左顔面に皮疹を認めたため,近医皮膚科を受診し,帯状疱疹の診断にてアメナメビル内服とレボフロキサシン左眼C4回/日点眼を開始された.また,同日頃より複視も自覚しはじめた.7病日には左眼の眼圧上昇(33CmmHg)を認めたためドルゾラミド点眼左眼3回/日,アセタゾラミド500Cmg内服を開始されたが,高眼圧の改善なく,11病日に当院紹介となった.当院初診時の検査では,右眼矯正視力C1.2,左眼矯正視力0.3,右眼眼圧C14CmmHg,左眼眼圧C28CmmHgであった.左前頭部,左眼瞼,鼻尖部といった三叉神経第C1枝領域に痂皮化した皮疹を認め,軽度左眼瞼下垂を認めた.眼位は右眼正位,左眼外転位であり,著明な左眼内転,上転,下転運動障害を認めた(図1).瞳孔径は右眼C3Cmm,左眼C6Cmmと左眼は散瞳固定しており,対光反射が消失していた.左眼には毛様充血を認め,角膜周辺部に上皮障害と角膜浮腫を認め,前房内炎症を認めた(図2).中心フリッカ値は右眼C39CHz,左眼C35CHzであった.図3MRI画像(ガドリニウム造影)左眼窩部(1)視神経周囲炎,(2)動眼神経,(3)滑車神経に炎症を示す造影効果を認める.左眼ヘルペス角膜炎およびヘルペス虹彩炎,左動眼神経麻痺と診断し,アシクロビル眼軟膏左眼C5回/日点入,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム左眼C6回/日点眼,レボフロキサシン左眼C6回/日点眼,ドルゾラミド塩酸塩チモロールマレイン酸塩液(コソプトCR)左眼C2回/日点眼で治療開始した.14日目には,左眼の角膜上皮障害,浮腫ともに改善を認め,前房内炎症も消失し,左眼圧C11CmmHgと低下した.abcd図4HESS試験a:当院初診時C11病日.Cb:ステロイドパルス開始前C53病日.Cc:ステロイドパルス終了後C60病日.Cd:81病日.眼球運動の改善を認める.図581病日前眼部写真(左眼)毛様充血や角膜上皮の状態は改善し,散瞳状態も改善傾向にある.しかし,左眼痛と左動眼神経麻痺は改善を認めなかったため,メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム125Cmg点滴を投与したあとに,プレドニゾロン(PSL)30mg/日をC3日間,また同時にアメナメビルC400Cmg/日をC4日間内服し,点眼薬はベタメタゾンリン酸エステルナトリウム左眼C4回/日へ減量し,その他は継続とした.18病日には,角膜上皮はさらに改善したが,依然,眼痛と動眼神経麻痺は改善を認めなかった.その後もCPSLの投与量を漸減したが,眼球運動障害は改善なく,左眼視力も矯正C0.7以上の改善が乏しいため,25病日に脳神経内科に対診を依頼した.血液検査でCVZV抗体価:IgM1.20(基準値:0.80未満)IgG367(基準値:2.0未満)と高値でありCVZVによる感染初期と考えられ,また磁気共鳴画像法(MRI)ガドリニウム造影検査で,左視神経周囲炎および動眼神経(第CIII脳神経),滑車神経(第CIV脳神経)の炎症を示す造影効果を認めたため(図3),左眼窩先端部症候群と診断された.髄液検査ではリンパ球の増加を認めるもののCVZV-PCRではCDNAを検出しなかったため,髄膜炎への移行のリスクは低いと判断し,54病日よりステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロンC1,000mg/日をC3日間)を入院にて施行し,その後にCPSL50Cmg/日の内服を開始し徐々に漸減した.60病日には眼球運動と矯正視力ともに急激に改善し退院となった(図4).その後もCPSLを漸減するも再発は認めず,左眼散瞳状態は時間経過により徐々に改善傾向である(図5).CII考按眼窩先端部症候群とは,眼窩深部や海綿静脈洞の病変により,視神経(第CII脳神経)と,動眼神経(第CIII脳神経),滑車神経(第CIV脳神経),三叉神経(第CV脳神経),外転神経(第CVI脳神経)が障害される複合神経麻痺であり,主症状は視力低下と眼球運動障害,眼痛である.眼窩深部から海綿静脈洞にかけては,非常に狭い範囲に第CIII.VI神経が走行しており,どの神経が障害されるかによって上眼窩裂症候群や海綿静脈洞症候群とよばれるが,これらに第CII神経障害が加わった場合,眼窩先端部症候群と診断される2).本症例では,眼瞼下垂,瞳孔散大,眼球運動障害を認め,初診時にはヘルペス角膜炎およびヘルペス虹彩炎による視力低下と考えていたが,それらが治癒したあとも視力低下が遷延したことにより,眼窩先端部症候群を疑った.さらに造影CMRI検査にて視神経周囲炎(第CII脳神経)と,動眼神経(第CIII脳神経),滑車神経(第CIV脳神経)の造影効果があったことにより確定診断に至った.Marshらは眼部帯状疱疹の合併症について,頻度の高いものでは,結膜炎(75%),眼瞼浮腫(68%),虹彩炎(54%)があるが,精査すればC29%に眼球運動障害を認め,それらは動眼神経,外転神経,滑車神経の順に多いと報告している1).一方,眼球運動障害のC29%に比して,視神経障害は0.4.1.9%と報告されており1,3)本症例のように眼球運動障害に加えて視神経障害を合併する眼窩先端症候群の例はきわめてまれである4.7).治療に関しては,皮疹に対しては抗ヘルペスウイルス薬の内服投与,神経合併症がある場合は点滴静注を行うとされている.眼球運動障害を合併した既報では,ステロイドは内服投与が中心であり,投与量はC30.60Cmgと体重C1Ckg当たりCPSL1Cmg量から開始されることが多いが,ステロイドミニパルス(PSL500Cmg/日をC3日間)やステロイドパルスを施行した報告もあるなかで,佐藤らの報告では,発症後C3カ月で眼球運動の改善を認めたが8),西谷らの報告は発症後C24カ月でも眼球運動の改善は得られなかった9).本症例における眼球運動障害は,125Cmgステロイドミニパルスで十分な改善が得られなかったため,さらに大量ステロイドパルスを追加することで,治療開始からC1.5カ月で著明な改善を得ることができた.本症例では前医からアメナメビル内服にて加療されていた.従来の抗ヘルペスウイルス薬のアシクロビルやバラシクロビルが核酸類似体であるのに対して,アメナメビルはヘリカーゼ・プライマーゼ複合体として新規作用機序として抗ヘルペスウイルス活性をもつ.VZVへの活性が高いとされており腎排泄性でないことから,腎機能の低下した患者に使用しやすい薬剤となっている.本症例ではアメナメビルで加療を行ったが,眼合併症に対してアメナメビルで加療した既報にはなく,十分な検討はなされておらず,今後のさらなる臨床応用が待たれる.眼球運動障害の自然寛解率は76.5%,2週間からC1.5年(平均C4.4カ月)を要するとされている10).自然寛解が多いとされながらも,眼球突出を伴う全眼筋麻痺や虚血性乳頭炎などのように閉塞性血管炎が疑われる場合はステロイドの全身投与が推奨される2).血管炎が進行し虚血性変化が高度になったことにより眼球癆となった全眼筋麻痺を伴う症例も報告されており11),不可逆な虚血性変化が起こる前に迅速なステロイドの全身投与が必要であるといえる.一方でステロイドの全身投与は,ヘルペス脳炎や髄膜炎への移行,免疫抑制作用による合併症の懸念もあるため,全身状態の評価や投与後の全身管理が重要となる.今後,免疫抑制薬の使用やヒト免疫不全ウイルス(humanCimmunode.ciencyvitus:HIV)感染などにより免疫不全状態の患者が増加すると考えられる.これらは眼部帯状疱疹発症の高いリスク因子であり,なおかつ合併症が強く顕在化しやすいため,その治療と全身管理にはよりいっそうの注意が必要となる12).本症例ではステロイドパルス加療前に,感染症検査および髄液検査を施行し,髄膜炎移行リスクが低いことを確認して治療へと踏み切った.本症例では適切な検査とステロイドパルス療法を行ったことにより,早期の眼合併症状改善と早期の社会復帰につなげることができたといえる.CIII結論眼窩先端部症候群を合併した眼部帯状疱疹に対し,ステロイドパルス療法により著明な改善を得た.適切な時期のステロイドパルス療法は早期の眼合併症状改善と早期の社会復帰を可能とした.文献1)MarshCRJ,CDulleyCB,CKellyV:ExternalCocularCmotorCpal-siesCinCophthalmiczoster:ACreview.CBrCJCOphthalmolC61:677-682,C19772)藤田陽子,吉川洋,久冨智朗ほか:眼窩先端部症候群の6例.臨眼59:975-981,C20053)KahlounCR,CAttiaCS,CJellitiCBCetal:OcularCinvolvementCandCvisualCoutcomeCofCherpesCzosterophthalmicus:CreviewCofC45CpatientsCfromCTunisia,CNorthCAfrica.CJCOph-thalmicIn.ammInfect:4-25,C20144)ArdaH,MirzaE,GumusKetal:OrbitalapexsyndromeinCherpesCzosterCophthalmicus.CCaseCReportsCinCOphthal-mologicalMedicine:854503,C20125)青田典子,平原和久,早川和人ほか:眼窩先端部症候群をともなった眼部帯状疱疹のC1例.臨皮C62:220-223,C20086)曺洋喆,国分沙帆,竹内聡ほか:眼部帯状疱疹に続発した眼窩先端部症候群が疑われたC1例.あたらしい眼科C31:453-458,C20147)岡本真奈,細谷友雅:眼部帯状疱疹に合併した眼窩先端部症候群.目のまわりの病気とその治療,(外園千恵,加藤則人編),p153-155,学研メディカル秀潤社,20158)佐藤里奈,山田麻里,玉井一司:眼部帯状疱疹に続発した全眼筋麻痺.臨眼C62:1223-1227,C19849)西谷元宏,児玉俊夫,大橋一夫ほか:眼部帯状疱疹に続発した海綿静脈洞症候群のC1例.眼紀C53:898-903,C200210)LeeCY,TsaiHC,LeeSSetal:Orbitalapexsyndrome:CanCunusualCcomplicationCofCherpesCzosterCophthalmicus.CBMCInfectDisC15:33,C201511)土屋美津保,輪島良平,田辺譲二ほか:全眼筋麻痺および眼球突出をきたした眼部帯状ヘルペスのC2例.眼臨C81:C855-858,C198712)GhaznawiN,VirdiA,DayanAetal:Herpeszosteroph-thalmicus:diseasespectruminyoungadults.MiddleEastAfrJOphthalmolC18:178-182,C2011

MIRAgel®による強膜内陥術後20年以上経過した眼球運動障害の2例

2015年9月30日 水曜日

《原著》あたらしい眼科32(9):1359.1362,2015cMIRAgelRによる強膜内陥術後20年以上経過した眼球運動障害の2例林理穂吉田達彌小野久子鷲尾紀章土田展生幸田富士子公立昭和病院眼科TwoCasesofImprovedEyeMovementafterMIRAgelRExtractionRieHayashi,TatsuyaYoshida,HisakoOno,NoriakiWashio,NobuoTsuchidaandFujikoKodaDepartmentofOphthalmology,ShowaGeneralHospital背景:強膜内陥術に用いられたバックル素材MIRAgelR(マイラゲル)は,術後に膨化・変性し晩期合併症をきたすことが知られている.今回,術後長期間を経て眼球運動障害を発症し,マイラゲルの摘出術を行った2例を経験したので報告する.症例:症例1は43歳,男性.1992年にマイラゲルによる左網膜.離手術の既往がある.2013年に複視を自覚し,紹介受診.左眼球運動障害がみられた.マイラゲル摘出術を施行したところ,眼球運動障害は速やかに改善した.症例2は65歳,男性.1993年に同様の左網膜.離手術の既往がある.左眼の上転を自覚し,2014年に紹介受診.左上斜視および左眼球運動障害がみられた.マイラゲル摘出術を施行したところ,眼位・眼球運動障害は著明に改善した.結論:マイラゲルによる網膜.離術後約20年もの長期間を経過した眼球運動障害の2症例を経験したが,いずれも摘出術後早期に顕著な改善が得られた.Purpose:Toreport2casesofimprovedeyemovementafterMIRAgelRextraction.CaseReports:Case1involveda43-year-oldmalewhopresentedwithswellinginhisupperlefteyelidanddiplopiain2013.Hehadpreviouslyundergonescleralbucklingsurgeryforretinaldetachmentinhislefteyein1992.AfterMIRAgelRwasextracted,movementinthateyerapidlyimproved.Case2involveda65-year-oldmalewhopresentedwithleft-eyehypertropiaandmovementdisorderin2014.Hehadpreviouslyundergonescleralbucklingsurgeryinthateyein1993.AfterMIRAgelRextraction,thestrabismusandmovementdisorderinthateyesignificantlyimproved.Conclusions:Thefindingsofthisstudyshow2casesofeyemovementdisorderthatoccurredmanyyearspostretinaldetachmentsurgerythatimmediatelyimprovedafterMIRAgelRextraction.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(9):1359.1362,2015〕Keywords:マイラゲル,強膜内陥術,眼球運動障害.MIRAgelR,scleralbuckling,eyemovementdisorder.はじめにMIRAgelR(以下,マイラゲル)は1980年頃にRefojoら1)により開発された強膜内陥術用のハイドロゲル性のバックル材料である.異物反応がほとんどなく化学的に安定していると考えられたこと,適度な弾力性があり均一な強膜内陥が作られるため死腔ができにくいこと,抗生物質を吸収しかつ徐放するため感染のリスクが低いと考えられたことなどから,当初理想的なバックル素材として使用された1.3).しかし1997年にHwangら4)によってマイラゲルを使用した強膜内陥術10年後に眼球運動障害と複視が出現した症例が発表されて以来,晩期合併症の報告がみられるようになった.わが国では1980年代後半から2000年頃にかけて一部の施設で使用されていたが,2000年以降に晩期合併症が多数報告されるようになり,日本眼科学会から使用注意喚起が行われた5).以後は使用されなくなったものとみられるが,術後長期間を経てエクストルージョン(バックルが結膜下に突出ないし結膜を破って露出する状態5))をはじめとした晩期合併症の報告が相次いでいる6,7).症状としては複視,異物感,眼窩内充満感などがある8).今回強膜内陥術後20年以上経過した症例に眼球運動障害がみられたが,マイラゲル摘出後早期に著明な改善が得られた2例を経験したので報告する.〔別刷請求先〕林理穂:〒187-8510東京都小平市花小金井8-1-1公立昭和病院眼科Reprintrequests:RieHayashi,DepartmentofOphthalmology,ShowaGeneralHospital,8-1-1Hanakoganei,Kodaira-city,Tokyo187-8510,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(131)1359 I症例〔症例1〕43歳,男性.主訴:左眼の異物感と右方視時の複視.既往歴:1992年に公立昭和病院眼科(以下,当科)にて左裂孔原性網膜.離に対し,強膜内陥術を受けた.手術記録によると#906のマイラゲルが10時から2時方向に縫着されていた.現病歴:2013年頃より左眼の異物感と右方視での複視を自覚するようになり,2013年11月に近医を受診したところ左眼上眼窩部腫瘤と眼球運動障害を指摘され,精査・加療目的にて2013年12月に当科を紹介受診した.初診時所見:眼位は左上斜位,視力は右眼(1.0),左眼(1.0),眼圧は右眼15mmHg,左眼17mmgであった.左眼窩部の鼻側から上方に腫瘤を触知し,同部位の球結膜下にバックル材料と考えられる灰白色の隆起物がみられた(図1A).眼底には左眼の上方,特に上鼻側に非常に強い隆起を認めたが,眼内へのバックルの露出はみられなかった.Hess赤緑試験では左眼において全方向で眼球運動障害がみられた(図2A).Magneticresonanceimaging(MRI)ではT2強調画像にて,腫瘤を触知した部位と一致する左眼窩上鼻側から上耳側にかけて境界明瞭で内部が均一の高信号領域が抽出され,とくに鼻側延長上で眼球に強く食い込んでいた(図1B).図1症例1,2隙灯顕微鏡所見およびMRI画像(T2強調画像)A:結膜下に灰白色の隆起物を認める.B:眼窩内の上鼻側から耳側にかけて境界明瞭で内部が均一性の高信号領域が抽出され,とくに鼻側延長上で眼球に強く食い込んでいる所見がみられる.C:下耳側球結膜下に灰白色の隆起物を認める.D:境界明瞭な高信号領域が眼球耳側半球に沿ってみられ,下直筋の外側まで伸展している.1360あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015ABCDA経過:網膜.離に対する強膜内陥術の既往・手術記録およびMRI所見から,本症例は膨化・変性したマイラゲルによる左眼上眼窩部腫瘤および眼球動障害と診断し,2014年1月に球後麻酔下にて経結膜的にマイラゲルを摘出した.マイラゲルは脆弱化しており,鑷子による把持が困難であったため,強膜穿孔に注意しながら鋭匙と冷凍凝固プローブを用い断片化して摘出した.術後経過:術翌日より左上眼窩部腫瘤は消失し,術後2日目で施行したHess赤緑試験では,眼球運動障害が全方向で著明に改善していた(図2B).〔症例2〕65歳,男性.主訴:左眼の眼位異常.既往歴:1993年に当科にて左裂孔原性網膜.離に対し,強膜内陥術を受けていた.手術記録によると#907のマイラゲルが2時から5時方向に縫着されていた.現病歴:2012年頃より左上斜視を自覚するようになったため,2014年7月に近医を受診したところ,左上斜視を指摘され,精査・加療目的にて2014年8月に当科を紹介受診した.初診時所見:眼位は左上斜視,視力は右眼(1.0),左眼(0.4),眼圧は右眼8mmHg,左眼17mmHgであり,眼圧の左右差がみられた.左眼下耳側球結膜下にバックル材料と考えられる灰白色の隆起物を認めた(図1C).眼底は上耳側から下耳側にバックルの隆起と色素沈着がみられたが,眼内B図2症例1のHess赤緑試験A:初診時.左眼は全方向で眼球運動障害がみられる.B:術後2日目.わずかに外転・上転の制限はあるが全方向で改善している.(132) へのバックルの露出はみられなかった.左眼の上斜視が強くHess赤緑試験は不可能であったため,9方向眼位を図に示す(図3A).内転・外転・下転障害を認め,とくに下転はまったくできなかった.MRIでは,T2強調画像にて境界明瞭な高信号領域が眼球耳側半球に沿って抽出され,下直筋の外側まで伸展していた(図1D).経過:網膜.離に対する強膜内陥術の既往・手術記録およびMRI所見から,本症例は膨化・変性したマイラゲルによる左眼球運動障害と診断し,2014年9月に球後麻酔下にて経結膜的にマイラゲルを摘出した.症例1と同様に強膜穿孔に注意しながら鋭匙と冷凍凝固プローブを用い断片化して摘出した.術後経過:術翌日には左上斜視および内転・外転・下転障害は著明に改善し(図3B),また眼圧は7mmHgに低下した.II考按マイラゲルを使用した強膜内陥術後の晩期合併症としてエクストルージョンや眼球運動障害がみられるが,その症状は顕著であるため5),過去に強膜内陥術の既往がある症例に著しい眼球運動障害がみられた場合はマイラゲルの使用を疑う必要がある.治療としてはマイラゲルの摘出がある.手術を行う際はマイラゲルの位置および膨化の程度を確認するためにMRI撮影が有効であるとされている3.5).今回の2症例はともに過去の手術記録が残っていたため,マイラゲルの位置を推定できた.しかしながら,膨化したマイラゲルは当時の縫着部位を超えて大幅に拡大していたことがMRIにて術前に判明しており,とくに症例2においてはマイラゲルが下直筋の外側を通り下鼻側まで伸展していた.このことが術前に確認できていたため,手術の際は摘出に適した切開位置を選択し,下直筋を指標としてマイラゲルにアプローチすることが可能であった.さらにマイラゲルは断片化していたが,取り残すことなく下鼻側の断端まで廓清することができた.長期間経過したマイラゲルは膨化・変性し脆弱化しており,摘出する際は鑷子で把持することができず,ちぎれて断片化してしまうため,鋭匙や冷凍凝固プローブを用いることが推奨されている9).また,マイラゲルと接していた強膜が菲薄化している場合や,マイラゲルが変性して強膜と癒着している場合があり,摘出の際に強膜を損傷する恐れがある3,8).今回の2症例では前述の器具を用いたところ断片化したものを一つひとつ確実に除去することが比較的容易となり,また強膜穿孔などの合併症を起こすことなく摘出することができた.マイラゲルの摘出術後に眼球運動障害や複視の残存がみられるとの報告もあるが10),今回の2症例は強膜内陥術後20(133)AB図3症例2の9方向眼位A:左上斜視が顕著で,下転障害を主とする眼球運動制限がみられる.B:術翌日.左上斜視,内転・外転・下転障害の改善を認める.年以上と相当長期間経過していたにもかかわらず,摘出術後早期に眼球運動障害の著明な改善が得られ,複視の自覚はみられなかった.他のバックル材料による眼球運動障害は結膜やTenon.に侵襲する脂肪癒着症候群がおもな原因と考えられているが11.13),マイラゲルにおいては膨化による容積増大に伴う機械的な可動制限が主因であるために,このような早期の劇的な改善が得られたものと推察される.強膜内陥術にマイラゲルを使用された患者は,現在術後10年以上経過していると考えられる.今回筆者らが経験した2症例も術後20年以上が経過していた.これほどの長期間を経過した症例でも,マイラゲルを摘出することにより眼球運動障害の改善が期待できるため,マイラゲルを使用した強膜内陥術の既往がある場合は長期にわたる経過観察を行い,可能であれば摘出を考慮することが望ましいと考えられる.あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151361 文献1)RefojoMF,NatchiarG,LiuHSetal:Newhydrophilicimplantforscleralbuckling.AnnOphthalmol12:88-92,2)MarinJF,TolentinoFI,RefojoMFetal:Long-termcomplicationsoftheMAIhydrogelintrascleralbucklingimplant.ArchOphthalmol110:86-88,19923)江崎雄也,加藤亜紀,水谷武史ほか:MIRAgelR除去を必要とした強膜内陥術後の1例.あたらしい眼科30:16331638,20134)HwangKI,LimJI:Hydrogelexoplantfragmentation10yearsafterscleralbucklingsurgery.ArchOphthalmol115:1205-1206,19975)樋田哲夫,忍足和浩:マイラゲルを用いた強膜バックリング術後長期の合併症について.日眼会誌107:71-75,20036)OshitariK,HidaT,OkadaAAetal:Long-termcomplicationsofhydrogelbuckles.Retina23:257-261,20037)佐々木康,緒方正史,辻明ほか:強膜バックル素材MIRAgelR(マイラゲル)を使用した強膜内陥術々後長期に発症する合併症および治療法の検討.眼臨紀3:12411244,20108)今井雅仁:ハイドロゲルバックル材料マイラゲルと晩期合併症.眼科53:103-111,20119)LeRouicJF,BejjaniRA,ChauvaudD:CryoextractionofepiscleralMIRAgelRbuckleelements.Anewtechniquetoreducefragmentation.OphthalmolSurgLasers33:237239,200210)星野健,松原孝,福島伊知郎ほか:ハイドロジェル(MIRAgelR)を使用した網膜.離手術の術後晩期合併症とその発症頻度についての検討.臨眼59:47-53,200511)HwongJM,WrightKW:Combinedstudyonthecausesofstrabismusaftertheretinalsurgery.KoreanJOphthalmol8:83-91,199412)黒川歳雄,大塚啓子,渕田有里子ほか:網膜.離に対する強膜バックリング術前後での眼位変化.臨眼56:15571562,200213)WrightKW:Thefatadherencesyndromeandstrabismusafterretinaldetachmentsurgery.Ophthalmology93:411-415,1986***1362あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(134)

高度涙小管閉塞症に対する涙丘・結膜弁移動による結膜涙囊鼻腔吻合術の治療成績

2014年5月31日 土曜日

《第2回日本涙道・涙液学会原著》あたらしい眼科31(5):759.762,2014c高度涙小管閉塞症に対する涙丘・結膜弁移動による結膜涙.鼻腔吻合術の治療成績廣瀬浩士服部友洋伊藤和彦佐久間雅史鬼頭勲田口裕隆津山孝之国立病院機構名古屋医療センター眼科EvaluationofConjunctivodacryocystorhinostomywithTranscaruncularPlacementbyCaruncularandConjunctivalPedicleFlapHiroshiHirose,TomohiroHattori,KazuhikoIto,MasashiSakuma,IsaoKito,HirotakaTaguchiandTakayukiTsuyamaDepartmentofOphthalmology,NationalHospitalOrganization,NagoyaMedicalCenter高度涙小管閉塞症に対し,種々の結膜有茎弁を用いた結膜涙.鼻腔吻合術を行い,それぞれの成績について後向きに検討を行った.2005年2月から2012年10月まで,術後6カ月以上経過観察可能であった25例28側(平均年齢64.3±12.2歳)を対象とした.術前後の涙液の他覚的評価として,通水試験,フルオレセイン染色スコア,tearmeniscusheight(TMH)を観察した.結膜有茎弁による移植法は,涙丘移動単独(I群:2例),涙丘・鼻側結膜移動(II群:8例),涙丘・下方円蓋部結膜移動(III群:18例)の方法で行った.吻合部狭窄例には,Jonesチューブ(JT)を留置した.II群の1例は閉塞し,他27例は通水陽性であったが,7例はJTを留置した.通水陽性であった全例でTMHは減少したが,TMHが軽度で,自覚的改善度が高かった症例は7例(JT4例)に留まった.術後,II群の7例,III群の1例で外転障害をきたした.結膜有茎弁と遊離した涙丘を涙.粘膜に縫合し,新涙道を裏打ちする結膜涙.鼻腔吻合術は,流涙の軽減が得られるが,JTの留置が必要な場合が多い.Thepurposeofthisstudywastoevaluateoutcomesofconjunctivodacryocystorhinostomy(CDCR)withthreetypesoftranscaruncularplacementbyconjunctivalpedicleflap.Duringa7-yearperiod,25patients(meanage64.3±12.2years)withsevereupperlacrimalsystemobstructionunderwent28CDCRsurgicalproceduresatNagoyaMedicalCenter.The28casesweredividedinto3groups:groupIwithcaruncularconjunctivalpedicleflap(2cases),groupIIwithconjunctivaldoublevalvemethod(8cases)andgroupIIIwithcaruncularpedicleflapandfornicalconjunctivalflap(l8cases).CaseswithstenosispostoperativelyunderwentJonestubeplacement.Improvementintearingwasachievedin27surgicalcases,including7casesofJonestubeplacement.Eyemovementdisturbancewasrecognizedin7casesofgroupIIand1caseofgroupIII.CDCRwithtranscaruncularplacementbycaruncularandconjunctivalpedicleflapresultedinpartialresolutionoftearinginmanycases,althoughJonestubeplacementwasrequiredinsomecases.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(5):759.762,2014〕Keywords:結膜涙.鼻腔吻合術,Jonesチューブ,涙丘移動,結膜有茎弁,TS-1R,眼球運動障害.conjunctivodacryocystorhinostomy,Jonestube,transcaruncularplacement,conjunctivalpedicleflap,TS-1R,disturbanceofeyemovement.はじめにチューブ2)(JT)の留置は,高度涙小管閉塞症の標準的治療涙小管閉塞の原因として,外眼部炎症に続発する例,抗癌であるが,チューブの偏位,迷入,肉芽腫形成など合併症も剤など薬物に起因する涙小管閉塞症1)は,高度の閉塞例が多多く,また,チューブ脱落により容易に閉塞をきたし,術後く,シリコーンチューブ留置のみでは完治しがたい.Jones管理の大変さもあり,さまざまな変法3.5)が開発されてきた〔別刷請求先〕廣瀬浩士:〒460-0001名古屋市中区三の丸4-1-1国立病院機構名古屋医療センター眼科Reprintrequests:HiroshiHirose,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,NationalHospitalOrganization,NagoyaMedicalCenter,4-1-1Sannomaru,Naka-ku,Nagoya460-0001,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(133)759 Ⅰ群:涙丘移動単独1.涙丘を結膜側より.離.2.涙丘・内眼角間を切開,トンネル形成.3.涙丘を移動し,鼻側端を総涙小管部の涙.粘膜に縫合.Ⅱ群:涙丘・鼻側結膜移動1.涙丘を結膜側より.離.2.涙丘とTenon.間を切開,トンネル作製鼻側結膜をTenon.から.離.3.トンネルの天井を涙丘,床を鼻側結膜で覆い,それぞれを涙.粘膜に縫合.Ⅲ群:涙丘・下方円蓋部結膜移動1.涙丘を結膜側より.離.2.涙丘とTenon.間を切開,トンネル作製.3.下方円蓋部結膜をTenon.から.離.4.トンネルの天井を涙丘,下方円蓋部結膜は床として覆い,涙.粘膜に縫合.図1結膜有茎弁による移植法が,根治的な治療法であるのにかかわらず,普及していない.JTを必要としない方法として,結膜筒状弁による結膜涙.鼻腔吻合術6,7)は,鼻汁の逆流が少なく,再建された涙760あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014道にポンプ作用があるため,より生理的であるなど利点は多いが,健常結膜を利用することの是非や,手術操作の複雑さにより多くは行われていない.今回,筆者らは,高度の涙小管閉塞症例に対し,種々の結膜有茎弁を用いた結膜涙.鼻腔吻合術を行い,それぞれの成績について検討を行ったので報告する.I対象2005年2月から2012年10月まで,上下涙小管が強度の閉塞をきたした高度涙小管閉塞症例(矢部分類8)3度以上)で,インフォームド・コンセントが得られた25例28側,男性9例(10側),女性16例(18側)を対象とした.平均年齢は,64.3±12.2歳(21.81歳)で,術後6カ月以上の経過観察を行った.原因として,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(以下,TS-1R)使用後10例11側,眼瞼ヘルペス3例3側,外傷1例1側,その他11例13側であった.II方法術前後の涙液の他覚的評価として通水試験,Schirmer試験,フルオレセイン染色スコア,tearmeniscusheight(TMH)の観察によって行った.1.結膜有茎弁による移植法(図1)鼻外法により涙.切開後,逆行性に閉塞部位をさぐり,高度の涙小管閉塞であることを確認した.涙丘および結膜を切開後,結膜有茎弁を作製し,涙丘切開部より涙.の総涙小管部まで,クレッセントナイフにて水平に切開し,新涙道のトンネルとした.結膜有茎弁の作製にあたって,涙丘移動単独例2例をI群,涙丘・鼻側結膜移動例8例をII群,涙丘・下方円蓋部結膜移動例18例をIII群とした.I群:涙丘移動単独涙丘を鼻側で切開後,結膜側へ向かって.離し,涙丘結膜有茎弁とした.涙丘・内眼角間にトンネルを作製後,涙丘結膜弁をトンネル内に挿入し,鼻側端を総涙小管部の涙.粘膜に縫合した.II群:涙丘・鼻側結膜移動(結膜2重弁法)9)涙丘を耳側で切開し,涙丘全体を鼻側へ.離し,涙丘結膜有茎弁とした.涙丘・鼻側結膜間にトンネルを作製後,鼻側結膜を角膜輪部で切開し,台形上に切開.Tenon.膜は切除せず,そのままトンネル内に滑らせ,床とした.涙丘結膜弁も同様にトンネル内へ移動させ,天井とし,それぞれの弁を涙.の総涙小管部の開口部で縫合した.III群:涙丘・下方円蓋部結膜移動涙丘を結膜側より.離後,涙丘とTenon.間を切開し,トンネルを作製.下方円蓋部結膜をTenon.から.離後,トンネルの天井を涙丘,下方円蓋部結膜は涙丘外側では.離(134) 表1他覚的検査表2自覚症状通水術後TMHJT留置JT後TMH+.中等度軽度中等度軽度I群II群III群2711826112619154TMH中等度:0.3.0.4mm,軽度:0.1.0.2mm.せず,遠位端をトンネル内に移動,床として覆い,それぞれを涙.粘膜に縫合した.2.結膜涙.鼻腔吻合術骨窓作製後,鼻粘膜を鼻背に平行に切開し,前弁と後弁を作製後,後弁は切除した.網膜.離手術用強膜シリコーンスポンジ(マイラAU-506S,3×5mm,長さ100mm,楕円形)をステントとしてトンネル内から鼻腔に留置し,6-0吸収糸にて鼻粘膜前弁を涙.粘膜の前弁と縫合し,7-0ナイロン糸にて皮下,皮膚を縫合した.シリコーンスポンジは,7-0ナイロン糸にて内眼角部から突出しない程度に皮膚に固定した.術後,抗生剤,ステロイド,非ステロイド点眼剤とともに鼻内の抗炎症用としてステロイド点鼻薬を約3カ月間使用した.シリコーンスポンジは約2カ月後に抜去した.III結果閉塞の程度は,Grade3が5例5側,Grade4が20例23側であった.Grade4の1例1側が術後,再閉塞をきたしたが,他の27側は全例通水陽性であった.TS-1R使用例は,II群3例,III群8例であった.シリコーンスポンジ抜去後,通水があっても流涙が残存したり,新涙道が狭窄傾向を示した例にはJTを留置した(II群1側,III群9側,うちTS-1R使用例4側).Schirmer試験は,再閉塞例を除き,全例減少した.最終的に通水陽性27側中,TMHが中等度(0.3.0.4mm)であったものが20側(I群2側,II群6側,III群12側,JT挿入例II群1側,III群5側),軽度(0.1.0.2mm)であったものは7側(II群1側,III群6側,JT挿入例III群4側)であった(表1,2).全例でフルオレセイン染色スコアに変化はなかった.術後,外転制限を中心とした眼球運動障害がII群で7例,III群で1例認められた.II群の4例は,高度の外転運動障害であったため,結膜癒着.離および羊膜移植術を施行した.IV考按高度涙小管閉塞症に対する有効な方法として,JTを留置しない結膜2重弁による結膜涙.鼻腔吻合術9)が報告され,当院でも,今回,II群として報告したように積極的に手術を行った.他の涙道手術に比べ複雑な手技が必要だが,ステン流涙消失やや残存残存不変総計%28100310.71142.91342.913.5JT10154I群II群III群28(1)18(9)12(1)12(1)9(5)147(2)1()は,Jonesチューブ挿入例数.トを必要とせず,JTに比べより生理的な導涙機構が構築されることで自覚症状も軽減し,大変有用な方法であると考えられた.ただし,術後,高頻度で内眼角部でのTenon.膜の癒着が起こり,眼球運動障害や複視が発症したため,結膜癒着.離,羊膜移植術を行わざるをえず,この点を改善する方法が必要と考えた.結膜2重弁法の導入前は,今回のI群で報告した涙丘移動のみの方法で行った.この方法は,連続した結膜組織による再建で自然な導涙機構の構築が可能であり,トンネル内から涙.粘膜までの移動は容易であるが,粘膜に覆われている部分は床のみであるため,通水は得られても吻合部は狭窄し,流涙は残存した.2001年から5例ほど施行したが,電子カルテ導入により5年前の紙カルテ破棄に伴い,経過観察が可能であった2側のみの登録となった.III群は,これらの点を改善するべく考案された.トンネル内の粘膜の裏打ちを天井,床に行い,術後の狭窄の軽減を期待した.また,下方結膜円蓋部の利用は,結膜筒状弁で使用する領域の半分ほどであり,涙丘付近での有茎弁のため,Tenon.を刺激することなく,結膜組織の移動が可能である.術後の癒着も改善され,1例に認めるのみであった.ただし,自覚症状の軽減は得られるものの残存例が多く,最終的にJTの留置が必要な場合が多かった.この原因として,TS-1Rの使用や高齢により眼瞼のポンプ機能が低下し10),有効な導涙機構が構築されていないことが考えられる.実際,III群のJT留置例で,TMH中等度の5例の平均年齢は68.6±4.7歳,減少例は4例では59±17歳と減少例で年齢が低い傾向がみられたが,明らかな結膜弛緩などの症例はなかった.III群による利点としては,原則的にJT挿入を必要としないが,必要な場合でも外来にて容易にJTの挿入が可能である,また,JTが脱落してもすぐに閉塞には至らず,再挿入が容易である,埋没例が少ないなどが挙げられる.JTにより自覚症状の改善は得られるが,普及に際しては,JTの安定的な供給とともに,ステントを必要としない新たな涙道再建術の考案が必要と考える.(135)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014761 利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)EsmaeliB,GolioD,LubeckiL:Canalicularandnasolacrimalductblockage:anocularsideeffectassociatedwiththeantineoplasticdrugS-1.AmJOphthalmol40:325327,20052)JonesLT:Conjunctivodacryocystorhinostomy.AmJOphthalmol59:773-783,19653)田邊吉彦,村上正建,柳田則夫:保存強膜を利用した眼形成手術(III)結膜涙.鼻腔吻合術への応用.臨眼33:14411445,19794)原吉幸,島千春,田上美和ほか:結膜涙.鼻腔吻合術鼻内法.臨眼62:1131-1133,20085)MombaertsI,CollaB:ModifiedJones’lacrimalbypasssurgerywithanangledextendedJones’tube.Ophthalmology114:1403-1408,20076)酒井成身,田邊博子,山中美和:結膜筒状弁による涙道再建術.眼科33:573-577,19917)矢部比呂夫:結膜筒状弁による結膜涙.鼻腔吻合術.臨眼51:800-801,19978)矢部比呂夫:涙小管閉塞.眼科診療プラクテイス19.外眼部の処置と手術.p204-211,文光堂,19959)新田安紀芳:新しい結膜涙.鼻腔吻合術:結膜2重弁法.眼科手術21:121-126,200810)KakizakiH,ZakoM,MiyaishiOetal:ThelacrimalcanaliculusandsacborderedbytheHorner’smuscleformthefunctionallacrimaldrainagesystem.Ophthalmology112:710-716,2005***762あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(136)

眼瞼下垂と眼球運動障害をくり返したサルコイドーシスの2例

2009年4月30日 木曜日

———————————————————————-Page1(115)5470910-1810/09/\100/頁/JCLS42回日本眼炎症学会原著》あたらしい眼科26(4):547551,2009cはじめにサルコイドーシスは全身性肉芽腫性疾患で脳神経症状としては顔面・視神経障害の頻度が高く,動眼・滑車・外転神経障害の報告は少ない13).今回筆者らは短期間に両眼瞼下垂をくり返したサルコイドーシスの2例を経験したので,その眼科的所見および臨床症状について報告する.I症例〔症例1〕33歳,男性.主訴:両眼瞼下垂.現病歴:2000年健診にて肺門部リンパ節腫脹(BHL)を指摘され,経気管支肺生検の結果サルコイドーシスと組織診断された.2007年6月中旬より左右の眼瞼下垂をくり返し,〔別刷請求先〕相馬実穂:〒849-8501佐賀市鍋島5丁目1番1号佐賀大学医学部眼科学講座Reprintrequests:MihoSoma,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SagaUniversityFacultyofMedicine,5-1-1Nabeshima,Saga849-8501,JAPAN眼瞼下垂と眼球運動障害をくり返したサルコイドーシスの2例相馬実穂*1石川慎一郎*1平田憲*1沖波聡*1皆良田研介*2*1佐賀大学医学部眼科学講座*2皆良田眼科TwoCaseofSarcoidosiswithFrequentRecurrenceofBlepharoptosisandOphthalmoplegiaMihoSoma1),ShinichiroIshikawa1),AkiraHirata1),SatoshiOkinami1)andKensukeKairada2)1)DepartmentofOphthalmology,SagaUniversityFacultyofMedicine,2)KairadaEyeClinic緒言:眼瞼下垂と眼球運動障害をくり返したサルコイドーシスの2例を報告する.症例:症例1は33歳,男性,7年前にサルコイドーシスと診断された.左右の眼瞼下垂をくり返し近医受診.頭部磁気共鳴画像(MRI)に異常なく重症筋無力症も否定され,佐賀大学附属病院眼科を受診した.右眼瞼下垂を認めたが,両眼とも活動性炎症所見はなかった.プレドニゾロン(PSL)20mg内服開始後に下垂は改善したが,漸減に伴い左右下垂と動眼・滑車神経障害の再発をくり返した.症例2は64歳,女性,両眼ぶどう膜炎と左眼瞼下垂で紹介受診.胸部コンピュータ断層撮影(CT)で肺門部リンパ節腫脹(BHL)が判明した.PSL20mg内服,点眼加療後に下垂は改善,眼底所見も改善し内服を中止した.その後,左眼瞼下垂が再発したがミドリンRP点眼で下垂は改善,その後も左右眼瞼下垂と上転障害の再発をくり返したが点眼のみで改善した.結論:反復性の眼瞼下垂と眼球運動障害では,サルコイドーシスも原因疾患として検索を進める必要がある.Wereport2casesofsarcoidosiswithfrequentrecurrenceofblepharoptosisandophthalmoplesia.Case1,a33-year-oldmalewhohadhadsarcoidosisfor7years,noticedrecurrentblepharoptosis.Brainmagneticresonanceimaging(MRI)wasnormal.Myastheniagraviswasruledout.Hewasreferredtousforblepharoptosisoftherighteye.Therewasnoactiveintraocularinammation.Withoralprednisolone,theblepharoptosisdisappearedwithin2weeks.However,whentheprednisolonewasreduced,bilateralblepharoptosisrecurredandophthalmoplegia(CNIII,IVandVI)wasobserved.Case2,a64-year-oldfemale,wasreferredtousforblepharoptosisofthelefteyeanduveitisofbotheyes.Ocularmovementwasnormal.Chestcomputedtomography(CT)revealedbilateralhilarlymphadenopathy.Oralprednisoloneandeyedropsofbetamethasoneandmydriaticsresultedinimprovementofblepharoptosisandintraocularinammation,althoughtheblepharoptosisontheleftsiderecurredwithprednisolo-nediscontinuation;thiswastreatedwithmydriatics.Recurrentblepharoptosisandophthalmoplesiamaybecausedbysarcoidosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(4):547551,2009〕Keywords:サルコイドーシス,眼瞼下垂,眼球運動障害.sarcoidosis,blepharoptosis,ophthalmoplesia.———————————————————————-Page2548あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009(116)近医を受診.頭部磁気共鳴画像(MRI)にて異常なく,7月30日佐賀大学附属病院神経内科に紹介されるも重症筋無力症は否定され,8月6日眼科へ紹介となった.既往歴・家族歴:特記すべき事項なし.初診時所見(2007年8月6日):視力は右眼0.1(1.5×2.5D(cyl1.0DAx165°),左眼0.15(1.5×2.0D(cyl1.0DAx165°).眼圧は右眼13mmHg,左眼15mmHg.眼位,眼球運動,対光反応は異常なく,瞼裂幅は右3mm,左10mmと右眼瞼下垂を認め,挙筋作用は右5mm,左15mmと右がやや不良であった.前眼部は両眼cell(),フレア(),隅角鏡にて両眼にテント状周辺虹彩前癒着(PAS)を認めた.右眼眼底の下方に軽度硝子体混濁を認めたが,左眼眼底は異常がなかった.検査所見:一般血液学的には異常なく,内分泌学的には甲状腺刺激ホルモン(TSH)1.32μg/dl,f-T33.2ng/dl,f-T41.0ng/dl,抗アセチルコリンレセプター抗体0.2nmol/l,ヘモグロビンA1C(HbA1C)5.3%と正常であった.髄液検査では細胞数0/mm3,蛋白質22mg/dl,糖57mg/dlと正常であった.経過:サルコイドーシスの眼病変の既往があると思われたが,活動性の炎症所見は認めなかった.眼瞼下垂の原因としてサルコイドーシスを考え,同日よりプレドニゾロン(PSL)20mg(0.3mg/kg)の内服を2週間行ったところ右眼瞼下垂は改善したため,10mgを3日間,5mgを4日間内服し3週間後に中止した.内服中止から2週間後に左の眼瞼下垂が出現,3週間後に下垂は両眼性となり両眼の上転障害,右眼の内転・下転・内下転障害も認めた(図1).その後眼瞼下垂・眼球運動障害とも寛解・再発をくり返した(図2).9月20日に再検した頭部・眼窩MRIでは,右海綿静脈洞に軟部腫瘤様構造を認め,サルコイドーシスによる肉芽腫性病変が疑われたが病状とは一致しなかった.病変部位として動眼神経核の障害を考え,10月22日に脳幹部MRIを施行したが異常を認めなかった.鑑別として慢性進行性外眼筋麻痺を疑い精査を行った.筋電図では大腿四頭筋,前脛骨筋に低振幅波を認めたが,筋生左眼右眼図2症例1:2007年10月11日再診時Hessチャート瞼裂幅は右7mm,左9mmと右眼瞼下垂を認め,挙筋作用は右12mm,左15mmであった.右眼の内転・上転障害を認めた.左眼右眼図1症例1:2007年9月20日再診時Hessチャート瞼裂幅は右4mm,左4mmと両眼瞼下垂を認め,挙筋作用は右7mm,左7mmであった.両眼の上転障害,右眼の内転・下転・内下転障害を認めた.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009549(117)検では異常を認めなかった.以上の結果から眼瞼下垂の原因を神経サルコイドーシスと考え,2008年1月23日PSL20mg(0.3mg/kg)の内服が再開された.内服再開に伴い眼瞼下垂は速やかに改善したが,眼球運動障害は残存した.短期間の内服では再燃の可能性が高いと思われたため,PSL内服量は症状の軽快に合わせ20mgを13週間,15mgを2週間,10mgを3週間と漸減した.再開後4カ月を経過した現在,10mg内服中で眼瞼下垂・眼球運動障害とも改善傾向にある(図3).〔症例2〕64歳,女性.主訴:右眼充血,左眼瞼下垂.現病歴:2006年12月22日より右眼充血,12月25日よ左眼右眼図3症例1:2008年6月13日再診時Hessチャート瞼裂幅は右9mm,左9mm,挙筋作用は右14mm,左15mmで両眼瞼下垂はほぼ消失している.右眼の上転・内転障害が残存し,正面視にて外斜している.左眼右眼図4症例2:2008年4月4日再診時Hessチャート瞼裂幅は右4mm,左6mmと右眼瞼下垂を認め,挙筋作用は右7mm,左11mmであった.右眼上転障害を認めた.———————————————————————-Page4550あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009(118)り左眼瞼下垂があり近医を受診.12月27日精査・加療目的にて当科へ紹介となった.既往歴:高コレステロール血症,胆石にて内服中.家族歴:特記事項なし.初診時所見(2006年12月27日):視力は右眼1.2(矯正不能),左眼1.2(矯正不能).眼圧は右眼19mmHg,左眼20mmHg.眼位,眼球運動,対光反応は異常なく,瞼裂幅は右8mm,左2mmと左眼瞼下垂を認め,挙筋作用は右11mm,左4mmと左が不良であった.前眼部は両眼ともcell(),フレア(),隅角鏡にて両眼に結節,右眼にテント状PASを認めた.前部硝子体に右眼cell(3+),左眼cell(2+)で右眼に網膜静脈周囲炎と網膜滲出斑,左眼に数珠状硝子体混濁と網膜滲出斑を認めた.経過:初診時に施行したツベルクリン反応は陰性,血清アンギオテンシン変換酵素活性(ACE)・カルシウム値とも正常,胸部単純X線撮影ではBHLはないとのことであった.胸部コンピュータ断層撮影(CT)による再検で縦隔内・肺門部にリンパ節腫脹を指摘され呼吸器内科を紹介受診した.本人が生検を希望せず組織診断は行っていないが,サルコイドーシス(臨床診断群)の診断基準(2006年)を満たすことからサルコイドーシス(臨床診断群)と診断した.重症筋無力症は精査の結果,否定的とされている.眼炎症所見に対しPSL20mg(0.47mg/kg)を開始したところ,開始1週間後に左眼瞼下垂は改善,眼底所見も軽快したため,20mgを10日間内服した後,15mgを1週間,10mgを3週間,5mgを2週間と漸減し7週間後に中止となった.2007年4月に左眼瞼下垂を認めたが,自己判断にてトロピカミド(ミドリンRP)を点眼したところ軽快した.その後も7月・8月に右,10月・12月に左眼瞼下垂,2008年4月に右眼瞼下垂と右眼上転障害を認めた(図4)が点眼のみで寛解した(図5).2007年11月に頭部・眼窩MRIを施行したところ,眼窩内に異常所見なく,動脈硬化による左動眼神経の圧排を認めたが病状とは一致しなかった.本人の希望もあり,現在も点眼のみで経過観察中である.II考按サルコイドーシスは全身性肉芽腫性疾患であり,眼球への浸潤は約25%といわれる.眼症状としてはぶどう膜炎によるものが一般的だが,その他眼球突出,眼瞼下垂,ドライアイ,複視も報告されている4).神経サルコイドーシスの頻度は127%(日本では6.4%)で,脳神経症状としては顔面・視神経障害が最も多く,動眼・滑車・外転神経障害はまれである13).サルコイドーシスに伴う眼瞼下垂は眼窩や眼付属器への明らかな肉芽の浸潤5)以外に病変が特定できない症例も報告されている6,7).今回の2症例では,いずれも眼瞼下垂の原因として重症筋無力症は否定され,画像診断では眼筋の腫脹や眼窩内の肉芽左眼右眼図5症例2:2008年5月28日再診時Hessチャート瞼裂幅は右7mm,左7mm,挙筋作用は右11mm,左11mmで右眼瞼下垂と右眼上転障害はほぼ消失している.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009551(119)腫性病変は認めなかった.しかし症例1では受診時すでにサルコイドーシスと診断されていたこと,症例2では特徴的なぶどう膜炎症状を伴っていたことから眼瞼下垂の原因として神経サルコイドーシスが考えられた.神経サルコイドーシスの障害レベルとしては一般に末梢性の病変が多いとされ,その発生機序については髄膜炎による炎症,脳圧亢進による神経の圧迫,神経への肉芽腫の直接浸潤,肉芽腫による塞栓などが関与していると考えられており8),脳神経障害が伴う場合は一般にステロイドに良く反応し予後が良いといわれる.症例1の障害部位としては眼瞼下垂のほか両眼の上転障害,右眼の内転・下転・内下転障害を伴ったことより動眼神経核のレベルの異常を疑ったが,MRIでは異常所見は検出されなかった.症例2においては下垂側の上転障害を伴っており,対光反応は正常であったことから動眼神経上枝の障害が疑われたが,やはり画像上異常所見は検出されなかった.しかしいずれの症例もPSL20mgからの投与を行うことで,下垂は速やかに軽快した.Lukeらは神経サルコイドーシスの患者25例について検討・報告している9).これによれば8例(32%)に110年間隔で14回の再発を認め,脳神経障害の再発・寛解をくり返したのは4例で,外眼筋麻痺のみをくり返した症例はなかったとしている.Pentlandらも神経サルコイドーシス10例を報告しているが,再発例3例中に脳神経障害の再発例を認めた症例はなかったとしている10).今回の場合,症例1では発症から12カ月が経過しているが右3回,左2回の眼瞼下垂をくり返しており,PSL内服再開後は眼瞼下垂の再発は認めていない.症例2では発症から1年6カ月の経過観察中,右3回,左4回の眼瞼下垂をくり返している.筆者らの調べ得た限り,今回のように短期間に頻回の眼瞼下垂・眼球運動障害をくり返した神経サルコイドーシスの症例はわが国における2例の報告6,7)しかない.いずれもPSL60mgより内服を開始し,眼瞼下垂・眼球運動障害とも正常化している.今回の報告ではいずれもPSL20mgより内服を開始し眼瞼下垂は速やかに消失したが,症例1では眼球運動障害は改善したものの残存している.このことから眼瞼下垂単独の症状や動眼神経上枝レベルの眼瞼下垂と眼球運動障害であればPSL初期投与量は20mgでも十分効果を期待できるが,動眼神経核レベルの眼球運動障害であればさらに多量のPSL初期投与が必要と考えられた.症例2ではPSL内服を20mgから開始し7週間後に中止,その後に再発した眼瞼下垂に対してはミドリンRPの点眼加療により症状の寛解が得られた.これは点眼液中のフェニレフリン(アドレナリン作動薬)が交感神経系を介して上瞼板筋(Muller筋)に作用し眼瞼が挙上することで下垂症状が一時的に軽快したものと思われ,根本的治療になったとは考えにくい.しかしこの経過から,神経サルコイドーシスの症状が眼瞼下垂単独や動眼神経上枝レベルの眼瞼下垂と眼球運動障害として現れた場合は自然寛解の可能性があるとも考えられる.症例1がPSLの再開後に眼瞼下垂の再発を認めていないことに対し,症例2はPSL20mg投与中止後に計6回の眼瞼下垂の再発を認めていることから,やはり眼瞼下垂・外眼筋麻痺を症状とする神経サルコイドーシスにはPSL投与が有効であり,再発を少なくするためには中・長期間の内服が必要であると思われる.PSLの初期投与量・投与期間については今後もさらに検討が必要と思われる.眼科的にサルコイドーシスが疑われ,画像診断で肉芽腫は認めなかったものの両眼に交代性・反復性に眼瞼下垂をくり返す症例を経験した.器質的異常を伴わない眼瞼下垂を認めた場合,重症筋無力症のほかにサルコイドーシスも原因となる可能性があると思われた.文献1)SternBJ,KrumholtzA,JohnsCetal:Sarcoidosisanditsneurologicalmanifestation.ArchNeurol42:909-917,19852)SharmaOP,SharmaAM:Sarcoidosisofthenervoussys-tem.ArchInternMed151:1317-1321,19913)作田学:神経サルコイドーシス.日本臨牀52:1590-1594,19944)PrabhakaranVC,SaeedP,EsmaeliBetal:Orbitalandadnexalsarcoidosis.ArchOphthalmol125:1657-1662,20075)SneadJW,SeidensteinL,KnicRJetal:Isolatedorbitalsarcoidosisasacauseforblepharoptosis.AmJOphthal-mol112:739-740,19916)上古真理,安田斎,寺田雅彦ほか:頻回に眼筋麻痺を繰り返したサルコイドーシスの1例.臨床神経34:882-885,19947)植田美加,竹内恵,太田宏平ほか:交代性,反復性外眼筋麻痺を呈したサルコイドーシス.臨床神経37:1021-1023,19978)HeckAW,PhillipsLHII:Sarcoidosisandthenervoussystem.NeuroClin7:641-654,19899)LukeRA,SternBJ,KrumholzAetal:Neurosarcoido-sis:Thelong-termclinicalcourse.Neurology37:461-463,198710)PentlandB,MitchellJD,CullREetal:Centralnervoussystemsarcoidosis.QJMed220:457-465,1985***