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未熟児網膜症に対するラニビズマブ治療後再燃の関連因子

2024年4月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科41(4):452.457,2024c未熟児網膜症に対するラニビズマブ治療後再燃の関連因子前原央恵*1,2今永直也*1宮里智子*2澤口翔太*1湧川空子*1大城綾乃*1大庭千明*3吉田朝秀*4古泉英貴*1*1琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座*2沖縄県立南部医療センター・こども医療センター眼科*3沖縄県立南部医療センター・こども医療センター新生児内科*4琉球大学大学院医学研究科育成医学講座CClinicalFactorsRelatedtoRecurrenceofRetinopathyofPrematurityAfterIntravitrealRanibizumabInjectionTherapyHisaeMaehara1,2),NaoyaImanaga1),TomokoMiyazato2),ShotaSawaguchi1),SorakoWakugawa1),AyanoOshiro1),ChiakiOhba3),TomohideYoshida4)andHidekiKoizumi1)1)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,2)DepartmentofOphthalmology,OkinawaSouthernMedicalCenterandChildren’sMedicalCenter,3)DepartmentofInclusionMedicine,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,4)DepartmentofNeonatology,OkinawaSouthernMedicalCenterandChildren’sMedicalCenterC目的:未熟児網膜症(ROP)に対するラニビズマブ硝子体内注射(IVR)の再燃にかかわる因子について検討した.対象および方法:対象はC2019年C4月.2022年C3月に出生した超低出生体重児C94例.治療適応となるCROP(TR-ROP)の発症,IVR後の再燃に関する因子を後ろ向きに検討した.初回および再燃時の治療適応はCEarlyCTreatmentCforCROPStudyの基準に準じ,初回治療およびC1回目の再燃時の治療にはCIVR0.2Cmgを行った.結果:46例がCTR-ROPとなり,TR-ROP発症に関連する因子は,在胎週数,出生体重,持続陽圧呼吸療法の期間であった(すべてCp<0.05).初回CIVRでの寛解群C27例と再燃群C19例では,再燃群は初回治療時のCstageが低く,zoneが狭く,出生から初回治療までの期間が有意に短かった(すべてCp<0.05).再燃群のうちC14例がC2回目のCIVRで寛解したが,5例がC2回目の再燃をきたし,2回再燃群は再燃後寛解群に比べて出生からC2回目治療までの期間が有意に短かった(p<0.01).結論:早期のIVR,低いstage,狭いCzoneはCIVR後の再燃と関連していた.CPurpose:ToCinvestigateCfactorsCassociatedCwithCtheCrecurrenceCofCretinopathyCofprematurity(ROP)afterCintravitrealranibizumab(IVR)injectionCtherapy.CMethods:InCthisCretrospectiveCstudy,CweCreviewedCtheCrecordsCof94extremely-lowbirthweight(BW)infantsbornbetweenApril2019andMarch2022toexploretheriskfac-torsfortreatment-requiringROP(TR-ROP)andrecurrenceafterIVRinjection.Results:ClinicalfactorsinvolvedinCdevelopingCTR-ROPCwereCgestationalCage,CBW,CandCdurationCofCcontinuousCpositiveCairwayCpressureCtherapy.CAfterCinitialCtreatment,CtheCrecurrencegroup(19patients)hadCaClowerCstageCatCtheC.rstCtreatment,CaCnarrowerCzone,andasigni.cantlyyoungerpostmenstrualageatthetimeofthe.rsttreatment(allp<0.05)thantheremis-siongroup(27patients).Afterthesecondtreatment,therecurrencegroup(5patients)hadasigni.cantlyyoungerpostmenstrualageatthetimeofthesecondtreatment(p<0.01)thantheremissiongroup(12patients).Conclu-sion:RecurrenceofTR-ROPafterIVRinjectionmaybeassociatedwithyoungerpostmenstrualageatthetimeofIVRinjection,lowerstage,andnarrowerzone.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(4):452.457,C2024〕Keywords:未熟児網膜症,ラニビズマブ,抗血管内皮増殖因子,硝子体内注射.retinopathyofprematurity,ra-nibizumab,vascularendothelialgrowthfactor,intravitrealinjection.Cはじめに熟児における網膜血管の発達異常を特徴とし,日本だけでな未熟児網膜症(retinopathyofprematurity:ROP)は,未く世界の小児失明原因の上位を占める1).治療はこれまで網〔別刷請求先〕前原央恵:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原C207琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座Reprintrequests:HisaeMaehara,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0215,JAPANC452(86)膜冷凍凝固術や網膜光凝固術が主体であり,網膜.離を生じた場合には網膜硝子体手術を行っていた.近年では,抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法が新しい選択肢として加わるようになった.RAINBOWstudyにおいて,ROPに対する治療としてラニビズマブ硝子体内注射(intravitrealranibizumab:IVR)の有効性が示され2),わが国でもC2019年にCIVRが承認された.しかし,IVR投与後に網膜症の再燃(reactivation)を生じ,複数回治療が必要な症例が存在する.治療を要するCROP(treatment-requiringROP:TR-ROP)発症にかかわる因子として,在胎週数,出生体重,晩期循環不全,長期間の陽圧呼吸,輸血歴3.5)などが知られているが,抗CVEGF薬硝子体内注射後にどのような小児が再燃するリスクが高いかは,明確なコンセンサスは得られていない.本研究の目的はCROPに対するIVR後の再燃に関する因子について検討したので報告する.CI対象および方法本研究は琉球大学病院の倫理委員会(承認番号:2040)の承認を受け,ヘルシンキ宣言に示された原則に従って実施された.本研究のオプトアウトは,琉球大学病院の施設審査委員会による承認後,病院のウェブサイトに表示されオプトアウトの機会を提供した.2019年C11月.2022年C3月に琉球大学病院および沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで出生し,ROPスクリーニング検査を受けた超低出生体重児(出生体重1,000Cg未満)の診療録を後ろ向きにレビューした.眼底所見の評価は右眼を用いたが,今回の検討では片眼のみCROPおよびCTR-ROPを発症した症例はなく,TR-ROPは全症例で両眼同時に治療が行われていた.死亡例など新生児集中治療室を退院できなかった症例は除外した.初回および再燃時の治療適応はCEarlyCTreatmentCforCRetinopathyCofCPrema-turity(ETROP)Studyを遵守した.すなわち,pre-thresh-oldROPtype1zoneI,anystageROPwithplusdisease,またはCzoneI,stage3,withCorCwithoutCplusdisease,またはCzoneII,stageC2CorC3ROP,withCplusdisease以上の症例を治療対象とした.AggressiveROP症例については,stageやCzoneにかかわらず,治療を行った.治療は全例において,初回治療およびC1回目の再燃時はCIVR0.2Cmgを,2回目の再燃時は網膜光凝固術を施行した.TR-ROP発症やCROP再燃に関連する全身因子の候補として,ベースラインを反映するC3因子(在胎週数,出生体重,性別),出生時の呼吸循環機能を反映するC2因子(アプガー指数C1分,Apgar指数C5分),循環機能を反映するC4因子(敗血症の既往,赤血球濃厚液輸血単位数,結紮術を要する動脈管開存の既往,晩期循環不全の既往),呼吸機能を反映するC4因子(新生児呼吸窮迫症候群の既往,持続陽圧呼吸療法の期間,高流量経鼻酸素療法離脱までの期間,慢性肺疾患の有無),中枢神経循環能を反映する因子(脳室内出血の既往),感染症を反映するC3因子(臨床的絨毛膜羊膜炎の既往,組織学的絨毛膜羊膜炎の既往,子宮内感染の既往),その他入院時に受けた手術件数をあげた.また,眼局所要因として,aggressiveROP,ROP治療週数,治療時のCstage,zone,plusdiseaseを採用した.まず,TR-ROP発症にかかわる因子を同定するため,ROP未発症および自然消退ROP群とCTR-ROP群に分けてC2群間で臨床要因を比較した.また,再燃および再々燃にかかわる因子を同定するため,初回寛解群と再燃群,およびC2回治療群とC3回治療群を比較した.統計解析は,2群間比較ではCWilcoxonCrankCsumtest,CFisher’sexacttestを使用し,両群比較を行った.TR-ROPの検討では在胎週数,出生体重でCp値を補正した.0.05以下のCp値は,統計的に有意であるとみなされた.初回治療後およびC2回目治療後の再燃に関する因子の予測能を評価するため,それぞれについて統計学的に有意な要因で受信者動作特性(receiverCoperatingCcharacteristiccurve:ROC)曲線を作成し,areaundercurve(AUC)を算出,モデルの正当性を評価した.CII結果全症例C94例C94眼の臨床的特徴を表1に示す.TR-ROPはC46眼(48.9%)に発症し,ROP未発症および治療を要さず自然消退したCROPはC48眼(51.1%)であった.両群間の比較において,TR-ROP発症に関連する因子は,在胎週数,出生体重,持続陽圧呼吸療法の期間,持続陽圧呼吸療法+高流量経鼻酸素離脱の期間のC4項目で有意差を認めた(すべてp<0.05)(表2).TR-ROPのうち,初回CIVRで寛解を得た症例はC27眼(58.7%),再燃を生じた症例はC19眼(41.3%)であり,両群間において在胎週数,出生体重,その他全身的な要因は有意差を認めなかったが(表3),眼局所要因として,ROP治療週数,治療時のCstage,zoneで有意差を認めた(すべてCp<0.05)(表4).また,2回CIVRを必要とした症例で,寛解を得た症例はC14眼(73.7%),再々燃を生じ最終的に網膜光凝固術を要した症例はC5眼(26.3%)であり,こちらも両群間において全身的な要因は有意差を認めなかったが(表3),ROP治療週数のみで有意差を認めた(p<0.01)(表4).初回IVR後の寛解症例と再燃症例の比較において,AUCはC0.842であり,Youden’sindexにおけるCROP治療週数のカットオフ値はC35.0週であった.また,2回目CIVR後の寛解症例と再燃症例の比較において,AUCはC0.900であり,YoudenC’sindexにおけるCROP治療週数のカットオフ値はC41.4週であった(図1).表1全症例の臨床的特徴平均±標準偏差範囲眼数C94在胎週数(週)C26.2±2.122.3.C31.9出生体重(g)C739.6±168.8366.C998女性の割合(%)51(C54.3)出生時の呼吸循環機能Apgar指数C1分Apgar指数C5分C3.24±1.87C5.41±1.711.81.8循環機能敗血症(%)赤血球濃厚液輸血単位数(単位)結紮術を要する動脈管開存(%)晩期循環不全(%)10(C10.6)C4.33±4.0017(C18.1)3(3C.2)0.2C1呼吸機能新生児呼吸窮迫症候群(%)持続陽圧呼吸療法(日)持続陽圧呼吸療法+高流量経鼻酸素療法(日)慢性肺疾患(%)90(C95.7)C57.8±38.3C85.4±42.782(C87.2)5.2C705.2C70中枢神経循環能脳室内出血(stage)C0.55±1.010.4臨床的絨毛膜羊膜炎(%)32(C34.0)C感染症組織学的絨毛膜羊膜炎(stage)0.78±1.070.3子宮内感染(%)8(8C.5)その他入院時に受けた手術件数AggressiveROP(%)C0.64±1.319(9C.6)0.7表2未熟児網膜症(ROP)未発症+自然消退ROP群と治療を要するROP群の比較未発症+在胎日数・出生体重補正オッズ比自然消退CROPCTR-ROPp値(95%信頼区間)p値眼数(%)C48C46在胎週数(週)C27.5±1.8C25.0±1.6<C0.001*出生体重(g)C815.8±146.3C660.0±154.5<C0.001*女性の割合(%)28(C58.3)23(C50.0)C0.535†0.880(C0.278.C2.453)C0.730Apgar指数C1分C3.81±1.99C2.65±1.55C0.003*0.973(C0.701.C1.351)C0.871Apgar指数C5分C5.24±1.65C4.57±1.60<C0.001*0.686(C0.442.C1.063)C0.091敗血症(%)2(4C.2)8(C17.4)C0.048†1.032(C0.145.C7.350)C0.975赤血球濃厚液輸血単位数(単位)C2.46±2.73C6.23±4.20<C0.001*1.206(C0.965.C1.508)C0.100結紮術を要する動脈管開存(%)4(8C.3)20(C43.5)C0.016†2.3589(C0.650.C10.315)C0.177晩期循環不全(%)1(2C.1)2(4C.3)C0.613†0.671(C0.012.C36.098)C0.845新生児呼吸窮迫症候群(%)44(C91.7)46(C100)C0.117†999.999(C0.001.C999.999)C0.984持続陽圧呼吸療法(日)C42.9±38.4C73.3±31.6<C0.001*1.020(C1.005.C1.036)C0.010持続陽圧呼吸療法+高流量経鼻酸素療法(日)C64.8±38.5C106.9±36.0<C0.001*1.024(C1.008.C1.040)C0.003慢性肺疾患(%)37(C77.1)45(C97.8)C0.004†7.609(C0.797.C72.605)C0.078脳室内出血(stage)C0.29±0.71C0.83±1.20C0.025†1.181(C0.670.C2.080)C0.565臨床的絨毛膜羊膜炎(%)8(C16.7)24(C52.2)<C0.001C†1.746(C0.535.C5.693)C0.356組織学的絨毛膜羊膜炎(stage)C0.65±1.10C0.91±1.03C0.039†0.825(C0.493.C1.380)C0.464子宮内感染(%)4(8C.3)4(8C.7)C1.000†0.636(C0.085.C4.732)C0.658入院時に受けた手術件数C0.38±1.04C0.93±1.50C0.015†1.337(C0.874.C2.045)C0.181平均±標準偏差.*Wilcoxonranksumtest,†Fisher’sexacttest.CIII考按在胎週数,出生体重,持続的陽圧呼吸療法期間および高流量経鼻酸素療法離脱までの期間であったが,CROPに対する本研究ではCROPに対するCIVR後の再燃因子を検討した.IVR後の再燃にかかわる因子は全身要因では有意差は認め超低出生体重児におけるCTR-ROP発症にかかわる因子は,ず,初回CIVR後の再燃に関わる因子は,出生から治療まで表3初回および2回目のラニビズマブ硝子体内注射後の寛解群と再燃群の全身要因の比較初回ラニビズマブ硝子体内注射後2回ラニビズマブ硝子体内注射後寛解群再燃群p値寛解群再燃群p値眼数(%)C27C19C14C5在胎週数(週)C25.2±1.7C24.6±1.2C0.215*C24.8±1.2C24.0±1.4C0.253*出生体重(g)C679.4±179.7C632.4±107.8C0.300*C643.4±84.8C601.6±165.3C0.327*女性の割合(%)4(C14.8)5(C26.3)C0.456†2(C14.3)3(C60.0)C0.088†Apgar指数C1分14(C51.9)9(C47.4)C1.000†7(C50.0)2(C40.0)C1.000†Apgar指数C5分C2.74±1.65C2.53±1.43C0.792*C2.71±1.49C2.00±1.22C0.633*敗血症(%)7(C25.0)1(5C.3)C0.115†C4.57±1.12C4.20±1.10C0.754*赤血球濃厚液輸血単位数(単位)C6.22±5.14C6.37±2.45C0.334C5.86±2.51C7.80±1.79C0.271*結紮術を要する動脈管開存(%)8(C29.6)5(C26.3)C1.000†8(C57.1)2(C40.0)C0.632†晩期循環不全(%)2(7C.4)C0C0.504†C0C0C0.635†新生児呼吸窮迫症候群(%)27(C100)19(C100)C1.000†14(C100)5(1C00)C1.000†持続陽圧呼吸療法(日)C74.3±37.9C71.8±20.5C0.349*C71.2±23.8C73.4±7.0C0.512*持続陽圧呼吸療法+高流量経鼻酸素療法(日)C105.3±42.5C109.1±25.0C0.255*C109.6±27.1C107.6±20.4C0.521*慢性肺疾患(%)26(C96.3)19(C100)C1.000†14(C100)5(1C00)C1.000†脳室内出血(stage)C0.81±1.21C0.84±1.21C0.946†C0.86±1.29C0.80±1.10C0.730†臨床的絨毛膜羊膜炎(%)11(C40.7)13(C68.4)C0.080†10(C71.4)3(C60.0)C0.173†組織学的絨毛膜羊膜炎(stage)C0.74±0.94C1.16±1.12C0.130†C1.21±1.19C1.00±1.00C0.273†子宮内感染(%)1(3C.6)3(C15.8)C0.292†2(C15.4)1(C20.0)C0.206†入院時に受けた手術件数C0.85±1.26C1.05±1.81C0.619†C0.57±0.85C2.40±3.05C0.294†平均±標準偏差.*Wilcoxonranksumtest,†Fisher’sexacttest.表4初回および2回目のラニビズマブ硝子体内注射後の寛解群と再燃群の局所要因の比較初回ラニビズマブ硝子体内注射後2回ラニビズマブ硝子体内注射後寛解群再燃群p値寛解群再燃群p値眼数(%)C27C19C14C5ROP治療週数(週)C36.9±2.7C34.0±1.5<C0.001*C43.9±2.7C40.9±1.3C0.009*CStage1C3C5C0C0CStageCStage2C1C4C0.045†C3C2C0.570†CStage3C23C10C11C3CZone1C10C17C0C0CZoneCZone2C17C2<C0.001C†C14C5C1.000†CZone3C0C0C0C0CPlusdiseaseC26C17C0.561C14C5C1.000†CAggressiveROP4(C14.8)5(C26.3)C0.456†2(C14.3)3(C60.0)C0.088†平均±標準偏差.*Wilcoxonranksumtest,†Fisher’sexacttest.Cの日数,治療時のCzoneとCstageであり,2回CIVR後の再燃にかかわる因子は,出生から治療までの日数のみだった.これまでの検討でCTR-ROP発症にかかわる因子は多数報告されており,Eckertらは在胎週数,出生体重,輸血歴,酸素投与,体重増加量がCROP発症の要因であると報告し,彼らのCROC曲線におけるCAUCはC0.88であった4).Arimaらは在胎週数,出生体重,晩期循環不全,陽圧呼吸がCROP発症の要因であると報告し,そのCAUCはC0.95であった5).筆者らの検討では在胎週数,出生体重,持続陽圧呼吸療法の期間で有意差を認め,AUCはC0.891であり,Arimaらの検討に近いCAUCが得られ,ROP発症モデルはほぼ同等であった.高濃度酸素投与はCROP発症の主要な危険因子であることは広く知られているが6,7),超低出生体重の症例においても,より短い在胎週数,低い出生体重,陽圧呼吸を併用した長期の酸素投与はCTR-ROP発症のリスクにかかわることが示され,該当する症例はCROPの重症化に十分留意すべきである.初回CIVR治療後の再燃において,本研究における再燃症例はC19/46眼(41.3%),再燃までの平均期間はC63.8C±13.6日であった.同様にCIVRのみを使用した検討において,再燃率はC20.9.64%,再燃までの平均期間は約C55日と報告2,8,9)されており,既報と同等の再燃率で,再燃までの期間がややab1.001.000.750.75感度0.50感度0.500.250.250.000.001-特異度1-特異度図1ラニビズマブ硝子体内注射後の未熟児網膜症再燃に関する受診者動作特性曲線a:初回ラニビズマブ硝子体内注射(IVR)後の未熟児網膜症(ROP)再燃に関する受信者動作特性(ROC)曲線.Areaundercurve(AUC)はC0.842(p<0.001)で,ROP治療週数のカットオフ値はC35.0週であった.b:2回目CIVR後のCROP再燃に関するCROC曲線.AUCはC0.900(p=0.046)であり,ROP治療週数0.000.250.500.751.000.000.250.500.751.00のカットオフ値はC41.4週であった.長い傾向にあった.未熟児における診療は,国際的に生存率,酸素使用方法,ROPの認知度,眼科医のCROP診療の習熟度などさまざまな差異があり1,10),一概にはいえないが,筆者らの検討では超低出生体重児を対象としており,再燃までの期間の増加につながった可能性がある.TR-ROPに対するCIVR加療は,一定症例の再燃がみられること,再燃までの期間がやや長いため,IVR後は長期間の慎重な経過観察を要することを念頭に,治療後のフォローアップを行う必要がある.これまで,ROPに対する抗CVEGF治療後の治療後再燃のリスク要因は,全身要因として短い在胎週数1),低出生体重1),低CApgar指数11),治療後の酸素使用8),多胎児があり,局所要因として,広範囲の網膜新生血管8)および無血管領域11),網膜出血12)の存在であると報告されている.近年では,Iwahashiらがわが国におけるCTR-ROPに対する抗VEGF治療後の再燃リスクとして,35週未満の治療とCaggressiveROPを挙げている9).本検討でもCIVR後の再燃因子には早期のCIVR投与,治療時のCzoneとCstageが関連しており,ROC曲線におけるカットオフ値もCIwahashiらの報告9)と同様のC35.0週であった.超低出生体重児におけるROP治療後の再燃因子においても,出生後早期の治療,低いCstageあるいは狭いCzoneで治療が必要な症例,すなわち広範囲の網膜虚血の存在は,ROPの再燃を引き起こす可能性が高い.早期のCIVR療法は一過性に眼内の抗CVEGF濃度を低下させCROPを消退させるが,月齢が低いと呼吸機能や循環動態が未熟なため引き続きの高濃度酸素にさらされることで,生理的な網膜血管の発達が促されず,さらに広範囲の虚血がCVEGF濃度の上昇を引き起こし,再燃につながるものと思われる.また,同様に再燃症例においても,より早期のCIVR追加療法は再々燃のリスクがあり,早期にCIVR再投与を必要とした症例は,血管伸長が完了し活動性疾患が消失するまで,厳密な経過観察を行うことが推奨される.今回の検討ではCIVR後の全身および局所の明らかな合併症は認められなかった.近年,米国を中心とした多施設研究でも,抗CVEGF薬硝子体内注射後の硝子体出血,白内障形成,結膜炎,結膜下出血,角膜.離などの合併症はC0.9%とまれで,眼内炎や網膜.離のような重篤な合併症はみられなかったと報告されている10).一方で,Type1ROPに対するIVRは,網膜光凝固術よりも高い再燃率を示した報告13)もあり,漫然とCIVRを使用することは避けるべきであるが,ROPに対する抗CVEGF療法は全身状態不良で網膜光凝固術までの時間稼ぎや,破壊的な網膜光凝固術を必要とする領域を減少させることが可能であることも事実である.筆者らの検討でも初回CIVRがC32.7週以前の症例は全例再燃したが,逆にC38.3週以降の症例は全例寛解を認めている.2回目のIVRにおいてもC40.3週以前の症例は全例再燃,42.9週以降の症例は全例寛解を認めた.このことから,特定の週数以降であれば,ROPの鎮静化に破壊的な網膜光凝固術を回避する目的で,積極的なCIVR治療を検討してもよいと思われる.今回,ROPに対するラニビズマブ治療後再燃の関連因子を呈示した.TR-ROPに対するCIVRは,多くの症例で破壊的な網膜光凝固術を行うことなく鎮静化を得られたが,再燃症例も多数存在した.未熟児に対する抗CVEGF薬硝子体内注射は,全身的な影響,薬剤の選択,投与量など,まだ多くの議論の余地がある.わが国でも新しくアフリベルセプトが認可され,今後は治療の選択肢が増えるが,疾患の特徴を踏まえた治療戦略が必要である.文献1)TsaiAS,ChouHD,LingXCetal:Assessmentandman-agementofretinopathyofprematurityintheeraofanti-vascularCendothelialCgrowthfactor(VEGF)C.CProgCRetinCEyeResC88:101018,C20222)StahlCA,CLeporeCD,CFielderCACetal:RanibizumabCversusClaserCtherapyCforCtheCtreatmentCofCveryClowCbirthweightCinfantswithretinopathyofprematurity(RAINBOW):anopen-labelCrandomisedCcontrolledCtrial.CLancetC394(10208):1551-1559,C20193)BinenbaumG,YingGS,QuinnGEetal:TheCHOPpostC-natalCweightCgain,CbirthCweight,CandCgestationalCageCreti-nopathyCofCprematurityCriskCmodel.CArchCOphthalmolC130:1560-1565,C20124)EckertCGU,CFortesCFilhoCJB,CMaiaCMCetal:ACpredictiveCscoreCforCretinopathyCofCprematurityCinCveryClowCbirthweightpreterminfants.Eye(Lond)C26:400-406,C20125)ArimaM,TsukamotoS,FujiwaraKetal:Late-onsetcir-culatorycollapseandcontinuouspositiveairwaypressureareCusefulCpredictorsCofCtreatment-requiringCretinopathyCofprematurity:aC9-yearCretrospectiveCanalysis.CSciCRepC7:3904,C20176)TinW,WariyarU:Givingsmallbabiesoxygen:50yearsofuncertainty.SeminNeonatolC7:361-367,C20027)HigginsRD:OxygenCsaturationCandCretinopathyCofCpre-maturity.ClinPerinatolC46:593-599,C20198)LyuCJ,CZhangCQ,CChenCCLCetal:RecurrenceCofCretinopa-thyCofCprematurityCafterCintravitrealCranibizumabCmono-therapy:timingCandCriskCfactors.CInvestCOphthalmolCVisCSciC58:1719-1725,C20179)IwahashiCC,CUtamuraCS,CKuniyoshiCKCetal:FactorsCasso-ciatedwithreactivationafterintravitrealbevacizumaborranibizumabCtherapyCinCinfantsCwithCretinopathyCofCpre-maturity.RetinaC41:2261-2268,C202110)PatelCNA,CAcaba-BerrocalCLA,CHoyekCSCetal:PracticeCpatternsandoutcomesofintravitrealanti-VEGFinjectionforCretinopathyCofprematurity:anCinternationalCmulti-centerstudy.OphthalmologyC129:1380-1388,C202211)LingKP,LiaoPJ,WangNKetal:Ratesandriskfactorsforrecurrenceofretinopathyofprematurityafterlaserorintravitrealanti-vascularendothelialgrowthfactormono-therapy.RetinaC40:1793-1803,C202012)HuQ,BaiY,ChenXetal:RecurrenceofretinopathyofprematurityCinCzoneCIICstageC3+afterCranibizumabCtreat-ment:aCretrospectiveCstudy.CJCOphthalmolC2017:C5078565,C201713)ChangCE,CJosanCAS,CPurohitCRCetal:ACnetworkCmeta-analysisCofCretreatmentCratesCfollowingCbevacizumab,Cranibizumab,a.ibercept,andlaserforretinopathyofpre-maturity.OphthalmologyC129:1389-1401,C2022***

抗血管内皮増殖因子薬硝子体注射が有効であった 増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の血管新生緑内障の1 例

2022年4月30日 土曜日

《第26回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科39(4):501.505,2022c抗血管内皮増殖因子薬硝子体注射が有効であった増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の血管新生緑内障の1例森秀夫宮保浩子大阪市立総合医療センター眼科CACaseofNeovascularGlaucomaafterVitrectomyforProliferativeDiabeticRetinopathyE.ectivelyTreatedbyRepeatedAnti-VascularEndothelialGrowthFactorInjectionsHideoMoriandHirokoMiyaboCDepartmentofOphthalmology,OsakaCityGeneralHospitalC抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体内注射が眼圧制御と視力維持に有効であった血管新生緑内障(NVG)のC1例を報告する.症例は長期間糖尿病を放置したC72歳,男性.左眼視力は生来不良であった.今回右眼に白内障と増殖糖尿病網膜症を発症し,視力はC0.4に低下した.硝子体出血は認めなかった.球後麻酔下に白内障併施硝子体手術を施行中に不穏興奮状態となり,手術は中止に至った.術後は硝子体出血が著明であり,軽度の認知症の合併が判明した.全身麻酔での再手術を施行し,半年後視力C0.8を得た.手術C9カ月後CNVG(眼圧C40CmmHg)を発症した.濾過手術の前処置として抗CVEGF薬を硝子体内注射すると眼圧はC10CmmHg台に下降し,虹彩新生血管は消失した.認知症患者の唯一眼であり,濾過手術は中止した.その後C3.4カ月間隔でC2度CNVGが再燃し,その都度注射により眼圧制御と視力維持を得ている.NVGへの抗CVEGF薬注射は,手術の出血軽減目的の前処置として位置づけられるが,症例によっては継続注射が有効な場合もありうると思われた.CPurpose:Toreportacaseofneovascularglaucoma(NVG)aftervitrectomyforproliferativediabeticretinopa-thyCthatCwasCsuccessfullyCtreatedCbyCrepeatedCintravitrealCanti-vascularCendothelialCgrowthfactor(anti-VEGF)Cinjections.Casereport:A72-year-oldmalewithdiabetesmellitus(DM)presentedproliferativediabeticretinopa-thyinhisrighteye.Visualacuity(VA)(Snellenchart)inhisrighteyewas0.4,whilethatinhisleft-eyewaspoorsinceCchildhood.CHeChadCnotCundergoneCtreatmentCforCDMCforCaClongCtime.CForCtreatment,CvitrectomyCcombinedCwithCcataractCsurgeryCunderCretrobulbarCanesthesiaCwasCperformed.CHowever,CtheCpatientCbecameCagitatedCandCuncontrollablemid-surgery,sotheoperationwasdiscontinued.Postoperatively,markedvitreoushemorrhagewasobserved,andhewasdiagnosedwithmilddementia.Reoperationwassuccessfullyperformedundergeneralanes-thesia.At6-monthspostoperative,hisright-eyeVAimprovedto0.8,yetat9-monthspostoperative,NVGwithanintraocularpressure(IOP)of40CmmHgdeveloped.Anti-VEGFwasinjectedintravitreallyasanadjuncttherapyto.ltrationsurgery.TheIOPloweredto10-somethingmmHg,andtheirisneovascularizationdisappeared.SincethepatientChadCdementiaCandConlyChadCvisionCinChisCrightCeye,CtheCplannedC.ltrationCsurgeryCwasCcancelled.CNVGCrecurredtwiceatanintervalof3or4months,yetwassuccessfullytreatedeachtimeviainjectionofanti-VEGF.Conclusion:AlthoughCintravitrealCanti-VEGFCinjectionCisCgenerallyCconsideredCanCadjunctCtherapyCforCtheCreduc-tionofintraoperativehemorrhageinNVGpatients,repeatedinjectionscane.ectivelytreatrecurrentNVGinsomecases.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(4):501.505,C2022〕Keywords:糖尿病網膜症,血管新生緑内障,抗血管内皮増殖因子,硝子体内注射,認知症,唯一眼.diabeticreti-nopathy,neovascularglaucoma,anti-vascularendothelialgrowthfactor,intravitrealinjection,dementia,onlyeye.C〔別刷請求先〕森秀夫:〒630-0136奈良県生駒市白庭台C6-10-1白庭病院眼科Reprintrequests:HideoMori,M.D.,DepartmentofOphthalmology,ShiraniwaHospital,6-10-1Shiraniwadai,IkomaCity,Nara630-0136,JAPANC図1初診時右眼眼底写真黄斑近傍の硬性白斑を認める.明瞭な新生血管は認めない.はじめに血管新生緑内障(neovascularglaucoma:NVG)は糖尿病網膜症眼や網膜中心静脈閉塞症などの失明原因として重要である1).NVGに対する抗血管内皮増殖因子(vascularendo-thelialgrowthfactor:VEGF)薬の硝子体内注射は,汎網膜光凝固(panretinalphotocoagulation:PRP)や手術治療などの補助療法としての位置づけが一般的であるが1.3),今回唯一眼に発症したCNVGに対し抗CVEGF薬(アフリベルセプト)の継続的硝子体注射が眼圧コントロールと視力維持に有効であった症例を経験したので報告する.CI症例患者はC20年余り前に糖尿病を指摘され,短期間治療して血糖値が下がり,その後自己判断で治療せず放置していた72歳,男性.生来左眼の視力は不良であった.今回右眼の視力不良のため運転免許の更新ができず近医を受診し,糖尿病網膜症としてC2019年C8月下旬当科を紹介受診した.初診時視力はCVD=0.1(0.4×+2.25D(.cyl2.0DAx90°),VS=0.01(0.02×+2.0D(.cyl2.0DAx80°),眼圧は両眼ともC12CmmHgで,両眼に前.下白内障を認め,散瞳はC4Cmmと不良であった.虹彩新生血管は認めなかった.右眼眼底には黄斑近傍に硬性白斑を認め(図1),光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)にて硝子体による黄斑牽引と黄斑浮腫を認めた(図2).周辺網膜の視認性は不良であったが,著明な増殖膜は認めなかった.左眼眼底には黄斑を含む網脈絡膜萎縮を認めた(図3).散瞳不良かつ白内障があり,合併症の理解も不十分であったため,蛍光眼底造影(.uoresceinangiography:FA)は施行しなかった.なお,初診時空腹時血糖C132Cmg/dl,HbA1c7.1%,糖尿病腎症C2期であった.同年C9月初旬,水晶体再建術併施硝子体手術を球後麻酔にて施行した.後部硝子体は未.離で鼻側,上方,下方の中間周辺部に数カ所血管性増殖による癒着を認めた(図4).増殖膜を切除し,PRPを開始すると不穏興奮状態となり,手術開始よりC40分余りで中止に至った.術後は硝子体出血により眼底透見不能となり,軽度の認知症の存在も判明したため,初回手術のC16日後,全身麻酔で再手術(硝子体出血切除,黄斑部内境界膜.離,PRP)を施行した2).術後経過は良好でC6カ月後のC2020年C3月にはCRV=0.4(0.8C×.0.25D(.cyl0.5DAx90°)を得,黄斑形態も改善したため(図5),当科は終診とし近医での管理とした.このとき眼圧は16CmmHgであった.この後運転免許更新ができ,眼科的には無症状であったこと,COVID-19の外出自粛期間であったことなどから,実際には近医を受診していなかった.手術9カ月後のC5月末,霧視を自覚して術後初めて近医を受診し,NVG(眼圧C27CmmHg)を指摘され,降圧点眼C1剤を処方されてC6月初旬当科を紹介再診した.再診時,瞳孔縁全周に軽度の新生血管(前眼部写真では不明瞭)を認め,眼圧は40CmmHgであった.前房深度は正常で,矯正視力はC0.5であった.血糖値はC154Cmg/dl,HbA1c6.3%であった.認知症かつ唯一眼であるため全身麻酔による線維柱帯切除術をC5日後に予定したが,その前処置として即日アフリベルセプト2Cmgを硝子体内注射し,降圧薬点眼をC3剤とした.翌日から眼圧はC10CmmHg台に下降し,虹彩新生血管は消失した.その後C1カ月経過を観察したが変化はなかった.線維柱帯切除術にはさまざまな合併症のリスクがあり4),高齢,認知症,唯一眼であることを考慮して手術は中止とし,降圧薬点眼C3剤を続行しつつ近医にて週C2回眼圧をチェックし,NVGの再燃があればアフリベルセプト硝子体内注射で対処する方針とした.初回注射のC4カ月後虹彩新生血管が再発し,眼圧C31mmHgとなったためC2回目の硝子体内注射を施行し,新生血管の消失と眼圧正常化を得た.さらにそのC3カ月半後(2021年C1月中旬)新生血管の再燃と眼圧上昇(32CmmHg)をきたしたためC3回目の硝子体内注射を施行し,新生血管の消失と眼圧正常化を得た.この経過中視力はC0.5.0.8を維持しており,3回目の注射後現在まで約C2カ月を経過したが再発をきたしていない.CII考按本症例は認知症を伴う唯一眼に増殖糖尿病網膜症を発症し,硝子体手術により良好な視力を得た後,COVID-19の外出自粛も相まって無治療となり,術後C9カ月でCNVGを発症した.線維柱帯切除術を予定し,その前処置として施行したアフリベルセプト硝子体内注射が眼圧下降,視力維持に有効であったため手術を中止し,NVGの再燃の都度アフリベ図2初診時右眼OCT黄斑浮腫と硝子体牽引を認める.視力C0.4.図3初診時左眼OCT黄斑を含む網脈絡膜萎縮を認め,生来視力はC0.02と不良.ルセプト硝子体内注射を継続中のC1例である.NVGではあるが虹彩新生血管の程度は軽症で,明瞭な隅角閉塞も認めないことが良好な眼圧コントロールの要因と思われる.本症例はスリットランプでの詳細な観察で虹彩新生血管を認めたが,カラー前眼部撮影では明瞭に記録できなかった.近年発達した光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)を前眼部に応用することにより,微細な虹彩新生血管を非侵襲的に描出し,その消長を追えた報告があり5),今後の普及が望まれる.NVGに対する抗CVEGF薬の硝子体内注射は,PRPの補助治療や手術での出血リスクを軽減する前処置として位置づけられる1.3).アフリベルセプトの薬剤添付文書にも「長期的な眼圧管理にあたっては標準的な治療法の併用を考慮する」と記載されている.本症例は硝子体手術時にCPRPを施行したが,術後C9カ月でCNVGを発症したことから,網膜無灌流領域の残存あるいは新たな発生が考えられ,アフリベルセプトが奏効している期間内にCFAGによる精査とレーザー凝固の追加が求められ図4右眼術中所見鼻側の血管性増殖膜を.で示す..は視神経乳頭.図5右眼術後半年のOCT黄斑形態の改善を認める.視力C0.8.る1,2).しかし,小瞳孔,認知症による理解力低下,唯一眼であることなどから実施できなかった.NVGの手術術式としてはわが国では線維柱帯切除術が選択されることが多い1.3,6)が,合併症として術中術後の前房硝子体出血,脈絡膜.離,術後の浅前房,低眼圧,上脈絡膜出血,濾過胞感染など種々の危険がある4).NVGに対する抗CVEGF薬投与の研究では,視力不良のNVG26眼をランダムにベバシズマブC2.5Cmg硝子体内注射群(14眼)とCsham群(生理食塩水結膜下注射,12眼)とに振り分け,4週ごとにC3回注射し,前向きに半年間観察したところ,前者に有意な眼圧下降と新生血管の退縮がみられた7)ことより,抗CVEGF薬はCNVGの手術治療の補助療法となりうるとしている.硝子体内注射群には眼圧C30CmmHg以上が10眼含まれ,4眼が注射後C21CmmHg以下に下降している.また,日本人を対象としたアフリベルセプトC2Cmgの第CIII相試験(VEGA試験)8)では,眼圧C25CmmHg超のCNVG50例に硝子体内注射がなされた結果,75.9%がC1回の注射でC13週間にわたり眼圧コントロールが得られ,この眼圧下降効果はアセタゾラミド内服に依存しないことが確認された(VEN-ERA試験)9).本症例はアフリベルセプト注射時に無硝子体眼であった.ウサギ10)やサル11)での動物実験では,無硝子体眼は抗VEGF薬の排出が正常眼より早いという報告があるが,臨床的に糖尿病黄斑浮腫に対する抗CVEGF薬の効果を無硝子体眼と有硝子体眼で比較した研究では,両者に差はなかったとされる12).今回の症例では初回のアフリベルセプト注射後4カ月,2回目の注射後C3.5カ月でCNVG再燃により再注射しているので,有硝子体眼の加齢黄斑変性に対する投与間隔と差はないと思われる.また,今回の症例のアフリベルセプト投与間隔は,有硝子体眼のCNVGが対象のCVEGA試験8)で示された効果持続期間と遜色ないか,それを上回る投与間隔であった.増殖糖尿病網膜症に対する抗CVEGF薬硝子体内注射の合併症として牽引性網膜.離の発症が知られているが13),本症例はもともと増殖膜の活動性は低く,さらに硝子体手術によって中間周辺部に認めた増殖膜は切除しており,牽引性.離が発症する危険はきわめて低い.本症例は初診時黄斑に硝子体牽引と浮腫がみられたため,内境界膜.離を施行2)し,視力と黄斑形態に改善がみられたが,牽引のないびまん性の糖尿病黄斑浮腫の場合,内境界膜.離は視力予後に無関係との報告がある14).本症例はCNVG発症後アフリベルセプトの継続注射をすることで,9カ月にわたりCNVGのコントロールと良好なCqual-ityCoflifeが得られているが,今後も綿密な経過観察が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)赤木忠道:血管新生緑内障の治療.糖尿病網膜症診療のすべて.(北岡隆,吉村長久編),p312-317,医学書院,C20132)鈴間潔:硝子体手術.糖尿病網膜症診療のすべて.(北岡隆,吉村長久編),p276-287,医学書院,20133)SaitoCY,CHigashideCT,CTakedaCHCetal:ClinicalCfactorsCrelatedtorecurrenceofanteriorsegmentneovasculariza-tionCafterCtreatmentCincludingCintravitrealCbevacizumab.CAmJOphthalmolC149:964-972,C20104)AllinghamCRR,CDamjiCKF,CFreedmanCSFCetal:FilteringCsurgery,CPreventionCandCmanagementCofCcomplications.In:ShieldsC’CTextbookCofCGlaucoma.C6thCed,Cp501-511,CLippincottWilliams&Wilkins,Philadelphia,20115)野川千晶,坪井孝太郎,瓶井資弘:前眼部CopticalCcoher-encetomographyCangiographyによる虹彩新生血管の経時的観察ができたC2症例.日眼会誌124:802-807,C20206)野崎実穂,鈴間潔,井上真ほか:日韓糖尿病網膜症治療の現状についての比較調査.日眼会誌C117:735-742,C20137)YazdaniS,HendiK,PakravanMetal:Intravitrealbeva-cizumabCforCneovascularCglaucoma.CACrandomizedCcon-trolledstudy.JGlaucomaC18:632-637,C20098)InataniCM,CHigashideCT,CMatsushitaCKCetal:IntravitrealCa.iberceptCinCJapaneseCpatientsCwithCneovascularCglauco-ma:TheVEGArandomizedclinicaltrial.AdvTherC38:C1116-1129,C20219)InataniM,HigashideT,MatsushitaKetal:E.cacyandsafetyCofCintravitrealCa.iberceptCinjectionCinCJapaneseCpatientsCwithCneovascularglaucoma:OutcomesCfromCtheCVENERAstudy.AdvTherC38:1106-1115,C202110)CristoforidisCJB,CWilliamsCMM,CWangCJCetal:AnatomicCandpharmacokineticpropertiesofintravitrealbevacizum-abandranibizumabaftervitrectomyandlensectomy.Ret-inaC33:946-952,C201311)KakinokiCM,CSawadaCO,CSawadaCTCetal:E.ectCofCvitrec-tomyConCaqueousCVEGFCconcentrationCandCpharmacoki-neticsCofCbevacizumabCinCmacaqueCmonkeys.CInvestCOph-thalmolVisSciC53:5877-5880,C201212)芹沢聡志,井上順治,井上賢治:無硝子体眼における糖尿病黄斑浮腫に対する抗血管内皮増殖因子薬硝子体内投与の治療効果の検討.日眼会誌123:115-120,C201913)ArevaloCJF,CMaiaCM,CFlynnCJrCHWCetal:TractionalCreti-naldetachmentfollowingintravitrealbevacizumab(Avas-tin)inpatientswithsevereproliferativediabeticretinopa-thy.BrJOphthalmolC92:213-216,C200814)KumagaiCK,CHangaiCM,COginoCNCetal:E.ectCofCinternalClimitingCmembraneCpeelingConClong-termCvisualCoutcomesCfordiabeticmacularedema.RetinaC35:1422-1428,C2015***

硝子体内注射1カ月後に診断された外傷性白内障の1例

2019年4月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科36(4):544.547,2019c硝子体内注射1カ月後に診断された外傷性白内障の1例加納俊祐*1,2清崎邦洋*1福井志保*1久保田敏昭*2*1国立病院機構別府医療センター眼科*2大分大学医学部眼科学講座CACaseofTraumaticCataractDiagnosed1MonthafterIntravitrealInjectionShunsukeKano1,2)C,KunihiroKiyosaki1),ShihoFukui1)andToshiakiKubota2)1)DepartmentofOphthalmology,NationalHospitalOrganizationBeppuMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,OitaUniversityFacultyofMedicineC目的:硝子体内注射C1カ月後に診断した外傷性白内障のC1例を経験したので報告する.症例:85歳,男性.別府医療センター眼科(以下,当院)でポリープ状脈絡膜血管症と診断し,抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)薬硝子体内注射を施行した.4回目の注射からC1カ月後に当院を受診した際に治療眼の視力低下を訴えた.後.下白内障を認めたが,後.の亀裂の有無は不明だった.硝子体内注射を原因とした外傷性白内障に対して水晶体再建術を施行した.術中,後.破損が判明したが,これは術前から生じていたものと考えられた.術後は,滲出性病変の再発を認めた際に抗CVEGF薬硝子体内注射を施行している.結論:硝子体内注射C1カ月後に判明した外傷性白内障に手術を施行した.合併症には十分注意して硝子体内注射を行う必要がある.CPurpose:WeCreportCaCcaseCofCtraumaticCcataractCdiagnosedConeCmonthCafterCintravitrealCinjection.CCase:An85-yearColdCmaleCwasCdiagnosedCwithCpolypoidalCchoroidalCvasculopathyCatCBeppuCMedicalCCenterCDepartmentCofCOphthalmologyandreceivedintravitrealinjectionsofanti-vascularendothelialgrowthfactor(VEGF)drug.Hevis-itedourhospitalonemonthafterthefourthinjection,complainingofvisualloss.Weobservedposteriorsubcapsu-larcataract,butthepresenceofposteriorcapsulerupturewasnotclearlyobserved.DuringlensreconstructionfortraumaticCcataract,Chowever,CposteriorCcapsuleCruptureCwasCnoticed.CAfterCtheCsurgery,CuponCrealizingCtheCrecur-renceofexudativelesion,weagainperformedintravitrealinjectionofanti-VEGFdrug.Conclusion:Weperformedsurgeryontraumaticcataractobservedonemonthafterintravitrealinjections.Weshouldtakecareregardinglenscomplicationsfollowingintravitrealinjectionsofanti-VEGFdrug.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C36(4):544.547,C2019〕Keywords:外傷性白内障,硝子体内注射.traumaticcataract,intravitrealinjection.はじめに近年,黄斑疾患に対して,ペガプタニブ(マクジェンCR),ラニビズマブ(ルセンティスCR),アフリベルセプト(アイリーアR)といった血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)阻害薬や副腎皮質ステロイドの硝子体内注射が承認され,さらに適応が次第に拡大していくことでわが国における硝子体内注射の施行数は増加している.その一方で,硝子体内注射は侵襲的な治療であり,硝子体内注射の合併症として眼内炎,無菌性眼内炎,外傷性白内障,網膜.離,眼圧上昇などが知られている.硝子体内注射施行数が増加していくにつれ,これらの合併症が増加することが予測される.しかし,硝子体内注射を契機に発症した後.損傷に対して手術を施行した報告は少ない1).筆者らは硝子体内注射からC1カ月後に外来受診した際に水晶体後.に混濁を認め,硝子体内注射を契機に発症した外傷性白内障と診断した症例に,硝子体手術併用の水晶体再建術を施行したので報告する.CI症例患者:85歳,男性.既往歴:喘息.主訴:右眼視力低下.〔別刷請求先〕加納俊祐:〒879-5503大分県由布市挾間町医大ヶ丘C1-1大分大学医学部眼科学講座Reprintrequests:ShunsukeKano,DepartmentofOphthalmology,OitaUniversityFacultyofMedicine,1-1Idaigaoka,Hasama-machi,Yufu-shi,Oita879-5503,JAPANC544(122)現病歴:2015年C10月,近医で両眼白内障の経過観察中に右眼加齢黄斑変性を疑われ,精査加療目的に当科へ紹介となった.経過:当科にて,右眼ポリープ状脈絡膜血管症と診断し,ラニビズマブ硝子体内注射(intravitrealCinjectionCofCranibi-zumab:IVR)を導入し,3回連続投与を行った.最終投与からC5カ月後,漿液性網膜.離および.胞様黄斑浮腫を認めた.視力はCVD=0.1(0.9C×sph+3.0D(cyl.1.0DAx90°),CVS=0.4(1.0C×sph+2.5D(cyl.1.0DAx100°)であった.ポリープ状脈絡膜血管症の再発に対して,4回目のCIVRを試行した.IVRの方法は,ポリビニルアルコールヨウ素液(PAヨードR)で消毒後,ドレーピングを行い,リドカイン塩酸塩(2%キシロカインR)で点眼麻酔を行った.角膜輪部よりC3.5mmの位置を計測し,19CmmのC30CG針でラニビズマブ(ルセンティスCR硝子体内注射用キットC10Cmg/ml)0.5Cmg(0.05ml)を硝子体内注射した.注射後,オフロキサシン眼軟膏(タリビッド眼軟膏CR)を塗布した後,ガーゼを貼付して終了した.注射翌日から視力低下を自覚していたが眼科受診はせず,1カ月後の定期受診時に視力低下を訴えた.受診時の右眼視力はC0.3(0.4C×sph+3.5D)であり,右眼眼圧は17mmHgであった.3.9時方向にかけての水晶体後.に扇型の混濁を認めた(図1).水晶体後.の亀裂の有無は不明であった.水晶体融解による炎症や眼圧上昇は認めなかった.眼軸長は,右眼はC22.50Cmm,左眼はC22.62Cmmであった.水晶体厚は術後に左眼のみ測定したが,5.93Cmmであった.硝子体内注射を原因とした右眼外傷性白内障と診断した.患者本人には硝子体内注射の合併症として白内障が発症したこと,視力回復のためには手術が必要なことを説明し,患者の同意のうえで白内障手術を施行した.水晶体後.の状態が不明であったため,経毛様体扁平部硝子体切除術(parsCplanavitrectomy:PPV)を行う準備をしたうえで,コンステレーションRビジョンシステムにて超音波乳化吸引術(phacoemulsi.cationandaspiration:PEA)および眼内レンズ挿入術(intraocularlens:IOL)を併施することとした.角膜輪部のC2時およびC10時方向に角膜サイドポートを作製し,粘弾性物質で前房を置換した後,26CGチストトームで作製した前.フラップを前.鑷子で把持して連続円形切.(continuousCcurvilinearcapsulorrhexis:CCC)を施行した.11時方向から経結膜強角膜切開を施行した.後.損傷の可能性があったため,少量のオキシグルタチオン液(BSSplusR)で前房圧を上げないようにChydrodissectionを施行した.ボトルの高さを低く設定し低吸引流量でCPEAを行ったが,核処理中に核落下を認め,術前から後.が破損していたことが判明した.硝子体脱出およびこれ以上の水晶体核落下を予防する目的でヒーロンCVCRを水晶体核の後方に注入して(図2),ヒーロンCVCRを吸引しないように吸引流量を下げ,低灌流下で残存核を処理した.落下した水晶体核を処理するため,25CGトロカールでポートを作製した.前部硝子体切除後,水晶体.に付着した水晶体皮質は硝子体カッターで吸引処理した.Corevitrectomy後,トリアムシノロンアセトニド(マキュエイドCR)を散布し後部硝子体.離を生じさせた.落下した水晶体核を硝子体カッターで破砕し,処理した(図3).周辺部硝子体切除を行ったのち,眼内レンズ(参天製薬,モデル:NX70,レンズパワー:+24.0D)を挿入した.CCCは完全であったため,術後の屈折を安定させ,遷延性の眼内炎を予防することを目的に,IOLopticcapture法を試みたが2),困難だったため光学部も.外固定とした(図4).硝子体ポートを抜去し,8C.0絹糸で創を縫合した.アセチルコリン塩化物(オビソートCR)で縮瞳させ,硝子体脱出のないことを確認し,手術終了とした.手術後に,後.破損のために眼内レンズを.外固定したことを説明し,とくに医師患者関係のトラブルは生じなかった.術後早期に網膜病変の再燃はなく,経過順調のため退院となった.手術からC4週間後に滲出性病変の再発に対してCIVRを施行した.その後は,滲出性病変の再発を認めた場合は,抗CVEGF薬硝子体内注射をCprorenata(PRN)投与している.最終視力はCVD=0.7(1.0C×sph.0.5D(cyl.1.5DAx100°)であった.CII考察抗CVEGF薬硝子体内注射(ベバシズマブ,ラニビズマブ,アフリベルセプト)の合併症としての外傷性白内障の発症率はC0.0.8%と報告されており3.6),服部の報告では,硝子体内注射による水晶体損傷は注射針の抜去時に生じたとされている7).後.への注射針の接触は,突発的な眼球運動,注射刺入位置および角度のずれが原因として生じると考えられる.既報では角膜輪部からC3.5.4.0Cmm後方において注射針の刺入を行うとされており8,9),今回の症例で筆者が施行した角膜輪部からC3.5Cmm後方からの注射については,一般的な位置である.今回の症例は,軽度ではあるものの短眼軸長の遠視眼であり瞼裂幅は狭小であった.また,僚眼の検査結果から考えると加齢に伴い水晶体は軽度膨隆していたものと考えられる.これらの要素から,この患者にとって適正な刺入位置から注射針を刺入できなかったこと,また,針を抜去する際に角度が水平方向に近くなったことで注射針が後.に接触した可能性がある.現在,合併症予防策として,硝子体内注射用の針を本症例で使用したC19mmのC30G針からC12mmのC31G針に変更した.以前より細く,短い針を用いることで患者の疼痛の軽図1硝子体内注射1カ月後の後.混濁水晶体後.に扇型の混濁を認めた.亀裂の有無は不明だった.図3術中写真:落下した水晶体核の処理落下した水晶体は硝子体カッターで処理した.減,針の操作性の向上が得られている.刺入位置については,安全を期して,現在は偽水晶体眼では角膜輪部からC3.5mm,有水晶体眼では角膜輪部からC4.0Cmmの位置から刺入している.また,刺入角度に関しては施術者の技量,患者の眼球運動に左右されるものではあるが,強膜に垂直よりもやや深部に向けて刺入し,角度を保ったまま抜去している.本症例以後,硝子体内注射による水晶体.損傷は経験していない.また,網膜裂孔や網膜.離の発症も経験していない.本症例では,術中所見から考えると,術前から後.破損が存在していたと思われた.水晶体後.に認めた扇型状の混濁は破.部位だと思われるが,術前には確定できなかった.既報において,針で経角膜的にマウスの水晶体前面に損傷を与図2術中写真:破.判明後の水晶体核処理術前から破.しており,術中に水晶体核落下を認めた.水晶体核の後方にヒーロンCVCRを注入し,それ以上の核落下と硝子体脱出を予防しながら核処理を行った.図4術中写真:眼内レンズの.外固定CCCは完全だった.眼内レンズは.外固定とした.えた場合,損傷数日以内に線維芽細胞が増殖して傷口周辺に充満して前房に突出,傷口前面を被覆する.その後,損傷C7.10日程度で増殖細胞が紡錘形に変化し,損傷C15日になると損傷部周辺上皮細胞の分裂活動はほぼ停止し,損傷部は線維芽細胞様の紡錘形細胞が密に接し合うようになる10).本症例でも,このような水晶体.の創傷治癒機転が働いたものと考えられ,傷口の周辺には混濁を認め,これにより後.に亀裂が生じているのか,後.下皮質白内障が生じているだけなのかの鑑別は術前には不可能だった.また,傷口が増殖細胞で被覆されているためか,水晶体融解による前房炎症,硝子体混濁,眼圧上昇などの合併症は生じなかった.注射により後.損傷を生じた場合,白内障手術を施行する際には硝子体手術が必要となる可能性があることを念頭に置いて手術に臨む必要がある.また,硝子体切除術後には硝子体内注射した薬物の薬物動態は変化し,半減期が短縮することが報告されている11).加齢黄斑変性などの原疾患への治療効果も減弱し,注射回数が増える可能性があり,患者側の負担が増大する恐れがある.これらの点から,患者に多くの不利益を与える合併症であり,硝子体内注射導入の際には必ず説明を行う必要があると考える.現在までにも,硝子体内注射による合併症として,外傷性白内障以外にも眼内炎,無菌性眼内炎,外傷性白内障,網膜.離,眼圧上昇などは一定の割合で報告されている7,12).外傷性白内障の発症については予防できる可能性があり,今後予測される硝子体内注射施行数の増加に比例して,外傷性白内障の発症数も増加していかないように,眼科医の技術研鑽が必要である.CIII結論硝子体内注射後,視力低下と後.下白内障の出現を認めた症例に対して,硝子体手術併用白内障手術を施行した.現在,抗CVEGF薬硝子体内注射の適応拡大に伴い,硝子体内注射の試行数は増加している.治療にあたっては,安全面に十分に配慮し,不要な合併症を生じさせない努力が必要である.文献1)安井絢子,山本学,芳田裕作ほか:硝子体注射後の水晶体後.破損に対する硝子体手術併用水晶体再建術を施行したC1例.臨眼69:457-460,C20152)GimbelHV,Debro.BM:Intraocularlensopticcapture.JCataractRefractSurgC30:200-206,C20043)NguyenQD,BrownDM,MarcusDMetal:Ranibizumabfordiabeticmacularedema:resultsfrom2phaseIIIran-domizedtrials:RISECandCRIDE.COphthalologyC119:789-801,C20124)CampochiaroCPA,CHeierCJS,CFeinerCLCetal:RanibizumabCforCmacularCedemaCfollowingCbranchCretinalCveinCocclu-sion:six-monthCprimaryCendCpointCresultsCofCaCphaseCIIICstudy.OphthalmologyC117:1102-1112,C20105)HaslerCPW,CBlochCSB,CVillumsenCJCetal:SafetyCstudyCofC38503intravitrealranibizumabinjectionsperformedmain-lyCbyCphysiciansCinCtrainingCandCnursesCinCaChospitalCset-ting.ActaOphthalmolC93:122-125,C20156)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:RanibizumabforneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.CNEnglJMedC355:1419-1431,C20067)服部知明:抗CVEGF薬硝子体注射による眼合併症.あたらしい眼科31:1003-1004,C20148)FrankelRE,HajiSA,LaMetal:Aprotocolforthereti-naCsurgeon’sCsafeCinitialCintravitrealCinjections.CClinCOph-thalmolC4:1279-1285,C20109)小椋祐一郎,髙橋寛二,飯田知弘ほか:黄斑疾患に対する硝子体内注射ガイドライン.日眼会誌120:87-90,C201610)宇賀茂三,西本浩之:外傷に対する水晶体上皮細胞の反応水晶体.の創傷治癒を中心にして.眼科手術C3:227-235,C199011)MoisseievCE,CWaisbourdCM,CBen-ArtsiCECetal:Pharama-cokineticsCofCbevacizumabCafterCtopicalCandCintravitrealCadministrationinhumaneyes.GraefesArchClinExpOph-thalmolC252:331-337,C201412)永井博之,平野佳男,吉田宗徳ほか:硝子体内薬物注射に伴う合併症の検討.臨眼64:1099-1102,C2010***

侵襲の少ない硝子体内注射用針の開発

2016年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科33(12):1784?1788,2016c侵襲の少ない硝子体内注射用針の開発永井由巳*1髙橋寛二*1篠田明宏*2久呉高博*2*1関西医科大学眼科学教室*2南部化成株式会社DevelopmentofInvasiveSmallIntravitrealInjectionNeedleYoshimiNagai1),KanjiTakahashi1),AkihiroShinoda2)andTakahiroKugo2)1)DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversity,2)NanbuPlasticsCO.,LTD.近年,眼科診療において血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)の作用を抑制する抗VEGF薬の硝子体内投与の件数が増加している.個々の症例への投与回数も複数回になることが多く,注射時の患者の疼痛緩和や安全性の向上が望まれる.そこで筆者らは,穿刺時抵抗を低く抑える針の開発を行った.Inophthalmicpractice,recentyearshaveseenanincreaseinthenumberofintravitrealanti-VEGFdruginjectionsthatinhibittheeffectsofvascularendothelialgrowthfactor.Byloweringthepunctureresistanceoftheneedleatthetimeofinjection,itcanbeexpectedthatinjectionscanbeincreasedinbothnumberandsafety,andthatpatientpaincanbealleviated.Wethereforedevelopedaneedleforloweringinjectionresistance.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(12):1784?1788,2016〕Keywords:抗VEGF薬,硝子体内注射,注射針,穿刺時抵抗,注射時疼痛.anti-VEGFdrug,intravitrealinjection,needle,resistanceatthetimeofinjection,painatthetimeofinjection.はじめに近年,血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)の作用を阻害する抗VEGF薬が登場し,眼底疾患,とくに黄斑疾患の治療における硝子体内注射の件数が増加している.最初は加齢黄斑変性のみであった適応疾患も近視性血管新生黄斑症,網膜中心・分枝静脈閉塞症や糖尿病網膜症による黄斑浮腫へと広がり,今後さらに硝子体内注射の件数は増加するものと考えられる.この硝子体注射はどの施設も同じような方法で行っており1),その際に使用する眼科用針は一般的には30ゲージ(G)針であることが多いが,複数回行うことが多い硝子体内注射による強膜などの組織損傷や穿刺時の抵抗を軽減させ,患者の疼痛も緩和するために,さらにゲージの細い針を開発することは重要である.すでに30G針よりも細い針について報告されているが2?4),筆者らはさらに刺入時抵抗が小さく穿刺時疼痛を緩和するうえで,以下の①?③に示すような特徴をもつ31G針の開発に取り組んだ.①従来の針(30G針)よりも切れ味がよく,細いことによる低侵襲性の実現.②穿刺時の抵抗を小さくすることによる痛みと怖さの低減.③針の長さを適正化することによる針先が刺入部の対側網膜に到達するリスクの低減.I開発した針の仕様および評価方法1.針の仕様現在一般的に多く使われている30Gよりも細い31Gの硝子体内注射用針(以下,31G針)を開発した.仕様を表1に示す.今回,比較に用いた30G針は,ニプロ社製ディスポーザブル眼内注射針(30G:製品コード00-221:以下,30G針)である.外径は30G針が0.30mmなのに対し,31G針では0.26mm(?13.3%)である.内径は0.13mmから0.16mm(+23.1%)に拡大し,薬剤注入時の抵抗が小さくなるようにした.針の長さを31G針は12mmにし,穿刺時に対側の網膜を誤って刺すリスクを低下させ,より安全性を高めた(表1).2.評価方法評価は下記の3つの方法により実施し,30G針と比較した.1)ポリウレタンフィルムを使用して,切れ味,針が各部位を通過するときの穿刺時抵抗を測定して各針の評価を行った.また,ポリウレタンフィルムの穿刺痕を観察し,これについても両針の比較評価を行った.2)実際の生体への穿刺に近いものとして,入手が可能である豚眼への刺入時の穿刺時抵抗を測定し評価した.3)実際に31G針で患者に硝子体注射を行い,医師と患者に聞き取り調査を行った.なお,穿刺時抵抗の測定にあたっては,30G針,31G針のどちらの針も構造的に先端部,ジャンクション部,アゴ部,胴部とがあるので,その部位ごとの抵抗値を測定した(図1).1)試験用フィルムの選定と穿刺時抵抗の測定①硬度と厚さの異なるポリウレタンフィルムを数種用意した.②30G針を用意したポリウレタンフィルムに穿刺し,実際の硝子体注射時とほぼ同じ穿刺時の感覚のポリウレタン使用することとした.③穿刺時抵抗を測定するにあたって,イマダ社製の最大荷重5Nのデジタルプッシュプルゲージを装着したオートグラフ/万能試験機を使用した.測定時の穿刺速度は20mm/minとし,ポリウレタンフィルムに対して30G針と31G針の両者を垂直に穿刺し,それぞれの抵抗値を測定した(図2).測定はそれぞれの針について5回とした.④穿刺時にできる穿刺痕をそれぞれの針について計測した.穿刺した後のポリウレタンフィルムを縦方向に伸長して穿刺口を開口させ,穿刺痕の写真撮影を行った.2)豚眼による穿刺時抵抗測定①今回の穿刺時抵抗測定に使用する豚眼は,摘出してから28?30時間以内のものを使用した.②穿刺方法は,ポリウレタンフィルムのときと同じように,30G針と31G針で各々5眼ずつ行った.穿刺時抵抗測定は,イマダ社製のデジタルプッシュプルゲージを使用し,測定時の穿刺速度は20mm/minとして豚眼に垂直に刺さるように穿刺した(図3).③豚眼は測定当日に豚処理施設で豚眼摘出後,保冷容器に入れて研究施設へ持ち帰ったものを利用した.個体間,摘出からの経過時間による影響が大きいことも考えられたので,豚眼の摘出後の経過時間(4?6時間,10?12時間,22?30時間,35?37時間)による穿刺時抵抗への影響も確認した.3)臨床症例における使用今回,31G針を関西医科大学附属病院眼科で硝子体注射を受けた患者40人に使用した(今回使用した31G針はすでに眼科硝子体内注射用針としての使用認可取得済み).10名の医師がそれぞれ4名の患者に使用した.眼球刺入時の抵抗について各医師から注射後の聞き取りを行い,注射された患者には,これまでの注射時の痛みとの比較を聞き取り調査した.患者には従来の30G針から31G針に変更しての注射であることは告げずに行った.II測定結果1.試験用フィルムによる穿刺時抵抗の測定結果ポリウレタンフィルムに30G針,31G針を穿刺した結果を図4と表2とに示す.両者とも穿刺すると先端部,ジャンクション部と抵抗値が上がり,アゴ部が穿通するときに最大の抵抗値を示した.それぞれの針についての実測値は表2のとおりであるが,F0(先端部)の穿刺時抵抗は30G針に比べて31G針では36%低減しており,穿刺時抵抗およびストロークが小さくなっていることから切れ味が改善されていることがわかる.F1(ジャンクション部)先端刺入後からジャンクション部を乗り越えるまでの穿刺時抵抗については30%低減しており,この部位でも抵抗が改善されていた.F2(アゴ部)については30G針,31G針ともに同等の値を示した.F3(胴部)についての穿刺時抵抗は,30G針より31G針で17%低減していた.2.試験用フィルム穿刺口の観察結果穿刺時に使用したポリウレタンフィルムに開けられた穿刺痕を30G針と31G針とで5眼ずつ比較した.測定は,穿刺試験で使用したポリウレタンフィルム(t=0.3mm)をクリップで挟み込み,屈曲した箇所に,垂直方向からに針を穿刺し,穿刺痕が少し開いている状態を作り,穿刺箇所をマイクロスコープにより拡大計測した.従来の30G針ではカット長が平均0.285mm(0.244?0.273mm;SD=0.010)であったのに対して,今回の31G針のカット長は平均0.235mm(0.219?0.238mm;SD=0.007)とカット長が0.05mm有意に短くなっていた(p=0.0018<0.01)(図5).3.豚眼による穿刺時抵抗の測定結果30G針と31G針とにおける測定結果を図6と表3とに示す.両者の針による穿刺時抵抗値はポリウレタンフィルムにおける結果と同じように,30G針のときよりも31G針のときのほうが低い値を示し,31G針の最大穿刺時抵抗値は46%低減していた.4.豚眼の抽出経過時間による穿刺時抵抗への影響確認試験結果豚眼の死後摘出時間と穿刺時抵抗値との関係を図7と表4に示す.死後から摘出時間が長いほど,30G針,31G針ともに最大穿刺時抵抗値は高くなったが,31G針の穿刺時抵抗のほうが低い値を示した.5.臨床症例での結果今回,31G針を延べ40名の患者に使用したが,使用した10名の医師すべてから,従来の30G針よりも刺入時の抵抗が少なく,抜去時の刺入部からの逆流もほとんど認めなかったという回答を得た.また,この31G針で注射を受けた患者の半数で,これまでの注射時よりも痛みが小さいとの感想であった.III考察近年,加齢黄斑変性に抗VEGF薬の硝子体注射を行うようになり,その後,強度近視性血管新生黄斑症,糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対しても適応が拡大され,硝子体注射の実施件数は激増している.また,疾患が再燃すれば再投与を行うので患者一人に行う回数も増加している.こういった背景や合併症予防の観点からも,硝子体注射を行う際の侵襲は小さいことが望まれる.今回,刺入口の面積を小さくし,刺入時の抵抗も低くする目的で31G針の開発を行った.どの注射針も先端部からジャンクション部,アゴ部を経て針の胴部へと至る.穿刺時の抵抗値は,これら各部のなす角度や針の太さの影響を受ける.今回,試用した31G針の各部の角度を調節して外径を0.30mmから0.26mmに小さくすることで,従来の30G針よりポリウレタンフィルムで21%,豚眼で40%程度低い抵抗値を得た.すでに販売されている31G針(デントロニクス社製31G針)は外径が0.28mmであるのに対して,今回筆者らが開発した31G針は外径が0.26mmと細く,これまで多く使用されている30G針(ニプロ社製30G針)の内径が0.15mmに対して,今回開発した31G針は内径が0.16mmとほぼ同じ内径を確保していることから,穿刺時抵抗は小さく,薬剤注入時の抵抗は従来の針と変わらない針となった.今回の31G針の穿刺時抵抗値が小さくなったことによると考えられるが,硝子体注射実施医の注射針刺入時に感じた抵抗は従来針よりも小さく,また患者の感じる痛みも軽減していた.おわりに今回の硝子体内注射用の針の開発により,繰り返し行うことが多い硝子体内注射を受ける患者への侵襲を小さくすることで,注射時の痛みの軽減や創口の狭小化による感染リスクの低減を図ることができると思われ,より硝子体内注射を安全に行うことに寄与できると思われる.文献1)永井由巳:抗VEF薬投与時の注意点.あたらしい眼科30:1689-1693,20132)PulidoJS,ZobitzME,AnKN:Scleralpenetrationforcerequirementsforcommonlyusedintravitrealneedles.Eye(Lond)21:1210-1211,20073)HultmanDI,NewmanEA:Amicro-advancerdeviceforvitrealinjectionandretinalrecordingandstimulation.ExpEyeRes93:767-770,20114)EatonAM,GordonGM,WafapoorHetal:Assessmentofnovelguardedneedletoincreasepatientcomfortanddecreaseinjectiontimeduringintravitrealinjection.OphthalmicSurgLasersImagingRetina44:561-568,2013〔別刷請求先〕永井由巳:〒573-1010大阪府枚方市新町2-5-9関西医科大学眼科学教室Reprintrequests:YoshimiNagai,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversity.2-5-1,Shinmachi,Hirakata,Osaka573-1010,JAPAN1784(106)0910-1810/16/\100/頁/JCOPY表1従来品と検討した針の仕様比較表図1穿刺時抵抗─カヌラ評価箇所の位置関係図2穿刺時抵抗値を測定する際に使用したデジタルプッシュプルゲージメーカー:(株)イマダ,仕様:ZP-5N,穿刺スピード:20mm/min.図3豚眼への穿刺(107)あたらしい眼科Vol.33,No.12,20161785図4ポリウレタンフィルム穿刺時抵抗測定結果a:30G針(従来品)による穿刺結果.b:31G針による穿刺結果.F0:先端部,F1:ジャンクション部,F2:アゴ部,F3:胴部.表230G針と31G針とのポリウレタンフィルム穿刺時抵抗値の結果1786あたらしい眼科Vol.33,No.12,2016(108)図5ポリウレタンフィルム穿刺時抵抗測定時の穿刺痕比較図6豚眼における穿刺時抵抗測定結果a:30G針(従来品)による穿刺結果.b:31G針による穿刺結果.表3豚眼における穿刺試験結果(各群n=5)(109)あたらしい眼科Vol.33,No.12,20161787図7豚眼の摘出時間と穿刺時最大抵抗値表4穿刺時最大抵抗値(平均値(gf):各群各時間枠につきn=5)1788あたらしい眼科Vol.33,No.12,2016(110)

硝子体手術後に残存,再燃した糖尿病黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニド(マキュエイド®)硝子体内注射についての検討

2015年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科32(10):1487.1491,2015c硝子体手術後に残存,再燃した糖尿病黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニド(マキュエイドR)硝子体内注射についての検討川原周平*1江内田寛*2石橋達朗*3*1国立病院機構小倉医療センター眼科*2佐賀大学医学部附属病院眼科*3九州大学大学院医学研究院眼科学分野IntravitrealInjectionofMaQaidR,aNewTriamcinoloneAcetonide,forDiabeticMacularEdemaRemainingorRecurringafterVitreousSurgeryShuheiKawahara1),HiroshiEnaida2)andTatsuroIshibashi3)1)DepartmentofOphthalmology,KokuraMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,SagaUniversityHospital,3)DepartmentofOphthalmology,KyushuUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences目的:硝子体手術後に残存,再燃した糖尿病黄斑浮腫に対し,トリアムシノロンアセトニド(マキュエイドR)を硝子体内注射し,その経時変化を検討した.対象および方法:対象は5名8眼で,1回の投与を1件とし,計15件について検討した.薬剤は眼灌流液に懸濁し27ゲージ針で硝子体内注射した.結果:中心窩平均網膜厚(CRT)が減少したのは13件(86.6%)で,2件は無効であった.CRTが減少しはじめる時期は1週間以内が11件,1週間以上が2件であった.薬剤の硝子体内平均滞留期間は28日(7.56日)で,黄斑浮腫の再燃を11件(84.6%)に認めた.2件(15%)で軽度の眼圧上昇を認めたが,眼内炎の発生はなかった.結論:硝子体手術後の糖尿病黄斑浮腫に対しマキュエイドR硝子体内注射は安全で有効な治療法となるが,高率で再燃するため繰り返し投与する必要がある.Purpose:ToinvestigatetheresultsofMaQaidR(MaQ),thenewlyreleasedtriamcinoloneacetonide,injectedintothevitreousofeyeswithdiabeticmacularedema(DME)remainingorrecurringaftervitreoussurgery.PatientsandMethods:Eighteyesof5DMEpatientswereadministereda4mgintravitrealinjectionofMaQusinga27-gaugeneedle.Atotalof15injectionswereinvestigatedrespectively.Results:Centralretinalthickness(CRT)decreasedin13injections(86.6%).CRTstartedtodecreasewithin1weekin11injectionsandwithin2weeksin2injections.VisibletracesofMaQpostintravitrealinjectionlastedforanaverageof28days(range:7-56days).DMErecurredin11injections(84.6%).Twoinjections(15%)experiencedmildintraocularpressureelevation,andnopatientsshowednon-infectiousendophthalmitis.Conclusion:IntravitrealinjectionofMaQintoDMEeyespostvitreoussurgerywasfoundtobesafeandeffective.However,repeatinjectionsmightbeneededinDMEeyeswithahighrecurrence.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(10):1487.1491,2015〕Keywords:トリアムシノロンアセトニド(マキュエイドR),糖尿病黄斑浮腫,硝子体内注射,硝子体手術.triamcinoloneacetonide(MaQaidR),diabeticmacularedema,intravitrealinjection,vitreoussugery.はじめに糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症のなかでも治療抵抗性の病態で,網膜症進行の程度とは無関係に進行することがある.したがって,一見軽度の網膜症でも,黄斑浮腫があるだけで視力の低下をきたしてしまうことがあり,注意が必要である.糖尿病黄斑浮腫の治療は網膜光凝固術にはじまり,さらに技術の進歩とともに硝子体手術もその治療法の一つとなった.そして近年ではそうした侵襲的治療によらない薬物療法,つまりステロイドや血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬を用いた比較的侵襲の少ない治療が注目されるようになって〔別刷請求先〕川原周平:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野Reprintrequests:ShuheiKawahara,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyushuUniversityGraduateSchoolofMedicine,3-1-1Maidahi,Higashi-ku,Fukuoka-shi,Fukuoka812-8582,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(115)1487 きている1,2).しかし,いずれをもってしても,糖尿病黄斑浮腫に対する絶対的治療法とはなりえないのが現状である.これまでは最初の治療として適応外の使用にはなるが比較的侵襲の少ないトリアムシノロンTenon.下注射を行ったり,局所性の黄斑浮腫であれば,原因となる毛細血管瘤の直接光凝固,びまん性であれば格子状光凝固を行ったりしていたが,最近ではVEGF阻害薬硝子体内注が第一選択となりつつある1).そして,それらの治療に反応しない症例に対し,硝子体手術が選択されることがある3).また,硝子体の黄斑部への牽引や黄斑上膜の合併が確認される場合には,初めから硝子体手術が選択されることもある.ところが最終的に硝子体手術を行ったとしても,黄斑浮腫が残存したり,しばらくして再燃することが少なからずあるため,そうなるとつぎの治療がなくなることが多い.硝子体手術後のVEGF阻害薬は眼内滞留期間が短いため効果が期待できず,またその分血中濃度上昇も大きくなることが予想されるため全身合併症が危惧される4).それに対し,トリアムシノロンアセトニドは難溶性ステロイドであり,比較的効果が長期間持続するため有効な治療になりうる.しかし,これまでもっともよく使用されていたトリアムシノロンアセトニドであるケナコルト-AR(ブリストル社)には添加物が含まれているため,それが原因と推測される非感染性眼内炎がたびたび報告された5,6).そのため投与前に添加物を十分に洗浄,除去して投与を行うのだが,それでも非感染性眼内炎が起こることがあった.したがって,硝子体手術後に再燃した黄斑浮腫に対してトリアムシノロンアセトニドを硝子体内注射することに多くの眼科医は抵抗があり,そのような症例にはもはや打つ手がないという状況であった.そんななか,硝子体内注用のマキュエイドR(わかもと製薬)が承認を得た.このマキュエイドRは添加物を含まないトリアムシノロンアセトニドであるため,無菌性眼内炎のリスクがなく安全に硝子体内注射を行えると考えられた.そこで,筆者らは硝子体手術後に残存もしくは再燃した糖尿病黄斑浮腫に対しマキュエイドRを硝子体内注射し,その経過についての検討を行った.I対象および方法平成24年5月.平成25年3月に糖尿病黄斑浮腫に対し当院で硝子体手術を施行し,術後1カ月以上経っても黄斑浮腫が消失しなかった,もしくは再燃した5名8眼を対象とした.内訳は男性4名,女性1名,平均年齢69.3歳.中心窩平均網膜厚(CRT)の測定はZeiss社のCirrusHD-OCTを用いた.黄斑浮腫再燃の定義として,OCTで治療前のCRTと同等,またはそれ以上になったものを再燃とした.マキュエイドR硝子体内注射前の平均CRTは690.0μmであった.手術はAlcon社のコンステレーションRの25ゲージシス1488あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015テムで行い,有水晶体眼は白内障の同時手術も行った.マキュエイドRの硝子体内注射に際しては,まず,マキュエイドR1バイアルにオペガードMA眼灌流液R(千寿製薬)1mlを注入しトリアムシノロンアセトニド濃度が40mg/mlになるように懸濁した.つぎにイソジンで眼瞼の消毒を行い,希釈したPAヨードで眼表面を洗浄,消毒した.角膜を穿刺し0.1ml程度前房水を除去した後,角膜輪部から3.5mmの部位より27ゲージ針でマキュエイドR懸濁液0.1ml(トリアムシノロンアセトニドとして4mg)を硝子体内に注射した.注射後は綿棒でしばらく穿刺部位を圧迫し眼内液の漏出がないことを確認し,最後に細隙灯顕微鏡と倒像鏡を用いて眼表面,眼内の観察を十分に行った.経過観察は眼圧測定,OCTによるCRT測定,眼底検査を行い,黄斑浮腫が減少しはじめる時期,眼内のマキェイドRが消失する時期,黄斑浮腫が再燃する時期,合併症について検討を行った.また,マキュエイドR硝子体内注射後,黄斑浮腫が再燃した症例に対して薬剤の再投与を複数回行ったものが5眼あり,各投与に関して検討を行ったため1回の投与を1件と数え,計15件に対して検討を行った.実際には1回のみの投与が4眼,2回投与が4眼,3回投与が1眼であった.II結果投与前の平均CRTは690.0μmであったが,マキュエイドRの硝子体内注射後1週間で509.3μm,1カ月で449.1μmと有意に減少した(図1).投与後2カ月の平均CRTは557.4μmと投与前と比較して減少してはいたが,再燃傾向があり,有意な低下は認められなかった.2眼については単回の投与で著明に黄斑浮腫の改善がみられ,その後再燃することがなかった(図2).投与を行った15件のうち,実際にCRTが減少したのは13件(86.6%)で,2件は無効であった.投与後6カ月間経過観察ができたのは7件であり,それらの6カ月後の平均CRTは投与前678.6μmから投与後512.1μmと投与前に比べて有意に減少したが,徐々に再燃傾向であった(図3).CRTが減少しはじめる時期は1週間以内が12件(92%),2週間以内が1件(8%)で,効果のあったすべての症例で2週間以内に効果が認められた.眼内のマキェイドRは,硝子体内注射直後は後極一帯に認めたが,翌日以降の診察では硝子体腔の下方に沈殿しているのが観察された(図4).この眼内のマキェイドRが肉眼的に消失する時期は,1週間が1件(6.7%),3週間が2件(13.3%),1カ月が10件(66.7%),2カ月が2件(13.3%)であり,平均滞留期間は28日であった.投与回数ごとに検討すると,初回投与後は平均27.5日,2回目投与後は平均28日,3回目投与後は28日であった.黄斑浮腫が再燃するまでの期間は1カ月が1件(10%),2(116) 8001,2009008001,000700CRT(μm)**CRT(μm)6005006004004003002002001000投与前1W1M2M0投与前1W1M2M経過期間経過期間図1マキュエイドR投与後のCRT経時変化(2カ月)左:全15件の経時変化.右:平均CRTの経時変化.投与後1週間,1カ月までは有意に減少.*******CRT(μm)図2OCT像左:マキュエイドR投与前.著明な黄斑浮腫を認める.右:投与後1週間で黄斑浮腫は消失.9001,000800900700800700600500600CRT(μm)500400400300300200200100100投与前1W01M2M3M4M5M6M0投与前1W1M2M3M4M5M6M経過期間経過期間図3マキュエイドR投与後のCRT経時変化(6カ月)左:6カ月経過観察できた7件のCRT経時変化.右:平均CRTの経時変化.6カ月間にわたり有意な低下がみられた.カ月が4件(36%),3カ月が3件(27%),4カ月が3件(27%)であった.さらに,投与回数ごとに再燃までの期間を検討すると,初回投与後は平均2.25カ月,2回目投与後は平均3.0カ月,3回目投与後は2カ月であった.また,眼内のマキェイドRが消失する前に黄斑浮腫が再燃したものはなかった.合併症として眼圧上昇を認めたものが2件(15%)あり,(117)1件は2回投与眼で2回目の投与後に,2件目は3回投与眼の2回目投与後に生じた.同症例の3回目投与後には眼圧上昇は認めなかった.いずれの眼圧も25mmHg以下であり,ラタノプロスト点眼薬で眼圧は20mmHg以下にコントロールが可能であった.また,眼圧上昇発現時期はともにマキュエイドR硝子体内注射後2カ月半であった.いずれも1カ月以内に正常眼圧に低下し緑内障点眼は不要となった.さらあたらしい眼科Vol.32,No.10,20151489 図4眼底写真左:マキュエイドR投与直後.右:投与翌日.下方に沈殿している.に,マキュエイドR硝子体内注射直後に硝子体出血を認めたものが1件(7%)あったが,出血の程度は視力に影響するほどのものではなかった.この出血は翌日には消失していた.経過中,感染性眼内炎および非感染性眼内炎は認めなかった.最終経過観察期間は異なるが,8眼中6眼で最終的に黄斑浮腫が改善している.III考按糖尿病黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニドの硝子体内注射は,非感染性眼内炎,眼圧上昇,白内障などの副作用のために敬遠される傾向にあった.そのため近年は副作用が比較的少ないVEGF阻害薬が薬物療法の中心となっているが,その一方でさまざまなスタディにおいてトリアムシノロンアセトニドの有効性が証明されている7.9).糖尿病黄斑浮腫を対象としたマキュエイドR硝子体内注の第II/III相試験では,有硝子体眼において有意に最高矯正視力とCRTの改善が認められている8).本研究ではマキュエイドRを有硝子体眼ではなく無硝子体眼に投与し,糖尿病黄斑浮腫に対する治療効果および経過について検討した.マキュエイドR硝子体注後,多くの症例で黄斑浮腫の改善がみられ,しかもそのほとんどで効果の発現が投与後1週間と早かった.黄斑浮腫改善効果は1カ月目まで続いたが,効果は短期的であり,2.4カ月の間にほとんどが徐々に再燃した.なかには初回投与時には効果がなかったものの2回目の投与では浮腫の改善がみられた症例や,逆に初回は効果があったものの2回目には効果を認めなかった症例もあり,その違いが何によるものかは不明であった.また,すべての症例において初回投与後と2回目投与後で眼内の薬剤滞留期間にはほとんど差がなかったにもかかわらず,2回目の投与後のほうがわずかだが効果が長く持続した.投与回数を重ねるごとに効果の持続期間が長くなっていくのかは今回の検討ではわからないので,今後検討していく必要がある.他のトリアムシノロンアセトニド4mgの有硝子体眼での眼内滞留期間は93±28日(半減期18.7日)と報告されている10)が,マキュエイドRでは52.9%の症例で84日後にも眼内にマキュエイドRの粒子が観察され,大多数が56.168日で消失する8).無硝子体眼においては同様に他のトリアムシノロンアセトニド4mgの半減期は3.2日であり,それから計算すると眼内滞留期間は約16日と考えられるが,本研究でマキュエイドRの平均眼内滞留期間は28日と長かった.その差が何によるものかは今回は具体的に検討していないが,粒子形状の違いがその差を生み出している可能性がある(図5).ケナコルトRは表面が平滑な部分が多いのに対しマキュエイドRは表面がかなり凸凹している.実際にケナコルトRに比べてマキュエイドRは粒子径が大きいため,溶解に時間がかかり眼内滞留時間が長くなっているのかもしれない.2011年に日本網膜硝子体学会主導で行われた調査では,ケナコルトRを硝子体内注射した後の非感染性眼内炎の発症率は1.6%であり,海外での報告(0.2.1.6%)と大差がなかった5).実際には感染性眼内炎と非感染性眼内炎の鑑別が困難なこともあり,一度眼内炎を経験してしまうとそれ以降の投与は躊躇してしまうことが多い.しかし,非感染性眼内炎の原因となりうる添加物を含まないマキュエイドRであれば発症のリスクは低いと考えられる.マキュエイドR硝子体内注の第II/III相試験では有硝子体眼に投与されたが,感染性眼内炎または非感染性眼内炎の発症はなかった8).本研究でも対象数が少ないが眼内炎を起こした症例はなく,マキュエイドR硝子体内注では眼内炎の発生頻度が非常に少ないことが予想される.トリアムシノロンアセトニド硝子体内注の副作用として白1490あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(118) 図5電子顕微鏡像左:ケナコルトR.Bar:2μm.右:マキュエイドR.Bar:5μm.マキュエイドRのほうが粒子が大きい.内障の進行があるが,マキュエイドR硝子体内注後の白内障進行率は35.5%であると報告されている8).今回検討した症例のように眼内レンズ挿入眼であれば白内障進行の心配が不要である.したがって,眼内レンズ挿入眼であれば有硝子体眼の症例でも積極的に投与を検討してよいと思われる.もう一つのトリアムシノロンアセトニド硝子体内注の副作用として眼圧上昇が重要である.有硝子体眼におけるマキュエイドR硝子体内注では29.4%に24mmHg以上の眼圧上昇を認めたが外科的手術に至った症例はなく,いずれも点眼で眼圧のコントロールは可能であったと報告されている8).本研究では眼圧上昇を認めた症例は15%と少なく,比較的軽度の眼圧上昇であり眼圧コントロールも容易であった.これは無硝子体眼のほうが有硝子体眼に比べ薬剤の滞留時間が短いためと考えられる.また,初回投与後と3回目投与後には眼圧上昇を認めず,2回目投与後のみ眼圧上昇を認めた症例があった.投与を繰り返すたびに眼圧上昇のリスクが増していくわけではないことを示唆するのかもしれないが,今回は1件だけなので今後投与症例を重ねて観察していく必要がある.その他,眼圧上昇以外でも繰り返し投与することによって副作用発現が高くなるものはなかった.糖尿病黄斑浮腫に対するVEGF阻害薬硝子体内注は初年度年間約8.9回の繰り返し投与が必要になる7).マキュエイドRも効果は一時的であるが同様に繰り返しの投与を行うことで効果を持続させることが可能であると考えられ,そういう意味ではVEGF阻害薬と同様の使い方ができるかもしれない.さらに,再燃までの期間を考慮すると,マキュエイドRの場合は年間投与回数をVEGF阻害薬のそれ以下に抑えることができると考えられる.繰り返し投与した場合,副作用の発現頻度は増加する可能性があるが,今回は短期間に4回以上繰り返し投与を続けた症例はなかったため,さらに今後検討していく必要がある.今回,硝子体手術後の糖尿病黄斑浮腫に対しマキュエイドR硝子体内注を行ったが,大きな副作用はなく比較的安全(119)でかつ効果的な治療であることがわかった.これまでは硝子体手術後に残存した黄斑浮腫には安全かつ有効な治療法がなかったが,マキュエイドR硝子体内注は新たな治療の選択肢になるといえる.文献1)野崎実穂:糖尿病網膜症・黄斑浮腫の薬物治療(抗VEGF薬の効果).あたらしい眼科32:349-356,20152)後藤早紀子:糖尿病網膜症・黄斑浮腫の薬物治療(ステロイド眼局所,全身治療).あたらしい眼科32:357-360,20153)森實祐基:びまん性糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体手術の現状.あたらしい眼科32:361-367,20154)MoisseievE,WaisbourdM,Ben-ArtsiEetal:Pharmacokineticsofbevacizumabaftertopicalandintravitrealadministrationinhumaneyes.GraefesArchClinExpOphthalmol252:331-337,20145)坂本泰二,石橋達朗,小椋佑一郎ほか:トリアムシノロンによる無菌性眼内炎調査.日眼会誌115:523-528,20116)MoshfeghiDM,KaiserPK,BakriSJetal:Presumedsterileendophthalmitisfollowingintravitrealtriamcinoloneacetonideinjection.OphthalmicSurgLasersImaging36:24-29,20057)DiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork(DRCR.net):Randomizedtrialevaluatingranibizumabpluspromptordeferredlaserortriamcinolonepluspromptlaserfordiabeticmacularedema.Ophthalmology117:1064-1077,20108)小椋祐一郎,坂本泰二,吉村長久ほか:糖尿病黄斑浮腫を対象としたWP-0508(マキュエイドR硝子体内注用)の第II/III相試験.あたらしい眼科31:1876-1884,20149)杉本昌彦,松原央,古田基靖ほか:糖尿病黄斑浮腫に対するトリアムシノロンアセトニド製剤(マキュエイドR)の硝子体内注射の効果.あたらしい眼科30:703-706,201310)BeerPM,BakriSJ,SingerDMetal:Intraocularconcentrationandpharmacokineticsoftriamcinoloneacetonideafterasingleintravitrealinjection.Ophthalmology110:681-686,2003あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151491