《原著》あたらしい眼科40(6):832.837,2023c治療が奏効したNK/T細胞性眼内リンパ腫の症例南出みのり*1,2永田健児*1富永千晶*1北野ひかる*1,3山下耀平*1,4青木崇倫*1伴由利子*1,5外園千恵*1*1京都府立医科大学眼科学教室*2京都市立病院眼科*3バプテスト眼科クリニック*4久美浜病院眼科*5京都中部総合医療センター眼科CTwoCasesofIntraocularNaturalKiller/T-cellLymphomathatWereSuccessfullyTreatedMinoriMinamide1,2),KenjiNagata1),ChiakiTominaga1),HikaruKitano1,3),YoheiYamashita1,4),TakanoriAoki1),YurikoBan1,5)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)CHospital,3)DepartmentofOphthalmology,BaptistEyeInstitute,4)CDepartmentofOphthalmology,KyotoCity5)DepartmentofOphthalmology,KyotoChubuMedicalCenterCDepartmentofOphthalmology,KumihamaHospital,眼内リンパ腫の多くはCB細胞性であり,NK/T細胞性の報告は少ない.今回,治療が奏効したCNK/T細胞性眼内リンパ腫の患者を経験した.症例C1はC58歳,女性.既往歴に節外性CNK/T細胞性リンパ腫(ENKL)があった.左眼の充血で眼科を受診し,視力は光覚弁,眼圧はC32CmmHgであった.結膜充血と結膜隆起性病変,前房蓄膿,虹彩腫瘤,硝子体混濁,眼窩病変を認めた.結膜生検でCENKLと診断し,局所放射線療法後,眼病変は軽快した.症例C2はC75歳,女性.ぶどう膜炎に伴う続発緑内障としてC1年間加療されたが,眼圧コントロール不良で京都府立医科大学病院に紹介となった.初診のC2カ月後,右眼硝子体混濁が急激に増悪し,硝子体生検でCENKLと診断した.メトトレキサート硝子体注射(IVMTX),局所放射線療法,全身化学療法後,網膜病巣は瘢痕化し眼外病変の出現なく経過した.本症例はB細胞性より程度が激しい眼所見を呈し,IVMTXや局所放射線療法により病変の制御ができた.早期診断や治療法確立には症例の集積が必要である.CBackground:MostintraocularlymphomacasesareB-celllymphoma.WereporttwocasesofintraocularNK/CT-celllymphomathatweresuccessfullytreated.Casereports:Case1involveda58-year-oldwomanwithahis-toryofextranodalNK/T-celllymphoma(ENKL).Hervisualacuitywassenseoflightandherintraocularpressurewas32CmmHg.Conjunctivallesions,hypopyon,irismass,vitreousopacity,andorbitallesionswereobservedinherlefteye.AconjunctivalbiopsyrevealedthepresenceofENKL.Theocularlesionsresolvedafterirradiation.Case2involvedCaC75-year-oldCwomanCreferredCtoCourChospitalCwithCpoorlyCcontrolledCintraocularCpressureCafterCbeingCtreatedforsecondaryglaucoma.Twomonthslater,arapidlyworseningvitreousopacitywasobservedinherrighteye.CSheCwasCdiagnosedCwithCENKLCbyCvitreousCbiopsy.CAfterCintravitrealmethotrexate(MTX)injection,Cirradia-tion,andsystemicchemotherapy,theretinallesionsbecamescarred.Conclusions:TheintraocularNK/T-celllym-phomacasesinthisstudypresentedwithmoreintenseocular.ndingsthanB-celllymphoma,andthelesionswerecontrolledbyintravitrealMTXinjectionandirradiation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(6):832.837,C2023〕Keywords:眼内リンパ腫,節外性CNK/T細胞リンパ腫・鼻型,ENKL,虹彩腫瘤.intraocularlymphoma,extra-nodalNK/T-celllymphoma,nasaltype,ENKL,irismass.Cはじめに悪性リンパ腫もある.約C60.90%の症例で発症数年以内に眼内リンパ腫は,中枢神経系原発悪性リンパ腫に含まれる生命予後に直結する中枢神経系病変を発症し,5年生存率は疾患である.まれに中枢神経系以外の臓器原発の転移性眼内約C60%の予後不良な疾患である1).組織型のほとんどは非〔別刷請求先〕永田健児:〒602-8566京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学眼科学教室Reprintrequests:KenjiNagata,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,465Kawara-machiHirokojiagaruKajii-cho,Kamigyo-ku,Kyoto602-8566,JAPANC832(120)Hodgkinリンパ腫かつ,びまん性大細胞型CB細胞リンパ腫である.CNaturalkiller(NK)/T細胞性眼内リンパ腫のほとんどが節外性CNK/T細胞リンパ腫・鼻型(extranodalCNK/T-celllymphoma:ENKL)という病型のものである.中枢神経系原発悪性リンパ腫のC2.3%を占めるまれな疾患で,CEpstein-Barrvirus(EBV)が関連すると報告されている2,3).予後は非常に悪く,眼病変や中枢神経系病変をきたした例の生存期間中央値はC13.9カ月からC17カ月と報告されている3.5).NK/T細胞性眼内リンパ腫の報告は少なく,眼病変の特徴や治療反応性といった情報の蓄積が必要である.今回,治療が奏効したCNK/T細胞性眼内リンパ腫の症例を経験したので報告する.なお,症例C2はCNK細胞リンパ腫の集学的治療が奏効したきわめてまれな症例として,寛解後C40カ月の時点で再発がないことを過去に報告しており,今回眼所見の特徴と長期経過について報告する6).CI症例[症例1]58歳,女性.既往歴:2019年C12月,左眼の充血を認め,眼科を受診した.原因検索目的に撮像した頭部磁気共鳴画像撮影法(mag-neticCresonanceimaging:MRI)で,篩骨洞病変を認め,生検の結果,ENKLと診断された.2020年C6月から全身化学療法(SMILE療法:steroid,Cmethotrexate,Cifosfamide,L-asparaginase,Cetoposide),自家造血幹細胞移植,同種造血幹細胞移植を施行されたが,2021年C6月に髄液検査で再発を認め,全身化学療法の適応外と判断され,2週間にC1度の髄腔内抗癌剤投与(AraC療法:Cytarabine+DEX:dexamethasone)で加療されていた.現病歴:2021年C9月頃に左眼の結膜充血を内科医に指摘され,前医を受診した.左眼の視力は光覚弁,眼圧はC32mmHgと上昇していた.左眼に前房内炎症,多数の角膜後面沈着物,虹彩後癒着および硝子体混濁を認め,眼内リンパ腫疑いで精査,加療目的に京都府立医科大学病院(以下,当院)へ紹介となった.初診時所見:視力は右眼がC0.8(n.c.),左眼が光覚弁,眼圧は右眼がC10CmmHg,左眼がC24CmmHgであった.左眼の5時.10時方向の結膜にサーモンピンク色の隆起性病変を認めた.角膜には多数の小型の角膜後面沈着物を認め,下方の前房は消失していた.また,左眼の眼底は硝子体混濁により透見不良であった.右眼は前眼部,眼底ともに異常所見を認めなかった.全身検査所見:血液検査では,可溶性Cinterleukin(IL)C-2受容体(sIL-2R)がC1,710CU/mlと上昇を認めた.当院受診のC1カ月前に前医で施行された頭部CMRIでは,以前より指摘のある白質病変以外の新規病変を認めなかった.陽電子放出断層撮影(positronCemissionCtomography-computedtomography:PET-CT)で左眼の眼球後方に軟部影の増生および異常集積を認め(図1a),超音波CBモードでも同部位に病変が確認された(図1b).臨床経過:他院の血液内科に定期的に入院のうえ,治療されていたため,今後の方針を協議し,1週間後の再診とした.再診時には,左眼の虹彩膨隆および前房蓄膿を認め,周辺部の前房は消失していた(図1c).前眼部光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)でも虹彩膨隆が確認された(図1d).診断のため,結膜生検を施行した.ヘマトキシリン・エオジン染色では核異型のある小型から中型のリンパ球を認め(図2a),免疫染色では異型を示す中型リンパ球がCD56(図2b)で陽性を示し,inCsituhybridizationにてCEpstein-BarrCencodingregion陽性(図2c)を示した.フローサイトメトリーでもCCD56陽性の細胞を認めた(図2d).以上より,ENKL再発の診断となった.全身状態不良のため,治療は眼病変に対する局所放射線療法(50CGy/25CFr)のみの方針とした.定位放射線療法開始後,12日目頃から結膜病変や虹彩膨隆が著明に改善し(図3),23日目には眼圧もC11CmmHgと下降した.成熟白内障となり手術も計画したが,初診時よりC5カ月後に誤嚥性肺炎のため,眼科への通院が困難となり,最終視力は光覚弁であった.[症例2]75歳,女性.既往歴:高血圧,脳梗塞,甲状腺癌.現病歴:2016年C2月に両眼の角膜後面沈着物および左眼の眼圧上昇を認め,ぶどう膜炎に伴う続発緑内障としてC1年間加療されたが,眼圧コントロール不良のため当院へ紹介となった.初診時所見:視力は右眼0.3(0.5C×sph+1.5D(cyl.1.75DAx90°),左眼C0.3(0.6C×sph+1.0D(cyl.1.50DAx80°),眼圧は右眼がC14CmmHg,左眼C35CmmHgであった.右眼優位にやや小型の角膜後面沈着物を認めた.全身検査所見:可溶性CIL-2受容体はC797CU/mlと軽度上昇を認め,その他には特記すべき所見はなかった.臨床経過(図4):2カ月後の再診時に,右眼の視力がC0.01と低下し,小型で白色の角膜後面沈着物およびびまん性の強い硝子体混濁を認め,眼底は透見不能であった.眼内リンパ腫を疑い,右眼の硝子体生検を施行した.術中にびまん性の強い硝子体混濁(図4a),網膜内および網膜下病巣が確認された.細胞診はCClassIVで,フローサイトメトリーではCNK細胞の増生を認めた.免疫グロブリン重鎖遺伝子再構成は陰性で,IL-10はC30Cpg/ml,IL-6はC2,330Cpg/ml,感染性ぶどう膜炎病原体核酸同時検出キットによるCpolymeraseCchainreaction(PCR)検査ではCEBV陽性(Ct:24.54)であった.以上より,NK/T細胞性眼内リンパ腫と診断した.骨髄検査や髄液検査では異常細胞を認めなかった.頭部CMRIでは中図1治療前の眼所見(症例1)a:PET-CTで左眼の眼球後方に軟部影の増生および異常集積を認めた.Cb:超音波CBモードで左眼の眼球後方に病変を認めた.Cc:左眼に虹彩膨隆および前房蓄膿を認めた.周辺部の前房は消失していた.Cd:前眼部OCTで左眼の虹彩膨隆を認めた.図2結膜生検の結果(症例1)a:切除された結膜の病理組織所見(ヘマトキシリン・エオジン染色).線維性結合組織内に核異形を示す小型から中型のリンパ球の浸潤を認めた.Cb:免疫組織化学染色ではCCD56陽性を示した.Cc:免疫組織化学染色ではCEBER陽性を示した.Cd:フローサイトメトリーでCCD56陽性の細胞を認めた.枢神経系や眼窩の病変はなく,PET-CTで悪性リンパ腫を回施行後,局所放射線療法(50CGy/25CFr)を行った.その後,疑う異常集積はなく,ENKLと判断した.右眼にメトトレキ中枢神経および全身からの再発予防を目的とした化学療法サートの硝子体注射(intravitrealCmethotrexateinjection:(SMILE療法)をC2クール施行した.網膜下病巣は瘢痕化しIVMTX)をC400Cμg/0.1Cml/回,1週間にC1回の投与間隔でC4(図4d),初診よりC6年経過後も,再発なく経過した.図3局所放射線療法開始後の前眼部所見の経過(症例1)a:定位放射線療法開始後C5日目.Cb:定位放射線療法開始後C12日目.結膜病変,虹彩膨隆の改善を認めた.Cc:定位放射線療法開始後C23日目.図4右眼の眼底所見の経過(症例2)a:術中所見.びまん性の強い硝子体混濁を認めた.Cb:硝子体手術C20日後.鼻上側に網膜浸潤を認めた.Cc:IVMTX施行C7日後.網膜浸潤の縮小を認めた.Cd:治療開始C4年半後.網膜病変の瘢痕化を認めた.CII考按め,硝子体生検でCENKLと診断した.IVMTX,局所放射線療法,化学療法を施行し,治療後C6年間寛解を維持した.症例C1は,ENKLの既往があり,髄腔内抗癌剤投与で加療ENKLは,アジアおよび南米に好発する7)進行の早い悪性中に片眼の結膜病変,虹彩膨隆,前房蓄膿,眼窩内病変を認新生物であり,致死率の高い疾患である2,8).ENKLによるめた.結膜生検によりCENKLと診断し,局所放射線療法を眼内リンパ腫は非常にまれであるため,本疾患の報告は少な行った.治療への反応は良好で前眼部の病変は消退し,眼圧く,眼所見の特徴や治療効果については明らかではない.は正常範囲内へ下降したが,視機能の改善には至らなかった.Pubmedを用いた検索によって,NK/T細胞性眼内リンパ症例C2は,片眼にびまん性の強い硝子体混濁と網膜浸潤を認腫の症例報告を表1に示す.一般的に,B細胞性眼内リンパ表1過去に報告されたNK/T細胞性眼内リンパ腫年齢性別初見局所治療全身治療転帰文献番号C36男硝子体混濁,視神経乳頭浮腫,網膜血管周囲浸潤,なし化学療法,寛解C9C脈絡膜浸潤,右内直筋肥厚髄腔内抗癌剤投与38男虹彩膨隆局所放射線療法なし寛解C10C51男漿液性網膜.離,眼瞼下垂なし化学療法不明C11C53男前房炎症,虹彩結節なし化学療法初診からC3カ月後,多臓器不12C全のため死亡C55男前房炎症,角膜後面沈着物,前房蓄膿,網膜浸潤局所放射線療法髄腔内抗癌剤投与治療からC2カ月後,腎不全の13Cため死亡C65男虹彩膨隆,硝子体混濁なしなし.筋への腫瘍浸潤のため全身14C状態が悪化C86男硝子体混濁なしなし外傷性頭蓋内出血のため死亡C15C43女虹彩結節,前房蓄膿なし化学療法初診からC2年後,敗血症のた16Cめ死亡C50女硝子体混濁,網膜浸潤IVMTX,局所放射線療法化学療法寛解C17C50女硝子体混濁,漿液性網膜.離,脈絡膜浸潤なし化学療法,初診からC1カ月後,多臓器不18Cステロイド内服全のため死亡C54女硝子体混濁,網膜・脈絡膜浸潤,漿液性網膜.離なし化学療法治療からC4カ月後,肝不全・19C腎不全のため死亡C55女結膜充血,前房炎症,硝子体混濁,漿液性網膜.離,なし化学療法初診からC1カ月後,多臓器不20C眼窩周囲発.全のため死亡C57女結膜充血,硝子体混濁,虹彩結節,眼瞼下垂,IVTA,局所放射線療法化学療法診断からC3カ月後,敗血症の21C眼球運動制限,瞳孔散大ため死亡C63女角膜後面沈着物,硝子体混濁,血管周囲漏出CIVMTX髄腔内抗癌剤投与寛解C22C66女結膜充血,硝子体混濁,網膜浸潤IVMTX,局所放射線療法化学療法不明C23C73女結膜充血,角膜後面沈着物,右眼窩病変局所放射線療法化学療法,寛解C24髄腔内抗癌剤投与右眼の治療C10カ月後,左眼に角膜後面沈着物,(再発後)CIVMTX(再発後)化学療法寛解硝子体混濁腫では,硝子体混濁を示す症例がもっとも多く,網膜下病巣や,前房内細胞,角膜後面沈着物を認めることはあるが虹彩の病変はまれで,わが国で行われた眼内リンパ腫C217例の多施設調査では虹彩膨隆はC1例もない1).一方,NK/T細胞性眼内リンパ腫では,虹彩結節や虹彩膨隆,前房蓄膿など虹彩に関連した病変が報告されている10,12.14,16,21).また,眼窩の病変9,24)や網膜浸潤13,19,23),脈絡膜浸潤9,18,19)などいずれもB細胞性眼内リンパ腫と比較して組織への侵襲が強い病変が報告されている.本症例でも,過去の報告と同様に眼窩の病変をきたし,高度の硝子体混濁や虹彩病変,前房蓄膿などCB細胞性眼内リンパ腫と比較して程度の激しい眼所見を呈した.ENKLは鼻腔内に病変をきたすことが多く,直接浸潤によって眼窩病変をきたす.虹彩病変や網膜浸潤,脈絡膜浸潤に関しては,網膜血管周囲浸潤や蛍光造影検査での血管周囲漏出など血管の反応性を示す報告もあり9,22),血管を介して眼内に病変が出現する可能性が考えられる.造血器腫瘍診療ガイドラインでは,鼻腔周辺原発で病変が頸部リンパ節を超えて広がっている場合,鼻腔など上気道以外での発生例,初回治療後再発または部分奏効以下のENKLに対しては,SMILE療法を行うことが推奨されている.症例C1はCSMILE療法後に生じた眼内病変であったが,症例C2は原発性眼内リンパ腫であり,ガイドラインに準じてSMILE療法を選択した.B細胞性眼内リンパ腫に対する局所治療としてはCIVMTXが有効とする報告があり25,26),脳腫瘍診療ガイドラインでも推奨されている.NK/T細胞性眼内リンパ腫の治療は報告によってさまざまであるが,多臓器不全などのために死亡に至った症例が多くみられた12,13,18.20).一方で,化学療法と局所放射線療法やCIVMTXを組み合わせて寛解が得られた症例が散見される10,17,22,24).本症例でも,IVMTXや局所放射線療法が有効であった.NK/T細胞性リンパ腫はCEBVが関連するとされている2,3).過去の報告ではCNK/T細胞性眼内リンパ腫においても,前房水や硝子体からCEBVが検出されている12.14,16,18,19,23).今回のC2症例とも結膜生検,硝子体生検によりCEBVの存在が確認されており,眼病変に関してもCEBVが関与すると考えられた.原発性CNK/T細胞性眼内リンパ腫は過去にC4例報告されている15,17,18,23).寛解を維持したという報告17)や多臓器不全で死亡したという報告18)があり,転帰はさまざまである.症例C2は眼内に限局する原発性眼内リンパ腫であり,長期にわたり寛解を維持したが,眼内に限局する場合でも経過中に中枢神経系への浸潤や転移をきたし生命予後にかかわる可能性があるため,注意が必要である.本症例と過去の症例報告から,NK/T細胞性眼内リンパ腫は眼内と眼窩内の両方に病変が出現したり,虹彩膨隆,高度の硝子体混濁など,B細胞性眼内リンパ腫よりも高度の眼病変を示すことが多い.一般的には眼内リンパ腫を疑って硝子体生検を行う場合は,B細胞性リンパ腫に対する検査であるCIL-10や免疫グロブリン重鎖の遺伝子再構成,フローサイトメトリーでの免疫グロブリン軽鎖のCkappa鎖とClambda鎖の発現の偏りなどを検討するが,NK/T細胞リンパ腫ではこれらは陰性となる.したがって,虹彩の所見や網膜・脈絡膜の病変が高度の場合はCNK/T細胞リンパ腫を考慮した結果の解釈と,CD56やCEBVの検討などを用いた検査の追加が必要である.IVMTXや放射線療法で局所の病変の制御はできたが,早期診断や治療法の確立にはさらなる症例の集積が必要である.文献1)KimuraK,UsuiY,GotoH:Clinicalfeaturesanddiagnos-ticCsigni.canceCofCtheCintraocularC.uidCofC217CpatientsCwithCintraocularClymphoma.CJpnCJCOphthalmolC56:383-389,C20122)WoogCJJ,CKimCYD,CYeattsCRPCetal:NaturalCkiller/T-cellClymphomawithocularandadnexalinvolvement.Ophthal-mologyC113:140-147,C20063)YangCY,CLuoCQ,CHeCWCetal:PrimaryCocularCnaturalCkill-er/T-celllymphomas:clinicopathologicfeaturesanddiag-nosis.OphthalmologicaC221:173-179,C20074)LiX,YuH,FuXetal:ClinicalanalysisofpatientswithprimaryCandCsecondaryCextranodalCnaturalCkiller/T-cellClymphomaofcentralnervoussystem.HematolOncolC41:C267-274,C20215)ElyA,EvansJ,SundstromJMetal:OrbitalinvolvementinextranodalnaturalkillerTcelllymphoma:anatypicalcasepresentationandreviewoftheliterature.OrbitC31:C267-269,C20126)Takimoto-ShimomuraT,ShimuraY,NagataKetal:Pri-maryintraocularnaturalkiller-celllymphomasuccessfullytreatedCusingCaCmultidisciplinaryCstrategy.CAnnCHematolC98:2617-2619,C20197)KwongYL:NaturalCkiller-cellmalignancies:diagnosisCandtreatment.LeukemiaC19:2186-2194,C20058)ChanCJK,CSinCVC,CWongCKFCetal:NonnasalClymphomaCexpressingthenaturalkillercellmarkerCD56:aclinico-pathologicCstudyCofC49CcasesCofCanCuncommonCaggress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