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前眼部光干渉断層計を使用した糖尿病例と非糖尿病例の 水晶体所見の比較

2024年3月31日 日曜日

《第29回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科41(3):340.344,2024c前眼部光干渉断層計を使用した糖尿病例と非糖尿病例の水晶体所見の比較馬嶋清如*1市川慶*2田中芳樹*2市川玲子*2市川一夫*2*1眼科明眼院*2中京眼科CComparisonofLensFindingsBetweenDiabeticandNon-DiabeticPatientsBasedonAnteriorSegmentOpticalCoherenceTomographyImagingKiyoyukiMajima1),KeiIchikawa2),YoshikiTanaka2),ReikoIchikawa2)andKazuoIchikawa2)1)EyeClinicMyouganin,2)ChukyoEyeClinicC目的:糖尿病例(DM)と非CDM例の水晶体前.下皮質(皮質)所見を比較すること.対象および方法:29.45歳のCDM例C44眼とC25.45歳の非CDM例C94眼を,ハイデルベルク社製前眼部光干渉断層計アンテリオン(OCT)を使用し撮影後,皮質観察を行った.結果:網膜症のないCDM例は非CDM例と同様,皮質に暗い領域はなかった.一方,網膜症がある,あるいは糖尿病コントロール不良例では皮質内に暗い領域が観察でき,さらにCPRP施行例では暗い領域の範囲と幅が広がっていた.結論:水成分が主の領域は,OCT画像上で暗く観察できる.それゆえCDM例で観察できる暗い領域は,水成分が多く蛋白濃度が低下している.網膜症悪化例では網膜だけではなく,水晶体線維細胞に存在するアルドース還元酵素も活性化し浸透圧が高くなるため,線維細胞が膨化して水成分が多くなり,その結果として暗い領域として観察できた.CPurpose:ToCcompareCtheCcharacteristicsCofCtheCanteriorCsubcapsularcortex(cortex)betweenCpatientsCwithCandCwithoutCdiabetesmellitus(DM).CSubjectsandMethods:CorticalCobservationCusingCanterior-segmentCopticalCcoherencetomography(AS-OCT)wasperformedintheDMgroup(agerange:29-45years)andnon-DMgroup(agerange:25-45years).Results:DarkareasinthecortexwereobservedincaseswithretinopathyorpoorlycontrolledDM,andcasesthatunderwentPRPhadextensivedarkareas.PatientswithDMwithoutretinopathydidnothavedarkareasinthecortex,whichwassimilartothatinthenon-DMcases.Conclusion:SinceareaswherewateristhemaincomponentappeardarkonAS-OCTimages,thedarkareasobservedinpatientswithDMcon-tainChighCwaterCandClowCproteinCconcentrations.CWeCconcludeCthatCinCcasesCwithCexacerbatingCretinopathy,CaldoseCreductasepresentinthelens.bercellsincreasestheosmoticpressure,causingthe.bercellstoswellandappearasdarkareasonAS-OCT.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(3):340.344,C2024〕Keywords:前眼部光干渉断層計,水晶体,糖尿病例,非糖尿病例,比較.anteriorsegmentcoherencetomogra-phy,crystallinelens,diabeticpatients,non-diabeticpatients,comparison.Cはじめに厚生労働省の令和元年国民健康栄養調査では,日本人の5,6人にC1人が糖尿病に罹患しており,現在も増加傾向にある.また健康日本C21の最終評価では,糖尿病症例の眼合併症の割合は,糖尿病網膜症(30.40%),白内障(60%),角膜症(2%),緑内障(1%),眼筋麻痺(0.2%),視神経症(0.1%)となっており,白内障の発症頻度が高い.これまで,糖尿病白内障に関しては実験動物の水晶体を材料として生化学的,および病理組織学的観点から詳細に調査されており,aldosereductase(AR)により白内障が惹起され1,2),逆にCAR阻害薬により改善することが報告されている3,4).一方,ヒト水晶体でもCARの局在に関する報告があるものの5,6),加齢白内障でも糖尿病白内障と同様な変化が水晶体線維に生じるため,この変化が加齢によるものか,あるいは高血糖による変〔別刷請求先〕馬嶋清如:〒454-0843名古屋市中川区大畑町C2-14-1コーポ奈津1眼科明眼院Reprintrequests:KiyoyukiMajima,M.D.,EyeClinicMyouganin,2-14-1Oohata-cho,Nakagawa-ku,Nagoya454-0843,JAPANC340(104)化なのかを判別することがむずかしいと報告されている6).それゆえ,ヒトにおいて糖尿病の水晶体へ及ぼす影響を調査する際は,調査対象を限定する必要がある.そこで,今回は調査対象を成人期からC45歳までの壮年期とし,前眼部光干渉断層計(anteriorsegmentopticalcoherencetomograph:前眼部COCT)で撮影された非糖尿病例と糖尿病例の水晶体画像を比較した後,前.下皮質の所見を検討し若干の知見を得たので報告する.CI対象および方法観察に使用した前眼部COCTは,HeidelbergCEngineering社製のCANTERIONである.まず,眼外傷既往歴を有する例,アトピー体質,および糖尿病以外の代謝疾患を有する例は対象から除外した.そして,ボランティアとして参加した25.45歳の非糖尿病例C47例C94眼(男性:20例女性:27例)と,糖尿病眼合併症の有無を観察するため受診している28.45歳の糖尿病例C22例C44眼(男性:I型C4例,II型C7例,女性:I型2例,II型9例)を対象とし,ミドリンPを1回点眼後,12-6時,1-7時,2-8時,3-9時,4-10時,5-11時のC6方向からC2回観察後,各画像に差異がないことを確認した.その後,水晶体前.下皮質(以下,皮質)の所見を把握しやすくするため,画像をパーソナルコンピューターに移動させた後,Windows10内蔵のCNEOフィルター(強度C60)で処理し観察に使用した7).また,非糖尿病例,糖尿病例を皮質所見の違いによりグループ分けするが,前記したC6方向すべての画像を対象とし,6方向すべての画像に一致する所見を基にしてグループ分けを行った.また,グループ分けは3名の眼科専門医とC1名のグラフィックデザイナーの意見を統一させ決定した.さらに糖尿病例に関しては,a.年齢,b.性別,c.HbA1c値,d.糖尿病網膜症の有無,e.汎網膜光凝固術(panretinalphotocoagulation:PRP)施行の有無,f.インスリン使用の有無,のC6項目を説明変数とし,どの項目が一番糖尿病例のグループ分けに影響を与えるのか,順序ロジスティクス回帰分析(SPSS使用)で検討した.なお,糖尿病網膜症(以下,網膜症)は改変CDavis分類を採用し,本研究は中京眼科倫理委員会の承認を受けている.CII結果非糖尿病例:前.と皮質との関係を示す所見の違いにより,2グループに分けることができた(図1).具体的には,前.直下に暗い領域が,そして皮質内に帯状の陰影が観察されるグループCAと,前.直下に暗い領域が観察されるグループCBのC2つである.なお,このC2グループが観察される年齢層について,グループCAはC11例C22眼でC30.14C±6.65歳,グループBでは36例72眼で34.45C±8.32歳となり,グループCBの年齢層が高かったが,有意差はなかった(t検定:p=0.15>0.05).糖尿病例:この例では,グループC1.観察C6方向における皮質所見が非糖尿病例と同様である(図2),グループC2.観察C6方向において,皮質内に暗く描出される領域が前後極を結ぶラインの左右側に観察される(図3上図),グループC3.観察C6方向において,前.直下から皮質内に観察されるのは帯状陰影のみであり,他は暗い領域として描出される(図3下図),のC3グループに分けることができた.なお,各グループの詳細は表1に示す.また,個々のグループに関して,グループC1の所見は非糖尿病例のグループCAと同様がC4例8眼,Bと同様がC7例C14眼あり,興味深いことにグループC1で網膜症を発症している例はなかった.一方,グループC2ではC7例C13眼中のC2例C3眼を除いて,他はすべて網膜症を発症しており,PRP施行例もC2例C4眼あった.なお,画像上で皮質の片側のみに暗い領域が観察される例はなかった.そしてグループC3では,網膜症はないが網膜.離のため強膜内陥没術をC20年前に受けたC1例C1眼を除いて,他のC4例C8眼では全例に増殖網膜症があり,かつ全例がCPRP施行例であった.また,グループC2,3では糖尿病黄斑浮腫のためトリアムシノロンアセトニドのCTenon.下注射や抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)抗体の硝子体内注射を施行した例もあったため,これらに関しては追加として表1に記載してある.なお,グループC2,3のPRP施行時期と前眼部COCT撮影時期を比較すると,PRP施行前に前眼部COCT撮影を行ったのがグループC3のC2例C4眼,施行後に撮影を行ったのがグループC2でC2例C4眼,グループC3でC2例C4眼あり,撮影は施行後C6カ月からC2年であった.また,Tenon.下あるいは硝子体内注射の施行前に前眼部COCT撮影したのは,グループC3のC1例C2眼であり,他はすべて施行後であった.つぎに,どのような因子が前記したC3グループの差異に影響を与えるのかを検索した結果,方法に記したCa.fの有意確率を立体,オッズ比を斜体で表すと,a:0.1,1.24,b:0.59,1.52,c:0.15,1.34,d:0.33,3.92,e:0.05,11.84,f:0.55,0.51となり,有意ではないがCeのCPRP施行有無がグループの違いに一番影響を与える結果となった.CIII考按実験動物の水晶体を材料とした調査から,AR活性により水晶体上皮細胞の重層化,水晶体線維領域の膨化,液化が生じ,糖白内障が発症することが明らかになった1,2).そして,AR阻害薬により糖白内障がリバースすることも報告されている3,4).ヒト水晶体でもCARが真性糖白内障の原因として注目されていることから5,6),今回は対象を成人期とC45歳以下の壮年期に絞り調査した.なお,1.前眼部COCT画像では,前.下のほうが後.下に比して,.,皮質,核の位置関係が図1非糖尿病例の所見上図:グループCA(29歳例)で,C①前.,②前.下皮質,③核前方を示す.①直下には○で示した暗い領域が,また※で示した帯状陰影と,その下方に□の暗い領域が観察できる.なお,以下①,②,③は同様な領域を示す.下図:グループCB(43歳例)で,①直下に○で示した暗い領域が観察できる.明瞭であること,2.水晶体線維領域の蛋白合成は前極から赤道部に限られており,この領域の生理活性が高い9),この二つの理由から,前.下領域に焦点をあて観察した.その結果,非糖尿病例ではA,BのC2グループに,そして糖尿病例ではC1,2,3のC3グループに分かれた.まず非糖尿病例では,有意差はないがCBが観察される年齢はCAよりも高く,加齢に伴い図1上図の□で示した暗い領域に存在する線維細胞の蛋白合成が盛んになり前眼部COCTの光源であるレーザ光の通過を妨げるため,前記した□印の暗い領域が陰影に変わり図1下図の所見に移行するのではないかと考えた.また,図1上下図の〇で示された前.直下の暗い領域は,まだ蛋白合成が盛んでない赤道部から伸展した新しい線維細胞が存在している領域と考えた.そして,この新しく進展した線維細胞領域の後方から順次核に向けて線維細胞は蛋白合成を盛んにすると推察したが,実際は□印で示された暗い領域が存在することから,順次ではないことがわかる.ただ,なぜこの領域が暗いのか,また加齢に伴い暗い領域が陰影に移っていくのか,これに関しては今後検討したい.つぎに糖尿病例に関して,網膜症のないグループC1では,全例が非糖尿病例グループA,Bどちらかの所見と一致していた.一方,グループC2,3では皮質内に暗く描出される所見が観察でき,この暗い領域が観察される範囲によりグループC2とC3に分かれるが,この暗い領域の存在は糖尿病例に特徴的な所見であった.そして,皮質内に観察される暗い領域では,ARによる線維細胞の膨化から生じた水分量増加のため,細胞内の蛋白濃度が低下し暗く観察できるのではないかと推察した.実際,加齢白内障の副病型で構造内に水晶体線維膨化が生じているCwatercleftsでは10),前眼部COCTの皮質画像で暗く描図2糖尿病例グループ1の所見上図:29歳例で,〇,※,□の所見は非糖尿病例グループCAと同様である.下図:37歳例で,〇の所見は非糖尿病症例グループBと同様である.図3糖尿病例グループ2,3の所見上図:グループC2(39歳例)の所見で,○の所見は非糖尿病症例と同様であるが,②内に*で示した暗い領域が観察できる.下図:グループC3(39歳例)の所見で,○で示した領域幅と*で示した領域幅と範囲は,グループ2に比して広い.また※で示した帯状陰影は非糖尿病例でも観察されるが,グループC3では幅が広くより明瞭となる.出されることを経験しており(図4),これは上記の推察を支持するものと考えている.また,グループ1,2,3でも非糖尿病例と同様,〇印で示した前.直下の暗い領域が存在しており,グループC2,3では,その幅が広くなっている所見が観察できる.このため,〇印の線維細胞領域にも膨化が生じている可能性はある.それでは,膨化した線維細胞領域が存在すると,白内障が発症するのであろうか.今回の対象例では後.下白内障を示すグループC3のC1眼を除いて,グループ1,2,3で白内障を発症している眼はなく,線維細胞の膨化が起きていると考えられる暗い領域が観察される例でも白内障は発症していない.これまで,線維細胞が正常時に比して数十倍に膨化し白内障が発症すると報告されていることから11),線維領域の膨化と白内障発症は同一視すべきではな表1糖尿病例グループ1,2,3の詳細年齢性別矯正視力HbA1c値眼底病変PRP施行インスリン追加事項△C29男C0.9C7.4CNC.+0.9CNC.38男C1.5C6.3CNC.+1.5CNC.38女C1.5C7.8CNC..1.5CNC.△C29男C1.5C7CNC.+1.5CNC.45女C1.5C7.5CNC.+1.5CNC.グループC1C△C33女C1C1C8CNCNC..+45男C1.5C6CNC.+1.5CNC.△C40女C1.5C6.5CNC.+1.5CNC.36女C1.5C5.7CNC..1.5CNC.37男C1.2C6CNC..1.2CNC.33女C1.5C7.5CNC..1.5CNC.△C45414245グループC2C453941男C左眼男C男C女C男C女C男C1.5C1.5C1.2C1.5C1.5C1.2C1.2C0.2C0.15C0.2C1.5C0.9C9C8.2C8C10.9C6.2C5.3C11.6CNCNCNCSCSCSCSCPCPPPrC…….++++.+..+.※1C.※2C.△◇○C39グループC3C414241◇C45男C右眼男C女C男C女C1C1C1.2Cm.mC0.5C0.08C0.15C0.4C0.8C13.3C8.2C6C5.9C9.5CPCPNCPCPPCPPCP++.+++++++※3C.※4C.※5C※6C.※7C.※8同例では上欄が右眼,下欄が左眼,そして同例でグループが違う場合は左右眼が記してある.△:I型CDM例,◇:PRP前に撮影された例,○:黄斑浮腫の治療前に撮影された例,N:網膜症なし,S:単純網膜症,Pr:増殖前網膜症,P:増殖網膜症.※C1:左右眼ともに黄斑浮腫.トリアムシノロンアセトニドのCTenon.下注射+抗CVEGF抗体薬の硝子体内注射施行.前眼部COCT撮影は上記治療のC2年後.※C2:右眼は強度遠視で弱視眼.黄斑浮腫で抗CVEGF抗体薬の硝子体内注射施行.前眼部COCT撮影は上記治療のC4カ月後.※C3:左右眼ともに黄斑浮腫のためトリアムシノロンアセトニドのTenon.下注射施行.前眼部COCT撮影のC1カ月後から開始.※4:網膜.離のため強膜内陥術施行.※5:透析中.網脈絡膜萎縮あり.※C6:透析中.後.下白内障あり.※C7:左右眼ともに黄斑浮腫.トリアムシノロンアセトニドのTenon.下注射+抗CVEGF抗体薬の硝子体内注射施行.前眼部COCT撮影は上記治療のC2年後.※C8:左右眼とも軽度の硝子体出血あり.く,今回の例では線維細胞が数十倍に膨化していない状態にで述べたようにグループの差異に一番影響を与える因子はあるため,白内障として観察できなかったのではないかと考PRP施行の有無であったが,PRP施行による水晶体へのダえた.そして以上の所見を踏まえて統計解析を行うと,結果メージ,また網膜組織のダメージが差異に影響するのか,あ図4前眼部OCT画像上のwaterclefts所見(82歳,加齢白内障例)上図:左はC3-9時方向,右はC2-8時方向から撮影した前眼部OCT画像.実線,点線の矢印が示す領域は暗く描出される.下図:前眼部解析装置で撮影した徹照像で,実線,点線の矢印はCwatercleftsである.なお,実線,点線の矢印が示す領域は,上図と同領域である.るいはCPRP施行が必要になるような網膜症の悪化が差異に影響するのかが明確でない.ただし,PRP施行例C6例C12眼中,PRP施行前に前眼部COCT撮影を行った眼がグループC3でC2例C4眼あったことから,やはりCPRPを行う必要があるような網膜症悪化例で前述した皮質所見が観察されるのではないかと考えた.また,グループ2,3のCPRP施行例のなかには,黄斑浮腫のためトリアムシノロンアセトニドのTenon.下注射や抗CVEGF抗体の硝子体内注射を併用しているC4例C8眼があった.PRP施行と同様,上記薬剤の影響も考える必要があるが,治療開前に撮影したグループC3のC1例C2眼があるため,この結果だけから判断すると,前述した薬剤の影響ではないとも推察される.ただこの問題は,PRP施行の影響とともに今後解決すべきと考えている.また,網膜症がなくてもグループC2,3に属する例があったが,グループC2のC2例C3眼では,1例C2眼がI型糖尿病でインスリンを使用しても血糖コントロールが不良な例,他のC1例C1眼はII型であるが,腰部ヘル二アによる運動制限のため血糖コントロールが不良であり,30歳代で狭心症を発症した血流と血管障害の強い例であった.なお,このC1例の他眼はグループC3で,もともとの血糖コントロール不良に加え,裂孔原性網膜.離のため強膜内陥術施行が施行されており,裂孔,手術という侵襲が皮質所見に影響している可能性も否定できない.以上,PRPを必要とするような網膜症悪化例や血糖コントロール不良例では,AR活性に伴う水晶体線維細胞領域の膨化が生じている可能性があり,これが所見に反映されたと推察したが,ARは網膜血管の壁細胞にも存在し,かつAR活性により壁細胞消失,それに伴う内皮細胞障害と血流障害が生じて網膜症が悪化することが報告されていることから12),網膜症の悪化例や血糖コントロール不良例では,水晶体線維領域に存在するCARを原因とする線維細胞の膨化が出現したとしても無理はないと考えた.そして,後.下,核所見の比較,また前眼部COCT画像とCScheimp.ug画像との比較も検討しているが,こうした糖尿病例に焦点を当て前眼部OCTで水晶体観察を行った報告がないことから,今回の網膜症悪化と皮質所見の差異を示した内容は有用な情報になりうるのではないかと考えた.文献1)KinoshitaCJH,CKadorCPF,CDatilesM:AldoseCreductaseCinCdiabeticcataracts.JAMAC246:257-261,C19812)赤木好男,田坂宏,糸井素一ほか:実験的ラット糖尿病白内障におけるCAldosereductaseの局在について.眼紀C36:1207-1211,C19853)FukushiCS,CMerolaCLO,CKinoshitaJH:AlternatingCtheCcourseCofCcataractsCinCdiabeticCrats.CInvestCOphthalmolC19:313-315,C19804)KadorPF:OverviewCofCtheCcurrentCattemptCtowardCtheCmedicalCtreatmentCofCcataract.COphthalmologyC90:352-364,C19835)AkagiY,YajimaY,KadorPFetal:Localizationofaldosereductaseinthehumaneye.DiabetesC33:562-566,C19846)赤木好男,馬嶋清如,田坂宏ほか:ヒト糖尿病性白内障におけるCAldoseReductaseの局在.眼紀C38:366-370,C19877)馬嶋清如,市川慶,酒井幸弘ほか:前眼部光干渉断層計を使用した白内障水晶体の核観察に関する試み.臨眼C77:C619-625,C20238)FriedenwaldJS,RytelD:Contributiontothehistopathol-ogyofcataract.ArchOphthalmolC53:825-831,C19559)岩田修造編著:水晶体その生化学的機構.p87,メディカル葵出版,198610)QuCJ,CSasakiCH,CSakamotoCYCetal:Higher-orderCocularCaberrationscausedbycrystallinelenswaterclefts.JCata-ractRefractSurgC36:799-805,C201011)赤木好男,秋宗万里,中路裕ほか:Aldosereductase阻害剤(ICI128,486).眼紀37:991-995,C198612)HohmanTC,NishimuraC,RobisonWGJr:Aldosereduc-taseCandCpolyolCinCculturedCpericytesCofChumanCretinalCcapillaries.ExpEyeResC48:55-60,C1989***