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抗菌点眼薬接触による細菌形態の塗抹標本上の変化

2016年10月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科33(10):1497?1502,2016c抗菌点眼薬接触による細菌形態の塗抹標本上の変化李蘭若*1,2佐々木香る*1前田美佐穂*3砂田淳子*4小島隆司*5村戸ドール*5髙橋寛二*2*1JCHO星ヶ丘医療センター眼科*2関西医科大学眼科学教室*3JCHO星ヶ丘医療センター臨床検査部*4大阪大学医学部附属病院臨床検査部*5慶應義塾大学医学部眼科学教室ChangesinBacteriaonSmearPreparationafterAntibioticAdministrationRannyaRi1,2),KaoruAraki-Sasaki1),MisahoMaeda1),AtsukoSunada3),TakashiKojima4),DogruMurat4)andKanjiTakahashi2)1)DepartmentofOphthalmology,JapanCommunityHealthCareOrganization(JCHO)HoshigaokaMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversity,3)LaboratoryforClinicalInvestigation,JapanCommunityHealthCareOrganization(JCHO)HoshigaokaMedicalCenter,4)LaboratoryforClinicalInvestigation,OsakaUniversityHospital,5)DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine目的:塗抹鏡検は細菌性角膜炎の原因菌確定に重要な役割を果たしているが,実際の臨床現場,とくに抗菌薬投与下では,細菌や細胞の形状が非典型的となり,細菌か否かの鑑別が困難になることを経験する.今回,抗菌薬に接触した菌が塗抹鏡検上,どのような変化をきたすかを検討した.方法:眼科臨床分離株であるCNS,MRCNS,S.aureus,MRSA,P.aeruginosaの5菌種を用いた.各菌株を寒天培地上で培養し,トブラマイシン,ガチフロキサシン,アルベカシン,セフメノキシムの4点眼薬を滴下した.6時間,24時間,48時間後に培地中央から釣菌を行い,塗抹標本を作製し,菌の量,グラム染色による染色性,形状を観察した.対照として生理食塩水滴下群および非滴下群も観察した.結果:抗菌薬滴下により,すべての菌で菌量の減少,染色性の低下を認めた.さらに菌の輪郭の不明瞭化と大小不同を認めた.生理食塩水滴下群,非滴下群でも同様の所見を認めたが,抗菌薬滴下群ではより著明に変化を認めた.考按:塗抹鏡検は,抗菌薬投与の有無に大きく左右されることを考慮して解釈すべきである.Purpose:Itisgenerallyknownthatmicroscopicexaminationofsmearpreparationsplaysanimportantroleinidentifyingcausativeorganismsofmicrobialkeratitis.However,attimesitisdifficulttorecognizeanorganism,especiallyaftertheadministrationofantibiotics.Wehereobservedhoworganismschangeafterexposuretoantibiotics.Methods:Weemployed5speciesoforganisms(CNS,MRCNS,S.aureus,MRSA,P.aeruginosa)isolatedfromourpatientsfortheassay.EqualamountsoftheseorganismsweregrownonMueller-HintonSagarfor48hoursand4kindsofantibiotics(tobramycin,gatifloxacin,arbekacin,cefmenoxime)weredroppedontothecenterofeachplate.Physiologicalsalineservedascontrol.Bacteriawithoutexposuretoanyantibioticsandwithphysiologicalsalinewerealsoobserved.Results:Inalmostallorganisms,bacterianumbersdecreasedandstainabilityweakenedinatime-dependentmannerwithexposuretoantibiotics.Bacterialcellwallmarginsbecameblurredandorganismsizesshowedheterogeneity.P.aeruginosashowedextendedshapewithexposuretoCMX.Thoughdecreasednumbersandweakenedstainabilitywerenotedevenwithphysiologicalsaline,thesechangesweremoreremarkablewithantibiotics.Conclusion:Weshouldtakeextracareinanalyzingsmearsamplesaftertheirexposuretoantibiotics.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(10):1497?1502,2016〕Keywords:細菌,抗菌点眼薬,塗抹検査,グラム染色.bacterium,antibioticeyedrop,smearexamination,gramstain.はじめに細菌性角膜炎の起因菌確定のために塗抹鏡検は重要である1?3).とくに抗菌薬点眼がすでに投与されている症例では,培養を施行しても細菌の発育が認められず,塗抹鏡検で細菌が検出される場合があり,有用性が高いと推測されている.これまでの報告では,細菌性角膜炎の初診時検査において,塗抹鏡検での検出率は59%,培養での検出率も59%と報告されており4),実際には,塗抹鏡検においても,しばしば起因菌の検出は困難である.とくに,紹介受診の場合,抗菌薬点眼がすでに投与されている症例が多く,好中球を多数認めるが細菌が検出できない,細菌が存在しても菌数が少数である,形状が不均一である,などという結果を多く経験する.このような場合,検出された少量の細菌や非典型的な形状の細菌が,はたして起因菌であるかどうかの判断に苦慮する.そこで,今回は抗菌薬点眼接触後の細菌の量の変化および形態の変化を観察した.I方法眼科臨床分離株であるcoagulasenegativeStaphylococci(CNS),methicillinresistantcoagulasenegativeStaphylococci(MRCNS),Staphylococcusaureus(S.aureus),methicillinresistantStaphylococcusaureus(MRSA),Pseudomonasaeruginosa(P.aeruginosa)の5菌種を用いた.培地はMueller-HintonS寒天培地を用い,トブラマイシン点眼液(TOB),ガチフロキサシン点眼液0.3%(GFLX),自家調整0.5%アルベカシン点眼(ABK),セフメノキシム点眼液0.5%(CMX)の4種類の点眼薬を後述のように滴下した.対照として生理食塩水を使用し,非滴下群の菌も観察した.具体的には,まず各菌株をマックファーランド0.5に調整し,菌液10μlを採取し,100μlの生理食塩水に浮遊した後,Mueller-HintonS寒天培地全面に綿棒にて均一になるように塗布した.35℃で24時間培養し,その後,それぞれの培地の中央部に各種抗菌点眼薬を1滴ずつ1日2回,滴下した.滴下開始前,6時間後,24時間後,48時間後に,白金耳にて1回限りで培地中央をスタンプして付着した菌をスメアに供し,グラム染色を施行後,鏡検した.なお,光学顕微鏡(OlympusBx53,Tokyo,Japan)を用いて撮影した写真をimageanalyzer(ImageJ:NationalInstitutesofHealth,ver.1.41o)を用いて二画化し,1視野において菌の存在する面積を算出した.菌の残存率は接触前の1視野における菌の存在する面積を100%とし,24時間後,48時間後に残存した菌の存在する面積を解析し,残存した菌量を%として算出した.II結果代表例として,図1にMRCNSにGFLX点眼を滴下させた場合を示す.GFLX滴下後の菌は,0時間に比して6時間,24時間と減量および染色性の低下を認めた(図1a?c).しかし,生理食塩水滴下群や非滴下群でも滴下前に比べ,菌の減量や染色性低下を認めた(図1d,e)が,GFLX点眼群ではより著明に変化を認めた.GFLX滴下群の24時間後の検体を強拡大にて観察すると,滴下前には均一にグラム陽性染色を示した菌が,紫色と赤色に染色されたものが混在して存在するようになり,時間経過とともにすべて赤色へと変化した.また,菌の輪郭そのものが次第に不明瞭となり,大小不同の形状を認めた(図2).GFLX点眼を接触させたMRCNS以外の菌の結果を図3?1,3?2に示す.すべての菌で菌量の低下と染色性の低下が観察されたが,とくにCNSやP.aeruginosaでは,滴下6時間後から著明な菌の減少を認めた.生理食塩水を低下した群でも菌量の減少と染色性の低下は認められたが,GFLX滴下群ではより著明であった.なお,今回のアッセイでもっとも変化が大きかったのは,P.aeruginosaとCMXを接触させた場合の形状変化であった(図4).滴下前には均一な桿菌の形状を示していたが(図4a),時間経過につれて,次第に細長く変化し,24時間後には糸状となった(図4b).しかし,この変化は生理食塩水滴下群(図4c)や非滴下群(図4d)では観察されなかった.スメアで肉眼的に観察された抗菌薬使用による菌の残存率低下は,数値化を行っても確認された(図5).すべての点眼投与群を平均した各種菌別の残存率は高い順に,MRSA(34.0%)>MRCNS(31.0%)>S.aureus(18.0%)>P.aeruginosa(14.0%)>CNS(5.7%)であった.全菌種,全抗菌薬を合わせて平均した24時間後の残存率は,抗菌薬滴下群では平均21%(0.9?57.8%)であったが,一方,生理食塩水でも,平均24%の残存率となった.しかし,48時間後では,抗菌薬滴下群の残存率は平均12%(0?31.6%)とさらに低下したが,生理食塩水滴下群では平均22.6%にとどまった.48時間後の各種点眼滴下群の菌残存率を図5に示す.CNSはすべての抗菌薬点眼滴下群で10%以下の残存率となり,P.aeruginosaではCMXを除く抗菌薬点眼群で1%以下となった.一方,S.aureusやMRCNS,MRSAなどの耐性菌では,CNSに比して残存率が高い傾向にあった.III考按今回のアッセイを通して,抗菌薬と接触した菌は少なくとも6時間後には菌量の減少,染色性の低下という塗抹鏡検上の変化をきたすことがわかった.抗菌薬を滴下作用させた場合において,6時間後には菌の減少,染色性低下を認め,24時間後では残存率が平均21%となり,48時間後ではさらに減少し平均12%の残存率となった.対照として滴下した生理食塩水でも菌量の軽度の減少,染色性の低下を認めたことから,滴下水流による洗い流しの影響があったと考えられる.しかし,生理食塩水滴下群では,24時間後と48時間後で残存率が大きく変化しなかったことから,抗菌薬滴下群では,滴下水流の影響に加え,抗菌薬それぞれの作用により塗抹鏡検上の変化をきたしたと考えられた.さらに観察期間を長くすると,生理食塩水と抗菌薬滴下群の差は大きくなると推測された.各種抗菌点眼薬を作用させた後の菌別の平均残存率をみると,CNS>P.aeruginosa>S.aureus>MRCNS>MRSAの順に菌が減少しやすいことがわかった.MRSAやMRCNSなどの耐性菌における菌の残存率が高く,CNSにおいては非常に低いという結果は,日常臨床の結果を反映している5,6)と考えるが,それぞれの菌の増殖性や抗菌薬の特性が異なり,含まれる防腐剤や添加材の影響,さらには,各々の点眼液の1滴当たりの量の違いもあり,一概に比較することには問題がある.染色性の低下は,グラム陽性菌では紫色から赤色へと色調の変化としてとらえられた.これは,抗菌薬の効果,滴下水流のストレス,栄養状態の悪化などにより細胞壁に多量に存在するペプチドグリカンの合成が妨げられ,クリスタルバイオレットの染色性が低下したためと考えられる7).このためグラム陽性菌を陰性菌と誤って判断する可能性がある.グラム陽性菌では赤と紫が混合する時期があったことから,染色性の低下は一様に生じるものでなく,徐々に生じると推測された.この染色性の低下に伴い,薬剤感受性が変化するかどうかは今後の検討が必要であるといえる.なお,グラム陰性菌であるP.aeruginosaでも,CMX以外の抗菌薬を滴下した場合,陽性菌ほど色調の変化は認めないものの,ペプチドグリカンを細胞壁に含んでいるため,染色性が低下して薄いピンク色に変化し,また,細菌の輪郭も次第に不明瞭となり,菌であるかどうかの判別が困難であった.実際の臨床においても,抗菌薬が投与されている場合は,グラム陽性であれ,陰性であれ,染色性の低下を考慮して塗抹の結果を解釈すべきと思われた.今回,興味深いことにP.aeruginosaはCMX投与によって大きく変形することも示された.これは,臨床検査領域ではすでに報告されていることであるが8,9),眼科領域ではまだ一般的に十分周知されておらず,染色性は異なるものの放線菌や糸状真菌が病原菌となりうる疾患では鑑別に注意を要すると思われた.P.aeruginosaがCMXと接触して糸状に変化していく理由についてはすでに報告されている8,9).細胞壁を合成する最終段階であるペプチド架橋反応にPBP(penicillinbindingprotein)という酵素が関与していることが知られている.そのなかでもPBP3は細胞壁の中隔形成に関与しており,CMXはPBP3に強力な結合親和性を有することから,細胞壁の中隔形成が阻害され細菌がフィラメント化すると推測されている.今回のアッセイでは明瞭に観察することができたが,実際の臨床でも,このような状態が存在している可能性があり,染色性は異なるものの,糸状菌や放線菌などとの鑑別に注意が必要であると思われた.P.aeruginosaにおけるCMX投与時の高い残存率は,このフィラメント化の影響により面積が大きくなったためであり,抗菌効果をそのまま反映しているとは考えにくいと思われた.なお,今回のアッセイはMueller-HintonS寒天培地で行われたが,これは通常,感受性試験に用いられる培地であり,栄養性に乏しい.また,各々の点眼でも1滴量はわずかに異なると思われる.実際の臨床環境を考慮した場合,菌の増殖性はさらに高く,好中球を始めとする各種免疫細胞の関与もあり,菌量や菌の形状,染色性に影響を及ぼすと考えられる.このように,机上の実験系と臨床での患者の眼表面とでは多くの条件が異なっているので,今回のアッセイをそのまま臨床に当てはめることには問題があるが,少なくとも抗菌薬との接触で菌の染色性の低下や菌量の減少が6時間には開始されることが明らかとなった.つまり,実際の臨床塗抹鏡検においては,検体採取はできるだけ抗菌薬投与前に実施するのが好ましいことが再確認されるとともに,すでに抗菌薬が投与された症例には塗抹検査結果の解釈に注意が必要であることがわかった.文献1)中川尚,秦野寛:眼科医のための塗抹検鏡アトラス.インフロント,20102)中川尚:スメアを採る.大橋裕一(編):専門医のための眼科診療クオリファイ2結膜炎オールラウンド.中山書店,p25-30,20103)江口洋:Diagnostics角結膜感染症診断のポイント塗抹検鏡.眼科グラフィック3:357-362,20144)原田大輔,近間泰一郎,山田直之ほか:角膜感染症に対する直接塗抹顕微鏡検査の重要性の検討.臨眼63:231-235,20095)砂田淳子,上田安希子,井上幸次ほか:感染性角膜炎全国サーベイランス分離菌における薬剤感受性と市販点眼薬のpostantibioticeffectの比較.日眼会誌110:973-983,20066)井上幸次,大橋裕一,秦野寛ほか,眼感染症薬剤感受性スタディグループ:前眼部・外眼部感染症における起炎菌判定日本眼感染症学会による眼感染症起炎菌・薬剤感受性多施設調査.日眼会誌115:810-813,20117)中川尚:眼感染症─知っておくべきことから最新の治療まで塗抹検鏡.病原体同定.臨眼69:12-16,20158)横田健,関口玲子,東映子:Cefmenoxime(SCE-1365)の各種b-lactamaseおよびペニシリン結合タンパク質に対する親和性とその抗菌力との関係.CHEMOTHERAPY29(Supplement1):32-41,19819)紺野昌俊,旭泰子,生方公子:大腸菌のペニシリン結合蛋白に対するb-ラクタム薬の親和性がMIC,殺菌効果ならびに形態変化におよぼす影響について.日本化学療法学会雑誌47:271-286,1999〔別刷請求先〕佐々木香る:〒573-8511枚方市星ヶ丘4-8-1JCHO星ヶ丘医療センター眼科Reprintrequests:KaoruAraki-SasakiM.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,JCHOHoshigaokaMedicalCenter,4-8-1Hoshigaoka,Hirakata,Osaka573-8511,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY1498あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(112)図1MRCNSにGFLX点眼を接触させたコロニーのグラム染色による塗抹標本(弱拡大)a:滴下直後(0時間),b:滴下6時間後,c:滴下24時間後.時間の推移に伴い菌量の減少および染色性の低下を認めた.生理食塩水滴下後24h群(d)や非滴下群(e)でも染色性の低下や菌量の減少も認めたが,GFLX滴下群に比して軽度であった.bar:100μm.図2MRCNSにGFLX点眼を滴下した24時間後のグラム染色による塗抹標本(強拡大)滴下前(a)と比して,菌量の減少を認めるとともに,染色性も低下した.滴下開始前(a)には均一な紫色の染色性を示したが,6時間後(b)には,紫色と赤色が混在するようになり,24時間後(c)にはすべて赤色へと変化した.また,菌の輪郭そのものが次第に不明瞭となり,大小不同を認めた.bar:20μm.(113)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161499図3?1GFLX点眼および生理食塩水を接触させたCNS,S.aureusの0時間,6時間,24時間後のグラム染色による塗抹標本菌量の低下と染色性の低下が観察された.とくにCNSでは,滴下6時間後から著明な菌の減少を認めた.生理食塩水滴下群でも染色性の低下は認めるが,抗菌薬滴下で,より著明な菌量の減少を認めた.bar:100μm.図3?2GFLX点眼および生理食塩水を接触させたMRSA,P.aeruginosaの0時間,6時間,24時間後のグラム染色による塗抹標本菌量の低下と染色性の低下が観察された.とくにP.aeruginosaでは,滴下6時間後から著明な菌の減少を認めた.bar:100μm.あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(114)図4P.aeruginosaとCMXを接触させた場合の形状変化を示したグラム染色による塗抹標本滴下開始前(a)に比べ,24時間後(b)には,次第に細長く糸状に変化した.生理食塩水滴下群(c)や非滴下群(d)では,糸状変化は認めなられなかった.bar:100μm.図5各種点眼を滴下開始48時間後の菌残存率縦軸は菌残存率(%)を示す.生理食塩水滴下群においても菌の減少は認めるが,ほとんどの菌で抗菌薬点眼群において,さらに低い傾向を認めた.とくにCNSでは全抗菌薬滴下で低い残存率となった.S.aureusやMRCNS,MRSAではTOB,ABKが,他の抗菌薬点眼に比して低い残存率であった.P.aeruginosaはCMX以外の抗菌点眼薬で低い値となった.(115)あたらしい眼科Vol.33,No.10,201615011502あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(116)

涙点プラグの付着物からの細菌の検出

2016年10月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科33(10):1493?1496,2016c涙点プラグの付着物からの細菌の検出柴田元子服部貴明森秀樹嶺崎輝海片平晴己熊倉重人後藤浩東京医科大学臨床医学系眼科学分野DetectionofBacteriafromPunctalPlugHolesMotokoShibata,TakaakiHattori,HidekiMori,TeruumiMinezaki,HarukiKatahira,ShigetoKumakuraandHiroshiGotoDepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity涙点プラグ挿入後ではプラグインサーター挿入口に白色の塊状物をみることがあり,バイオフィルムの形成や細菌による汚染が懸念される.そこで,この塊状物に病原微生物が存在するか否かを検討した.対象は上下左右いずれかの涙点に涙点プラグが挿入された22例(男性2例,女性20例),27眼,32涙点プラグである.プラグが挿入されたままの状態でインサーター挿入口から圧出された塊状物を細菌培養検査に提出した.全22例中,20例(90.9%)25眼(92.6%)29プラグ(90.6%)で細菌もしくは真菌が検出された.検出された36株の内訳は,Corynebacteriumsp.が18株ともっとも多く,Streptococcusa-Hemolyticstreptococciが5株,Staphylococcusaureusが3株,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌が3株,Staphylococcusepidermidisが2株,グラム陰性桿菌が2株,Coagulase-negativestaphylococciが2株,Pseudomonasaeruginosa,Aspergillussp.がそれぞれ1株ずつだった.以上から,一定期間挿入された涙点プラグには高率に細菌が付着していることが確認された.Ithasbeenclinicallyobservedthattheholesofpunctalplugsoftenaccumulatewhitematerial,indicatingbiofilmformationandbacterialinfectionofpunctalplugs.Weherestudiedwhetherwhitematerialfrompunctalplugscontainsmicroorganisms.Weexamined22patients(27eyes,including32punctalplugs).Thematerialcollectedfrompunctalplugswassubjectedtobacterialculture.Amongthe22patients,bacteriaorfungiweredetectedfrom20patients(90.9%)in25eyes(92.6%)and29plugs(90.6%).The36bacteriafoundincluded18ofCorynebacteriumsp.,5ofStreptococcusa-Hemolyticstreptococci,3ofStaphylococcusaureus,3ofnon-fermentinggramnegativerods,2ofStaphylococcusepidermidis,2ofgram-negativerods,2ofCoagulase-negativestaphylococciand1ofPseudomonasaeruginosaandAspergillussp.Itisconcludedthattherearebacteriainpunctalplugsplacedinthepunctumforacertainperiodoftime.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(10):1493?1496,2016〕Keywords:涙点プラグ,細菌,感染.punctalplug,bacteria,infection.はじめに涙点プラグは,点眼治療のみでは改善のみられない重症ドライアイ患者に対する安全で有効性の高い治療法として日常診療で使用されている1?5).涙点プラグ挿入の合併症として,プラグの脱落,肉芽形成,涙道内への迷入があり1?8),これらの欠点を補うべく新たな涙点プラグも開発されている.涙点プラグ挿入にはプラグそれぞれ専用のインサーターを使用して挿入するため,涙点プラグにはインサーター用の挿入口が設けられている.涙点プラグ挿入後,しばしばこのインサーター挿入口を中心にデブリスが貯留している症例に遭遇し,涙点プラグに細菌が付着していることが疑われる.しかし,涙点プラグへの細菌付着について検討した報告は少ない9,10).そこで本研究では,涙点プラグのインサーター挿入口から採取した白色塊に対して細菌培養検査を行い,菌の検出率,菌の種類について検討した.I対象対象は上下左右の涙点のいずれかに涙点プラグが挿入され,東京医科大学病院眼科で経過観察を行っていた22例(男性2例,女性20例),27眼,32涙点プラグである.平均年齢は69.0±13.1歳で,疾患の内訳はドライアイ15例,Sjogren症候群7例であった.Foxの診断基準11)によるSjogren症候群の確定例が7例で,涙液減少型ドライアイが15例であった.Sjogren症候群のうち,1例が関節リウマチを合併し,1例が全身性エリテマトーデスを合併していた.また,Sjogren症候群以外のドライアイ症例における全身疾患として,糖尿病が2例,骨髄移植を行っていない白血病が2例,関節リウマチが2例,原発性胆汁性肝硬変が1例であった.涙点プラグが挿入されていた期間は3?123カ月(平均45.5±38.4カ月)であった.プラグの種類はパンクタルプラグR14例,スーパーイーグルR3例,種類不明が5例であった.プラグ挿入後に使用していた点眼薬または眼軟膏は,副腎皮質ステロイドが3例,抗菌薬が5例であった.涙点プラグ挿入術の適応としては,点眼治療によっても症状および角膜上皮障害の改善がみられない患者で,点状表層角膜症の程度がフルオレセイン染色によるAD分類12)でA2D2以上の患者とした.II方法0.4%オキシプロカインを点眼した後に,患者の涙点にプラグが挿入されたままの状態でシャフト部分を鑷子で圧迫し,インサーター挿入口から圧出された白色塊を滅菌綿棒で擦過し,カルチャースワブにて当院微生物検査室に移送した.微生物検査室で血液寒天培地,クロムアガーオリエンテーション寒天培地を用いて直接分離培養を,GAM半流動高層培地で増菌培養を行った.直接分離培養で検出されたすべての分離菌に対するPCG(ペニシリンG),MPIPC(オキサシリン),ABPC(アンピシリン),CEZ(セファゾリン),CTM(セフォチアム),FMOX(フロモキセフ),IPM/CS(イミペネム/シラスタチン),GM(ゲンタシン),ABK(アベカシン),EM(エリスロマイシン),CLDM(クリンダマイシン),MINO(ミノサイクリン),TEIC(テイコプラニン),VCM(バンコマイシン),LVFX(レボフロキサシン),ST(スルファメトキサゾール/トリメトプリム)のMICを微量液体希釈法で測定した.III結果1.培養結果32の涙点プラグインサーター挿入口に貯留している白色塊を採取し培養したところ,29検体(90.6%)とほぼすべての検体から何らかの細菌が検出された(表1).挿入期間が3カ月の検体で培養結果が陽性であったものもあれば挿入期間が48カ月の検体で培養結果が陰性となったものもあった.挿入期間の平均値(32カ月)で2群に分け培養陽性率を比較すると,32カ月以下で87.5%(16検体中14検体)の陽性率であり,32カ月以上で91.7%(12検体中11検体)の陽性率となった.プラグ挿入の部位では上涙点で87.5%(8検体中7検体),下涙点では90.0%(20検体中18検体)の陽性率であった.また,抗菌薬の使用有無について培養陽性率を検討したところ,抗菌薬使用群では72.7%(11検体中8検体),抗菌薬未使用群では100%(18検体中18検体)であった.さらに,副腎皮質ステロイドの使用有無について培養陽性率を検討したところ,副腎皮質ステロイド使用群では100%(7検体中7検体),副腎皮質ステロイド未使用群では86.4%(22検体中19検体)であった.2.検出菌の内訳細菌が35株,真菌が1株検出された(表2).挿入されていた涙点プラグ別に検出された菌を記載したものを表3に示した.Corynebacteriumsp.が18株ともっとも多く検出され,Streptococcusa-Hemolyticstreptococciが5株,Staphylococcusaureusが3株,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌が3株,Staphylococcusepidermidisが2株,菌種が同定できなかったグラム陰性桿菌が2株,Coagulase-negativestaphylococci,Pseudomonasaeruginosa,Aspergillussp.がそれぞれ1株ずつ検出された.また,薬剤感受性検査の行えた株のうち,7株中4株(57.1%)でレボフロキサシン耐性株がみられた.その内訳は,Staphylococcusepidermidisが2株,StaphylococcusaureusとCoagulase-negativestaphylococciがそれぞれ1株ずつであった(表4).4株のレボフロキサシン耐性株のなかでレボフロキサシン点眼薬を使用していたものは1株だった.また,4株のレボフロキサシン耐性株のなかで副腎皮質ステロイド点眼を使用している症例はなかった.3.臨床所見白色塊から検出された細菌により眼所見が悪化したと考えられた症例は1例のみであり,この症例は眼脂の増加のみで感染性角膜炎の所見や結膜充血など感染性結膜炎の所見はなかった.ほぼすべての症例は涙点プラグに細菌が存在していたにもかかわらず,眼表面に明らかな感染症としての所見は認めなかった.IV考按今回の検討により,涙点プラグのインサーター挿入部には,高率に細菌が存在していることが判明した.これまでも筆者らの結果と同様に,涙点プラグには高率に細菌が存在し,バイオフィルムが形成されていると報告されている9,10).本検討では以前の報告と比較して,涙点プラグ挿入後3カ月から約10年と比較的長期に挿入されていたプラグを対象としている.長期的に挿入されていても,以前の報告と比較して細菌の検出率,検出された菌の種類に大きな差はなかった.さらに,このように高率に涙点プラグから細菌が検出されていても,眼表面への感染を認めた症例はほとんど存在しなかった.涙点プラグには高率に細菌が存在するが,これらの菌が眼表面へ影響する可能性は少ないことが示唆された.検出された菌は,Corynebacteriumsp.が約半数と最も多く,Streptococcusa-Hemolyticstreptococci,Staphylococcusaureusと続いていた.Corynebacteriumsp.は以前の筆者らの報告でも白内障手術前患者の結膜?内に多く存在する常在菌として検出されており13),結膜?に存在していたCorynebacteriumsp.が直接涙点プラグに付着したと考えられる.一方,ドライアイ患者の結膜?内の細菌分布を検討した報告では,表皮ブドウ球菌が最も多く検出され,Corynebacteriumsp.は2%程度と低い検出率であることが報告されている14).結膜?の常在菌の分布と涙点プラグに付着した細菌の分布とに関連性があるか否かについては今後の検討が必要である.薬剤感受性試験を行うことのできた細菌のうち,約半数がレボフロキサシンに耐性であった.また,耐性菌が検出された患者のうち1例はレボフロキサシン点眼を使用していた.ドライアイ患者の結膜?内にはレボフロキサシン耐性菌が多く検出されるとの報告もあり14),涙点プラグ挿入後の抗菌薬点眼が薬剤耐性と関連性があるとは一概にいえないものの,安易に長期にわたって抗菌薬を投与することは避けるべきであろう.挿入された涙点プラグに高率に細菌が付着していたことが,涙点プラグを定期的に交換する必要性を示唆しているのか否かについては議論の余地がある.長期間涙点プラグが挿入されていても,感染性角膜炎などの重篤な眼表面の感染症を発症しておらず,眼表面には大きな影響を与えていない可能性もある.しかし,涙点プラグの約90%に細菌が付着している結果は無視できない事実であり,少なくとも涙点プラグ挿入後の定期的な経過観察は重要であり,眼脂の増加や涙点プラグの汚染状態によっては涙点プラグの交換を考慮すべきであると考えられる.文献1)FreemanJM:Thepunctalplug:evaluationofanewtreatmentforthedryeye.TransAmAcadOphthalmolOtolaryngol79:874-879,19752)WillisRM,FolbergR,KrachmerJHetal:Thetreatmentofaqueous-deficientdryeyewithrernovablepunctalplugs.Aclinicalandimpression-cytologicstudy.Ophthalmology94:514-518,19873)GilbardJP,RossiSR,AzarDTetal:EffectofpunctalocclusionbyFreemansiliconepluginsertionontearosmolarityindryeyedisorders.CLAOJ15:216-218,19894)太田啓雄,広瀬浩士,粟屋忍ほか:涙点栓子挿入による乏涙症の治療成績.臨眼48:628-629,19945)MurubeJ,MurubeE:Treatmentofdryeyebyblockingthelacrimalcanaliculi.SurvOphthalmol40:463-480,19966)小嶋健太郎,横井則彦,中村葉ほか:重症ドライアイに対する涙点プラグの治療成績.日眼会誌106:360-364,20027)那須直子,横井則彦,西井正和ほか:新しい涙点プラグ(スーパーフレックスプラグ⑧)と従来のプラグの脱落率と合併症の検討.日眼会誌112:601-606,20088)薗村有紀子,横井則彦,小室青ほか:スーパーイーグル⑧プラグにおける脱落率と合併症の検討.日眼会誌117:126-131,20139)YokoiN,OkadaK,SugitaJetal:Acuteconjunctivitisassociatedwithbiofilmformationonapunctalplug.JpnJOphthalmol44:559-560,200010)SugitaJ,YokoiN,FullwoodNJetal:Thedetectionofbacteriaandbacterialbiofilmsinpunctalplugholes.Cornea20:362-365,200111)FoxRI,RobinsonCA,CurdJGetal:Sjogren’ssyndrome.Proposedcriteriaforclassification.ArthritisRheum29:577-584,198612)宮田和典,澤充,西田輝夫ほか:びまん性表層角膜炎の重症度の分類.臨眼48:183-188,199413)丸山勝彦,藤田聡,熊倉重人ほか:手術前の外来患者における結膜?内常在菌.あたらしい眼科18:646-650,200114)HoriY,MaedaN,SakamotoMetal:Bacteriologicprofileoftheconjunctivainthepatientswithdryeye.AmJOphthalmol146:729-734,2008〔別刷請求先〕熊倉重人:〒113-0024東京都新宿区西新宿6-7-1東京医科大学眼科医局Reprintrequests:ShigetoKumakuraM.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity.6-7-1Nishishinjuku,Shinjuku-ku,Tokyo113-0024,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(107)1493表1プラグ数,患者数,眼数における培養陽性数と培養陽性率培養陽性数培養陽性率プラグ数29/3290.60%患者数20/2290.90%眼数25/2792.60%表2検出された細菌の種類と検出率検出された細菌no(%)Corynebacteriumsp.18(50)Streptococcusa-Hemolyticstreptococci5(13.4)Staphylococcusaureus3(8.3)non-fermentinggram-negativerod3(8.3)Staphylococcusepidermidis2(3.0)gram-negativerod2(3.0)coagulase-negativestaphylococci(CNS)2(3.0)Pseudomonasaeruginosa1(2.8)Aspergillussp.1(2.8)1494あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(108)表3全症例のまとめ症例年齢(歳)性別プラグ挿入部位プラグ挿入期間(カ月)培養結果182女UR3Staphylococcusepidermidis2UL72女UL7(-)2LL72女LL7(-)3UL85男UL15Corynebacteriumsp.3LL85男LL15Corynebacteriumsp.475女LR16StaphylococcusaureusCorynebacteriumsp.574男LR18Corynebacteriumsp.6LL58女LL19non-fermentinggram-negativerodStreptococcusa-Hemolyticstreptococci6UL58女UL19non-fermentinggram-negativerod6UR58女UR19Staphylococcusaureus775女LL19Corynebacteriumsp.876女LL20Corynebacteriumsp.982女LR20Corynebacteriumsp.1079女LR20Corynebacteriumsp.1173女UR23Corynebacteriumsp.1245女LR30Corynebacteriumsp.1381女LL32StaphylococcusepidermidisStreptococcusa-Hemolyticstreptococci14LL60女LL40Streptococcusa-Hemolyticstreptococcigram-negativerod14LR60女LR39gram-negativerod1536女LL48(-)1663女LR54PseudomonasaeruginosaStreptococcusa-Hemolyticstreptococci1760女LL60Corynebacteriumsp.18LL67女LL71Corynebacteriumsp.18UR67女UR22Corynebacteriumsp.18LR67女LR60Corynebacteriumsp.Streptococcusa-Hemolyticstreptococci19UL71女UL89Corynebacteriumsp.19UR71女LR89Corynebacteriumsp.2087女UL98Coagulase-negativestaphylococciCorynebacteriumsp.Aspergillussp.2154女LR122Staphylococcusaureus22UL63女UL123Corynebacteriumsp.22LL63女LL123Corynebacteriumsp.22LL63女LL123Corynebacteriumsp.U:上涙点,L:下涙点,R:右眼,L:左眼.表4レボフロキサシン耐性であった株のまとめ症例培養結果使用していた点眼薬1Staphylococcusepidermidisレボフロキサシンレバミピド13Staphylococcusepidermidisヒアルロン酸ナトリウムジクアホソルナトリウム20Coagulase-negativestaphylococci生理食塩水21Staphylococcusaureus人工涙液ヒアルロン酸ナトリウム(109)あたらしい眼科Vol.33,No.10,201614951496あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(110)

感染性心内膜炎から転移性眼内炎を発症し,治癒後に硝子体黄斑牽引症候群を発症した1 例

2011年3月31日 木曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(103)411《第47回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科28(3):411.414,2011cはじめに転移性眼内炎は,眼以外の部位にある感染巣から血行性に真菌や細菌が眼内に転移し発症する疾患である.転移性眼内炎で最も多い起炎菌はカンジダを初めとした真菌性眼内炎であるが,細菌性眼内炎も転移性眼内炎の25~31%を占めている1,2).いずれも重篤であれば失明率が高い.筆者らは比較的若年で元来健康な成人に,抜歯後に感染性心内膜炎を発症してほぼ同時期に転移性眼内炎を生じ,眼内炎治癒後に硝子体黄斑牽引症候群(vitreomaculartractionsyndrome:VMTS)を発症し,手術療法にて治癒した症例を経験したので報告する.〔別刷請求先〕盛秀嗣:〒573-1191枚方市新町2丁目3番1号関西医科大学枚方病院眼科Reprintrequests:HidetsuguMori,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversityHirakataHospital,2-3-1Shinmachi,Hirakata,Osaka573-1191,JAPAN感染性心内膜炎から転移性眼内炎を発症し,治癒後に硝子体黄斑牽引症候群を発症した1例盛秀嗣山田晴彦石黒利充髙橋寛二関西医科大学枚方病院眼科ACaseofMetastaticEndophthalmitisandSubsequentVitreomacularTractionSyndromeSecondarytoInfectiveEndocarditisHidetsuguMori,HaruhikoYamada,ToshimitsuIshiguroandKanjiTakahashiDepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversityHirakataHospital目的:感染性心内膜炎が原発巣である転移性細菌性眼内炎の症例報告.症例:37歳,女性.抜歯が原因と考えられる感染性心内膜炎のため内科治療中に左眼の視力低下と飛蚊症を自覚した.初診時の左眼の矯正視力は0.15で,前房内に炎症細胞,網膜にRoth斑,滲出斑を認めた.経過から感染性心内膜炎による転移性眼内炎と診断した.血液培養の結果,Streptococcussanguisが検出されたが,薬物治療のみで眼内炎は治癒し,矯正視力は0.7まで回復した.その後左眼に硝子体黄斑牽引症候群を生じ,矯正視力は0.4まで低下したため,硝子体切除術を行い,術後視力は0.7まで回復した.結語:Streptococcussanguisによる感染性心内膜炎が原因であった転移性細菌性眼内炎の報告はまれである.感染性心内膜炎の症例においては眼症状の発現の有無に十分注意する必要がある.Purpose:Toreportacaseofmetastaticendophthalmitisduetoinfectiveendocarditis.Case:A37-year-oldfemalenoticedlossofvisioninherlefteyeandconsultedourclinic.Shehadbeentreatedinthedepartmentofcardiologyforinfectiveendocarditisfollowingtoothextraction.Atthefirstconsultationthebest-correctedvisualacuity(BCVA)inherlefteyewas0.15andtherewerecellsintheanteriorchamber.Severalhemorrhagesandexudatesintheretinawereobservedinbotheyes.Accordingtosystemicsymptomsandophthalmologicfindings,shewasdiagnosedwithmetastaticendophthalmitissecondarytoinfectiousendocarditis.Streptococcussanguiswasfoundinherbloodspecimen.Asshehadalreadybeensystemicallytreatedwithantibioticagents,themetastaticendophthalmitisresolvedandBCVArecoveredto0.7OS.Threeweekslater,vitreomaculartractionsyndromedevelopedinherlefteye,andBCVAdecreasedto0.4OS.Wethenperformedvitrectomyonherlefteye.Postoperatively,BCVAinthelefteyerecoveredto0.7.Conclusion:Metastaticendophthalmitiscausedbyinfectiveendocarditisisrare.Inapatientwhohasendophthalmitiscomplicatedwithendocarditis,metastaticendophthalmitiscanresult.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(3):411.414,2011〕Keywords:感染性心内膜炎,細菌,転移性眼内炎,緑色レンサ球菌,硝子体黄斑牽引症候群.infectiveendocarditis,bacillus,metastaticendophthalmitis,Streptococcussanguis,vitreomaculartractionsyndome.412あたらしい眼科Vol.28,No.3,2011(104)I症例患者:37歳,女性.初診日:2009年2月24日.主訴:左眼視力低下,飛蚊症.既往歴・家族歴:特記すべき事項なし.現病歴:2008年9月に歯科で抜歯を受けたあと,12月から発熱・関節痛を認め,抗菌薬を処方され内服したが軽快しなかった.発熱が持続し,全身倦怠感が続くため2009年2月23日関西医科大学枚方病院総合診療科を受診した.感染性心内膜炎が疑われたため,同日循環器内科にて心エコー検査の結果,感染性心内膜炎と診断され,CCU(集中治療室)に即日入院となった.入院日に左眼の視力低下および飛蚊症を訴えたため,翌日の2月24日に当科を受診した.眼科初診時所見:視力は右眼0.3(1.5p×sph.3.00D(cyl.1.25DAx10°),左眼0.05(0.15p×sph.1.00D(cyl.3.25DAx10°)であった.眼圧は右眼16mmHg,左眼15mmHg.前眼部は,角膜は両眼ともに透明平滑であったが,前房には右眼に浮遊細胞を少数,左眼に浮遊細胞をやや多数認めた.虹彩,隅角,中間透光体は両眼ともに異常所見を認めなかった.両眼の眼底に視神経乳頭の発赤・腫脹と多数の網膜滲出斑およびRoth斑,左眼の黄斑部には内境界膜下出血を認めた(図1).全身所見として感染性心内膜炎に特徴的なJaneway斑点,Osler結節と四肢の関節痛を認めた.また,僧帽弁閉鎖不全に特徴的な心尖部の収縮期雑音を聴取した.血液検査では白血球数10,700/ml(好中球80.2%)と増多があり,CRP(C反応性蛋白)は6.2mg/dlと強陽性を呈した.心エコーでは僧帽弁前尖に10mmを超える大きさの細菌性疣贅を認め,心ドップラーエコーでは軽度の僧帽弁閉鎖不全(図2)を認めた.脳のMRI(磁気共鳴画像)のT1強調画像(図3)では大脳深部白質・右前頭葉,側脳室下角の白質に複数の点状高図1初診時の眼底所見上:右眼.視神経乳頭の発赤腫脹,網膜の滲出斑(白矢印)を認めた.下:左眼.視神経乳頭の発赤腫脹,滲出斑およびRoth斑(黄矢印),さらに黄斑部に滲出斑と内境界膜下出血(白矢印)を認めた.図2心エコー(上)および脳MRI(下)上:僧帽弁前尖に10mm以上の疣贅(白矢印)を認め(右図),心ドップラーエコー(図左)では左室にモザイクパターンを示し,僧帽弁閉鎖不全症の所見を認めた.下:右前頭葉,側脳室下角の白質に複数の点状高信号域を認めた(白矢印).(105)あたらしい眼科Vol.28,No.3,2011413信号域を認め,ラクナ梗塞の所見がみられた.血液培養では後日,口腔内常在菌である緑色レンサ球菌の一種であるStreptococcussanguisが検出された.以上の所見より,眼科的には感染性心内膜炎に伴う両眼の転移性眼内炎と診断した.臨床経過:眼科初診時よりすでに循環器内科にてゲンタマイシンおよびペニシリンGの静脈内投与が行われており,眼内炎症所見も軽微であったことから,これらの薬物治療に追加治療を行うことなく経過観察を行った.眼内炎の所見は徐々に消失し,3月初旬には左眼の矯正視力は0.15から0.7まで改善した.また,僧帽弁部の疣贅と僧帽弁閉鎖不全に対して,3月中旬に循環器外科で僧帽弁形成術が行われ,術後の経過は良好であった.しかし,3月下旬に左眼の視力は0.4と再び低下した.右眼の視神経乳頭の発赤・腫脹は消失し,網膜滲出斑,Roth斑も消失していた.左眼も同様に視神経乳頭の発赤・腫脹,網膜滲出斑,Roth斑・内境界膜下出血は消失していたが,黄斑上膜の発生と網膜皺襞がみられた.2009年6月の左眼の光干渉断層計(OCT)所見では,肥厚した後部硝子体膜が中心窩網膜を牽引しており,一部網膜分離を認めた(図4).これらの所見から続発性にVMTSを生じたと診断した.2009年7月28日,左眼に経毛様体扁平部硝子体切除術と内境界膜.離術を行った.術後経過は良好で,自覚症状も著しく改善した.術後4カ月の左眼のOCT所見では中心窩網膜の牽引は消失し,中心窩陥凹は回復して解剖学的治癒が得られた(図5).同年10月13日の再診時には左眼視力は0.7まで改善し,その後眼内炎やVMTSの再燃をみていない.II考按転移性眼内炎は眼以外の部位にある全身の感染巣から血行性に真菌や細菌が眼内に転移し発症する疾患である.転移性眼内炎のうちで起炎菌として最も多いのは,Candidaalbi図3初診3週間後の眼底所見(上:右眼,下:左眼)両眼とも視神経乳頭の発赤・腫脹,網膜滲出斑・Roth斑は消失していた.左眼の黄斑部では内境界膜下出血は吸収していたが,黄斑上膜と網膜皺襞を認めた.図5術後4カ月の右眼OCT所見中心窩網膜の牽引は消失し,網膜形態は回復した.図4術前1カ月の右眼OCT所見肥厚した後部硝子体膜による中心窩網膜の牽引を認めた.414あたらしい眼科Vol.28,No.3,2011(106)cansで29%と最も多く,つぎにKlebsiella16%,大腸菌13%とグラム陰性細菌が続く3).真菌性眼内炎は悪性腫瘍・膠原病・大手術後・血液透析などの免疫抑制状態や中心静脈高カロリー輸液(IVH)のためのカテーテル留置,ステロイド使用などが要因となり4),経過も細菌に比べ緩慢で両眼性のことが多い2).細菌性転移性眼内炎は原疾患として肝膿瘍が最も多く,ついで尿路感染症が多い.そして起炎菌はグラム陰性菌によるものが多いが,病原性が強いため,一旦発症すれば症状は急激に進行し,経過も早い.片眼性が多く,失明率が高く予後不良の疾患である5).感染性心内膜炎に眼内炎を合併する報告例はわが国で数例6~8)と少なく,検出された菌はそれぞれB群溶連菌,肺炎球菌,B群レンサ球菌であった.眼内炎の起炎菌としてStreptococcussanguisが検出された症例は,わが国では白内障術後に認めた外因性眼内炎の1例9)があるのみで,転移性眼内炎をひき起こした症例は筆者らが検索した限りでは本報告が初めてであった.両眼ほぼ同時に発症しているという点も本症例は非常にまれな症例であったといえる.Streptococcussanguisは口腔内常在菌であるため,感染性心内膜炎の起炎菌としては最もよくみられる菌10)で,抜歯後に発症しやすいという点で本症例は典型的であった.全身所見として,心エコーにより疣贅が証明され,感染性心内膜炎の診断基準であるDuke基準10)の大項目2個を満たし,かつJaneway斑,Osler結節,ラクナ梗塞などの塞栓症や38℃以上の発熱を認めたためDuke基準の小項目3個を満たした.これらのことから感染性心内膜炎の診断がほぼ確定しているところに抜歯後の発熱という典型的な病歴から感染性心内膜炎の診断が迅速かつ的確に可能であった.その後に当科を受診し,前眼部に軽度の炎症所見と網膜にRoth斑と滲出斑を認めたことから,眼科的にも感染性心内膜炎を原発巣とする転移性眼内炎と早期に確定診断が可能であった.転移性眼内炎は早期診断・早期治療が視力予後に大きく影響する.転移性眼内炎の起炎菌の同定には時間がかかることが多く,治療としてはこれらをカバーする広域の抗菌薬の全身投与および局所投与,硝子体手術などがある.しかし実際には,感染性眼内炎の診断やその原発巣の同定には苦慮することも多く,失明率は高いことが認識されている2).本症例では感染性心内膜炎と診断した後すぐに抗生物質の静脈内投与が開始されていたこと,眼内炎が常在菌で弱毒性グラム陽性菌によるもので,細菌の網膜浸潤が起こりかけた早期に発見できたことなどから良好な予後を得た.VMTSに対しては,手術治療を行って黄斑上膜と内境界膜を.離することで解剖学的治癒と視機能回復を得ることができた.VMTSを生じた原因として,以下の発生機序を考察した.まず最初に,網膜内への細菌の浸潤により局所的炎症を生じ,そのために病巣での網膜血管壁の障害がひき起こされて内境界膜下血腫を生じた.その後局所的な炎症や内境界膜下血腫が消失する過程で黄斑部に接していた後部硝子体皮質に何らかの細胞増殖が起こって硝子体皮質が肥厚し,その結果黄斑上膜が発生した.続いて硝子体ゲルの液化変性を生じて部分的後部硝子体.離を生じたため,黄斑部への牽引がかかりVMTSを生じたと推察した.Canzanoら11)も続発性硝子体黄斑牽引症候群を生じた症例報告のなかで筆者らと同様の考察を行っているが,今後,詳しい組織学的検討や病態解明が期待される.本症例は典型的な病歴や症状をもって内科的診断が迅速に可能で,診断がついたうえで眼科を受診したため,眼科的診断は比較的容易であった.かつ起炎菌が弱毒であったため,速やかに治癒して良好な視力予後を得た.このように全身的な感染症の徴候に眼症状を伴う場合には,転移性眼内炎の可能性が常にあることを忘れず,血液培養などによって原因菌を特定しつつ,迅速に眼科での診断を行って集学的治療を行うことが視力予後に大きく影響することを認識する必要がある.文献1)藤関義人,高橋寛二,松村美代ほか:過去5年間の内因性細菌性眼内炎の検討.臨眼56:447-450,20022)武田佐智子,馬場高志,井上幸次ほか:肝膿瘍由来Citrobacterfreundiiによると考えられる両眼眼内炎の1例.あたらしい眼科24:1261-1264,20073)村瀬裕子,吉本幸子,上田幸生ほか:B群b溶連菌による転移性眼内炎を合併した糖尿病の1例.糖尿病42:215-219,19994)山田晴彦,星野健,松村美代:アトピー性皮膚炎患者に発症した内因性感染性眼内炎の1例.臨眼62:1667-1671,20085)秦野寛,井上克洋,北野周作ほか:日本の眼内炎の現状(発症動機と起炎菌).日眼会誌95:369-375,19916)小林香陽,藤関義人,高橋寛二ほか:B群溶連菌による心内膜炎が原因であった内因性転移性眼内炎.日眼会誌110:199-204,20067)宮里均,荒川幸弘,富間嗣勇ほか:肺炎球菌性心内膜炎により転移性眼内炎,恥骨結合炎をきたした一例.沖縄医学会雑誌40:65-67,20028)妹尾健,西上尚志,真鍋憲市ほか:両眼の細菌性眼内炎を合併した感染性心内膜炎の1例.JCardiol39:171-176,20029)中村秦介,萬代宏,古谷朱美ほか:Streptococcussanguisによる白内障術後眼内炎の2例.眼臨97:80,200310)宮武邦夫,赤石誠,石塚尚子ほか:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン.循環器病の診断と治療に関するガイドライン.2007年度合同研究班報告書,p1-46,200811)CanzanoJC,ReedJB,MorseLS:VitreomaculartractionsyndromefollowinghighlyactiveantiretroviraltherapyinAIDSpatientswithcytomegalovirusretinitis.Retina18:443-447,1998

シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの連続装用が前眼部環境に及ぼす影響と安全性の検討

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1(93)17010910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(12):17011707,2008c〔別刷請求先〕白石敦:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部感覚機能医学講座視機能外科学分野Reprintrequests:AtsushiShiraishi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,EhimeUniversity,454Shitsukawa,Toon,Ehime791-0295,JAPANシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの連続装用が前眼部環境に及ぼす影響と安全性の検討白石敦原祐子山口昌彦大橋裕一愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野EvaluationofOcularSurfaceInuenceandSafetyinExtendedWearofNewlyApprovedSiliconeHydrogelContactLensAtsushiShiraishi,YukoHara,MasahikoYamaguchiandYuichiOhashiDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,EhimeUniversity1週間連続装用のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(SHCL)がわが国で認可・発売されたが,連続装用については,まだ安全性を懸念する声も多い.そこで,SHCL連続装用の安全性を検証する目的で,1日使い捨てソフトコンタクトレンズ(SCL),頻回交換型SCL,1カ月交換の終日装用SHCLとの間で多角的な比較評価試験を行った.結果として,実用視力,前眼部所見ならびに涙液安定性に関する1週間連続装用SHCLの評価は,終日装用された他の従来型素材レンズ群と同等であった.一方,角膜厚に関しては,1カ月交換の終日装用SHCLと同様,変化は認められず,従来型素材レンズの終日装用で有意の増加がみられたのとは対照的であった.使用後のレンズの一部からコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が検出されたが,細菌量はいずれも臨床的に問題のないレベルであり,細菌の検出率(陽性率)は1カ月交換の終日装用SHCLと比較して有意に低かった.他方,付着脂質量は従来素材のSCLよりも有意に多く,逆に,付着蛋白質量は,1日使い捨てSCLよりも有意に少なく,1カ月交換の終日装用SHCLよりも多かった.今回の検討から,新しい1週間連続装用のSHCLの安全性,有用性は,従来素材のSCLあるいは終日装用SHCLと遜色ないものと考えられる.Aone-weekextended-wearsiliconehydrogelcontactlens(1wSHCL)hasbeenmarketedinJapan,thoughnegativeopinionsremainregardingthesafetyofextendedwear.Thisstudywasdesignedtoexaminetheclinicalsafetyandutilityofthe1wSHCLincomparisonwiththreedailywearcontrols:adailydisposablesoftcontactlens(ddSCL),a2-weekreplacementsoftcontactlens(2wSCL)oramonthlysiliconehydrogelcontactlens(mSHCL).Nosignicantdierenceswereobservedbetween1wSHCLandthecontrolgroupsintermsofvision,slitlampndingsandtearstabilityanalysis.SignicantcornealswellingswereobservedinthetwohydrogelCLgroups,butnotinthetwoSHCLgroups.SomecoagulasenegativeStaphylococci(CNS)speciesweredetectedinbacteriologicalexaminationofwornlenses,thoughallwerefarbelowbacterialinfectionlevel.Thebacterialpositiveratiointhe1wSHCLgroupwassignicantlylowerthanthatinthemSHCLgroups.Asforlensdeposits,bothSHCLsabsorbedsignicantlymorelipidsthandidtheddSCLgroup.The1wSHCLabsorbedsignicantlylessproteinthandidtheddSCL,butsignicantlymorethanthemSHCL.Theseresultsindicatethatextendedwearofthis1wSHCLisassafeandusefulasexistingdailywearSHCLsorSCLs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(12):17011707,2008〕Keywords:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ,連続装用,角膜肥厚,涙液安定性,細菌,脂質,蛋白質.siliconehydrogelcontactlens,extendedwear,cornealswelling,tearstability,bacteria,lipids,proteins.———————————————————————-Page21702あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(94)はじめに連続装用コンタクトレンズ(CL)は,CLユーザーにとって利便性が高いため,潜在的なニーズはかなりあるが,終日装用レンズに比較して,合併症,特に細菌性角膜炎の発生頻度が高いとの報告が多数みられる点で,眼科医は処方に消極的な傾向がある1,2).近年,高い酸素透過性と光学特性を有し,蛋白質の付着しにくいシリコーンハイドロゲル(siliconehydrogel:SH)CLが登場した.これを受けて欧米では,1カ月連続装用SHCLの安全性が臨床的に検証され35),生活様式の面からオーバーナイト装用を必要とするユーザーを中心に定着しつつある.一方,連続装用期間は欧米より短いものの,1週間連続装用のSHCLがわが国においても承認・発売された.そこで,この新しいSHCLの1週間連続装用による安全性を,従来素材の終日装用ソフトCL(SCL),および終日装用SHCLを対照に,種々の角度から比較検討した.I対象および方法1.対象2007年1月より10月まで愛媛大学病院眼科にて募集したSCL既装用の成人ボランティア60名を対象に以下に述べる比較試験を行った.しかし,表1に示すように被験レンズの1週間の連続装用の適性予備試験においては8名(14.7%)が不適ないし本人理由により試験に不参加となり,1名が検査期間中に麦粒腫を発症,1名が検査不備のため本試験を中止した(表1).結果,検査を完了した計50例100眼(男性30例,女性20例,平均年齢23.2±SD1.8)について統計学的に検討を行った.2.コンタクトレンズ被験レンズとして1週間連続装用SHCL(BalalconA,含水率36%,以下PV),対照レンズとして1日使い捨てSCL(EtalconA,含水率58%,以下OA),2週間終日装用SCL(HEMA,含水率39%,以下MP)および1カ月終日装用SHCL(LotoralconA,含水率24%,以下OX)を用いた.3.方法試験は臨床検査と非臨床検査とに分けて行った.臨床検査では,レンズの使用期間の違いに基づいて試験Aと試験B表1応募者・参加者と中止理由人数理由応募者60予備試験不適8SPK1,本人理由7本試験参加者52本試験中止2麦粒腫1,角膜の古疵1終了者50SPK:点状表層角膜症.表2臨床試験デザイン症例数試料臨床検査名称素材FDAGroup製造元使用方法試験期間(日)使用日数(1枚当り)使用枚数(サイクル)装用時間(1日当り)ケアシステム試験A30PV(ピュアビジョンR)SH3B&L連続装用57571─MP(メダリストプラスR)ハイドロゲル1B&L終日装用57571>6hエーオーセプトOA(ワンデーアキュビューR)ハイドロゲル4J&J終日装用57157>6h─試験B20PV(ピュアビジョンR)SH3B&L連続装用2028574─OX(O2オプティクス)SH1Ciba終日装用263126311>6hエーオーセプト試験APV,OA,MPを3種交使用(不同)PVMPOA試験BPV,OXを交使用(不同)PVPVPVPVOX1W1W1W1W1Month最終週のレンズ回収レンズ回収:72時間以上注)1Week1W1Wレンズ回収レンズ回収最終日のレンズを回収レンズ止レンズ止レンズ止レンズ止図1試験概要のシェーマ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081703(95)の2群に分け,それぞれクロスオーバー法で実施した.試験Aでは,被験レンズ(PV),および対照レンズとして従来素材のSCLの2週間終日装用レンズ(MP)と1日使い捨て(OA)レンズを,それぞれの用法に準じ,1週間ずつ使用した.また,試験Bでは,被験レンズとSHCL終日装用(OX)の対照レンズとをそれぞれの用法に準じ,1カ月ずつ使用した(表2).終日装用は1日6時間以上の装用とし,ケアシステム(MPとOXのみ)には過酸化水素消毒を使用した.予備試験と本試験の間,および本試験での被験レンズと対照レンズの間には,72時間以上の裸眼でのwash-out期間を設けた(図1).非臨床検査では,検査日に装用していたレンズを回収し,右眼のレンズを細菌検査に,左眼のレンズを蛋白質/脂質定量検査に供用した.ただし,蛋白質および脂質の付着は装用中の蓄積によると考えられるため,本来の使用期間より短いMPに関しては蛋白質/脂質定量検査から除外した.4.評価基準a.臨床検査①細隙灯顕微鏡検査:試験レンズ装用前,および試験最終日にレンズを外した直後の前眼部所見を観察した.角膜上皮障害に対してはフルオレセイン染色を用いて拡大率12倍にて観察し,上,下,左,右,中央の5象限の染色スコアを03点(角膜全体では015点)で評価した.②実用視力検査:装用開始直後と試験最終日に試験レンズ装用下での実用視力測定を行った.実用視力測定は,海道らの方法に則り1分間の平均視力を遠方視力(FVA),対数視力(logMAR)として評価し,測定開始時の視力に対する実用視力の比を視力維持率(VMR)として評価した6).③角膜厚検査:連続装用では酸素供給不足から起こる角膜浮腫の発生が懸念される.そこで,装用開始前および試験最終日にレンズを外した直後の角膜中心厚をPentacam(Oculus社)で測定した.④涙液検査:装用開始直後と試験最終日にTearStabilityAnalysisSystem(TSAS,Tomey社)を用いてBreak-UpIndex(BUI)を測定し,レンズ上の涙液の安定性を評価した.裸眼でのBUIは初回検査日に測定した.b.非臨床検査(回収レンズの検査)①微生物検査:試験終了時にレンズ(右眼)を回収し,(財)阪大微生物病研究会(吹田市)にて,細菌の同定・定量を行った.検査法をフローチャートに示す(図2).②蛋白質定量:試験終了時にレンズ(左眼)を回収し,(株)東レリサーチセンター生物科学第2研究室(鎌倉市)にて,付着蛋白質ないし脂質の分析・定量を行った.ただし,全数ではなく,構成比を考慮してレンズごとに1017検体数を抜粋して実施した.蛋白質の測定は検体レンズを加水分解し,ニンヒドリン比色法によるアミノ酸分析法にて行った.具体的には,検体に6mol/lの塩酸400μlを添加し,真空封圧下110℃で22時間加水分解した.ついで,6mol/l塩酸を別の試験管に移し,減圧乾固した後,水100μlに溶解,フィルター濾過後,アミノ酸分析計(日立L-8500形)で測定した.こうして得られたアミノ酸総量を検体レンズ1枚当たりの蛋白質量とし検体(右眼レンズケースレンズ液)菌ビーズり試験管に移すボルテックス1min菌生理塩水で希×10-1,10-2原液の残り全量発育菌の同定35℃,24~48時間培養菌増殖時には5%ヒツジ血液加TrypticaseSoyAgarに再分離35℃,1~7日間培養臨床用チオグリコレート培地原液および各希釈検体50??5%ヒツジ血液加TrypticaseSoyAgar35℃,24~48時間培養集落数をカウントし,サンプル中の菌数(CFU/m?)に換算発育菌を同定★直接分離培養,増菌培養ともに菌発育を認めない場合は“陰性”★?????????,CNS,?????????????,????????spp.を指定菌として同定指定菌以外は詳細な同定は行わない直接分離培養増菌培養図2微生物検査方法(提供:阪大微生物病研究会坂本雅子氏)———————————————————————-Page41704あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(96)た.③脂質定量:検体レンズから溶媒抽出された脂質をメチルエステルに変換するガスクロマトグラフィー(GC)定量分析にて測定した.具体的には,検体にクロロホルム/メタノール(1/1)2mlを添加して振盪し,溶媒抽出操作を行った.溶媒を除去した抽出脂質試料をメタノリシスするため,ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1mg/mlメタノール溶液を200μl,および5%塩酸・メタノール溶液1mlを加え,70℃で3時間加熱反応させて,試料中の脂肪酸および脂肪酸エステルを脂肪酸メチルエステルに変換した.ついで,ヘキサン1mlを加えてヘキサン層を回収し,ペンタデカン酸メチル0.01%クロロホルム溶液0.2mlを加えて再溶解したものをガスクロマトグラフHP5890型(HewlettPackard社)にてGC分析した.こうして得られた脂肪酸総量を検体レンズ1枚当たりの脂質量とした.II結果1.臨床検査a.前眼部所見試験Aにおいては,角膜上皮障害の発現眼数はOA20眼,MP22眼,PV23眼であり,角膜上皮障害発症眼における平均スコアでもOA1.30点,MP1.27点,PV1.52点と有意差は認めなかった.試験Bにおいては角膜上皮障害の発現眼数がPV22眼,OX8眼とOXにおいて角膜上皮障害発症眼が有意に少なかったが,角膜上皮障害発症眼における平均スコアはPV1.14点,OX1.13点と障害の程度に差は認めなかった.スコア3点以上の上皮障害を認めた症例はなく,1象限でスコア2点を認めた症例は試験AではMP1眼,試験BではPV2眼であった(表3).試験期間中に問題となる角結膜上皮障害,感染症などの前眼部所見は認めなかった.b.実用視力試験A,Bを通じて,レンズ装用下での遠方視力(FVA),対数視力(logMAR),および視力維持率(VMR)ともに,装用開始時と試験最終日との間で,いずれのレンズにおいても有意差はなかった(表4).c.角膜厚試験Aにおいて,従来素材のSCL(MP,OA)で有意な角膜厚の増加を認めた(MP:p<0.05,OA:p<0.01)が,表3角膜上皮障害SPK発現症例数(眼数)発現症例の平均Grade数(/眼)Grade2症例(眼数)試験AOA1W201.300MP1W221.271PV1W231.520試験BPV4W221.142OX1M81.130SPK:点状表層角膜症.表4実用視力PV(n=100)OA(n=60)MP(n=60)OX(n=40)装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後実用視力(FVA)0.94750.97771.08301.09080.92810.96720.99901.0377p値0.240.800.160.37実用視力(LOG)0.04040.03160.01920.04020.03530.02750.02730.0025p値0.500.100.710.19視力維持率(VMR)0.92940.94820.96870.96230.94380.94830.95280.9483p値0.140.150.480.53500550600650552.38角膜厚(μm)554.25556.18567.67装用前装直後570.57559.90OAMPPV**p<0.01*p<0.05NS図3角膜厚検査(1週間,n=60眼)角膜厚(μm)装用前装直後NSNS500550600650557.43552.18567.48565.80PVOX図4角膜厚検査(4週間,n=40眼)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081705(97)SHCLでは有意な増加は認められなかった(PV:p=0.48).試験Bにおいて,SHCLの1週間連続装用(PV1週間×4サイクル)と終日装用(OX)との間に有意差はなかった(図3,4).d.TSAS(BUI)装用直後(ベースライン)および試験最終日のBUI値は,いずれのレンズにおいてもSCL装用前の裸眼値よりも有意に低下していた(p<0.001).レンズごとにベースラインと試験最終日とのBUI値の比較では,PVで1週間後(試験A)に有意に低下していたが,4週間後(試験B)ではベースラインとの間に差はなかった(図5,6).2.非臨床検査a.微生物検査黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS),緑膿菌,セラチアについて同定・定量を行い,これら以外の菌は指定外菌とした.A,B両試験の全レンズ検体からはCNSが3種類(Staphylococcusepidermidis,Staphylococcuschromogenes,Staphylococcuswarneri)5例同定された.指定外菌が8例検出された.指定外菌も含めた検出頻度(陽性率)はレンズ間に有意な差が認められた(p<0.05).ただし,いずれも100CFU/ml以下であり,一般的にCNSで起炎性をもつとされる105CFU/mlのレベルの菌量7)を大きく下回るものであった(表5).b.蛋白質定量レンズ検体1枚当りの平均蛋白質量を18種類のアミノ酸表5検体レンズから分離培養された微生物試料名検体数Staphylococcus指定外菌(SA,PA,SM,CNS以外)Totalepidemidischromogeneswarnerl陽性検体数陽性率OA30陽性検体数微生物量1<20CFU/ml1100CFU/ml4<20CFU/ml620.0%MP30陽性検体数微生物量1>20CFU/ml13.3%PV50陽性検体数微生物量1<20CFU/ml1<20CFU/ml24.0%OX20陽性検体数微生物量4<20CFU/ml420.0%統計/平均13031181310.0%c20.05=7.815,p=0.0288<0.05.BUI(%)装用開始時装用期間後***p<0.001*p<0.0510002040608073.9053.0553.4456.8851.8350.4350.47裸眼OAMPPV図5BUI検査(1週間,n=60眼)***p<0.001***p<0.001***p<0.001050100150200250300050100150200250300OAPVOX平均蛋白質量(μg/枚)OAPVOX平均脂質量(μg/枚)NS図7レンズ付着蛋白質量・脂質量()用用眼図6BUI検査(4週間,n=40眼)———————————————————————-Page61706あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(98)の総量として計測したところ,OAが260.31μg(n=12,SD=129.06),PVが31.11μg(n=17,SD=14.61),OXが3.36μg(n=10,SD=2.07)となり,OAが他のレンズに比べ有意に高かった(各p<0.001).PVはOAよりも有意に低く,OXよりも有意に高かった(各p<0.001).c.脂質定量レンズ検体1枚当りの平均脂質量を6種類の脂肪酸の総量として計測したところ,OAが3.06μg(n=10,SD=1.33),PVが11.48μg(n=13,SD=1.93),OXが10.25μg(n=10,SD=1.80)となった.連続装用のPVと終日装用のOXとの間に差はなかったが,両SHCLともOAと比較して有意に多かった(p<0.001)(図7).III考察CLの装用に伴って,角膜は種々の非生理学的な環境に晒されるが,このなかで,最も大きな課題は酸素供給の低下である.これを解決するために種々の素材の開発が行われてきたが,現在の処方の主流である従来素材のSCLの場合には閉瞼時の酸素供給量を超える程度のレベルであり,オーバーナイト装用では低酸素状態により角膜浮腫をきたすとの報告もみられる8,9).また,低酸素環境下では角膜上皮に細菌が付着しやすくなるという事実も報告されており10),これを裏付けるように,従来素材のSCLの連続装用では,終日装用に比較して感染性角膜炎の発生頻度が高いとされている1,2).このように,一般にCLの連続装用は感染発症の危険因子と考えられている10,11)が,近年登場したSHCLがその画期的な酸素透過性により12,13),この課題を克服できるか否かは興味あるところである.本試験においては,レンズの酸素透過性を最も鋭敏に反映する指標として角膜厚を取り上げ,CL装用前後の変動を比較した.その結果,従来素材のSCLの終日装用とは異なり,連続装用されたPVにおいては検査期間中(4週間)有意な角膜厚の増加は認められなかった.終日装用のOXにおいても同様の結果であり,SHCLの優れた酸素透過性が改めて実証される結果となった.これらの成績は海外における報告14)ともよく一致しており,SHCLでは,終日装用のみならず連続装用においても,角膜厚の増加をきたさないレベルで酸素供給が維持されているものと考えられ,酸素不足による角膜上皮障害の発生も少ないものと推測される.連続装用でつぎに問題となるのがレンズの汚染である.実際,従来素材のSCLに比較してSHCLには細菌が付着しやすいとの報告も少なからずあるため1517),連続装用に伴う細菌付着の実態を明らかにしておくことは重要である.結論から言えば,汚染率は回収レンズ50枚のわずか2枚(4%)と当初の予想をはるかに下回るものであった.検出されたのはいずれもCNSであり,常在細菌叢由来と想定されるが,細菌量はいずれも100CFU/ml以下であり,一般的にCNSの起炎閾値とされる105CFU/mlのレベル7)には達しておらず,臨床的には問題とならない細菌量であった.一方で,菌の検出された頻度(陽性率)をみると,連続装用されたPV,終日装用MPとともに低く,1日使い捨てのOAと1カ月定期交換SHCLのOXにおいて比較的高かった.1日使い捨てのOAでは付着蛋白質量が多いことから,レンズに付着した蛋白質の量が細菌の接着に影響した可能性が考えられ15,16),OXは1カ月の終日装用であったため,使用期間の長さも関連している可能性もあり,追加研究での検討が必要であろう.細隙灯顕微鏡による所見では,いずれのレンズにおいても,試験期間を通して問題となるような眼表面の障害は観察されず,安全性に問題はないと推測される.しかし,試験Bにおいて上皮障害の程度はOXとPV間で有意差はなく軽度の角膜上皮障害ではあったが,終日装用のOXに比較してPVで角膜上皮障害発症眼数が多く認められたことは,連続装用CLではより注意深い経過観察が必要であることを示唆する結果であろう.装用レンズ上の涙液安定性は良好な視機能の維持において重要な因子であるが,本研究でも明らかなように,レンズ装用により低下することは避けられない現象である.涙液安定性をBUIにて評価したところ,装用4週間装用試験(試験B)においてPVはOXと同等の結果を示した.確かに,PVの場合,1週間装用試験(試験A)の装用後に有意な低下がみられ,同時に,PVの連続装用開始の最初の1週間に乾燥感が強いとの意見も少なからずある.実際,今回行った被験者に対するアンケート調査結果でも,PVに関する満足度(1:「低い」,7:「高い」の7段階評価)は,1週間後よりも4週間後のほうが良好で(meanscore:1週間後4.8/4週間後5.7),4週間後の満足度は終日装用で最も高い1日使い捨てOAと同等(5.8:1週間後)であった.すなわち,PVの連続装用の場合,装用後徐々にレンズに慣れて涙液の安定性が改善し,快適に使用できるようになるものと推察される.ただし,BUI値が40%未満の57眼(21.9%)については,その40.4%が乾燥感を訴えており,BUI値40%以上の203眼の26.6%に比較して頻度が高い.よって,ドライアイ症例に対しては,慎重に処方を行う必要があると思われる.結論として,PVの1週間連続装用は,終日装用レンズと同等の安全性と有用性を有すると考えられる.従来素材のSCLによる連続装用でみられるような角膜厚の増加はなく,レンズ自体への細菌付着量,陽性率はともに低いレベルであり,海外における成績16)とよく一致していた.職業的な背景などからCL装用者のニーズは多岐にわたるため,連続装用を希望する患者は少なくない.1週間連続装用SHCLの登場により,CL処方の選択肢は広がったといえるが,その一———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081707方で,患者のコンプライアンスも含めた長期的な安全性に関してはさらなる検証が必要であろう.PVの連続装用のメリットを最大限に生かすために,適切な患者選択と,コンプライアンス遵守に向けた地道な患者指導が不可欠である.文献1)ChengKH,LeungSL,HoekmanHWetal:Incidenceofcontact-lens-associatedmicrobialkeratitisanditsrelatedmorbidity.Lancet354:773-778,19992)日本眼科医会医療対策部:「日本コンタクトレンズ協議会コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査」について.日本の眼科74:497-507,20033)BrennanNA,ColesML,ComstockTLetal:A1-yearprospectiveclinicaltrialofbalalconA(PureVision)sili-cone-hydrogelcontactlensesusedona30-daycontinu-ouswearschedule.Ophthalmology109:1172-1177,20024)LievensCW,ConnorCG,MurphyH:Comparinggobletcelldensitiesinpatientswearingdisposablehydrogelcon-tactlensesversussiliconehydrogelcontactlensesinanextended-wearmodality.EyeContactLens29:241-244,20035)DonshikP,LongB,DillehaySMetal:Inammatoryandmechanicalcomplicationsassociatedwith3yearsofupto30nightsofcontinuouswearoflotralconAsiliconehydrogellenses.EyeContactLens33:191-195,20076)海道美奈子:新しい視力計:実用視力の原理と測定方法.あたらしい眼科24:401-408,20077)宮永嘉隆:細菌─総論(Q&A).あたらしい眼科17(臨増):3-4,20008)HoldenBA,MertzGW:Criticaloxygenlevelstoavoidcornealedemafordailyandextendedwearcontactlenses.InvestOphthalmolVisSci25:1161-1167,19849)SolomonOD:Cornealstresstestforextendedwear.CLAOJ22:75-78,199610)ImayasuM,PetrollWM,JesterJVetal:TherelationbetweencontactlensoxygentransmissibilityandbindingofPseudomonasaeruginosatothecorneaafterovernightwear.Ophthalmology101:371-388,199411)SolomonOD,LoH,PerlaBetal:Testinghypothesesforriskfactorsforcontactlens-associatedinfectiouskera-titisinananimalmodel.CLAOJ20:109-113,199412)RenDH,PetrollWM,JesterJVetal:TherelationshipbetweencontactlensoxygenpermeabilityandbindingofPseudomonasaeruginosatohumancornealepithelialcellsafterovernightandextendedwear.CLAOJ25:80-100,199913)CavanaghHD,LadageP,YamamotoKetal:Eectsofdailyandovernightwearofhyper-oxygentransmissiblerigidandsiliconehydrogellensesonbacterialbindingtothecornealepithelium:13-monthclinicaltrials.EyeCon-tactLens29(1Suppl):S14-16,200314)EdmundsFR,ComstockTL,ReindelWT:CumulativeclinicalresultsandprojectedincidentratesofmicrobialkeratitiswithPureVisionTMsiliconehydrogellenses.IntContactLensClin27:182-187,200015)KodjikianL,Casoli-BergeronE,MaletFetal:Bacterialadhesiontoconventionalhydrogelandnewsilicone-hydrogelcontactlensmaterials.GraefesArchClinExpOphthalmol246:267-273,200816)SantosL,RodriguesD,LiraMetal:Theinuenceofsurfacetreatmentonhydrophobicity,proteinadsorptionandmicrobialcolonisationofsiliconehydrogelcontactlenses.ContLensAnteriorEye30:183-188,200717)BorazjaniRN,LevyB,AhearnDG:RelativeprimaryadhesionofPseudomonasaeruginosa,SerratiamarcescensandStaphylococcusaureustoHEMA-typecontactlensesandanextendedwearsiliconehydrogelcontactlensofhighoxygenpermeability.ContLensAnteriorEye27:3-8,2004(99)***