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視神経炎の病型と臨床像の検討

2017年3月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科34(3):450.454,2017c視神経炎の病型と臨床像の検討白濱新多朗*1蕪城俊克*2澤村裕正*2山上明子*3清澤源弘*4*1JR東京総合病院眼科*2東京大学眼科*3井上眼科病院*4清澤眼科医院ComparisonofClinicalFeaturesamongClinicalEntitiesofOpticNeuritisShintaroShirahama1),ToshikatsuKaburaki2),HiromasaSawamura2),AkikoYamagami3)andMotohiroKiyosawa4)1)DepartmentofOphthalmology,JRTokyoGeneralHospital,,2)DepartmentofOphthalmology,TheUniversityofTokyo,3)InoueEyeHospital,4)KiyosawaEyeClinic目的:3施設における病型別の視神経炎の臨床像の違いについて検討する.対象および方法:視神経炎と診断された57例84眼を対象として,脳脊髄病変の有無および血液検査の結果から,特発性群,自己抗体陽性群,抗Aquapo-rin-4抗体陽性群(抗AQP4群),多発性硬化症群(multiplesclerosis:MS群)の4群に病型分類した.病型ごとに性別,発症時年齢,罹患眼(両眼・片眼),眼痛の有無,初診時のステロイド治療の有無,自己抗体の陽性率,再発率,再発頻度,経過中最低矯正視力,最終矯正視力を比較した.結果:MS群と抗AQP4群は女性が多かった.特発性群と自己免疫性群は眼痛が多く,抗AQP4群,MS群は眼痛が少なかった.抗AQP4群は他群に比べ経過中最低矯正視力,最終矯正視力ともに低かった.抗AQP4群は脳脊髄病変の有無によらず経過中最低矯正視力,最終矯正視力に差は認めなかった.結論:抗AQP4抗体陽性の場合,脳脊髄病変の有無にかかわらず,経過中最低矯正視力,最終矯正視力ともに,他の視神経炎に比べ不良であると考えられた.Purpose:Toinvestigatedi.erencesinclinicalfeaturesamongclinicalentitiesofopticneuritis.Patientsandmethods:Thisstudyinvolved84eyesof57patientswithopticneuritis,classi.edintofoursubtypes(idiopathic,autoimmunity,aquaporin4antibody,multiplesclerosis)basedonthepresenceorabsenceofcerebrospinaldiseaseandautoantibodiesincludinganti-aquaporin-4antibody(anti-AQP4).Sex,ageofonset,a.ectedeyes,eyepain,autoantibodydetectionrate,presenceofsteroidtherapy,recurrencerate,recurrencefrequency,minimumbest-cor-rected-visualacuity(MVA)and.nalbest-correctedvisualacuity(FVA)wereexamined.Results:Femalescom-prisedthemajorityintheanti-AQP4-positiveandmultiplesclerosisgroups.Eyepainwasfrequentintheidio-pathicandautoimmunitygroups.Eyesintheanti-AQP4-positivegrouphadthepoorestMVAandFVAamongthefourgroups,withnosigni.cantdi.erencesinMVAandFVAregardlessofcerebrospinaldisease.Conclusion:Eyesintheanti-AQP4-positivegrouphadthepoorestMVAandFVAamongthefoursubtypesofopticneuritis〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(3):450.454,2017〕Keywords:視神経炎,抗アクアポリン4抗体,脳脊髄病変,経過中最低矯正視力,最終矯正視力.opticneuritis,aquaporin-4antibody,cerebrospinaldisease,minimumbestcorrected-visualacuity,.nalbestcorrected-visualacu-ity.はじめに視神経炎は視神経に炎症を起こす疾患で,日本人の成人人口10万人に対して年1.6人の割合で発症する疾患である1).原因としては特発性,自己免疫性,抗Aquaporin-4(抗AQP4)抗体陽性視神経炎(視神経脊髄炎を含む),多発性硬化症(multiplesclerosis:MS)などに分類される.過去の視神経炎の視力予後の研究では,1990年代に大規模な前向き研究OpticNeuritisTreatmentTrial(ONTT)が行われ,ステロイドパルス療法は視神経炎の視力の回復を早めるが,最終視力には差がないと報告された2).わが国でも日本神経眼科学会による視神経炎の前向き研究が行われ,同様の結果が報告されている3).しかし,その後,視神経炎の診断の細〔別刷請求先〕白濱新多朗:〒151-8528東京都渋谷区代々木2-1-3JR東京総合病院眼科Reprintrequests:ShintaroShirahama,M.D.,DepartmentofOphthalmology,JRTokyoGeneralHospital,2-1-3Yoyogi,Shibuya-ku,Tokyo151-8528,JAPAN450(144)分化が進んだ.1982年のDuttonらによる抗核抗体高値の視神経炎の報告4)以降,各種の自己抗体陽性の視神経症が報告されてきた5,6).臨床的には特発性視神経炎と酷似しているが,発症機序や副腎皮質ステロイド薬に対する反応性,予後の違いから,自己免疫性視神経症として独立した疾患と考えられている7).さらに2005年にはLennonらにより視神経脊髄炎の原因抗体として抗AQP4抗体が同定され8,9),抗AQP4抗体陽性例の多くは非常に難治性で再発が多く視機能予後は不良とされている10).これまでの報告では自己免疫性視神経症と抗AQP4抗体陽性視神経症11)の臨床像の比較はみられる.しかし多群間での比較の報告は少ないのが現状である.そこで今回,筆者らは視神経炎の病型を特発性群,自己抗体陽性群,抗AQP4抗体陽性群,MS群に分類し,臨床像の違いを検討したので報告する.I対象および方法対象は2002.2013年に東京大学医学部附属病院,井上眼科病院,清澤眼科医院で視神経炎と診断された57例84眼(男性13例21眼,女性44例63眼,平均年齢42.1±16.6歳)である.視神経炎患者は,視神経炎の診断のために対光反射,視力検査,視野検査,細隙灯顕微鏡検査,眼底検査のほか,全例で頭部MRI検査を施行した.頭蓋内病変や神経症状がみられる症例では神経内科を受診し,多発性硬化症や視神経脊髄炎の有無を確認した.また視神経炎の病型診断のための血液検査として抗AQP4抗体,自己免疫検査(抗核抗体,抗サイログロブリン抗体,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体)を施行した.抗AQP4抗体測定はCell-basedassay(CBA)法,またはEnzyme-linkedimmunosorbentassay(ELISA)法のいずれかを用いた.なお,抗AQP4抗体が測定できなかった症例は本検討からは除外した.視神経炎の病型分類は4群に分類した.抗AQP4抗体が陽性のものを抗AQP4群,MRIで脳脊髄病変を認め,神経内科で多発性硬化症と診断されたものをMS群,抗AQP4眼として検討した.II結果症例の割合は,特発性群は17例20眼(30%),自己抗体陽性群は12例17眼(21%),抗AQP4群は23例39眼(40%),MS群は5例8眼(9%)であった.発症時年齢を図1に示す.発作時年齢は初回発作時の年齢とした.MS群で平均31歳と若年,抗AQP4群で平均50歳と高齢であったが,4群間で有意差は認めなかった(Gen-eralizedestimatingequation,p>0.05).男女比,罹患眼,眼痛の有無,発症後経過観察期間を表1に示す.男女比は,特発性群では性差は少なかったが,自己抗体陽性群,抗AQP4群は女性が多く,MS群は全例が女性であった(chi-squaretest,p>0.05).罹患眼(両眼性とは同時発症例だけでなく,経過観察中に他眼に発症した場合も含む)は,特発性群は片眼性(82%)が多く,抗AQP4群(61%),MS群(60%)は両眼性が多い結果であった(chi-squaretest,p<0.05).眼痛の有無は,特発性群(71%),自己抗体陽性群(58%)に眼痛を多く認めたが,抗AQP4群(39%),MS群(20%)は少ない結果であった(chi-squaretest,p<0.05).発症後経過観察期間は特発性群3.4±4.2年,自己抗体陽性群2.5±3.0年,抗AQP4群6.1±5.6年,MS群6.5±8.0年で4群間に有意差を認めなかった(One-factorANOVA,p>0.05).初診時のステロイド治療の有無を表2に示す.特発性群17例中3例(18%),自己抗体陽性群12例中4例(33%)抗AQP4群23例中5例(22%),MS群5例中1例(20%),であった.初診時のステロイド治療の有無は4群間で有意差を認めなかった(chi-square,p>0.05).各種自己抗体の陽性率を表3に示す.自己抗体陽性群は抗807060発症時年齢抗体以外の自己抗体のいずれかが陽性であったものを自己抗体陽性群(自己抗体は抗核抗体,抗サイログロブリン抗体,4030抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗20体と定義した),上記3群のいずれにも該当しないものを特発性群として,この4群について後ろ向きに検討した.病型ごとに発症時年齢,性別,罹患眼(両眼・片眼),眼痛の有無,発症後経過観察期間,初診時のステロイド治療の有無,自己抗体の陽性率,再発率,再発頻度,経過中最低矯正視力,最終矯正視力を比較した.本検討で視神経炎の再発は対光反射,視力検査,視野検査,眼底検査,頭部MRI検査の結果を基に総合的に判定した.また,両眼性の場合は1例250100特発性群自己抗体陽性群抗AQP4群MS群表1性別,罹患眼(片眼性,両眼性),眼痛の有無,発症後経過観察期間特発性群自己抗体陽性群抗AQP4群MS群性別(M/F)7/104/82/210/5片眼性/両眼性14/37/57/162/3眼痛あり/なし12/57/59/141/4発症後経過観察期間(年)3.4±4.22.5±3.06.1±5.66.5±8.0特発性群,自己抗体陽性群,抗Aquaporin-4群(抗AQP4群),multiplesclerosis群(MS群)の性別,罹患眼(片眼性,両眼性),眼痛の有無,発症後経過観察期間を表す.いずれも4群間で有意差を認めなかった.表2初診時のステロイド治療の有無特発性群自己抗体陽性群抗AQP4群MS群初診時のステロイド治療の有無3/17(18%)4/12(33%)5/23(22%)1/5(20%)特発性群,自己抗体陽性群,抗Aquaporin-4群(抗AQP4群),multiplesclerosis群(MS群)の初診時のステロイド治療の有無を表す.4群間で有意差を認めなかった(chi-square,p<0.05).表3各種自己抗体陽性率自己抗体陽性群抗AQP4群MS群抗核抗体8/12(67%)8/23(35%)1/5(20%)甲状腺抗体8/12(67%)4/23(17%)1/5(20%)SS抗体1/12(8%)8/23(35%)0/5(0%)自己抗体陽性群,抗Aquaporin-4群(抗AQP4群),multiplesclerosis群(MS群)の抗核抗体,甲状腺抗体,SS抗体の陽性率を表す.甲状腺抗体は抗サイログロブリン抗体または抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が陽性であった症例,SS抗体は抗SS-A抗体または抗SS-B抗体が陽性であった症例の割合を表す.核抗体,甲状腺抗体が67%と多く,SS抗体が8%で陽性であった.それに対し,抗AQP4群は,抗核抗体,SS抗体がともに35%で陽性で比較的多く,甲状腺抗体は17%で陽性であった.MS群は,自己抗体陽性例は少ない結果であった.再発率,再発頻度を表4に示す.再発率は特発性群17例中6例(35%),自己抗体陽性群12例中3例(25%),抗AQP4群23例中14例(61%),MS群5例中2例(40%)であった.再発率は4群間で有意差を認めた(chi-square,p<0.05).また抗AQP4群は自己抗体陽性群と比較して再発率が有意に高かった(chi-square,p<0.05).再発頻度は1年以上経過観察できた症例を対象に検討を行った.特発性群0.42±0.37(回/年),自己抗体陽性群0.56±0.44(回/年)抗AQP4群0.44±0.22(回/年),MS群0.66±0.50(回/年),であった.再発頻度は4群間で有意差を認めなかった(One-factorANOVA,p>0.05).経過中最低矯正視力,最終矯正視力は0.01未満,0.01以上0.1以下,0.15以上0.6以下,0.7以上に分類し検討した.経過中最低矯正視力は複数回発作を起こしている場合はすべての発作のなかでもっとも低い視力を最低矯正視力と定義した.経過中最低矯正視力を図2に示す.経過中最低矯正視力が0.1以下の割合は,特発性群,自己抗体陽性群は50%,抗AQP4群で78%,MS群で28%と各病型の間で有意差を認めなかった(Generalizedestimatingequation,p>0.05).抗AQP4群は他の3群と比較して経過中最低矯正視力が不良であった(Generalizedestimatingequation,p<0.05).最終矯正視力を図3に示す.最終矯正視力は0.1以下の割合は特発性群で27%,自己抗体陽性群で12%,抗AQP4群で53%,MS群で12%と各病型の間で有意差を認めた(Gen-eralizedestimatingequation,p<0.05).抗AQP4群は他の3群と比較して最終矯正視力が不良であった(Generalizedestimatingequation,p<0.05).抗AQP4群における脳脊髄病変の有無と視力予後を図4,5に示す.経過中最低矯正視力,最終矯正視力について脳脊髄病変あり群となし群に分けて視力を比較したが,どちらも有意差を認めなかった(Generalizedestimatingequation,p>0.05).III考按本検討での各病型の症例の割合は,抗AQP4群が全体の40%と多かったが,本検討に参加したいずれの施設も視神経炎が重症化してから紹介される症例が多いため,抗AQP4群の割合が相対的に多くなったと考えられる.発症時年齢(図3)は4群間で有意差を認めなかったが,特発性群39.0歳,自己抗体陽性群43.8歳,抗AQP4群50.1歳,MS群31.4歳であり,既報と同様の結果となった11.14).男女比(表1)は4群間で有意差を認めなかったが,自己抗表4再発率,再発頻度***特発性群自己抗体陽性群抗AQP4群MS群再発率(%)6/17(35%)3/12(25%)14/23(61%)2/5(40%)再発頻度(回/年)0.42±0.370.56±0.440.44±0.220.66±0.50特発性群,自己抗体陽性群,抗Aquaporin-4群(抗AQP4群),multiplesclerosis群(MS群)の再発率,再発頻度を表す.再発率は4群間で有意差を認めた(*chi-square,p<0.05).抗AQP4群は自己抗体陽性群と比較して有意に再発率が高かった(**chi-square,p<0.05).再発頻度は4群間で有意差を認めなかった(One-factorANOVA,p>0.05).■0.7以上■0.15~0.6■0.01~0.1■0.01未満***100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%特発性群自己抗体陽性性群抗AQP4群MS群(17例20眼)(12例17眼)(23例39眼)(5例8眼)図2経過中最低矯正視力特発性群,自己抗体陽性群,抗Aquaporin-4群(抗AQP4群),multiplesclerosis群(MS群)の経過中最低矯正視力を表す.視力を0.01未満,0.01以上0.1以下,0.15以上0.6以下,0.7以上に分類し検討した.抗AQP4群は他の3群と比較して有意に視力不良であった(Generalizedestimatingequation,p<0.05).100%90%80%70%■0.7以上60%■0.15~0.650%■0.01~0.140%■0.01未満30%20%10%0%脳脊髄病変なし脳脊髄病変あり(9例16眼)(14例23眼)図4経過中最低矯正視力抗Aquaporin-4群(抗AQP4群)を脳脊髄病変なし,脳脊髄病変ありの各群に分けて,各群の経過中最低矯正視力を表す.視力を0.01未満,0.01以上0.1以下,0.15以上0.6以下,0.7以上に分類し検討した.2群間で有意差を認めなかった(General-izedestimatingequation,p>0.05).■0.7以上■0.15~0.6■0.01~0.1■0.01未満***100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%特発性群自己抗体陽性性群抗AQP4群MS群(17例20眼)(12例17眼)(23例39眼)(5例8眼)図3最終矯正視力特発性群,自己抗体陽性群,抗Aquaporin-4群(抗AQP4群),multiplesclerosis群(MS群)の最終矯正視力を表す.視力を0.01未満,0.01以上0.1以下,0.15以上0.6以下,0.7以上に分類し検討した.抗AQP4群は他の3群と比較して有意に視力不良であった(Generalizedestimatingequation,p<0.05).100%90%80%70%■0.7以上60%■0.15~0.650%■0.01~0.140%■0.01未満30%20%10%0%脳脊髄病変なし脳脊髄病変あり(9例16眼)(14例23眼)図5最終矯正視力抗Aquaporin-4群(抗AQP4群)を脳脊髄病変なし,脳脊髄病変ありの各群に分けて,各群の経過中最低矯正視力を表す.視力を0.01未満,0.01以上0.1以下,0.15以上0.6以下,0.7以上に分類し検討した.2群間で有意差を認めなかった(General-izedestimatingequation,p>0.05).体陽性群,抗AQP4群,MS群では女性が多く,既報と同様の結果となった11.14).罹患眼(表1)は4群間で有意差を認め,特発性群,自己抗体陽性群は片眼性,抗AQP4群,MS群は両眼性が多い結果で既報と同様の結果となった11.14).眼痛の有無(表1)は4群間で有意差を認め,特発性群,自己抗体陽性群で眼痛が多く,抗AQP4群,MS群で眼痛が少ない結果であった.特発性群,自己抗体陽性群,MS群は既報と同様の結果であった11.13).抗AQP群は眼痛が少ない結果で既報と異なっていたが10,14),本検討では受診時にすでに治療が始められていた症例を含んでいたためと考えられる.再発率(表4)は4群間で有意差を認め,抗AQP4群の再発率が61%と高かった.とくに抗AQP4群は自己抗体陽性群と比較して再発率が有意に高く,既報と同様の結果となった11).経過中最低矯正視力(図2),最終矯正視力(図3)では抗AQP4群は他の3群と比較して有意に視力不良であった.この結果は,抗AQP4群が4病型のなかでもっとも視力予後が不良な病型であることを示している.つまり,抗AQP4群は視力予後が不良であることに加え,両眼性で再発率が高いことを考慮すると,著しく視機能を障害する疾患であるといえる.さらに本検討では,抗AQP4群の経過中最低矯正視力,最終矯正視力について,脳脊髄病変あり群となし群に分けて視力を比較した(図4,5)が,どちらも有意差を認めなかった.この結果は,抗AQP4群では脳脊髄病変の有無は経過中最低矯正視力,最終矯正視力ともに影響を及ぼさないということを示している.つまり,抗AQP4抗体陽性であれば,脳脊髄病変の有無にかかわらず視機能障害が重篤であることを意味する.この結果については症例数が少なかったことも考えられるので,今後さらに症例数を増やして検討する必要があると考える.IV結語視神経炎57例84眼を特発性群,自己抗体陽性群,抗AQP4群,MS群の4病型に分け,臨床像と視力予後を検討した.今検討でも抗AQP4抗体陽性視神経炎は視力予後の悪い病型であった.抗AQP4群のなかで脳脊髄病変の有無は経過中最低矯正視力,最終矯正視力ともに影響を及ぼさないという結果が得られた.この結果は抗AQP4抗体陽性であれば,脳脊髄病変の有無にかかわらず視機能障害が重篤であることを意味しており,視力予後を規定する因子として抗AQP4抗体の存在が非常に重要であることが再確認された.文献1)石川均:日本における特発性視神経炎トライアルの結果について.神経眼科24:12-17,20072)BeckRW,ClearyPA,AndersonMMJretal:Aradom-ized,contorolledtrialofcorticosteroidsinthetreatmentofacuteopticneuritis.NEnglJMed326:581-588,19923)WakakuraM,MashimoK,OonoSetal:Multicenterclini-caltrialforevaluatingmethylprednisolonepulsetreat-mentofidiopathicopticneuritisinJapan.OpticNeuritisTreatmentTrialMulticenterCooperativeResearchGroup(ONMRG).JpnJOpthalmol43:133-138,1994)DuttonJJ,BurdeRM,KlingeleTG:Autoimmuneretoro-bulbaropticneuritis.AmJOphthalmol94:11-17,19825)ToyamaS,WakakuraM,ChuenkongkaewW:Opticneu-ropathyassociatedwiththyroid-relatedauto-antibodies.NeuroOphthalmology25:127-134,20016)HaradaT,OhashiT,MiyagishiRetal:OpticneuropathyandacutetansversemyelopathyinprimarySjogren’ssyndrome.JpnJOphthalmol39:162-165,19957)久保玲子,若倉雅登:自己免疫性視神経症.あたらしい眼科26:1343-1349,20098)Lennon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