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Posner-Schlossman症候群45症例の好発季節の検討

2015年7月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科32(7):1052.1056,2015c(00)1052(130)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科32(7):1052.1056,2015c〔別刷請求先〕西野和明:〒348-0045埼玉県羽生市下岩瀬289栗原眼科病院Reprintrequests:KazuakiNishino,M.D.,KuriharaEyeHospital,Shimoiwase289,Hanyu,Saitama348-0045,JAPANPosner-Schlossman症候群45症例の好発季節の検討西野和明*1,2鈴木茂揮*1堀田浩史*1城下哲夫*1福澤裕一*1小林一博*1栗原秀行*1*1栗原眼科病院*2回明堂眼科・歯科AnalysisofSeasonalVariationin45CasesofPosner-SchlossmanSyndromeKazuakiNishino1,2),ShigekiSuzuki1),HiroshiHotta1),TestuoJoshita1),YuichiFukuzawa1),KazuhiroKobayashi1)andHideyukiKurihara1)1)KuriharaEyeHospital,2)KaimeidoOphthalmic&DentalClinic目的:Posner-Schlossman症候群(PSS発作)の好発季節を後ろ向きに検討すること.対象および方法:対象は札幌市内の回明堂眼科・歯科にて1990.2014年まで経過観察中,あるいは経過観察していたPSS患者45例45眼,男35例,女10例で,初回PSS発作の平均年齢(±標準偏差)47.3±12.6歳,平均観察期間8.5±7.3年であった.札幌の月別平均気温が20℃以上になる7月と8月を夏,また氷点下になる12月から2月と0.6℃の3月を合わせて冬,その他を春秋とした.症例ごとにPSS発作が発症した季節,季節種数(1,2,3,4季節型),総発作数をそれぞれ確認したのち,好発季節の有無を検討,続いて季節種数と総発作数が経過観察期間と相関するか検討した.結果:1季節型は夏,秋,冬は各5例,春3例の計18例.2季節型は秋冬5,春冬と春秋は各4,春夏と夏冬は各2,夏秋1の合計18例.3季節型は春秋冬4,春夏秋2,春夏冬1,夏秋冬0の計7例.4季節型は2例のみであった.2および3季節型から夏を含む前後の季節(暖期)より冬を含む前後の季節(寒期)に多い傾向がみられたが,1,2,3季節型を暖期と寒期に分け比較検討しても統計学的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test).一方,経過観察期間と季節種数また総発作数との間にはそれぞれ有意な相関がみられた(p=0.019,p=0.0002,単回帰分析).結論:PSS発作は寒暖差による好発時期はみられず,季節種数および総発作数は経過観察期間の長期化に伴い増加する.Purpose:Toretrospectivelyinvestigateseasonalvariationin45casesofPosner-Schlossmansyndrome(PSS).PatientsandMethods:Inthisstudy,therecordsof45PSSpatients(35malesand10females)treatedattheKai-meidoOphthalmicandDentalClinic,Sapporo,Japanwereretrospectivelyreviewed.MeanpatientageattheinitialPSSattackwas47.3±12.6years,andthemeanfollow-upperiodwas8.5±7.3years.ThePSSattacksweredividedintothefollowing4seasonalgroupsaccordingtotheaverageoutdoorairtemperatureinSapporo,Japan:spring(AprilthroughJune),summer(JulyandAugust),autumn(SeptemberthroughNovember),andwinter(DecemberthroughMarch).AfterconfirmationoftheseasonofthePSSattack,theseasonaltypes(i.e.,one-,two-,three-,andfour-seasontype),andthetotalnumberofPSSattacks,weanalyzedtheseasonaltendency(c2test),correlationbetweenthekindsofseasons,thetotalamountofattacks,andthefollow-upyear(singleregressionanalysis).Results:Theone-seasontypeconsistedof18cases(5summercases,5autumncases,5wintercases,and3springcases).Thetwo-seasonaltypeconsistedof18cases(5autumn-wintercases,4spring-wintercases,4spring-autumncases,2spring-summercases,2summer-wintercases,and1summer-autumncase).Thethree-seasontypeconsistedof7cases(4spring-autumn-wintercases,2spring-summer-autumncases,and1spring-summer-wintercase).Thefour-seasontypeconsistedofonly2cases.Althoughwinterwithbeforeandafterarespeculatedtobehigherthansummerwithbeforeandafterfromthosedata,nostatisticdifferencewasbeenfound(p=0.471).Significantdifferenceswerefoundbetweenthekindsofseason,thetotalamountofPSSattacks,andthefollow-upyears,respectively(p=0.019,p=0.0002).Conclusions:ThefindingsofthisstudyshowthatPSSattacksarenotcorrelatedwithseason,yetthekindsofseasoninPSSattacksandthetotalamountofattacksaresignificantlycor-relatedwithfollow-upyears.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(7):1052.1056,2015〕 Keywords:Posner-Schlossman症候群,好発季節,経過観察期間.Posner-Schlossmansyndrome(PSS),seasonalvariation,followupyears.はじめにPosner-Schlossman症候群(Posner-Schlossmansyn-drome:PSS)は1948年,AdolfPosnerとAbrahamSchlossmanが初めて報告し,その後の経過観察によりいくつかの特徴的な所見がまとめられた1,2).それらは,角膜後面に数カ所の細かい沈着物を伴う繰り返す片眼性で軽度の虹彩毛様体炎,隅角は開放で最高眼圧は40mmHg以上(PSS発作)に上昇,高眼圧や炎症は短ければ数日で鎮静化するが,長ければ数週間続く.PSS発作とつぎのPSS発作の間には眼圧上昇や炎症はみられない,視神経乳頭や視野には異常がみられないことなどである.しかしながらその後,まれながら両眼にPSSが発症する症例の報告がみられたり3,4),PSSに緑内障が併発している症例の存在も明らかになってきた5,6).また,病因に関しては感染という観点からサイトメガロウイルス7,8)や単純ヘルペス9)が考えられているほか,Hericobacterpylori10)との因果関係なども報告されている.さらに近年前房水中のサイトカイン11)の変化なども研究されており,原著論文の定義を超えて多彩な背景要因が検討されている.しかしながら,いまもってなお発症機序は不明である.病因に関しては上記感染のほか,古くは自律神経の調整不全1,2)やアレルギー12)なども候補にあがっていた時代もあったことから,それらに影響する季節変化などの因果関係も検討する必要がある.ぶどう膜炎には好発季節がみられるとの報告はみられるものの13.17),PSSに関しては筆者らの知る限り好発季節に関する報告はみられない.そこで今回札幌の回明堂眼科・歯科におけるPSSの自験例で好発季節あるいは好発時期を後ろ向きに検討した.I対象および方法本研究の定義,登録基準,除外基準についてはつぎのように定めた.定義の基本はAdolfPosnerとAbrahamSchlossmanが報告した臨床所見に準ずる.つまり繰り返す片眼性の軽度虹彩毛様体炎,角膜後面に数カ所の細かい沈着物が認められる,開放隅角で最高眼圧が40mmHg以上に上昇,高眼圧や炎症は短ければ数日であるが長ければ数週間続く,発作とつぎの発作の間には眼圧上昇や炎症はみられないなどである.隅角検査で発作眼が僚眼より色素が少ない,網膜硝子体病変が基本的にはないことなども参考所見とした.PSSはぶどう膜炎による続発緑内障の位置付けなので,症例の組み入れ条件として眼圧の定義は重要である.そこで本研究においては経過観察中,一度でも40mmHg以上の眼圧(131)上昇が認められれば,別の時期に30mmHg以上の眼圧を認めた場合でも,PSS発作として組み入れた.また,原著には,視神経や視野が正常であると記載されているが,近年緑内障の併発例も確認されていることから5,6),ことさら視神経乳頭が正常であることや緑内障による視野異常の有無にこだわらず組み入れた.つぎにPSSは基本的に複数回発作を繰り返すという定義ではあるものの,実際は1回のPSS発作しか経過観察できない場合がある.その場合,初診時より過去に遡り,問診上同様の発作を起こしたことがあり,日時や受診した状況などを明確に記憶している場合は,反復するPSS発作とみなした.しかしながらPSS発作が1回限りで,かつ経過観察期間が数カ月など1年未満をすべて経過観察期間1年として計算した.また,紹介状あるいはこちらからの問い合わせなどにより明確な臨床過程が記載されている3件に関しては,当院の経過観察期間および発作頻度などに追加として組み入れた.一方,登録した症例のなかで,問診により本人からPSSの可能性が高い具体的な既往歴があっても,過去の発作時期があいまいな既往歴を登録することはせず,経過観察期間から除外した.また,経過観察中眼圧のコントロールが不十分で緑内障手術を行った2症例では,その後に発作がみられず,眼圧に関する眼内環境が大きく変化したと判断し,緑内障手術後を経過観察時期から除外した.ちなみに両症例の手術後に除外した期間は10年と3年である.一方,白内障手術後にPSS発作が認められた症例も確認されたことから,本研究においては白内障手術に関しては手術後も経過観察期間として組み入れた.その他,近年両眼の発症例もみられたとの報告があるが3,4),混乱を避けるためそのような症例を除外した.対象は札幌の回明堂眼科・歯科にて1990.2014年の間,経過観察中あるいは経過観察していたPSS患者45例45眼,男性35例,女性10例.当院における初回のPSS発作の平均年齢(標準偏差)47.3±12.6歳,平均観察期間は8.5±7.3年であった.好発季節を検討するため,札幌の年間平均気温別に季節を分類した.4月から6月を春,7月と8月を夏,9月から11月を秋,12月から3月までを冬と定義した.これは気象庁のホームページで1981.2010年までの札幌の平均気温が公表されており,20℃以上になるのは7月と8月だけ.また氷点下の気温になる12月から2月までとされているからである.ちなみに3月は0.6℃であったが冬とした.つぎにPSS発症の季節は単一あるいは複数にまたがるため,すべあたらしい眼科Vol.32,No.7,20151053 1054あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(132)ての組み合わせを分類し,患者数の分布を確認した.1季節型は春,夏,秋,冬の4群,2季節型は春夏,春秋,春冬,夏秋,夏冬,秋冬の6群,3季節型は春夏秋,春夏冬,春秋冬,夏秋冬の4群,4季節型(春夏秋冬)の1群である.すべての群を合計すると15群になるため解析がむずかしくなる.そこで夏を含む前後の季節(暖期)と冬を含む前後の季節(寒期)を型分けしたまま比較検討した(c2test).したがって,夏冬を同時に含む群は解析から除外したほか,4季節型も暖期と寒期が重複するため除外した.また,季節種数(1,2,3,4季節型),総発作数をそれぞれ確認したのち,経過観察期間と相関するか検討した(単回帰分析).使用した統計ソフトはStat123/Winver.2.2である.なお本研究はヘルシンキ宣言に沿って,十分な説明の後に自由意思に基づくインフォームド・コンセントを得るよう努力はしたが,現時点において一部の患者とは連絡が取れないことや,最終観察日から長年経過した症例もあることから,今のところ不十分な同意状況である.しかしながら当院においては,院内のお知らせとして患者のデータを学術目的に使用する場合もあることや,折に触れ学術研究に協力してくれるよう依頼している.II結果1季節型は夏,秋,冬は各5例,春3例の計18例.2季節型は秋冬5例,春冬と春秋は各4例,春夏と夏冬は各2例,夏秋1の合計18例.3季節型は春秋冬4例,春夏秋2例,春夏冬1例,夏秋冬0例の計7例.4季節型は2例のみであった(図1).2および3季節型から暖期より寒期に多い傾向がみられたが,1,2,3季節型を型別にしたまま暖期18例と寒期10例として比較しても統計的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test)(表1).一方,経過観察期間と季節種数(図2)また総発作数(図3)との間にはそれぞれ有意な相関がみられた(p=0.019,p=0.0002,単回帰分析).III考按ぶどう膜炎の発症に影響する疫学的要因としては地理的,民族的,遺伝的な要因などが考えられているほか,季節も関与するとの報告がみられる13.17).まず寒期よりは暖期に多いという報告として,Paivonsaloら13)によるフィンランド南西部におけるぶどう膜炎新患414例の好発季節の検討がある.その結果ぶどう膜炎全体でみると,夏(6.9月)およびの春秋(4,5,10,11月)は冬(12.3月)より発症率が高かったという.しかしながら,ぶどう膜炎の部位別に検討すると,対象の大半を占める急性前部ぶどう膜炎(acuteanteri-oruveitis:AAU)では冬と比較し春秋に好発したものの,中間部,後極部,および汎ぶどう膜炎には好発季節は認めら1季節型2季節型3季節型4季節型春3夏5秋5冬5春夏2春秋4春冬4夏秋1夏冬2秋冬5春夏秋2春夏冬1春秋冬4夏秋冬0春夏秋冬2181872秋冬5春冬4春秋4春夏2夏冬2夏秋1春秋冬4春夏秋2春夏冬1夏秋冬01季節型2季節型3季節型冬を含む前後の季節(寒期)594夏を含む前後の季節(暖期)532図1各患者のPSS発作を発症した季節の種類と種類数2季節型と3季節型は吹き出しで多い順に並べかえた.表1PSS発作の好発季節:寒期と暖期の比較p=0.471:c2test図1から季節型から夏を含む前後の季節(暖期)より冬を含む前後の季節(寒期)に多い傾向がみられたが,統計学的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test).(132)ての組み合わせを分類し,患者数の分布を確認した.1季節型は春,夏,秋,冬の4群,2季節型は春夏,春秋,春冬,夏秋,夏冬,秋冬の6群,3季節型は春夏秋,春夏冬,春秋冬,夏秋冬の4群,4季節型(春夏秋冬)の1群である.すべての群を合計すると15群になるため解析がむずかしくなる.そこで夏を含む前後の季節(暖期)と冬を含む前後の季節(寒期)を型分けしたまま比較検討した(c2test).したがって,夏冬を同時に含む群は解析から除外したほか,4季節型も暖期と寒期が重複するため除外した.また,季節種数(1,2,3,4季節型),総発作数をそれぞれ確認したのち,経過観察期間と相関するか検討した(単回帰分析).使用した統計ソフトはStat123/Winver.2.2である.なお本研究はヘルシンキ宣言に沿って,十分な説明の後に自由意思に基づくインフォームド・コンセントを得るよう努力はしたが,現時点において一部の患者とは連絡が取れないことや,最終観察日から長年経過した症例もあることから,今のところ不十分な同意状況である.しかしながら当院においては,院内のお知らせとして患者のデータを学術目的に使用する場合もあることや,折に触れ学術研究に協力してくれるよう依頼している.II結果1季節型は夏,秋,冬は各5例,春3例の計18例.2季節型は秋冬5例,春冬と春秋は各4例,春夏と夏冬は各2例,夏秋1の合計18例.3季節型は春秋冬4例,春夏秋2例,春夏冬1例,夏秋冬0例の計7例.4季節型は2例のみであった(図1).2および3季節型から暖期より寒期に多い傾向がみられたが,1,2,3季節型を型別にしたまま暖期18例と寒期10例として比較しても統計的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test)(表1).一方,経過観察期間と季節種数(図2)また総発作数(図3)との間にはそれぞれ有意な相関がみられた(p=0.019,p=0.0002,単回帰分析).III考按ぶどう膜炎の発症に影響する疫学的要因としては地理的,民族的,遺伝的な要因などが考えられているほか,季節も関与するとの報告がみられる13.17).まず寒期よりは暖期に多いという報告として,Paivonsaloら13)によるフィンランド南西部におけるぶどう膜炎新患414例の好発季節の検討がある.その結果ぶどう膜炎全体でみると,夏(6.9月)およびの春秋(4,5,10,11月)は冬(12.3月)より発症率が高かったという.しかしながら,ぶどう膜炎の部位別に検討すると,対象の大半を占める急性前部ぶどう膜炎(acuteanteri-oruveitis:AAU)では冬と比較し春秋に好発したものの,中間部,後極部,および汎ぶどう膜炎には好発季節は認めら1季節型2季節型3季節型4季節型春3夏5秋5冬5春夏2春秋4春冬4夏秋1夏冬2秋冬5春夏秋2春夏冬1春秋冬4夏秋冬0春夏秋冬2181872秋冬5春冬4春秋4春夏2夏冬2夏秋1春秋冬4春夏秋2春夏冬1夏秋冬01季節型2季節型3季節型冬を含む前後の季節(寒期)594夏を含む前後の季節(暖期)532図1各患者のPSS発作を発症した季節の種類と種類数2季節型と3季節型は吹き出しで多い順に並べかえた.表1PSS発作の好発季節:寒期と暖期の比較p=0.471:c2test図1から季節型から夏を含む前後の季節(暖期)より冬を含む前後の季節(寒期)に多い傾向がみられたが,統計学的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test). 984763PSS発作の総数(回)季節種数の合計5432211000510152025経過観察期間(年)経過観察期間(年)051015202530図2PSS発作発症の季節種数と経過観察期間の関係季節種数と経過観察期間との間には有意な相関がみられた.Y=0.041X+1.5,R2=0.126.(p=0.019:単回帰分析)れなかった.同様にCasselら14)は,非肉芽腫性の前部ぶどう膜炎の発症は夏に多いと報告した.その反対に暖期より寒期が多いという報告もみられる.Mercantiら15)はイタリア北東部における655例のぶどう膜炎の新患で好発時期を検討したところ,各種ぶどう膜炎を全体でみた場合には月別の差はなかったが,再発に限れば平均気温が8℃以下となる冬(11.2月)および8.18℃になる春秋は,いずれも18℃以上になる夏(6.9月)より多かったという.同様にLevinsonら16)は,米国のNewMexicoで77例94眼のAAUを二度にわたり調査したところ,いずれも12月の発症が多かったと報告しているほか,Stan17)もルーマニアで急性ぶどう膜炎597例の好発時期を調べたところ,冬の発症が多いと報告した.このように寒暖差によるぶどう膜炎の発症が地域的な差によるものかどうかは不明であるが,寒期にぶどう膜炎の発症が多いという理由として,Stanはいくつかの要因を候補としてあげている.まず発症当日の気温が平年のその時期の気温より暑いか寒いかなどの気温差が考えられるとのことで,具体的には前日より4℃以上の差がみられる場合などが該当するという.また,寒期の乾燥や風速(4m/秒)などの気象条件も関係しているのではないかと推論している17).これらの報告から明らかなように地理的,民族的に異なる地域や国からの報告では,好発季節に関して同一の結果が得られない.その背景として気象条件のみならず,遺伝的な背景も検討しなければならないかもしれない.Ebringerら18)は,AAU発症は8月から12月にかけて多かったが,そのなかでもHLA-B27陽性患者より陰性患者のほうが,その発症傾向が著明であったという.したがって,ぶどう膜炎に関する疫学的検討をする場合には,地理的,民族的な背景を考慮しなければならないことがわかる.しかしながら,PSSはAAUと比較してその頻度が低く,しかも40例以上の症例数を解析した報告も限られている8,10,11).さらにPSSの発作の間隔はかなり長い場合もあ図3PSSの総発作数と経過観察期間の関係総発作数と経過観察期間との間には有意な相関がみられた.Y=0.12X+1.44,R2=0.126.(p=0.0002,単回帰分析)り,長期経過観察なしには好発季節の確認がむずかしい.したがって,本研究では1施設の限られた症例数であったため,PSSの好発季節を確認できなかった.PSSはPosnerとSchlossmanが最初に報告してから半世紀以上の月日が経過しているにもかかわらず,いまだにその病態は明らかではない.なかには論文のタイトル自体がpresumedPosner-Schlossmansyndromeなどと表現されている場合もあり,PSSの鑑別診断の境界線はいまもってなお不明瞭な状況である8).しかも発作の定義自体もあいまいである.したがって,今回の研究においては一度でも40mmHg以上の眼圧上昇が認められれば,別の時期に30mmHg以上の眼圧を認めた場合でも,PSS発作として組み入れるという独自の定義で分析を行った.当然ながら眼圧が40mmHg以上のみを発作とするというような厳しい定義を用いれば違う結果が出たと思われる.しかしながら,自験例からPSS発作はわずかな重症例を除けば軽症のことが多く,来院時が必ずしもPSS発作のピークとは限らず,鎮静化しつつある場合があると考えたためそのような幅広い解釈で定義した.したがって,その定義に基づき30mmHg未満の眼圧は除外されたため,さらに拡大解釈した場合の発作数はもっと多かったのではないかと推定される.今後は再発作がどれくらいの眼圧であれば発作として組み入れるかという議論も必要と思われる.さらに今回の研究のような好発季節のみならず,性別や年齢による相違,ストレスなど誘因となる要因の検討などを他国のデータあるいは国内における他地域のデータと比較検討することができれば,本症の疫学的な側面を理解するだけでなく,病態を理解するうえでも有用ではないかと考えた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし(133)あたらしい眼科Vol.32,No.7,20151055 文献1)PosnerA,SchlossmanA:Syndromeofunilateralrecurrentattacksofglaucomawithcycliticsymptoms.ArchOphthalmol39:517-535,19482)PosnerA,SchlossmanA:Furtherobservationsonthesyndromeofglaucomatocycliticcrises.TransAmAcadOphthalmolOtolaryngol57:531-536,19533)LevatinP:Glaucomatocycliticcrisesoccurringinbotheyes.AmJOphthalmol41:1056-1059,19564)PuriP,VremaD:BilateralglaucomatoycliticcrisisinapatientwithHolmesAdiesyndrome.JPostgradMed44:76-77,19885)KassMA,BeckerB,KolkerAE:Glaucomatocycliticcrisisandprimaryopen-angleglaucoma.AmJOphthalomol75:668-673,19736)JapA,SivakumarM,CheeSP:IsPosnerSchlossmansyndromebenign?Ophthalmology108:913-918,20017)Bloch-MichelE,DussaixE,CerquetiPetal:PossibleroleofcytomegalovirusinfectionintheetiologyofthePosner-Schlossmannsyndrome.IntOphthalmol11:95-96,19878)CheeSP,JapA:PresumedfuchsheterochromiciridocyclitisandPosner-Schlossmansyndrome:comparisonofcytomegalovirus-positiveandnegativeeyes.AmJOphtlamol146:883-889,20089)YamamotoS,Pavan-LangstonD,TadaRetal:PossibleroleofherpessimplexvirusintheoriginofPosner-Schlossmansyndrome.AmJOphthalmol119:796-798,199510)ChoiCY,KimMS,KimJMetal:AssociationbetweenHelicobacterpyloriinfectionandPosner-Schlossmansyndrome.Eye24:64-69,201011)LiJ,AngM,CheungCMetal:AqueouscytokinechangesassociatedwithPosner-Schlossmansyndromewithandwithouthumancytomegalovirus.PloSOne7:e44453,201212)ShenSC,HoWJ,WuSCetal:Peripheralvascularendothelialdysfunctioninglaucomatocycliticcrisis:apreliminarystudy.InvestOphthalmolVisSci51:272-276,201013)Paivonsalo-HietanenT,TuominenJ,SaariKM:Seasonalvariationofendogenousuveitisinsouth-westernFinland.ActaOphthalmolScand76:599-602,199814)CasselGH,BurrowsA,JeffersJBetal:Anteriornonglanulomatosisuveitis:aseasonalvariation.AnnOphthalmol16:1066-1068,198415)MercantiA,ParoliniB,BonoraAetal:Epidemiologyofendogenousuveitisinnorth-easternItaly.Analysisof655newcases.ActaOphthalmolScand79:64-68,200116)LevinsonRD,GreenhillLH:Themonthlyvariationinacuteanterioruveitisinacommunity-basedophthalmologypractice.OculImmunolInflamm10:133-139,200217)StanC:Theinfluenceofmeteorologicalfactorsinwintertimeontheincidenceoftheoccurrenceofacuteendogenousiridocyclitis.Oftalmologia52:16-21,200018)EbringerR,WhiteL,McCoyRetal:Seasonalvariationofacuteanterioruveitis:differencesbetweenHLA-B27positiveandHLA-B27negativedisease.BrJOphthalmol69:202-204,1985***(134)