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網膜分離症を伴う牽引性網膜剝離を認めた 非増殖糖尿病網膜症の1 例

2023年1月31日 火曜日

《第27回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科40(1):91.94,2023c網膜分離症を伴う牽引性網膜.離を認めた非増殖糖尿病網膜症の1例伊藤駿平野隆雄知久喜明星山健村田敏規信州大学医学部眼科学教室CNon-ProliferativeDiabeticRetinopathywithTractionalRetinalDetachmentandRetinoschisisShunIto,TakaoHirano,YoshiakiChiku,KenHoshiyamaandToshinoriMurataCDepartmentofOphthalmology,ShinshuUniversitySchoolofMedicineC目的:広角Cswept-source光干渉断層計(SS-OCT)にて周辺部に網膜分離症を伴う牽引性網膜.離を確認できた非増殖糖尿病網膜症のC1例を経験したので報告する.症例:79歳,男性.遷延する左眼硝子体出血の加療目的にて信州大学附属病院眼科を紹介受診.初診時,矯正視力は右眼C0.7,左眼C10Ccm指数弁.右眼は毛細血管瘤のみを認める非増殖糖尿病網膜症であった.1回の撮影で水平断C23Cmmの範囲を取得可能な広角CSS-OCT(OCT-S1,キャノン)にて,眼底検査で確認困難であった丈の低い網膜.離が耳側周辺部で確認された.より周辺部を広角CSS-OCTで撮影すると網膜分離症と網膜.離が描出された.同部位では強い硝子体牽引を認め,ラスタースキャンでは網膜内層・外層に裂孔を認めなかったため,牽引性網膜.離に伴う網膜分離症と診断した.左眼の硝子体手術後に右眼への外科的手術介入について説明したが,本人が手術を希望しなかったため,病変部周辺に網膜光凝固を施行.2カ月後も網膜.離の進展は認めず,網膜下液の減少を広角CSS-OCTで観察可能であった.結論:非増殖糖尿病網膜症眼において続発性網膜分離症を伴う牽引性網膜.離を認める症例を経験した.これらの病変の同定,治療後の経過観察に広角CSS-OCTは有用と考えられた.CPurpose:Toreportacaseofnon-proliferativediabeticretinopathy(NPDR)inwhichtractionalretinaldetach-mentCandCretinoschisisCwereCobservedCusingCwide-angleCswept-sourceCopticalCcoherencetomography(SS-OCT)C.CCase:ClinicalCexaminationCofCaC79-year-oldCmaleCwithCtypeC2CdiabetesCmellitusCandCpersistentCvitreousChemor-rhageinthelefteyerevealedNPDRwithmicroaneurysmsintherighteye.Wide-angleSS-OCT(OCT-S1;Can-on)imagingrevealedlowretinaldetachmentandmoreperipheralretinoschisisinthetemporalregion.Thepatientwasdiagnosedwithtractionalretinaldetachmentandsecondaryretinoschisisduetothevitreoustractionobservedatthesite,andtherasterscandidnotshowanytearsintheinnerorouterretinallayers.Afterperformingparsplanavitrectomyinthelefteye,retinalphotocoagulationwasperformedaroundthelesionintherighteyeduetotheCpatientCnotCwishingCtoCundergoCsurgicalCintervention.CTwoCmonthsClater,Cwide-angleCSS-OCTCshowedCnoCpro-gressionCofCretinalCdetachment,CandCsubretinalC.uidCdecreasedCoverCtime.CConclusion:Wide-angleCSS-OCTCwasCfoundusefulfortheevaluationofNPDRwithtractionalretinaldetachmentandsecondaryretinoschisisatbothpreandposttreatment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(1):91.94,2023〕Keywords:糖尿病網膜症,牽引性網膜.離,網膜分離症,広角スウェプトソース光干渉断層計.diabeticretinopa-thy,tractionalretinaldetachment,retinoschisis,wide-angleswept-sourceopticalcoherencetomography.Cはじめにの遺伝形式をとる先天性と,中年以降の網膜周辺部に生じる網膜分離症は感覚網膜がC2層に分離する疾患で,若年者の後天性に分類される1).後天性網膜分離症は成因が不明な点黄斑部および網膜周辺部に生じ,多くは伴性劣性(X-linked)が多く,臨床および病理組織学的検討から加齢による網膜周〔別刷請求先〕伊藤駿:〒390-8621長野県松本市旭C3-1-1信州大学医学部眼科学教室Reprintrequests:ShunIto,M.D.,DepartmentofOphthalmology,ShinshuUniversitySchoolofMedicine,3-1-1Asahi,Matsumoto,Nagano390-8621,JAPANC図1初診時右眼の広角眼底写真と光干渉断層計(OCT)画像a:広角眼底写真では点状・斑状の網膜出血を認める.カラーマップと比較すると,網膜肥厚部位の色調はやや暗く見える.Cb:黄斑部を通るCSD-OCT(6Cmm)水平断では異常所見を認めない.Cc:黄斑部を通るCSS-OCT(23Cmm)水平断では周辺部耳側に網膜.離(C.)を認める.d:OCTカラーマップでも周辺部耳側に網膜.離の影響と考えられる網膜厚の肥厚所見(.)を認める.図2左眼の広角眼底写真の継時的変化と超音波Bモード画像a:初診時の広角眼底写真.硝子体出血で眼底詳細不明である.Cb:初診時のCBモード.硝子体に絡まる出血を認め,網膜.離を認めない.Cc:硝子体術後C1カ月の広角眼底写真.汎網膜光凝固の瘢痕化を認めた.硝子体出血の誘因と考えられた網膜裂孔はC6時方向の網膜周辺部に認めた(眼底写真の範囲外).最終矯正視力はC0.7であった.辺部の類.胞変性が関与しているとされる.近視性牽引黄斑症や硝子体牽引症候群でみられるほか,増殖糖尿病網膜症や網膜.離に続発することも報告されている2).今回,筆者らは広角Cswept-source光干渉断層計(swept-sourceCopticalCcoherencetomography:SS-OCTであるOCT-S1,キャノン)を用い周辺部網膜の網膜分離症を伴う牽引性網膜.離を同定し,さらには治療後の経過を評価可能であった非増殖糖尿病網膜症のC1例を経験したので報告する.CI症例患者はC79歳,男性.20年来のC2型糖尿病で,直近のHbA1cはC6.2%とコントロール良好であったが定期的な眼科受診歴はなかった.左眼の視力低下を自覚し近医受診したところ,硝子体出血を指摘され,精査加療目的にて信州大学附属病院眼科に紹介受診となった.初診時視力は右眼C0.4(0.7×+3.50D),左眼C10cm指数弁(矯正不能).眼圧は右眼C11CmmHg,左眼C14CmmHgであり,眼軸長は右眼C22.30Cmm,左眼C22.58Cmmと強度近視眼ではなかった.前眼部中間透光体には両眼ともCEmery-Little分類でCgrade2の白内障を認めるのみであった.右眼には毛細血管瘤が散在していて国際重症度分類で軽度非増殖糖尿病網膜症の状態であった(図1a).左眼は硝子体出血のため眼底透見不良であったが,超音波CBモードで明らかな網膜.離は確認できなかった(図2a,b).1カ月以上遷延する消退不良の硝子体出血に対し,本人の手術希望もあり,同意を得て左眼水晶体再建術,経毛様体扁平部C25ゲージ硝子体手術を施行した.術中,左眼眼底には点状,斑状出血を認めるが増殖性変化を認めず,中等度非増殖糖尿病網膜症であった.6時方向の網膜周辺部に網膜裂孔および破綻した架橋血管が確認され硝子体出血の原因と考えられた(図2c).糖尿病罹病期間がC20年間と長く,将来的に増殖性変化出現の可能性も図3初診時右眼のパノラマ写真と耳側の広角光干渉断層計(OCT)画像a:パノラマ写真では耳側に網膜.離(.)を確認できる.Cb:耳側を撮影したCSS-OCT水平断の拡大写真.牽引性網膜.離(C.)およびその直上,耳側に網膜分離症(C.)を認める.Cc:耳側のCOCTカラーマップでは局所的な網膜厚の肥厚所見()を認める.ラスタースキャンでは裂孔や外層孔,内層孔を認めない.d:23CmmC×20Cmmの広角COCTAで広範囲の無灌流領域や新生血管を認めない.否定できないため,術中,汎網膜光凝固を施行した.一方,後極を狙った広角CSS-OCTのルーチン撮影で,通常の眼底診察およびCspectral-domainOCT(SD-OCT)では検出されなかった丈の低い網膜.離を認めた(図1c,d).さらに耳側網膜を追加撮影したところ,後部硝子体.離は既完であり,耳側と.離部位上に網膜分離症が描出された(図3a,b,c)..離部位をCOCTラスタースキャンで細かく確認したが,内層・外層ともに裂孔は確認できず,牽引性網膜.離と続発性網膜分離症と診断した.なお,光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)では広範囲の無灌流領域や新生血管を認めず,非増殖糖尿病網膜症に矛盾しない所見であった(図3d).本人に病状を説明し,右眼の牽引性網膜.離に対する硝子体手術を提案したが,左眼の手術直後ということもありこの時点での積極的な手術は希望しなかった.初診時からC1カ月後,広角CSS-OCT所見でも右眼の牽引性網膜.離の進行は認められなかったが,硝子体による牽引は継続していた(図4a).牽引性網膜.離に対する治療として再度,硝子体手術,網膜光凝固術を提案したところ,網膜光凝固術を希望したため,.離が進行する場合は緊急で硝子体手術を行うことを詳細に説明し,同意を得たのちに,網膜.離周囲に網膜光凝固術を施行した(図4b).右眼網膜光凝固後C2カ月で網膜.離の進展を認めず,広角CSS-OCT所見では網膜下液の経時的な減少が確認できた(図4c).この時点で左眼視力は(0.7)まで改善を認めた.今後広角CSS-OCTも含め定期的な経過観察を行う予定である.CII考察増殖糖尿病網膜症眼における網膜分離症については多くの報告がなされている.正常眼と比較すると増殖糖尿病網膜症の硝子体液では凝固,補体,キニン-カリクレインシステムなど,癒着に関与する蛋白質が有意に高いこと3)や網膜新生血管を足がかりとして牽引性網膜.離が引き起こされる際に網膜分離症が併発するためと考えられている.一方で本症例.離部後極側中心窩図4右眼の病変部の継時的変化(SS-OCT水平断)a:初診時からC1カ月後.Cb:網膜光凝固直後.網膜.離の進行を認めず,鼻側に凝固斑を確認できる.検眼鏡で網膜分離症の部位にも凝固斑を確認できた.Cc:網膜光凝固C2カ月後.硝子体による牽引は持続しているが,網膜下液は減少しており,網膜.離の進行を認めない.は明らかな増殖性変化を伴わない非増殖糖尿病網膜症眼にもかかわらず,牽引性網膜.離に伴う網膜分離症が確認された.この理由を考察する.本症例では広角CSS-OCTにて病変部での後部硝子体皮質による網膜の牽引が確認できた(図3b).この牽引は網膜光凝固術後C2カ月後にも持続しており(図4c),強い網膜-硝子体の癒着が生じていたと推察する.健常人や網膜症のない糖尿病患者と比較すると,糖尿病網膜症患者では非増殖期においても後部硝子体の厚み,硝子体分離,網膜と硝子体の癒着など網膜硝子体界面の異常の割合が有意に増加することが知られている4).長期間の糖尿病罹患により網膜-硝子体の強い癒着が生じ,後部硝子体.離に伴って牽引性網膜.離および続発性網膜分離症が発生したと推察する.また,増殖糖尿病網膜症の病理組織学的研究報告中の牽引性網膜.離と網膜分離症を同一部位に認めた写真5)と,本症例の広角CSS-OCT画像を比較すると,その構造は非常に類似している.このことはこの考えを支持する.筆者らの調べた限り,非増殖糖尿病網膜症に伴う網膜分離症の報告は確認できなかった.この理由の一つとして,周辺部の限局的な網膜分離症は通常の眼底検査や従来のCOCT検査では描出困難なことが考えられる.本症例でも,初診時の通常の眼底検査や撮像範囲がC6CmmのCSD-OCT検査(図2a,b)では牽引性網膜.離,網膜分離症は同定できなかった.同一光源から発した二つの光の光路差から光干渉現象を利用することで非侵襲的に網脈絡膜の断層画像を取得可能な手法としてC1991年に初めて報告されたCOCTは,網脈絡膜疾患にとどまらず角膜疾患や緑内障疾患など多くの疾患の評価に用いられ,日常診療には欠かせない検査となっている6).しかし,既存のCOCTは撮像範囲が後極部に限定される機器が多く,網膜静脈閉塞症や糖尿病網膜症といった広く眼底に病変をもつ疾患の網膜断層や循環動態を全体的に評価することは困難であった.近年,SD-OCTよりも長波長の光源を用いたCSS-OCTの登場によりこの撮像範囲の問題は解決しつつある7).本症例においては最大撮像範囲の横径がC23Cmmの広角CSS-OCT装置であるCOCT-S1を用いることで,周辺部の限局した網膜.離と網膜分離症を同定することができた.OCT-S1では長波長のCsweptsource光源の特徴を生かし,網膜にとどまらず,脈絡膜から硝子体まで深さ方向に広い範囲の情報を取得できる.本症例でもこの特徴により網膜の状態だけではなく,網膜に対する硝子体の強い牽引も詳細に観察可能であった.今後,広角CSS-OCTによる周辺部の新たな知見の報告が期待される.次に本症例の治療について考察する.後天性網膜分離症の大部分は進行が緩徐であり,経過観察を選択することが多い.治療を考慮するものとして網膜内層孔・外層孔を生じ分離症の拡大,網膜.離への移行の可能性が高い場合があげられ1),広範な網膜.離を伴った場合には網膜光凝固のほかに硝子体手術を施行することが検討される8).本症例では牽引性網膜.離の範囲は限局的で,網膜分離症に内層孔・外層孔を認めなかった.僚眼の硝子体手術直後であり,患者自身が早急な硝子体手術を希望しなかったため,網膜光凝固を選択した.現在,光凝固後C2カ月が経過したが,網膜.離,網膜分離症の進行は認めていない.網膜分離症に対し網膜光凝固術を施行した箇所に裂孔原性網膜.離を発症した例もあり9),光凝固後も定期的な経過観察が必要と考えられた.また,網膜下液の吸収は緩徐で,増殖糖尿病網膜症による牽引性網膜.離の網膜下液の自然吸収には平均C57.5日かかることが報告されている10).本症例では広角CSS-OCTによる観察で網膜光凝固後の網膜下液の継時的な減少を評価することができた.広角CSS-OCTは眼底周辺部の局所的な牽引性網膜.離や続発性の網膜分離症などの網膜硝子体界面異常の同定や治療後の経過観察に有用であることが示唆された.文献1)ByerNE:Clinicalstudyofsenileretinoschisis.ArchOph-thalmolC79:36-44,C19682)BuchCH,CVindingCT,CNielsenNV:PrevalenceCandClong-termCnaturalCcourseCofCretinoschisisCamongCelderlyCindi-viduals:theCCopenhagenCCityCEyeCStudy.COphthalmologyC114:751-755,C20073)BalaiyaS,ZhouZ,ChalamKV:Characterizationofvitre-ousCandCaqueousCproteomeCinChumansCwithCproliferativeCdiabeticretinopathyanditsclinicalcorrelation.ProteomicsInsightsC8:1178641816686078,C20174)AdhiCM,CBadaroCE,CLiuCJJCetal:Three-dimensionalCenhancedimagingofvitreoretinalinterfaceindiabeticret-inopathyCusingCswept-sourceCopticalCcoherenceCtomogra-phy.AmJOphthalmolC162:140-149,Ce1,C20165)FaulbornJ,ArdjomandN:Tractionalretinoschisisinpro-liferativeCdiabeticretinopathy:aChistopathologicalCstudy.CGraefesArchClinExpOphthalmolC238:40-44,C20006)HuangCD,CSwansonCEA,CLinCCPCetal:OpticalCcoherenceCtomography.ScienceC254:1178-1181,C19917)ChikuY,HiranoT,TakahashiYetal:EvaluatingposteC-riorCvitreousCdetachmentCbyCwide.eldC23-mmCswept-sourceCopticalCcoherenceCtomographyCimagingCinChealthyCsubjects.SciRepC11:19754,C20218)GotzaridisEV,GeorgalasI,PetrouPetal:Surgicaltreat-mentCofCretinalCdetachmentCassociatedCwithCdegenerativeCretinoschisis.SeminOphthalmolC29:136-141,C20149)小林英則,白尾裕,浅井宏志ほか:引き抜き血管を伴う後極部外層裂孔による網状変性網膜分離症網膜.離に対する硝子体手術のC1例.あたらしい眼科16:873-877,C199910)貝田真美,池田恒彦,澤浩ほか:糖尿病牽引性網膜.離の網膜下液の自然吸収過程と性状に関する検討.眼紀C49:501-504,C1998***

強度近視網膜分離症の硝子体手術成績と自然経過

2017年10月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科34(10):1459~1464,2017強度近視網膜分離症の硝子体手術成績と自然経過岩崎将典木下貴正宮本寛知今泉寛子市立札幌病院眼科CSurgicalOutcomeandNaturalCourseofRetinoschisisinHighlyMyopicEyesMasanoriIwasaki,TakamasaKinoshita,HirotomoMiyamotoandHirokoImaizumiCDepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital強度近視網膜分離症C20例C23眼について,内境界膜(ILM).離併用C25ゲージ(G)硝子体手術を行ったCPPV群(16眼)と未施行の経過観察群(7眼)に分けて,レトロスペクティブに治療成績を比較検討した.PPV群はベースライン小数視力C0.28であったが,最終視力C0.39となり有意に改善した(p=0.035).経過観察群ではベースライン小数視力C0.46が最終視力C0.43と有意な変化はみられなかった.最終受診時の中心窩網膜厚はCPPV群C143.1C.m,経過観察群460.3C.mとCPPV群のほうが有意に小さかった(p=0.0003).ILM完全.離を施行したC11眼中C3眼に術後黄斑円孔網膜.離が発症したが,中心窩CILMを残す術式(FSIP)を施行したC5眼には術後全層円孔が生じなかった.強度近視網膜分離症に対しCILM.離を併用した硝子体手術が視力や中心窩網膜厚の改善に有用であった.中心窩が菲薄化している症例ではCFSIPで術後全層円孔を予防する必要がある.Westudied23eyesof20patientswithmyopicretinoschisis(RS)C.Vitrectomywithinternallimitingmembrane(ILM)peelingCwasCperformedCinC16Ceyes;7CeyesCwereConlyCobserved.CTheCmeanCdecimalCbest-correctedCvisualacuity(BCVA)intheoperatedgroupsigni.cantlyimprovedfrom0.28(baseline)to0.39(.nalvisit;p=0.035)C,buttheCmeanCBCVACinCtheCnon-operatedCgroupCdidCnotCchangeCsigni.cantlyCduringCfollow-up.CTheCcentralCretinalthickness(CRT)intheoperatedgroupwassigni.cantlysmallerthanthatinthenon-operatedgroupat.nalvisit(143.1C.mand460.3C.m,respectively,p=0.0003)C.Macularholeretinaldetachmentdevelopedin3ofthe11eyesthatunderwentcompleteILMpeelingaftersurgery.Nomacularcomplicationsdevelopedin5eyesthatunderwentfovea-sparingILMpeeling(FSIP)C.TheseresultssuggestthatvitrectomywithILMpeelingimprovesvisualacuityandCRTineyeswithRS,andthatFSIPshouldbeperformedtopreventmacularcomplications.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(10):1459~1464,C2017〕Keywords:網膜分離症,強度近視,黄斑円孔網膜.離,硝子体手術,自然経過.retinoschisis,highmyopia,mac-ularholeretinaldetachment,vitrectomy,naturalcourse.Cはじめに強度近視網膜分離症はC1958年にCPhillipsらによって黄斑円孔のない後極部網膜.離として初めて報告された1).その後,光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomography:OCT)の開発によりその詳細な病態が報告されており2,3),強度近視眼における視力障害のおもな原因の一つとされている4).OCTでは網膜分離は網膜内層と外層が裂けた状態として認められるが,時間の経過とともに中心窩.離(fovealdetach-ment:FD),そして黄斑円孔網膜.離(macularholereti.naldetachment:MHRD)へと進行することが報告された5).治療法としては硝子体手術が広く行われており,内境界膜(internalClimitingCmembrane:ILM).離を併施することで網膜の伸展性が改善し,網膜の復位が得られるとの報告6)や,中心窩再.離が起きず最終視力も有意に改善したとの報告7,8)もあり,網膜分離症に対する有効性が示されている.さらに最近では,中心窩のCILMは.離せず,その周りをドーナツ状に.離する方法(foveaCsparingCILMCpeeling:FSIP)を行うことで術後全層円孔を予防する方法9)も報告されている.一方,自然経過において視力やCOCT所見があまり変化しないとの報告9)もあるため,一定の見解が得られて〔別刷請求先〕岩崎将典:〒060-8604北海道札幌市中央区北C11条西C13丁目C1-1市立札幌病院眼科Reprintrequests:MasanoriIwasaki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital,1-1Nishi13-Chome,Kita11Jo,Chuo-ku,SapporoHokkaido060-8604,JAPANいない.今回筆者らは市立札幌病院眼科を受診した強度近視網膜分離症例について,ILM.離を併用した硝子体手術を行ったCPPV群と,手術が行われなかった経過観察群とに分けて比較検討した.CI対象および方法2010年C4月~2016年C3月のC6年間に市立札幌病院眼科においてCOCTで強度近視網膜分離症と診断されC6カ月以上の自然経過を追えたC6例C7眼,および術後C6カ月以上の経過観察が可能であったC14例C16眼の計C20例C23眼を対象とした.強度近視の定義は,近視研究会がC2016年に示した等価球面値が-6.0D以上,または眼軸長C26.0Cmm以上に従った.視力に影響のある角膜混濁,弱視,中心窩を含む斑状網脈絡膜萎縮,黄斑円孔のある例は除外した.全症例の臨床経過を表1と表2に示す.男性C3例C5眼,女性C17例C18眼と女性が多く,平均年齢はC71.0C±8.9歳(54~83歳),平均観察期間はC30.2カ月(8~72カ月),ベースライン平均眼圧はC15.8C±2.5CmmHg(10~20mmHg)であった.有水晶体眼C18眼の平均等価球面屈折値はC-14.8±4.5D(C-5.9~C-22.3D)であった.眼軸長を測定したC18眼の平均眼軸長はC29.1C±1.5Cmm(26.6~30.8Cmm)であった.網膜分離以外の黄斑部併発病変は,網膜前膜C14眼(60.9%),分層円孔C10眼(43.5%),中心窩.離C8眼(34.8%)であった.経過中に硝子体手術を施行したCPPV群がC14例C16眼,手術を施行せず自然経過をみた経過観察群がC6例C7眼であった.これらの症例に対し視力測定や後極部のCOCT撮影をベースライン,3,C6,C12カ月後と最終受診時に施行した.また中心窩を通るCOCT水平断におけるCILMから網膜色素上皮の内縁までの距離を中心窩網膜厚(centralCretinalCthick.ness:CRT)と定義し,マニュアルキャリパー機能を用いて測定した.硝子体手術は全例C25ゲージシステムにより実施した.黄斑部の網膜前膜や硝子体皮質を除去し,全例でトリアムシノロンアセトニドもしくはブリリアントブルーCG(brilliantblueCG:BBG)を用いたCILM.離を併用した.ILM.離はILMを中心窩に残さない完全.離がC11眼,中心窩部分のILMを残す術式(FSIP)がC5眼であった.初回手術時にガスタンポナーデはC9眼に行った.内訳は空気がC2眼,20%CSFC6がC6眼,12%CSFC6がC1眼であった.有水晶体眼のC11眼には水晶体超音波乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を併施した.これらの症例を,硝子体手術を施行したCPPV群と施行しなかった経過観察群に分けて,視力やCCRT,OCT所見に着目しレトロスペクティブに分析検討した.小数視力はすべてlogMAR値に換算して統計解析を行った.p<0.05を有意とした.CII結果両群間においてベースラインの視力,眼圧,性別,年齢,有水晶体眼の等価球面屈折値に統計学的な有意差は認めなかった(p≧0.05,FisherC’sCexactCtest,CMann-WhitneyCUCtest).視力について,PPV群ではベースラインの平均ClogMARは0.56(小数視力C0.28)であったが,最終C0.41(0.39)となり有意に改善した(p=0.035,Wilcoxonsigned-ranktest).一方,経過観察群ではベースラインの平均ClogMARはC0.33(0.46)であり,最終C0.36(0.43)と有意差はなかった(表3).また,ベースラインと最終視力を比較してClogMAR0.2以上の変化を改善もしくは悪化と定義した場合,表4に示すようにPPV群のほうが,最終視力が良好な傾向があった(p=0.067,Mann-WhitneyUtest).それぞれの群のCCRTの推移を図1に示す.ベースラインの平均CRTはPPV群518.9.m,経過観察群C335.1.mとPPV群のほうが大きい傾向がみられた(p=0.06,Mann-Whit.neyCUCtest).PPV群では術後C3カ月以降,有意にCCRTが減少した(p<0.01,WilcoxonCsigned-rankCtest).一方,経過観察群では有意なCCRTの変化はみられなかった.最終CRTはCPPV群C143.1C.m,経過観察群C460.3C.mとCPPV群のほうが有意に小さかった(p=0.0003,Mann-WhitneyCUtest).PPV群において全例で術中合併症は認めなかった.術後合併症はCMHRDをC3眼(18.8%)に認め,すべて初回手術後2週間以内に発症した.これらC3眼は術前からCFDを併発していた(図2).このうちのC1眼(6.3%)はCCC3F8ガスタンポナーデを用いた再手術で網膜は復位し,黄斑円孔は閉鎖した.残りのC2眼はシリコーンオイルタンポナーデを用いた再手術を施行し,約C1年後にシリコーンオイルを抜去した.このうちC1眼はシリコーンオイル除去時に黄斑プロンベ縫着を併施した.これらC2眼はともに網膜の復位を得たが,黄斑円孔は残存した.FSIPを施行したC5眼について,術後C6カ月までの経過の1眼に網膜分離の残存を認めているが,残りC4眼はすべて網膜分離が消失し黄斑円孔も発生しなかった.ベースラインの平均小数視力はC0.46であったが,最終C0.69と改善した.ベースラインの平均CCRTはC528.8C.mであったが,最終C149.0.mと有意に減少した(p=0.04,CWilcoxonCsigned-rankCtest).FSIPを施行した代表症例を図3に示す.術前は網膜分離と大きなCFDを認めていた.FSIPを併用した硝子体手術を施行し20%SFC6ガス置換とした.術後C2週間で網膜分離やFDは消失し術後C12カ月まで網膜分離の再燃なく最終視力(1.0)であった.最終COCT所見は,PPV群ではC15眼(93.8%)で網膜分離は消失し,1眼(6.3%)で網膜分離が残存した.網膜分離消表1PPV群の臨床経過ベースラインフォローアップC分離等価球面眼軸CRT観察最終最終C消失No.性別年齢視力屈折値長C(.m)COCT期間ILM.離ガス術後合併症出現時期・内容・手術視力CRT最終COCT期間(.m)(月)C1CMC78C0.6CIOLC30.8C1281CRSFDERMC15CFSIP20%CSFC6なしC1.0C85RS(-)MH(-)C0.5C2CMC78C0.6CIOLC30.5C166RS分層円孔C15CFSIP20%CSFC6なしC0.5C112RS(-)MH(-)C7C3CFC71C0.4C-17.9C30.3C399RS分層円孔ERMC17CFSIP12%CSFC6なしC0.9C250CRSC4CFC66C0.2CIOLC27.3C505RS分層円孔C10CFSIP20%CSFC6なしC0.6C178RS(-)MH(-)C10C5CFC74C0.7CIOLC28.2C293CRSFDERMC16CFSIPCAIRなしC0.6C120RS(-)MH(-)C16C6CFC83C0.1C-10.3C27.8C699CRSFDC29完全.離なしなしC0.09C188RS(-)MH(-)C6C2Cw後CMHRDPPV2+C3F812%7CFC67C0.15C-5.9C28.7C1014RSFD分層円孔ERMC18完全.離なし1M後CMHRDPPV3+SO0.09CMHC2C11M後CPPV4+SO抜去+黄斑プロンベC8CFC66C0.15CIOLC28.7C368CRSERMC29完全.離CAIRなしC0.15C80RS(-)MH(-)C7C2w後CMHRDでCPPV2+SO9CFC70C0.1C-22.3C30.7C475CRSFDC72完全.離20%CSFC612M後CPPV3+SO抜去C0.1CMHC23C10FC760.5C-10.5C30.4C377RS分層円孔ERMC12完全.離なしなしC1.0C169RS(-)MH(-)C5C11FC790.2C-10.9C26.6C529CRSC25完全.離なしなしC0.6C124RS(-)MH(-)C8C12FC790.2C-13.4C27.4C433CRSC25完全.離なしなしC0.5C116RS(-)MH(-)C14C13CFC790.1C-11.1C26.6C421RSFD分層円孔C50完全.離20%CSFC6なしC0.2C92RS(-)MH(-)C8C14FC560.6C-17.6C30.8C411RS分層円孔ERMC31完全.離20%CSFC6なしC0.4C122RS(-)MH(-)C11C15FC650.4C-14.4C29.5C310RS分層円孔ERMC8完全.離なしなしC1.0C184RS(-)MH(-)C7C16MC540.6C-19.5C29.9C621CRSFDERMC12完全.離なし2w後CMHRD+RS0.7C183RS(-)MH(-)C11100%CCC3F8硝子体注射C平均値C71.3C0.28C-14.0C29.0C518.9C24.0C0.39C143.1C9.0M:male,男性,F:female,女性,IOL:intraocularlens眼内レンズ挿入眼.RS:retinoschisis網膜分離,ERM:epiretinalmembrane網膜前膜,FD:fovealdetachment網膜.離,MH:macularhole黄斑円孔,MHRD:macularholeretinaldetachment黄斑円孔網膜.離,SO:siliconeoilシリコーンオイル,FSIP:foveasparingILMpeeling.表2経過観察群の臨床経過ベースラインフォローアップCNo.性別年齢視力等価球面屈折値眼軸CCRT(C.m)COCT観察期間最終視力最終CCRT(C.m)最終COCTC17C18C19C20C21C22C23CFCFCFCFCMCMCFC82C60C69C54C78C78C67C0.4C0.6C0.4C0.4C0.3C0.8C0.5C-13.0C-21.8-19.0-11.3-14.0-17.0-17.429.6C未測定C未測定C未測定C未測定C未測定C未測定C268C487302413409191276CRSCRS分層円孔ERMCRS分層円孔ERMCRSERMCRSFDERMCRSERMCRSC32C60C24C70C44C44C37C0.5C0.4C0.4C0.8C0.15C0.5C0.6C429C520349511369734310CRSCRS分層円孔ERMCRS分層円孔ERMCRSERMCRSFDERMCRS分層円孔CERMCVMTSCRSC7C69.7C0.46C-16.2C29.6C335.1C44.4C0.43C460.3M:male男性,F:female女性.RS:retinoschisis網膜分離,ERM:epiretinalCmembrane網膜前膜,FD:fovealCdetachment網膜.離,VMTS:vitreomacularCtrac.tionsyndrome.表3ベースラインと最終受診時の平均視力ベースライン最終受診時p値平均観察期間(月)平均ClogMAR0.560.410.035*PPV群(n=16)小数視力(範囲)C0.28(0.1~0.7)C0.39(0.09~1.0)C24.0平均ClogMAR0.330.36経過観察群(n=7)小数視力(範囲)C0.46(0.3~0.8)C0.43(0.15~0.8)C0.675C44.4*CPPV群の最終視力はベースラインと比較して有意に改善した.Wilcoxonsigned-ranktest,p<0.05.表4ベースラインと最終受診時の視力変化改善不変悪化PPV群(n=16)8眼(50.0%)C7眼(43.8%)C1眼(6.3%)Cp=0.067*経過観察群(n=7)C1眼(14.3%)C4眼(57.1%)C2眼(28.6%)ベースラインと比較しClogMAR0.2以上の変化を改善,もしくは悪化と定義した.*CPPV群のほうが視力予後良好な傾向があった.Mann-WhitneyUtest.失までに要した期間は平均C9.0カ月であった.また,2眼(11.8%)で黄斑円孔が残存した.一方,経過観察群ではC7眼中C7眼(100%)がC2年以上経過した後にも網膜分離が残存していた.CIII考按強度近視網膜分離症はしばしば緩徐な経過をたどるが,平均C31.2カ月でC68.9%が視力低下したとの報告5)や,平均15.7カ月の観察期間でC28.5%が視力低下や変視にて手術を必要としたとの報告11)もある.また,自然経過において網膜分離が改善することは少なく,徐々に網膜分離は広範囲に広がり分離の程度も悪化してゆく.その後しばしばCMHRDに進行し,その予後はきわめて不良となる10,12,13).本症例においても経過観察群のうちC2眼(28.6%)はベースラインと比較した最終視力のClogMARはC0.2以上の悪化をきたしていた.これに対し,PPV群において悪化はC1眼(6.3%)のみで,8眼(50.0%)が最終的にClogMARC0.2以上の改善を得た(表4).また,表3に示したようにCPPV群は最終視力も有意に改善した.このように強度近視網膜分離症においてCILM.離を併用した硝子体手術を行うことは視力の改善に有用と思われる.また,網膜分離に対しては経過観察群の全例で平均C44.4カ月後も最終的に網膜分離は残存し,CRTはベースラインのC355.1C.mから最終C460.3C.mとなり,悪化傾向がみられた(p=0.063).一方,PPV群のC15眼(93.8%)で網膜分離は消失しCCRTはベースラインC518.9.mが術後C3カ月で194.4C.mまで有意に改善し,最終的にC143.1C.mとなった.さらに,最終CCRTは経過観察群に比べCPPV群で有意に小さかった(p=0.0003).以上から,ILM.離を併用した硝子体手術は網膜分離を消失,改善させることに有効であり,網平均CRT(.m)PPV群経過観察群500600■400★★300★★200★★1000ベースライン3M6M12M最終n=23n=18*n=21*n=17*n=21*図1中心窩網膜厚(CRT)の推移■ベースラインCCRTはCPPV群のほうが経過観察群より大きい傾向がみられた.p=0.06,Mann-WhitneyUtest.★CPPV群のCCRTはベースラインと比較してC3カ月以降有意に低下した.p<0.01,Wilcoxonsigned-ranktest.★★最終CCRTはCPPV群のほうが経過観察群より有意に小さかった.p=0.0003,Mann-WhitneyUtest.*術後に黄斑円孔が残存したC2眼は除外した.C図3FSIPを施行した代表症例(症例CNo1)上:術前OCT.大きな中心窩.離(★)と網膜分離を認める.中:術後C2週のCOCT.PPV+FSIP+20%CSFC6置換を施行し術後2週で復位した.下:術後C12カ月のCOCT.網膜分離の再燃もなく視力(1.0)であった.C膜分離が持続することによる視力低下を防止することができると考えられた.ただし,硝子体手術には合併症があり,FDがある症例では,とくに術後にCMHRDになる可能性が高いとされてい図2術後にMHRDを生じた3例の術前OCTa:症例CNo9.シリコーンオイル使用するも最終的にCMHが残存した症例.Cb:症例CNo16.CC3F8使用によりCMHは閉鎖した.Cc:症例CNo7.2度CMHRDをきたし黄斑プロンベを施行.最終的に網膜は復位し,MHは残存.★:中心窩.離(FD)を認め中心窩は菲薄化している.このような症例には中心窩のCILMを残す術式(FSIP)が望ましい.Cる14).今回の症例でも術前からCFDを認めていたC7眼中C3眼に術後CMHRDが発生し,これらはすべてCILMを完全.離した症例であった.このうちC2眼は最終的に黄斑円孔が残存した.これら黄斑円孔が残存したC2眼は最終視力も不良であった(表1).このようにCFDに伴い,中心窩の網膜が菲薄化している症例においては,完全なCILM.離は術後に全層円孔を生じる危険性がある.ShimadaらはCFDを併発した強度近視網膜分離症C15眼に対しCFSIPを行うことで術後全層円孔が発生しなかったと報告している9).HoらもC12例の強度近視網膜分離症(うちC7例はCFD併発)にCFSIPを施行した結果,術後全層円孔がC1例もなく,視力低下もなかったと報告している15).今回の検討においても,FSIPを施行した5眼(うちC2眼はCFD併発)は術後全層円孔がみられず,最終視力も全例で(0.5)以上であった.以上から,FDを伴う症例においてはCFSIPを施行することが望ましいと思われた.強度近視網膜分離症に対してCILM.離を併用した硝子体手術を施行し,黄斑形態の改善や,視力およびCCRTの有意な改善を得た.したがって,本術式は強度近視網膜分離症の治療に有用であると思われた.しかしながら,FDを伴い中心窩が菲薄化している症例ではCFSIPによって術後全層円孔を予防する必要がある.本研究は後ろ向き検討であり,症例数も少ないため,今後のさらなる検討が必要と思われる.文献1)PillipsCCI:RetinalCdetachmentCatCtheCposteriorCpole.CBrJOphthalmolC42:749-753,C19582)TakanoCM,CKishiCS:FovealCretinoschisisCandCretinalCdetachmentinseverelymyopiceyeswithposteriorstaph-yloma.AmJOphthalmolC128:472-476,C19993)BenhamouN,MassinP,HaouchineBetal:MacularretiC-noschisisCinChighlyCmyopicCeyes.CAmCJCOphthalmolC133:C794-800,C20024)GohilCR,CSivaprasadCS,CHanCLTCetCal:MyopicCfoveoschi-sis:aclinicalreview.EyeC29:593-601,C20155)GaucherCD,CHaouchineCB,CTadayoniCRCetCal:Long-termfollow-upofhighmyopicfoveoschisis:naturalcourseandsurgicaloutcome.AmJOphthalmolC143:455-462,C20076)IkunoCY,CSayanagiCK,COhjiCM:VitrectomyCandCinternalClimitingCmembraneCpeelingCforCmyopicCfoveoschisis.CAmJOphthalmolC137:719-724,C20047)TaniuchiS,HirakataA,ItohYetal:VitrectomywithorwithoutinternallimitingmembranepeelingforeachstageofCmyopicCtractionCmaculopathy.CRetinaC33:2018-2025,C20138)IkunoCY,CSayanagiCK,CSogaCKCetCal:FovealCanatomicalCstatusCandCsurgicalCresultsCinCvitrectomyCforCmyopicCfoveoschisis.JpnJOphthalmolC52:269-276,C20089)ShimadaCN,CSugamotoCY,COgawaCMCetCal:FoveaCsparingCinternalClimitingCmembraneCpeelingCforCmyopicCtractionCmaculopathy.AmJOphthalmolC154:693-701,C201210)ShimadaN,TanakaY,TokoroTetal:NaturalcourseofmyopicCtractionCmaculopathyCandCfactorsCassociatedCwithCprogressionCorCresolution.CAmCJCOphthalmolC156:948.957,C201311)AmandaR,IgunasiJ,XavierMetal:NaturalcourseandsurgicalCmanagementCofChighCmyopicCfoveoschisis.COph.thalmologicaC231:45-50,C201412)島田典明,大野京子:強度近視網膜分離症アップデート.眼科C56:499-504,C201413)廣田和成:強度近視網膜分離症の手術適応.眼科C56:C1433-1437,C201414)HirakataA,HidaT:Vitrectomyformyopicposteriorret.inoschisisCorCfovealCdetachment.CJpnCJCOphthalmolC50:C53-61,C200615)HoCT,CYangCM,CHuangCJCetCal:Long-termCoutcomeCofCfoveolarCinternalClimitingCmembraneCnonpeelingCforCmyo.pictractionmaculopathy.RetinaC34:1833-1840,C2014***

緑内障眼の傍視神経乳頭網膜分離症

2017年8月31日 木曜日

《第27回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科34(8):1169.1177,2017c緑内障眼の傍視神経乳頭網膜分離症市.岡.伊.久.子市岡眼科CPeripapillaryRetinoschisisinGlaucomaEyesIkukoIchiokaCIchiokaEyeClinic緑内障症例に網膜分離症を認めることがあり,おもに黄斑部に及んだ例が報告されているが,網膜.離の合併がなく黄斑部に及ばない症例は見過ごされている可能性がある.当院で緑内障経過観察中の症例にCOCTにて視神経乳頭耳側断面を測定したところ,5眼に視神経乳頭近傍に網膜分離症を認めた.分離部形状は網膜各層間.層内の浮腫で黄斑部に進展した例はなく,経過を追えたC4眼では緩解,増悪を繰り返した.平均年齢C71.2歳,屈折はC.0.15±1.5D,発症時眼圧はC12.2C±1.3CmmHg,発症時CMD値はC.3.73±3.4CdBであった.網膜分離症の範囲は神経線維層菲薄部に一致し,網膜分離症の視神経乳頭部にC1眼に乳頭Cpitを認めた.頻度はC6カ月間にCOCTにて検査した緑内障患者C5人/490人(1.0%)に認めた.3眼は網膜分離症に対応する部の視野障害が進行した.眼圧は低めだが,さらなる眼圧下降によりC3眼の分離症は軽減している.OCTによる視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚の測定では網膜分離症発症時の網膜神経線維層厚が厚く検出されるため,注意が必要である.Retinoschisiswithglaucomaisreportedasmainlyinvolvingthemacularregion;casesrestrictedtobesidetheopticdiscarerare.Atourhospital,thetemporalsideoftheopticdiscwasscannedusingCirrus(CarlZeissMed-itec,CInc.)OCT.CInC490CpatientsCundergoingCglaucomaCfollowCup,C5CretinoschisisCeyesCwereCfound(1.0%)C.CAverageagewas71.2years;1male,4female;refractionC.0.15±1.5D,intraocularpressureatonset12.2±1.3CmmHgandMDvalueatonset.3.73±3.4CdB.Theschisiswasinvolvedeachretinallayer,attachedtotheopticdiscandover-lappedwiththeretinalnerve.berlayerdefect(NFLD);nocaseinvolvedthemacula.OpticdiscpitwasobservedinConeCeye.CAlthoughCtheCintraocularCpressureCwasClow,CthreeCretinoschisisCeyesCwereCreducedCowingCtoCfurtherCreductionCofCintraocularCpressure.CAttentionCshouldCbeCpaidCinCmeasuringCtheCretinalCnerveC.berClayerCaroundCtheopticdisc(cpRNFL)withtheOCT,becauseincreaseinRNFLthicknessmeasurementwasobservedatthetimeofretinoschisis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(8):1169.1177,C2017〕Keywords:緑内障,網膜分離症,視神経乳頭pit,視野障害.glaucoma,retinoschisis,opticdiscpit,visual.elddisturbance.Cはじめに緑内障症例に視神経乳頭近傍に網膜分離症を認めることがあり,黄斑部に及んだ例が報告されている1.4)が,視神経乳頭近傍に限局する場合,見過ごされやすい.近年ようやく光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomography:OCT)を用い視神経乳頭近傍に限局した網膜分離症が注目されはじめているが報告は少ない5,6).今回当院で緑内障経過観察中の症例C5眼に視神経乳頭近傍に限局する網膜分離症を認めたので,臨床所見を含め報告する.CI症例当院で緑内障にて経過観察中の男性C1人,女性C4人,計C5人の片眼C5眼にCCirrus(CarlCZeissCMeditec,CInc.)OCTにて傍視神経乳頭網膜分離症を認めた.当院ではC2012年より緑内障全例に経過観察中,6カ月ごとに視神経乳頭耳側の網膜断層撮影を施行し,網膜分離症疑い例にはC3-DCscanや検査〔別刷請求先〕市岡伊久子:〒690-0003島根県松江市朝日町C476-7市岡眼科Reprintrequests:IkukoIchioka,M.D.,IchiokaEyeClinic,476-7Asahi-machi,Matsue,Shimane690-0003,JAPAN0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(95)C1169表1症例の内訳網膜分離症発症部位経過観察期間(年)症例性別年齢左右屈折(D)眼軸長(mm)視神経乳頭発症まで発症後C1CMC62CRC0.5C24.37下C5.83C2.80C2CFC60CLC.2.75C24.59下C13.31C1.42C3CFC79CRC0.75C21.08下C18.63C1.08C4CFC69CLC0.25C21.74上C11.57C2.26C5CFC86CRC0.5C22.91下C9.3C0.1平均C71.2C.0.15±1.5C22.9±1.7C13.2±4.5表2症例の内訳症例初診時眼圧(mmHg)初診時CMD分離症発症時眼圧(mmHg)平均眼圧(mmHg)網膜分離症発症後平均眼圧発症時CMD(dB)CMDCslope(dB/年)分離症部CMDCslope(dB/年)CPit発症時CPVD分離症部位(Disc.CNFLD部)視野欠損部C1C21C2.35C12C13.4±1.9C12.2±1.1C.5.45C.0.35C.0.56+.耳下鼻上C2C13C.0.56C13C13.2±1.3C13.4±1.1C.5.47C.0.48C.0.59不明+耳下鼻上C3C14C.3.66C13C12.5±1.7C11.4±2.0C.7.17C.0.81C.1.16不明+耳下鼻上C4C13C1.84C10C8.6±0.9C8.5±1.0C1.39C0.01C.0.06不明+耳上鼻下C5C13C.1.95C13C12.6±1.8C.1.95C0.04C0.06不明+耳下上平均C14.8±3.5C.0.39±2.5C12.2±1.3C12.1±2.0C11.4±2.0C.3.73±3.4C.0.32±0.4C.0.5±0.5C部を変えて断層撮影を施行し視神経乳頭周囲の変化を精査している.平成C28年C3.8月のC6カ月間に緑内障患者C972眼490人中C5人C5眼に網膜分離症を認めた.症例の内訳を表1,2に示す.男性C1人,女性C4人,平均年齢C71.2歳,屈折は近視C1人,遠視C4人で高度近視症例はなかった.眼軸長は平均C22.9C±1.68Cmmであった.経過観察期間は平均C13.2C±4.5年,初診後網膜分離症を認める前は5.18年,認めた後はC0.1.2.8年経過をみていた(表1).初診時眼圧はC13.21mmHg,平均C14.8C±3.5CmmHg,初診時MD値はC.3.66.2.35CdB,平均C.0.39±2.5CdB,網膜分離症発症時の眼圧はC12.2C±1.3CmmHgと低めで発症時CMD値はC.7.17.+1.39CdB,平均C.3.73±3.4CdBであった(表2).網膜分離症は全例視神経乳頭から神経線維層菲薄部に一致し,黄斑部に分離症が及ぶ症例はなかった.症例C1は視神経乳頭耳下側に網膜分離症を認めた(図1a,b).視神経乳頭の分離症部に明らかなCpitを認め,OCTにてCpit部より網膜分離症をきたしている様子を認め,視神経乳頭陥凹内部に硝子体癒着を認めた(図1c,d).初診時眼圧はC21CmmHg,その後点眼薬で眼圧は下降し,経過観察中の平均眼圧はC13.4C±1.9CmmHg,視野感度低下部は下方網膜分離症に対応する上方視野欠損を認め,MDCslopeはC.0.35±0.2CdB/年であったが,下方網膜分離症に対応する上方視野は.0.56±0.24CdBの進行を認めた.図2に網膜分離症をきたした後の眼圧と網膜厚のグラフを示す.眼圧と網膜厚とは連動してはいなかったが,最近は網膜分離症の程度はやや軽減している.症例C2は後部硝子体.離後の症例で,視神経乳頭陥凹は全体に深く下方C1/4に及ぶ網膜分離症をきたした.図3aにOCTCangiographyのCenCface画像,上層に網膜分離症部の神経線維層が描出されており,断面図(図3b)では網膜分離症部が何層にも膨化し,菲薄した神経線維層を認める.蛍光眼底撮影では中期から後期にびまん性の過蛍光を認めたが漏出点は認めなかった(図4).眼圧平均は網膜分離症をきたした右眼C13.2C±1.3CmmHgと比較的安定しているが,MDslopeは.0.48±0.2CdB/年で他眼C0.11C±0.2CdB/年に比し,視野進行を認め,網膜分離症部に対応する上方視野はC.0.59±0.25dB/年の進行を認めた(表2).網膜分離症をきたした後の眼圧と網膜厚のグラフを示す.この症例も眼圧と網膜分離症厚にあまり関連はないが網膜分離症がやや増悪傾向である(図5).本症例のCOCTでの視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚(cpRNFL)の網膜分離症発症前後を比較すると,発症前に視神経乳頭下方神経線維層が右眼に比し左眼の菲薄化を認め図1症例1のOCT画像a:OCTenface画像で視神経乳頭耳下側の暗い部分が網膜分離症の範囲.Cb:OCT視神経乳頭下方断面,視神経乳頭Cpit部より下方に網膜分離症を認める.Cc:OCTangiography脈絡膜層Cenface画像にて耳下側のCpit部の深い陥凹を認める.Cd:OCT水平断にて視神経乳頭下方Cpit部内側に硝子体癒着を認める.C80016網膜厚(μm)700600500400300200100014121086420眼圧mmHg2014/112014/122015/12015/22015/32015/42015/52015/62015/72015/82015/92015/102015/112015/122016/12016/22016/32016/42016/52016/62016/72016/8disc下部厚(μm)耳側部厚(μm)眼圧(mmHg)図2症例1の眼圧と視神経乳頭下部,耳下側部の網膜厚眼圧と網膜厚は連動していない.Cるが(図6),網膜分離症発症後,下方網膜厚は厚く測定され,MDslopeはC.0.81±0.12dB/年と他眼C.0.35±0.17dB/年に左眼の神経線維層菲薄部が右眼より厚くなっている(図7).比し進行しており,とくに上方視野はC.1.16±0.2CdB/年の症例C3は右眼耳下側に網膜分離症を認め,OCTangiogra-進行を認めた(表2).phyの脈絡膜層で右眼視神経乳頭耳下側に深い陥凹を認めた症例C4は左眼耳上側の網膜分離症を認め,視神経乳頭陥凹(図8).網膜分離症に対応する上方視野欠損の進行が著明で,は全体に拡大しており,OCT断面図で視神経乳頭陥凹内部図3症例2のOCT画像a:OCTangiographyのCenface画像,表層に網膜分離症部の神経線維層が描出されている.Cb:断面図では網膜分離症部が何層にも膨化し,菲薄した神経線維層を認める.図4症例2の蛍光眼底撮影中期から後期にびまん性の過蛍光を認めたが,漏出点は認めなかった.80020網膜厚(μm)6001540010200500眼圧mmHg2015/42015/52015/62015/72015/82015/92015/102015/112015/122016/12016/22016/32016/42016/52016/62016/7disc下部厚(μm)眼圧(mmHg)図5症例2の眼圧と視神経乳頭下部の網膜分離症部の網膜厚経過眼圧と網膜厚は連動せず,網膜厚はやや増加し,網膜分離症が増悪傾向である.C図6症例2.網膜分離症発症前のOCT画像a:網膜分離症発症前のCcpRNFL測定にて右眼に比し左眼の視神経乳頭下部神経線維層の菲薄化を認める.Cb:同時期の視神経乳頭耳側網膜断面図.耳下側に網膜神経線維層の著明な菲薄化を認める.C図7症例2.網膜分離症発症後のOCT画像a:症例2,網膜分離症発症後のCcpRNFL測定にて左眼の視神経乳頭下方神経線維層が右眼に比し厚く測定されている.Cb:視神経乳頭下方に網膜分離症を発症し,網膜厚が厚くなっている.図8症例3のOCT画像a:症例3,右眼耳下側に網膜分離症を認める.OCTangiographyのCenface画像,網膜分離症部が暗く認められる.Cb:視神経乳頭下方の網膜分離症.外顆粒層より内層の各層間,層内に浮腫を認める.Cc:OCTangiographyの脈絡膜層で視神経乳頭耳下側に深い陥凹を認めた.Cd:視神経乳頭耳下側の断面図.pitは不明だが網膜分離症に接する部分の陥凹が深くなっている.より網膜分離症発症を認める(図9).MDCslopeは+0.01±0.1CdB/年と進行傾向はなかったが,網膜分離症に対応する下方視野のCMDCslopeはC.0.06±0.08CdB/年と感度低下を認めた(表2).症例C5は約C1カ月前に右眼耳下側に網膜分離症を認めた症例である.OCTCangiographyのCenCface画像で網膜分離症部の視神経乳頭陥凹が深く,分離症部と接していることがわかる(図10).CII考按緑内障眼における網膜分離症については以前より黄斑部に及ぶ症例が報告されていたが,最近ではCOCTの解像度の向上に伴い,視神経乳頭近傍に限局する網膜分離症症例が報告され始めている.Leeら5)は視神経乳頭周囲の網膜神経線維層と黄斑部のCSD-OCTCscan,赤外線写真撮影により緑内障の網膜分離症を調査し,372人中C22人(5.9%)25眼に網膜分離症を認めたと報告.当院の症例と同様,網膜分離症は視神経乳頭に接続し,網膜神経線維層菲薄部にきたしており,C黄斑部に網膜分離症が波及している症例はなかったと報告している.Bayraktarら6)はCOCTを用いC940人の緑内障と801人の緑内障疑患者を比較調査し,緑内障群はC3.1%,緑内障疑群はC0.87%の網膜分離症を認めたとし,彼らの症例も黄斑部に網膜分離症が波及している症例はない.今回は当院で緑内障経過観察中,網膜分離症を視神経乳頭付近に認めたC5症例を報告した.当院では緑内障経過観察時全例半年ごとにOCTで視神経乳頭耳側断面を測定しており,当院での網膜分離症出現頻度は約C1.0%である.上記C2文献と比べると頻度が低いが,これらは視神経乳頭周囲全周の断面図CBモードスキャンを測定し調査しており,当院では視神経乳頭鼻側のみ測定したため,上方,下方にきたした軽度の網膜分離症を検出できなかったものと思われる.Leeらの報告5)では神経線維層のみの分離がC13眼C52%と報告しており,比較的軽度な症例が多く含まれていることがわかる.今回の症例では全例多層にわたって網膜分離をきたしていた.上記C2文献のように視神経乳頭サークルスキャンの断層像を用い軽度の症例を見逃さなければ,より高い検出率となる可図9症例4のOCT画像a,b:左眼耳上側の網膜分離症を認める.Cc:OCTangiography脈絡膜層Cenface画像,視神経乳頭陥凹は全体に拡大していた.Cd:OCT網膜分離症部断面図で視神経乳頭陥凹内部より分離症を認める.C図10症例5のOCT画像a:症例5,OCTangiographyのCenface画像,右眼耳下側に網膜分離症が暗く認められる.網膜分離症部の視神経乳頭陥凹が深く分離症部と接している.Cb:網膜分離症部の断面図.視神経乳頭陥凹に接して網膜分離症を認める.能性がある.OCTの視神経乳頭周囲のサークルスキャンに緑内障の網膜分離症の原因は以前より黄斑部に網膜分離症おいては今回症例C2で表示したように,網膜分離症をきたすをきたした症例より考察されている.Zhaoら1)は正常眼圧と厚みが増加し,神経線維層菲薄部が改善したように見える緑内障の黄斑部網膜分離症症例を報告し,緑内障に伴い神経ため,断層像を直接チェックできない機種では注意が必要で線維層菲薄化や欠損部より液化硝子体が網膜内に入り,網膜ある.C分離症または網膜.離を引き起こす危険があると考察,Zumbroら2)は緑内障患者C5人の網膜分離症につき報告,明らかな視神経乳頭の先天異常を認めない症例に網膜分離症をきたしたことより,視神経乳頭に先天異常がなくても緑内障性陥凹拡大より黄斑網膜分離症,症例によっては網膜.離をきたすことを報告している.彼らは液化硝子体が乳頭陥凹の薄い組織の小孔より漏れ出た可能性がありCopticCpitと機序が類似していると考察している.Takashinaら3)はCpitを認めない緑内障患者に黄斑分離症をきたし硝子体手術を施行,視神経乳頭上膜様組織から網膜分離症をきたし,トンネル状に硝子体と網膜分離症がつながっていたと報告している.Inoueら4)は緑内障C11人C11眼の黄斑分離症(そのうちC10眼は.離症例)を報告,視神経乳頭陥凹拡大はC0.7以上でCpitは認めていない.脆弱神経線維層,視神経乳頭部に硝子体牽引が加わり,網膜血管に沿った裂け目より液化硝子体が入る可能性につき言及している.上記のように網膜分離症は乳頭pitを認めない緑内障例で多数報告されており,緑内障による視神経乳頭陥凹拡大症例に多く,低眼圧の症例でも報告されている.今回の症例は全例網膜分離症はすべて緑内障による網膜神経線維層菲薄部に生じ,OCTで視神経乳頭陥凹部内側の網膜分離を認めた.症例C1のみCopticpitとCpit部への硝子体癒着をCOCTにて認めた.その他の症例ではCpitを認めていない.OCTangiographyのCenface画像でCpitのある症例C1では網膜分離症に接する視神経乳頭部にCpitを認めたが,pitを認めていない症例C3,5において最深陥凹部が網膜分離部に偏り,近接していた.症例C2,4では陥凹が全体に拡大していた.症例2,3,5は網膜分離症を認めるC5年以上前より後部硝子体.離をきたしており,症例C4は分離症を認める約半年前に後部硝子体.離をきたしていた.Kiumehrら7)はEDI-OCTを用い緑内障C45眼中C34眼に篩状板障害を検出したと報告,そのうちC11眼は乳頭Cpitで他はCrimの菲薄化,欠損で下方耳下側に多く上方視野感度低下が強いことを報告,Youら8)は同様にCEDI-OCTで検出できた緑内障篩状板185眼中C40眼にClamellarhole(11眼),離断(36眼)を認めたことを報告している.このように緑内障症例では後天性pitのみでなくCOCTの発展とともに緑内障篩状板障害の頻度の高さが報告されてきている.今回COCTで網膜分離症を視神経乳頭陥凹内に認め,硝子体癒着が明らかな例以外に,後部硝子体.離数年後の硝子体牽引があった可能性の少ない症例にも網膜分離症を認めたことより,Zumbroら2)の考察したように乳頭下部の篩状板部の小孔より硝子体液が網膜内に侵入し網膜分離症をきたした可能性が考えられる.菲薄化した網膜や視神経乳頭縁,血管側の小孔から網膜分離症をきたす可能性については強度近視例や視神経乳頭部の硝子体癒着例でそのような症例を認めることがあるが,今回報告した網膜分離症は視神経乳頭内から隣接する網膜線維層欠損部に扇状に及んでおり,形状が異なると思われる.経過観察中,眼圧,硝子体牽引にかかわらず,網膜分離症部の網膜厚の増減を認め,自然閉鎖が困難な篩状板小孔が原因となっている可能性がある.網膜分離症は緑内障進行に影響があるかどうかだが,今回の症例1.3は網膜分離症に対応する視野の進行傾向を認め,症例C2,3は他眼に比しとくに著明な視野進行を認めた(表2).症例C4は耳上部の網膜分離症で軽度のためか進行は少なく,症例C5は網膜分離症を最近きたした状態で現在はまだ視野進行は認めていない.網膜分離症では分離した網膜神経線維層は著明に菲薄化しており,分離症自体が悪化要因になるかどうかは不明だが,眼圧が低めでも進行性緑内障に発症しやすい可能性がある.網膜分離症の原因が分離症部に接する視神経乳頭に篩状板障害をきたしているとするとCKiumehrら9)の症例と同様に進行しやすい可能性があると思われる.網膜分離症をきたした症例に対する治療法だが,黄斑部に進展した症例はCpit-macular症候群と同様硝子体手術を施行した症例が報告されており,Inoueら4)はC11眼に硝子体手術を施行し,消失まで平均C11カ月かかったと報告している.Zumbroら2)はC1眼は緑内障濾過手術,2眼は硝子体手術で治癒したと報告している.Leeら5)はC22眼中C2眼にトラベクレクトミー,5眼に緑内障点眼を追加し,眼圧下降後の網膜分離症は軽減したと報告している.以上の報告より緑内障合併網膜分離症は黄斑部に及ぶと黄斑.離をきたす危険性もあり,定期検査,注意が必要かと思われる.硝子体手術以外に緑内障手術でも網膜分離症が治癒した報告があり,機序が不明だが網膜分離症の発症に眼圧上昇や変動が誘因になっている可能性が報告されており5,9),濾過手術による大幅な眼圧低下が有効な可能性がある2,5).今回のC5症例は網膜分離症発症時眼圧はC10.13CmmHgと低めだが,視野進行傾向に伴い点眼薬を増加し症例C2以外はさらなる眼圧降下により網膜分離症は軽減している.症例C2に関しては網膜分離症をきたした後の眼圧平均はあまり低下していなかったのでさらに眼圧を低下させる必要があるのかもしれない.これら,網膜分離症の機序や治療についてはさらなる検討が必要かと思われる.網膜神経線維層菲薄部の網膜分離症はCOCTにて同部の断層撮影をしないと発見しにくい変化である.網膜分離症は悪化すると病変が黄斑部に及ぶ危険性もあり,より眼圧を下降させる必要があると思われる.また視神経乳頭周囲サークルスキャンでの神経線維層厚の増加に注意が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)ZhaoCM,CLiCX:MacularCretinoschisisCassociatedCwithCnor-maltensionglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmol249:1255-1258,C20112)ZumbroCDS,CJampolCLM,CFolkCJCCetCal:MacularCschisisCandCdetachmentCassociatedCwithCpresumedCacquiredCenlargedCopticCnerveCheadCcups.CAmCJCOphthalmolC144:C70-74,C20073)TakashinaS,SaitoW,NodaKetal:MembranetissueontheCopticCdiscCmayCcauseCmacularCschisisCassociatedCwithCaCglaucomatousCopticCdiscCwithoutCopticCdiscCpits.CClinCOphthalmolC7:883-887,C20134)InoueM,ItohY,RiiTetal:Macularretinoschisisassoci-atedCwithCglaucomatousCopticCneuropathyCinCeyesCwithCnormalCintraocularCpressure.CGraefesCArchCClinCExpCOph-thalmolC253:1447-1456,C20155)LeeEJ,KimTW,KimMetal:Peripapillaryretinoschisisinglaucomatouseyes.PLoSOneC9:e90129,C20146)BayraktarS,CebeciZ,KabaaliogluMetal:PeripapillaryretinoschisisCinCglaucomaCpatients.CJCOphthalmol,C2016:CID1612720C8pages,C20167)KiumehrCS,CParkCSC,CSyrilCDCetCal:InCvivoCevaluationCofCfocalClaminaCcribrosaCdefectsCinCglaucoma.CArchCOphthal-molC130:552-559,C20128)YouJY,ParkSC,SuDetal:FocallaminacribrosadefectsassociatedCwithCglaucomatousCrimCthinningCandCacquiredCpits.JAMAOphthalmolC131:314-320,C20139)KahookCMY,CNoeckerCRJ,CIshikawaCHCetCal:PeripapillaryCschisisCinCglaucomaCpatientsCwithCnarrowCanglesCandCincreasedCintraocularCpressure.CAmCJCOphthalmolC143:C697-699,C2007***