《第56回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科37(5):609.614,2020c後天性免疫不全症候群以外の患者に発症したサイトメガロウィルス網膜炎5例の臨床的検討島崎晴菜高山圭菅岡晋平竹内大防衛医科大学校眼科学教室CClinicalAnalysisofFiveCasesofCytomegalovirusRetinitisComplicatedwithImmunosuppressiveDiseaseExceptAcquiredImmunode.ciencySyndromeHarunaShimazaki,KeiTakayama,ShinpeiSugaokaandMasaruTakeuchiCDepartmentofOphthalmology,NationalDefenseMedicalCollegeC目的:後天性免疫不全症候群(AIDS)以外の原疾患を有するサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎の臨床所見と特徴を検討した.対象および方法:2010年C4月.2019年C2月に防衛医科大学校病院眼科を受診し,AIDS以外の原疾患がありCCMV網膜炎と診断したC5例C8眼(全例男性)の発症時年齢,原因疾患,CMV網膜炎のタイプ,白血球数,好中球数,発症時と寛解期の矯正視力,視神経乳頭炎の有無,網膜.離の有無,硝子体手術の実施,転帰について後ろ向きに調査した.結果:発症時平均年齢はC59.8C±10.1歳,平均観察期間はC20.9C±32.2カ月,4例が悪性リンパ腫でC1例が糖尿病だった.平均視力は炎症寛解後も改善せず,視力予後が良好だったのはC1例C2眼のみで,2例C3眼はCCMV網膜炎が再発し,2例は原疾患(ともに悪性リンパ腫)により死亡した.結論:AIDS以外の免疫能低下状態の患者に生じたCCMV網膜炎は視力予後が不良である可能性が示唆された.CPurpose:Toevaluatetheclinical.ndingsandcharacteristicsofcytomegalovirus(CMV)retinitiscomplicatedwithbasicimmunosuppressivediseaseexceptacquiredimmunode.ciencysyndrome(AIDS)C.CasesandMethods:Thisretrospectivereviewstudyinvolved8eyesof5consecutivemalepatients(meanage:59.8C±10.1years)diag-nosedwithCMVretinitisbetweenApril2010andFebruary2019attheNationalDefenseMedicalCollegeHospital.Ageatonset,sex,basicdisease,typeofCMVretinitis,visualacuity(VA)intheacutephaseandremissionphase,presenceofretinaldetachmentandopticdiscedema,implementationofvitreoussurgery,andprognosiswereeval-uated.CResults:MeanCLogMARCVACwasC0.64±1.03CinCtheCacuteCphaseCandC0.83±1.38CinCtheCremissionCphase.CRelapseoccurredin3eyesof2cases,andVAimprovedinonly2eyesof1case.Twopatientsdiedduetobasicdisease.CConclusion:CMVCretinitisCcomplicatedCwithCbasicCimmunosuppressiveCdisease,CexceptCAIDS,CisCaCpoorCprognosisofVAandlife.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(5):609.614,C2020〕Keywords:網膜炎,サイトメガロウイルス,悪性リンパ腫.retinitis,cytomegalovirus,malignantlymphoma.はじめにサイトメガロウィルス(cytomegalovirus:CMV)は日和見感染をきたすウイルスとして知られ,CMVの再活性化により免疫抑制状態の患者でCCMV網膜炎を発症させることがある1).CMV網膜炎は前眼部炎症や硝子体炎などの炎症所見が乏しいが,眼底病変は特徴的な所見があり,臨床的には周辺部顆粒型,後極部劇症型,樹氷状血管炎型のC3病型に分類される.周辺部顆粒型は網膜周辺部に出血をほとんど伴わず,白色顆粒状の病変が扇形に集積する.病巣は次第に癒合・拡大しながら進行し,活動性病巣の周辺には白色の顆粒状病変が散在するのが特徴であり,進行はC3病変のなかでは一番緩徐である.後極部劇症型は後極部の血管に沿って網膜出血と浮腫を伴う黄白色滲出斑が出現し,病巣部の網膜は壊死しており出血を伴い速やかに進行し,黄斑浮腫や視神経へ〔別刷請求先〕高山圭:〒C359-8513埼玉県所沢市並木C3-2防衛医科大学校眼科医局Reprintrequests:KeiTakayama,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NationalDefenseMedicalCollege,3-2Namiki,Tokorozawa,Saitama359-8513,JAPANCの炎症進展により急激な視力低下が起きる.樹氷状血管炎型は血管壁の顕著な白鞘化と閉塞性血管炎をきたす2).CMV網膜炎は後天性免疫不全症候群(acquiredimmuno-de.ciencysyndrome:AIDS)患者に発症することが多いが,化学療法中の血液疾患の患者,コントロール不良の糖尿病患者にも発症する3).近年,医療の進歩・社会の超高齢化・糖尿病患者の増加などによりCAIDS以外の患者におけるCCMV網膜炎の発症が増加傾向と報告されているが4,5),それらの眼底所見や視力予後の報告は少ない.今回,AIDS以外の原疾患を有する患者に発症したCCMV網膜炎の臨床所見や予後を比較し,その特徴について検討した.CI対象および方法2010年C4月.2019年C2月に防衛医科大学校病院眼科(以下,当科)を受診し,CMV網膜炎と診断された症例の診療録を後ろ向きに調べた.CMV網膜炎の診断は既報と同様に,採血検査によるCCMVIgG,CMVIgM,特徴的な眼底所見,前房水か硝子体液からのCpolymeraseCchainreaction(PCR)testによるCCMVDNAの検出をもって確定診断とした.3病型(周辺部顆粒型,後極部劇症型,樹氷状血管炎型)の分類と病変部位(Zone1:視神経乳頭周囲C1,500Cμmまたは中心窩周囲C3,000Cμm,Zone2:Zone1の外側から赤道部までの領域,Zone3:赤道部から鋸状縁までの領域)の分類および視神経炎の有無についてはぶどう膜炎専門医C2名(竹内,高山)がそれぞれ検眼鏡的所見より判断した.CMV網膜炎と診断した後,入院しガンシクロビルの経静脈投与による治療を開始し,必要と判断した際には硝子体手術を施行した.炎症が寛解したのち,バルガンシクロビルの内服に切り替えて退院,外来で経過観察した.発症時年齢,性別,原疾患,白血球数,好中球数,CMV網膜炎の病型と病変部位,発症時と寛解期の矯正視力(統計処理のためClogMARに変換した),視神経乳頭炎の有無,網膜.離の有無,硝子体手術の有無,転帰を調べた.〔症例1〕67歳,男性.左眼に霧視が出現し近医を受診したところ,左眼に網膜浮腫と周辺部血管炎があり当科に紹介となった.既往歴として,Cdi.useClargeCBCcelllymphoma(DLBCL)と診断されて当院血液内科で化学療法中だった.初診時,矯正視力は右眼C1.2・左眼C0.9,眼圧は右眼C12.0CmmHg・左眼C10.0CmmHg,左眼は前房内に炎症細胞の浸潤,両眼に軽度の白内障,星状硝子体症,眼底は下方の網膜血管炎とその周囲に網膜浮腫と点状出血があり,周辺部に顆粒状の小滲出斑があった(図1a).同日施行した光干渉断層撮影(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)検査で黄斑部網膜に浮腫があった(図1b).血液検査では可溶性CIL-2レセプターがC735CU/mlと高値であり,IgGC277Cmg/dl,CIgAC13Cmg/dl,CIgM4Cmg/dlと低下し,白血球数はC4,300/ul(好中球数C2,021/ul,リンパ球C1,785/ul,好塩基球C494/ul)と低下していた.CMV抗体(CF法)は陰性だった.眼底所見およびCDLBCLに対する化学療法中であることからCCMV網膜炎・周辺部顆粒型と診断し,ガンシクロビル点滴C600Cmg/日を開始した.治療開始後,左眼矯正視力は初診日をCDay0としてCDay13にC1.0と改善し,眼内の炎症が寛解したため点滴を終了し,バルガンシクロビル塩酸塩C1,800mg/日の内服治療に切り替えた.Day17には左眼矯正視力1.2,中心窩下方の網膜下浮腫と視細胞内節/外節ラインの欠損は残存するが(図1c),白色病変は縮小して中心部の出血が減少した(図1d).Day53には左眼矯正視力はC1.5,眼底の白色病変は消失し血管炎も消炎したため内服加療を終了した.しかしながら,Day96に左眼歪視が出現して矯正視力はC0.3に低下し,左眼の黄斑部下方に白色病変と周辺部耳側に点状出血が再度出現した.CMV網膜炎の再発と診断し,点滴加療・内服加療を再開した.Day133にて左眼の炎症は寛解したが矯正視力はC0.5だった(図1e,f).〔症例2〕76歳,男性.近医眼科で増殖糖尿病網膜症にて経過観察をしていたが,糖尿病はCHbA1cがC9.11%と管理不良だった.左眼視力低下で近医を受診したところ,左眼の高眼圧と前房内炎症があり当科に紹介となった.初診時,矯正視力は右眼C1.2・左眼指数弁,眼圧は右眼C14.0CmmHg・左眼C36.0CmmHg,左眼は前房内の炎症細胞浸潤と虹彩および隅角に新生血管があり,眼底は硝子体出血のため透見不能だった.血液検査ではCHbA1c9.6%,血糖C411Cmg/dlと高値であり,白血球数は8,500/ul(好中球数C5,049/ul,リンパ球C2,839/ul,好塩基球612/ul)だった.ベバシズマブC0.05Cmlを術前に硝子体内投与して硝子体手術を施行したが,黄斑部に黄白色滲出斑と周辺部の点状出血があった(図2).また,術中採取した硝子体検体からCCMV-DNAが検出され(4.37C×104copy),眼底所見と合わせてCCMV網膜炎・後極部劇症型と診断した.初診日をCDay0としてCDay8よりガンシクロビル点滴C600Cmg/日を開始したところ網膜血管炎とフィブリンが改善し,Day41にバルガンシクロビル塩酸塩C900Cmg/日内服治療に切り替えてCDay46に治療終了とした.Day100に右眼の歪視が出現し,右眼眼底に網膜血管の白線化と黄斑部耳側の黄白色病変があった(図3).右眼の前房水からもCPCRにてCCMV-DNAが検出(4.20C×104copy)されたため,右眼にもCCMV網膜炎・後極部劇症型が発症したと診断した.バルガンシクロビル塩酸塩の内服加療で炎症が寛解し,網膜病変が消失したので内服加療を終了して経過観察とした.しかし,Day284に右眼に再度炎症が出現したため内服加療を再開したが,病変周囲の網膜色調が悪化して網膜.離が出現したため,Day317に右硝子体手術・網膜復位術を施行した.経過中も血糖図1症例1の左眼の眼底所見と光干渉断層計(OCT)所見初診時,左眼底に血管炎および周囲の網膜浮腫と点状出血,および周辺部に顆粒状の小滲出斑,星状硝子体症があり(Ca),OCTで黄斑部に網膜浮腫があった(Cb).Day17にて,白色病変中心および周辺部に認めていた出血が改善し病変も縮小した(Cc).OCTでは視神経細胞内節/外節ラインの障害は残存するものの,黄斑部の網膜浮腫は改善した(Cd).最終受診時(Day133),血管炎は寛解し点状出血が消失,黄斑部網膜浮腫は消失した(Ce)が視神経細胞内節/外節ラインは欠損したままであった(Cf).管理は9.11%と管理不良のままだった.あった.CMV抗原陽性がC5例中C2例,CMV抗体測定は検CII結果査を実施したのはC5例中C2例であり,IgG陽性がC1例,IgM陽性がC1例であった(表2).5例の発症時平均年齢はC59.8C±10.1歳,全例男性で平均経CMV網膜炎の病型は後極部劇症型がC6眼,周辺部顆粒型過観察期間はC20.9C±32.2カ月だった.原疾患は化学療法中が2眼だった.病変部位はZone1が3眼,Zone2が3眼,の悪性リンパ腫C4例,コントロール不良の糖尿病C1例であっCZone3がC2眼だった.視神経乳頭炎は後極部劇症型の病巣た.平均白血球数はC4,460C±2,399/ul,平均好中球数はC2,532部位がCZone1のC1例C1眼を除いたC5例C7眼で生じており,C±1,390/ul,平均リンパ球数はC1,832C±1,171/ulだった(表網膜.離は後極部劇症型の病巣部位がCZone3だったC1例C1C1).眼だった(表3).血液検査結果はCCD4Tリンパ球を測定したのはC5例中C3寛解期に視力が改善したのはC2例C3眼のみであり,視力が例であり,そのうちリンパ球数まで測定したのはC1例のみで不変だったのはC2例C2眼,悪化した症例はC3例C3眼だった.図2症例2の左眼の眼底写真図3症例2の右眼の眼底写真黄斑部に黄白色滲出斑と周辺部の点状出血があった.網膜血管の白線化と黄斑部耳側に黄白色病変があった表1各症例の年齢・性別・経過観察期間・原疾患および免疫状態症例年齢(歳)性別経過観察期間(月)原疾患白血球数(/uCl)好中球数(/uCl)リンパ球数(/uCl)C1C75男C5マントル細胞リンパ腫C4,400C2,700C1,800C2C76男C36糖尿病C8,500C5,000C3,600C3C50男C84悪性リンパ腫C1,800C930C580C4C67男C11濾胞性リンパ腫C2,300C1,700C2,600C5C57男C3濾胞性リンパ腫C5,300C2,200C580表2各症例の血液検査および前房水PCR検査結果症例CD4T細胞(%/ul)CMV抗原CCMVIgGCCMVIgG前房水中のCCMV-DNAPCR結果1C7.5/.陽性C.C.陽性(左C.右C2.91C×106)C2C22.4/.陰性陰性陽性陽性(左C4.27C×104右C4.20C×104)C3C./.陰性C.C.陰性C4C5.9/120陰性C.C.C.C5C./.陽性陽性陰性C.C表3各眼の病型・病変部位と所見・小数視力症例病眼病型病変部位視神経乳頭炎網膜.離発症時視力寛解期視力1右後極部劇症型CZone3有有C0.1C0.2左後極部劇症型CZone2有無C0.4C0.8C2右後極部劇症型CZone2有有C0.9C0.05左後極部劇症型CZone1有無指数弁光覚弁なしC3右後極部劇症型CZone1無無C0.5C1.2左後極部劇症型CZone2有無C1.0C1.0C4右周辺部顆粒型CZone1有無C0.9C0.2C5左周辺部顆粒型CZone3有無C0.5C0.5C表4増悪時・寛解時の平均logMAR全体CZone1CZone2CZone3発症時C0.64±1.03C0.50±0.96C0.15±0.18C0.65±0.35寛解時C0.83±1.38C0.76±1.55C0.47±0.59C0.50±0.20表5硝子体手術の有無と転帰症例病眼硝子体手術転帰1右実施せずDay190原疾患で死亡左実施せずC2右再発後実施CMV網膜炎が再発し,急性網膜壊死に近い状態となったため硝子体手術を施行した左実施せず炎症は寛解するが視力改善せずC3右実施せず経過良好左実施せず経過良好C4右実施せずDay96CMV網膜炎が再発したC5左実施せずDay261原疾患で死亡した発症時平均ClogMARはC0.64C±1.03,寛解期平均ClogMARでC0.83±1.38と有意な変化はなかった.病型別にみると,後極部型の発症時平均ClogMARはC0.02C±0.88で,寛解期ClogMARはC0.15C±1.32であり,周辺部顆粒型の発症時平均ClogMARはC0.17C±0.13,寛解期ClogMARはC0.06C±0.24だった.部位別にみると,Zone1の発症時平均ClogMARはC0.50C±0.96,寛解期ClogMARはC0.76C±1.55,Zone2の発症時平均ClogMARはC0.15C±0.18,寛解期ClogMARはC0.47C±0.59,Zone3の発症時平均ClogMARはC0.65C±0.35,寛解期ClogMARはC0.50C±0.20だった(表4).2例は原疾患により死亡し,2例C3眼のCCMV網膜炎はいったん治療によって寛解したが治療を終了すると平均C1.8カ月(1.1.3.2カ月)で再発し,そのうちC1例C1眼は再発時に網膜.離が生じたため硝子体手術を施行した.寛解期視力および生命予後が良好だったのはC1例C2眼だった(表5).CIII考按今回,AIDS以外の原疾患による免疫能低下でCCMV網膜炎をきたしたC5例C8眼の臨床所見や予後をまとめた.全例男性で病型は後極部劇症型がC3例C6眼,周辺部顆粒型がC2例C2眼であり,視力改善例はC1例C2眼(原疾患はCDLBCL)のみでC5眼中C3眼はCCMV網膜炎の治療が終了すると炎症が再燃して視力は不良となり,2例は原疾患により死亡した.AIDS患者でのCCMV網膜炎は主要な合併症であり,1996年に登場した多剤併用療法(highlyCactiveCantiretroviraltherapy:HAART)導入以前にはCAIDS患者のC37%に発症し6),AIDS患者最大の失明原因とされた7).HAARTにより,AIDS患者におけるCCMV網膜炎の発症率は導入前のC10.20%になったと報告されている8).濱本らは,HAARTを(111)施行したCAIDS患者C261例のうちCHAART導入前にC23例,導入後にC16例にCCMV網膜炎をきたし,最終視力C0.2以下はC7眼(15%)であったこと,HAART導入後に発症した症例のほうが導入前発症例に比べて軽症例が多く視力予後が良かったことを報告している9).本研究では寛解期視力がC0.2以上だったのはC1例C2眼(25%)であり,4例C6眼(75%)は最終視力がC0.2未満だった.AIDSは治療によって免疫能が改善するが,AIDS以外の原疾患は治療自体がむずかしく免疫能賦活化が困難なために,CMV網膜炎が悪化・再燃しやすい可能性が示唆される.病巣と正常網膜の境界部分にみられる顆粒状の病変はCgranularborderとよばれる.滲出斑は徐々に拡大するが病巣の中心部は萎縮傾向を示し,約C20%の症例で網膜.離を併発する4).また,CMV網膜炎の視力障害は,Zone1では黄斑部と視神経の障害,Zone3では網膜.離が生じることが原因であると報告されている10).今回,Zone1のC3眼中C1眼は視力が改善して治療後も炎症の再燃がなく経過良好だったが,2眼は治療後に炎症が再燃して視力予後が不良だった.CZone2のC3眼中C2眼は視力が改善したがC1例は原疾患により死亡した.Zone3のC2眼中C2眼はC2例とも治療後も視力が改善せず原疾患により死亡した.5例C8眼中,Zone3のC1眼(12.5%)でのみ網膜.離が生じたが,この結果はCStew-artの報告6)と矛盾しなかった.5例中C1例は内服加療を終了すると患眼だけでなく健眼にもCCMV網膜炎が発症した.CMV網膜炎は通常片眼性で発症するが,未治療または治療が奏効しないと両眼に発症すると報告がある10).AIDSではCHAARTにより白血球数が回復して免疫能も改善するが1,6,7),今回のようにCAIDS以外の原疾患による免疫能低下状態でCCMV網膜炎が発症した症例あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020C613は免疫状態が初発時も再発時も抑制状態であり,原疾患の治療を中断すると健眼も含めCCMV網膜炎が再燃する可能性がある.症例C2は,一般的には免疫能が改善しやすい糖尿病が原疾患であるが,経過中の血糖管理がCHbA1cがC9.11%台と一貫して不良であり,そのため免疫能が改善しなかったことが再燃の原因と考えられる.しかしながら本研究の症例数は少なく,今後多くの症例数を対象とした検討が必要と考えられる.CIV結論AIDS以外の原疾患に合併したCCMV網膜炎C5例C8眼の臨床所見と特徴について検討した.AIDS以外の免疫能低下状態の患者に生じたCCMV網膜炎は治療後も再燃が多く,生命予後のみならず視力予後も不良である可能性が示唆された.文献1)柳田淳子,蕪城俊克,田中理恵ほか:近年のサイトメガロウイルス網膜炎の臨床像の検討.あたらしい眼科C32:699-703,C20152)園田康平,川島秀俊,大黒伸行ほか:ヘルペス感染によるぶどう膜炎,所見から考えるぶどう膜炎(園田康平,後藤浩),p175-202,医学書院,20133)関本慎一郎,村上昌,今村周ほか:後天性免疫不全症候群(AIDS)に合併したサイトメガロウイルス網膜炎のC1例.あたらしい眼科19:1359-1362,C20024)TakayamaK,OgawaM,MochizukiMetal:Cytomegalo-virusretinitisinapatientwithproliferativediabetesreti-nopathy.OcularImmunolIn.ammC21:225-226,C20135)YamasakiCS,CKohnoCK,CKadowakiCMCetal:Cytomegalovi-rusretinitisinrelapsedorrefractorylow-gradeBcelllym-phomaCpatientsCtreatedCwithCbendamustine.CAnnCHematolC96:1215-1217,C20176)VrabecTR:PosteriorsegmentmanifestationsofHIV/AIDS.SurvOphthalmolC49:131-157,C20047)Foscarnet-GanciclovirCCytomegalovirusCRetinitisTrial:5.CClinicalCfeaturesCofCcytomegalovirusCretinitisCatCdiagnosis.CStudiesCofCocularCcomplicationsCofCAIDSCResearchCGroupCinCcollaborationCwithCtheCAIDSCClinicalCTrialsCGroup.CAmJOphthalmolC124:141-157,C19978)JabsCDA,CAhujaCA,CVanCNattaCMCetal:CourseCofCcyto-megalovirusretinitisintheeraofhighlyactiveantiretro-viraltherapy:.ve-yearCoutcomes.COphthalmologyC117:C2152-2161,C20109)濱本亜裕美,建林美佐子,上平朝子ほか:ヒト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