《原著》あたらしい眼科37(10):1289.1298,2020cブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験相原一*1関弥卓郎*2*1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学*2千寿製薬株式会社CPhaseIIIStudytoEvaluatetheE.cacyandSafetyofNovelBrimonidine/BrinzolamideOphthalmicSuspensionComparedwithBrimonidineOphthalmicSolutioninPatientswithPrimaryOpen-AngleGlaucoma(Broad-De.nition)orOcularHypertensionMakotoAihara1)andTakuroSekiya2)1)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicineandFacultyofMedicine,TheUniversityofTokyo,2)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.C0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)の眼圧下降効果および安全性をC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)と比較した.原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症患者を対象に,ブリモニジンをC4週間投与した後,眼圧値がC18.0CmmHg以上のC355例にCSJP-0125またはブリモニジンをC4週間投与した.治療期C4週の眼圧変化値は,SJP-0125群C.2.9±2.0mmHg,ブリモニジン群C.2.4±2.0CmmHgで,群間差は.0.6CmmHg(95%信頼区間:C.1.0.C.0.1,p=0.0109)であり,SJP-0125のブリモニジンに対する優越性が検証された.副作用はCSJP-0125群C12.9%,ブリモニジン群C1.1%に認められた.重篤な副作用は認めず,おもな副作用は既知のものであったことから,SJP-0125の安全性に問題はないと考えられた.CPurpose:ToCcompareCtheCintraocularpressure(IOP)-loweringCe.cacyCandCsafetyCofCtheC.xedCcombinationCophthalmicCsuspensionCofCbrimonidineCtartrate0.1%/brinzolamide1%(SJP-0125)withCthoseCofCbrimonidineCtar-trate0.1%(brimonidine)C.Subjects:Thisstudyinvolved355patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertension,whoseIOPwas≧18.0CmmHgafterbrimonidineadministrationfor4weeksandwhounderwentSJP-0125orbrimonidineadministrationforanadditional4weeks.ThemeanIOPchangesatWeek4ofthetreatment-periodCwereC.2.9±2.0CmmHgCinCtheCSJP-0125CgroupCandC.2.4±2.0CmmHgCinCtheCbrimonidineCgroup,CandCtheCdi.erencebetweenthetwogroupswas.0.6CmmHg(95%CI:.1.0to.0.1,Cp=0.0109)C,thusdemonstratingthesuperiorityCofCSJP-0125CtoCbrimonidine.CInCtheCSJP-0125CgroupCandCtheCbrimonidineCgroup,Ctreatment-relatedCadverseevents(TRAEs)wereCobservedCin12.9%Cand1.1%,Crespectively.CAlthoughCpreviouslyCreportedCTRAEsCassociatedwithbrimonidineorbrinzolamidecommonlyoccur,noseriousTRAEswereobserved.Conclusion:SJP-0125wasfounde.ectiveforloweringIOPandsafe,withnoseriousTRAEs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1289.1298,C2020〕Keywords:ブリモニジン,ブリンゾラミド,配合剤,緑内障,比較試験.brimonidine,brinzolamide,.xedcombi-nationophthalmicsuspension,glaucoma,comparativestudy.Cはじめに治療法は眼圧下降である1).わが国では単剤としてプロスタ緑内障治療の目的は患者の視機能を維持させることであグランジン関連薬,Cb遮断薬,Ca2作動薬,炭酸脱水酵素阻り,現在,緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な害薬,Rhoキナーゼ阻害薬,Ca1遮断薬,交感神経非選択性〔別刷請求先〕関弥卓郎:〒C650-0047神戸市中央区港島南町C6-4-3千寿製薬株式会社研究開発本部Reprintrequests:TakuroSekiya,ResearchandDevelopmentDivision,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,6-4-3Minatojima-Minamimachi,Chuo-ku,Kobe,Hyogo650-0047,JAPANC作動薬,副交感神経作動薬が承認されている.緑内障診療ガイドラインでは,薬物治療を行う場合まず単剤療法から開始し,目標眼圧に達していないなど有効性が十分でない場合には多剤併用(配合点眼剤を含む)を行うとされている1)が,わが国で承認されている配合点眼剤の有効成分の組み合わせはプロスタグランジン関連薬とCb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬とCb遮断薬,Ca2作動薬とCb遮断薬のC3種のみである.そのため,上記以外の組み合わせで配合点眼剤を開発することは治療の選択肢を広げることができる点で臨床的意義があると考える.0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)は,Ca2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩と炭酸脱水酵素阻害薬であるブリンゾラミドを有効成分とする配合点眼剤である.ブリモニジン酒石酸塩は房水産生を抑制し,ぶどう膜強膜路からの房水流出を促進することで眼圧下降効果を示す2).また,眼圧下降効果に相応しない視野維持効果があることも報告されている3).ブリンゾラミドは房水産生を抑制することで眼圧下降効果を示す4).そこで,SJP-0125の第CIII相比較試験として,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象に,SJP-0125の有効性(眼圧下降効果)および安全性について,SJP-0125の有効成分の一つであるC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)を対照に比較検討したので報告する.CI方法1.実施医療機関および治験責任医師本治験は,表1に示す全国C55医療機関で実施した.治験開始に先立ち,すべての医療機関の治験審査委員会で審議され,治験の実施が承認された.本治験は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則,治験実施計画書,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」第C14条第C3項および第C80条のC2に規定する基準ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)に関する省令」などの関連規制法規を遵守して実施した.治験情報の登録は,UMIN-CTRに行った(UMIN試験ID:UMINC000028493).C2.目的原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象として,SJP-0125をC1日C2回C4週間点眼したときの有効性(眼圧下降効果)および安全性を,ブリモニジンを対照に比較検討することを目的とした.C3.対象原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症と診断され,ブリモニジンをC4週間投与後の眼圧がC18.0CmmHg以上で,表2の基準に該当する患者を対象とした.すべての被験者から治験参加前に文書による同意を得た.C4.方法a.被験薬被験薬(SJP-0125)は,点眼剤C1Cml中にブリモニジン酒石酸塩をC1Cmg,ブリンゾラミドをC10Cmg含有する懸濁性点眼剤である.Cb.治験デザイン・投与方法本治験は,多施設共同無作為化単遮蔽(評価者遮蔽)並行群間比較試験として実施した.観察期にブリモニジンをC1回C1滴,1日C2回朝(8:00.10:00)および夜(20:00.22:00),両眼にC4週間点眼した後,治療期にCSJP-0125またはブリモニジンをC1回C1滴,1日C2回朝および夜,両眼にC4週間点眼した.治験デザインを図1に示した.治験薬は点眼容器を小箱に入れて封緘し,外観上の識別不能性を確保した.治験薬割付責任者が識別不能性を確認した後,治験薬の無作為割付を行った.被験者への割付は,観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値のC2時間値および観察期終了日(治療期開始日)のC2時間値のスクリーニング検査日からの眼圧変化値を因子とし,施設および各因子の群間のバランスを確保するため,動的に割付群を決定した.SJP-0125群,ブリモニジン群の割付比はC1:1とした.割付表は厳封し,開鍵時まで治験薬割付責任者が保管した.Cc.被.験.者.数SJP-0125群とブリモニジン群の眼圧下降の差を1.0mmHg,共通の標準偏差を約C2.6CmmHgと推定,有意水準両側C5%,検出力C90%と設定し,必要な評価被験者数を各群C144例と算出した.中止脱落を考慮してCSJP-0125群,ブリモニジン群の目標被験者数を各群C160例とし,合計C320例と設定した.C5.検査・観察項目眼圧,最高矯正視力,細隙灯顕微鏡検査所見(結膜・眼瞼・角膜),眼底,視野,血圧・脈拍数の各検査を表3のスケジュールで実施した.眼圧は,Goldmann圧平眼圧計で朝の点眼前かつC8:00.10:00の間にC0時間値を測定し,点眼後はC2時間値および原則としてC7時間値を測定した.また,治験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくないまたは意図しない疾病またはその徴候を有害事象として収集した.治験薬との因果関係を否定できない場合は副作用とした.C6.併用薬および併用処置治験期間中,表2の除外基準に抵触する薬剤または処置の併用は禁止した.C7.評価方法および解析方法a.有効性最大の解析対象集団(fullanalysisset:FAS)を有効性の表1実施医療機関および治験責任医師実施医療機関治験責任医師実施医療機関治験責任医師たかはし眼科髙橋俊明松村眼科医院松村明金沢大学附属病院杉山和久医療法人明和会宮田眼科病院大谷伸一郎医療法人社団豊栄会さだまつ眼科クリニック貞松良成医療法人陽山会井後眼科馬渡祐記医療法人社団深志清流会清澤眼科医院清澤源弘医療法人恕心会さめしま眼科鮫島基泰医療法人社団はしだ眼科クリニック橋田節子医療法人社団彩光会札幌かとう眼科加藤祐司たまがわ眼科クリニック關保中の島たけだ眼科竹田明野村眼科野村亮二東北大学病院津田聡吉村眼科内科医院吉村弦公益財団法人湯浅報恩会寿泉堂綜合病院神田尚孝医療法人社団緑泉会南波眼科南波久斌眼科君塚医院君塚佳宏医療法人大宮はまだ眼科濱田直紀医療法人誠療会尾﨏眼科クリニック尾﨏雅博医療法人大宮はまだ眼科西口分院福岡詩麻市橋眼科クリニック市橋慶之医療法人社団泰成会こんの眼科今野泰宏東京大学医学部附属病院坂田礼医療法人社団うえだ眼科クリニック上田裕子東京浜松町眼科クリニック南光太郎医療法人社団瑞英会野近眼科医院吉見裕美子藤井眼科藤井博明医療法人社団碧明会大沢眼科・内科大澤彰岸根公園眼科斉藤秀典武蔵小金井さくら眼科安田佳守臣国保直営総合病院君津中央病院中村洋介医療法人社団慶翔会両国眼科クリニック岩崎美紀医療法人天神疋田眼科医院*疋田直文東京医科大学病院丸山勝彦渡辺眼科渡辺純子いまい眼科今井雅仁大森町眼科クリニック天野由紀医療法人湘山会眼科三宅病院三宅豪一郎医療法人良仁会柴眼科医院柴宏治医療法人社団秀明会遠谷眼科遠谷茂東京慈恵会医科大学附属病院久米川浩一健康保険組合連合会大阪中央病院井上由美子諸星眼科クリニック諸星計草津眼科クリニック望月英毅西府ひかり眼科野口圭医療法人鈴木眼科クリニック鈴木亨医療法人社団ひいらぎ会若葉台眼科佐藤功医療法人宮本眼科宮本秀久医療法人かがやきくぼた眼科久保田泰隆望月眼科望月泰敬医療法人菅澤眼科医院菅澤啓二医療法人杏水会右田眼科右田雅義杉浦眼科杉浦寅男医療法人宮嶋会みやじま眼科宮嶋聖也*旧:医療法人福ビル疋田眼科医院表2おもな選択基準および除外基準おもな選択基準1)20歳以上の外来患者(日本人),性別不問2)両眼とも最高矯正視力がC0.3以上の者3)観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値がC18.0CmmHg以上C31.0CmmHg以下の者おもな除外基準1)緑内障に対する手術またはレーザー療法,内眼手術(各種レーザー療法を含む),角膜移植術または角膜屈折矯正手術の既往のある者2)コンタクトレンズの装用が必要な者3)高度の視野障害がある者4)スクリーニング検査日の過去C180日以内に副腎皮質ステロイドの眼内注射,Tenon.下注射または結膜下注射を実施した者5)治験期間中に病状が進行するおそれのある網膜疾患を有する者6)原発開放隅角緑内障(広義),高眼圧症以外の活動性の眼科疾患を有する者7)がんに罹患している者,または重篤な全身性疾患を有する者8)脳血管障害,起立性低血圧,心血管系疾患などの循環不全を有する者9)角膜障害を有する者10)ブリモニジン酒石酸塩または他のCa2作動薬,ブリンゾラミドまたは他の炭酸脱水酵素阻害薬,スルホンアミド系薬剤,本治験で使用する薬剤の成分に対し,アレルギーまたは重大な副作用の既往のある者11)緑内障・高眼圧症に対する治療薬,副腎皮質ステロイド,交感神経刺激薬,交感神経遮断薬,副交感神経刺激薬,モノアミン酸化酵素阻害薬,抗うつ薬,炭酸脱水酵素阻害薬,抗コリン作用を含む治療薬,1日あたりC4.5Cgを超えるアスピリンの大量投与または別に規定したもの以外の眼局所の治療薬を使用する予定のある者12)治験責任医師または治験分担医師が本治験への参加が適切でないと判断した者スクリーニング検査日前治療現行治療(緑内障点眼剤の種類は問わない)または無治療図1治験デザイン表3検査・観察スケジュール○:スクリーニング実施前に文書による同意を取得した.測定時点C7時間での眼圧,血圧・脈拍数は,原則測定した.主たる解析対象集団とした.主要評価項目は,治療期C4週における治療期開始日からの眼圧変化値(2時間値)とした(優越性の検証).欠測値に対しては,lastCobservationCcarriedforward(LOCF)によりデータを補完した.副次評価項目は,治療期の各観察日(治療期C2週および治療期C4週)の眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値,眼圧変化率(それぞれのC0時間値,2時間値,7時間値,0時間値とC2時間値の平均値,0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値)とした.t検定(有意水準両側C5%)によりCSJP-0125群およびブリモニジン群のC2群間で比較した.眼圧値は,治療期開始日と投与後の各観察日の値をCpairedt検定(有意水準両側5%)で比較した.また,治療期C4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に解析した.Cb.安全性治療期に組み入れられた被験者のうち,治験薬の投与を一度も受けなかった被験者,治療期開始日以降の再来院がないなどの理由により安全性が評価できなかった被験者を除外した集団を安全性解析対象集団(safetyset:SS)とした.有害事象,最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧・脈拍数を評価した.有害事象は,発現割合(発現例数/SS例数)を算出した.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,血圧・脈拍数は治療期の治験薬投与前後を比較し表4被験者背景(FAS)SJP-0125ブリモニジン合計項目分類(n=173)(n=177)(n=350)性別男87(C50.3)91(C51.4)178(C50.9)女86(C49.7)86(C48.6)172(C49.1)年齢(歳)平均値±標準偏差C62.7±12.9C61.5±13.3C.最小値.最大値21.8C522.8C7C.対象疾患1原発開放隅角緑内障(広義)126(C72.8)126(C71.2)252(C72.0)(有効性評価対象眼)原発開放隅角緑内障87(C50.3)89(C50.3)176(C50.3)前視野緑内障39(C22.5)37(C20.9)76(C21.7)高眼圧症47(C27.2)51(C28.8)98(C28.0)緑内障治療薬2有137(C79.2)133(C75.1)270(C77.1)無36(C20.8)44(C24.9)80(C22.9)眼局所の合併症2有118(C68.2)112(C63.3)230(C65.7)無55(C31.8)65(C36.7)120(C34.3)眼局所以外の合併症有131(C75.7)131(C74.0)262(C74.9)無42(C24.3)46(C26.0)88(C25.1)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層3102(C59.0)105(C59.3)207(C59.1)(有効性評価対象眼)中眼圧層441(C23.7)41(C23.2)82(C23.4)高眼圧層530(C17.3)31(C17.5)61(C17.4)例数(%)C.:該当なし1:対象疾患は下のように定義した.原発開放隅角緑内障:以下の(1),(2)を満たす者前視野緑内障:以下の(2)を満たし治療が必要と判断された者(1)緑内障性視野異常の存在,(2)緑内障性視神経障害の存在2:左右眼どちらか一方でも該当した場合,有とした.3:18CmmHg以上C20CmmHg未満4:20CmmHg以上C22CmmHg未満5:22CmmHg以上た.眼底および視野はスクリーニング検査日からの悪化の有無を比較した.CII結果1.被験者の構成同意を取得した被験者はC452例,観察期にブリモニジンの投与を開始したのはC438例であった.このうちC355例が無作為化され,治療期の投与を開始した.治験完了例はC345例,治験未完了例はC10例であった.治療期の投与を開始したC355例(SJP-0125群C178例,ブリモニジン群C177例)をCSSとした.このうち,治療期開始日以降の有効性評価が可能な検査データのないC4例および除外基準に抵触したC1例を除くC350例(SJP-0125群C173例,ブリモニジン群C177例)をCFASとした.被験者背景(FAS)を表4に示した.C2.有効性眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値および眼圧変化率を表5,眼圧変化値の推移を図2,対象疾患別,治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期C4週,2時間値)を表6,図3および図4に示した.主要評価項目である治療期C4週における眼圧変化値(2時間値)の平均は,SJP-0125群ではC.2.9±2.0CmmHg,ブリモニジン群では.2.4±2.0CmmHgであり,統計学的に有意な差を認め(点推定値:C.0.6CmmHg,95%両側信頼区間:C.1.0.C.0.1CmmHg,p=0.0109),SJP-0125群のブリモニジン群に対する優越性が検証された.副次評価項目である治療期C2週および治療期C4週の眼圧値は,治療期C4週のC2時間値を除くすべての測定時点でCSJP-0125群のブリモニジン群に対する統計学的に有意な差を認めた(いずれもCp<0.05).また,治療期C2週および治療期C4週での眼圧変化値および眼圧変化率は,すべての測定時点でSJP-0125群のブリモニジン群に対する統計学的に有意な差を認めた(いずれもCp<0.05).さらに,治療期C2週および治療期C4週の眼圧値は,すべての測定時点で投与前と比較して統計学的に有意に低下した(いずれもp<0.0001).また,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に治療期4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を解析した結果,いずれの層も全体の解析結果と同じ傾向を示した.表5眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移(FAS)測定時点CSJP-0125ブリモニジン0時間値治療期開始日眼圧値C21.2±2.3(173)C21.1±2.4(177)治療期C2週眼圧値C19.0±2.8*††(171)C19.8±3.1*††(173)変化値C.2.2±1.9††(171)C.1.3±1.9††(173)変化率C.10.5±8.8††(171)C.6.1±9.3††(173)治療期C4週眼圧値C18.6±2.8*††(172)C19.5±3.2*††(173)変化値C.2.6±2.0††(172)C.1.6±2.0††(173)変化率C.12.2±9.4††(172)C.7.6±9.9††(173)2時間値治療期開始日眼圧値C19.9±2.1(173)C19.8±2.1(177)治療期C2週眼圧値C17.1±2.8*†(171)C17.8±2.9*†(173)変化値C.2.7±1.9††(171)C.2.0±2.1††(173)変化率C.14.0±9.9††(171)C.10.2±10.4††(173)治療期C4週眼圧値C16.9±2.9*(172)C17.5±2.9*(173)変化値1C.2.9±2.0†(173)C.2.4±2.0†(177)変化率C.14.8±10.3†(172)C.12.1±10.5†(173)7時間値治療期開始日眼圧値C19.6±2.6(163)C19.5±2.7(164)治療期C2週眼圧値C17.4±2.7*††(161)C18.4±3.1*††(159)変化値C.2.2±1.9††(161)C.1.1±2.3††(159)変化率C.10.8±9.7††(161)C.5.3±12.2††(159)治療期C4週眼圧値C17.3±2.8*††(161)C18.2±3.1*††(158)変化値C.2.3±1.9††(161)C.1.3±2.1††(158)変化率C.11.8±9.4††(161)C.6.3±10.9††(158)0時間値とC2時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.5±2.1(173)C20.5±2.2(177)治療期C2週眼圧値C18.0±2.6*††(171)C18.8±2.9*††(173)変化値C.2.5±1.6††(171)C.1.6±1.8††(173)変化率C.12.2±8.1††(171)C.8.2±8.9††(173)治療期C4週眼圧値C17.8±2.7*†(172)C18.5±2.9*†(173)変化値C.2.7±1.8††(172)C.2.0±1.8††(173)変化率C.13.5±8.7††(172)C.9.8±9.0††(173)0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.2±2.2(163)C20.1±2.2(164)治療期C2週眼圧値C17.8±2.6*††(161)C18.7±2.8*††(159)変化値C.2.4±1.5††(161)C.1.4±1.6††(159)変化率C.11.8±7.6††(161)C.7.3±8.2††(159)治療期C4週眼圧値C17.6±2.6*†(161)C18.4±2.9*†(158)変化値C.2.6±1.6††(161)C.1.7±1.6††(158)変化率C.12.8±8.0††(161)C.8.7±8.6††(158)平均値±標準偏差(例数)眼圧値および変化値の単位:mmHg変化率の単位:%1:LOCFにより欠測データを補完した.*:p<0.0001(治療期C2週またはC4週の眼圧値Cvs治療期開始日の眼圧値Cpairedt検定,有意水準両側5%)C†:p<0.05C††:p<0.01(SJP-0125vsブリモニジンCt検定,有意水準両側5%)C3.安全性31件,2例(1.1%)2件であった.治療期にCSJP-0125群およびブリモニジン群に発現した有治療期の副作用一覧を表7に示した.おもな副作用は,害事象はそれぞれ50例(28.1%)68件および32例(18.1%)SJP-0125群では霧視12例(6.7%),眼刺激5例(2.8%),36件であった.このうち副作用は,それぞれC23例(12.9%)味覚異常C4例(2.2%),結膜充血C2例(1.1%),眼の異常感C2例(1.1%)および結膜炎C2例(1.1%),ブリモニジン群では0時間値1結膜充血C1例(0.6%)およびアレルギー性結膜炎C1例(0.6%)であった.-2**副作用はすべて軽度であった.副作用による中止はCSJP-0125群でC1例(結膜炎)あり,副作用による死亡および重篤な副作用はなかった.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血-3**-4-5SJP-0125ブリモニジン-6圧・脈拍数には,臨床上問題となるような変動や所見はみら治療期開始日治療期2週治療期4週れなかった.2時間値III考按SJP-0125の有効性を検証するにあたり,SJP-0125の有効成分の一つであり,わが国で第二選択薬として広く使用されているブリモニジンを対照に比較試験を行った.治療期C4週での眼圧変化値(2時間値)を比較した結果,SJP-0125群はブリモニジン群よりも優れた眼圧下降効果を示した.さら眼圧変化値(mmHg)-2-3*-4-5SJP-0125ブリモニジン-6に,治療期C2週および治療期C4週の0,2,7時間値のいずれ治療期開始日治療期2週治療期4週でもCSJP-0125群はブリモニジン群よりも優れた眼圧下降を7時間値1****-3-4示し,1日を通して良好な眼圧下降効果を示した.治療期C4週のC2時間値では,SJP-0125群のブリモニジン群に対する追加の眼圧下降効果はC0.6CmmHgに留まったが,0時間値およびC7時間値での追加眼圧下降効果はC2時間値よりも大きかった(図2).この結果から,ブリンゾラミドの炭酸脱水酵素阻害作用による終日にわたる基礎房水分泌の抑制作用が,ブ眼圧変化値(mmHg)0-1-2-5SJP-0125ブリモニジン-6リモニジンの眼圧下降効果を補完することで,SJP-0125は治療期開始日治療期2週治療期4週ブリモニジン単剤と比較してより良好なC1日を通した眼圧下降効果を示すと期待される.これらのことから,ブリモニジン単剤からCSJP-0125への切り替えは有用であると考える.0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤はプロスタグランジン関連薬と併用することでさらなる眼圧下降効果を示すことが国内第CIII相試験で確認されている5).またチモロールの単独治療で効果不十分の患者を対象とした海外第CIII相試験では,1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤により追加の眼圧下降効果が得られることが確認されている6).これらのことから,SJP-0125も作用機序が異なる他の緑内障治療薬と併用することで追加の眼圧下降効果を示すことが期待される.また,対象疾患別に解析した結果から,SJP-0125は原発開放隅角緑内障,前視野緑内障および高眼圧症のいずれに対しても眼圧下降効果を示すと考えられる.さらに,治療期開始日(2時間値)の眼圧値別に解析した結果から,SJP-0125は投与開始前の眼圧値にかかわらず眼圧下降効果を示すと考えられる.安全性に関しては,有害事象の発現頻度はCSJP-0125群で28.1%,ブリモニジン群でC18.1%,副作用の発現頻度はSJP-0125群でC12.9%,ブリモニジン群でC1.1%であり,いずれの群にも重篤な副作用は認めなかった.SJP-0125群で平均値±標準偏差,*:p<0.05**:p<0.01(SJP-0125vsブリモニジンt検定,有意水準両側5%)図2眼圧変化値の推移比較的発現頻度の高かった副作用は霧視(6.7%),眼刺激(2.8%),味覚異常(2.2%)であり,これらはC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤またはC1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤で既知の副作用である7,8).もっとも頻度の高かった霧視はC1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤でもおもな副作用として報告されており,SJP-0125群でのみ認められた.また,1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤の点眼後,涙液の白濁化や涙液層の不安定化によって霧視が生じることが報告されている9,10)ことから,ブリンゾラミドを懸濁させた製剤であるCSJP-0125でも,同様の機序で霧視が発現した可能性が考えられる.これらのことから,各単剤と比較して,4週間の使用ではCSJP-0125の安全性に問題はないと考える.以上の結果より,SJP-0125は原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症の患者に対して,既承認薬であるブリモニジンに比べ眼圧下降効果は有意に高く,その効果はC1日を通じて良好であること,安全性に問題のないことを確認した.ま表6対象疾患別,治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期4週,2時間値)項目CSJP-0125ブリモニジン眼圧値(治療期開始日,2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C19.7±2.1(126)C19.5±2.0(126)原発開放隅角緑内障C19.6±2.1(87)C19.5±2.2(89)前視野緑内障C20.0±2.0(39)C19.5±1.6(37)高眼圧症C20.3±2.1(47)C20.6±2.3(51)眼圧値(治療期開始日,2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C18.5±0.6(102)C18.5±0.5(105)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C20.6±0.6(41)C20.5±0.5(41)高眼圧層:22CmmHg以上C23.5±1.9(30)C23.7±1.7(31)眼圧変化値(治療期C4週,2時間値)C1対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C.3.0±2.1(126)C.2.4±2.0(126)原発開放隅角緑内障C.3.1±2.0(87)C.2.4±2.1(89)前視野緑内障C.2.9±2.2(39)C.2.4±2.1(37)高眼圧症C.2.7±2.0(47)C.2.3±2.0(51)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C.2.8±2.0(102)C.2.5±2.0(105)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C.3.3±1.7(41)C.1.9±2.0(41)高眼圧層:22CmmHg以上C.2.8±2.5(30)C.2.6±2.3(31)眼圧変化率(治療期C4週,2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C.15.5±10.5(125)C.12.5±10.9(123)原発開放隅角緑内障C.15.9±10.2(87)C.12.5±10.8(86)前視野緑内障C.14.5±11.2(38)C.12.4±11.1(37)高眼圧症C.13.1±9.7(47)C.11.1±9.6(50)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C.15.3±10.8(102)C.13.5±10.8(103)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C.15.9±8.6(41)C.9.2±9.8(39)高眼圧層:22CmmHg以上C.11.4±10.5(29)C.10.9±9.6(31)平均値±標準偏差(例数)眼圧値および変化値の単位:mmHg,変化率の単位:%1:LOCFにより欠測データを補完した.CSJP-0125ブリモニジン眼圧変化率(%)平均値±標準偏差図3対象疾患別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)眼圧変化率(%)SJP-0125ブリモニジン0低眼圧層中眼圧層高眼圧層-5-10-15-20-25-30(102)(103)(41)(39)(29)(31)(例数)平均値±標準偏差低眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)18mmHg以上20mmHg未満中眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)20mmHg以上22mmHg未満高眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)22mmHg以上図4治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)表7治療期の副作用一覧(SS)副作用名1CSJP-0125(n=178)ブリモニジン(n=177)件数例数(%)件数例数(%)全体C3123(C12.9)C22(1C.1)眼障害C霧視C眼刺激C結膜充血C眼の異常感C結膜炎Cアレルギー性結膜炎C結膜浮腫C眼脂C点状角膜炎C27125222111122(C12.4)C12(C6.7)C5(2C.8)C2(1C.1)C2(1C.1)C2(1C.1)C1(0C.6)C1(0C.6)C1(0C.6)C1(0C.6)C20010010002(1C.1)0(0C.0)0(0C.0)1(0C.6)0(0C.0)0(0C.0)1(0C.6)0(0C.0)0(0C.0)0(0C.0)神経系障害C味覚異常C444(2C.2)C4(2C.2)C000(0C.0)0(0C.0)1:副作用名はCICH国際医薬用語集CMedDRA/JVersion20.1のCPT(基本語)を用いて分類した.た,各単剤の臨床試験結果より,SJP-0125を作用機序が異なる緑内障治療薬と併用することで追加の眼圧下降効果が期待されることから,各単剤と他の緑内障治療薬との併用で効果不十分な場合に,各単剤からCSJP-0125への切り替えが有効であると考えられる.さらに,SJP-0125はわが国で初めてのCb遮断薬を含まない配合点眼剤であり,プロスタグランジン関連薬も含まないことから,それらが使用できない患者にも使用できる配合剤として期待される.加えてCSJP-0125は眼圧下降効果に相応しない視野維持効果が報告されている3)ブリモニジン酒石酸塩を有効成分として含有することから,SJP-0125でも同様の効果が期待される.以上より,SJP-0125は緑内障治療において有用性の高い配合点眼剤であると考える.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第C4版.日眼会誌122:5-53,C20182)BurkeCJ,CSchwartzM:PreclinicalCevaluationCofCbrimoni-dine.SurvOphthalmol41(Suppl1):S9-S18,19963)KrupinT,LiebmannJM,Green.eldDSetal:Arandom-izedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisu-alfunction:resultsfromthelow-pressureglaucomatreat-mentCstudy.AmJOphthalmolC151:671-681,C20114)IesterM:BrinzolamideCophthalmicsuspension:aCreviewCofCitsCpharmacologyCandCuseCinCtheCtreatmentCofCopenCangleglaucomaandocularhypertension.ClinOphthalmolC2:517-523,C20085)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした臨床第III相試験─チモロールとの比較試験またはプロスタグランジン関連薬併用下におけるプラセボとの比較試験.日眼会誌116:955-966,C20126)MichaudCJE,CFrirenB:ComparisonCofCtopicalCbrinzol-amide1%CandCdorzolamide2%CeyeCdropsCgivenCtwiceCdailyinadditiontotimolol0.5%inpatientswithprimaryopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAmCJCOph-thalmolC132:235-243,C20017)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,C20128)MarchCWF,COchsnerCKI,CtheCBrinzolamideCLong-TermTherapyStudyGroup:Thelong-termsafetyande.cacyofCbrinzolamide1.0%(Azopt)inCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAmCJCOph-thalmolC151:671-681,C20119)石橋健,森和彦:二種類の炭酸脱水酵素阻害点眼薬投与に伴う霧視について.日眼会誌110:689-692,C200610)野口毅,川﨑史朗,溝上志朗ほか:ブリンゾラミド点眼後の霧視の発生機序.日眼会誌114:369-373,C2010***