《第28回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科35(7):967.970,2018cリパスジル点眼追加治療12カ月の成績上原千晶新垣淑邦力石洋平與那原理子酒井寛琉球大学大学院医学研究科・医科学専攻眼科学講座CTwelve-monthResultofAdd-onTherapywithRipasudilOphthalmicSolutionChiakiUehara,YoshikuniArakaki,YouheiChikaraishi,MichikoYonaharaandHiroshiSakaiCDepartmentofOphthalmology,UniversityoftheRyukyus緑内障点眼加療中の患者で,リパスジル点眼追加治療を行ったC76例C105眼を後ろ向きに調査した.3カ月以上継続使用し経過を追えたC52例C79眼(原発開放隅角緑内障C40眼,原発閉塞隅角緑内障C19眼,続発緑内障C20眼,平均点眼スコアはC3.7)の平均眼圧は追加前C17.7CmmHgからC12カ月後ではC15.0CmmHgに下降(下降率C10.6%)した.点眼スコアC3以下とC4以上では,それぞれC19.2CmmHgからC15.2CmmHg,17.7CmmHgからC15.0CmmHgへと,12カ月時点まで両群とも有意に眼圧下降した.リパスジル投与前眼圧C15CmmHg以上とC15CmmHg未満の比較ではC15CmmHg以上群では全時点で眼圧は下降(12カ月後下降率C14.5%)したが,15CmmHg未満群では全時点で有意な眼圧下降はなかった.3カ月以降継続群C79眼での点眼中止は眼圧下降不十分C14眼と副作用による中止C9眼の計C23眼(30.4%)であった.CInCaCretrospectiveCreviewCofC105CeyesCofC76CpatientsCwithCglaucomaCinsu.cientlyCcontrolledCunderCmultipleCmedicaltherapy,79eyesof52patientsweretreatedformorethan3monthswithtopicalRipasudiladd-onthera-py.CInCtheC79Ceyes,CintraocularCpressure(IOP)wasCreducedC10.6%Coverall.CIOPCwasCsigni.cantlyCreducedCinCbothgroupsoflow(3orless)andhighscore(4ormore)ofanti-glaucomamedications.AmongeyeswithIOP15CmmHgorChigher,CIOPCreductionCwasCsigni.cantCatCallCtimeCpoints,CbutCthisCwasCnotCtheCcaseCinCeyesCwithCIOPClessCthan15CmmHg.23eyes(30.4%)discontinuedtheRipasudiladd-ontherapybecauseofinsu.cientIOPcontrolorocularsidee.ects.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(7):967.970,C2018〕Keywords:緑内障,点眼,ROCK阻害薬,リパスジル,多剤併用.glaucoma,eyedrop,ROCKinhibitor,Ripa-sudil,multiplemedicaltherapy.CはじめにRhoキナーゼ阻害薬であるリパスジルは,線維柱帯細胞,Schlemm管内皮細胞の細胞骨格を修飾することにより,房水の主流出経路を促進し眼圧を下降させる1).既存の緑内障点眼薬と作用機序が異なるため,これまで眼圧下降が不十分であった症例に対しても効果が期待されているが,新しい薬剤であり,長期の効果と安全性の報告は少ない.今回,筆者らは既存の緑内障点眼薬で治療中であり眼圧下降が不十分でリパスジル点眼薬を追加投与した症例について,1年間の眼圧下降効果と安全性について後ろ向きに検討した.CI対象および方法当科にて緑内障治療中の患者のうち,眼圧下降が不十分と考えられ,2014年C12月.2016年C2月にリパスジル点眼薬1日C2回点眼を追加した症例はC106例C147眼である.3カ月以内の内眼手術既往のあるC9例C9眼,処方後C3カ月未満で転院,未来院となったC22例C33眼を除外したC76例C105眼を安全性解析対象とした.76例C105眼のうち,手術を前提として追加点眼しC2カ月以内に手術施行したのがC14例C14眼(レーザー線維柱帯形成術C2例C2眼,水晶体再建術C3例C3眼,濾過手術C9例C9眼),眼圧上昇による中止がC1眼,追加時または追加C2カ月以内に併用薬剤を変更したのがC10例C11眼であった.処方中止,または併用薬剤の変更となった上記の25例C26眼を除いたC55例C79眼を有効性解析対象とした(図1).追加前,追加後C1カ月,2カ月,3カ月,6カ月,12カ月の診察日時の眼圧を集計した.各時点で来院がなかったも〔別刷請求先〕上原千晶:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原C207琉球大学大学院医学部眼科学講座Reprintrequests:ChiakiUehara,M.D.,DepartmentofOphthalmology,UniversityoftheRyukyus,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0215,JAPAN0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(117)C967のはその月のみの欠損値とし,3カ月以降で点眼中止となった例はそれ以降の解析から除外した.全例で診察日朝の点眼は施行するよう指示されていた.統計には,リパスジル点眼薬の追加前と追加後それぞれの測定時期での眼圧は,対応のあるCt検定を,点眼スコア別,追加前眼圧別の眼圧下降値,下降率はCWilcoxonの符号付順位検定を用いた.CII結果眼圧解析対象のC55例C79眼は原発開放隅角緑内障(prima-ryopenangleglaucoma:POAG)40眼,原発閉塞隅角緑内障C19眼,続発緑内障C20眼(落屑緑内障C6眼,ステロイド緑内障C5眼,ぶどう膜炎続発緑内障C3眼,血管新生緑内障C6眼)で,年齢C66.8C±14.0(30.86)歳,男性28例42眼,女性C24例C37眼,追加投与開始前眼圧C17.7C±4.7(12.38)mmHg,1点眼薬をC1点,アセタゾラミド内服をC2点としたときの点眼スコアC3.7C±1.0(1.5)点(1点:4眼,2点:4眼,3点:18眼,4点:44眼,5点:8眼,6点:1眼),Humphrey静的視野計CSITAスタンダードC24-2または30-2によるCMD値はC.14.0±7.1CdBであった.リパスジル点眼薬を追加後,眼圧はすべての期間で有意に下降した(図2).平均眼圧は追加前C17.7CmmHgからC12カ月後ではC15.0CmmHgに下降(C.2.1CmmHg,下降率C10.6%)した.点眼スコアがC3以下とC4以上の群の追加前と追加C12カ月後の平均眼圧は,それぞれC19.2mmHgからC15.2mmHg,17.7CmmHgからC15.0CmmHgへと,両群ともに有意に下降し10リパスジル(*p<0.05,対応のあるt検定)投与前1M2M3M6M12M(n=79)(n=77)(n=58)(n=77)(n=77)(n=52)下降値(mmHg)C2.0±4.0C1.4±3.0C1.6±4.3C2.3±3.7C2.1±3.9下降率(%)C9.1±16.1C7.2±17.1C6.3±17.8C11.1±16.5C10.6±21.0図2眼圧の推移(全体)C968あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018(118)眼圧(mmHg)2422201816141210リパスジル1M2M3M6M12M追加前(*p<0.05:Wilcoxonの符号付順位検定)スコア3以下(n=26)(n=25)(n=14)(n=24)(n=26)(n=15)スコア4以上(n=53)(n=52)(n=44)(n=53)(n=51)(n=37)下降率(%)スコアC3以下C10.1±16.9C10.6±11.7C12.1±18.3C13.9±18.4C14.2±16.8スコアC4以上C8.6±16.1C6.1±18.6C3.7±17.2C9.7±15.6C9.2±22.7図3点眼スコア別眼圧の推移24眼圧(mmHg)22201816141210リパスジル追加前(*p<0.05:Wilcoxonの符号付順位検定)15mmHg以上(n=59)(n=58)(n=41)(n=58)(n=57)(n=35)15mmHg未満(n=20)(n=19)(n=17)(n=19)(n=20)(n=17)下降率(%)15CmmHg以上C11.6±15.7C8.0±18.2C8.9±18.2C12.4±15.7C14.5±20.815CmmHg未満C1.5±15.9C5.1±14.9C.1.8±14.3C7.4±18.8C2.3±20.0C図4リパスジル追加前眼圧別眼圧の推移はC9眼で,そのうちC4眼は眼瞼炎によるものであり,すべて投与後C6カ月以降に出現していた.掻痒感はC2眼がC3カ月に,3眼がC6カ月以降に出現していた.投与開始C3カ月後以降継続群C79眼のうちC12カ月までの点眼中止例はC23眼(30.4%;95%CCI,C20.2.40.5%)であり,内訳は眼圧下降不十分14眼(17.7%;95%CCI,C9.3.26.1%),前述した副作用による中止例C9眼であった.12カ月時点での未来院のC4眼は分母から除外した.眼圧下降不十分C14眼の内訳は点眼変更C4眼,併用薬変更C6眼,緑内障手術追加C2眼,レーザー治療追加C2眼であった.CIII考察Taniharaら2)はCPOAG,落屑緑内障,高眼圧症を対象としたリパスジル点眼追加治療C1年の前向き研究においては,プロスタグランジン製剤(PG)+b遮断薬に追加したときにおけるC12カ月後の眼圧下降値はC1.7CmmHg(下降率C9.9%)であったと報告した.また,多剤併用例におけるC3カ月の下降効果は,塚原ら3)の報告では下降率C9.3%,Inazaki4)らは下降値C2.8mmHg(下降率C15.5%),またCSatoら5)の報告の6カ月では下降値C3.1CmmHg(下降率約C15%)であった.今回の結果は平均点眼スコア3.7,12カ月の眼圧下降値C2.1mmHg(下降率C10.6%)と過去の報告とほぼ同様であった.(119)あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018C969追加前眼圧がC15mmHg以上の群では,眼圧下降値は14CmmHg以下の群と比べて有意に大きかったと中谷ら6)の報告がある.今回は眼圧下降が不十分で投薬を中止された例を除いた検討であったが,追加前眼圧C15CmmHg以上の群ではC12カ月において有意な眼圧下降を認めたが,15CmmHg未満の群では有意な眼圧下降はなかった.一方,術前点眼数にかかわらず眼圧下降が観察されたが,これはリパスジルが房水の主流出経路に作用し,既処方薬とは異なる作用機序であるためと考えられた.リパスジルの副作用は,処方後C2.3カ月以上経過して発症する眼瞼炎7),アレルギー性結膜炎や眼瞼炎(中止例は14.4%)2)の報告がある.今回の検討でも同様の結果であった.病型ごとの検討は症例数が少なく行っておらず,眼圧測定時間にも幅があることは後ろ向き研究であるための限界である.今回の検討は多剤併用の多い緑内障専門外来での検討であったため,眼圧下降不十分や副作用などで約C3割の症例で処方を中止した.より少ない点眼数で検討した臨床研究と後ろ向きの症例検討との相違であると考えられた.したがって,今回の結果を軽症例のより多い一般臨床現場に当てはめることはできない.より少ない併用数の症例を対象とした検討が必要である.病型別の検討ができなかったことも課題であり,今後症例数を増やして検討する必要がある.CIV結論リパスジル点眼薬は多剤併用例に対しても併用薬の数にかかわらず眼圧下降効果があり,追加前眼圧C15CmmHg以上の症例において有効であった.長期使用では眼瞼炎などの副作用に注意が必要である.利益相反:酒井寛(カテゴリーCP:トーメーコーポレーション)文献1)HonjoM,TaniharaH,InataniMetal:E.ectofrho-asso-ciatedCproteinCkinaseCinhibitorCY-27632ConCintraocularCpressureCandCout.owCfacility.CInvestCOphthalmolCVisCSciC42:137-144,C20012)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:One-yearclini-calCevaluationCofC0.4%Cripasudil(K-115)inCpatientCwithCopen-angleCglaucomaCandCocularChypertension.CActaCOph-thalmolC94:e26-e34,C20163)塚原瞬,榎本暢子,石田恭子ほか:リパスジル点眼薬による眼圧下降効果の検討.臨眼71:611-616,C20174)InazakiCH,CKobayashiCS,CAnzaiCYCetCal:E.cacyCofCtheCadditionalCuseCofCripasudil,CaCrho-kinaseCinhibitor,CinCpatientsCwithCglaucomaCinadequatelyCcontrolledCunderCmaximummedicaltherapy.JGlaucomaC26:96-100,C20175)SatoCS,CHirookaCK,CNaritaCECetCal:AdditiveCintraocularCloweringCe.ectsCofCtheCrhoCkinaseCinhibitor,CripasudilCinCglaucomaCpatientsCnotCableCtoCobtainCadequateCcontrolCafterothermaximaltoleratedmedicaltherapy.AdvTher33:1628-1634,C20166)中谷雄介,杉山和久:プロスタグランジン薬,Cbブロッカー,炭酸脱水酵素阻害薬,ブリモニジンのC4剤併用でコントロール不十分な緑内障症例に対するリパスジル点眼薬の追加処方.あたらしい眼科C33:1063-1065,C20167)富重明子,齋藤雄太,高橋春男:開放隅角緑内障に対するリパスジル点眼薬の短期的な眼圧下降効果.臨眼C71:1105-1109,C2017***970あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018(120)