眼痛を伴う水疱性角膜症に対する羊膜移植術の長期成績佛坂扶美門田遊佐々木研輔阿久根穂高吉田茂生久留米大学医学部眼科学講座CLong-TermOutcomeofAmnioticMembraneTransplantationforPainfulBullousKeratopathyFumiHotokezaka,YuMonden,KensukeSasaki,HodakaAkuneandShigeoYoshidaCDepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicineC目的:久留米大学病院眼科にて,眼痛を伴う水疱性角膜症に対し羊膜移植術を施行した症例の長期成績について検討したので報告する.対象および方法:対象はC2006年C1月.2017年C11月に,当院にて眼痛を伴う水疱性角膜症に対し羊膜移植術を施行したC15例C15眼(男性C4例,女性C11例)である.手術時の平均年齢はC78.0歳で平均術後経過観察期間はC54.4カ月であった.これらの対象の原疾患,痛みの改善の有無,角膜上皮が再生するまでに要した日数を検討した.結果:原疾患は緑内障術後C7眼(46.7%)がもっとも多く,白内障術後C6眼(40.0%),その他C2眼(13.3%)であった.痛みはC15眼中C15眼(100%)で改善した.また,角膜上皮が再生するまでの平均日数はC11.6日であった.羊膜の脱落は,外傷を契機に上皮とともに脱落した症例がC1眼(6.7%),感染で脱落した症例がC1眼(6.7%),部分的に自然に脱落した症例がC8眼(53.3%),脱落していなかった症例がC5眼(33.3%)であった.感染性角膜穿孔の症例を除き,全例で痛みの再燃はなく,上皮は安定していた.結論:眼痛を伴う水疱性角膜症に対する羊膜移植は,眼痛を改善させる安全で有効な治療法であると考えられる.CPurpose:Toevaluatetheoutcomesofamnioticmembranetransplantation(AMT)forpainfulbullouskeratop-athy(BK).CPatients:ThisCstudyCinvolvedC15CeyesCofC15patients(meanage:78.0years)withCpainfulCBKCthatCunderwentAMT(meanfollow-upperiod:54.4months).Inallpatients,theetiologyofBK,painrelief,andelapsedtimeCtoCre-epithelializationCwasCevaluated.CResults:TheCetiologyCofCBKCincludedCpreviousCglaucomaCsurgeryCinC7eyes(46.7%),previouscataractsurgeryin6eyes(40.0%),andotherin2eyes(13.3%).Postsurgery,painreliefwasobtainedinall15eyes(100%),andthemeanelapsedtimetore-epithelializationwas11.6dayspostoperative.AMdetachmentoccurredin1eye(6.7%)duetotraumaandin1eye(6.7%)duetoinfection.TheAMremainedinplacein5eyes(33.3%),yetpartialAMdetachmentspontaneouslyoccurredin8eyes(53.3%).Inalleyeswithstableepithelialization,except1eyewithcornealperforation,therewasnorecurrenceofpain.Conclusion:AMTwasfoundtobeasafeande.ectivetreatmenttorelievepaininpatientsa.ictedwithpainfulBK.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(5):666.671,C2022〕Keywords:水疱性角膜症,羊膜移植.bullouskeratopathy,amnioticmembranetransplantation.はじめに羊膜は胎盤組織の一部で,胎生膜の最内層に位置する半透明の膜である.種々のサイトカインや成長因子を含んでおり,角結膜上皮の正常な分化と増殖を促す,線維組織増生や癒着を抑制する,炎症を抑制する,実質の融解を抑制する作用がある1).そのため,これまで再発翼状片,遷延性角膜上皮欠損,瘢痕性角結膜疾患,角膜穿孔など眼表面疾患の再建で使用されてきた.水疱性角膜症においては角膜内皮細胞の不可逆的な障害により,内皮細胞のポンプ機能が低下し角膜上皮・実質に浮腫が生じた状態である.角膜実質の浮腫により視力低下をきたすが,角膜上皮水疱の破裂により角膜びらんを起こし,疼痛を引き起こすことがある.水疱性角膜症の根本的な治療としては角膜移植があるが,わが国ではドナー角膜が不足してい〔別刷請求先〕佛坂扶美:〒830-0011福岡県久留米市旭町C67久留米大学医学部眼科学講座Reprintrequests:FumiHotokezaka,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicine,67Asahi-machi,Kurume,Fukuoka830-0011,JAPANC666(116)図1手術方法a:綿棒で,接着不良な角膜上皮を含めて,大きく角膜上皮を.離する(青線).b:羊膜の上皮をを上にして角膜上皮欠損部に合わせてトリミングする(赤線).c:羊膜が角膜上皮にかぶらないようにC10-0ナイロン糸でたるまないように縫合し結び目は埋没する.その後治療用ソフトコンタクトレンズ装用する.るため,視力不良の症例,もしくは角膜移植を希望しない症例に対しては,治療用コンタクトレンズ装用,photothera-peuticCkeratectomy(PTK),結膜被覆術,羊膜移植術などが行われている.羊膜移植は,Piresらによって痛みを伴う水疱性角膜症に対して有効であったと初めて報告され2),近年,患者の痛みの軽減と上皮治癒のため羊膜移植が用いられてきた3.8).今回,久留米大学病院眼科(以下,当科)にて,眼痛を伴う水疱性角膜症に対し羊膜移植術を施行したC15例の長期成績について検討したので報告する.CI対象および方法対象はC2006年C1月.2017年C1月に,当科にて水疱性角膜症による疼痛除去目的で羊膜移植術を施行し,術後C12カ月以上経過観察できたC15例C15眼(男性C4例,女性C11例)である.適応は視力回復の可能性がない,あるいは角膜移植を希望しない患者で,全例で疼痛の原因が水疱性角膜症による角膜上皮障害であることを確認するために治療用コンタクトレンズにて痛みが消失することを確認した.羊膜は,当初は久留米大学倫理委員会の承認を得て,当院産婦人科の協力のもと帝王切開時に得られた胎盤組織から羊膜を採取し,手術室にて清潔操作で洗浄後,1.5MDMSOにて.80℃で保存しておいたものを使用し,2015年C8月からは久留米大学羊膜バンク(カテゴリーCII)から供給された羊膜を使用した.手術の方法を図1に示す.まず綿棒にて接着不良な角膜上皮を,角膜輪部最周辺を除き可能な限り.離する.準備しておいた羊膜を上皮.離した角膜の上にのせ,眼科用吸水スポンジ(M.Q.A)を羊膜に接触させ,MQAに吸着しない側が羊膜の上皮側であることを確認する.角膜上皮欠損部に合わせて羊膜をトリミングしつつ羊膜移植片を作製し,羊膜上皮側を上にしてC10-0ナイロン糸で縫合する.その際,羊膜移植片がたるまないようにピンと張り,残存した最周辺の角膜上皮に重ならないように縫合することが重要である.結び目は埋没し最後に治療用ソフトコンタクトレンズを装用する.術後は全例に抗菌薬点眼(クラビット点眼液C0.5%もしくはクラビット点眼液C1.5%)と副腎皮質ステロイド薬点眼(フルメトロン点眼液C0.1%)をC1日C3.4回使用し,上皮再生を促すため原則C20%自己血清点眼を併用した.治療用コンタクトレンズは約C1カ月間装用を続け,縫合糸は約半年後に抜糸をした.角膜上皮再生後に羊膜脱落の有無,疼痛の有無,上皮ブレブ形成の有無,上皮の安定性を受診時のカルテの記載や前眼部写真によって確認した.疼痛の評価は受診時にカルテに記載された患者本人の痛みに対する自覚の有無で行った.CII結果症例の詳細を表1に示す.手術時の平均年齢はC78.0C±8.4歳(60.89歳)で平均術後経過観察期間はC54.4C±32.1カ月(14.109カ月)であった.水疱性角膜症の原疾患は緑内障手術後がもっとも多くC7眼(46.7%),ついで白内障術後C6眼(40.0%),その他C2眼(13.3%)であった.視力は全例0.02以下で,視力不良の原因は水疱性角膜症がC8眼で,緑内障による中心視野消失がC7眼であった.水疱性角膜症のC8眼は本人が角膜移植を希望せず羊膜移植を選択した.術後血清点眼を行った症例はC15眼中C11眼であり,4眼は処方忘れであった.15眼中C15眼(100%)で角膜上皮が再生し,角膜上皮が再生するまでの平均日数はC11.6C±6.5日(6.30日)であった.疼痛は,角膜上皮再生後全例で消失し,経過観察中も外傷や感染などで上皮の合併症を生じたとき以外は出現しなかった.羊膜の脱落は,2回の外傷で上皮とともに全部脱落した症例がC1眼(6.7%),感染で全部脱落した症例がC1眼(6.7%)であった.部分的に自然に脱落した症例がC8眼(53.3%),脱落していなかった症例がC5眼(33.3%)であり,移植症例性年齢(歳)原因疾患術前視力視力不良の原因上皮再生期間(日)血清点眼観察期間(月)羊膜の脱落1男C80緑内障手術CHM緑内障C14+24.1自然に一部C2女C76緑内障手術+ぶどう膜炎C0.01緑内障C36+89.7なしC3女C60緑内障手術+ぶどう膜炎CHM水疱性角膜症C9C.109.3自然に一部C4女C89緑内障手術CHM水疱性角膜症C20+46.7自然に一部C5女C80緑内障手術CLP+緑内障C7+24.6なしC6女C87緑内障手術CLP.緑内障C6C.51.1なしC7女C74緑内障手術C0.02緑内障C7+103.2自然に一部C8女C86白内障手術C0.01水疱性角膜症C10C.30.4自然に一部C9女C85白内障手術(ACIOL)CLP.緑内障C7+14.3自然に一部C10女C76白内障手術C0.01水疱性角膜症C10+57.2なしC11女C85白内障手術C0.01水疱性角膜症C16C.76.4感染で全部C12男C64白内障手術C0.01水疱性角膜症C7+90.4外傷で全部C13男C80白内障手術C0.01水疱性角膜症C7+15.2自然に一部C14女C70不明CLP+水疱性角膜症C10+47.9なしC15男C78緑内障CLP+緑内障C14+34.5自然に一部ACIOL:anteriorchamberintraocularlens,HM:handmotion,LP:lightperception.表2術後合併症2上皮欠損外傷自然軽快12C64男抗菌薬点滴+14上皮欠損+眼内炎外傷抗菌薬硝子体注射羊膜はC13眼(86.6%)で最終観察時まで残存していた.感染性角膜穿孔の症例を除き疼痛が再燃していた症例はなく,最終受診時に全例で上皮ブレブ形成は認めず上皮は安定していた.術後合併症はC3例で認めた(表2).症例C1は,術後C14カ月に棒が眼に当たり上皮欠損を認めたが,治療用コンタクトレンズ装用にて改善した.症例C11は,長期間にわたり眼科を受診しておらず詳細が不明だが,術後C72カ月に角膜潰瘍穿孔と感染性眼内炎を認め,もともと光覚がなく認知症もあり治療が困難なため,眼球内容除去を施行した.症例C12は,術後C2カ月に竹の棒が眼に当たり上皮欠損を認め治療用コンタクトレンズ装用で改善したものの,羊膜の下半分が脱落している状態だった.さらにC1年後,眼鏡のつるのはしが眼に当たり,角膜上皮欠損と前房蓄膿を認め,抗菌薬点眼で改善を認めず硝子体混濁が出現したため,抗菌薬点滴と抗菌薬硝子体注射を行い改善した.[代表症例]74歳,女性(表1:症例7).主訴:左眼眼痛.現病歴:30歳頃に両眼ぶどう膜炎に伴う続発性緑内障に対し,近医にて両眼緑内障手術を施行された.その後左眼白内障と瞳孔閉鎖を認めていたためC65歳で当院にて左眼瞳孔形成術+白内障.外摘出+眼内レンズ縫着術を施行した.術後に左眼の眼圧コントロールが不良となり,左眼ニードリングを施行した.その後他院にてC2回左眼ブレブ再建術を行っている.68歳のときに当科で左眼毛様体扁平部濾過手術を施行し,その後水疱性角膜症となった.左眼水疱性角膜症による角膜びらんを繰り返し,痛みの訴えがあり,治療用コンタクトレンズにて痛みが改善することを確認し,羊膜移植について説明し同意が得られたためC2012年C7月当科に入院した.入院時所見:視力は右眼C0.8(1.0×+1.0D(cyl.2.0DAx45°),左眼C0.02(矯正不能),眼圧は右眼C10mmHg,左眼19CmmHg(GAT)であった.Goldmann視野検査で右眼は湖崎分類にてCIIIaだが,左眼は中心視野が消失しており湖崎分類CVbであった.右眼は前眼部にC2時方向に濾過胞を認めており,眼底は視神経乳頭の蒼白を認めていた.左眼はC12時方向に濾過胞,角膜浮腫,角膜上皮障害を認めており(図2a),中間透光体,眼底の詳細は不明であった.経過:2012年C7月左眼羊膜移植術を施行した.術翌日より,クラビット点眼液C0.5%1日C4回,フルメトロン点眼液0.1%1日C3回を開始し,術後C3日より血清点眼C1日C4回を図2症例7(74歳,女性)a:術前写真:水疱性角膜症にて角膜浮腫,角膜上皮障害を認める.Cb:術後C7日:角膜上皮欠損は改善し,痛みの自覚が消失.Cc:術後C3年:わずかな点状表層角膜症を認めるが水疱は消失.痛みの自覚はない.自然に一部羊膜の脱落を認める(.).追加した.術後C1週で治療用コンタクトレンズをはずし,フルオレセイン染色をしたところ,羊膜上は角膜上皮により完CIII考察全に被覆されていた(図2b).術後C45日で治療用コンタク水疱性角膜症においては角膜内皮障害のため,角膜実質のトレンズを中止とし,術後C2カ月に角膜縫合糸が一部ゆるん浮腫による視力不良を認め,角膜上皮障害による異物感や疼だため抜糸し,術後C5カ月には全抜糸となった.術後C3年,痛を認める.このため,水疱性角膜症の治療の目的は視力改わずかにフルオレセイン染色を認めるのみであった(図善だけではなく,疼痛のコントロールも重要となってくる.C2c).術後C103カ月(8.6年)経過観察中,角膜びらんおよび視力予後が良好と考えられる場合は角膜移植が選択される眼痛は再発していない.が,視神経萎縮や黄斑萎縮のため視力予後が不良と考えられる症例や,疼痛緩和のみを希望とする症例に対しては,角膜患者数平均年齢痛みの改善観察期間著者報告年(眼)(歳)(%)上皮再生期間(月)EspanaetalC2003C18C70.2C882.2週C25.1CGeorgiadisetalC2008C81C68C87.615日C21.0CSiuetalC2015C21C68.9C942週C39.0本報告C2020C15C79.2C10012.3日C50.8C移植を第一選択とするにはわが国ではドナー角膜の提供に限りがあるため困難である.高張食塩水点眼や軟膏塗布は軽度の異物感の改善は期待できるが,上皮欠損を繰り返す高度な水疱性角膜症には効果が乏しいと考えられる.治療用コンタクトレンズは高度な水疱性角膜症に対しても痛みを軽減するが,定期的に交換しつつ継続して装用する必要があり,長期間使用することで感染性角膜炎のリスクが生じる.外科的治療としては,結膜被覆術が古くから行われ,疼痛には効果があるが9),緑内障手術を繰り返している患者では被覆が困難な場合があり,整容的な面,輪部幹細胞が障害されるなどの欠点もある.PTKが効果的であったとの報告もあるが6,10),エキシマレーザーを所有していない施設では施行できない.AnteriorCstromalpuncture(ASP)が有用との報告もあり,ParisFdosらはASPと羊膜移植を比較し同等の効果を得られたと報告している7).しかし,ASP術後にCsubepithelial.brosis(上皮下線維症)をきたし,羊膜移植を追加したという報告もあるため注意が必要である11).クロスリンキングが効果的であったという報告12)もあるが,器械を所有していない施設では施行ができない.羊膜移植には以下のようなものがあげられる.①羊膜グラフト:羊膜を強膜,あるいは角膜実質上に移植し,新しい基質を供給することで,再生する角結膜上皮の適切な分化・増殖を図る.②羊膜パッチ:羊膜を一時的なカバーとして用い,上皮化を促進し,抗炎症,実質融解防止を行う.③羊膜スタッフ:羊膜を代用実質として用いる13).水疱性角膜症の眼痛が羊膜移植により軽減する機序としては,羊膜グラフトとして羊膜移植を行い,新しい基質が足場として供給されることで,上皮細胞の遊走と分化を促進し接着を強化するためと考えられる.今回C15眼中C8眼で最終受診時に部分的な羊膜の自然脱落を認めたが,疼痛および上皮ブレブの出現は認められなかった.羊膜移植初期は羊膜が足場となりレシピエント自身の上皮細胞が被覆されるが,年月が経過し羊膜が基質として不要になった場合に自然に脱落したのではないかと考えられた.羊膜が脱落しても経過中に上皮の安定性に問題はなかった.また,羊膜間質には抗血管新生および抗炎症蛋白が多く含まれており,炎症・線維化を抑制することで,羊膜上に健常な上皮が被覆して水疱形成が起こりにくくなるため眼痛が消失すると考えられている2).また,羊膜移植後の拒絶反応に関しては,羊膜上皮移植による抗原感作は弱いため,宿主には長期の抗原記憶が残らないと考えられ,同一ドナーの羊膜を短期間に繰り返して移植をしたり,他の組織移植と併用したり,凍結羊膜ではない生きのよい細胞を含む羊膜を用いた場合でない限り,拒絶反応が少ないとされている14).痛みを伴う水疱性角膜症に対し羊膜移植をした報告はわが国では少なく,小池らがC2例報告をしているのみで,2例中2例(100%)で眼痛の改善を認めている4).長期間経過観察をしている海外での既報および本報告の結果を表3に示す.Espanaらは羊膜グラフトとパッチを行いC18例中C16例(89%)で痛みの改善を認めている3).1例で持続的な痛みを訴え,アルコール球後注射を行い最終的には疼痛管理のために眼球内容除去を行っている.その他C1例は上皮欠損と眼痛が持続している.Georgiadisらは羊膜パッチを行いC81例中C71例(87.6%)で痛みの改善を認めている5).5例がC2回の羊膜移植を,2例がC3回の羊膜移植を,3例がその後CPKPを施行している.Siuらは角膜実質表層切除と羊膜グラフトを行い21例中C20例(94%)で痛みの改善を認めている8).1例が術後C8週間後に羊膜の欠損を認め,結膜被覆を施行している.当科では羊膜グラフトを行いC15例中C15例(100%)で痛みの改善を認めている.前述のようにC3例で合併症を認めているが,3例とも外傷もしくは感染による合併症と考えられ,水疱性角膜症による痛みの再発は認められず,羊膜の再移植,角膜移植,結膜被覆などの追加手術は施行していない.当科を含むこれらの報告では羊膜移植を施行後,平均約C2週で上皮化しており,90%近くの症例で痛みの改善を認めている.以上より,眼痛を伴う水疱性角膜症に対する羊膜移植術は有効で安全な治療法であると考えられる.文献1)島.潤:羊膜移植.日本の眼科74:1269-1272,C20032)PiresCRTF,CTsengCSCG,CPrabhasawatCPCetal:AmnioticCmembraneCtransplantationCforCsymptomaticCbullousCkera-topathy.ArchOphthalmolC117:1291-1297,C19993)EspanaCEM,CGrueterichCM,CSandovalCHCetal:AmnioticCmembranetransplantationforbullouskeratopathyineyeswithCpoorCvisualCpotential.CJCCataractCRefractCSurgC29:279-284,C20034)小池直栄,廣瀬直文,小池生夫ほか:眼痛を伴う水疱性角膜症に対し羊膜移植術が有効であったC2例.眼紀C57:209-212,C20065)GeorgiadisCNS,CZiakasCNG,CBoboridisCKGCetal:Cryopre-servedCamnioticCmembraneCtransplantationCforCtheCman-agementofsymptomaticbullouskeratopathy.ClinExperi-mentCOphthalmolC36:130-135,C20086)ChawlaB,SharmaN,TandonRetal:Comparativeevalu-ationofphototherapeutickeratectomyandamnioticmem-braneCtransplantationCforCmanagementCofCsymptomaticCchronicbullouskeratopathy.CorneaC29:976-979,C20107)ParisFdosS,GoncalvesED,CamposMSetal:AmnioticmembraneCtransplantationCversusCanteriorCstromalCpunc-tureCinCbullouskeratopathy:aCcomparativeCstudy.CBrJOphthalmolC97:980-984,C20138)SiuCGD,CYoungCAL,CChengLL:Long-termCsymptomaticCreliefCofCbullousCkeratopathyCwithCamnioticCmembraneCtransplant.IntCOphthalmolC35:777-783,C20159)北野周作,東野巌,竹中剛一ほか:水疱性角膜症に対するCGundersen法による結膜被覆術の効果について.臨眼C30:683-687,C197610)武藤貴仁,佐々木香る,熊谷直樹ほか:視力回復の可能性のない水疱性角膜症に対するCPhototherapeuticCKeratecto-myの長期成績.あたらしい眼科29:1395-1400,C201211)FernandesCM,CMorekerCMR,CShahCSGCetal:ExaggeratedCsubepithelialC.brosisCafterCanteriorCstromalCpunctureCpre-sentingasamembrane.CorneaC30:660-663,C201112)阿部謙太郎,小野喬,子島良平ほか:水疱性角膜症に対する角膜クロスリンキング術後長期成績,日眼会誌C124:C15-20,C202013)島.潤:羊膜移植の臨床応用.眼科手術C15:25-29,C200214)堀純子:羊膜と免疫反応.眼紀C56:722-727,C2005***