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緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用調査

2022年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(12):1694.1699,2022c緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用調査中牟田爽史*1井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CSurveyontheUseofBrand-NameandGenericEyeDropsforGlaucomaSoshiNakamuta1),KenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用状況,使用理由を調査した.対象および方法:井上眼科病院に通院中で後発医薬品の存在する緑内障点眼薬を使用中のC504例を対象とした.お薬手帳や点眼薬実物から使用薬剤を判断した.先発あるいは後発医薬品の使用理由をアンケートで調査した.結果:対象者は男性C222例,女性C282例,年齢はC68.9±10.8歳,使用薬剤数はC2.5±1.3剤だった.先発医薬品のみ使用C134例(26.6%),後発医薬品のみ使用353例(70.0%),両方とも使用C17例(3.4%)だった.先発医薬品の使用理由は,安心・安全C65.6%,薬局の推奨C12.6%など,後発医薬品の使用理由は,薬局の推奨C59.2%,価格が安いC25.9%などだった.結論:先発医薬品のみ使用は26.6%で,薬剤への安心感や安全性から選択していた.後発医薬品のみ使用はC70.0%で,薬局の推奨や経済的観点から選択していた.CPurpose:Toinvestigatetheuseofbrand-nameandgenericeyedropsforglaucoma.PatientsandMethods:CTheCstudyCinvolvedC504CoutpatientsCseenCatCInoueCEyeCHospitalCwhoCusedCcurrentlyCavailableCbrand-nameCandCgenericglaucomamedications.Thetypeofmedicationusedwasinvestigatedviaanalysisofthemedicationinstruc-tionsheetortheactualmedicationbottles.Thereasonsforuseweresurveyedviapatientquestionnaire.Results:CTherewere222malesand282females,(meanage:68.9±10.8years),andthemeannumberofmedicationsusedwas2.5±1.3.Ofthe504patients,134(26.6%)wereusingonlybrand-namemedications,353(70.0%)wereusingonlyCgenericCmedications,Cand17(3.4%)wereCusingCboth.CReasonsCforCusingCbrand-nameCmedicationsCincludedCsafetyandsecurity(65.6%)andpharmacyrecommendation(12.6%),whileasforuseofthegenericmedications,pharmacyrecommendation(59.2%)andlowerprice(25.9%)weretheprimaryreasons.Conclusions:Ofthe504patients,26.6%CusedConlyCbrand-nameCmedicationsCand70.0%CusedConlyCgenericCmedications,CwithCtheCprimaryCreasonsforusebeingsafetyandsecurityintheformerandpharmacyrecommendationorcostinthelatter.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(12):1694.1699,C2022〕Keywords:緑内障点眼薬,先発医薬品,後発医薬品,薬物選択.glaucomaeyedrops,brand-name,generic,choiceofmedication.Cはじめに近年,厚生労働省は保険財政の改善と患者負担の軽減を考えて先発医薬品ではなく後発医薬品の使用を推奨している.後発医薬品は先発医薬品と同じ有効成分を含有し,効能・効果,用法・用量は原則同一であるが,添加剤(防腐剤を含む)は異なる.後発医薬品は先発医薬品の独占的販売期間(有効性・安全性を検証する再審査期間および特許期間)が終了した後に発売される.厚生労働省の後発医薬品推奨の姿勢は診療報酬にも反映されている.医療機関では薬剤を処方する際に一般名で処方するとC5.7点が加算される(2022年C2月現在).また,調剤薬局では後発医薬品調剤体制加算があり,後発医薬品の使用割合によりC15.28点が加算される.このような施策により後発医薬品の使用割合は年々増加しており,2005年C32.5%,2007年C34.9%,2009年C35.8%,2011年C39.9%,2013年46.9%,2015年C56.2%,2017年C65.8%,2020年C78.3%と〔別刷請求先〕中牟田爽史:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:SoshiNakamuta,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC1694(126)報告されている1).2022年C2月現在,緑内障点眼薬の後発医薬品はC16種類存在する.このように後発医薬品は多数使用されるようになったが,患者がどのような考えで後発医薬品あるいは先発医薬品を選択しているかは不明である.また,後発医薬品を使用している患者の特徴も不明である.そこで今回,患者が使用している緑内障点眼薬を調査し,先発医薬品あるいは後発医薬品の使用理由と患者背景を解析した.CI対象および方法2021年C9月.2022年C2月に井上眼科病院に通院中で,後発医薬品の存在する緑内障点眼薬を使用中で以下の方法により使用薬剤を確認できたC504例を対象とした.男性C222例,女性C282例,平均年齢はC68.9C±10.8歳(平均C±標準偏差),24.93歳であった.使用している緑内障点眼薬はC2.5C±1.3剤,1.6剤であった.配合点眼薬はC1剤とした.外来受診時にお薬手帳あるいは点眼薬実物を持参しているかを患者に問い合わせ,いずれかを持参しており,使用薬剤を正確に確認できた症例を対象とした.対象眼に関しては両眼に点眼薬を使用している症例では使用点眼薬数が多い眼を採用し,左右同数の場合は右眼を採用した.各々使用薬剤が先発医薬品か後発医薬品かを確認後に,先発医薬品あるいは後発医薬品を使用している理由を対面式アンケートで調査した(図1).なお,井上眼科病院では後発医薬品の存在する緑内障点眼薬はすべて一般名で処方しており,患者が調剤薬局で先発医薬品あるいは後発医薬品のいずれかを自由に選択できるようにしている.また,緑内障点眼薬はすべて院外処方で対応している.緑内障点眼薬のうち先発医薬品,後発医薬品ともに存在する点眼薬は,イソプロピルウノプロストン点眼薬,ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,ビマトプロスト点眼薬,チモロール点眼薬,持続性チモロール点眼薬,カルテオロール点眼薬,持続性カルテオロール点眼薬,ニプラジロール点眼薬,ベタキソロール点眼薬,ブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬,トラボプロスト/チモロール配合点眼薬,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬で,先発医薬品のみ存在する点眼薬はタフルプロスト点眼薬,ドルゾラミド点眼薬,ブナゾシン点眼薬,リパスジル点眼薬,オミデネパグイソプロピル点眼薬,ピロカルピン点眼薬,ジピベフリン点眼薬,タフルプロスト/チモロール配合点眼薬,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬で,後発医薬品のみ存在する点眼薬はレボブノロール点眼薬である(2022年C2月現在).つぎに先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例で性別,平均年齢,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.さらに男女間での先発あるいは後発医薬品のみ使用症例,平均年齢,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.若年者(65歳未満)と高齢者(65歳以上)で先発あるいは後発医薬品のみ使用症例,性別,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.カテゴリー別使用薬剤はラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,ビマトプロスト点眼薬をプロスタグランジン関連薬(以下,PG関連薬),チモロール点眼薬,持続性チモロール点眼薬,カルテオロール点眼薬,持続性カルテオロール点眼薬,ニプラジロール点眼薬,ベタキソロール点眼薬をCb遮断薬(Ca遮断薬を含む),ブリンゾラミドを点眼炭酸脱水酵素阻害薬(以下,CAI),イソプロピルウノプロストン点眼薬をイオンチャネル開口薬,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬,トラボプロスト/チモロール配合点眼薬をCPG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬をCCAI/Cb遮断薬配合点眼剤,ブリモニジン点眼薬をCa2刺激薬と分類した.平均年齢と使用薬剤数の比較には対応のないCt検定を,先発医薬品・後発医薬品の使用割合,性別,カテゴリー別使用薬剤の比較にはCc2検定とCFisherの直接確率検定を使用した.有意水準はp<0.05とした.患者には本研究の主旨を口頭で説明し,アンケート調査の際に文書で同意を得た.本研究は井上眼科病院倫理審査委員会で承認された(承認番号C202202-2).CII結果先発医薬品のみ使用C134例(26.6%),後発医薬品のみ使用C353例(70.0%),両方とも使用はC17例(3.4%)であった.先発医薬品の使用理由は「安心,安全」93例(69.4%),「後発品(ジェネリック医薬品)よりも効果があると思う」17例(12.7%),「薬局にすすめられた」14例(10.4%),「後発品(ジェネリック医薬品)よりも使いやすいと思う」4例(3.0%)などであった(図2).後発医薬品の使用理由は「薬局にすすめられた」209例(59.2%),「金額が安くなる」92例(26.1%),「その他」43例(12.2%)などだった(図3).その他の症例をさらに解析したところ「役所や保険組合の推奨」25例(7.1%)と「医師の推奨」11例(3.1%)が多かった.先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例を比較すると,性別,使用薬剤数,カテゴリー別薬剤は同等だった(表1).平均年齢は先発医薬品のみ使用症例C71.3C±10.2歳が後発医薬品のみ使用症例C67.9C±10.9歳に比べて有意に高かった(p<0.01).男女で比較すると,先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例の割合,平均年齢,使用薬剤数は同等だった(表2).カテゴリー別薬剤では,Cb遮断薬,CAI,イオンチャネル開口薬,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,CAI/Cb遮断薬配合点眼剤,Ca2刺激薬は先発あるいは後発医薬品の後発品よりも使いやすいと思う4例(3.0%)薬局にすすめられた14例(10.4%)後発品よりも効果があると思う17例(12.7%)その他43例(12.2%)先発品よりも使いやすいと思う3例(0.8%)先発品よりも効果があると思う6例(1.7%)金額が安くなる92例(26.1%)図2先発医薬品の使用理由図3後発医薬品の使用理由表1先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例の比較先発医薬品のみ後発医薬品のみp値男性:女性49(C36.6%):C85(C63.4%)164(C46.5%):C189(C53.5%)Cp=0.0525平均年齢C71.3±10.2C67.9±10.9Cp=0.0022*使用点眼薬数C2.4±1.2C2.5±1.3Cp=0.3968使用点眼薬別PG関連薬89(C27.6%)233(C72.4%)Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)27(C32.9%)55(C67.1%)CCAI24(C23.3%)79(C76.7%)イオンチャネル開口薬4(4C4.4%)5(5C5.6%)Cp=0.7509PG関連薬/Cb遮断薬配合剤20(C28.6%)50(C71.4%)CCAI/b遮断薬配合剤30(C27.8%)78(C72.2%)Ca2刺激薬24(C29.6%)57(C70.4%)CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05表2性別による比較男性女性p値先発医薬品のみ:後発医薬品のみ49(C23.0%):C164(C77.0%)85(C31.0%):C189(C69.0%)Cp=0.0525平均年齢C68.3±11.5C69.3±10.2Cp=0.3464使用点眼薬数C2.6±1.2C2.4±1.3Cp=0.1296使用点眼薬別(先発品:後発品)PG関連薬32(C20.5%):C124(C79.5%)57(C34.3%):C109(C65.7%)Cp=0.0061*Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)10(C27.0%):C27(C73.0%)17(C37.8%):C28(C62.2%)Cp=0.3509CCAI9(1C8.8%):3C9(8C1.3%)15(C27.3%):C40(C72.7%)Cp=0.3559イオンチャネル開口薬2(5C0.0%):2(5C0.0%)2(4C0.0%):3(6C0.0%)p>C0.9999PG関連薬/Cb遮断薬配合剤9(3C0.0%):2C1(7C0.0%)11(C27.5%):C29(C72.5%)p>C0.9999CCAI/b遮断薬配合剤12(C25.5%):C35(C74.5%)18(C29.5%):C43(C70.5%)Cp=0.6716Ca2刺激薬13(C36.1%):C23(C63.9%)11(C24.4%):C34(C75.6%)Cp=0.3288CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05表3若年者と高齢者の比較若年者(.64歳)高齢者(65歳.)p値先発医薬品のみ:後発医薬品のみ30(C20.5%):C116(C79.5%)104(C30.5%):C237(C69.5%)Cp=0.0267*男性:女性69(C47.3%):C77(C52.7%)144(C42.2%):C197(C57.8%)Cp=0.3199使用点眼数C2.4±1.3C2.5±1.2Cp=0.4693使用薬剤別(先発品:後発品)PG関連薬16(C17.2%):C77(C82.8%)73(C31.9%):C156(C68.1%)Cp=0.0087*Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)7(3C1.8%):1C5(6C8.2%)20(C33.3%):C40(C66.7%)p>C0.9999CCAI5(2C1.7%):1C8(7C8.3%)19(C23.8%):C61(C76.3%)p>C0.9999イオンチャネル開口薬1(2C5.0%):3(7C5.0%)3(6C0.0%):2(4C0.0%)Cp=0.5238PG関連薬/Cb遮断薬配合剤6(2C5.0%):1C8(7C5.0%)14(C30.4%):C32(C69.6%)Cp=0.7824CCAI/b遮断薬配合剤5(1C3.9%):3C1(8C6.1%)25(C34.7%):C47(C65.3%)Cp=0.0243*Ca2刺激薬9(2C7.3%):2C4(7C2.7%)15(C31.3%):C33(C68.8%)Cp=0.8064CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05み使用症例は同等だった.PG関連薬は後発医薬品のみ使用症例が男性(79.5%)のほうが女性(65.7%)に比べて有意に多かった(p<0.05).若年者(146例)と高齢者(341例)で比較すると性別,使用薬剤数は同等だった(表3).後発医薬品のみ使用症例が若年者(79.5%)のほうが高齢者(69.5%)に比べて有意に多かった(p<0.05).カテゴリー別薬剤では,Cb遮断薬,CAI,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,Ca2刺激薬は先発あるいは後発医薬品のみ使用症例は同等だった.PG関連薬は後発医薬品の使用症例が若年者(82.8%)のほうが高齢者(68.1%)に比べて有意に多かった(p<0.05).CAI/Cb遮断薬配合点眼剤は後発医薬品の使用症例が若年者(86.1%)のほうが高齢者(65.3%)に比べて有意に多かった(p<0.05).CIII考按今回の調査で後発医薬品の使用症例はC73.4%(後発医薬品のみ使用C70.0%+先発・後発医薬品両方とも使用C3.4%)であった.厚生労働省が発表したC2020年の後発医薬品使用割合C78.3%よりは少なかったが近い割合であった.今回は具体的な使用薬剤の解析ではなく症例ごとの解析を行った影響も考えられる.先発医薬品と後発医薬品の特徴を以下に述べる2).後発医薬品の存在する先発医薬品は開発から長期を経過しており,医師の使用経験や薬剤の情報(効果・副作用など)が多く,供給も安定している.今回のアンケート調査でも先発医薬品の使用理由は安心,安全がC69.4%と圧倒的に多かった.眼圧下降効果や副作用などに問題のない症例では薬剤を変更する必要はないと考えられる.一方,後発医薬品は先発医薬品に比べて価格が安いことが最大の利点である3,4).今回のアンケート調査でも後発医薬品の使用理由は薬局にすすめられたC59.2%,金額が安くなるC26.1%の順であった.薬局からの推奨は調剤薬局での後発医薬品調剤体制加算の取得のためと考えられる.しかし,後発医薬品は先発医薬品と添加剤が異なり,先発医薬品から後発医薬品への変更による眼圧下降効果減弱や副作用出現が懸念される.発売してからの期間も短く,効果や副作用の情報が少なく,また供給が安定していないことも問題点である.後発医薬品の効果と安全性は,先発医薬品から切り替えた症例で報告されている5.10).ラタノプロスト点眼薬5.9),ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬10)の先発医薬品から後発医薬品への切り替えでは眼圧下降効果の維持と高い安全性が報告されている.症例により眼圧下降効果は異なるが,有効成分は同一のため後発医薬品の眼圧下降効果減弱はあまり考慮しなくてよいと考えられる.仮に後発医薬品を使用して副作用が出現した場合でも先発医薬品に戻せば副作用も軽減・消失するので,後発医薬品の経済的優位性を考慮し,先発医薬品から後発医薬品への切り替えは試みてもよいと思われる.今回の詳細な検討では,平均年齢は先発医薬品のみ使用症例が後発医薬品のみ使用症例に比べて有意に高かった.その理由として年齢が高いほうが緑内障罹病期間や先発医薬品を使用している期間が長く,病状が安定しているためあえて後発医薬品へ変更しなかったのではないかと考えられる.男女の比較ではCFP受容体作動薬は後発医薬品の使用割合が男性のほうが女性に比べて有意に多かった.その理由としてCPG関連薬では眼瞼色素沈着や上眼瞼溝深化などの美容的副作用が出現することがあり11,12),とくに女性は後発医薬品へ変更した際に新たにこのような副作用が出現することを避ける傾向があると考えられる.若年者と高齢者の比較では,PG関連薬とCCAI/Cb遮断薬配合点眼剤は後発医薬品の使用症例が若年者のほうが高齢者に比べて有意に多かった.その理由として高齢者のほうが緑内障罹病期間や先発医薬品を使用している期間が長く,病状が安定している点と,若年者のほうが経済的に余裕がない点が考えられる.今回の調査の問題点として,お薬手帳や点眼薬実物を診察時に持参している人を対象としたため,使用薬剤を管理する意識の高い人が対象になっている可能性がある.しかし,先発医薬品あるいは後発医薬品のどちらを使用しているかを正確に把握するのは問診ではむずかしいため,お薬手帳や点眼薬実物で確認する方法とした.また,対象患者の利用している調剤薬局は同一でなく,調剤薬局によって先発医薬品と後発医薬品の調剤の方針が異なる可能性がある.患者の利用した調剤薬局をすべて調査することはできないと考えた.さらに以前は先発医薬品のみ使用していたので,一般名処方で先発医薬品でも後発医薬品でも使用できるようになり,患者から後発医薬品でもよいのかと質問されることが多くなった.その際は「後発医薬品でも問題がない場合がほとんどです」と答えるが,これが医師の推奨としてとらえられた可能性がある.今回緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用状況と使用理由を調査した.先発医薬品のみ使用C26.6%,後発医薬品のみ使用C70.0%だった.使用理由は先発医薬品は安心・安全C65.6%,調剤薬局からの推奨C12.6%など,後発医薬品は調剤薬局からの推奨C59.2%,価格が安いC25.9%などだった.今後ますます後発医薬品が使用されると考えられるため,先発医薬品だけではなく後発医薬品の効果・安全性も調査する必要がある.本論文は第C126回日本眼科学会総会で発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)福田正道:緑内障点眼薬後発品(いわゆるジェネリック)の特性.臨眼68:7-12,C20142)菅原仁,島森美光,吉町昌子ほか:点眼剤の後発医薬品使用促進に関わる薬剤費の比較研究.JpnCJCDrugCInformC14:62-68,C20123)冨田隆志,池田博昭,櫻下弘志ほか:Cb遮断点眼薬の先発医薬品と後発医薬品におけるC1日あたりの薬剤費の比較.臨眼63:717-720,C20094)神山幸輝,阿部貴至,唐澤健介ほか:緑内障治療に用いる点眼剤の先発医薬品と後発医薬品における製剤学的性質および経済性に関する比較研究.レギュラトリーサイエンス学会誌C10:99-108,C20205)木村格,木村亘,横山光伸ほか:正常眼圧緑内障におけるラタノプロスト点眼液C0.005%ジェネリック医薬品の使用経験.新薬と臨牀61:1141-1144,C20126)櫻井寿也,田野良太郎,山本裕弥ほか:ラタノプロスト点眼液C0.005%ジェネリック医薬品の使用経験.新薬と臨牀60:1225-1228,C20117)東條直貴,林篤志:ラタノプロスト点眼液C0.005%の先発品からジェネリック品への切替効果.新薬と臨牀C63:C1471-1474,C20148)井上賢治,増本美枝子,若倉雅登ほか:防腐剤無添加ラタノプロスト点眼薬の眼圧下降効果と安全性.あたらしい眼科C28:1635-1639,C20119)大塚光哉,澁谷法子,本多祐樹ほか:ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩点眼液の先発医薬品から後発医薬品への切り替え効果.新薬と臨牀70:143-147,C202110)岩崎直樹,楠部亨,黒澤誠治ほか:ラタノプロスト点眼液C0.005%「わかもと」の眼圧下降効果と安全性.新薬と臨牀50:615-618,C201311)InoueCK,CShiokawaCM,CHigaCRCetal:AdverseCperiocularCreactionsto.vetypesofprostaglandinanalogs.EyeC26:C1465-1472,C201212)InoueCK,CShiokawaCM,CWakakuraCMCetal:DeepeningCofCtheCupperCeyelidCsulcusCcausedCbyC5CtypesCofCprostaglan-dinanalogs.JGlaucomaC22:626-631,C2013***