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ドライアイに対するレバミピド懸濁点眼液(ムコスタ®点眼液UD2%) の有効性と安全性─製造販売後調査結果─

2016年3月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(3):443.449,2016cドライアイに対するレバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)の有効性と安全性─製造販売後調査結果─増成彰*1安田守良*1曽我綾華*1板東孝介*1福田泰彦*1木下茂*2*1大塚製薬株式会社ファーマコヴィジランス部*2京都府立医科大学感覚器未来医療学EffectivenessandSafetyofRebamipideOphthalmicSuspension(MucostaROphthalmicSuspensionUD2%)inPatientswithDryEyeSyndrome─ResultsofPost-MarketingSurveillance─AkiraMasunari1),MoriyoshiYasuda1),AyakaSoga1),KosukeBando1),YasuhikoFukuda1)andShigeruKinoshita2)1)PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineドライアイ治療薬「ムコスタR点眼液UD2%」の使用実態下における観察期間1年の特定使用成績調査を実施し,916例の有効性と安全性の結果をまとめた.その結果,生体染色スコアは投与開始時3.1±2.3点から4週目に1.8±1.8点への改善が認められた(p<0.001).涙液層破壊時間(tearfilmbreak-uptime:BUT)では開始時3.0±1.6秒から4週目に4.0±2.1秒への改善が認められた(p<0.001).自覚症状(異物感,乾燥感,羞明,眼痛,霧視)のいずれのスコアについても,開始時に比べて有意な改善が認められた(p<0.001).安全性の指標とした副作用の発現率は14.6%であり,おもな副作用は本剤の物性に起因すると思われる味覚異常をはじめ,霧視,アレルギー性結膜炎,結膜炎,眼瞼炎,眼痛などであった.最終観察時点の評価判定は有効85.7%,無効4.9%であった.以上よりレバミピド懸濁点眼液の実臨床下における有効性と安全性が確認された.Weconductedaone-yearpost-marketingsurveillancestudytoinvestigatetheeffectivenessandsafetyofMucostaROphthalmicSuspensionUD2%forpatientswithdryeyesyndrome.Wereportthefinalresultfrom916patients.Asaneffectivenessmeasurement,fluoresceincornealstainingscorewasimprovedfrom3.1±2.3atbaselineto1.8±1.8atweek-4.Andtearfilmbreak-uptimewasimprovedfrom3.0±1.6secondsatbaselineto4.0±2.1secondsatweek-4.Dryeye-relatedocularsymptoms,suchasforeignbodysensation,dryness,photophobia,eyepain,andvisionblurred,werealsoimproved.Aprevalenceofadversedrugreactionwas14.6%.Frequentlyreportedeventsweredysgeusiaduetocharacteristicsofrebamipide,visionblurred,conjunctivitisallergic,conjunctivitis,blepharitis,eyepain.Intheoverallimprovementrating,85.7%waseffectiveand4.9%wasineffective.Theresultsindicatetheeffectivenessandsafetyofrebamipideophthalmicsuspensionwereconfirmedintherealworldsettings.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(3):443.449,2016〕Keywords:レバミピド,ドライアイ,製造販売後調査,有効性,安全性.rebamipide,dryeye,post-marketingsurveillance,effectiveness,safety.はじめにレバミピドは胃粘膜の保護・修復作用を有し,1990年に胃潰瘍の治療薬として発売された薬剤である.その後,レバミピドが眼表面においても粘膜機能を改善すること1),ドライアイに対し臨床的に有効であることが確認され2,3),2012年1月にレバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%,以下,本剤)はドライアイ治療薬として発売された.筆者らは全国の眼科専門医の協力により,本剤の長期使用時の使用実態下における有効性および安全性を検討する目的で特定使用成績調査(調査期間:2012年8月.2015年1月)を実施〔別刷請求先〕増成彰:〒540-0021大阪府大阪市中央区大手通3-2-27大塚製薬株式会社医薬品事業部ファーマコヴィジランス部Reprintrequests:AkiraMasunari,PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-2-27,Otedori,Chuo-ku,Osaka-shi,Osaka540-0021,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(113)443 した.本稿では,本特定使用成績調査の解析結果から有効性と安全性について報告する.I対象および方法1.調査方法本調査は治療内容に介入しないプロスペクティブな観察研究であり,日本全国の眼科を標榜する医療機関と事前に契約を交わして実施した.対象患者はドライアイと診断された患者とし,過去に本剤の使用経験がある患者は除外した.目標症例を1,000例とした.症例登録は中央登録方式とした.観察期間は1年間とし,観察期間中の情報を調査担当医師が調査票に記入した.なお,観察中に投与中止した場合はその時点で観察終了とし,調査票を記入することとした.本調査にあたっては,「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令:平成16年12月20日厚生労働省令第171号(GPSP省令)」を遵守した.なお,本調査は観察的研究であることから患者への説明と同意,医療機関における倫理委員会による審査は必須とはしなかった.2.調査項目調査項目として以下の情報を収集した.患者背景:性別,年齢,コンタクトレンズの使用状況,対象眼の重症度,罹病期間,ドライアイの原因,合併症など.投与状況:投与期間,中止理由,1日点眼回数など.有効性評価のための調査項目:以下の情報を収集した.投与開始時および観察期間中に実施された生体染色スコア(フルオレセイン,リサミングリーン,ローズベンガル),涙液層破壊時間(tearfilmbreak-uptime:BUT),Schirmerテストの結果,自覚症状5項目スコア.生体染色スコアは耳側球結膜,角膜,鼻側球結膜における染色の程度をそれぞれ3点,合算9点満点で判定した.また,自覚症状5項目(異物感,乾燥感,羞明,眼痛,霧視)について(0:症状なし,1:弱い症状あり,2:中くらいの症状あり,3:強い症状あり,4:非常に強い症状あり)の5段階のスコアで患者からの聞き取りにより評価した.以上の結果を総合的に判断し,有効,無効,判定不能の3分類で担当医師が効果判定を行った.安全性評価のための調査項目:本剤投与開始後の有害事象(臨床検査値の異常変動を含む)を収集した.3.解析方法有効性評価として,生体染色スコア,BUT,自覚症状5項目スコアについて,投与開始時および投与後の数値の推移を検討した.また,投与開始時重症度別の評価として,開始時の生体染色スコアによって「0.3点:軽症」「4.6点:中等症」「7.9点:重症」の3群に分け,「開始時染色スコア別」にて各評価項目の数値の推移を検討した.なお,Schirmer444あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016テストについては,本剤投与後に実施された症例数が少なかったため十分な評価ができなかった.安全性評価として,本剤投与後に発現した副作用(本剤との因果関係が否定できないと判断された有害事象)について集計し,発現率を算出した.有効性の解析は平均値と標準偏差を算出し,対応のあるt-検定を実施して投与開始時との比較を行った.自覚症状の解析では,投与開始時に症状がある患者のみを解析対象とした.すべての解析で欠測値の補完はしなかった.副作用の集計には「ICH国際医薬用語集日本語版」(MedDRA/J:MedicalDictionaryforRegulatoryActivities/J,version17.1)の基本語を使用した.統計解析はシミックPMS株式会社,エイツーヘルスケア株式会社でSASを用いて実施した.II結果1.解析対象患者全国の159施設より1,073人が登録され,158施設より1,068例の調査票を回収した.そのうち一度も診察がなかった151例と本剤が投与されなかった1例を除外した916例を安全性・有効性解析対象とした.2.患者背景表1に患者背景を示す.年齢の平均値は63±16歳であった.医師判定に基づく投与開始時のドライアイ重症度は軽症41.4%,中等症50.9%と,軽症から中等症が大半を占めた.投与開始時の生体染色スコアは9点満点中3点以下(0点を含む)の低スコアが59.1%であった.一方,投与開始時BUTが5秒以下の異常値を示す患者は,不明を除く744例中708例(95.2%)と大半であった.投与開始時Schirmerテストでは5mm超と5mm以下の割合はほぼ同じであった.ドライアイの原因別では乾燥などの環境因子が44.5%ともっとも多かった.3.投与状況表2に投与状況を示す.添付文書通りの1日4回投与が93.2%であった.12カ月(360日)を超えて投与された症例は337例(36.8%)であった.観察期間の中央値は294日,平均値は243±155日であった.本剤投与中に一度でも併用された薬剤を集計したところ,ヒアルロン酸点眼がもっとも多く約半数の患者(51.2%)で併用されていた.また,中止理由を複数選択可で調査した結果,「来院せず」がもっとも多く240例,「患者または家族の希望」が95例,「有害事象発現」が77例の順であった.4.有効性a.生体染色スコア図1に生体染色スコアの推移を示す.投与開始時に3.1±2.3点であったスコアは4週目に1.8±1.8点と有意に改善し(p<0.001),そのスコアは52週目には1.3±1.4点(p<(114) 表1患者背景(n=916)表2投与状況(n=916)項目分類n(%)性別男性148(16.2%)女性768(83.8%)<209(1.0%)年齢(歳)Mean63±1620.2931(3.4%)30.3952(5.7%)Min3Median66Max9740.4987(9.5%)50.59135(14.7%)60.69223(24.3%)≧70379(41.4%)ドライアイ重症度(医師判定)軽症379(41.4%)中等症466(50.9%)重症71(7.8%)生体染色スコア0120(13.1%)(フルオレセイン882例,ローズベンガル1例,リサミングリーン2例,フルオレセイン+1.3421(46.0%)4.6279(30.5%)7.966(7.2%)リサミングリーン1例)不明30(3.3%)>536(3.9%)BUT(秒)>1,≦5592(64.6%)≦1116(12.7%)不明172(18.8%)>5146(15.9%)Schirmerテスト>2,≦589(9.7%)(mm)≦253(5.8%)不明628(68.6%)1年未満85(9.3%)2年未満43(4.7%)罹病期間(年)3年未満31(3.4%)3年以上135(14.7%)不明622(67.9%)環境因子408(44.5%)合併症112(12.2%)ドライアイの原因眼手術84(9.2%)コンタクトレンズ51(5.6%)薬剤30(3.3%)その他336(36.7%)白内障159(17.4%)緑内障110(12.0%)合併症アレルギー性結膜炎106(11.6%)結膜炎53(5.8%)Sjogren症候群51(5.8%)Stevens-Johnson症候群0(0.0%)コンタクトレンズなし843(92.0%)あり63(6.9%)コンタクトレンズのタイプソフト44*(4.8%)ハード19*(2.1%)ソフト・ハード不明1(0.1%)前治療薬(本剤投与前のドライアイ治療薬)ヒアルロン酸点眼114(12.4%)ジクアホソルナトリウム点眼121(13.2%)ステロイド点眼43(4.7%)人工涙液12(1.3%)*ソフト+ハード1例を含む.項目分類n(%)4回未満58(6.3%)1日投与回数4回854(93.2%)4回超3(0.3%)不明1(0.1%)≦30100(10.9%)観察期間(日)Mean243±155Min2Median294Max61231.6089(9.7%)61.120119(13.0%)121.240111(12.1%)241.360159(17.4%)≧361337(36.8%)不明1(0.1%)ヒアルロン酸点眼469(51.2%)併用薬ステロイド点眼163(17.8%)ジクアホソルナトリウム点眼101(11.0%)人工涙液75(8.2%)来院せず240患者または家族の希望95中止理由(複数選択可)有害事象発現77効果不十分17転院7病態悪化3その他250.001)と効果が継続していた.「開始時染色スコア別」の推移を検討した結果,投与開始時のスコアにかかわらず有意に生体染色スコアの改善が認められた(図2).b.BUT図3にBUTの推移を示す.投与開始時3.0±1.6秒,4週目には4.0±2.1秒と有意に延長し(p<0.001),その後も52週目に4.5±2.2秒と有意な延長は継続していた(p<0.001).図4に「開始時染色スコア別」のBUTの推移を示す.投与開始時の生体染色スコアにかかわらずBUTは有意に延長した.c.自覚症状スコア(5項目)図5に自覚症状5項目のスコアの推移を示す.異物感,乾燥感,羞明,眼痛,霧視それぞれのスコアは,投与開始時2.0±1.0,2.1±1.0,1.8±0.9,1.9±0.9,1.7±0.9と比べて,4週目には1.0±0.9,1.2±0.9,0.9±0.8,0.8±0.9,0.9±0.9とすべての項目で統計学的に有意な自覚症状スコアの改善が認められ,52週目には0.4±0.7,0.6±0.8,0.4±0.6,0.3±0.6,0.5±0.9と改善は継続していた(いずれもp<0.001).図6に「開始時染色スコア別」の自覚症状スコア5項目の合(115)あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016445 生体染色スコア生体染色スコア生体染色スコア6543210開始時481216202428323640444852観察時期(week)平均値+SD*p<0.001*************n=88650838939998765432104812317259257262221図1生体染色スコアの推移1620242832観察時期(week)219187182179203*3640444852開始時染色スコア:7~9開始時染色スコア:4~6開始時染色スコア:0~3開始時平均値+SD*p<0.001**************************************開始時4週目8週目12週目16週目20週目24週目28週目32週目36週目40週目44週目48週目52週目開始時染色スコア:7.96635264325193926212521142031開始時染色スコア:4.6279155139131108888783747864626068開始時染色スコア:0.354131822422518415213115312611610210699104図2開始時染色スコア別生体染色スコアの推移(n=886)計点の推移を示す.投与開始時の生体染色スコアにかかわら(85.7%),無効45例(4.9%),判定不能86例(9.4%)であず自覚症状スコアの合計点は有意に低下した.った.d.効果判定5.安全性最終観察時点の担当医師による効果判定は,有効785例安全性解析対象症例916例のうち副作用は14.6%(134例)446あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(116) BUT(秒)BUT(秒)BUT(秒)876543210開始時481216202428323640444852平均値+SD*p<0.001*************観察時期(week)n=744334237256205142142169134137114108106114図3BUTの推移109876543210481216202428323640444852観察時期(week)**開始時染色スコア:7~9開始時染色スコア:4~6開始時染色スコア:0~3開始時平均値+SD*p<0.001***********開始時4週目8週目12週目16週目20週目24週目28週目32週目36週目40週目44週目48週目52週目開始時染色スコア:7.95621131915914161112981212開始時染色スコア:4.6235106818377474855505341433839開始時染色スコア:0.3447206141151112857695716862565460図4開始時染色スコア別BUTの推移(n=738)で認められた.表3に2例以上に発現した副作用の一覧を示例中9.2%(84例)であった.おもなものの発現頻度は味覚す.多く認められた副作用は味覚異常9.3%(85例),霧視異常4.6%(42例),霧視1.2%(11例),眼痛0.6%(5例),3.2%(29例),アレルギー性結膜炎0.7%(6例),結膜炎,眼そう痒症0.4%(4例),眼瞼炎0.3%(3例)の順であった.眼瞼炎,眼痛がそれぞれ0.6%(各5例)などであった.重篤な副作用の報告はなかった.III考察本剤の投与中止に至った副作用は安全性解析対象症例916本剤のドライアイに対する有効性は,製造販売前の治験時(117)あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016447 異物感乾燥感羞明眼痛霧視平均値+SD*p<0.001自覚症状スコア48121620242832364044開始時4852*************異物感乾燥感羞明眼痛霧視平均値+SD*p<0.001自覚症状スコア48121620242832364044開始時4852*************3210観察時期(week)開始時4週目8週目12週目16週目20週目24週目28週目32週目36週目40週目44週目48週目52週目異物感724413338343272221237228176194165158154176乾燥感717409321333268220227228167187161151152175羞明371214180179149119134123859580797897眼痛4802732282151891401591541061111019799106霧視367208177177143109129118909484828893図5自覚症状スコア(5項目)の推移(異物感:n=724,乾燥感:n=717,羞明:n=371,眼痛:n=480,霧視:n=367)14開始時染色スコア:7~9開始時染色スコア:4~6開始時染色スコア:0~3481216202428323640開始時平均値+SD*p<0.001***************************************自覚症状スコア合計点121086420444852観察時期(week)開始時4週目8週目12週目16週目20週目24週目28週目32週目36週目40週目44週目48週目52週目開始時染色スコア:7.96132254123183825182320141727開始時染色スコア:4.6259143126125101838178697163615967開始時染色スコア:0.346527720219416713512714210310792989398図6開始時染色スコア別自覚症状スコア合計点の推移(n=785)448あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(118) に複数の二重盲検比較試験により検証されている2,3).しかし,治験ではいくつかの患者登録基準を設定していたこと,併用薬が制限されていたことから,必ずしも臨床現場の実態を反映しているとはかぎらない.実際に,第3相試験では対象患者をフルオレセイン染色スコア4点以上(15点満点)としたことから軽症患者が除外されていたと考えられる.本調査では染色スコア3点以下(9点満点)が59.1%と軽症患者が過半数であり,治験時の患者よりも角膜上皮障害としては軽症の患者に使用されていたと考えられる.一方,投与前のBUTを測定された744人中708人(95.2%)がBUT5秒以下の患者であった.このような患者を対象とした本調査において,生体染色スコア,BUTともに4週目には統計学的に有意に改善し,4週目以降も継続していたことから,本剤は長期に継続することでより大きな効果を得られる可能性があると考えられた.また,調査した自覚症状スコアは5項目すべてについて,投与開始時に比べて投与52週目では統計学的に有意な改善が認められた.以上のことから,治験で確認された本剤の有効性が実際の臨床現場においても確認することができたと考えられる.安全性については,もっとも多く報告された副作用は味覚異常であり,発現率は9.3%であった.これらはいずれも「苦味」の事象名にて報告されており,本剤の有効成分の苦味に由来するものと考えられた.また,次に多かった霧視の発現率は3.2%であり,本剤が懸濁製剤であることに由来すると考えられた.承認前の国内52週間長期投与試験で報告された味覚異常および霧視の副作用発現率は13.6%および3.6%であり4),実臨床においてもほぼ同様の発現状況であった.本剤発売後,本剤の投与により涙道閉塞,涙.炎が発現する可能性が指摘されているが,本調査では涙道閉塞の副作用は報告されず,涙.炎の副作用は1例報告された.涙道閉塞,涙.炎の副作用の発現メカニズムはいまだ明確ではない5).発現率は低いものの,本剤を用いる際にはこれらの副作用に注意して使用する必要があるものと考えられる.本剤の製造販売後調査結果より,さまざまな制限のある治験と同様に,実臨床においても,本剤がドライアイ患者の治療に有効な薬剤であることを確認することができた.なお,本研究では併用薬としてジクアホソルナトリウムが11.0%の患者で併用されていた.ジクアホソルナトリウムは本剤と類似する薬効をもつものの,その薬理作用は異なって表3副作用一覧表(2例以上に発現した副作用)副作用名発現率味覚異常9.3%(85/916)霧視3.2%(29/916)アレルギー性結膜炎0.7%(6/916)結膜炎,眼瞼炎,眼痛0.6%(5/916)眼そう痒症0.4%(4/916)悪心0.3%(3/916)結膜出血,眼脂,眼瞼痛0.2%(2/916)MedDRA/Jver17.1のPTで集計おり,両剤の特徴を考慮した使い分け,あるいは併用が有用であるかどうかは今後の研究課題と考えられる.謝辞:本報告にあたり,調査にご協力いただいた先生方に厚くお礼申し上げます.利益相反:本稿は,大塚製薬株式会社により実施された調査結果に基づいて報告された.本報告に関連し,開示すべきCOIは木下茂(委託研究費,技術指導料,講師謝礼)である.文献1)中嶋英雄,浦島博樹,竹治康広ほか:ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果.あたらしい眼科29:1147-1151,20122)KinoshitaS,AwamuraS,OshidenKetal:Rebamipide(OPC-12759)inthetreatmentofdryeye:Arandomized,double-masked,multicenter,placebo-controlledphaseIIstudy.Ophthalmology119:2471-2478,20123)KinoshitaS,OshidenK,AwamuraSetal:Arandomized,multicenterphase3studycomparing2%rebamipide(OPC-12759)with0.1%sodiumhyaluronateinthetreatmentofdryeye.Ophthalmology120:1158-1165,20134)KinoshitaS,AwamuraS,NakamichiNetal:Amulticenter,open-label,52-weekstudyof2%rebamipide(OPC-12759)ophthalmicsuspensioninpatientswithdryeye.AmJOphthalmol157:576-583,20145)杉本夕奈,福田泰彦,坪田一男ほか:レバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)の投与にかかわる涙道閉塞,涙.炎および眼表面・涙道などにおける異物症例のレトロスペクティブ検討.あたらしい眼科32:1741-1747,2015***(119)あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016449

小児細菌性外眼部感染症に対するトスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液0.3%の臨床的評価および原因菌の薬剤感受性

2014年12月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科31(12):1857.1866,2014c小児細菌性外眼部感染症に対するトスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液0.3%の臨床的評価および原因菌の薬剤感受性大野重昭*1田中知暁*2久志本理*3*1医療法人社団愛心館愛心メモリアル病院眼科*2富山化学工業株式会社綜合研究所製品企画部*3富山化学工業株式会社開発管理部ClinicalEvaluationofTosufloxacinTosilateOphthalmicSolution0.3%fortheTreatmentofExternalBacterialOcularInfectioninChildrenandSusceptibilityofthePathogenicBacteriatoTosufloxacinShigeakiOhno1),TomoakiTanaka2)andSatoruKushimoto3)1)DepartmentofOphthalmology,AishinMemorialHospital,2)ProductPlanningDepartment,ToyamaChemicalCo.,Ltd.,3)DataScienceandAdministrationDepartment,ToyamaChemicalCo.,Ltd.トスフロキサシン(tosufloxacin:TFLX)トシル酸塩水和物点眼液0.3%の特定使用成績調査より15歳未満の小児の症例を抜粋し,小児の細菌性外眼部感染症に対するTFLXトシル酸塩水和物点眼液0.3%の有効性と安全性を検証した.また,小児由来の原因菌の薬剤感受性を測定した.TFLXトシル酸塩水和物点眼液0.3%は,小児の外眼部感染症を認めた症例に対する有効率は96.4%(449/466例),細菌学的効果は86.7%(202/233例)であった.原因菌477株全株に対するTFLXのMIC50は≦0.06,MIC90は0.25μg/mLであった.主要な原因菌であるHaemophilusinfluenzae,StreptococcuspneumoniaeおよびStaphylococcusaureusに対してTFLXのMIC50はそれぞれ≦0.06,0.12および≦0.06μg/mLであり,moxifloxacin(MFLX)と同程度,levofloxacin(LVFX)より1.4倍,gatifloxacin(GFLX)より1.2倍,cefmenoxime(CMX)より1.32倍以上,gentamicin(GM)より8.32倍,erythromycin(EM)より32.2,048倍以上強い抗菌活性を示した.また,TFLXのMIC90はそれぞれ≦0.06,0.12および32μg/mLであり,LVFXより1.8倍,GFLXの1/4.2倍,MFLXの1/4.1倍,CMXより1.8倍以上,GMより4.64倍,EMより4.1024倍以上強い抗菌活性を示した.副作用発現率は0.2%(1/470)であった.Theefficacyandsafetyoftosufloxacin(TFLX)tosilateophthalmicsolution0.3%forthetreatmentofexternalbacterialocularinfectioninpediatricpatientswereevaluatedinaspecifiedpost-marketingsurveillance.Antibacterialactivitiesagainstpathogenicbacteriaisolatedfrompediatricpatientswerealsomeasured.Theclinicalefficacy(efficacyrate)andbacteriologicalefficacy(bacteriologicaleradicationrate)ofTFLXtosilateophthalmicsolution0.3%were96.4%(449/466patients)and86.7%(202/233patients),respectively.TheMIC50andMIC90valuesofTFLX,anactiveformofTFLXtosilateophthalmicsolution,againstthetotalpathogenicbacteriawere≦0.06μg/mLand0.25μg/mL,respectively.TheMIC50valueofTFLXwas≦0.06,0.12,and≦0.06μg/mLagainstHaemophilusinfluenzae,Streptococcuspneumoniae,andStaphylococcusaureus,respectively,thepredominantpathogensinthissurveillance.TFLXexhibitedantibacterialactivityidenticaltomoxifloxacin(MFLX),and1-4,1-2,1-32,8-32,and32-2,048foldmorepotentantibacterialactivitythanlevofloxacin(LVFX),gatifloxacin(GFLX),cefmenoxime(CMX),gentamicin(GM),anderythromycin(EM),respectively.TheMIC90valueofTFLXwas≦0.06,0.12,and32μg/mLagainstH.influenzae,S.pneumoniaeandS.aureus,respectively,andTFLXexhibited1-8,1/4-2,1/4-1,1-8,4-64,and4-1024foldmorepotentantibacterialactivitythanLVFX,GFLX,MFLX,CMX,GM,andEM,respectively.Anadversedrugreactionwasobservedin1of470patients(0.2%).〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(12):1857.1866,2014〕〔別刷請求先〕大野重昭:〒065-0027札幌市東区北27条東1丁目1-15医療法人社団愛心館愛心メモリアル病院眼科Reprintrequests:ShigeakiOhno,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,AishinMemorialHospital,1-15North27East1,Higashi-ku,Sapporo065-0027,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(119)1857 Keywords:トスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液,トスフロキサシン,小児,製造販売後調査,薬剤感受性,有効性,安全性.tosufloxacintosilateophthalmicsolution,tosufloxacin,pediatricpatient,post-marketingsurveillance,antibacterialactivities,clinicalefficacy,safety.はじめにトスフロキサシン(tosufloxacin:TFLX)トシル酸塩水和物点眼液0.3%(販売名:オゼックスR点眼液0.3%,トスフロR点眼液0.3%)は,2006年に上市されたニューキノロン系抗菌点眼薬であり,新生児を含む小児を対象とした臨床試験を行い,国内で初めて小児に対する用法・用量が認められた抗菌点眼薬である.今回,TFLXトシル酸塩水和物点眼液0.3%の特定使用成績調査より15歳未満の小児の症例を抜粋し,小児における細菌性外眼部感染症に対するTFLXトシル酸塩水和物点眼液0.3%の有効性と安全性,ならびに小児における外眼部感染症由来菌の各種抗菌薬に対する薬剤感受性を評価した.I材料および方法1.使用症例「オゼックス/トスフロ点眼液0.3%特定使用成績調査─低頻度臨床分離株の集積とオゼックス/トスフロ点眼液の有効性と安全性の確認─」1)1,269例および「オゼックス/トスフロ点眼液0.3%特定使用成績調査─新生児の細菌性外眼部感染症に対するオゼックス/トスフロ点眼液の有効性と安全性の検討─」2)57例のうち,15歳未満の小児の症例485例を抜粋した.なお,0歳児において,生後4週未満を新生児,生後4週.1歳未満を乳児に区分した.2.症例の組み入れ,有効性,安全性の基準a.症例の組み入れ基準眼瞼炎,涙.炎,麦粒腫,結膜炎,瞼板腺炎,角膜炎(角膜潰瘍を含む)と診断された以下の患者を対象とした.①細菌性外眼部感染症の症状が明らかに認められ,本剤投薬前に細菌学的検査の実施を予定している患者.②本剤投薬開始時に,他の抗菌薬の併用が必要ないと判断された患者.③再来院でき,経過観察が可能な患者.ただし,以下の患者は安全性解析の対象から除外した.①本剤の成分およびキノロン系抗菌薬に対し過敏症の既往歴のある患者.②本調査に一度組み入れられたことのある患者.③用法・用量を逸脱した患者.④その他,担当医師が対象として不適当と認めた患者.また,以下の患者は有効性解析の対象から除外し,これらの患者から検出された菌株は感受性測定の対象から除外した.1858あたらしい眼科Vol.31,No.12,2014①本剤投薬前に,他の抗菌薬が使用された患者.②投薬開始直前および投薬7日後までに所定の観察が実施されていない患者.③投薬開始直前および投薬7日後までに所定の検査が実施されていない患者.④投薬開始直前の細菌学的検査において細菌が陰性であった患者.また,対象眼重症度は担当医師判定で行った.b.有効性判定基準担当医師が,投薬開始直前,投薬期間中ならびに投薬終了時に下記の自覚症状,他覚的所見について観察を行い,症状および所見の程度を,3+:強度または多量,2+:中等度または中等量,1+:軽度または少量,±:ごく軽度またはごく少量,.:なし,の5段階で評価した.ただし,1歳未満の乳児は自覚症状の訴えを確認できないため,他覚的所見のみで判定した.自覚症状:流涙,異物感,眼痛,羞明,霧視,そう痒感他覚的所見:眼脂,結膜充血,結膜浮腫,眼瞼発赤,眼瞼腫脹,流涙,角膜浮腫,角膜浸潤,涙.膿汁逆流担当医師が,投薬前後の症状の推移から総合的に判断し,臨床効果を1:有効,2:無効,で判定した.有効率の算出は,有効例数/(有効例数+無効例数)×100(%)とし,判定不能の症例は有効率の母数から除いた.c.安全性判定基準本剤の投与中に生じたあらゆる好ましくない,あるいは意図しない徴候,症状,または病気のうち,本剤との因果関係が明確に否定できないものを副作用とした.3.使用菌株「オゼックス/トスフロ点眼液0.3%特定使用成績調査」1,2)において2006.2009年に分離された菌株のうち,小児からの分離菌株を用いた.試験菌株は試験実施までスキムミルクを用い.70℃以下に凍結保存したものを用いた.4.使用薬剤被験薬剤として,TFLX,levofloxacin(LVFX),gatifloxacin(GFLX),moxifloxacin(MFLX),cefmenoxime(CMX)gentamicin(GM),erythromycin(EM)の7薬剤を用いた.(,)また,Staphylococcusspp.にはoxacillin(MPIPC),Streptococcuspneumoniaeにはbenzylpenicillin(PCG),Haemophilusinfluenzaeにはampicillin(ABPC)を追加した.5.薬剤感受性測定本研究では生育が認められた菌について,病原性などを考(120) 慮しグループ分類した採用基準(表1)から上位のグループに属する菌を原因菌とし,本剤の最小発育阻止濃度(MIC)を測定した.MICの測定は,ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute(CLSI)標準法に準じた微量液体希釈法3.6)で行った.測定にはフローズンプレート(栄研化学)を用いた.プレートは.70℃以下に保存した.測定濃度範囲は128.0.06μg/mLの2倍希釈系列,12段階とした.ただし,TFLXは16.0.06μg/mLの9段階とした.感性および耐性株の分類は,CLSIの規定4)を参考とし,StaphylococcusaureusはMPIPCのMIC値が2μg/mL以下のものを感性株(methicillin-susceptibleS.aureus:MSSA),4μg/mL以上のものを耐性株(methicillin-resistantS.aureus:MRSA)とした.S.pneumoniaeはPCGのMIC値が0.06μg/mL以下のものを感性株(penicillin-susceptibleS.pneumoniae:PSSP),0.12.1μg/mLのものを中程度耐性株(penicillin-intermediate-resistantS.pneumoniae:PISP),2μg/mL以上のものを耐性株(penicillin-resistant表1原因菌のGroup分類GroupIStaphylococcusaureusStreptococcuspyogenes(GroupA)StreptococcuspneumoniaeEnterococcussp.Citrobactersp.Enterobactersp.Escherichiasp.Proteussp.Morganellasp.SerratiamarcescensOtherEnterobacteriaceaeNeisseriagonorrhoeaeOtherNeisseriaOtherMoraxellaAcinetobactersp.Achromobactersp.Haemophilussp.PseudomonasaeruginosaOtherPseudomonassp.GroupIIStreptococcusagalactiae(GroupB)Streptococcus(GroupC)OtherStreptococcus(GroupD,G;nongrouped;viridans)Branhamella(Moraxella)catarrhalisGroupIIIStaphylococcusepidermidisOthercoagulasenegativeStaphylococcusMicrococcussp.Bacillussp.Corynebacteriumsp.(diphtheroids)PropionibacteriumacnesS.pneumoniae:PRSP)とした.H.influenzaeはCLSIに基準がないため,b-lactamase産生性が陰性で,ABPCのMIC値が1μg/mL以下のものを感性株(b-lactamase-nonproducingABPC-susceptibleH.influenzae:BLNAS),2μg/mL以上のものを耐性株(b-lactamase-negativeABPC-resistantH.influenzae:BLNAR)とした.b-lactamase定性試験はニトロセフィンスポットプレート法にて実施した.II結果1.症例構成症例構成を図1に示す.各試験から抜粋された小児の総症例数485例のうち470例を安全性解析対象症例および有効性解析対象症例とした.そこから投薬開始時に菌が陰性であったなどの理由で除外された75例を除いた395例を原因菌別臨床効果解析対象症例とした.さらに,これらから投与後の菌検査が実施されていないなどの理由で除外された162例を除いた233例を細菌図1症例構成原因菌別臨床効果集計対象症例395例安全性解析対象症例470例有効性解析対象症例470例調査完了症例485例細菌学的効果解析対象症例233例安全性解析集計対象除外症例目的外使用で1日1回のみ投薬された症例8例1日7回以上投薬された症例3例その他4例計15例有効性解析集計対象除外症例0例原因菌別臨床効果集計対象除外症例投薬開始時に菌陰性化30例臨床効果が判定不能23例その他22例計75例細菌学的効果解析対象除外症例後検査なし160例臨床効果が判定不能2例計162例(121)あたらしい眼科Vol.31,No.12,20141859 学的効果解析対象症例とした.2.患者背景安全性解析対象症例および有効性解析対象症例470例における人口統計学的およびその他の基準値の特性を表2に示す.年齢別の患者数は0歳(乳児)が最も多く,全体の29.6%(139/470例)を占めた.ついで3.5歳が24.0%(113/470例),1.2歳が23.4%(110/470例),0歳(新生児)が15.5%(73/470例),6.14歳が7.4%(35/470例)の順であった.対象疾患別では結膜炎が83.8%(394/470例)と最も多く,ついで涙.炎が8.9%(42/470例),麦粒腫が4.7%(22/470例),眼瞼炎が2.3%(11/470例),角膜潰瘍が0.2%(1/470例)の順であった.対象眼重症度は重症が4.0%(19/470例),中等症が57.0%(268/470例),軽症が38.9%(183/470例)であった.3.分離材料原因菌別の分離頻度を図2Aに示す.小児眼感染症患者の有効性解析対象症例470例の原因菌477株のうち,H.influenzaeが196株(41.1%)で最も多く,ついでS.pneumoniaeが79株(16.6%),S.aureusが55株(11.5%),a-hemolyticStreptococcusが34株(7.1%),Corynebacteriumspp.が28株(5.9%),Staphylococcusepidermidisが26株(5.5%),Moraxellacatarrhalisが23株(4.8%)であった.年齢別の原因菌は,0歳(新生児)ではS.aureusが一番多かったが,その他の年齢ではいずれもH.influenzaeが一番多かった.また,原因菌をグラム陽性菌とグラム陰性菌に分けると,0歳(新生児),0歳(乳児)および6.14歳ではグラム陽性菌がそれぞれ89.6%,51.4%および70.0%と過半数を占めており,1.2歳および3.5歳ではグラム陰性菌がそれぞれ75.2%および62.2%と過半数を占めていた(図2B).4.原因菌の薬剤感受性原因菌477株全株に対する各抗菌薬の抗菌活性(MICrange,MIC50およびMIC90)を表3に示す.TFLXのMIC50は≦0.06,MIC90は0.25μg/mLであった.その他の抗菌薬のMIC90をTFLXと比較すると,TFLXはMFLXと同程度,LVFXの4倍,GFLXの2倍,CMXの16倍,GMの64倍,EMの512倍以上の強い抗菌活性を示した.おもな菌種のMIC50およびMIC90を図3に示す.a.H.infl196株:うちBLNAS104株,BLNAR75株)BLNASに対するMIC50はTFLX,LVFX,GFLX,MFLXおよびCMXが≦0.06μg/mL,ついでGMが1μg/mL,EMが4μg/mLであった.MIC90はTFLX,LVFX,GFLXおよびMFLXが≦0.06μg/mL,ついでCMXが0.25μg/mL,表2人口統計学的およびその他の基準値の特性背景因子結膜炎n=394(83.8)涙.炎n=42(8.9)麦粒腫n=22(4.7)眼瞼炎n=11(2.3)角膜潰瘍n=1(0.2)合計n=4700歳(新生児)0歳(乳児)64(16.2)102(25.9)9(21.4)29(69.0)0(0)1(4.5)0(0)7(63.6)0(0)0(0)73(15.5)139(29.6)年齢(歳)1.2歳3.5歳100(25.4)102(25.9)3(7.1)1(2.4)4(18.2)9(40.9)3(27.3)1(9.1)0(0)0(0)110(23.4)113(24.0)6.14歳26(6.6)0(0)8(36.4)0(0)1(100)35(7.4)性別男女224(56.9)170(43.1)20(47.6)22(52.4)7(31.8)15(68.2)5(45.5)6(54.5)0(0)1(100)256(54.5)214(45.5)軽症159(40.4)7(16.7)8(36.4)9(81.8)0(0)183(38.9)対象眼重症度中等症223(56.6)31(73.8)12(54.5)2(18.2)0(0)268(57.0)重症12(3.0)4(9.5)2(9.1)0(0)1(100)19(4.0)眼の基礎疾患・なし368(93.4)30(71.4)21(95.5)10(90.9)1(100)430(91.5)合併症あり26(6.6)12(28.6)1(4.5)1(9.1)0(0)40(8.5)本剤投薬前6日以内の抗菌薬治療なしあり不明379(96.2)10(2.5)5(1.3)24(57.1)15(35.7)3(7.1)22(100)0(0)0(0)10(90.9)0(0)1(9.1)1(100)0(0)0(0)436(92.8)25(5.3)9(1.9)眼科領域のなし328(83.2)35(83.3)19(86.4)10(90.9)1(100)393(83.6)併用薬あり66(16.8)7(16.7)3(13.6)1(9.1)0(0)77(16.4)眼科領域以外の併用薬なしあり不明381(96.7)12(3.0)1(0.3)40(95.2)2(4.8)0(0)16(72.7)6(27.3)0(0)9(81.8)2(18.2)0(0)1(100)0(0)0(0)447(95.1)22(4.7)1(0.2)症例数(%)1860あたらしい眼科Vol.31,No.12,2014(122) AAcinetobacterspp.TheothersB小児原因菌n=477H.influenzae196,41.1%S.pneumoniae79,16.6%S.aureus55,11.5%a-hemolyticStreptococcus34,7.1%Corynebacteriumspp.28,5.9%M.catarrhalis23,4.8%S.epidermidis26,5.5%25,5.2%11,2.3%0%20%40%60%80%100%6~14歳3~5歳1~2歳0歳(乳児)0歳(新生児)■Streptococcuspneumoniae■Staphylococcusaureus■a-hemolyticStreptococcus■Corynebacteriumspp.■Staphylococcusepidermidis■陽性菌その他■Haemophilusinfluenzae■Moraxellacatarrhalis■陰性菌その他図2原因菌別分離頻度および年齢別のグラム陽性菌とグラム陰性菌の比率表3原因菌に対する各抗菌薬の抗菌活性抗菌薬TFLXLVFXGFLXMFLXCMXGMEMMIC(μg/mL)RangeMIC50≦0.06.>16≦0.06≦0.06.>1280.12≦0.06.128≦0.06≦0.06.64≦0.06≦0.06.>1280.25≦0.06.>1281≦0.06.>1284MIC900.2510.50.25416>1280.010.1MIC501101001,0000.010.1MIC90110(μg/mL)1001,000S.pneumoniae(79)PSSP(47)PISP/PRSP(32)S.aureus(55)MSSA(44)MRSA(11)a-hemolyticStreptococcus(34)Corynebacteriumspp.(28)S.epidermidis(17)H.influenzae(196)BLNAS(104)BLNAR(75)M.catarrhalis(23)TFLXLVFXGFLXMFLXCMXGMEM図3各菌種のMIC50およびMIC90GMが2μg/mL,EMが8μg/mLであった.BLNARに対およびMFLXが≦0.06μg/mL,ついでCMXが0.5μg/するMIC50はTFLX,LVFX,GFLXおよびMFLXが≦0.06mL,GMが2μg/mL,EMが8μg/mLであった.μg/mL,ついでCMXが0.25μg/mL,GMが1μg/mL,EMが4μg/mLであった.MIC90はTFLX,LVFX,GFLX(123)あたらしい眼科Vol.31,No.12,20141861 表4疾患別および重症度別の臨床効果(有効率)臨床効果有効率(%)95%信頼区間(%)有効無効判定不能合計対象疾患結膜炎38110339497.495.3.98.8涙.炎35614285.470.8.94.4麦粒腫22002210084.6.100眼瞼炎11001110071.5.100角膜潰瘍010100.97.5重症度別軽症1802118398.996.1.99.9中等症25312326895.592.2.97.6重症16301984.260.4.96.6合計44917447096.494.2.97.9有効率,95%信頼区間の算出に関しては,分母から判定不能を除く.信頼区間は,F分布に基づく正確な信頼区間を算出した.b.S.pneumoniae(79株:うちPSSP47株,PISP/PRSP32株)PSSPに対するMIC50はTFLXが≦0.06μg/mL,ついでMFLXおよびCMXが0.12μg/mL,GFLXが0.25μg/mL,LVFXが0.5μg/mL,EMが2μg/mL,GMが4μg/mLであった.MIC90はTFLXおよびMFLXが0.12μg/mL,ついでGFLXおよびCMXが0.25μg/mL,LVFXが1μg/mL,GMが8μg/mL,EMが>128μg/mLであった.PISP/PRSPに対するMIC50はTFLXおよびMFLXが≦0.06μg/mL,ついでGFLXが0.12μg/mL,LVFXおよびCMXが0.5μg/mL,GMおよびEMが8μg/mLであった.MIC90はTFLXおよびMFLXが0.12μg/mL,ついでGFLXが0.25μg/mL,LVFXおよびCMXが1μg/mL,GMが16μg/mL,EMが>128μg/mLであった.c.S.aureus(55株:うちMSSA44株,MRSA11株)MSSAに対するMIC50はTFLX,GFLXおよびMFLXが≦0.06μg/mL,ついでLVFXが0.12μg/mL,GMおよびEMが0.5μg/mL,CMXが2μg/mLであった.MIC90はGFLXおよびMFLXが1μg/mL,ついでTFLX,LVFXおよびCMXが2μg/mL,GMが128μg/mL,EMが>128μg/mLであった.MRSAに対するMIC50はGFLXおよびMFLXが8μg/mL,TFLXが>16μg/mL,LVFXおよびCMXが32μg/mL,GMが64μg/mL,EMが>128μg/mLであった.MIC90はMFLXが8μg/mL,ついでGFLXが16μg/mL,TFLXが>16μg/mL,LVFXが64μg/mL,CMX,GMおよびEMが>128μg/mLであった.5.臨床効果a.臨床効果有効性解析対象症例470例における疾患別および重症度別の臨床効果(有効率)とその95%信頼区間を表4に示す.有効性解析対象症例において全体の臨床効果は96.4%(449/466例)であった.各対象疾患に対する有効率は,結膜炎が97.4%(381/391例),涙.炎が85.4%(35/41例),麦粒腫が100%(22/22例),眼瞼炎が100%(11/11例)であり,角膜潰瘍(0/1例)を除き,85%を超えていた.また,重症度別の有効率は,軽症で98.9%(180/182例),中等症で95.5%(253/265例),重症で84.2%(16/19例)であった.b.原因菌別臨床効果原因菌別臨床効果解析対象症例395例における原因菌別の臨床効果(有効率)とその95%信頼区間を表5に示す.本試験において検出された原因菌に対する単独菌感染症例は335例(グラム陽性菌:145例,グラム陰性菌:190例)2菌種の複数菌感染症例は56例,3菌種の複数菌感染症例(,)は4例であった.単独菌感染症例でのトスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液0.3%による臨床効果は,H.influenzaeで100%(160/160例){BLNASが100%(88/88例),BLNARが100%(58/58例)},S.pneumoniaeで95.9%(47/49例){PSSPが100%(31/31例),PISP/PRSPが88.9%(16/18例)},a-hemolyticStreptococcusで100%(29/29例),S.aureusで89.7%(26/29例){MSSAが90.0%(18/20例),MRSAが88.9%(8/9例)},M.catarrhalisで100%(20/20例)であった.また,複数菌に感染した症例の臨床効果は,2菌種では98.1%(53/54例),3菌種では100%(4/4例)であった.6.細菌学的効果細菌学的効果解析対象症例233例(グラム陽性菌:92例,グラム陰性菌:103例,複数菌感染:38例)における細菌学的効果(消失率)およびその95%信頼区間を表6に示す.全対象症例における細菌学的効果は86.7%(202/233例)1862あたらしい眼科Vol.31,No.12,2014(124) 表5原因菌別臨床効果(有効率)原因菌臨床効果合計(例)有効率(%)95%信頼区間(%)有効無効判定不能単独菌感染グラム陽性菌S.pneumoniae47215095.986.0.99.5PSSP31013210088.8.100PISP/PRSP16201888.965.3.98.6a-hemolyticStreptococcus29013010088.1.100S.aureus26302989.772.6.97.8MSSA18202090.068.3.98.8MRSA810988.951.8.99.7S.epidermidis14101593.368.1.99.8S.capitis10011002.5.100CoagulasenegativeStaphylococcus110250.01.3.98.7Corynebacteriumspp.17101894.472.7.99.9小計1358214594.489.3.97.6グラム陰性菌H.influenzae1600016010097.7.100BLNAS88008810095.9.100BLNAR58005810093.8.100M.catarrhalis20002010083.2.100Acinetobacterspp.410580.028.4.99.5P.aeruginosa300310029.2.100K.pneumoniae10011002.5.100Moraxellaspp.010100.97.5小計1882019098.996.2.99.9複数菌感染2菌種53125698.190.1.1003菌種400410039.8.100合計38011439597.295.0.98.6有効率,95%信頼区間の算出に関しては,分母から判定不能を除く.信頼区間は,F分布に基づく正確な信頼区間を算出した.であった.また,グラム陽性菌に対しては84.8%(78/92例),グラム陰性菌に対しては89.3%(92/103例)であった.7.安全性および副作用発現症例安全性解析対象症例470例における副作用について表7に示す.全対象症例における副作用発現率は0.2%(1/470例)であり,眼瞼炎を発現した1件で投与日数1日,1日量1滴の結膜炎の6カ月女児であった.III考察今回,筆者らは,TFLXトシル酸塩水和物点眼液0.3%の特定使用成績調査より,小児の結果を抜粋し,新生児を含む小児に対する有効性および安全性を検証した.同時に,小児より分離された原因菌を用いて各種抗菌薬の薬剤感受性を測定した.本調査におけるTFLXトシル酸塩水和物点眼液0.3%の臨床効果(有効率)は全体で96.4%(449/466例)であり良好な成績であった.対象疾患別では,最も頻度の高かった結膜(125)あたらしい眼科Vol.31,No.12,20141863 表6原因菌別細菌学的効果原因菌細菌学的効果合計(例)消失率(%)95%信頼区間(%)消失推定消失一部消失消失せず単独菌感染グラム陽性菌S.pneumoniae210072875.055.1.89.3PSSP110041573.344.9.92.2PISP/PRSP100031376.946.2.95.0a-hemolyticStreptococcus163012095.075.1.99.9S.aureus122051973.748.8.90.9MSSA91001010069.2.100MRSA3105944.413.7.78.8S.epidermidis111011392.364.0.99.8S.capitis100011002.5.100CoagulasenegativeStaphylococcus010011002.5.100Corynebacteriumspp.100001010069.2.100小計7170149284.875.8.91.4グラム陰性菌H.influenzae6910108087.578.2.93.8BLNAS430064987.875.2.95.4BLNAR181032286.465.1.97.1M.catarrhalis130001310075.3.100Acinetobacterspp.5000510047.8.100P.aeruginosa2001366.79.4.99.2K.pneumoniae100011002.5.100Moraxellaspp.100011002.5.100小計91101110389.381.7.94.5複数菌感染2菌種264513683.367.2.93.63菌種2000210015.8.100合計1901252623386.781.6.90.8消失率の算出に関しては,消失および推定消失を合わせて消失とした.信頼区間は,F分布に基づく正確な信頼区間を算出した.表7副作用発現率と内訳副作用発現件数/解析対象例数1/470発現率(%)0.295%信頼区間(%)0.0.1.2内訳眼瞼炎1件信頼区間は,F分布に基づく正確な信頼区間を算出した.炎は97.4%(381/391例)であった.本調査の臨床効果は,申請時の12歳以上の患者を対象としたオープン試験の成績7)(有効率:全体で93.7%,結膜炎に対して93.8%)よりもやや高かった.原因菌別の臨床効果では,単独菌感染症例に対して,97.0%(323/333例)の有効率であった.菌別では,BLNAR,PISP/PRSP,MRSAにそれぞれ100%,88.9%,88.9%と,耐性株を含む主要な菌種に対して高い臨床効果を示した.細菌学的効果(消失率)は全体で86.7%(202/233例)であった.これも申請時の結果〔消失率:79.2%(114/1441864あたらしい眼科Vol.31,No.12,2014(126) 例)〕7)と比較してやや高かった.原因菌別の分離頻度では,H.influenzaeが最も高く40%程度を占めていた.ついでS.pneumoniae,S.aureus,a-hemolyticStreptococcusの順に分離頻度が高かった.秋葉らは4歳未満の乳幼児107例の細菌性結膜炎から検出された検出菌82株において,H.influenzaeが52.4%と最も多く,ついでS.pneumoniaeの20.7%,S.aureusの7.3%であったと報告しており8),今回の結果は既報と同じ傾向を示していた.さらに,月齢別でのグラム陽性菌とグラム陰性菌の比率において,生後1.6カ月ではS.pneumoniaeやS.aureusなどのグラム陽性菌が過半数を占めていたが,それ以降グラム陰性菌の比率が増え,生後25.48カ月ではグラム陰性菌が100%になったことを報告している8).今回も同様の傾向がみられ,新生児ではグラム陽性菌が89.6%と過半数を占めていたが,徐々にその比率が下がり,1.2歳ではグラム陽性菌が24.8%を占めていた.また,3.5歳,6.14歳と年齢が上がるにつれて再びグラム陽性菌の比率が増え,6.14歳ではグラム陽性菌が70.0%を占めていた.松本らは,全症例中73.3%が40歳以上を占める集団の解析において,グラム陽性菌が全体の67.4%を占めていたことを報告しており9),年齢の上昇に伴い再びグラム陽性菌が主要な原因菌となることが示唆された.今回分離された原因菌において,S.pneumoniaeでは,79株のうち40.5%がPISPまたはPRSPであった.PISPまたはPRSPに対するLVFXのMIC90は1μg/mLであったが,その他のキノロン系抗菌薬のMIC90は0.12または0.25μg/mLであり,強い抗菌活性を示した.一方で,EMはMIC90が>128μg/mLであり,耐性化が認められた.S.aureusでは,20.0%がMRSAであった.2004年から2007年に細菌性結膜炎患者から分離された検出菌において,S.aureus97株中19.6%(19株)がMRSAであったことを松本らが報告している9)が,今回のMRSAの分離頻度と類似していた.MRSAは今回感受性測定を実施したいずれの抗菌薬に対しても感受性の低下が認められた.H.influenzaeでは,196株のうち38.3%の75株がBLNARであった.堀らは市中病院における外眼部感染症から分離されたH.influenzae412株のうち,BLNARは46.6%の192株であったと報告しているが10),今回の結果でも40%近くの分離頻度であった.BLNARに対して,キノロン系抗菌薬のMIC90はいずれも≦0.06μg/mLであり,強い抗菌活性を示した.H.influenzaeは小児の細菌性結膜炎の主要な起炎菌であるが,今回の結果からはキノロン系抗菌薬はBLNARに対して強い抗菌活性を示した.副作用は,安全性解析対象症例470例中,6カ月の結膜炎女児に発現した眼瞼炎1件であった.本結果からは安全であると考えられるが,今後も情報収集に努める必要がある.(127)近年,成人領域ではキノロン耐性のH.influenzaeも分離され11),S.pneumoniaeもキノロン耐性化率の上昇が懸念される.小児では,生後6カ月から5歳くらいまでは自己の免疫能が未熟なため,S.pneumoniaeやH.influenzaeの鼻咽頭の健常保菌率が50.60%程度と非常に高い12,13).このように普段から病原菌を保菌している小児に対し,広くキノロン系抗菌点眼薬を使用すれば,キノロン耐性H.influenzaeやS.pneumoniaeが生じやすくなることは容易に想像できる.眼科医の小児に対するキノロン系抗菌薬の処方については今後さらに十分検討していくことが重要である.しかしながら,病状の経過を自分で表現できない子供の場合,小児眼感染症が重症化する前に短期間でしっかりと病原菌をたたき,治療を行うことは重要であると考える.また,TFLXトシル酸塩水和物点眼液の「用法用量に関連する使用上の注意」には,「小児においては,成人に比べて短期間で治療効果が認められる場合があることから,経過を十分観察し,漫然と使用しないよう注意すること」と注意喚起もされ,短期治療を念頭に処方されていることから,TFLXトシル酸塩水和物点眼液により耐性菌を生じやすくする恐れは必ずしも高くないと考える.一方,CMXなどのb-ラクタム系薬も治療の選択肢として有効ではあるが,TFLXに比し主要な眼感染症起因菌に対し抗菌活性が劣る.また,近年,眼感染症起因菌においても,バイオフィルム形成が臨床的に問題となっており,バイオフィルム形成菌に対してはb-ラクタム系薬よりもキノロン系薬を,また,キノロン系薬のなかでも目標とする菌に対して,より強い抗菌活性を示す薬剤を選択すべきである14)といわれている.小児の眼感染症は早期に十分治療しなければ,将来のある幼小児の視機能を損ないかねないこともある.キノロン系薬は耐性菌の出現にも十分注意を払う必要があることも念頭におきながら,キノロン系薬での治療が有効であると思われる症例では,短期間で集中的に治療を行うことも重要である.以上,本調査で分離された原因菌の分離頻度ならびに耐性化率は,これまでの報告と同様の傾向が認められた.また,臨床効果ならびに細菌学的効果ともに申請時の試験と比べて低下は認められなかった.耐性菌の動向に注意を払う必要はあるが,小児の細菌性外眼部感染症においてTFLXトシル酸塩水和物点眼液0.3%は高い有効性と安全性を有する薬剤であると考えられた.文献1)西田輝夫,宮永嘉隆,大野重昭:トスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液の有効性・安全性および低頻度分離株に対する有効性の確認.臨眼68:1509-1519,20142)宮永嘉隆,東範行,大野重昭:新生児の外眼部細菌感染あたらしい眼科Vol.31,No.12,20141865 症に対するトスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液の有効性と安全性の検討.臨眼65:1043-1049,20113)ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute.Methodsfordilutionantimicrobialsusceptibilitytestsforbacteriathatgrowaerobically;Approvedstandard-seventhedition.M7-A7.CLSI,Wayne,PA,20064)ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute.Performancestandardsforantimicrobialsusceptibilitytesting;seventeenthinformationalsupplement.M100-S17.CLSI,Wayne,PA,20075)ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute.Methodsforantimicrobialdilutionanddisksusceptibilitytestingofinfrequentlyisolatedorfastidiousbacteria;Approvedguideline.M45-A.CLSI,Wayne,PA,20066)ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute.Methodsforantimicrobialsusceptibilitytestingofanaerobicbacteria;Approvedstandard-seventhedition.M11-A7.CLSI,Wayne,PA,20077)北野周作,宮永嘉隆,大野重昭ほか:新規ニューキノロン系抗菌点眼薬トシル酸トスフロキサシン点眼液の細菌性外眼部感染症を対象とするオープン試験.あたらしい眼科23:68-80,20068)秋葉真理子,秋葉純:乳幼児細菌性結膜炎の検出菌と薬剤感受性の検討.あたらしい眼科18:929-931,20019)松本治恵,井上幸次,大橋裕一ほか:多施設共同による細菌性結膜炎における検出菌動向調査.あたらしい眼科24:647-654,200710)堀武志,秦野寛:急性細菌性結膜炎の疫学.あたらしい眼科6:81-84,198911)YokotaS,OhkoshiY,SatoKetal:Emergenceoffluoroquinolone-resistantHaemophilusinfluenzaestrainsamongelderlypatientsbutnotamongchildren.JClinMicrobiol46:361-365,200812)HashidaK,ShiomoriT,HohchiNetal:NasopharyngealHaemophilusinfluenzaecarriageinJapanesechildrenattendingday-carecenters.JClinMicrobiol46:876-881,200813)HashidaK,ShiomoriT,HohchiNetal:NasopharyngealStreptococcuspneumoniaecarriageinJapanesechildrenattendingday-carecenters.IntJPediatrOtorhinolaryngol75:664-669,201114)井上幸次,池田欣史,藤原弘光ほか:眼感染症由来Staphylococcusepidermidisが形成したInVitroバイオフィルムに対するトスフロキサシン点眼液の殺菌効果.あたらしい眼科29:91-98,2012***1866あたらしい眼科Vol.31,No.12,2014(128)

汎用性点眼抗菌薬の小児における臨床評価基準

2012年3月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科29(3):425.429,2012c汎用性点眼抗菌薬の小児における臨床評価基準宮永嘉隆*1西田輝夫*2大野重昭*3*1西葛西・井上眼科病院*2山口大学*3北海道大学大学院医学研究科炎症眼科学講座ClinicalEvaluationCriteriaforGeneralPurposeAntibacterialEyedropsforChildrenYoshitakaMiyanaga1),TeruoNishida2)andShigeakiOhno3)1)NishiKasaiInouyeEyeHospital,2)YamaguchiUniversity,3)DepartmentofOcularInflammationandImmunology,HokkaidoUniversityGraduateSchoolofMedicine目的:トスフロキサシントシル酸塩水和物0.3%点眼液の製造販売後調査で集積した外眼部細菌感染症症例を用い,小児臨床評価基準について検討した.方法:「汎用性抗生物質等点眼薬の市販後調査における評価基準」(あたらしい眼科15:1735-1737,1998)をもとに新生児,乳児,幼児,学童の所見・症状の合計スコアを成人と比較した.小児臨床評価基準は,所見・症状の観察項目,効果判定の係数について検討し,細菌学的効果を指標として検証した.結果:新生児,乳児,幼児の点眼開始日スコアは成人の48.8.64.8%であった.小児臨床評価基準は,他覚所見を観察項目とし,新生児,乳児では判定時スコアが点眼開始日スコアの係数:1/2以下,幼児では係数:1/3以下になった場合を改善とした.結論:小児臨床評価基準は,製造販売後における小児の臨床評価に適用でき,今後の点眼抗菌薬の調査に示唆を与えるものと考えられた.Purpose:Toestablishpediatricclinicalevaluationcriteriaforbacterialexternaleyeinfectionsinpost-marketingsurveillanceoftosufloxacintosilatehydrate0.3%eyedrops.Method:Totalscoresforobjectivefindingsandsymptomsbasedon“Evaluationcriteriainpost-marketingsurveillanceofgeneralantibiotics”(JournaloftheEye15:1735-1737,1998)amongneonate,infant,youngchildandschool-agechildwerecomparedtothoseofadults.Assessmentcriteriaforchildrenwereinvestigatedinregardtoobservationitemsaswellasthecoefficientsofdeterminationofeffects,thecoefficientsbeingdefinedusingbacteriologicaleffectsasindicators.Results:Totalscoresforneonate,infantandyoungchildatstartofinstillationrangedfrom48.8%to64.8%ofthoseforadults.Theinvestigationitemsincludedonlyobjectiveparametersfortheagecategoriesofneonate,infantandyoungchild.Wejudgedimprovementtobeadecreaseintotalscore,fromstartofinstillationto≦1/2forneonateandinfant,and≦1/3foryoungchild.Conclusion:Thepediatricclinicalevaluationcriteriadevelopedherecanbeappliedtochildreninpost-marketingsurveillance.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(3):425.429,2012〕Keywords:トスフロキサシン(TFLX),点眼液,評価基準,小児,製造販売後調査.tosufloxacintosilate,eyedrops,evaluationcriteria,children,post-marketingsurveillance.はじめに医療用医薬品は,製造販売後において治験時と比較して背景の異なるさまざまな患者に使用される.したがって,当該医薬品の使用実態下における有効性および安全性を確認する製造販売後調査は重要な位置付けにある.一方,製造販売後調査は多地域の施設において専門,非専門を問わず実施されるため,客観的な評価を行う臨床評価基準が必要である.点眼抗菌薬の製造販売後調査における臨床評価基準は,他覚所見および自覚症状の推移をもとに金子らにより作成された「汎用性抗生物質等点眼薬の市販後調査における評価基準」1)(以下,従来の臨床評価基準,表1)が報告されている.トスフロキサシントシル酸塩水和物0.3%点眼液(以下,TFLX点眼液)は,小児症例に対する治験を実施し2,3),小児への適用を取得したわが国初の点眼抗菌薬である.今回,筆者らはTFLX点眼液の承認後に実施された製造販売後調査における小児の所見・症状の推移などをもとに,新たに小児〔別刷請求先〕宮永嘉隆:〒134-0088東京都江戸川区西葛西5-4-9西葛西・井上眼科病院Reprintrequests:YoshitakaMiyanaga,M.D.,NishiKasaiInouyeEyeHospital,5-4-9Nishikasai,Edogawa-ku,Tokyo134-0088,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(137)425 表1汎用性抗生物質等点眼薬の市販後調査における臨床評価基準他覚所見:結膜充血,眼瞼発赤,眼瞼腫脹,角膜浮腫,角膜浸潤,涙.膿汁逆流,その他観察項目の他覚所見自覚症状:眼脂,流涙,異物感,眼痛,羞明,霧視,掻痒感,その他の自覚症状症状のスコア化各観察項目を3点,2点,1点,0.5点,0点の5段階で評価する観察時期点眼開始時および点眼後14(±2)日症状スコアの推移に基づく判定改善:14(±2)日以内に合計スコアが1/4以下になった場合改善せず:14(±2)日で合計スコアが1/4以下にならない場合○日で改善せず:14(±2)日の症状観察結果はないが,それまでの観察実施日の合計スコアが1/4以下にならない場合症状の軽重による係数の補正点眼開始時の合計スコアが5点以上10点未満では,14(±2)日以内の合計スコアが1/3.5以下,点眼開始時の合計スコアが10点以上では,14(±2)日以内の合計スコアが1/3以下で改善とする疾患による留意事項涙膿炎では,経過中に示した「流涙」の最低スコアを合計スコアから減点する(金子ら1),「汎用性抗生物質等点眼薬の市販後調査における評価基準」を一部改変)表2原因菌のGroup分類の臨床評価の基準(以下,小児臨床評価基準)を作成したので報告する.I小児と成人の各種背景の比較1.対象および方法a.対象症例2006年10月から2009年9月にわたり実施したTFLX点眼液の製造販売後調査「低頻度臨床分離株の集積とTFLX点眼液の有効性と安全性の確認」および「新生児の細菌性外眼部感染症に対するTFLX点眼液の有効性と安全性の検討」4)において収集した症例のうち,所定の観察時期に所見・症状のスコア化を実施した742例(小児318例,成人424例)を対象症例とした.なお,小児は新生児(生後4週未満)49例,乳児(生後4週.1歳未満)82例,幼児(1.6歳未満)166例,学童(6.15歳未満)21例に区分した.b.細菌検査および細菌学的効果点眼開始日および判定日(小児では点眼7日後±2日以内,成人では点眼14日後±2日以内)に病巣部,眼脂などの分泌物の細菌検査を実施し,原因菌を特定した.なお,原因菌は検出された菌のうち,表2に示すグループ分類において最上位のグループに属する菌を採用した.細菌学的効果は,点眼開始時の検出菌が判定日に検出されなかった場合を消失とした.c.所見・症状スコア観察項目は,従来の評価基準1)をもとに,他覚所見としてGroupIStaphylococcusaureusStreptococcuspyogenes(GroupA)StreptococcuspneumoniaeEnterococcussp.Citrobactersp.Enterobactersp.Escherichiasp.Proteussp.Morganellasp.SerratiamarcescensOtherEnterobacteriaceaeNeisseriagonorrhoeaeOtherNeisseriaOtherMoraxellaAcinetobactersp.Achromobactersp.Haemophilussp.PseudomonasaeruginosaOtherPseudomonassp.GroupIIStreptococcusagalactiae(GroupB)StreptococcusGroupCOtherStreptococcus(GroupD,G;nongrouped;viridans)Branhamella(Moraxella)catarrhalisGroupIIIStaphylococcusepidermidisOthercoagulasenegativeStaphylococcusMicrococcussp.Bacillussp.Corynebacteriumsp.(diphtheroids)Propionibacteriumacnes結膜充血,眼瞼発赤,眼瞼腫脹,角膜浮腫,角膜浸潤,涙.膿汁逆流,その他の他覚所見,自覚症状として眼脂,流涙,異物感,眼痛,羞明,霧視,掻痒感,その他の自覚症状とし見・症状を程度に応じ,.(0点:なし),±(0.5点:ごくた.観察時期は点眼開始日および判定日(小児では点眼7日軽度またはごく少量),+(1点:軽度または少量),2+(2後±2日以内,成人では点眼14日後±2日以内)とし,各所点:中等度または中等量),3+(3点:強度または多量)の5426あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(138) 表3年齢別の細菌学的効果年齢例数消失例数消失率(%)新生児201575.0乳児403587.5幼児907987.8学童111090.9成人30725482.7判定日に細菌検査を実施した症例を対象とした.段階でスコア化しその平均値を求めた.d.統計解析Fisherの直接確率法を用い,有意水準は両側5%とした.2.結果a.細菌学的効果年齢別の細菌学的効果を表3に示す.新生児の菌消失率は他の年齢と比べやや低かったが,すべての年齢で有意差を認めなかった(p=0.552).b.所見・症状スコア年齢別の所見・症状スコアを表4に示す.点眼開始日の合計スコアは新生児,乳児では成人の約50%,幼児では成人の約65%であり,学童では成人と同程度であった.項目別では,自覚症状の異物感,眼痛,羞明,霧視,掻痒感は新生児で認められず,乳児では掻痒感をわずかに認めたのみであった.また,幼児のこれらの項目のスコアは成人と比べ低かった.一方,判定日の合計スコアは,新生児,乳児,学童では成人と同程度であり,幼児では成人の50%以下であった.II小児臨床評価基準の作成と検証1.小児臨床評価基準案の作成前述のとおり,点眼開始日の合計スコアは新生児,乳児,幼児で成人との差が大きかったことから,従来の臨床評価基準の観察項目,判定方法を改変し,新生児,乳児,幼児を対象とした小児臨床評価基準の作成を試みた.観察項目は,他覚所見のみとした.すなわち,異物感,眼痛,羞明,霧視,掻痒感を観察項目から削除し,さらに眼脂,流涙を他覚所見の観察項目とした.判定方法は,従来の臨床評価基準と同様に判定日の合計スコアが点眼開始日の合計スコアの『係数』以下になった場合を改善とする案1,点眼開始日の合計スコアを『係数』倍した後,従来の臨床評価基準で評価する案2について検討した.係数は,点眼開始日の合計スコアの差から,案1では係数を1/2,1/2.5,1/3,案2では係数を1.5,2と幅を持たせた.すなわち,案1は,点眼開始日の合計スコア3.56(新生児)が,係数1/2,1/2.5,1/3である1.78,1.42,1.19以下になった場合を改善とし,案2は点眼開始日の合計スコア3.56の1.5倍,2倍である5.34,7.12とし,従来の臨床評価基準で評価するものである.妥当性は,それぞれの改善率が細菌学的効果と同程度であることを指標とした.なお,案1,案2ともに従来の臨床評価基準よりも緩和されるため,疾患による留意を行わなかった.さらに,案1では症状の軽重による係数の補正を行わな表4所見・症状スコア開始時判定時観察項目新生児乳児幼児学童成人新生児乳児幼児学童成人他覚所見自覚症状結膜充血0.930.791.211.451.420.180.160.140.330.22眼瞼発赤0.110.310.410.930.590.010.050.030.120.08眼瞼腫脹0.120.170.300.740.440.030.0300.120.05角膜浮腫0.010.010.010.020.080000.020.01角膜浸潤0.010.010.010.100.0900000.01涙.膿汁逆流0.140.250.030.050.080.040.090.0100.03その他0.1300.0400.040.0200.0200.004小計1.461.542.003.292.740.290.340.190.600.40眼脂1.701.611.601.431.620.490.370.140.310.27流涙0.400.640.370.450.790.160.260.020.020.17異物感000.270.670.80000.010.070.11眼痛000.200.950.61000.010.070.05羞明000.060.070.21000.00300.03霧視000.060.050.22000.00300.03掻痒感00.020.170.380.3200.010.010.100.04その他0000000000小計2.102.272.734.004.570.650.630.200.570.70合計スコア3.563.814.737.297.300.940.980.391.171.10(139)あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012427 表5小児臨床評価基準案による改善率小児臨床評価基準案係数新生児改善率乳児幼児1/2%(例数)83.7(41/49)82.9(68/82)97.0(161/166)案1*11/2.5%(例数)73.5(36/49)73.2(60/82)94.0(156/166)1/3%(例数)65.3(32/49)70.7(58/82)91.6(152/166)案2*21.52%(例数)73.5(36/49)73.2(62/82)94.0(156/166)%(例数)83.7(41/49)90.2(74/82)97.0(161/166)*1判定日スコアが点眼開始日スコアの『係数』以下で改善とする.*2点眼開始日スコアを『係数』倍し,成人評価基準で評価する.かった.2.小児臨床評価基準案の評価小児臨床評価基準の案1,案2における改善率を表5に示す.案1の改善率は案2より低い傾向が認められたが,案1の新生児,乳児の係数1/2としたときの改善率83.7%,82.9%,幼児の係数1/3としたときの改善率91.6%は,細菌学的効果に近似した結果が得られた.以上より,小児の細菌性外眼部感染症に対するTFLX点眼液の製造販売後調査における臨床評価基準を表6のとおり定めた.III考按小児への適用を取得する薬剤が近年増加しているが,治験時の症例数が十分ではない場合も多いため,製造販売後に小児に対する有効性や安全性を改めて確認することは重要である.一方,製造販売後調査において小児を対象とした臨床評価基準の公表は少なく,点眼抗菌薬においても成人臨床評価基準が公表されているのみである.TFLX点眼液の製造販売後調査の結果は,他のフルオロキノロン系抗菌薬で小児を対象とした製造販売後調査の結果5,6)と比較して,疾患構成等が近似したものであり偏りがないと考えられたので,小児臨床評価基準の作成に使用した.従来の臨床評価基準は,他覚所見・自覚症状の観察項目をスコア化しその合計スコアより評価を行うことから,各年齢におけるスコアの違いを検討した.その結果,新生児,乳児,幼児で点眼開始日の合計スコアに大きな差が認められたが,学童の点眼開始日の合計スコアは成人と同程度であった.そこで,新生児,乳児,幼児を対象とした小児臨床評価基準の作成を試みた.観察項目は,点眼開始日の各スコアに基づき検討した.新生児,乳児では発語の関係から自覚症状を訴えることがなく,幼児も自ら症状を明確に表現することが困難であると考えられたため,自覚症状を観察項目から削除した.さらに成人では自覚症状としている眼脂,流涙は,担当医師の確認が可能であることから他覚所見項目とした.すなわち,新生児,乳児では,生体防御系の成熟度の違いに加え眼脂や流涙の自発的な除去が困難であり,生理的眼脂と病的眼脂の区別が容易でない7)ため,他覚所見として評価することを考えた.また,自発的な除去が困難であることが影響し,新生児,乳児では判定日に眼脂,流涙スコアが残り,幼児の合計スコアと比較して高い結果となることがわかったが,小児臨床評価基準の係数を,新生児,乳児では1/2,幼児では1/3に変更することで改善率に与える影響を吸収できる結果となった.小児を対象としたTFLX点眼液の臨床試験2,3)では,治験時の臨床評価ガイドラインに基づき,「推定起因菌が4日目に消失し,かつ臨床症状のスコア合計が8日目に1/4以下になったもの」を著効,「推定起因菌が4日目に消失し,かつ臨床症状のスコア合計が8日目に1/2以下になったもの」および「推定起因菌が消失しなくても,8日目までに臨床症状のスコア合計が1/3以下になったもの」を有効と判定しており,今回作成した小児臨床評価基準は治験時の基準とほぼ整合がとれたものとなった.以上,今回作成した小児臨床評価基準は,小児を対象とし表6小児臨床評価基準【新生児,乳児,幼児】観察項目他覚所見:結膜充血,眼瞼発赤,眼瞼腫脹,角膜浮腫,角膜浸潤,涙.膿汁逆流,眼脂,流涙,その他の他覚所見観察時期点眼開始時および点眼後7日(±2日)症状スコアの推移に基づく判定改善:7日±2日以内に合計スコアが1/2(幼児は1/3)以下になった場合改善せず:7日±2日以内に合計スコアが1/2(幼児は1/3)以下にならない場合○日で改善せず:14(±2)日の症状観察結果はないが,それまでの観察実施日の合計スコアが1/2(幼児は1/3)以下にならない場合【学童】成人臨床評価基準を適用する428あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(140) た製造販売後調査の臨床評価に十分適用できるものである.今後は小児を対象とした製造販売後調査における活用を広め,問題点などについてさらに検討していきたいと考える.謝辞:本研究に多大なご指導,ご協力を賜りました故北野周作先生に厚く御礼申し上げます.本論文の要旨は第47回日本眼感染症学会にて発表した.文献1)金子行子,内田幸男,北野周作ほか:汎用性抗生物質等点眼薬の市販後調査における評価基準.あたらしい眼科15:1735-1737,19982)北野周作,宮永嘉隆,大野重昭ほか:新規ニューキノロン系抗菌点眼薬トシル酸トスフロキサシン点眼液の小児の細菌性外眼部感染症を対象とする非対照非遮蔽他施設共同試験.あたらしい眼科23(別巻):118-129,20063)北野周作,宮永嘉隆,大野重昭ほか:新規ニューキノロン系抗菌点眼薬トシル酸トスフロキサシン点眼液の小児細菌性結膜炎患者に対する有効性の成人細菌性結膜炎患者との比較検討.あたらしい眼科23(別巻):130-140,20064)宮永嘉隆,東範行,大野重昭:新生児の外眼部細菌感染症に対するトスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液の有効性と安全性の検討.臨眼65:1043-1049,20115)丸田真一,末信敏秀,羅錦營:ガチフロキサシン点眼液(ガチフロR点眼液0.3%点眼液)の製造販売後調査─特定使用成績調査(新生児に対する調査)─.あたらしい眼科26:1429-1434,20096)丸田真一,末信敏秀,羅錦營:ガチフロキサシン点眼液(ガチフロR点眼液0.3%点眼液)の製造販売後調査─特定使用成績調査(新生児および乳児に対する調査)─.あたらしい眼科24:975-980,20077)亀井裕子:主訴からみた眼科疾患の診断と治療(18.眼脂).眼科45:1665-1671,2003***(141)あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012429