《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(8):1089.1092,2023c緑内障患者におけるアイモ24plus(1-2)と10-2間の測定点閾値の比較検討継大器鈴木康之東海大学医学部付属病院眼科ComparisonofCentralVisualFieldThresholdsbetweentheimo24plus(1-2)Programand10-2inGlaucomaTaikiTsuguandYasuyukiSuzukiCDepartmentofOphthalmology,TokaiUniversityHospitalC目的:自動静的視野計アイモ(クリュートメディカルシステムズ)のC24plus(1-2)プログラムによる中心視野評価に関する臨床的有用性を調べるため,10-2の測定点閾値と比較検討した.対象および方法:過去C1回以上C24plus(1-2)とC10-2を施行した緑内障患者のうち,強度近視眼を除き,かつ信頼性の高い眼(偽陽性<10%,偽陰性<12%,固視監視<20%)33例C63眼を対象とし,両者で重複しているC28点の測定点閾値を比較検討した.結果:24plus(1-2)と10-2の上下C28点平均閾値,上半視野C14点平均閾値,下半視野C14点平均閾値はそれぞれ,19.11C±7.58CdBとC19.43C±7.60CdB,16.98C±9.01CdBとC17.85C±8.89CdB,21.23C±8.41CdBとC21.01C±8.54CdBで,値の差は軽微であった.各測定点閾値における相関係数では,両者で強い相関を認め,閾値の差も軽微であった.結論:24plus(1-2)とC10-2の結果には相関がみられることから,24plus(1-2)がC10-2の代替になる可能性が示唆された.CPurpose:ToCinvestigateCtheCclinicalCusefulnessCofCtheCimo24plus(1-2)head-mountedCautomatedCperimeter(CREWTCMedicalSystems)inCcomparisonCtoC10-2CforCtheCevaluationCofCcentralCvisual.eld(VF)measurementCthresholdCvaluesCinCglaucoma.CSubjectsandMethods:InC63CeyesCofC33CglaucomaCpatientsCwhoCunderwentCimo24plus(1-2)andC10-2CexaminationCmoreCthanConce,CtheCVFCresultsCwithChighcon.dence(excludingChighCmyopiaeyes)wereCcomparedCatC28Cmeasurement-pointCthresholdsCthatCoverlapCinCboth.CResults:TheCmeanC28-point,C14-pointCupperChemi.eld,CandC14-pointClowerChemi.eldCVFCthresholdCvalues,Crespectively,CwereC19.11±7.58CdB,C16.98±9.01CdB,and21.23±8.41CdBforimo24plus(1-2)and19.43C±7.60CdB,C17.85±8.89CdB,and21.01±8.54CdBfor10-2.CEachCVFCmeasurementCpointCthresholdCwasCstronglyCcorrelatedCwithCboth,CandCtheCdi.erenceCinCthresholdsCwasCminor.CConclusions:TheCstrongCcorrelationCbetweenCtheCimo24plus(1-2)andC10-2CVFCthresholdCvaluesrevealedthatimo24plus(1-2)maybeagoodsubstitutefor10-2.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(8):1089.1092,C2023〕Keywords:緑内障,視野,アイモ.glaucoma,visual.eld,imo.はじめに緑内障は進行性の視神経障害を伴う疾患であり,視野障害の評価は非常に重要である.緑内障の視野障害を測定する方法として静的視野検査が推奨されている1).アイモ(クリュートメディカルシステムズ)は小型軽量のヘッドマウント型静的視野計であり,静的視野検査の患者負担の軽減を目的として開発された.imoはコンパクトに持ち運べ暗室環境を必要としない2,3).また,左右独立したディスプレイを搭載し,両眼開放下でランダムに指標呈示することで両眼同時に検査を行うことが可能である.さらに瞳孔の動きをリアルタイムでモニターし固視監視を行い,固視に追従して視標呈示位置を自動補正する4,5).アイモの測定点配置として,Humphrey視野計(Hum-phreyC.eldanalyzer:HFA)同様にC10-2,24-2,30-2が〔別刷請求先〕継大器:〒259-1193神奈川県伊勢原市下糟屋C143東海大学医学部付属病院眼科Reprintrequests:TaikiTsugu,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokaiUniversityHospital,143Shimokasuya,Isehara,Kanagawa259-1193,JAPANCあるほか,24plus(1-2)がある.24plus(1-2)はC24-2の検査点をベースに,10-2の検査点の一部を追加し,黄斑部の検査点密度を高めたCimo独自の配列である.アイモオリジナルのストラテジーとしてCAmbientCInter-activeZippyEstimatedSequentialTesting(AIZE),AIZERapid,AIZEEXがある.AIZEはベイズ推定により検査試行ごとに刺激強度を決定し,最尤法を用いて最終的な網膜感度閾値を決定する.各検査点での被験者の応答を隣接する周囲の検査点に反映することにより,事前の予測精度を高め,従来のC4-2CdBbracketingと比較し検査時間の短縮が報告されている6).AIZERapidはCAIZEのストラテジーは変えず,各検査点での応答をより強く隣接点に反映させる.さらに偽陽性(FalsePositive:FP),偽陰性(FalseNegative:FN),固視監視(FixationLoss:FL)の三つの信頼性指標を検査プロセスから推定し,より時間短縮が可能となる.AIZECEXは過去データから閾値探索することで,さらなる時間短縮が可能となる.このようにアイモは緑内障診療における患者の視野検査の負担を軽減できる可能性があり,中心C24°内かつC10°内の視野評価を同時に行えるC24plus(1-2)は,さらなる患者負担の軽減につながると考えられる.しかし,その実臨床における有用性を検討した報告は少ない.本研究の目的は緑内障診療におけるアイモC24plus(1-2)の中心視野評価に関する臨床的有用性を検討することである.CI対象および方法2020年C4月.2021年C12月に東海大学医学部付属病院眼科にて,少なくとも過去C1回アイモで検査を施行した緑内障患者(病型不問)のうち,24plus(1-2)かつC10-2で閾値測定を行った眼を選択した.そのうえでC.6.0D以上の強度近視眼を除外し,かつ矯正視力C0.1以上,信頼性の高い眼(偽陽性<10%,偽陰性<12%,固視監視<20%)を対象とした.本研究はヘルシンキ宣言に準拠して行われ,東海大学医学部付属病院倫理委員会の承認(20R-057号)のもと,すべての対象者から同意を取得した.検査ストラテジーとしては,24plus(1-2)およびC10-2ともにCAIZEEXを用いた.アイモは,非検査眼は遮閉せずに片眼測定を行い,スタンド固定して検査した.解析は両者が重複するC28点の測定点閾値を用い.各測定点ごと,上下C28点平均閾値,上半視野C14点平均閾値,下半視野C14点平均閾値で行った.両者の解析には対応のあるCt検定を用い,p<0.05を統計学的に有意とした.相関解析にはCPearson積率相関係数を使用した.CII結果症例はC33例C63眼,平均年齢はC64.7(33.83)歳,logCMARC視力はC0.029(C.0.079.1.000),等価球面度数C.2.03(C.6.00.1.00)であった.対象患者の背景を表1に示した.①上下C28点平均閾値,②上半視野C14点平均閾値,③下半視野C14点平均閾値の相関係数を図1に,また,それぞれのC24plus(1-2)とC10-2での平均閾値を表2に示す.相関係数はそれぞれ①C0.96,②C0.92,③C0.94ですべて高い相関を認めた(Pearson積率相関係数).24plus(1-2)とC10-2の上下C28点平均閾値,上半視野C14点平均閾値,下半視野C14点平均閾値はそれぞれ,19.11C±7.58CdBとC19.43C±7.60CdB,C16.98±9.01CdBとC17.85C±8.89CdB,21.23C±8.41CdBとC21.01C±8.54CdBで,上半視野C14点平均閾値におけるC24plus(1-2)がC10-2より有意に低い結果となった(pairedt-test,p<0.05).また,24plus(1-2)とC10-2の測定時間はそれぞれC4.1±0.4分,3.7C±0.6分でC24plus(1-2)が有意に長い結果となった(p=0.002).24plus(1-2)とC10-2が重複するC28点の測定点閾値の相関は,すべての閾値でおおむね高い相関を認めたものの,上半視野固視近傍のC2点ではやや低めであった.また,各測定点の閾値を両者で比較したところ,上半視野において固視近傍の一点でC24plus(1-2)が有意に低く(21.33C±10.98CvsC24.31±8.81,p=0.004),下半視野において固視近傍の一点でC24plus(1-2)が有意に高い(23.22C±10.35CvsC21.52±12.01,p=0.01)結果となった.それぞれの比較における有意差をより詳細に検討するために,有意差を認めた上半視野C14点平均閾値,上半視野固視近傍一点の閾値,下半視野固視近傍一点の閾値の差を,①24plus(1-2)を先に施行した群と,②C10-2を先に施行した群に分けて検討した(表3).①C24plus(1-2)を先に施行した群において,上半視野固視近傍一点の閾値(22.93CdBCvs26.40CdB)でC24plus(1-2)が低く,下半視野固視近傍一点の閾値(24.03CdBCvs21.09CdB)でC24plus(1-2)が高い結果となった.CIII考按緑内障診療において,中心C24°内だけではなくC10°内の視野検査の施行は,後期緑内障に関して重要なだけではなく,一部の初期緑内障患者においても,中心窩や黄斑部の変化を生じることがあるため重要である7,8).また,検査回数(回/年)が多くなるほど,視野障害進行の検出までの期間が短縮される9)が,施行回数が多くなるほど,経済面や体力面などで患者負担が増加し,検査精度や再現性にも影響を及ぼすことが考えられる.本研究では,中心C24°内かつ10°内を評価可能なC24plus(1-2)の臨床的有用性を検討し,10-2の代用になりうるか,そして検査回数の減少ひいては患者負担の軽減につながるか確認することを目的とした.24plus(1-2)とC10-2が重複するC28点の測定点閾値すべ表1対象患者の背景24plus(1C-2)C10-2眼数(n)33症例63眼平均年齢(範囲)(歳)64.7(C33.C83)性別(男/女)C17/16測定間隔(月)5.4(1.C15)矯正視力(範囲)(logMAR)等価球面度数(範囲)(diopter)C0.029(C.0.079.C1.000).2.03(C.6.00.C1.00)眼圧(mmHg)C13.8±5.4MD(dB)C.13.8±6.8C.13.2±7.8PSD(dB)C10.3±3.3C9.1±3.8VFI(%)C59.8±26.4C-平均±標準偏差(最小.最大)①上下28点平均閾値②上半視野14点平均閾値③下半視野14点平均閾値24plus(1-2)[dB]353025201510524plus(1-2)[dB]2524plus(1-2)[dB]2510図1各検査間における上下28点平均閾値,上半視野14点平均閾値,下半視野14点平均閾値の散布図アイモC24plus(1-2),10-2における①上下C28点平均閾値,②上半視野C14点平均閾値,③下半視野C14点平均閾値の散布図を示した.回帰直線は赤い直線で示した.相関係数はそれぞれ①C0.96,②C0.92,③C0.94であった(Pearson積率相関係数).表224plus(1-2)と10-2における,上下28点平均閾値,上半視野14点平均閾値,下半視野14点平均閾値0510152025303510-2[dB]0510152025303510-2[dB]0510152025303510-2[dB]24plus(1C-2)C10-2p値上下C28点平均閾値(dB)C19.11±7.58C19.43±7.60C0.23上半視野C14点平均閾値(dB)C16.98±9.01C17.85±8.89C0.04下半視野C14点平均閾値(dB)C21.23±8.41C21.01±8.54C0.53測定時間(分)C4.1±0.4C3.7±0.6C0.0002平均±標準偏差表3有意差を認めた測定点に関する検討24plus(C1-2)C→C10-2[平均期間:6C.1カ月]10-2C→C24plus(C1-2)[平均期間:7C.3カ月]24plus(1C-2)C10-224plus(1C-2)C10-2上半視野C14点平均閾値C18.23C18.86C15.70C16.79(.1,1)平均閾値C22.93C26.40C19.67C22.16(.3,3)平均閾値C24.03C21.09C22.38C21.96C表4HFA24-2SITAStandard,imo24-2,imo24plus(1-2)における測定時間の比較a:当院での既報静的視野計測定時間(分)CHFASITAStandardC6.8±1.1C24-2AIZERapidC3.3±0.524plus(1C-2)CAIZEEXC4.0±0.6b:本研究影響した可能性があり,実臨床すべてを反映する結果とはいえない.結論として,緑内障患者におけるC24plus(1-2)とC10-2間の結果には相関がみられ,24plus(1-2)がC10-2の代替になる可能性が示唆された.24plus(1-2)をC10-2の代用として用いることで,中心C24°内かつC10°内の視野評価をより短い測定時間と低い患者負担で行うことが可能になることが期待される.静的視野計測定時間(分)24plus(1C-2)CAIZEEXC4.1±0.4C10-2AIZEEXC3.7±0.6平均±標準偏差てでおおむね高い相関を認め,上下C28点平均閾値,上半視野C14点平均閾値,下半視野C14点平均閾値においても高い相関を認めた.しかし,上半視野C14点平均閾値および固視近傍一点における平均閾値で,24plus(1-2)がC10-2よりも有意に低く,下半視野固視近傍一点でC24plus(1-2)が有意に高くなる結果を認めた.原因として,24plus(1-2)と10-2間の閾値変化が著明な測定点が存在していたこと,またそれらの測定点が絶対暗点域と正常域の境界に位置していたことが考えられる.絶対暗点域近傍では閾値の変動幅は大きくなる10,11).また,同様に閾値が低値になるほど,その傾向がみられる.眼数が少数である本研究では,それら外れ値により有意差が生じてしまった可能性が考えられる.乱視レンズの追加が有意差へ影響した可能性に関して,乱視度数の増加が視野感度や測定閾値に影響を及ぼすとされている12).本研究では著明な閾値変化を示した測定点におけるC10眼のうち8眼に乱視度数を認めた.しかし,各眼C0.5.1.25Dの範囲内であり,有意差に影響を及ぼす程度ではないと考えられた.一方測定時間に関して,当院での既報C13と本研究を比較したものを表4に示す.一概に比較はできないが,24plus(1-2)の測定時間(4.1C±0.4分)が,24-2とC10-2の測定時間(3.3C±0.5分,3.7C±0.6分)のトータルよりも短い結果となった.以上より,中心C24°内かつC10°内がみられ,測定時間の短縮につながるC24plus(1-2)の臨床的有用性が示唆され,患者負担の軽減につながりうるものであることが示唆された.本研究の問題点として,1例C1眼でない点や各検査間で測定間隔が定まっていなかった点,有水晶体眼および眼内レンズ挿入眼の両方が含まれている点があげられる.測定間隔に均一性がない場合,その間に緑内障の進行がありうることが示唆され,また有水晶体眼か否かの違い,ひいては視機能の良し悪しの違いは,両眼開放下における視野感度に影響することが報告されている14).これらの問題点は本研究の結果に利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第C5版.日眼会誌126:85-177,C20222)北川厚子,清水美智子,山中麻友美:アイモ24plus(1)の使用経験とCHumphrey視野計との比較.あたらしい眼科C35:1117-1121,C20183)林由紀子,坂本麻里,村井佑輔:緑内障診療におけるアイモ両眼ランダム測定の有用性の検討.日眼会誌C125:C530-538,C20214)松本長太:新しい視野検査.日本の眼科C88:452-457,C20175)澤村裕正,相原一:11.ヘッドマウント視野計アイモCR.眼科58:869-878,C20166)MatsumotoC,YamaoS,NomotoHetal:Visual.eldtest-ingCwithChead-mountedCperimeter‘imo’.CPLoSCOneC11:Ce0161974,C20167)RaoCHL,CBegumCVU,CKhadkaCDCetal:ComparingCglauco-maCprogressionConC24-2CandC10-2CvisualC.eldCexamina-tions.PLoSOneC10:e0127233,C20158)TraynisI,DeMoraesCG,RazaASetal:Prevalenceandnatureofearlyglaucomatousdefectsinthecentral10°Cofthevisual.eld.JAMAOphthalmolC132:291-297,C20149)ChauchanBC,Garway-HeathDF,GoniFJetal:PracticalrecommendationsCforCmeasuringCratesCofCvisualC.eldCchangeinglaucoma.BrJOphthalmolC92:569-573,C200810)FlammerJ,DranceSM,AugustinyLetal:Quanti.cationofCglaucomatousCvisualC.eldCdefectsCwithCautomatedCperimetry.InvestOphthalmolVisSciC26:176-181,C198511)FlammerJ:TheCconceptCofCvisualC.eldCindices.CGraefesCArchClinExpOphthalmolC224:389-392,C198612)駒形友紀,中野匡,江田愛夢ほか:Humphery.eldana-lyzerIII860の乱視補正法におけるCLiquidCTrialLensと従来法の比較検討.日本視能訓練士協会誌C46:275-280,C201713)佐藤恵理,中川喜博,鈴木康之:緑内障患者におけるCHum-phrey自動視野計からアイモへの切り替えについての検討.あたらしい眼科39:1379-1385,C202214)KumagaiCT,CShojiCT,CYoshikawaCYCetal:ComparisonCofCcentralCvisualCsensitivityCbetweenCmonocularCandCbinocu-larCtestingCinCadvancedCglaucomaCpatientsCusingCimoCperimetry.BrJOphthalmolC104:1258-1534,C2020