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植物による角膜異物受傷7 カ月後に発症した 真菌性角膜炎の1 例

2023年6月30日 金曜日

《第58回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科40(6):819.823,2023c植物による角膜異物受傷7カ月後に発症した真菌性角膜炎の1例宮久保朋子*1戸所大輔*1槇村浩一*2田村俊*2小森綾*2秋山英雄*1*1群馬大学大学院医学系研究科眼科学教室*2帝京大学医真菌研究センターCACaseofFungalKeratitisthatDeveloped7MonthsafteraThornInjuryTomokoMiyakubo1),DaisukeTodokoro1),KoichiMakimura2),TakashiTamura2),AyaKomori2)andHideoAkiyama1)1)DepartmentofOphthalmology,GunmaUniversityGraduateSchoolofMedicine,2)InstituteofMedicalMycology,TeikyoUniversityC目的:Diaporthe属は植物や土壌に存在する糸状菌であり,眼感染症の報告は少ない.今回筆者らは,植物による眼外傷C7カ月後に発症した真菌性角膜炎の症例を経験した.症例:78歳,男性.木の枝が左眼に当たり受傷し近医を受診した.左眼の角膜実質内に刺入した枝の欠片を除去し,抗菌薬点眼を開始したが,角膜浮腫が残存するため,群馬大学医学部附属病院(以下,当院)へ紹介され実質深層の角膜浮腫を認めたが,その後通院中断した.受傷C7カ月後,左眼の視力低下が出現し,角膜後面沈着物を伴う角膜浸潤を認めた.前医にて抗菌薬点眼およびステロイド点眼で改善しないため,当院へ紹介された.真菌感染を疑いボリコナゾール点眼を開始したが徐々に羽毛状の角膜潰瘍を形成した.受傷C10カ月目,角膜移植術を施行した.摘出角膜の病理検査にて糸状菌を認め,培養菌株のCDNAシークエンスからCDiaporthe属と同定した.結論:植物による眼外傷の既往がある場合は受傷から半年経過後も真菌感染を考慮する必要がある.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofCfungalCkeratitisCthatCdevelopedC7CmonthsCafterCocularCtraumaCbyCaCplant.CCasereport:A78-year-oldmanvisitedaneyeclinicduetooculartraumatohislefteyecausedbyaplant.Apieceofthebranchwasremoved,andhewastreatedwithtopicalantibioticsandsteroideyedrops.Sevenmonthslater,hevisitedanothereyecliniccomplainingofblurredvision,andwassubsequentlyreferredtoourclinicduetocornealin.ltratesCwithCkeraticCprecipitates.CUponCexamination,CheCwasCdiagnosedCasCaCfungalCinfectionCandCtreatedCwithCvoriconazoleeyedrops.However,afeather-likecornealulcergraduallyformed.At10monthsaftertheinjury,pen-etratingkeratoplastywasperformedfortreatment.Fungalkeratitiswascon.rmedfromtheexcisedcornealspeci-men,CandCtheCculturedCstrainCwasCidenti.edCasCDiaportheCsp.CbasedConCribosomalCDNACsequencing.CConclusions:CWeshouldsuspecta.lamentousfungusasapathogenevenafteralongtimepostinitialinjury.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(6):819.823,C2023〕Keywords:真菌性角膜炎,Diaporthe属,角膜移植術,植物眼外傷,角膜後面沈着物.fungalkeratitis,DiaportheCspecies,penetratingkeratoplasty,plantinjury,keraticprecipitates.Cはじめに糸状菌による真菌性角膜炎は植物による角結膜異物や眼外傷などが契機となることが多い1).わが国では糸状菌による感染性角膜炎の起因菌としてはCFusarium属がもっとも多く,ついでCAlternaria属,Aspergillus属などが多い2).一方,Diaporthe属は植物や土壌に存在する糸状菌であるが,人体への感染報告は少なく,とくに眼感染症の報告はまれである.今回筆者らは,植物による眼外傷C7カ月後に発症したDiaporthe属による真菌性角膜炎の症例を経験したので報告する.〔別刷請求先〕宮久保朋子:〒371-8511群馬県前橋市昭和町C3-39-15群馬大学大学院医学系研究科眼科学教室Reprintrequests:TomokoMiyakubo,DepartmentofOphthalmology,GunmaUniversityGraduateSchoolofMedicine,3-39-15Showa-machi,Maebashi,Gunma371-8511,JAPANCabcd図1初診時および再診時の前眼部写真と前眼部OCT画像a:左眼の初診時前眼部写真(受傷後C10日).結膜充血は乏しく,角膜中央の創部周辺に限局した角膜浮腫を認めた.Cb:左眼の初診時前眼部COCT画像(受傷後C10日).角膜内に明らかな異物を認めない.Cc:左眼の再診時前眼部写真(受傷後C8カ月C3日).褐色の角膜病変および周辺角膜の実質浮腫を認めた.Cd:左眼の再診時前眼部OCT画像(受傷後C8カ月C3日).前房側へ突出する角膜後面沈着物を認めた.I症例患者:78歳,男性.主訴:左眼の充血,眼痛.既往歴:心房細動,高尿酸血症.現病歴:2020年C3月CX日,ツツジの剪定中に枝が左眼にあたり受傷した.X+4日目,左眼の霧視を自覚したため近医CAを受診した.VD=0.8(1.2),VS=0.4(0.5).左眼の角膜に刺入した植物の欠片を認め,創部周囲に角膜浮腫を伴っていた.異物を除去し,1.5%レボフロキサシン点眼を開始した.3月CX+10日目,角膜浮腫が持続するため群馬大学医学部附属病院(以下,当院)を紹介受診した.初診時所見:VD=0.8(1.2),VS=0.4(0.5).右眼は特記事項なし.左眼は結膜充血なし,角膜内に異物の残存を認めず,創部の周囲に限局する角膜実質浮腫を認めた(図1a,b).初診後経過:感染症が否定できないため,前医CAで引き続き慎重な経過観察をすすめたが,その後自覚症状の改善とともに通院を自己中断した.同年C10月(X+7カ月後),左眼の霧視が再度出現したため近医CBを受診した.左眼に白色の角膜後面沈着物を伴う角膜実質浸潤および角膜浮腫を認めた.角膜炎が疑われ,1.5%レボフロキサシン点眼が開始された.4日後,所見の改善・増悪がないため,0.1%フルオロメトロン点眼が追加された.17日後,角膜浮腫は持続し白色の角膜後面沈着物の増大を認めたため,当院へ紹介された.再診時所見:VD=(1.2),VS=(1.0).右眼は特記事項なし.左眼に軽度の結膜充血,3月に受傷した部位に褐色の角膜病変および周辺角膜の実質浮腫を認めた.角膜病変に一致して,前房側へ突出する白色の角膜後面沈着物を認めた(図1c,d).角膜内には明らかな異物の残存を認めなかった.再診後経過:過去の外傷部位に一致した角膜病変であることから真菌感染を疑った.前房水の培養検査を施行したが培養は陰性だった.0.1%フルオロメトロン点眼を中止し,レボフロキサシン点眼およびC1.0%ボリコナゾール点眼(自家調剤)各C1日C6回を開始した.再診からC24日後,VS=(1.2).充血や前房炎症は乏しい図2褐色の角膜実質病変再診からC24日後の左眼の前眼部写真.角膜実質中層に褐色混濁を認めた.bc図4摘出角膜の病理組織学所見(200倍)角膜実質内に真菌菌糸がみられる.写真上方が内皮側(グロコット染色).が白色の角膜後面沈着物は徐々に増大した.角膜実質中層に褐色混濁があり,緩徐な増大を認めたため,角膜実質中層まで角膜潰瘍.爬術を施行した(図2).再診からC1カ月後,VS=(1.0).白色の角膜後面沈着物は残存したが増悪なく,角膜浮腫は消退した.1カ月間の点眼治療および角膜.爬術で角膜所見は改善したため,点眼治療を中止した.再診から2カ月後,VS=(1.0).前房炎症が再燃し,角膜後面沈着物の増大と角膜実質浮腫が出現した(図3a).角膜炎の再燃が疑われ,1.5%レボフロキサシン点眼を再開した.4日後,CVS=10Ccm/n.d..左眼の充血,角膜実質深層に羽毛状角膜病変を認めた.角膜擦過を行い,塗抹鏡検では細菌や真菌を認めず,培養検査を提出したがのちに菌の発育はみられなかった.眼外傷歴と角膜所見から真菌感染を強く疑い,1.0%ボリコナゾール点眼を再開した.さらにC5日後,角膜擦過物の図3角膜炎発症後の経過a:再診からC2カ月後.前房炎症が再燃し,角膜後面沈着物の増大と角膜実質浮腫を認めた.Cb:aからC9日後,左眼の充血と角膜実質深層に羽毛状角膜病変を認めた.Cc:再診からC2.5カ月後に角膜全層移植術を施行したが,術後C6カ月時点で角膜移植後移植片機能不全のため,新鮮角膜で再度全層角膜移植術を施行した.ポリメラーゼ連鎖反応(polymeraseCchainreaction:PCR)検査において単純ヘルペスウイルス,帯状疱疹ウイルス,アデノウイルス,クラミジア,アメーバ,淋菌はいずれも陰性だった.羽毛状角膜病変は増大傾向であり(図3b),0.1%ミ表1Diaporthe属菌による角膜炎の既報との比較症例発症契機発症までの期間菌種抗真菌薬手術本症例79歳男性ツツジの枝で受傷8カ月CDiaportheCspp.CVRCZCMCZ全層角膜移植術Mandellら63歳男性バラの枝で受傷2カ月CPhomopsisCspp.CVRCZCAMPH-B全層角膜移植術Gajjarら48歳男性翼状片手術6週間CPhomopsisphoenicicolaCPMRCFLCZなしOzawaら80歳男性68歳男性農業翼状片術後外傷歴なしバラの枝で角膜穿孔(7年前に翼状片術後)C1日CDiaportheoculiCDiaporthepseudoocliCVRCZCAMPH-BCPMRVRCZCAMPH-BCPMR全層角膜移植術なしVRCZ:ボリコナゾール,MCZ:ミコナゾール,AMPH-B:アムホテリシンB,FRCZ:フルコナゾール,PMR:ピマリシン.コナゾール点眼を追加した.羽毛状角膜潰瘍の改善が乏しいため,受傷からC10カ月後(再診からC2.5カ月後)に保存角膜を使用した全層角膜移植術を施行した.摘出角膜の病理検査では,角膜実質深層に好中球・リンパ球浸潤を認め,Grocott染色で真菌菌糸を認めた(図4).術後点眼としてガチフロキサシン,1.0%ボリコナゾール点眼各C1日C6回,0.1%フルオロメトロン点眼C1日3回,1%アトロピン点眼C1日C1回を開始した.術後経過中に摘出角膜からの培養検査で糸状菌が発育したが,形態からは菌種同定に至らなかった.その後,分離真菌の内部転写スペーサー(internalCtranscribedspacer:ITS)領域のシークエンスからCDiaporthe属と同定された.本分離株の各種抗菌薬に対する最小発育阻止濃度(minimumCinhibitoryCconcen-tration:MIC)値はつぎのとおりである;ミカファンギン≦0.015,カスポファンギンC1,アムホテリシンCB0.25,フルシトシンC4,フルコナゾールC2,イトラコナゾールC0.03,ボリコナゾール≦0.015,ミコナゾールC0.5Cμg/ml.角膜移植術後C6カ月時点で,視力回復のため新鮮角膜で再度全層角膜移植術を施行した(図3c).術後C15カ月で,後.下白内障が進行したため水晶体再建術を施行した.術後16カ月時点でCVS=(0.4)だった.CII考按Diaporthe属は植物寄生菌である.国内では果樹病の原因菌として多く報告され,人への感染報告は少ない.これまで分離された宿主ごとに命名されてきたため非常に多くの種を含んでおり,正確な分類上の位置関係はいまだに混乱している3).本症例では分離真菌からのCDNAシークエンスによってCDiaporthe属と同定された.基本的にはCITS1/ITS4解析と宿主の種類から同定できるが,宿主はおもに果樹であって正確な菌種同定は困難だった.筆者らの知る限りでは,Diaporthe属菌の無性世代とされるCPhomopsis属の症例を含め,Diaporthe属菌による角膜炎の既報はC4例である4.6).本菌による角膜炎の既報を表にまとめた(表1).発症の背景として植物による眼外傷歴と翼状片手術の既往が目立った.翼状片手術と真菌性角膜炎の関連については,翼状片術中に使用するマイトマイシンCCなどの細胞毒性をもつ薬剤が結膜や上強膜の組織,血管を破壊すること,また翼状片切除自体が保護組織や血管栄養を除去することにより,細菌や真菌感染のリスクが高くなる可能性がある6).翼状片術後は眼表面の組織や血管構造を破壊し,また術後ステロイド点眼を使用するため,植物による外傷や植物に関与した生活歴がある場合には真菌感染症に注意を要する.既報における本菌による角膜潰瘍発症までの期間はC4例中2例が植物外傷受傷からC1.5カ月後,2カ月後と遅発性の発症だった.早期発症のC1例は角膜穿孔で受傷し翌日発症した症例であり,もうC1例は明らかな眼外傷歴がなかったが農業やガーデニング趣味といった植物に関連した生活歴と,糖尿病の既往があった6).これらのことから植物による眼外傷歴のある角膜炎では,受傷から時間経過している場合も真菌感染を考慮する必要があると考えられた.本症例では経過中,角膜所見が局所浮腫のみで充血や眼脂などの感染徴候に乏しく,また炎症所見がみられたことから経過中にフルオロメトロン点眼が使用された.既報でも角膜所見からヘルペス角膜炎が疑われ経過中にステロイド点眼を使用されている4).Diaporthe属菌は本来植物寄生菌であり,人への感染成立には翼状片手術による眼表面のバリア機能の破壊,ステロイド点眼などによる眼局所の免疫抑制などが関与している可能性が考えられる.本症例ではヘルペス性角膜炎との鑑別に角膜擦過物のCPCRが有用だった.既報での薬剤感受性について,MandellらはCPhomopsisCspp.でアムホテリシンCBとボリコナゾールに感受性を認めたことを報告した4).また,GajjarらはCPhomopsisphoenici-colaにおいてCMICがフルコナゾール≧256,イトラコナゾール≧256,ピマリシン≧32Cμg/mlだったことを報告した5).小澤らはCDiaportheoculi,DiaportheCpseudoocliともにアムホテリシンCB,ボリコナゾール,イトラコナゾール,ミカファンギンに感受性があったと報告している6).菌種や測定条件などが異なるため参考にとどまるが,既報で感受性を認めたミカファンギン,アムホテリシンCB,ボリコナゾールは本症例においても同様に感受性を示した.糸状菌が疑われる症例ではピマリシン点眼・眼軟膏は第一選択であるが,本症例では病巣が角膜深層であるためより眼移行性が高いボリコナゾール点眼を選択した.Diaporthe属は薬剤感受性試験の評価基準が確立していないため薬物治療の情報が少なく,今後さらなる研究が必要である.植物による突き目では真菌が角膜深層に播種されるため,眼表面の創傷が治癒後,角膜後面に飛び出したような角膜後面沈着物が出現することがある.病巣が深層のため抗真菌薬治療が十分な効果を得られず,予後不良なことが多い.これに対して,前房側からの角膜後面沈着物の直接除去および前房洗浄が真菌感染の早期診断・早期治療に有用であったことが報告されている7,8).本症例では再診時(受傷後約C8カ月)に角膜後面に白色沈着物を認めたが,非常に小さく外科的採取は困難であったと考えられる.しかし,治療的角膜移植術を行うまで角膜擦過による塗抹鏡検・培養や前房水培養では原因菌を検出できず,角膜プラークが増大した際に外科的採取を行うことで早期診断や感受性のある抗真菌薬による治療が行える可能性がある.本症例では薬剤感受性を認めたボリコナゾールによる点眼治療を行ったにもかかわらず,本症例では治療が奏効せず最終的に角膜移植術に至った.ボリコナゾールは眼移行性が比較的高いが,病巣が角膜深層にあったために十分な治療効果が得られなかったと考えられる.北澤らは,進行した真菌性角膜炎であっても,前述の角膜プラーク除去および前房洗浄は前房内の菌体とフィブリンなどの炎症物を減らし治療に寄与する可能性を報告しており9),角膜プラークを伴う真菌性角膜炎では治療選択肢の一つとして検討されうる.以上から,植物による眼外傷の既往がある場合は受傷から経過後も真菌感染を考慮する必要があると考えられた.また,とくに植物性眼外傷の既往のある症例ではステロイド導入の際は慎重な検討と経過観察が必要と考えられた.文献1)日本眼感染症学会:感染性角膜炎診療ガイドライン(第C2版).日眼会誌117:467-509,C20132)InoueCY,COhashiCY,CShimomuraCYCetal:MulticenterCpro-spectiveobservationalstudyoffungalkeratitisinJapan:CanalysisCofCculture-positiveCcases.CJpnCJCOphthalmolC66:C227-239,C20223)兼松聡子:果樹に寄生するCPhomopsis属菌の分類.果樹研報1:1-10,C20024)MandellKJ,ColbyKA:Penetratingkeratoplastyforinva-siveCfungalCkeratitisCresultingCfromCaCthornCinjuryCinvolv-ingPhomopsisCspecies.CorneaC28:1167-1169,C20095)GajjarDU,PalAK,ParmarTJetal:Fungalscleralkera-titisCcausedCbyCPhomopsisCphoenicicola.CJCClinCMicrobiolC49:2365-2368,C20116)OzawaK,MochizukiK,TakagiDetal:Identi.cationandantifungalsensitivityoftwonewspeciesofDiaportheCiso-lated.JInfectChemotherC25:96-103,C20197)北澤耕司,近藤衣里,外園千恵ほか:外科的治療が奏功した真菌性角膜炎のC1例.日眼会誌C120:630-645,C20168)皆本瑛,近間泰一郎,井之川宗右ほか:角膜内皮移植後にみられた角膜後面白色塊から酵母様真菌が検出されたC1例.日眼会誌C125:452-458,C20219)KitazawaK,FukuokaH,InatomiHetal:Safetyofretro-cornealCplaqueCaspirationCforCmanagingCfungalCkeratitis.CJpnJOphthalmolC64:228-233,C2020***

日本における梅毒性ぶどう膜炎7例の臨床像の検討

2017年5月31日 水曜日

《第50回日本眼炎症学会原著》あたらしい眼科34(5):707.712,2017c日本における梅毒性ぶどう膜炎7例の臨床像の検討根本穂高*1,2蕪城俊克*1田中理恵*1大友一義*1高本光子*3川島秀俊*4藤野雄次郎*5相原一*1*1東京大学医学部附属病院眼科*2江口眼科病院*3東京警察病院眼科*4自治医科大学眼科*5JCHO東京新宿メディカルセンター眼科EvaluatingClinicalFeaturesof7SyphiliticUveitisPatientsHotakaNemoto1,2),ToshikatsuKaburaki,1)RieTanaka1),KazuyoshiOotomo1),MitsukoTakamoto3),HidetoshiKawashima4),YujiroFujino5)andMakotoAihara1)1)DepartmentofOphthalmology,TokyoUniversity,2)EguchiEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TokyoMetropolitanPoliceHospital,4)DepartmentofOphthalmology,JichiMedicalUniversityHospital,5)DepartmentofOphthalmology,JapanCommunityHealthcareOrganizationTokyoShinjukuMedicalCenter.目的:梅毒性ぶどう膜炎の7例の臨床像について報告する.方法:東京大学医学部附属病院眼科にて梅毒性ぶどう膜炎と診断された患者7例10眼の臨床像を検討した.結果:両眼性3例,片眼性4例で,病型は前部ぶどう膜炎3例,後部ぶどう膜炎1例,汎ぶどう膜炎3例であった.HIV感染例は1例であった.3例4眼に微塵様,2例3眼に豚脂様の角膜後面沈着物を認めた.後眼部病変は4例6眼にみられ,硝子体混濁1例1眼,網膜滲出斑2例3眼,視神経乳頭発赤2例4眼,血管白鞘化3例4眼,.胞様黄斑浮腫3例3眼,acutesyphiliticposteriorplacoidchorioretinitis(ASPPC)を3例5眼に認めた(1症例で複数所見あり).結論:今回の症例ではASPPCを呈した症例を7例10眼中3例5眼と比較的多く認め,ASPPCは非HIV感染例の患者での本疾患を疑う重要な眼所見である可能性が考えられた.Purpose:Tocharacterizeclinicalfeaturesofsyphiliticuveitis(SU).Methods:Weretrospectivelyinvestigatedclinicalfeaturesof7SUpatients(10eyes)whovisitedUniversityofTokyoHospital.Results:Ocularinvolvementwasbilateral(3patients)andunilateral(4patients).Anatomiclocationwasanterior(3patients),posterior(1patient),andboth(3patients).Onepatienthadhumanimmunode.ciencyvirusinfection.Vitreoushazewasobservedin1patient(1eye),.nekeratoprecipitates(KPs)in3patients(4eyes),mutton-fatKPsin2patients(3eyes),retinalexudatein2patients(3eyes),opticdiscrednessin2patients(4eyes),whitevesselsin3patients(4eyes),cystoidmacularedemain3patients(3eyes),andacutesyphiliticposteriorplacoidchorioretinitis(ASPPC)in3patients(5eyes).Conclusion:WeobservedASPPCmorefrequentlythaninpreviousreports.ASPPCmightbeahelpfulsignforsuspectedSUwithoutHIV.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(5):707.712,2017〕Keywords:梅毒,ぶどう膜炎,角膜後面沈着物,acutesyphiliticposteriorplacoidchorioretinitis(ASPPC),.胞様黄斑浮腫.syphilis,uveitis,keratoprecipitates,acutesyphiliticposteriorplacoidchorioretinitis(ASPPC),cys-toidmacularedema(CME).はじめに梅毒性ぶどう膜炎はTreponemapallidumの感染による眼感染症である.わが国では戦後,梅毒の大流行があり,1948年には届出患者数が47万人を超えたが,その後の社会秩序の回復とペニシリンの普及により10年後には患者数が激減した1,2).それに伴い,梅毒性ぶどう膜炎も稀となっていった.しかし近年,梅毒感染者の増加やヒト免疫不全ウイルス(humanimmunode.ciencyvirus:HIV)の合併例が報告され,梅毒は再興感染症として注目されてきている1,3).海外では梅毒性ぶどう膜炎の報告例は少なくないが,わが国ではAIDS患者に合併した梅毒性ぶどう膜炎30例の報告4)があ〔別刷請求先〕根本穂高:〒040-0053北海道函館市末広町7-13江口眼科病院Reprintrequests:HotakaNemoto,EguchiEyeHospital7-13,Suehirotyo,Hakodate,Hokkaido040-0053,JAPAN0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(105)707る以外は,1.2例の症例報告のことが多い5,6).今回,東京大学医学部附属病院眼科で経験した梅毒性ぶどう膜炎7症例の臨床像を検討した.I方法対象は2005年5月.2015年8月に東京大学医学部附属病院を受診し,血清学的検査および眼所見から活動性の梅毒性ぶどう膜炎と診断され,ぶどう膜炎に対する何らかの治療が行われた症例7例10眼である.梅毒性ぶどう膜炎の診断は,梅毒血清反応検査(serologictestforsyphilis定量:STS定量)が16倍以上で活動性梅毒と考えられること,およびぶどう膜炎の臨床像が過去の文献などから梅毒性ぶどう膜炎として矛盾しないと考えられることとした.サルコイドーシスなど他のぶどう膜炎の可能性については,血液検査,ツベルクリン反応,胸部X線撮影などを行い,除外診断を行った.対象患者について,性別,年齢,両眼性,片眼性,ぶどう膜炎の病型(前部,後部および汎ぶどう膜炎),梅毒のstage,STS定量値,神経梅毒の合併の有無,HIV感染の有無,眼所見,初診時視力,最終視力,治療内容について,診療録より後ろ向きに検討した.前房内炎症所見はStandardizationofUveitisNomencla-ture(SUN)WorkingGroupの評価基準を用いて評価した7).II結果患者背景は男性6例9眼,女性1例1眼,初診時平均年齢58.7±4.5歳であった.全例診断時のSTS定量値が16倍以上であったことから梅毒性ぶどう膜炎と診断した.両眼性3例,片眼性4例で,ぶどう膜炎の解剖学的分類は,前部ぶどう膜炎3例,後部ぶどう膜炎1例,汎ぶどう膜炎3例であった.梅毒のstageは2期1例,潜伏期6例であった.4例にのみ髄液検査を施行し,神経梅毒ありが2例,神経梅毒なしが2例であった.HIVの合併ありが1例,なしが6例であった.HIV患者は男性間性交渉者(MenwhohaveSexwithMen:MSM)であった(表1).前眼部所見としては前房内にcellを認めた症例が5例7眼あった.角膜後面沈着物(keratoprecipitates:KPs)は微塵様(.neKPs)を3例4眼,豚脂様(muttonfatKPs)を2例3眼に認めた.虹彩結節を1例1眼,虹彩後癒着を3例3眼に認めた(表2).眼底所見については,前房内炎症が非常に高度で眼底所見の観察が不可能であった1例1眼を除外した6例9眼について検討を行った.硝子体混濁1例1眼,網膜滲出病変2例3眼,視神経乳頭発赤2例4眼,血管白鞘化を3例4眼に認め,そのうち動脈血管白鞘化3例4眼,静脈血管白鞘化1例1眼であった(表3).光干渉断層計(opticalcoherecetomog-表1患者背景診断時症例年齢患眼部位梅毒のstageSTS定量値(倍)神経梅毒HIV合併159歳,男性両眼前部潜伏期256髄液検査未施行.261歳,男性両眼汎潜伏期256髄液検査未施行.363歳,男性右眼前部潜伏期16髄液検査未施行.466歳,男性左眼汎潜伏期48..572歳,女性右眼汎潜伏期16..665歳,男性両眼後部潜伏期64+.725歳,男性左眼前部2期512++(MSM)MSM:男性間性交渉表2活動期の前眼部所見症例前房内cells角膜後面沈着物虹彩結節虹彩後癒着11+/0.5+.ne/.ne./../.22+/2+muttonfat/muttonfat./../.3..ne.+4trace.ne..5trace..+6./../../../.72+muttonfat++両眼性では所見を右/左で示している.前眼部所見の評価はStandardizationofUveitisNomenclature(SUN)の評価基準7)を用いた.raphy:OCT)画像では.胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)を2例2眼に認めた.また今回,acutesyphiliticposteriorplacoidchorioretinitis(ASPPC)6)と考えられる眼底後極部の色素上皮レベルの黄白色円盤状病変を3例5眼に認めた(図1,2).フルオレセイン蛍光眼底造影(.uoresceinangiography:FA)検査所見については,前房内炎症が高度で眼底透見不能例と後眼部に炎症所見を認めなかった症例2例2眼を除いた5例8眼について検討を行った.CMEでみられる黄斑部の花弁状色素貯留が3例3眼,視神経乳頭過蛍光が3例5眼,ASPPCに特徴的な網膜後極部の円盤状過蛍光が3例5眼(図3),シダ状蛍光漏出が4例6眼,静脈からの蛍光漏出が3例5眼,動脈からの蛍光漏出が2例3眼にみられた(表4).図1症例6の右眼眼底写真ASPPC所見(.).視神経乳頭近傍から黄斑部にかけて広がる黄白色病変を認める.図2症例6の右眼OCT画像図1のASPPCの黄白色病変に一致した部位の色素上皮の肥厚・不整を認め,黄斑部より上方のellipsoidzoneの不鮮明化(.)を認める.図3症例6の右眼FA検査画像図1のASPPCの黄白色病変に一致した部位に早期(右図)から後期(左図)にかけて増強する過蛍光領域(.)を認める.視神経乳頭の過蛍光,静脈炎もみられる.表3後眼部所見症例硝子体混濁網膜滲出病変視神経乳頭発赤血管白梢化CME(OCT)ASPPC(OCT)1./../../../../../.2./.+/++/+A/A./.+/+3….OCT未施行OCT未施行4+..A&V++5.+.A+.6./../.+/+./../.+/+7判定不能判定不能判定不能判定不能判定不能判定不能両眼性では所見を右/左で示している.A:動脈,V:静脈.表4FA検査所見黄斑部蛍光漏出蛍光漏出蛍光漏出症例花弁状色素貯留視神経乳頭過蛍光ASPPC(シダ状)(静脈)(動脈)1./../../../../../.2+/.+/++/++/++/++/+3未施行未施行未施行未施行未施行未施行4++++..5+..+6./.+/++/++/+++/++./.7未施行未施行未施行未施行未施行未施行両眼性では所見を右/左で示している.表5駆梅療法,視力駆梅治療矯正視力症例抗菌薬投与日数初診時視力最終視力視力不良の理由CMEの有無1AMPC1g内服10カ月0.2/0.81.2/1.5./.2PCG180万単位点滴14日0.8/0.10.7/0.1左視神経萎縮+/.3AMPC4g内服19日0.080.04続発緑内障不明4CTRX2g点滴14日0.50.6CMEによる黄斑変性+5PCG210万単位点滴14日0.40.4+6PCG240万単位点滴14日0.03/0.40.5/1.5右帯状角膜変性./.7PCG240万単位点滴14日指数弁1.2不明両眼性では所見を右/左で示している.抗菌薬欄の項目は抗菌薬の種類と1日投与量を表す.AMPC:アモキシシリン水和物,PCG:ベンジルペニシリンカリウム,CTRX:セフトリアキソンナトリウム水和物.駆梅療法としては,アモキシシリン水和物内服が2例,ベンジルペニシリンカリウム持続点滴が4例,セフトリアキソンナトリウム水和物点滴が1例に行われた.矯正視力は初診時には0.1以下が4例4眼にみられたが,最終観察時には0.1以下は2例2眼のみであった.初診時と比べ最終観察時の少数視力で2段階以上の視力改善は3例5眼,不変3例4眼,2段階以上の視力悪化が1例1眼であった.視力の改善しなかった理由は視神経萎縮,続発緑内障,黄斑変性,帯状角膜変性が1例1眼ずつであった.FA検査でCMEがみられた3眼はいずれも視力改善は不良であった(表5).CMEがみられた症例では駆梅療法後もOCTで黄斑部の網膜層構造の不整がみられた(図4).図4症例5の右眼OCT画像駆梅療法終了15カ月後のOCT画像.CMEは消失しているが,黄斑部の網膜層構造の不整がみられる.III考按梅毒性ぶどう膜炎の臨床像は多彩で,いずれの眼構造物にも炎症を起こすことがあり,肉芽腫性炎症を引き起こすことも非肉芽腫性炎症を引き起こすこともある,と報告されている8).今回の症例でも,角膜後面沈着物が肉芽腫性所見(muttonfatKPs)の症例は2例2眼,非肉芽腫性所見(.neKPs)の症例は3例3眼であり,両方の所見を呈しうる結果であった.また,後眼部所見に関しても硝子体混濁,網膜血管炎(動脈炎,静脈炎,毛細血管炎),視神経乳頭炎,CME,ASPPCなどの多彩な所見を認めた.ASPPCは梅毒性ぶどう膜炎の合併症で,眼底後極部に網膜色素上皮レベルの黄白色の円盤状病変を呈する病態として1990年にGassらにより報告された9).正確な病態は解明されていないが,色素上皮および脈絡膜レベルの炎症が疑われている10,11).駆梅療法によく反応し,早期治療介入により視力予後は比較的良好に保たれるとされている12).OCTにて網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)の肥厚,不整,高輝度の結節性病変を認め,FA検査にて早期低蛍光,後期色素染を認めることが報告されている11).今回ASPPCと診断した3例5眼においても,網膜後極部に円盤状黄白色病変を認め(図1),OCTで黄白色病変に一致した部位のRPEの肥厚,不整,ellipsoidzoneの不鮮明化を認めた(図2).また,FA検査では病変部で早期から後期にかけて徐々に増強する大型の斑状過蛍光領域を認め(図3),ASPPCとして矛盾しない所見であった.ASPPCは,報告された当初はHIVの合併例が相次いだため,HIV感染などの免疫機能低下を合併した梅毒性ぶどう膜炎に特徴的な所見と捉えられていたが11),その後HIV感染を認めない梅毒性ぶどう膜炎の報告が相次いだことからHIVの感染にかかわらず,梅毒性ぶどう膜炎の特徴的な所見として捉えられている11).最近の報告ではHIV陰性の梅毒性ぶどう膜炎にASPPCの頻度が高い可能性も示唆されている10,13).欧米では梅毒性ぶどう膜炎患者の1/3がHIV合併例であり,2/3はMSMであるなど,HIVやMSMと関連した症例が多いとされている15).海外ではASPPCは3.12%程度とする報告が多いが10,14),最近のわが国でのHIV感染患者における梅毒性ぶどう膜炎20例30眼の報告でも,ASPPCは2眼,6.7%であった6).一方,今回の症例ではHIV合併例は1例(この症例はMSMである)のみであり,欧米と比較するとHIV合併例およびMSMが少ない結果であった.今回の症例では,眼底透見可能であった症例6例9眼中3例(50%)5眼(56%)にASPPCを認め,海外の既報より高頻度であった.ASPPCの頻度が高かった原因として,人種や民族の違いに加え,免疫状態の違いが関連している可能性があり,既報でも免疫不全状態ではASPPCが生じにくい可能性も示唆されている13).しかし,症例数が少なく,さらなる症例の蓄積が必要と考える.いずれにせよASPPCは梅毒性ぶどう膜炎に特徴的で,本症を疑う重要な所見であると考える.梅毒性ぶどう膜炎の視力予後については,早期に抗菌薬による治療を行えば,視力予後は良好との報告が一般的である.しかし,梅毒性ぶどう膜炎に黄斑浮腫を認めた症例での視力予後は不良であるとの報告も散見される10,13).今回の検討でも過去の報告と同様に,視力予後は良好な症例が多い結果であったが,FA検査でCMEを認めた3眼は,いずれも抗菌薬治療後の視力改善が不良であった.現在のところ梅毒性ぶどう膜炎においてCMEを認めた症例の視力予後が不良である原因は不明だが,今回CMEを認めた症例では駆梅療法終了後に黄斑部の網膜層構造の不整が持続する症例がみられ(図4),既報10,13)でも同様の報告があることから,この視力予後不良には不可逆的な網膜障害などがある可能性があり,今後さらなる検討が必要と考える.以上,今回梅毒性ぶどう膜炎と診断して治療を行った患者7例10眼の臨床像を検討した.梅毒性ぶどう膜炎は肉芽腫性虹彩炎を呈することも非肉芽腫性虹彩炎のこともあり,眼所見は多彩であった.今回の症例はHIV感染のない症例が多く,かつASPPCを呈した症例を7例10眼中3例5眼と比較的多く認めた.ASPPCは非HIV感染例の患者での本疾患を疑う眼所見である可能性が考えられた.本文の要旨は,日本眼感染症学会と日本眼炎症学会の合同セッションで発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)新村眞人:性感染症の動向・予防.最新皮膚科学大系15(玉置邦彦編),p204-209,中山書店,20032)丸田宏幸:梅毒の歴史.現代皮膚科学体系6B(山村雄一編),p204-206,中山書店,19833)大里和久:梅毒.性感染症診断・治療ガイドライン2011.日性感染症会誌22:46-48,20114)TsuboiM,NishijimaT,YashiroSetal:Prognosisofocu-larsyphilisinpatientsinfectedwithHIVintheantiretro-viraltherapyera.SexTransmInfect92:605-610,20165)坂本尚子:梅毒性ぶどう膜炎.眼臨79:1678-1683,19856)YokoiM,KaseM:Retinalvasculitisduetosecondarysyphilis.JpnJOphthalmol48:65-67,20047)JabsDA,NussenblattRB,RosenbaumJT;Standardiza-tionofUveitisNomenclature(SUN)WorkingGroup:Standardizationofuveitisnomenclatureforreportingclini-caldata.ResultsoftheFirstInternationalWorkshop.AmJOphthalmol140:509-516,20058)FuEX,GeraetsRL,DoddsEMetal:Super.cialretinalprecipitatesinpatientswithsyphiliticretinitis.Retina30:1135-1143,20109)GassJD,BraunsteinRA,ChenowethRG:Acutesyphiliticposteriorplacoidchorioretinitis.Ophthalmology97:1288-1297,199010)ZhangR,QianJ,GuoJetal:ClinicalmanifestationsandtreatmentoutcomesofsyphiliticuveitisinaChinesepop-ulation.JOphthalmol2016:2797028,201611)Meira-FreitasD,FarahME,Ho.ing-LimaALetal:Opti-calcoherencetomographyandindocyaninegreenangiog-raphy.ndingsinacutesyphiliticposteriorplacoidcho-roidopathy:casereport.ArqBrasOftalmol72:832-835,200912)MathewRG,GohBT,WestcottMCetal:BritishOcularSyphilisStudy(BOSS):2-YearNationalSurveillanceStudyofIntraocularIn.ammationSecondarytoOcularSyphilis.InvestOphthalmolVisSci55:5394-5400,201413)FonollosaA,Martinez-IndartL,ArtarazJetal:Clinicalmanifestationsandoutcomesofsyphilis-associateduveitisinNorthernSpain.OculImmunolIn.amm24:147-152,201614)MoradiA,SalekS,DanielEetal:Clinicalfeaturesandincidenceratesofocularcomplicationsinpatientswithocularsyphilis.AmJOphthalmol159:334-343,201515)LiSY,SalekS,DanielEetal:Posteriorsyphiliticuve-itis:clinicalcharacteristics,co-infectionwithHIV,responsetotreatment.JpnJOphthalmol55:486-494,2011***