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原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対する オミデネパグイソプロピル単剤投与短期成績

2021年2月28日 日曜日

《原著》あたらしい眼科38(2):202.205,2021c原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対するオミデネパグイソプロピル単剤投与短期成績宮平大輝*1酒井寛*2大橋和広*3力石洋平*4新垣淑邦*4酒井美也子*2古泉英貴*4*1沖縄県立北部病院眼科*2浦添さかい眼科*3中頭病院*4琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座CShort-TermResultsofOmidenepagIsopropylMonotherapyinPrimaryOpen-AngleGlaucomaandOcularHypertensionHirokiMiyahira1),HiroshiSakai2),KazuhiroOhashi3),YoheiChikaraishi4),YoshikuniArakaki4),MiyakoSakai2)CHidekiKoizumi4)Cand1)DepartmentofOphthalmology,OkinawaPrefecturalHokubuHospital,2)UrasoeSakaiEyeClinic,3)4)DepartmentofOphthalmology,RyukyuUniversitySchoolofMedicineCNakagamiHospital,目的:2018年C12月より臨床応用が始まった選択的CEP2受容体作動薬オミデネパグイソプロピル(OMDI)点眼の短期治療成績を検討する.方法:原発開放隅角緑内障(primaryCopenangleCglaucoma:POAG),または高眼圧症(ocularhypertension:OH)に対し,OMDIを投与したC32眼(男性C10眼,女性C22眼,平均年齢C59.6±10.1歳)の眼圧経過,および副作用を複数施設,連続観察症例で後ろ向きに検討した.結果:32眼の病型はCPOAGがC23眼,OHが9眼であった.本薬剤をC1剤目として投与した新規群がC20眼,他剤からの切替群がC12眼であった.切替前使用薬の内訳はプロスタグランジン(PG)関連薬C2眼,b遮断薬C6眼,炭酸脱水酵素阻害薬C2眼,交感神経作動薬C2眼であった.投与開始前,開始C1,3カ月後の平均眼圧は全例でC17.9±3.8,C15.3±3.2,C15.0±3.6CmmHg,新規群でC18.8±3.8,C15.5±3.2,C15.0±3.2mmHg,切替群でC16.4±3.4,C15.0±3.2,C15.2±4.2CmmHgであり,全例および新規群で有意に低下した(p<0.05).PG関連薬以外からの切り替えC10眼の各時点の眼圧はC16.1±3.7,C14.3±3.1,C14.0±3.9CmmHgであり,有意な低下を認めた(p<0.05).合併症はC6例C11眼で認め,内訳は充血C5例C9眼,眼刺激C3例C6眼,霧視C1例C2眼,羞明C1例C1眼(重複あり),その内C2例C3眼は本薬剤を中止した.黄斑浮腫を生じた例はなかった.結論:OMDIの新規単独投与およびCPG関連薬以外からの切り替えで眼圧は有意に下降した.CPurpose:ToCreportCtheCshort-termCresultsCofomidenepagCisopropyl(OMDI),CaCselectiveCEP2-receptorCago-nist,Canti-glaucomaCeye-dropCmonotherapy.CMethods:InCthisCretrospectiveCstudy,Cintraocularpressure(IOP)andCadverseeventswererecordedin32glaucomatouseyes[23primaryopen-angleglaucoma(POAG)eyesand9ocu-larhypertension(OH)eyes].COfCtheC32Ceyes,C20CwereCnewlyCadministeredCOMDICandC12CswitchedCtoCOMDICfromCotherCprostaglandinanalogues(PGs,C2eyes),beta-blockers(6eyes),CcarbonicCanhydraseinhibitor(2eyes),CorCa2-adrenergicCagonist(2eyes).CResults:TheCadverseCeventsCofCconjunctivalChyperemia,Cirritation,CblurredCvision,Candphotopsiawereobservedin9,6,2,and1eye,respectively.At3months,2patients(3eyes)whodiscontinuedOMDIduetosidee.ectsand1otherpatient(2eyes)wereexcluded.Noneoftheeyesdevelopedmacularedema.MeanIOPatpreadministrationandat1-and3-monthspostadministrationwas17.9±3.8,C15.3±3.2,CandC15.0±3.6CmmHg,Crespectively,CinCallC32Ceyes,C18.8±3.8,C15.5±3.2,CandC15.0±3.2CmmHg,Crespectively,CinCtheC20CnewlyCtreatedeyes,and16.4±3.4,C15.0±3.2,CandC15.2±4.2CmmHg,respectively,inthe12eyesswitchedfromotherdrugs.Inthetotal32eyesandnewlytreatedeyes,IOPat1-and3-monthspostadministrationwassigni.cantlylowerthanatpreadministration(p<0.05).In10eyesswitchedfromotherdrugsexceptPGs,meanIOPatpreandat1-andC3-monthsCpostCadministrationCwasC16.1±3.7,C14.3±3.1,CandC14.0±3.9CmmHg,Crespectively,CandCtheCreductionCfromatpretoat1-and3-monthspostadministrationwassigni.cant(p<0.05).Conclusion:OMDImonotherapy〔別刷請求先〕宮平大輝:〒905-0017沖縄県名護市大中C2-12-3沖縄県立北部病院眼科Reprintrequests:HirokiMiyahira,M.D.,DepartmentofOphthalmology,OkinawaPrefecturalHokubuHospital,2-12-3Onaka,Nago-city,Okinawa905-0017,JAPANCwasfoundtobesafeande.ectivefortreatingphakicpatientswithPOAGandOH.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(2):202.205,C2021〕Keywords:選択的CEP2作動薬,オミデネパグイソプロピル,短期成績,緑内障,眼圧.selectiveEP2agonist,omidenepagisopropyl,short-termresults,glaucoma,intraocularpressure.C表1患者背景年齢C58.9±10.0歳性別男性7例10眼女性11例20眼病型POAG:21眼OH:9眼なし(新規投与):18眼治療状況あり(他剤からの切替):12眼はじめにプロスタグランジン(prostaglandin:PG)FP受容体関連薬およびCb遮断薬点眼は,緑内障薬物治療の第一選択とされている1).日本において,2018年C12月より臨床応用が始まったオミデネパグイソプロピル(OMDI)はCPG骨格をもたない選択的プロスタグランジンCEP2受容体作動薬である.FP受容体関連薬は房水流出の副経路であるぶどう膜強膜流出を促進させて眼圧を下降させる2)が,OMDIは主経路である線維柱帯流出とぶどう膜強膜流出の両経路を介した流出促進により,眼圧を下降させる3,4).本研究では,原発開放隅角緑内障(primaryCopen-angleglaucoma:POAG)および高眼圧症(ocularhypertension:OH)患者に対するCOMDI点眼の単剤投与における眼圧下降効果を副作用について検討した.CI対象および方法対象はC2018年C12月.2019年C4月に琉球大学医学部附属病院,中頭病院または浦添さかい眼科を受診したCPOAGおよびCOH患者のうち,OMDIを単剤投与した連続症例C19例(平均年齢C59.6C±10.1歳)32眼で,全例有水晶体眼であった.対象患者の背景を表1,2に示す.他剤から切り替えた群(切替群)の切り替え前の使用薬も全例単剤であった.OMDI投与による副作用,および開始前(0M)と開始後C1,3カ月(1CM,3CM)後の眼圧を診療録により後ろ向きに検討した.各数値は平均値C±標準偏差(standarddeviation:SD)で表記し,統計学的検討にはC0CMと各時点との間で対応のあるCt検定を行い,Bonferroni法で補正しp<0.05を有意水準とした.また,開始1,3Mの時点で光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)検査を行ったC23眼については,市販直後調査で報告されている黄斑浮腫5)の有無についても検討した.表2切替前の使用薬内訳PG関連薬2眼b遮断薬6眼炭酸脱水酵素阻害薬2眼交感神経作動薬2眼II結果全C32眼において投与後C3カ月以上の来院,診察が行われた.副作用はC6例C11眼(34%)に確認され,結膜充血C5例C9眼,眼刺激3例6眼,霧視1例2眼,羞明1例1眼(重複あり)であった.いずれも重篤なものではなく,また全身の副作用もなかった.眼底検査が診察ごとに全例に,OCT検査がC23眼(1CMにC21眼,3CMにC9眼,重複あり)で施行されていたが黄斑浮腫の発症はなかった.中止例はC2例C3眼で,充血と羞明によるものがC1例C1眼,充血と眼刺激によるものがC1例C2眼であった(表3).中止例のC3眼および,点眼切れによる不使用C2眼の計C5眼はC3CMの眼圧解析から除外した.OMDI投与後の眼圧を全症例および新規に投与した群(新規群),切替群に分けて検討した結果,全症例および新規群ではC1,3CMに有意な下降を得られた.切替群ではC1CMのみ有意に下降していたが,3CMは有意差がなかった(図1~3).切替群について,各症例ごとの眼圧経過を図4に示す.PG関連薬以外のCb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬,交感神経作動薬からの切替例C10眼では,1,3CMともに有意に眼圧は下降していた(図5).CIII考按副作用の頻度については,国内で実施された第CII/III相試験,第CIII相長期投与試験および第CIII相CPG関連薬効果不十分例に対する試験の併合解析の結果で,発現率C40.1%,おもな副作用は結膜充血(22.8%)であり5),本研究でもほぼ同様の結果であった.結膜充血はC3CMではC2例(7.7%)であり,統計的に有意(Cc2検定Cp=0.042)に減少しており,中止例を除いた実数でもC6眼からC2眼へ減少していた.眼刺激も3CMでは認めなかった.OMDI点眼の単剤投与では,新規またはCPG関連薬からの切替以外で有意な眼圧下降が得られC1,3CMの眼圧下降率は全体でC14.5%とC16.2%,新規群ではC17.5%とC20.2%であっ表3合併症221CM(n=30)3CM(n=27)全体(n=30)20発現症例数9(30.0%)4(14.8%)11(36.7%)18眼圧(mmHg)黄斑浮腫C0/18C0/9C0/22C結膜充血9(30.0%)2(7.4%)9(30.0%)眼刺激6(20.0%)C06(20.0%)1614霧視C02(7.4%)2(6.7%)C12羞明1(3.3%)C01(3.3%)C10中止例3(10.0%)C03(10.0%)図1全例における眼圧の変化0,1Mはn=30,3MはCn=27.平均値C±標準偏差.点眼開始後C1,3カ月後に有意な下降を認めた(*:p<0.001,対応のあるCt検定,対開始前,Bonferroni法で補正).C2420220M1M3M眼圧(mmHg)20181614眼圧(mmHg)1816141210図2新規群における眼圧の変化0,1Mはn=18,3MはCn=17.平均値C±標準偏差.点眼開始後C1,3カ月後に有意な下降を認めた(**:p<0.01,対応のあるCt検定,対開始前,Bonferroni法で補正).C23211210図3切替群における眼圧の変化0,1Mはn=12,3MはCn=10.平均値C±標準偏差.点眼開始後C1カ月後のみに有意な下降を認めた(***:p<0.05,対応のあるCt検定,対開始前,Bonferroni法で補正).C200M1M3M0M1M3M眼圧(mmHg)19171513119図4切替群における各症例の眼圧変化切替前薬剤は以下のとおり.□:PG関連薬,◆:b遮断薬,▲:炭酸脱水酵素阻害薬,●:交感神経作動薬.PG関連薬からの切替である1例C2眼で上昇傾向であった.眼圧(mmHg)1816141210図5PG関連薬以外からの切替症例における眼圧の変化0,1Mはn=10,3MはCn=8.平均値C±標準偏差.点眼開始後C1,3カ月後に有意な下降を認めた(C†:p<0.01,対応のあるCt検定,対開始前,Bonferroni法で補正).0M1M3M0M1M3Mた.第CII/III相臨床試験における投与後C4週の眼圧下降率はプラゼボ対照試験でC21.7%,ラタノプロスト対照試験で25.1%と今回の検討よりも眼圧下降率が大きいが,ベースライン眼圧がC23.8CmmHgおよびC23.8CmmHgと今回の症例C18.8mmHgよりも高いことがその理由と考えられる.また,今回の検討では,PG関連薬を除く切替群においても,OMDI投与後C1,3CMにおいてC11.1%とC13.0%の眼圧下降効果が示され,点眼開始C1CMと比べ,3CMにおいてさらに眼圧下降している傾向であった.OMDIの眼圧下降は主流出路とぶどう膜強膜流出路の両方を介することは示されているが,詳細な眼圧下降機序は不明であり,他剤からの切り替えにおいて眼圧下降が経時的に増強する可能性があるのか興味深い.多数例の前向きな検討が必要である.今回の検討の切り替え群のうち,PG関連薬からの切り替えにおいて眼圧上昇がみられたが,1例C2眼のみであった.第CII/III相C0.005%ラタノプロスト点眼液対照評価者盲検並行群間比較試験(AYAMEStudy)ではCOMDI点眼の眼圧下降効果はラタノプロスト点眼液に対して非劣性であることがすでに示されており5),症例数を増やして検討が必要である.PG関連薬に関しては,第CIII相臨床試験(PG関連薬効果不十分例に対する試験)(FUJIStudy)において,PG関連薬で効果不十分なCPOAGおよびCOH患者に対してのCOMDIの眼圧下降効果も示されている5).OMDIを含めたCPG関連薬のノンレスポンダーと他のCPG関連薬からの切り替えについての検討が望まれる.2018年よりわが国において臨床応用が始まった選択的EP2受容体作動薬COMDI単剤の有水晶体眼のCPOAGおよびOHに対する短期成績を報告した.新規投与において投与後3カ月でC20%程度の眼圧下降を認め,PG関連薬を除く他剤からの切り替えでも眼圧下降を示した.黄斑浮腫など重篤な合併症はなかった.眼局所の副作用では結膜充血が最多であったがC3カ月では減少した.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5.53,C20182)IsobeCT,CMizunoCK,CKanekoCYCetal:E.ectsCofCK-115,CaCrho-kinaseCinhibitor.ConCaqueousChumorCdynamicsCinCrab-bits.CurrEyeRes39:813-822,C20143)FuwaM,TorisCB,FanSetal:E.ectsofanovelselec-tiveEP2receptoragonist,omidenepagisopropyl,onaque-oushumordynamicsinlaser-inducedocularhypertensivemonkeys.JOculPharmacolTher34:531-537,C20184)KiriharaCT,CTaniguchiCT,CYamamuraCKCetal:Pharmaco-logicCcharacterizationCofComidenepagCisopropyl,CaCnovelCselectiveCEP2CreceptorCagonist,CasCanCocularChypotensiveCagent.CInvestOphthalmolVisSci59:145-153,C20185)エイベリス点眼液C0.02%の有効性と安全性市販直後調査***