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難治性角膜疾患に続発した緑内障に対するバルベルト緑内障インプラント挿入術の短期成績

2015年3月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科32(3):413.418,2015c難治性角膜疾患に続発した緑内障に対するバルベルト緑内障インプラント挿入術の短期成績呉文蓮*1,2松下賢治*2河嶋瑠美*2桑村里佳*2臼井審一*2西田幸二*2*1淀川キリスト教病院眼科*2大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室Short-TermOutcomeofBaerveldtGlaucomaImplantSurgeryforSecondaryGlaucomaAssociatedwithRefractiveCornealDiseaseBunrenGo1,2),KenjiMatsushita2),RumiKawashima2),RikaKuwamura2),ShinichiUsui2)andKohjiNishida2)1)DepartmentofOphthalmology,YodogawaChristianHospital,2)DepartmentofOphthalmology,OsakaUniversity,GraduateSchoolofMedicine目的:緑内障インプラントは難治性緑内障への適応が期待される.筆者らは従来型の緑内障手術が奏効しなかった難治性角膜疾患の続発緑内障症例に対しバルベルト緑内障インプラント挿入術(BGI)を施行し1年間の観察を行った.方法:平成23年10月.平成24年3月,大阪大学医学部附属病院眼科でBGIを施行した難治性角膜疾患の続発緑内障3症例の眼圧,点眼スコア経過,合併症を検討した.結果:全例BGI直線チューブタイプを使用し,強膜弁作製1例,2例に強膜パッチを併用した.平均眼圧は術前33±5mmHg,術後1日目12±3.8mmHg,1週目16±10.1mmHg,1カ月目11±6.1mmHg,3カ月目12±2.1mmHg,1年後11±3.5mmHgと1カ月以降下降した.点眼スコアは術前5.7±0.6,術後1日目0±0,1週目2±0,1カ月目2±2,3カ月目0.7±1.2,1年目1.3±1.2と術前より減少した.重篤な合併症を認めなかった.結論:難治性角膜疾患の続発緑内障に対するBGIは,1年間安定した経過を示した.Purpose:Toreporttheshort-termoutcomeofBaerveldtglaucomaimplant(BGI)drainagesurgeryforsecondaryglaucomaassociatedwithrefractivecornealdisease.Methods:Thisstudyinvolved3patientswithsecondaryglaucomacausedbyrefractivecornealdiseasewhounderwentBaerveldtRBG101-350GlaucomaImplant(AbbotMedicalOptics,AbbotPark,IL)surgerybetweenOctober2011andMarch2012andwhowerefollowedupattheDepartmentofOphthalmologyofOsakaUniversityHospital,Osaka,Japan.Inall3cases,intraocularpressure(IOP),anti-glaucomatreatmentscore,andcomplicationswererecorded.Results:ThepreoperativemeanIOPwas33±5mmHg.At1day,7days,1month,3months,and1yearpostoperative,themeanIOPwas12±3.8mmHg,16±10.1mmHg,11±6.1mmHg,12±2.1mmHg,and11±3.5mmHg,respectively.Themeananti-glaucomatreatmentscoredecreasedfrom5.7±0.6to0±0,2±0,2±2,0.7±1.2,1.3±1.2at1day,7days,1month,3months,and1yearpostoperative,respectively.Nocomplicationswereobservedduringthefollow-upperiod.Con-clusion:BGIwasfoundtobeaneffectivetreatmentforcontrollingsecondaryglaucomaassociatedwithrefractivecornealdiseasefor1yearpostoperative.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(3):413.418,2015〕Keywords:緑内障,インプラント挿入術,バルベルト,難治性角膜疾患,短期成績.glaucoma,glaucomadrainageimplant,Baerveldt,refractivecorneadisease,shorttermoutcome.はじめに様体扁平部挿入タイプに分けられ,直線チューブタイプにはバルベルト(Baerveldt)緑内障インプラントは弁のないシプレートの面積の違いによりBG101-350とBG103-250がリコーンチューブとシリコーンプレートが連結して構成されあり,毛様体扁平部挿入タイプにはBG102-350がある4).る.チューブタイプの違いによって直線チューブタイプと毛2011年,マイトマイシンC(mitomycinC:MMC)併用線〔別刷請求先〕呉文蓮:〒533-0024大阪市東淀川区柴島1-7-50淀川キリスト教病院眼科Reprintrequests:BunrenGo,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,YodogawaChristianHospital,1-7-50,Kunijima,HigashiYodogawa-ku,Osaka533-0024,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(103)413 表1対象症例症例123性別女性男性男性年齢76歳57歳27歳原疾患角膜感染偽類天疱瘡Stevens-Jhonson症候群角膜移植PKPなしLKP/AMT/COMETTLEC2回1回手術既往TLOT1回1回TSCPC3回濾過胞再建術1回一過性眼圧上昇に(以前の濾過胞をニードリング)施行せず――対する対策Sherwoodslit施行せず2カ所2カ所インプラントの種類BG101-350BG101-350BG101-350術式インプラント位置下耳側上耳側上耳側フラップ強膜移植4×4mm強膜移植視力0.01(n.c.)0.01P(n.c.)10cm/HM(n.c.)眼圧33mmHg28mmHg38mmHgTLEC:trabeculectomy(線維柱帯切除術),TLOT:trabeculotomy(線維柱帯切開術),TSCPC:transscleralcyclophotocoagulation(経強膜毛様体光凝固術),PKP:penetratingkeratoplasty(全層角膜移植),LKP:lamellarkeratoplasty(表層角膜移植),AMT:amnioticmembranetransplantation(羊膜移植),COMET:culturedoralmucosalepithelialtransplantation(培養口腔粘膜上皮移植)維柱帯切除術と350mm2バルベルト緑内障インプラント手術の比較試験(TheTubeVersusTrabeculectomystudy:TVTstudy)の結果が発表され,術後5年における両者の眼圧下降効果,術後視力,術後の眼圧下降薬の併用状態(点眼スコア)はほぼ同等で,手術成功率ではインプラント手術が線維柱帯切除術を上回り,合併症も少ないことが明らかにされた1.3).日本では2011年8月に厚生労働省に認可され,2012年4月より保険診療が可能になり,今後緑内障治療用インプラント(glaucomadrainageimplant:GDI)は従来の緑内障手術が奏効しない難治性緑内障への適応が期待されている5).今回,筆者らは複数回の緑内障手術が奏効せず眼圧コントロール不良となった難治性角膜疾患の続発緑内障症例に対して,バルベルト緑内障インプラント(Barveldtglaucomadrainageimplant:BGI)挿入術を施行し,1年間の短期経過観察を行ったので報告する.I対象および方法対象は,平成23年10月.平成24年3月の間に大阪大学医学部附属病院眼科を受診した難治性角膜疾患の続発緑内障患者のうち,GDI挿入術を施行した3例3眼である(表1).症例の内訳は女性1例1眼(76歳),男性2例2眼(57歳および27歳)であった.全例重症角膜疾患に続発する緑内障で,原疾患は陳旧性ヘルペス性角膜実質炎1例1眼,偽類天疱瘡1例1眼,Stevens-Johnson症候群1例1眼であった.また,陳旧性ヘルペス性角膜実質炎とStevens-Johnson症候群の2例は角膜移植の既往があった.いずれの症例もこれまでに複数回の緑内障手術が施行されており,薬物治療を行うも眼圧コントロールが不良であった.すべての症例でBGI直線チューブタイプ(BG101-350)を使用し,プレートの挿入部位は下耳側1例,上耳側2例であった.強膜弁作製が1例で,強膜軟化症を合併していると判断した2例に強膜パッチを併用した.術直後に生じる一過性眼圧上昇への対策として,2例は術中にSherwoodslitを作製し,残りの1例は術後に以前の濾過胞にニードリングを加えることで対応する予定にしていた.しかし,その1例は術後の眼圧経過は良好であったため,ニードリングを用いることはなかった(表1).また,術後低眼圧予防策として術中にチューブ結紮をプレートから3mm程度の位置で,8-0バイクリル糸を用いて行った.経過中,術前後の平均眼圧値,点眼スコアを比較し,手術の合併症についても検討した.点眼スコアは緑内障点眼薬1剤を1点,配合点眼薬1剤を2点,炭酸脱水酵素阻害薬内服は2点とした.手術方法は,まず結膜切開を行い,強膜フラップ作製例では作製した後,強膜パッチ併用例ではただちに,BGIのチューブに対してプライミングを行い,チューブを結紮して閉塞させた.その後,外直筋と上直筋または下直筋の下へプレー414あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015(104) ト部分を挿入し7-0ないし9-0ナイロン糸にて強膜に固定した.23G針で前房穿刺したのち,前房へチューブを挿入し,チューブを9-0ナイロン糸にて強膜に固定した.閉塞部より前方のチューブにSherwoodslitを2カ所作製し,チューブの露出部分を強膜フラップまたは強膜パッチで覆い10-0ナイロン糸で縫合した.最後に8-0バイクリル糸にて結膜縫合し,術創を覆った4).結膜の脆弱性が強い症例では,結膜縫合に対して10-0ナイロン糸を用いた.〔代表症例〕27歳,男性.現病歴:2歳8カ月時,発熱時近医で処方されたコスモシンとバッファリン内服後,顔面や全身の粘膜に水疱状発疹,結膜炎症状が出現,Stevens-Johnson症候群と診断され,近隣の大学付属病院皮膚科に紹介された.その後近医眼科でフォローされていた.2001年から近隣の大学医学部附属病院眼科および当科で両眼複数回の角膜移植術を施行された(表2).経過中,左眼続発緑内障が発症し,2004年7月に左眼トラベクレクトミーも施行された.2010年3月25日,右眼に続発緑内障を発症し,眼圧コントロール不良となったため,手術加療目的にて当科緑内障外来へ紹介受診となった.2010年4月6日に右眼トラベクロトミー施行するも眼圧は再上昇した.2010年,2011年,および2012年に合計3回の右眼に対する経強膜毛様体光凝固術(表3)を施行するもチモロール点眼,ビマトプロスト点眼,ジピベフリン点眼,アセタゾラミド内服を(点眼スコア5点)併用しても眼圧コントロール不良であったため,最終的にBGIの適応を考えた.既往歴:気管支喘息.術前所見:視力はVD=眼前/手動弁(矯正不能),VS=10cm/手動弁(矯正不能)と不良であったが,自覚的に視覚障害は進行していた.眼圧は,右眼38mmHg,左眼10mmHgと右眼は著明に上昇していた.図1Aで示すとおり,細隙灯顕微鏡検査にて,Stevens-Johnson症候群による重篤な角結膜障害が認められ,著明な角膜混濁のため隅角の状態は不明であった.そこで,前眼部光干渉断層計(anteriorsegmentopticalcoherencetomography:AS-OCT)で観察したところ,隅角が全体的に狭いが,前房は深く,上方での表2代表症例の手術歴2001年7月右)表層角膜上皮移植+羊膜移植2001年8月左)表層角膜上皮移植+羊膜移植2004年3月右)表層角膜上皮移植+羊膜移植2004年7月左)トラベクレクトミー+羊膜移植2005年1月18日右)輪部移植+羊膜移植2005年2月8日右)表層角膜上皮移植+培養口腔粘膜上皮移植+羊膜移植2010年4月6日右)トラベクロトミー2010年9月1日右)経強膜毛様体光凝固2011年12月7日右)経強膜毛様体光凝固2012年右)経強膜毛様体光凝固表3術後経過症例123術前視力直前0.01(n.c.)0.01P(n.c.)10cm/HM(n.c.)術後視力2カ月後15cm/CF(n.c.)0.01P(n.c.)10cm/HM(n.c.)1週後2811104週後1867眼圧経過3カ月後1014116カ月後10981年後91591週後2224週後420点眼スコア3カ月後2006カ月後2001年後220インプラント位置前房前房後房追加処置なしなしなし3症例とも術後眼圧経過,術後点眼スコアの経過は良好であった.症例1は術後眼圧コントロール良好のため,術後9カ月目で全層角膜移植術が施行された.角膜移植術後もしばらくは眼圧良好であった.角膜移植術後4カ月目でチューブ閉塞のため,眼圧上昇を認めたが,閉塞部の線維膜を除去し眼圧は下降した.表中n.c.は矯正不能,CFは指数弁,HMは手動弁を示す.(105)あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015415 術前術後DCBAE術前術後DCBAE図1代表症例の術前後所見術前はStevens-Johnson症候群による重篤な角結膜障害を認める.前眼部OCTでは隅角が狭くなっていた.術後,角膜の浮腫はやや軽快,前房形成は維持されていた.チューブ先端が後房に迷入していることがUBMで確認された.チューブ挿入が可能であることが確認された(図1B).術式:結膜切開は円蓋部基底で行い,プライミングによりチューブの通水性を確認し,チューブを8-0バイクリル糸にて結紮しチューブの閉塞を確認し,プレートを上耳側の上直筋と外直筋の下に挿入し,プレートを強膜に7-0ナイロン2糸にて固定した.前房穿刺は23G針を用い,その創から長さを調整したチューブを前房内へ挿入し,7-0ナイロン2糸で強膜に固定した.チューブ創入口からのSeidelのないことを確認し,チューブに対してSherwoodslitを8-0バイクリル糸の角針で2カ所作製,強膜パッチを10-0ナイロン6糸で縫合し,チューブを覆った.いずれも角結膜上皮がきわめて脆弱であるため,抜糸を前提として炎症の起きにくい10-0ナイロン糸にて結膜縫合し閉創した.術後経過:2013年3月12日,全身麻酔下で右眼にBGI挿入術を施行した.右眼圧は術翌日10mmHg,1週間後10mmHg,1カ月後7mmHg,3カ月後11mmHg,6カ月後11mmHg,1年後9mmHgと術前より下降した(表3,図2A).点眼スコアも,術翌日0,1週間後0,1カ月以降は0と術前より下降した(表3).術後細隙灯顕微鏡とAS-OCTによる観察では,角膜浮腫はやや軽快し,前房形成は維持されたが,チューブの先端が前房内で観察できなかった(図1C,D).術後,角膜上皮が安定した2カ月後に,超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscopy:UBM)検査を行ったところ,チューブの先端が後房に迷入していることが確認された(図1E).II結果代表症例では術後の高眼圧はアセタゾラミド内服で抑えられ,術後10日過ぎをピークに下降し,術1カ月後からは薬剤治療なしでコントロール良好であった(図2A).3例の平均眼圧は,図2Bに示すように,術前の平均眼圧が点眼内服を含めた緑内障薬物治療下で33±5mmHgであったのに対し,術後の平均眼圧は1日目12±3.8mmHg,1週目16±10.1mmHg,2週目15±4.7mmHg,1カ月目10±6.7mmHg,2カ月目12±2.5mmHg,3カ月目12±2.1mmHg,6カ月目9±1mmHg,1年目11±3.5mmHgで,2週間以降に下降しその後1年間安定していた(図2B,術前後のpairedt-testp<0.05).緑内障点眼スコアは術前5.7±0.6に対して,416あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015(106) 術後1日目0±0,1週目2±0,2週目3.3±2.3,1カ月目2±2,2カ月目0.7±1.2,3カ月目0.7±1.2,6カ月目0.7±1.2,1年目0.7±1.2と術前に比べ有意に減少し(図2C,術前後のpairedt-testp<0.05),術後1年目以降1例は点眼無しで,2例はチモロール+ドルゾラマイド配合剤点眼のみで眼圧コントロール良好であった(表3).術後に症例1で若干の視力低下を認めたが,眼圧下降による移植片のDescemet膜皺によるもので,3例とも著明な視力低下を認めず,眼圧や緑内障点眼スコアは有意に下降し経過良好であった.また,全例で術後の追加処置が必要なかった(表3).インプラントの挿入位置は症例3のみ後房に迷入し,その他の2例は前房に挿入されていた(図1E,表3)が,炎症もなく眼圧は維持された.術後合併症に関する調査では,3症例とも重症な角膜疾患を有するため,角膜内皮細胞の測定や.胞状黄斑浮腫の確認はできなかった.また低視力のため,複視は確認できなかった.さらに遅発性脈絡膜出血,網膜.離や硝子体出血がないことはB-modeエコーで確認した.その他,前房出血,前房消失,術後低眼圧(6mmHg以下),遷延性低眼圧(6mmHg以下,1カ月以上),術後高眼圧(22mmHg以上),チューブの露出,強膜穿孔,眼内炎は認めなかった.術直後の一過性眼圧上昇に対し,2症例はSherwoodslitを2カ所作製し,他の1症例は,以前の濾過胞にニードリングを加えることで対応する予定であったが,点眼と内服で眼圧コントロールが良好であったため施行しなかった.III考按緑内障治療用インプラント挿入術後の眼圧管理は,術直後からプレート周囲の線維膜が形成するまでの間の過剰濾過を防ぐために,強膜にプレートを縫着して約1カ月後に二次的にチューブ挿入を行う二段階的手術か,あらかじめチューブを結紮してから挿入する方法などの予防措置を取らねばならない.それらによって術直後の濾過量が制限されるため,約4.6週間の高眼圧期が続き,その後二次的チューブ挿入あるいは結紮糸の溶解により,眼圧が下降する.一般的には術直後の高眼圧期には薬物ないし術中のチューブに対するSherwoodslitによって濾過量を確保することが眼圧コントロール上必要である4).筆者らは現在あらかじめチューブを結紮する方法で術直後の過剰濾過を予防しているが,術後早期約1カ月の高眼圧期対策として2例ではSherwoodslit,残りの1例は当科における初回手術症例であり,術後高眼圧をコントロールしやすくする目的で,経験のある以前の濾過手術濾過胞に対してニードリングを行い対応することを予定していた.結果的に全例で薬物による眼圧コントロールが良好のために施行しなかった.また,薬物による眼圧管理については,今回の症例で(107)0510152025303540A:代表症例眼圧050100150200250300350400(日)0510152025303540B:平均眼圧050100150200250300350400(日)01234567C:平均投薬スコア050100150200250300350400(日)図2術前後の経過A:代表症例の術前後眼圧経過,B:3症例の平均眼圧経過,C:3症例の平均薬物スコア経過.インプラントの挿入位置は前房を予定したが,代表症例のみ術後後房であることが確認された.術後の平均眼圧経過,術後平均点眼スコアの経過は良好であった(pairedt-testp<0.05).は,角膜疾患のため,角膜上皮管理も重要であったことから,可能な限り点眼の使用を避け,アセタゾラミド内服治療を最初に選択した.追加点眼は末期緑内障が観察できた1例と途中で眼圧上昇のあった1例の合計2例であった.今回観察した3症例ともに重篤な高眼圧期がなかったのは,重症角膜疾患の続発緑内障が一般に前眼部炎症を伴い,術後の房水産生低下が眼圧経過に影響した可能性が考えられた.また,前房挿入口とチューブにわずかな間隙があることから,肉眼で確認されない房水漏出があった可能性も考えられる.今回のような眼表面疾患が関与する重症角膜疾患の続発緑内障は疾患自体と手術歴が結膜へ強く影響しており,過去の緑内障手術は奏効せず眼圧コントロールが困難で視力予後不良と思われていた症例である.これまではこのような通常の緑内障手術が奏効しない場合には,毛様体光凝固術や冷凍凝固術といった毛様体破壊術による管理しかなかった6).今回,筆者らはこのような難治性角膜疾患に伴う続発緑内障に対してGDIを適応したが,合併症もなく,眼圧経過,点眼スコア経過ともに良好であった.このような症例に対するBGIあたらしい眼科Vol.32,No.3,2015417 挿入術は,適切な管理のもとでは安全で有効な治療となりうると考えられる.現在,緑内障チューブシャント手術に関するガイドラインでは初回GDIの適応は制限されているが5),今回の症例のように従来の手術が奏効しないと予測される難治性緑内障疾患には,今後早期のGDIの適応が望ましいと考えられる.しかし,今回の検討は少数例の検討で,かつ1年間の短期成績であり,今後多数例の長期経過検討が必要と思われる.本稿の要旨は第24回日本緑内障学会(2013)にて発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)GeddeSJ,SchiffmanJC,FeuerWJetal:TubeversusTrabeculectomyStudyGroup:TreatmentoutcomesintheTubeVersusTrabeculectomy(TVT)Studyafterfiveyearoffollow-up.AmJOphthalmol153:789-803,20122)GeddeSJ,SchiffmanJC,FeuerWJetal:Treatmentoutcomesinthetubeversustrabeculectomystudyafteroneyearoffollow-up.AmJOphthalmol143:9-22,20073)GeddeSJ,HeuerDK,ParrishRK2nd;TubeVersusTrabeculectomyStudyGroup:ReviewofresultsfromtheTubeVersusTrabeculectomyStudy.CurrOpinOphthalmol21:123-128,20104)濱中輝彦:Baerveldtインプラントの特徴と手術手技(前房型).緑内障チューブシャント手術のすべて(千原悦夫編.p26-39,メジカルビュー社,20135)緑内障診療ガイドライン(第3版)補遺緑内障チューブシャント手術に関するガイドライン.日眼会誌116:388393,20126)KnapeRM,SzymarekTN,TuliSSetal:Five-yearoutcomesofeyeswithglaucomadrainagedeviceandpenetratingkeratoplasty.JGlaucoma21:608-614,2012***418あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015(108)