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紫色光ブロック眼内レンズZCB00Vを用いた白内障手術の術後早期成績:視力,屈折度,QOLの検討

2015年6月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科32(6):898.903,2015c《原著》あたらしい眼科32(6):898.903,2015c898(134)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY〔別刷請求先〕岡義隆:〒820-0067福岡県飯塚市川津364-2岡眼科ビル1F岡眼科クリニックReprintrequests:YoshitakaOka,M.D.,OkaEyeClinic,1FOkaEyeClinicBldg.,364-2Kawazu,Iizuka,Fukuoka820-0067,JAPAN紫色光ブロック眼内レンズZCB00Vを用いた白内障手術の術後早期成績:視力,屈折度,QOLの検討岡義隆*1貞松良成*2*1岡眼科クリニック*2さだまつ眼科クリニックEarlyClinicalOutcomesofaVioletBlockingIntraocularLensZCB00VPostCataractSurgery:EvaluationofVisualAcuity,Refraction,andQualityofLifeYoshitakaOka1)andYoshinariSadamatsu2)1)OkaEyeClinic,2)SadamatsuEyeClinic目的:紫外線と紫色光をブロックし青色光を透過させる新しい着色眼内レンズ(IOL)であるテクニスオプティブルー(ZCB00V,エイエムオー・ジャパン)について,白内障手術後早期の視力,屈折度,QOL(qualityoflife)における臨床転帰を評価する.対象および方法:32人60眼(年齢73.1±6.0歳)を対象に,ZCB00Vを挿入する白内障手術を実施し,手術1カ月後に裸眼遠方視力,矯正遠方視力,自覚的屈折度,視覚に関連したQOLを評価する多施設前向き研究を行った.QOLの評価はNEIVFQ-25(the25-itemNationalEyeInstituteVisualFunctioningQuestion-naire)によるアンケート調査により行った.結果:術中合併症の発生はなかった.術前から手術1カ月後にかけ,裸眼遠方視力(logMAR値)は0.58±0.40から0.02±0.16,矯正遠方視力(logMAR値)は0.14±0.24から.0.06±0.06といずれも有意に改善した(ともにp<0.01).等価球面度数は.0.07±2.24Dから.0.39±0.46Dと推移したが,有意な変化ではなかった(p=0.21).手術1カ月後の片眼裸眼遠方視力(logMAR値)は,対象眼数の81.67%(49眼/60眼)で0.0以下,93.33%(56眼/60眼)で0.1以下,そして96.67%(58眼/60眼)で0.3以下であった.片眼矯正遠方視力(logMAR値)は,対象眼数の97.96%(48眼/49眼)で0.0以下,そして100%で0.3以下であった.手術1カ月後のQOLはNEIVFQ-25の12の下位尺度すべてで有意に改善した(いずれもp≦0.01).結論:ZCB00Vは白内障手術後早期の視機能改善において有効性と安全性を備えたIOLである.Purpose:ToevaluateearlyclinicaloutcomesoftheTECNISROptiBlue(ZCB00V;AbbottMedicalOptics,Inc.)intraocularlens(IOL),anew,yellow-tinted,violetlightblockingIOL,postcataractsurgery.Methods:Thestudycomprised60eyesof32patients(meanage:73.1±6.0years)fromtwoeyeclinicsthatunderwentcataractsurgerywithimplantationoftheTECNISROptiBlueIOL.Uncorrecteddistancevisualacuity(UDVA),correcteddistancevisualacuity(CDVA),manifestrefraction,andvision-relatedqualityoflifewereexaminedprospectivelyat1-monthpostoperative.Qualityoflifewasmeasuredwiththe25-itemNationalEyeInstituteVisualFunctioningQuestionnaire(NEIVFQ-25).Results:Nocomplicationsoccurredduringsurgery.ThemeanUDVA(logMAR)valueswere0.58±0.40and0.02±0.16atbeforesurgeryandat1-monthpostoperative,respectively,andthemeanCDVA(logMAR)valuesatthosesameevaluationtime-pointswere0.14±0.24and.0.06±0.06,respectively,thusshowingthatbothUDVAandCDVAweresignificantlyimprovedat1-monthpostoperative(p<0.05).Beforesur-geryandat1-monthpostoperative,themeansphericalequivalentvalueswere.0.07±2.24diopters(D)and.0.39±0.46D,respectively,thusshowingnosignificantchangebetweenbeforeandaftersurgery.At1-monthpost-operative,81.67%(49/60)oftheeyesachievedanUDVAof≦0.0,93.33%(56/60)achievedanUDVAof≦0.1,and96.67%(58/60)achievedanUDVAof≦0.3,and97.96%(48/49)oftheeyesachievedaCDVAof≦0.0and100%achievedaCDVAof≦0.3.TheNEIVFQ-25scoresweresignificantlyimprovedinallofthe12subscalesat1-monthpostoperative(p≦0.01).Conclusions:ThefindingsofthisstudyshowthesafetyandefficacyoftheTECNISROptiBluevioletblockingIOLwithrespecttoearlypostoperativevisualoutcomesfollowingcataractsur-gery. 〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(6):898.903,2015〕Keywords:眼内レンズ,青色光,裸眼遠方視力,矯正遠方視力,等価球面度数,NEIVFQ-25,QOL.intraocularlens,bluelight,uncorrecteddistancevisualacuity,correcteddistancevisualacuity,sphericalequivalent,NEIVFQ-25,QOL.はじめに白内障手術に使用される眼内レンズ(IOL)は1980年代後半以降,光毒性により網膜損傷を引き起こす紫外線(UV)の透過防止を目的として,レンズ材料成分にUV吸収能をもつ発色団を添加し,UVフィルター機能をもたせたIOLが一般的となっている1,2).これらのIOLでは当初,可視光の全波長領域を透過させる非着色タイプのIOLが普及した2).しかし,短波長可視光が網膜に及ぼす悪影響に関して,動物実験により青色光の光毒性が網膜傷害の原因となることが明らかにされた3).また,疫学的研究により,青色光への曝露が加齢黄斑変性の発症と関連する可能性が示された4).こうしたエビデンスの蓄積を背景に,青色光吸収能を有する発色団の添加によって,UVから青色光までの波長スペクトルに対するフィルター機能をもたせた着色タイプの青色光ブロックIOLが開発され5),近年臨床への普及が進んでいる.青色光ブロックIOLを従来の非着色IOLと比較した術後成績に関しては,視力,コントラスト感度,色覚といった視機能や視覚に関連したQOL(qualityoflife)について,両IOLで同等に良好であったという報告がある6,7).一方で,青色光ブロックIOL挿入眼では非着色IOL挿入眼と比較し,暗所視や薄明視における視機能が低下する可能性が指摘されている2).暗所視では,最大視感度の波長が明所視よりも短波長側にシフトするPurkinje現象により,視覚における青色光の重要度が増すと考えられる8).また,青色光ブロックIOL挿入による青色光遮断に伴い,概日リズム同調に必要な網膜神経節細胞での光受容が妨げられ,体内時計や睡眠に関連した問題を生じる可能性も指摘されている9).こうしたなか,青色光ブロックIOLの臨床的有用性の評価をめぐり,いまだ議論が続いているのが現状である10).2013年から使用可能となった新しい着色IOLのテクニスオプティブルー(ZCB00V,エイエムオー・ジャパン)では,従来の青色光吸収剤ではなく紫色光吸収剤が添加されており,UVから400.440nmの紫色光までの波長スペクトルに対するフィルター機能を備えている.440.500nmの青色光は暗所視下に最大視感度を示す波長の近傍であり,かつ概日リズム同調に必要とされる領域を含むが,ZCB00Vは,この青色光領域に対する分光透過率が従来の青色光ブロックIOLと比べて高い8).このためZCB00Vでは,従来の青色光ブロックIOLに対し指摘される上記のデメリットが改善される可能性がある.(135)本研究は,青色光透過性をもつ紫色光ブロックIOLであるZCB00Vの術後成績についての最初の臨床報告である.ZCB00Vを挿入する白内障手術を行い,手術1カ月後までの視力,屈折度,および視覚に関連したQOLの臨床経過を検討した.I対象および方法1.対象患者研究対象は,2施設の眼科専門クリニック(岡眼科クリニック,福岡;さだまつ眼科クリニック,埼玉)にて,1ピース非球面タイプの紫色光ブロックIOLであるZCB00Vを用いて白内障手術を施行した32人(男性11人,女性21人)60眼である.患者の選択基準はつぎのとおりとした:①年齢21歳以上,②術後の正視を希望,③必要となるIOLの度数が15.26D,④本研究への参加についてインフォームド・コンセントが実施されている,⑤本研究への参加意思があり,術後フォローアップスケジュールに従った受診が可能.また,除外基準をつぎのように定めた:①視力に影響する可能性のある薬剤を全身投与もしくは点眼投与により使用中,②視力もしくは本研究の検討結果に影響を及ぼす可能性がある疾患やその他の病的状態(急性,慢性を問わない)を有する,③術前もしくは術後の診察で水晶体.とZinn小帯の両方もしくはどちらか片方に異常所見があり,それを原因としたIOLの偏位によって術後の視力が影響を受ける可能性がある,④瞳孔の異常(瞳孔無反応,瞳孔強直,瞳孔形態異常,薄明視もしくは暗所視下で瞳孔径4mm以上に拡大しない),⑤散瞳点眼剤へのアレルギーを有する.本研究は各施設の倫理審査委員会による承認を受けており,1964年のヘルシンキ宣言において採択された臨床研究の倫理規範に従って実施された.2.術前・術後臨床評価項目術前臨床評価として,すべての対象患者につぎの項目の一般的な眼科検査を実施した:①裸眼遠方視力,②矯正遠方視力,③自覚的屈折度,④細隙灯顕微鏡検査,⑤生体計測(IOLマスター,カールツァイスメディテック),⑥眼底検査.また,視覚に関連したQOLについて,測定尺度として信頼性・妥当性が確立されているアンケート調査方法であるNEIVFQ-25(The25-itemNationalEyeInstituteVisualFunctionQuestionnaire)11)を用いて評価した.NEIVFQ25は25項目から構成され,全体的健康感や視覚,各種の活あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015899 動を行ううえで感じる困難さ,視力低下がもたらす影響をどの程度重大にとらえているかについて,患者への質問によって測定する.視覚に関連した各種の活動に対して感じる困難さについて,「(1)まったく難しくない」「(2)あまり難しくない」「(3)難しい」「(4)とても難しい」「(5)見えにくいのでするのをやめた」「(6)別の理由でするのをやめた/もともとしない」の回答により6段階に評価した(回答(6)は欠損データとして扱った).また,視力低下の影響によるさまざまな役割の制限について尋ねた13項目のうち,5項目については「(1)いつも」.「(5)まったくない」,8項目については「(1)まったくそのとおり」.「(5)ぜんぜんあてはまらない」の回答により,いずれも5段階に評価した.なおNEIVFQ-25は,患者が普段の状態で各種の活動を行うことができるかどうかを尋ねるものであり,患者は眼鏡の使用が許容されるものとして回答する.術後臨床評価として,手術翌日,1週間後,1カ月後の来院時につぎの検査を行った:①裸眼遠方視力,②矯正遠方視力,③自覚的屈折度,④細隙灯顕微鏡検査.また手術1カ月後にNEIVFQ-25を用いて再度,QOLを評価した.3.使用したIOLZCB00Vは,UV・紫色光吸収剤が添加された柔軟で折り畳み可能なアクリル素材からなる1ピース非球面IOLで,光学部直径6.0mm,全長13.0mmである.後.混濁予防のため,光学部はフロスト加工処理され,また後面全周に直角エッジデザインが施されている.紫色光吸収剤によって遮断されるおもな波長域は,網膜損傷を引き起こす可能性のある440nm未満の短波長域8)に限られている.暗所視下の良好な視機能や概日リズム同調のために必要となる440.500nmの青色光領域に対しては,ZCB00Vは従来の青色光ブロックIOLと比べて高い分光透過率を示す8).本レンズは,選択可能な全度数範囲+6.0.+30.0D(0.50D刻み)を通じて分光透過率曲線の形状がほぼ同一となるように設計されている.また,角膜の球面収差を補正することにより術後の眼球全体の球面収差をほぼ0とすることを目的として,レンズ後面は非球面形状となっている.メーカー推奨A定数は118.8である.4.手術手技手術は全例,熟練した術者が局所麻酔下で施行した.岡眼科クリニックでは耳側角膜2.4mm切開,さだまつ眼科クリニックでは耳側経結膜2.4mm切開を行い,CCC(continuouscurvilinearcapsulorhexis)による前.切開に続いて超音波水晶体乳化吸引術を行った後,IOL挿入器アンフォルダーRプラチナ1システム(エイエムオー・ジャパン)を使って水晶体.内にZCB00Vを挿入した.術後管理として全例にステロイド点眼薬投与を行った.5.統計解析統計解析ソフトウェアSPSSversion19.0(IBM)を使用して統計学的検討を行った.各評価項目における経時的変化をみるため,術前後の各評価時点間でWilcoxon順位和検定を用いて比較した.いずれの場合も統計学的有意水準はp<0.05とした.QOLについてのNEIVFQ-25による調査結果を解析するため,米国国立眼病研究所(NEI)の実施要綱に従い,全25項目を構成する12の下位尺度についてのスコア化を行った11).調査時に,視機能が良好なほど高スコアとする採点ルールに従って全25項目のスコア値を記録した後,各項目のスコア値をそれぞれ最低スコア値0.最高スコア値100のスケールに変換した.そして関連性のある項目のスコア値の平均値を求めることで,12の下位尺度のスコア値を算出した.II結果1.患者背景本研究はプロスペクティブな検討として実施され,参加した患者は男性11人(34.4%),女性21人(65.6%),年齢73.1±6.0歳(平均値±SD,範囲:64.83歳),対象とした60眼の内訳は右目29眼(48.3%),左目31眼(51.7%)であった.挿入されたIOLの度数は21.42±3.02D(平均値±SD,中央値:21.00D,範囲:12.50.27.00D)であった.23眼(38.3%)に眼疾患既往があり,23眼(38.3%)に眼底の異常所見がみられた.術前臨床評価時に検出された眼疾患や眼の病的状態は以下のとおりであった:加齢黄斑変性1眼(1.7%),動脈硬化性網膜症1眼(1.7%),糖尿病網膜症4眼(6.7%),緑内障10眼(16.7%),糖尿病網膜症を併存する緑内障2眼(3.3%),黄斑部網膜上膜を併存する緑内障1眼(1.7%),高血圧性網膜症3眼(5.0%),偽落屑緑内障1眼(1.7%).術中合併症の発生はなかった.2.視力と屈折度表1に視力と屈折度の術前.手術1カ月後における経時的推移を示す.片眼裸眼遠方視力(logMAR値,平均値±SD)は術前の0.58±0.40から手術1カ月後に0.02±0.16,片眼矯正遠方視力(logMAR値,平均値±SD)は術前の0.14±0.24から手術1カ月後に.0.06±0.06といずれも有意に改善していた(Wilcoxon順位和検定,いずれもp<0.01;図1).等価球面度数(平均値±SD)は術前の.0.07±2.24Dから手術1カ月後に.0.39±0.46Dと推移したが,有意な変化ではなかった(Wilcoxon順位和検定,p=0.21;図2).手術1カ月後の片眼裸眼遠方視力(logMAR値)が0.0以下であった眼数の割合は81.67%(49眼/60眼),0.1以下は93.33%(56眼/60眼),0.3以下は96.67%(58眼/60眼)であった(図3a).同様に手術1カ月後の片眼矯正遠方視力(logMAR値)が0.0以下,0.1以下の割合はともに97.96%(48(136) あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015901(137)眼/49眼)であり,0.3以下は100%であった(図3b).3.QOL表2にNEIVFQ-25で評価したQOLを術前と手術1カ月後で比較した結果を示す.手術1カ月後に12の下位尺度のすべてにおいてスコア値の有意な改善がみられた(Wilcox-on順位和検定,いずれもp≦0.01).III考察裸眼遠方視力(logMAR値)の平均値±SDは手術1カ月後に0.02±0.16(範囲:.0.08.1.00)まで改善した.この結果から,青色光を透過する紫色光ブロックIOLであるZCB00Vの挿入眼では,視力の良好な予後が期待できることが示された.表1術前後の片眼視力および屈折度の臨床経過術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後術前vs.手術1カ月後の比較†UDVA0.58(0.40)0.52(.0.08.1.70)0.08(0.16)0.00(.0.08.1.00)0.02(0.14)0.00(.0.08.0.82)0.02(0.16)0.00(.0.08.1.00)p<0.01CDVA0.14(0.24)0.10(.0.08.1.30).0.01(0.11).0.08(.0.08.0.52).0.06(0.05).0.08(.0.08.0.15).0.06(0.06).0.08(.0.08.0.22)p<0.01等価球面度数(D).0.07(2.24)+0.25(.6.00.+4.63).0.10(0.35)0.00(.0.75.+0.63).0.08(0.37)0.00(.1.00.+0.75).0.39(0.46).0.50(.2.50.0.00)p=0.21上段に平均値(標準偏差),下段に中央値(範囲)を示す.UDVA:裸眼遠方視力,CDVA:矯正遠方視力.いずれもlogMAR値.†:Wilcoxon順位和検定.図1フォローアップ期間中の片眼裸眼遠方視力と片眼矯正遠方視力の変化UDVA:裸眼遠方視力,CDVA:矯正遠方視力.いずれもlogMAR値(平均値±標準偏差).p値:Wilcoxon順位和検定.logMAR値-0.4-0.200.20.40.60.811.2術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後UDVACDVA0.58±0.400.02±0.16-0.06±0.060.14±0.24術前vs.手術1カ月後:p<0.01術前vs.手術1カ月後:p<0.01図2フォローアップ期間中の等価球面度数の変化平均値±標準偏差.p値:Wilcoxon順位和検定.等価球面度数(D)-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.0術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後-0.39±0.46術前vs.手術1カ月後:p=0.21-0.07±2.24図3フォローアップ期間を通じた片眼裸眼遠方視力(a)と片眼矯正遠方視力(b)の分布変化術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後眼数の割合logMAR値■0.0以下■0.1以下■0.3以下100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後眼数の割合100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%abあたらしい眼科Vol.32,No.6,2015901(137)眼/49眼)であり,0.3以下は100%であった(図3b).3.QOL表2にNEIVFQ-25で評価したQOLを術前と手術1カ月後で比較した結果を示す.手術1カ月後に12の下位尺度のすべてにおいてスコア値の有意な改善がみられた(Wilcox-on順位和検定,いずれもp≦0.01).III考察裸眼遠方視力(logMAR値)の平均値±SDは手術1カ月後に0.02±0.16(範囲:.0.08.1.00)まで改善した.この結果から,青色光を透過する紫色光ブロックIOLであるZCB00Vの挿入眼では,視力の良好な予後が期待できることが示された.表1術前後の片眼視力および屈折度の臨床経過術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後術前vs.手術1カ月後の比較†UDVA0.58(0.40)0.52(.0.08.1.70)0.08(0.16)0.00(.0.08.1.00)0.02(0.14)0.00(.0.08.0.82)0.02(0.16)0.00(.0.08.1.00)p<0.01CDVA0.14(0.24)0.10(.0.08.1.30).0.01(0.11).0.08(.0.08.0.52).0.06(0.05).0.08(.0.08.0.15).0.06(0.06).0.08(.0.08.0.22)p<0.01等価球面度数(D).0.07(2.24)+0.25(.6.00.+4.63).0.10(0.35)0.00(.0.75.+0.63).0.08(0.37)0.00(.1.00.+0.75).0.39(0.46).0.50(.2.50.0.00)p=0.21上段に平均値(標準偏差),下段に中央値(範囲)を示す.UDVA:裸眼遠方視力,CDVA:矯正遠方視力.いずれもlogMAR値.†:Wilcoxon順位和検定.図1フォローアップ期間中の片眼裸眼遠方視力と片眼矯正遠方視力の変化UDVA:裸眼遠方視力,CDVA:矯正遠方視力.いずれもlogMAR値(平均値±標準偏差).p値:Wilcoxon順位和検定.logMAR値-0.4-0.200.20.40.60.811.2術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後UDVACDVA0.58±0.400.02±0.16-0.06±0.060.14±0.24術前vs.手術1カ月後:p<0.01術前vs.手術1カ月後:p<0.01図2フォローアップ期間中の等価球面度数の変化平均値±標準偏差.p値:Wilcoxon順位和検定.等価球面度数(D)-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.0術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後-0.39±0.46術前vs.手術1カ月後:p=0.21-0.07±2.24図3フォローアップ期間を通じた片眼裸眼遠方視力(a)と片眼矯正遠方視力(b)の分布変化術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後眼数の割合logMAR値■0.0以下■0.1以下■0.3以下100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%術前手術翌日手術1週間後手術1カ月後眼数の割合100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%ab 表2NEI.VFQ25の12の下位尺度を用いて評価した術前後のQOL変化NEI-VFQ25下位尺度術前手術1カ月後p値†全体的健康感53.13(15.23)50.00(25.00.100.00)64.06(21.94)50.00(25.00.100.00)0.01全体的見え方55.63(17.40)60.00(20.00.80.00)91.25(10.08)100.00(80.00.100.00)<0.01目の痛み83.59(17.52)87.50(37.50.100.00)93.95(9.05)100.00(62.50.100.00)0.01近見視力による行動60.94(24.54)66.67(0.00.100.00)92.47(12.79)100.00(50.00.100.00)<0.01遠見視力による行動65.63(20.60)66.67(25.00.100.00)98.39(3.98)100.00(83.33.100.00)<0.01運転56.88(25.16)50.00(25.00.100.00)96.71(8.17)100.00(75.00.100.00)<0.01周辺視覚70.16(21.81)75.00(25.00.100.00)99.22(4.42)100.00(75.00.100.00)<0.01色覚87.10(12.70)75.00(75.00.100.00)100.00(0.00)100.00(100.00.100.00)<0.01見え方による社会生活機能82.81(17.32)87.50(25.00.100.00)100.00(0.00)100.00(100.00.100.00)<0.01見え方による自立75.78(24.99)75.00(25.00.100.00)99.46(2.99)100.00(83.33.100.00)<0.01見え方による心の健康69.73(23.12)68.75(25.00.100.00)100.00(0.00)100.00(100.00.100.00)<0.01見え方による役割制限76.56(24.75)81.25(25.00.100.00)99.19(2.67)100.00(87.50.100.00)<0.01上段に平均値(標準偏差),下段に中央値(範囲)を示す.†:Wilcoxon順位和検定(術前vs.手術1カ月後の比較).本研究で裸眼遠方視力と矯正遠方視力により評価したZCB00Vの視力予後は,従来タイプの着色IOLである青色光ブロックIOLについて過去に報告された予後評価の結果と同等であった12.15).加えて,非着色タイプの非球面IOLについて過去に報告された結果とも同等,もしくはそれらより良好な結果であった16,17).Baghiらは,TecnisZ9000(AbbottMedicalOpticsInc.USA)とAkreosAO(Bausch&LombInc.USA)の2種類の非球面非着色IOLで視力予後を比較し,各IOL挿入眼の手術3カ月後の裸眼視力(logMAR値)平均値がそれぞれ0.18,0.25であったと報告している16).これに対し,同じ2種類のIOLについてJohanssonらが行った比較検討では,手術10.12週後の裸眼視力(logMAR値)平均値についてTecnisZ9000で0.08,AkreosAOで0.11とより良好な結果が報告されている17).これらの既報の結果との比較から,ZCB00Vは非球面非着色IOLや青色光ブロックIOLと比べ,視力予後が同等,もしくはそれらより良好と考えられる.視力予後に加え,ZCB00Vの挿入が視覚に関連するQOLに及ぼす影響について,NEIVFQ-25を用いたアンケート調査により評価した.NEIVFQ-25は当初,各種の眼疾患に伴う視力低下がさまざまな日常行動に影響を及ぼすことにより,QOLにどう影響するかを測る目的で開発された11).その後の検証により,調査対象者の視力のレベルや健康状態によらず,信頼性・妥当性をもってQOLを評価可能な測定尺度として確立されている18).また近年は,調節型IOLや回折多焦点IOLといった各種のIOLを用いて白内障手術を施行した後のQOLの変化を評価する目的で,NEIVFQ-25が使用されている19,20).本研究では,NEIVFQ-25の12の下位尺度すべてで術後に有意な改善が認められ,そのなかでも平均値増加幅が比較的大きかった下位尺度が「運転」(術前ベースライン値:56.88,増加幅:39.8),「全体的見え方」(同:55.63,同:35.6),「遠見視力による行動」(同:65.63,同:32.8),「近見視力による行動」(同:60.94,同:31.5)であった.Espindleらは青色光ブロックIOLについて,白内障手術前後の視覚に関連したQOLの変化を,NEIVFQ25と同一の12の下位尺度をもち39項目から構成されるNEIVFQ-39を用いて調べた6).その結果,手術120.180日後に「全体的健康感」を除く11の下位尺度すべてでQOL(138) が有意に改善しており,平均値増加幅が比較的大きかった尺度は「運転」(術前ベースライン値:58.37,増加幅:31.17),「全体的見え方」(同:60.04,同:28.59),「近見視力による行動」(同:66.28,同:26.72)「遠見視力による行動」(同:68.89,同:26.17)と本研究の果と共通していた.本研究の観察期間は手術後1カ月間と短いため単純な比較はできないものの,青色光を透過する紫色光ブロックIOLであるZCB00Vは,青色光ブロックIOLと同様に術後の視覚に関連したQOLを改善させると考えられる.結論として,青色光を透過し紫色光.UVを遮断する紫色光ブロックIOLのZCB00Vは,白内障手術後早期の視機能改善において有効性と安全性を備えたIOLであり,従来タイプの青色光ブロックIOLと比較し,遜色ない臨床成績が期待できる.今後の検討課題に関しては,ZCB00Vでは,暗所視において重要度を増す青色光に対し高い分光透過率を示す8)ため,青色光ブロックIOLについて問題視されてきた暗所視でのコントラスト感度低下が起きにくいと予想される.したがって今後,ZCB00V挿入眼におけるコントラスト感度と色覚について検証することが必要と考えられる.また,ZCB00Vでは,患者の視機能低下につながる可能性があるグリスニングやsub-surfacenanoglistening(SSNG)が発生しにくい疎水性アクリル素材が用いられており21),本IOL挿入眼におけるグリスニングやSSNG発生についても検証が必要である.さらに,ZCB00Vの使用によって安定結(,)した長期予後が得られるかに関連して,IOLの.内安定,後.混濁(PCO)の検証も必須である.文献1)MainsterMA:Thespectra,classification,andrationaleofultraviolet-protectiveintraocularlenses.AmJOphthalmol102:727-732,19862)HendersonBA,GrimesKJ:Blue-blockingIOLs:acompletereviewoftheliterature.SurvOphthalmol55:284289,20103)GrimmC,WenzelA,WilliamsTetal:Rhodopsin-mediatedblue-lightdamagetotheratretina:effectofphotoreversalofbleaching.InvestOphthalmolVisSci42:497505,20014)TaylorHR,WestS,MunozBetal:Thelong-termeffectsofvisiblelightontheeye.ArchOphthalmol110:99-104,19925)DavisonJA,PatelAS:Lightnormalizingintraocularlenses.IntOphthalmolClin45:55-106,20056)EspindleD,CrawfordB,MaxwellAetal:Quality-of-lifeimprovementsincataractpatientswithbilateralbluelight-filteringintraocularlenses:clinicaltrial.JCataractRefractSurg31:1952-1959,20057)ZhuXF,ZouHD,YuYFetal:Comparisonofbluelight-filteringIOLsandUVlight-filteringIOLsforcataractsurgery:ameta-analysis.PLoSOne7:e33013,20128)MainsterMA:Violetandbluelightblockingintraocularlenses:photoprotectionversusphotoreception.BrJOphthalmol90:784-792,20069)TurnerPL,MainsterMA:Circadianphotoreception:ageingandtheeye’simportantroleinsystemichealth.BrJOphthalmol92:1439-1444,200810)YangH,AfshariNA:Theyellowintraocularlensandthenaturalageinglens.CurrOpinOphthalmol25:40-43,201411)StelmackJA,StelmackTR,MassotRW:Measuringlow-visionrehabilitationoutcomeswiththeNEIVFQ-25.InvestOphthalmolVisSci43:2859-2868,200212)Kara-JuniorN,EspindolaRF,GomesBAFetal:Effectsofbluelight-filteringintraocularlensesonthemacula,contrastsensitivity,andcolorvisionafteralong-termfollow-up.JCataractRefractSurg37:2115-2119,201113)LeibovitchI,LaiT,PorterNetal:Visualoutcomeswiththeyellowintraocularlens.ActaOphthalmolScand84:95-99,200614)MarshallJ,CionniRJ,DavisonJetal:Clinicalresultsoftheblue-lightfilteringAcrySofNaturalfoldableacrylicintraocularlens.JCataractRefractSurg31:2319-2323,200515)LandersJ,TanTH,YuenJetal:ComparisonofvisualfunctionfollowingimplantationofAcrysofNaturalintraocularlenseswithconventionalintraocularlenses.ClinExperimentOphthalmol35:152-159,200716)BaghiAR,JafarinasabMR,ZiaeiHetal:VisualOutcomesofTwoAsphericPCIOLs:TecnisZ9000versusAkreosAO.JOphthalmicVisRes3:32-36,200817)JohanssonB,SundelinS,Wikberg-MatssonAetal:VisualandopticalperformanceoftheAkreosAdaptAdvancedOpticsandTecnisZ9000intraocularlenses:Swedishmulticenterstudy.JCataractRefractSurg33:1565-1572,200718)HymanLG,KomaroffE,HeijlAetal:Treatmentandvision-relatedqualityoflifeintheearlymanifestglaucomatrial;fortheEarlyManifestGlaucomaTrialGroup.Ophthalmology112:1505-1513,200519)RamonML,PineroDP,Blanes-MompoFJetal:Clinicalandqualityoflifedatacorrelationwithasingle-opticaccommodatingintraocularlens.JOptom6:25-35,201320)AlioJL,Plaza-PucheAB,PineroDPetal:Opticalanalysis,readingperformance,andquality-of-lifeevaluationafterimplantationofadiffractivemultifocalintraocularlens.JCataractRefractSurg37:27-37,201121)ColinJ,PraudD,TouboulDetal:Incidenceofglisteningswiththelatestgenerationofyellow-tintedhydrophobicacrylicintraocularlenses.JCataractRefractSurg38:1140-1146,2012***(139)あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015903