《原著》あたらしい眼科35(4):552.559,2018c非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫を対象としたTenon.下投与によるWP-0508ST(マキュエイドR眼注用40.mg)の第III相試験後藤浩*1志村雅彦*2宮井裕子*3飯田知弘*4*1東京医科大学臨床医学系眼科学分野*2東京医科大学八王子医療センター眼科*3わかもと製薬株式会社臨床開発部*4東京女子医科大学眼科学教室Phase3ClinicalTrialofSub-TenonInjectionofWP-0508ST(MaQaidROphthalmicInjection40mg)forMacularEdemainNoninfectiousUveitisHiroshiGoto1),MasahikoShimura2),HirokoMiyai3)andTomohiroIida4)1)DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversityHachiojiMedicalCenter,3)ClinicalDevelopmentDepartment,WakamotoPharmaceuticalCo.,Ltd.,4)DepartmentofOphthalmology,TokyoWomen’sMedicalUniversityWP-0508ST(マキュエイドR眼注用C40Cmg)のCTenon.下投与における有効性および安全性を確認するため,非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫を有する患者C40例を対象に,多施設共同非遮蔽非対照試験を実施した.投与後C8週における中心窩網膜厚のスクリーニング時からの変化量は,臨床的に有効であると判断される基準として設定したC95%信頼区間の上限値.50Cμmを上回る改善であった.また,投与後C12週までの中心窩網膜厚,最高矯正視力および炎症スコア(前房細胞数および前房フレア)の推移において,スクリーニング時と比較して有意な改善が認められた.おもな副作用としては,眼圧上昇(15.0%),血中コルチゾールの減少(10.0%)および水晶体混濁進展(5.0%)がみられた.眼圧上昇例は眼圧下降薬の点眼または内服によりコントロール可能であった.水晶体混濁例は白内障手術に至ったが,視力予後は良好であった.WP-0508STは非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫治療の選択肢として有用であると考えられる.ToCevaluateCtheCe.cacyCandCsafetyCofCsub-TenonCinjectionCofCWP-0508ST(MaQaidRCOphthalmicCInjection40Cmg),CweCconductedCaCmulticenter,Copen-label,CuncontrolledCstudyConC40CsubjectsCwithCmacularCedemaCinCnon-infectiousuveitis.Theresultsindicatedthatthechangeincentralmacularthickness(CMT)at8weeksaftertheadministrationshowedimprovementexceedingtheupperlimitofthe95%con.denceintervalof.50Cmm,thecri-terionCforCclinicalCe.ectiveness.CInCaddition,CCMT,Cbest-correctedCvisualCacuityCandCin.ammationCscore(anteriorchamberCcellCcountCandCanteriorCchamberC.are)observedCupCtoC12CweeksCpost-administrationCindicatedCaCsigni.-cantCimprovementCfromCbaseline.CTheCmainCadverseCdrugCreactionsCwereCelevatedCintraocularCpressure(15.0%),decreasedbloodcortisol(10.0%),andprogressionoflensopacity(5.0%).Itwaspossibletocontroltheintraocularpressurewiththeeyedropsorinternalmedicinesforglaucoma.Thecaseswithlensopacityrequiredcataractsur-gery,CbutCtheCprognosisCforCvisualCacuityCwasCsatisfactory.CTheseCresultsCsuggestCthatCWP-0508STCisCanCe.ectiveCtherapeuticoptionforthetreatmentofmacularedemainnoninfectiousuveitis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(4):552.559,C2018〕Key.words:非感染性ぶどう膜炎,黄斑浮腫,トリアムシノロンアセトニド,Tenon.下投与,有効性,安全性,WP-0508ST.noninfectiousCuveitis,CmacularCedema,CtriamcinoloneCacetonide,Csub-tenonCinjection,e.cacy,Csafety,CWP-0508ST.C〔別刷請求先〕後藤浩:〒160-0023東京都新宿区西新宿C6-7-1東京医科大学臨床医学系眼科学分野Reprintrequests:HiroshiGoto,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity.6-7-1Nishi-Shinjyuku,Shinjyuku,Tokyo160-0023,JAPAN552(134)はじめにぶどう膜炎は,その病因から非感染性ぶどう膜炎と感染性ぶどう膜炎に分類されるが,2009年の日本眼炎症学会によるわが国におけるぶどう膜炎の原因疾患調査では,サルコイドーシス,Vogt-小柳-原田病,急性前部ぶどう膜炎など,その上位はいずれも非感染性ぶどう膜炎が占めていた1).非感染性ぶどう膜炎の治療としては,第一に副腎皮質ステロイド薬(ステロイド)の局所投与または内服が行われ,これらの治療で効果不十分の場合にはシクロスポリン,メトトレキサートなどの免疫抑制薬治療が行われるのが一般的である2).ステロイドによる治療においても,可能な限り局所投与での治療から試みることが原則となる3).ぶどう膜炎はその原因にもよるが予後不良に至ることも珍しくなく,ぶどう膜炎患者の約C35%が重度の視覚障害あるいは社会的失明に至ることが報告されている4,5).一方,ぶどう膜炎患者の約C3割が黄斑浮腫を伴うことが知られている4).黄斑浮腫の慢性化は視細胞に不可逆的な障害をきたし,恒久的な視力障害に至ることが危惧されるため,治療時期を逃がさずに黄斑浮腫を抑制することが重要である.トリアムシノロンアセトニド(triamcinoloneCacetonide:TA)を有効成分としたCWP-0508ST(マキュエイドCR眼注用40Cmg)は,硝子体手術時の硝子体可視化薬および硝子体内投与による糖尿病黄斑浮腫治療薬として製造販売承認を取得しており,2017年C3月にCTenon.下の投与経路において「糖尿病黄斑浮腫,網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫及び非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫の軽減」の効能・効果の追加承認を取得した.本報告では,「非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫の軽減」の効能・効果承認のために実施された多施設共同非遮蔽非対照試験の結果を報告する.本治験は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則,薬事法,薬事法施行規則,「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」,ならびに治験実施計画書を遵守し実施された.CI対象および方法1..実施医療機関および治験責任医師本治験はC2015年C1月.2016年C7月に全国C13医療機関において,各々の治験責任医師のもと実施された(表1).試験実施に先立ち,各医療機関の治験審査委員会において試験の倫理的および科学的妥当性が審査され,承認を得た.C2..対象対象患者は,活動性の眼感染(ウイルス,細菌,真菌,寄生虫,原虫など)を除いた,非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫を有する患者とした.おもな選択・除外基準は表2に示した.本治験の開始に先立ち,すべての被験者に対して試験の内容を十分に説明し,自由意思による治験参加の同意を本表.1治験実施医療機関一覧治験実施医療機関名治験責任医師名*北海道大学病院南場研一東北大学病院丸山和一順天堂大学医学部附属浦安病院海老原伸行日本医科大学付属病院堀純子東京医科大学病院毛塚剛司東京大学医学部附属病院蕪城俊克東京医科歯科大学医学部附属病院高瀬博東京慈恵会医科大学附属病院酒井勉,久米川浩一名古屋市立大学病院吉田宗徳JCHO大阪病院大黒伸行山口大学医学部附属病院園田康平,柳井亮二宮田眼科病院宮田和典淀川キリスト教病院中井慶*治験期間中の治験責任医師をすべて記載した(順不同).人から文書にて取得した.C3..試.験.方.法a..治験デザイン本治験は,多施設共同非遮蔽非対照試験として実施した.Cb..治験薬・投与方法1バイアル中にCTAC40Cmgを含有するCWP-0508STに生理食塩液をC1Cml加え,懸濁液C0.5Cml(TA20Cmg)を対象眼のCTenon.下に単回投与した.方法は以下の手順に従った.抗菌薬および麻酔薬を点眼後,結膜円蓋部下耳側に剪刀を用いて小切開を加え,切開創から挿入した鈍針を強膜壁に沿って眼球後方まで針先を押し進め,後部CTenon.に懸濁液を投与した.投与後は抗菌薬の点眼による感染予防処置を行った.C4..検査・観察項目検査・観察スケジュールを表3に示した.まず,蛍光眼底造影検査によって黄斑浮腫の有無を確認し,選択基準の判定および糖尿病網膜症などの除外基準の判定を行った.中心窩網膜厚は光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomography:OCT)を用い,中心窩から半径C0.5Cmm範囲の平均網膜厚の値を評価した.なお,実施医療機関で撮像されたCOCT画像については,東京女子医科大学に設置されたCOCT判定会にて専門家による判定が行われた.最高矯正視力の測定はEarlyCTreatmentCDiabeticCRetinopathyCStudy(ETDRS)チャートを用いて行った.その他,眼圧,細隙灯顕微鏡検査,眼底検査,血圧・脈拍数および臨床検査を観察項目とした.投与後に認められた臨床上好ましくない疾病あるいは徴候を収集し,有害事象として評価した.なお,投与後C12週までを「観察期間」とし,対象疾患に対する併用治療(ステロイドの全身投与や抗CVEGF薬の局所投与,硝子体手術,レーザー治療など)および視力に影響を及ぼす可能性のある処置(白内障手術,緑内障手術など)を禁止とした.ただし,表.2おもな選択および除外基準選択基準(1)年齢がC20歳以上C80歳未満(2)対象眼が非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫と判断された者(3)対象眼の視力がCETDRS視力表を用いてC20文字からC80文字(小数視力換算でC0.05以上C0.8以下)(4)対象眼の中心窩網膜厚が,OCTによる測定でC300Cμm以上(5)対象眼の眼圧がC21CmmHg以下(6)自由意思による治験参加の同意を本人から文書で取得できる者除外基準(1)対象眼に,網膜静脈閉塞症,糖尿病網膜症,加齢黄斑変性症,偽(無)水晶体眼性.胞様黄斑浮腫,重度の黄斑虚血,重度の黄斑上膜,中心性漿液性網脈絡膜症,虹彩ルベオーシスまたは強度近視の症状を有する(2)対象眼に,細隙灯顕微鏡検査,眼底検査またはCOTCによる中心窩網膜厚の評価および測定が困難なほどの透光体混濁(網膜前・硝子体出血,または水晶体混濁など)を認める(3)対象眼に,角膜上皮.離または角膜潰瘍を有する(4)対象眼に,緑内障,高眼圧症または既往歴を有する(5)対象眼に眼内悪性リンパ腫を有する(6)コントロール不能な全身性疾患を有する(7)全身衰弱,重篤な心疾患,重篤な脳血流障害または肝硬変を有する(8)対象眼への硝子体手術が治験薬投与前C52週以内に実施(9)対象眼への副腎皮質ステロイド薬のCTenon.下または球後への投与が治験薬投与前C24週以内に実施(10)対象眼への薬剤の硝子体内投与が治験薬投与前C24週以内に実施(11)免疫抑制薬,免疫調節薬,代謝拮抗薬またはアルキル化薬の投与が治験薬投与前C24週以内に実施(12)対象眼へのレーザー治療または内眼手術が,治験薬投与前C12週以内に実施(13)副腎皮質ステロイド薬,経口炭酸脱水酵素阻害薬,抗CTNF-a抗体薬,ワルファリンまたはヘパリンの投与が,治験薬投与前C4週以内に実施(14)妊婦または授乳婦(15)その他治験医師または治験分担医師が不適と判断表.3検査・観察スケジュール観察項目スクリーニング時観察期間追跡調査投与日翌日週1週4週8週12中止時6,9,1C2カ月同意取得C●患者背景C●症例登録C●治験薬投与C●眼科検査光干渉断層計測定C●C●C●C●C●C●C●最高矯正視力C●C●C●C●C●C●C●眼圧C●C●C●C●C●C●C●C●細隙灯顕微鏡検査C●C●C●C●C●C●C●C●眼底検査C●C●C●C●C●C●C●眼底撮影C●C●C●C●蛍光眼底造影検査C●血圧・脈拍数C●C●C●C●臨床検査C●C●C●C●C●診察・問診C●C●C●C●C●C●C●妊娠検査C●併用薬・併用療法の検査C●C●C●C●C●C●C●C●有害事象C●C表.4前房細胞数の判定基準スコア00.5+1+2+3+4+SUNCWorkingCGroupによるスコア分類(視野サイズは縦C1CmmC×横C1Cmmのスリット光)被験者の利益性を優先し治療が必要とされた場合は本治験を中止・終了とした.C5..評価項目および方法a..有効性主要評価項目は,中心窩網膜厚のスクリーニング時からの変化量とした.臨床的に有効であると判断される基準をC.50Cμmと設定し,95%信頼区間の上限がC.50Cμmを上回る改善であればCWP-0508STの有効性が確認されるものとした.評価時点は投与後C8週とし,8週より前に中止または脱落した症例についても最終検査日のデータを評価に含めた.副次的評価項目は,中心窩網膜厚の推移,EDTRSチャートによる最高矯正視力の推移,炎症スコア(前房細胞数,前房フレア)の投与後C12週までの推移とした.Cb..安全性投与後C12カ月までに発現した有害事象および副作用,最高矯正視力,眼圧,細隙灯顕微鏡検査,眼底検査,血圧・脈拍数,臨床検査の各項目を評価した.C6..解.析.方.法a..解析対象集団主要な有効性解析対象集団は,最大の解析対象集団(fullanalysisCset:FAS)とし,治験実施計画書に適合した解析対象集団(PerProtocolSet:PPS)についても検討した.安全性の解析は,治験薬の投与が行われたすべての症例を対象とした.Cb..解.析.方.法主要評価項目は,中心窩網膜厚の変化量について要約統計量およびC95%信頼区間を算出した.副次的評価項目は,中心窩網膜厚および最高矯正視力について,各評価時点における要約統計量を算出し,対応あるCt検定を実施した.また,炎症性スコアはCStandardizedCUveitisCNomenclature(SUN)ワーキンググループが報告した基準(表4および表5)6)に従ってスコア化し,Wilcoxonの符号付順位和検定を行った.検定は両側検定で行い,有意水準は5%とした.C表.5前房フレアの判定基準II試.験.成.績1..被験者の内訳被験者の内訳を図1に示した.本治験の参加に同意し登録された被験者数はC41例であった.登録された被験者のうち1例が治験薬投与前に黄斑浮腫が改善したため投与未実施となり,投与実施被験者数はC40例となった.そのうちC6例が投与後C12週以内に中止・脱落し,12週間の観察期を完了した被験者数はC34例であった.投与後C12週以内の中止・脱落理由は,「有害事象の発現により併用禁止薬又は併用禁止療法の処置の必要性が生じたため」がC4例,「黄斑浮腫の再発及び合併症の治療のため」がC2例であった.12週間の観察期を完了したC34例は投与後C6カ月,9カ月の追跡調査へ移行し,投与後C12カ月の追跡調査終了前に同意撤回したC2例を除くC32例が全追跡調査を終了した.被験者背景(FAS)を表6に示した.表.6被験者背景(FAS)項目例数解析対象被験者数C39男11(28.2%)性別女28(71.8%)平均値±標準偏差C59.5±15.22年齢(歳)[最小値.最大値][23.78]サルコイドーシス13(33.3%)Vogt-小柳-原田病1(2.6%)Behcet病4(10.3%)ぶどう膜炎の原因分類その他21(53.8%)急性前部ぶどう膜炎2(9.5%)炎症性腸疾患に伴うぶどう膜炎1(4.8%)分類不能のぶどう膜炎18(85.7%)ぶどう膜炎罹病期間(年)平均値±標準偏差C3.95±5.376ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫罹病期間(年)平均値±標準偏差C1.93±4.433平均値±標準偏差C484.5±189.54中心窩網膜厚(μm)[最小値.最大値][307.1351]平均値±標準偏差C64.2±12.44最高矯正視力(文字)[最小値.最大値][32.80]平均値±標準偏差C14.2±2.74眼圧(mmHg)[最小値.最大値][9.20]020(C51.3%)C0.5+8(2C0.5%)C前房細胞数C1+2+8(2C0.5%)C2(5C.1%)C3+1(2C.6%)C炎症スコア4+0(0C.0%)029(C74.4%)C1+9(2C3.1%)C前房フレアC2+1(2C.6%)C3+0(0C.0%)C4+0(0C.0%)2..有効性投与が実施された被験者C40例のうち,1例で除外基準に抵触(投与前より経口炭酸脱水酵素阻害薬使用)があり,FASおよびCPPS不採用となった.有効性データの取り扱いはすべてCFASとCPPSで同一であった.Ca..主要評価項目に関する結果評価時の中心窩網膜厚およびスクリーニング時からの変化量の結果を表7に示した.中心窩網膜厚のスクリーニング時からの変化量は,C.114.0(C.160.9.C.67.1)μm[平均値(95%信頼区間下限.上限)]であり,95%信頼区間の上限はあらかじめ設定した基準である.50Cμmを上回る改善が認められた.Cb..副次的評価項目に関する結果投与後C12週までの中心窩網膜厚の推移を図2に,変化量を表8に示した.各評価時点の中心窩網膜厚は,スクリーニング時:484.5C±189.54Cμm(平均値C±標準偏差,以下同様)投与後C1週:405.0C±191.24Cμm,4週:381.9C±162.26Cμm,,8週:374.5C±135.57Cμm,12週:371.8C±153.11Cμmと,スクリーニング時に比較していずれの評価時点においても有意な改善がみられた(すべてp<0.001).投与後C12週までの最高矯正視力の推移を図3に,変化量を表9に示した.各評価時点のスクリーニング時からの最高矯正視力は,スクリーニング時:64.2C±12.44文字,投与後1週:69.1C±11.49文字,4週:72.6C±9.89文字,8週:74.1C±9.99文字,12週:74.9C±9.10文字と,スクリーニング時に比較していずれの評価時点においても有意な改善がみられた(すべてp<0.001).投与後C12週までの炎症スコア(前房細胞数,前房フレア)表.7評価時の中心窩網膜厚(FAS,解析対象被験者数39例)中心窩網膜厚中心窩網膜厚変化量平均値±標準偏差対応あるCt検定平均値±標準偏差スクリーニング時評価時C[95%信頼区間(下限.上限)].114.0±144.59484.5±189.54C370.5±128.89p<0.001C[.160.9.C.67.1](単位:μm)70010090中心窩網膜厚(μm)600最高矯正視力(文字)80706050403020500400300200100100スクリー1週後4週後8週後12週後0スクリー1週後4週後8週後12週後ニングニング評価時期評価時期図.2中心窩網膜厚の推移(FAS)図.3最高矯正視力の推移(FAS)平均値±標準偏差.***:p<0.001,対応あるCt検定.平均値±標準偏差.***:p<0.001,対応あるCt検定.表.8中心窩網膜厚変化量の推移(FAS)評価時期1週後4週後8週後12週後解析対象被験者数C39C35C35C33中心窩網膜厚変化量(μm,平均値C±標準偏差)C.79.5±84.61C.110.3±111.91C.121.5±150.23C.115.3±115.85表.9最高矯正視力変化量の推移(FAS)評価時期1週後4週後8週後12週後解析対象被験者数C39C35C35C33最高矯正視力変化量(改善文字数,平均値±標準偏差)C4.9±7.04C8.4±7.76C10.3±8.32C9.8±8.68Cの推移を図4および図5に示した.前房細胞数の推移については,スクリーニング時に比較していずれの評価時点においても有意な改善がみられた(すべてCp<0.001).前房フレアの推移については,投与後C1日およびC1週では有意な改善がみられなかったものの,投与後C4週,8週,12週においては有意な改善がみられた(すべてp<0.01).C3..安全性a..副作用有害事象のうち被験薬との因果関係が否定できないものを副作用とし,結果を表10に示した.投与後C12カ月までに発現した副作用はC40例中C12例(30.0%)であり,発現率C5.0%以上の副作用は,眼圧上昇C6例(15.0%),血中コルチゾール減少C4例(10.0%),水晶体混濁C2例(5.0%)であった.血中コルチゾール減少については,いずれも軽度および投与初期の一過性の発現であり処置なしで回復した.投与後C12週以内に有害事象が発現し,中止に至った被験者について,いずれも治験薬との因果関係は認められなかった.ニング評価時期図.4前房細胞数の推移(FAS)平均値±標準偏差.###:p<0.001,Wilcoxonの符号付順位和検定.表.10副作用一覧器官別大分類(SOC)発現率基本語(PT)発現例数(%)解析対象被験者数C40眼障害結膜出血C1C2.5眼痛C1C2.5水晶体混濁C2C5.0網膜出血C1C2.5視力低下C1C2.5眼圧上昇C6C15.0臨床検査血中コルチゾール減少C4C10.0血中ブドウ糖増加C1C2.5血中トリグリセリド増加C1C2.5CMedDRA/Jver.18.1Cb..眼圧上昇に関する評価眼圧上昇が認められたC6例の内訳は,24CmmHg以上C30mmHg未満がC3例,30CmmHg以上がC2例,眼圧上昇の程度不明がC1例であった.投与から眼圧上昇発現日までの期間は56.0(8.98)日[平均値(最小値.最大値),以下同様]であり,眼圧上昇の持続期間はC194.5(28.345)日であった.6例のうち,無処置で消失したC1例を除くC5例では眼圧下降薬の点眼または内服により転帰は消失または軽快となり,ろ過手術などの外科的処置に至った症例はみられなかった.Cc..水晶体混濁に関する評価水晶体混濁の進展が認められたC2例の投与から混濁の進展が認められるまでの期間は,231.5(218およびC245)日[平均(最小値および最大値)]であった.WHO分類7)を用いた進展段階判定では,それぞれ混濁なしまたは軽度からC1段階の進展であった.これらC2例については白内障手術が施行され,1例は入院を伴う白内障手術のため重篤な副作用と判断スクリー1日後1週後4週後8週後12週後ニング評価時期図.5前房フレアの推移(FAS)平均値±標準偏差.##:p<0.01,Wilcoxonの符号付順位和検定.された.手術後の転帰は消失であった.CIII考察非感染性ぶどう膜炎の原因は,Behcet病,Vogt-小柳-原田病,サルコイドーシスなど,多くの場合が全身疾患と関連しており1),自己免疫反応などにより産生された炎症性因子が血液を介してぶどう膜組織に到達し,眼内炎症を惹起しているものと考えられる.ぶどう膜炎の遷延により,眼内にサイトカインなどを産生する炎症細胞の浸潤に加え,壊死細胞や滲出液が貯留する.とくに黄斑部には滲出液が生じやすく,大部分は中心窩周囲の内顆粒層と外網状層に滲出液が貯留し,.胞様黄斑浮腫となることが多い.黄斑浮腫は原疾患によって発生頻度や性状が異なることが知られているが,たとえばCBehcet病ではびまん性黄斑浮腫または.胞様黄斑浮腫を生じる可能性がある.TAには炎症性物質の産生抑制作用のほか,血管透過性亢進抑制および血液網膜関門の破綻を改善する作用機序があり,ぶどう膜炎に併発する黄斑浮腫に対しても有効であると考えられている8,9).TAの黄斑浮腫治療としては,2001年にCJonas10)が糖尿病黄斑浮腫を対象としてCTA硝子体内投与により浮腫が軽減することを報告して以来,国内外での報告が相つぎ,ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫に対しても多くの報告でCTAのCTenon.下および硝子体内投与の有効性が確認されている11,12).Sugarら13)は非感染性ぶどう膜炎患者にフルオシノロンの眼内インプラント治療を行った結果,中心窩網膜厚がC20%以上改善した患者群では,平均C11.0文字の最高矯正視力の改善を報告している.本治験ではこの報告を参考に中心窩網膜厚の変化量のC95%信頼区間の上限をC.50Cμmとして設定した.その結果,主要評価項目である中心窩網膜厚の変化量は基準を上回る.67.1Cμmの改善を示し,WP-0508STの有効性が確認された.また,最高矯正視力の変化量は,投与後C(140)12週で平均C9.7文字とCETDRS視力表で約C2段階(10文字)に相当する改善が認められ,Sugarら13)の報告と同様,中心窩網膜厚の改善に伴う視力の改善が確認され,その改善値もほぼ同様の結果となった.炎症スコア(前房細胞数,前房フレア)についても有意な改善が認められ,前眼部炎症に対する抑制効果が示された.安全性については,TAの眼内投与におけるおもな副作用として眼圧上昇や水晶体混濁が知られている.Levinら14)はTAのCTenon.下投与における眼圧上昇の発現率はC47眼中9眼(19%)であったことを報告しており,本治験においても同程度の発現頻度であった.もともとぶどう膜炎では,その合併症として眼圧上昇をきたすことがあるため15),WP-0508STの使用に際しては眼圧コントロール不良な患者やステロイドレスポンダーへの投与を避けること,また眼圧上昇の徴候がみられた場合は速やかに眼圧下降薬点眼による治療を行うことなどの十分な注意が必要である.水晶体混濁について吉村ら16)は,TATenon.下投与後C44眼中C8眼(18%)に後.下白内障が認められ,その発症時期は平均で投与後8.8カ月であったと報告している.本治験における水晶体混濁進展時期は,平均で投与後C8.3カ月であり,吉村らの報告と類似していた.このようにCTACTenon.下投与による白内障の発症および進展は,投与から時間が経過した後に認められていることから,WP-0508ST投与後は長期的な経過観察が必要であると考えられる.何らかの病原性微生物によって発症する感染性ぶどう膜炎に対してステロイドを使用することは,炎症の増悪や病巣の拡大など重篤な副作用が懸念されることから17),ぶどう膜炎の診断は慎重に行い,感染性ぶどう膜炎が疑われる場合には安易にCWP-0508STを使用しないことが重要であることはいうまでもない.以上,WP-0508STの非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫の改善効果が確認された.また,視力障害や失明のリスクを考えると,その副作用は十分忍容されるものと考えられ,WP-0508STの本疾患に対する有用性が示された.利益相反:後藤浩,志村雅彦,飯田知弘:カテゴリーCC:わかもと製薬㈱文献1)OhguroN,SonodaKH,TakeuchiMetal:The2009pro-spectiveCmulti-centerCepidemiologicCsurveyCofCuveitisCinCJapan.JpnJOphthalmol56:432-435,C20122)蕪木俊克:ぶどう膜炎の最近の治療.眼科C50:435-443,C20083)蕪木俊克:これからの非感染性ぶどう膜炎の治療戦略.あたらしい眼科34:505-511,C20174)RothovaA,Suttorp-vanSchultenMS,FritsTre.ersWetal:CausesCandCfrequencyCofCblindnessCinCpatientsCwithCintraocularCin.ammatoryCdisease.CBrCJCOphthalmolC80:C332-336,C19965)NussenblattCRB:TheCnaturalChistoryCofCuveitis.CIntCOph-thalmol14:303-308,C19906)JabsCDA,CNussenblattCRB,CRosenbaumCJT:Standardiza-tionCofCuveitisCnomenclatureCforCreportingCclinicalCdata.CResultsCofCtheCFirstCInternationalCWorkshop.CAmCJCOph-thalmol140:509-516,C20057)ThyleforsB,ChylackLTJr,KonyamaKetal:Asimpli-.edCcataractCgradingCsystem.COphthalmicCEpidemiolC9:C83-95,C20028)橋田徳康:ステロイドなどの局所投与(点眼と眼周囲注射).あたらしい眼科34:469-474,C20179)FlomanCN,CZorCU:MechanismCofCsteroidCactionCinCocularin.ammation:InhibitionCofCprostaglandinCproduction.CInvestOphthalmolVisSci16:69-73,C197710)JonasCJB,CSofkerCA:IntraocularCinjectionCofCcrystallineCcortisoneCasCadjunctiveCtreatmentCofCdiabeticCmacularCedema.AmJOphthalmolC132:425-427,C200111)OkadaCAA,CWakabayashiCT,CMorimuraCYCetCal:Trans-Tenon’sCretrobulbarCtriamcinoloneCinfusionCforCtheCtreat-mentofuveitis.BrJOphthalmol87:968-971,C200312)AtmacaCLS,CYalcindaC.FN,COzdemirCO:IntravitrealCtri-amcinoloneacetonideinthemanagementofcystoidmacu-laredemainBehcet’sdisease.GraefesArchClinExpOph-thalmol245:451-456,C200713)SugarCEA,CJabsCDA,CAltaweelCMMCetCal:IdentifyingCaCclinicallymeaningfulthresholdforchangeinuveiticmacu-larCedemaCevaluatedCbyCopticalCcoherenceCtomography.CAmJOphthalmol152:1044-1052,C201114)LevinDS,HanDP,DevSetal:Subtenon’sdepotcortico-steroidCinjectionsCinCpatientsCwithCaChistoryCofCcorticoste-roid-inducedCintraocularCpressureCelevation.CAmJOph-thalmol133:196-202,C200215)蕪城俊克,川島秀俊:ぶどう膜炎併発緑内障における手術の適応・術式の選択・術後処置.あたらしい眼科C21:13-19,C200416)吉村将典,平野佳男,野崎美穂ほか:トリアムシノロン局所投与後の後.下白内障の発症頻度.日眼会誌C112:786-789,C200817)高瀬博:感染性ぶどう膜炎.OCULISTA5:69-77,C2013***