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黄斑部にEpiretinal Proliferation類似の網膜隆起性病変を認めた1例

2018年11月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科35(11):1560.1562,2018c黄斑部にEpiretinalProliferation類似の網膜隆起性病変を認めた1例戸邉美穂*1,2石田友香*1内田南*1大野京子*1*1東京医科歯科大学医学部附属病院眼科*2多摩南部地域病院眼科CARareCaseofEpiretinalProliferation-likeElevatedLesionintheMacularAreaMihoTobe1,2),TomokaIshida1),MinamiUchida1)andKyokoOhno-Matsui1)1)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,TokyoMedicalandDentalUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,TamananbuAreaHospitalCEpiretinalproliferation(ERP)とは,黄斑円孔や分層円孔に伴う増殖性病変である.今回,筆者らは,黄斑円孔や分層円孔の明らかな既往がないCERP類似病変を認めた症例を経験した.症例はC47歳,女性.2010年に左眼の視力低下と歪視を自覚,症状が増悪したためC2015年に東京医科歯科大学医学部附属病院を受診.左眼視力は(0.9),左眼黄斑部に不整形白色病変を認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影検査で病変は後期で淡い過蛍光を呈し,光干渉断層計(OCT)では,周囲の黄斑上膜に一部連なる,内部ほぼ均一の中等度反射を示すCERPに類似した病変を認めた.本症例は,従来報告されているCERPよりも,網膜外層からの増殖組織が硝子体側へ隆起している点で非典型的な症例であった.病変はその後C2年間形態に変化なく,視力も不変であった.CA47-year-oldfemalenoticedvisualobscurationanddistortionofherlefteyein2010andvisitedourhospitalin2015duetoworseningofsymptoms.Herlefteyesightwas0.9.Anirregularlyshapedwhitelesioninthemacu-larregionoftheeyewasobservedinfunduscopy.Fluoresceinangiography(FA)revealedslighthyper.uorescenceatthemacularlesion,indicatedbylatestageFA.Opticalcoherencetomographyrevealedthepresenceofanele-vatedClesionCofChomogenousCmediumCre.ectivity,CwhichChadCadvancedCtoCpartCofCtheCretinaCandCcontinuedCtoCtheCepiretinalmembrane.Thepatienthadnoclearhistoryofexperiencingamacularholeorlamellarhole,andshowedatypicalityinthatthelesionhadelevatedintothevitreousratherthanbeingaprotrusionsimilartoepiretinalpro-liferation.Thelesionhasremainedstableduringthepast2yearsandvisualacuityhasnotchanged.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(11):1560.1562,C2018〕Keywords:黄斑部隆起性病変,網膜上増殖組織,黄斑上膜,分層円孔,グリオーシス.elevatedClesionCofCtheCmaculararea,epiretinalproliferation,epiretinalmembrane,lamellarmacularhole,macularhole,gliosis.CはじめにEpiretinalCproliferationとは,分層円孔,黄斑円孔などの網膜欠損部周囲に認められる網膜上増殖組織で,分層黄斑円孔のC30%,黄斑円孔のC8%に合併するといわれている1).光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で中等度反射を示すが,黄斑上膜(epiretinalmembrane:ERM)よりもCOCTでの輝度がやや低く,厚みを有する点が特徴である1).病理学的にはグリア細胞,網膜色素上皮細胞,硝子体細胞に由来すると考えられている2).合併所見としては,円孔基底部の増殖組織,ellipsoidzoneの欠損,Henle神経線維層の亀裂があり,円孔基底部の増殖組織と結合していることが多いと報告されている1).今回,筆者らは,黄斑部にCepiretinalCproliferation類似の隆起性病変を認めた症例を経験した.黄斑円孔や分層円孔の明らかな既往がなく,従来報告されているCepiretinalprolif-erationよりも,網膜外層からの増殖組織が硝子体側へ隆起している点で非典型的な症例であった.調べた限りで今までそのような報告がなく,今回その所見と経過について報告〔別刷請求先〕戸邉美穂:〒113-8519東京都文京区湯島C1-5-45東京医科歯科大学医学部附属病院眼科Reprintrequests:MihoTobe,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,TokyoMedicalandDentalUniversity,1-5-45Yushima,Bunkyo-ku,Tokyo113-8519,JAPANC1560(112)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(112)C15600910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1画像検査所見a:左眼カラー眼底写真(50°).b:同拡大図.黄斑部に不整形の白色病変を認める.Cc:左眼フルオレセイン蛍光眼底造影写真(後期).黄斑部に組織染による淡い過蛍光を呈する.d.f:左眼病変部のCOCT所見.外顆粒層から硝子体側へ伸展する隆起性病変が認められ,内部不均一な中等度反射を呈し,一部網膜上にまで伸展している(Cd).別の断面のCOCTでは周囲に黄斑上膜を認め,網膜上で隆起性病変が一部黄斑上膜に連なっているように見える(Ce).病変の一部はCellipsoidCzoneにまで達している(Cf).g:左眼病変部のCenfaceOCT所見.黄斑部に円盤状の隆起性病変を認め,耳側と鼻側に一部伸展し,周囲のCERMとの連なりが認められる.Ch:左眼病変部のCOCTangiographyのCenface画像.病変内部には明らかな血流成分は認められない.し,鑑別も含め考察した.CI症例患者:47歳,女性.主訴:左眼視力低下,歪視.現病歴:5年前から左眼の視力低下と歪視を自覚していたが,症状が悪化したため当院を受診した.既往歴:高血圧.家族歴:特記事項なし.初診時所見:視力は右眼=1.2(1.5×+0.25D(cyl.0.75DAx100°),左眼=0.8(0.9×+0.25D(cyl.0.5DAx65°).眼圧は右眼=17CmmHg,左眼=19CmmHg.前眼部と中間透光体に両眼ともに異常認めなかった.眼底は右眼異常なし,左眼は黄斑部に不整形の白色隆起病変を認めた(図1a,b).両眼ともに周辺部には異常を認めなかった.蛍光眼底造影検査では,黄斑部病変はフルオレセイン蛍光眼底造影(.uoresce-inangiography:FA)早期で異常なく,後期で組織染による淡い過蛍光を呈した(図1c).OCTでは黄斑部に内部ほぼ均一の中等度反射を示す辺縁整の不整形隆起性病変を認めた.病変は網膜内から硝子体側に隆起しており,脈絡膜側は一部がCellipsoidzoneまで貫いていた.周囲にはCERMがあり,硝子体側は一部でCERMと連なっていた(図1d~f).CEnCfaceOCTでは隆起性病変は黄斑部に不整形病変として認められ,耳側と鼻側へ一部伸展し,周囲のCERMとの連なっていた(図1g).検眼鏡的にもCOCTでも後部硝子体.離は黄斑部とその周囲には生じていなかった.また,OCTangiographyでは隆起性病変の内部に明らかな血流成分は認められなかった(図1h).その後,無治療でC2年間経過観察をしたが,視力,OCT所見ともに変化がなかった.(113)あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C1561II考按OCTで中等度反射の黄斑上膜に連なる隆起性病変を示す,黄斑部の不整形白色病変を有するC1症例を示した.FAでは淡い組織染を示したが,OCTangigraphyでは内部血流はみられなかった.今回,このような黄斑部隆起性病変の鑑別診断として,腫瘍性,寄生虫感染症,非腫瘍性増殖が考えられた.網膜起源の腫瘍はまれであり,後天性星細胞腫,網膜色素上皮細胞と網膜内細胞の混合性過誤腫,転移性網膜腫瘍,網膜血管腫が挙げられる.後天性星細胞腫は境界明瞭な円形病変を呈し好発部位は乳頭周囲であるため,可能性は低いと考えた.混合性過誤腫は血管蛇行やCOCTで網膜の層構造の乱れを伴うため本症例とは所見が異なっていた.転移性網膜腫瘍や網膜血管腫はやはり無血管野である黄斑に限局した病変を生じる可能性は低いと考えた.つぎに,寄生虫感染症のうち,トキソカラ症は検眼鏡所見やOCT所見が本症例と類似しているが,炎症所見や周囲の浸出斑が認められず,継時的な増悪がないことからも否定的であった.非腫瘍性増殖として,focalpseudoneoplasticCgliosis(特発性のグリア細胞の過形成,通常滲出性変化や網膜牽引を伴わず,増大傾向を認めない3))が鑑別に挙げられ,検眼鏡所見で黄白色病変を示す点は本症例と類似するが,focalpseudoneoplasticCgliosisは辺縁整で円形な病変であること,OCTでシャドーを引くドーム状の隆起を認めること,FAでは後期相で過蛍光を示すことが異なっていた.EpiretinalCproliferationとは,冒頭にも述べたように,黄斑円孔や分層円孔に伴う網膜上増殖組織である.2014年にPangらにより初めて提唱され1),合併所見としては,円孔基底部の増殖組織,ellipsoidzoneの欠損,Henle神経線維層の亀裂があり,円孔基底部の増殖組織と結合していることが多いと報告されている1).Laiらは,epiretinalCprolifera-tionを伴う黄斑円孔が自然閉鎖後,網膜上増殖組織と網膜隆起性病変が残存したという報告4)をしているが,OCT所見が本症例と類似しており,上記の除外診断と合わせて,本症例もCepiretinalCproliferation類似の病変と診断した.なお,FA所見に関しては,既報の論文で報告はなかったため比較はできなかった.本症例は,高輝度病変が分層円孔にはまり込んでいるような形状をしており,視力低下の既往がないことからも黄斑円孔よりも分層円孔が過去に生じていた可能性が高いと思われた.本症例では既報のCepiretinalCproliferationに比べ,合併所見としての網膜外層からの増殖組織が硝子体側まで過剰に隆起している点が非典型的であった.EpiretinalCproliferationは,病理学的にはグリア細胞の増生によるグリオーシスと考えられている5)が,本症例では後部硝子体.離が生じていなかったため後部硝子体膜沿いにグリア細胞増殖が進み,網膜の新生血管のように後部硝子体膜を足場にさらに細胞増殖が進行することで,隆起性病変が形成されたのではないかと推測した.EpiretinalCproliferationは網膜上膜とは異なり,収縮などによる視機能の悪化や急激な増殖の可能性は低く,5年間の経過観察でC97%に形態学的変化を認めなかったとの報告がある1).本症例でも同様にC2年間,OCT所見に変化なく,視力低下や歪視の増悪も認めていない.今回はC1例報告であり経過観察期間も短いため,所見の経時的変化や長期予後については不明であり,今後多数例での長期観察の検討が必要と思われる.文献1)PangCE,SpaideRF,FreundKB:Epiretinalproliferationseeninassociationwithlamellarmacularholes:adistinctclinicalentity.RetinaC34:1513-1523,C20142)KaseS,SaitoW,YokoiMetal:Expressionofglutaminesynthetaseandcellproliferationinhumanidiopathicepiret-inalCmembrane.BrJOphthalmolC90:96-98,C20063)ShieldsJA,BianciottoCG,KivelaTetal:Presumedsoli-taryCcircumscribedCretinalastrocyticCproliferation:theC2010JonathanW.WirtschafterLecture.ArchOphthalmolC129:1189-1194,C20114)LaiCTT,CChenCSN,CYangCM:EpiretinalCproliferationCinClamellarmacularholesandfull-thicknessmacularholes:CclinicalandsurgicalC.ndings.GraefesArchClinExpOph-thalmolC254:629-638,C20155)PangCE,MaberleyDA,FreundKBetal:Lamellarhole-associatedepiretinalproliferationincomparisontoepireti-nalmembranesofmacularpseudoholes.RetinaC36:1408-1412,C2016C***(114)