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1日使い捨てコンタクトレンズ「バイオトゥルー®ワンデー」装用臨床試験

2015年3月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科32(3):449.458,2015c1日使い捨てコンタクトレンズ「バイオトゥルーRワンデー」装用臨床試験宮本裕子*1稲葉昌丸*2佐野研二*3東原尚代*4伏見典子*5小玉裕司*6*1アイアイ眼科医院*2稲葉眼科*3あすみが丘佐野眼科*4ひがしはら内科眼科クリニック*5フシミ眼科クリニック*6小玉眼科医院ClinicalStudyoftheDailyDisposableContactLens“BiotrueRONEdaylenses”YukoMiyamoto1),MasamaruInaba2),KenjiSano3),HisayoHigashihara4),NorikoFushimi5)andYujiKodama6)1)AiaiEyeClinic,2)InabaEyeClinic,3)AsumigaokaSanoEyeClinic,4)HigashiharaInternalandEyeClinic,5)Clinic,6)KodamaEyeClinicFushimiEye視力補正を目的として新しく開発された1日使い捨て非球面ソフトコンタクトレンズ「バイオトゥルーRワンデー」(ボシュロム・ジャパン社)の安全性と有用性を評価するために臨床試験を行った.近視矯正を必要とする81例162眼を対象に適切な試験レンズを処方し,試験レンズによる視力検査,細隙灯顕微鏡検査,フィッティング検査を実施し,自覚症状の確認と見え方や装用感などに関するアンケート調査を行った.その結果,全期間を通じて試験レンズによる矯正視力は1.0以上と良好であった.試験レンズ装用中に重篤な合併症は認めなかった.自覚症状については,試験参加前に使用していたレンズと比較し,有意に初期装用感が良好な結果が得られた.また,アンケート調査の結果からは装用感,見え方,取り扱いに対する満足度が高かった.試験レンズは近視を矯正する目的において良好な視力が得られ,安全性ならびに被験者の満足度からも,臨床上有用であると考える.AclinicalstudywasconductedtoevaluatethesafetyandefficacyofBiotrueRONEdaylenses(Bausch&LombIncorporated),anewlydevelopeddailydisposableasphericcontactlensforthecorrectionofmyopia.Inthisstudy,162eyesof81myopiapatientswerefirstexaminedbyvisualacuity(VA)testingandslit-lampbiomicroscopy,andthenfittedwiththestudylens.Postfitting,eachpatientansweredasurveyquestionnairetoassesssubjectivesymptoms,qualityofvision,andthelevelofcomfortwhilewearingthelens.TheresultsshowedthatVAwas.1.0throughoutthestudyperiod.Inaddition,lensstabilitywasgoodandnoseriouscomplicationswerereported.Asforthesubjectivesymptoms,thesurveyresultsshowedthatincomparisonwiththelenseachpatienthadusedpriortoenteringthestudy,thestudylensreceivedahighsatisfactionratingintermsofwearingcomfort,qualityofvision,andeaseofhandlingthelens.Inconclusion,BiotrueRONEdaylenseswerefoundtobebothsafeandeffectiveforcorrectingmyopiaandachievinggoodVA,withahighsatisfactionratingreportedbyallpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(3):449.458,2015〕Keywords:近視矯正,非球面レンズ,臨床試験,1日使い捨てコンタクトレンズ.myopiacorrection,asphericlens,clinicalstudy,dailydisposablecontactlens.はじめにシリコーンハイドロゲルレンズは,従来素材のハイドロゲルレンズに比較して酸素透過性が高く,次世代のレンズとも評され,今では多種類のレンズが普及してきている.しかし,なかにはレンズの硬さのために装用感に満足できず,従来素材のハイドロゲルレンズを好むユーザーも多い.そこで,装用感が良好で酸素透過性の高いレンズがあれば,両方の満足度を向上させうるレンズになると思われる.本試験レンズは,2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)にN-ビニルピロリドン(NVP)を組み合わせて含水率を上げることで酸素透過性を向上させ1,2),角膜とほぼ同等の78%の含水率をもつことにより,装用感を向上させ〔別刷請求先〕宮本裕子:〒558-0023大阪市住吉区山之内3丁目1-7アイアイ眼科医院Reprintrequests:YukoMiyamoto,M.D.,AiaiEyeClinic,3-1-7Yamanouchi,Sumiyoshi-ku,Osaka558-0023,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(139)449 ている3,4).しかしながら,高含水率のソフトコンタクトレンズ(SCL)は乾燥感が増加する5,6)といった点も懸念される.本試験レンズの素材はHEMAやNVPなどの主要なモノマーの他,新たに高分子モノマーを共重合させることで,レンズ内部の湿潤を保つようにしている7).さらに,眼球の球面収差を補正する目的で非球面設計されたレンズデザインとなっている.今回,筆者らは,この1日使い捨て非球面SCL「バイオトゥルーRワンデー」(ボシュロム・ジャパン社)を用いて製造販売承認後に装用臨床試験を行ったので,その結果を報告する.I対象および方法1.対象対象は,年齢18歳以上の者で屈折異常以外にSCL装用に問題となる眼疾患を認めず,試験レンズの度数範囲で処方することが可能であり,さらに,球面レンズおよび円柱レンズの矯正により片眼で0.9以上の遠方視力が得られ,球面SCLを日常装用している者とした.2.方法a.倫理審査委員会およびインフォームド・コンセント本試験は,松本クリニック治験審査委員会の承認を得て実施された.本試験の趣旨を説明し理解した後,自らの意思で参加同意書に署名した者を登録症例とした.臨床試験を実施した医療機関6施設の名称と担当医師を表1に示す.b.試験レンズおよび装用方法試験レンズは,わが国にて販売されている「バイオトゥルーRワンデー」である.試験レンズの物性と規格を表2に示す.使用方法は,1日使い捨てで,終日装用を行った.c.試験レンズの処方試験レンズを処方するにあたってインフォームド・コンセントを取得し,裸眼および矯正視力の測定,自覚的および他覚的屈折検査,角膜曲率半径計測,細隙灯顕微鏡検査など通常のSCL処方に必要な検査を行った.試験レンズの適応であることを確認した後に,トライアルレンズを装着し,フィッティングの観察を行ったうえで,追加補正屈折値を求め,処方レンズの規格を決定した.表1試験実施機関および担当医師医療機関名試験担当医師アイアイ眼科医院宮本裕子稲葉眼科稲葉昌丸あすみが丘佐野眼科佐野研二ひがしはら内科眼科クリニック東原尚代フシミ眼科クリニック伏見典子小玉眼科医院小玉裕司**試験代表医師.d.観察期間と検査項目観察期間は2013年7月8日.10月28日で,定期の検査日は試験開始時,2週間後(装用開始日から14日±7日),1カ月後(装用開始日から28日+10日)の3回で,それ以外は定期外として取り扱った.検査項目は,自覚的屈折検査,他覚的屈折検査,試験レンズによる遠方視力の測定である.さらに細隙灯顕微鏡による前眼部所見の観察を行い,試験レンズのフィッティングを評価し,装用した状態で試験レンズの表面検査を行ったうえで,交換の必要性などを確認した.前眼部所見の判定基準を表3に,フィッティング評価基準を表4に示す.試験レンズ装用による自覚症状については,アンケート調査により,装用感,乾燥感,くもり,かゆみ,充血,見え方(明所・暗所)について,1.10点のなかから該当する自覚症状の程度に合致すると思われる数値に被験者自身で○を記入させた.数値は症状なしまたは非常に良好の場合を1点,症状が非常に強いまたは不良の場合を10点とした.各自覚症状を評価させ,平均値を算出した.装用感,乾燥感はそれぞれ装用直後,日中,夜間の3つの時点での評価を行い,さらに,くもり,かゆみ,充血を試験レンズの装用1カ月後の時点で評価した.また,試験参加前に装用していたSCLについても試験開始前の自覚症状に関して同様の評価を行った.自覚症状の装用感と乾燥感については試験参加前に装用していたSCL(元シリコーンハイドロゲルレンズ装用者,元ハイドロゲルレンズ装用者)別でも検討した.また,試験レンズの乾燥感について他の自覚症状(見え方,装用感)との関連について,試験レンズ装用1カ月後の評価から試験参加前レンズの評価の差を算出して検討した.アンケート調査のその他の項目については,初回検査時に試験参加前レンズの評価と最終検査時に試験レンズの評価を表2試験レンズの物性と規格項目物性・規格使用方法材質(USAN*1)FDA*2分類1日使い捨てnesofilconAグループII終日装用酸素透過性係数(Dk値)42×10.11(cm2/sec)・(mLO2/mL×mmHg)含水率78%度数範囲.1.00D..6.00D(0.25Dステップ).6.50D..8.00D(0.50Dステップ)ベースカーブ8.6mm直径14.2mm中心厚0.10mm(.3.00D)レンズデザイン非球面デザインレンズカラーライトブルー*1USAN:UnitedStatesAdoptedNames*2FDA:FoodandDrugAdministration450あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015(140) 表3前眼部所見の判定基準項目程度基準0ステイニングなし.角膜上皮1すべての領域で表層に点状のステイニングがごくわずかに認められるが,融合していない.表層の異物によるステイニングも含む.ステイニング2融合,またはびまん性の点状ステイニングがわずかに認められるが,フルオレセインは実質内に達していない.3著明に,または密に融合した点状ステイニングが認められ,フルオレセインがわずかに実質内に達している.4重度の上皮.離またはびらんが認められ,上皮実質が失われている.角膜実質が顕著に,かつ速やかに染色される.0上皮混濁や上皮下混濁がない.正常な透明性.1局所的な上皮混濁や上皮下混濁がわずかに認められる.角膜浮腫2局所または全体的な上皮混濁がかすかながら確かに認められる.3局所または全体的な上皮混濁が著明に認められる.4はっきりした上皮混濁が広範囲に認められて角膜がすりガラス状になる,または無数の水疱が融合している.0顕著な輪部血管アーケードは認められるものの,輪部の外観は正常である.11/4の範囲内で角膜に1.5mm未満の血管新生が認められる.角膜血管新生21/4以上の範囲内で角膜に1.5mm未満の血管新生が認められる.3いずれかの1/4の範囲で角膜に1.5.2.5mmの血管新生が認められる.4広域に角膜に2.5mmを超える血管新生が認められる.0充血は認められない.結膜血管の外観は正常である.11/4の範囲内に極軽度の結膜血管充血が認められる.球結膜充血21/4以上の範囲に軽度の結膜血管充血が認められる.3いずれかの1/4の範囲に顕著な結膜血管充血が認められる.4広域に顕著な結膜血管充血が認められる.0眼瞼結膜の外観は正常でベルベット状をしている.乳頭はない.眼瞼結膜乳頭増殖1結膜表面のなめらかさがやや失われている.2結膜表面のなめらかさがやや失われている.直径1.0mm未満の乳頭が認められる.3結膜表面のなめらかさが明らかに失われている.直径1.0mm未満の乳頭が認められる.4直径1.0mmを超える巨大乳頭が局所または全体に認められる.0角膜浸潤なし.1無症状の単発の浸潤が認められる.角膜浸潤2充血および何らかの自覚症状を伴った単発または多発の浸潤が認められる.3何らかの角膜異常と充血を伴った単発または多発の浸潤が認められる.4角膜実質に及ぶ染色と充血を伴った単発または多発の浸潤が認められる.表4フィッティングの評価基準項目分類安定位置中央上方下方耳側鼻側動きルーズノーマルタイトその他の所見所見の有無(有の場合の所見)球結膜の圧迫レンズのエッジの浮き上がり(141)あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015451 表5アンケート調査項目(満足度)設問内容・容器からの取り出しやすさ・表裏のわかりやすさ・つけ外しのしやすさ・レンズの携帯性・暗所または薄暗い所でのくっきり感・汚れにくさ・総合的な満足度表5に示す各設問について,「非常に満足している」「やや満足している」「どちらでもない」「あまり満足していない」「まったく満足していない」の5段階で評価を行い,評価の上位2段階(非常に満足している,やや満足している)の合計を算出した.同様に装用感,乾燥感,見え方を表6に示す設問について,「非常にそう思う」「そう思う」「ややそう思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」「まったく思わない」の6段階で最終検査時に評価を行い,上位3段階(非常にそう思う,そう思う,ややそう思う)の合計を算出した.さらに,うるおいや装用感について,「非常に実感した」「実感した」「やや実感した」「あまり実感しない」「実感しない」「まったく実感しない」の6段階で最終検査時に評価を行い,上位3段階(非常に実感した,実感した,やや実感した)の合計を算出した.II結果1.症例a.年齢と性別年齢は18.52歳(29.2±7.9〔平均値±標準偏差〕歳),性別は男性21例42眼(25.9%),女性60例120眼(74.1%)の計81例162眼であった.b.中止症例および解析対象症例試験途中で中止(脱落)となった症例は2例であった.そのうち1例は,仕事が多忙になったなどの被験者自身の意思によって試験の継続を希望しなかった.もう1例は,装用20日目に試験レンズを外すときに滑って外しにくかったことから取り扱いが不安との理由で,いずれも被験者の意思によって中止となった.上記の2例4眼を除いた79例158眼を解析対象症例としたが,細隙灯顕微鏡所見および有害事象については全症例を対象として集計した.なお,2週間後および1カ月後に,観察期間が規定範囲日外のため定期外として取り扱った症例が各2例あった.c.対象者の自覚的屈折値試験開始時に行った自覚的屈折検査の結果,近視度数が.3.00..5.75Dの例が158眼中75眼でもっとも多かった.一方,乱視度数は.0.25D以下の例が158眼中109眼でも452あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015表6アンケート調査項目(総合的評価)設問内容・快適な装用感(装用直後)・快適な装用感(日中)・快適な装用感が1日中持続・眼の乾燥が軽減・見え方が鮮明でクリア(日中)・見え方が鮮明でクリア(夜間)・見え方が1日中安定・レンズ装着後の指からの離れやすさっとも多かった(図1).2.処方レンズの規格と試験レンズによる視力試験レンズ装用時の視力は図2のごとく,装用開始時から,2週間後および1カ月後で変化もなく良好な視力が保持されていた.また,検眼レンズによる追加矯正視力においても同様の結果が得られ,常に良好な視力が得られた.3.試験レンズの平均装用時間各受診日に聴取した試験レンズの平均装用時間は,最短8.5時間から最長18時間(平均値13.9時間)であった.10時間未満が1.3%,10時間以上14時間未満が38.3%,14時間以上が60.4%であった.4.試験レンズのフィッティング試験開始時,1週間後,1カ月後,定期外検査の累積数474眼について,表4の評価項目に従い,試験レンズの安定位置および動きを観察した.表7に示すように,試験レンズの安定位置は,中央が456眼(96.2%)ともっとも多く,次に下方7眼(1.5%),やや下方5眼(1.1%),上方,下方耳側,耳側はごくわずかであった.動きは,ほとんどの症例467眼(98.6%)がノーマルで,ルーズな例や,タイトな例はごくわずかであった.5.試験レンズの表面検査診察日に,細隙灯顕微鏡で試験レンズを装用したまま汚れとキズの状況を確認した.316枚中313枚(99.1%)は正常であった.汚れは3枚(0.9%)認めたが,キズを認めた例はなかった(表8).6.試験レンズの交換試験レンズの処方交換を行ったものは,累積316眼中10眼(3.2%)で,2週間後にのみ発生し,理由として遠方視力不良が6眼(1.9%),近方視力不良が2眼(0.6%),眼精疲労が2眼(0.6%)であった.7.細隙灯顕微鏡による前眼部所見試験開始時の前眼部所見として,角膜上皮ステイニングが26眼ともっとも多く,角膜血管新生,球結膜充血が2眼,上眼瞼結膜乳頭増殖が14眼,その他(角膜瘢痕2眼,pigmentedslide1眼,眼瞼結膜充血1眼,上眼瞼結膜傷跡1眼)が認められた(表9).しかし,いずれも担当医が試験レンズ(142) (眼)乱視度数:±0.00~-0.25D視力:試験レンズによる視力(平均値):検眼レンズによる追加矯正視力50403020100395147■:-0.50~-1.00D26223105近視度数-0.50~-2.75D-3.00~-5.75D-6.00D以上■:-1.25D以上1.331.371.35n.s.n.s.1.01.181.201.21Control0.1装用開始2週間後1カ月後158眼154眼154眼図1自覚的屈折値図2試験レンズによる視力ANOVADunnett,n.s.:notsignificant.平均値は小数視力をlogMAR(logarithmicminimumangleofresolution)視力に変換して平均値を算出した後小数視力に再度変換した値である.表7フィッティング検査眼(%)安定位置動き中央456(96.2)下方7(1.5)やや下方5(1.1)上方3(0.6)下方耳側2(0.4)耳側1(0.2)ノーマルルーズタイト467(98.6)4(0.8)3(0.6)合計474(100.0)合計474(100.0)表8試験レンズの表面検査枚(%)検査結果2週間後1カ月後定期外検査合計正常1521538313(99.1)汚れ213(0.9)キズ0(0.0)合計1541548316(100.0)表9細隙灯顕微鏡検査による前眼部所見眼(%)検査眼数試験開始時2週間後1カ月後定期外検査前眼部異常所見16215415812無118(72.8)116(73.4)116(75.3)8(66.7)程度角膜上皮ステイニング126(16.0)19(12.0)20(13.0)1(8.3)角膜血管新生12(1.2)2(1.3)2(1.3)球結膜充血12(1.2)3(1.9)21(8.3)上皮浮腫1上眼瞼結膜乳頭増殖114(8.6)14(8.9)12(7.8)2(16.7)その他5(3.1)6(3.8)6(3.9)1(8.3)重複記載あり.所見のない項目は省略した.その他:角膜瘢痕,pigmentedslide,眼瞼結膜充血,上眼瞼結膜傷跡など.の装用が可能であると判断し,本試験が開始された.観察期8.アンケート調査(自覚症状)間中においても,重篤な異常所見は認められなかった.有害a.装用感,乾燥感,くもり,かゆみ,充血,見え方事象は角膜瘢痕と麦粒腫の2例で,角膜瘢痕の1例1眼は充(明所/暗所)について血と痛みによって被験者自身が一時レンズを外し,数日後受試験レンズ装用による装用感,乾燥感,くもり,かゆみ,診した際に新たに角膜瘢痕を認めたもので医師の指示で1日充血,見え方(明所/暗所)について,被験者が回答した点数だけ装用を一時中止したが,試験中止には至らなかった.の平均値(点)で各々を検討した.装用感については,装用(143)あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015453 平均値(点)8:試験参加前レンズ2.442.432.432.97:試験レンズ1カ月後76543.163*21.9210装用開始日中夜間症例数777776図3アンケート調査(自覚症状)─装用感(全被験者)1.10点,1:非常に良好,10:非常に不良.Pairedt-test,*:p<0.05.平均値(点)くもりかゆみ充血2.362.362.001.992.081.91:試験レンズ1カ月後:試験参加前レンズ543210図5アンケート調査(自覚症状)─くもり,かゆみ,充血(全被験者)(n=77例).1.10点,1:症状なし,10:非常に強い.Pairedt-test,n.s.:notsignificant.直後において試験参加前に使用していたレンズと試験レンズとの間に有意差が認められた(図3).乾燥感については装用直後,日中,夜間ともに,両者間に有意差は認められないものの,期間を通して試験レンズのほうが良いという傾向がみられた(図4).くもり,かゆみ,充血の平均値(点)に大きな差はなく,見え方(明所/暗所)の平均値(点)に差はあるものの両者間に有意差は認められなかった(図5,6).b.試験参加前に使用していたCL別の装用感と乾燥感装用感と乾燥感について,元ハイドロゲルレンズ装用者(44例88眼)と元シリコーンハイドロゲルレンズ装用者(33例66眼)とに分けて検討した結果,元ハイドロゲルレンズ装用者における装用感については,図7のごとく装用直後において本試験レンズのほうが試験参加前に使用していたレンズより有意に良好という結果が得られた.元シリコーンハイ平均値(点):試験参加前レンズ82.272.843.273.72:試験レンズ1カ月後7654.204321.9510装用開始日中夜間症例数777776図4アンケート調査(自覚症状)─乾燥感(全被験者)1.10点,1:症状なし,10:非常に強い.Pairedt-test,n.s.:notsignificant.平均値(点)見え方(明所)見え方(暗所)1.922.172.142.42:試験参加前レンズ5:試験レンズ1カ月後43210図6アンケート調査(自覚症状)─見え方(明所/暗所)(全被験者)(n=77例).1.10点,1:非常に良好,10:非常に不良.Pairedt-test,n.s.:notsignificant.ドロゲルレンズ装用者では,装用直後は良好であったが,日中,夜間にかけては試験参加前に使用していたレンズのほうが良好であった(図8).また,乾燥感についても,元ハイドロゲルレンズ装用者では,日中,夜間において有意に本試験レンズのほうが良好という結果が得られたが(図9),元シリコーンハイドロゲルレンズ装用者では装用直後から日中,夜間で試験参加前に使用していたレンズと大きな差は認められなかった(図10).c.乾燥感と他の自覚症状との関係乾燥感と他の自覚症状(見え方,装用感)との関係について検討したところ,乾燥感と見え方は相関しており(図11),乾燥感と装用感については,さらに強い相関を示した(図12).454あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015(144) 平均値(点)2.452.202.592.74:試験参加前レンズ:試験レンズ1カ月後876543.383*21.8610装用開始日中夜間症例数444443図7アンケート調査(自覚症状)─装用感(元ハイドロゲルレンズ装用者)1.10点,1:非常に良好,10:非常に不良.Pairedt-test,*:p<0.05.平均値(点)8**2.572.803.823.56:試験参加前レンズ:試験レンズ1カ月後7654.58**4322.0710装用開始日中夜間症例数444443図9アンケート調査(自覚症状)─乾燥感(元ハイドロゲルレンズ装用者)1.10点,1:症状なし,10:非常に強い.Pairedt-test,**:p<0.01.9.アンケート調査(その他)表5の設問について回答した結果を図13に示す.試験最終日である1カ月後に「非常に満足している」と「やや満足している」と回答した割合を検討したところ,試験参加前レンズと1カ月後の結果では,表裏のわかりやすさおよび汚れにくさについての満足度は向上したが,つけ外しのしやすさと総合的な満足度は低下した.表6の設問について回答した結果を図14に示す.「非常にそう思う」「そう思う」および「ややそう思う」と回答した割合を検討したところ,快適な装用感(装用直後)が97.4%ともっとも高く,レンズ装着後の指からの離れやすさが96.1%,見え方が鮮明でクリア(日中)が93.5%,快適な装用感(日中)が90.0%で,非常に高平均値(点)82.422.732.21:試験参加前レンズ:試験レンズ1カ月後76543.2732.8822.0010装用開始日中夜間症例数333333図8アンケート調査(自覚症状)─装用感(元シリコーンハイドロゲルレンズ装用者)1.10点,1:非常に良好,10:非常に不良.Pairedt-test,n.s.:notsignificant.平均値(点)81.882.912.55:試験参加前レンズ:試験レンズ1カ月後7653.9443.70321.7910装用開始日中夜間症例数333333図10アンケート調査(自覚症状)─乾燥感(元シリコーンハイドロゲルレンズ装用者)1.10点,1:症状なし,10:非常に強い.Pairedt-test,n.s.:notsignificant.い評価が得られた.うるおいや良好な装用感を実感したかどうかについては,「非常に実感した」「実感した」「やや実感した」と回答した割合を検討したところ,83.1%の被験者が実感しており,高い評価が得られた(図15).III考察多施設臨床試験の結果,今回の試験レンズの安全性という面においては,中止に至るような重篤な合併症は1例も生じなかった.また,前眼部所見のなかで,試験開始時に角膜上皮ステイニング程度1,球結膜充血,上眼瞼結膜乳頭増殖が認められたが,試験期間を通して発現数は減少していた.角膜瘢痕1例1眼が副作用としてあげられたが,被験者自身が(145)あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015455 増加増加1011221107118161981121684121211111553511111112211121142r=0.799p<0.00011050-5-101050-5-10改善装用感悪化221529731r=0.518p<0.0001116121121111121113517434221216212113322115乾燥感乾燥感0-5-10-10-50510改善見え方悪化図11アンケート調査(自覚症状)─乾燥感と見え方の関係図12アンケート調査(自覚症状)─乾燥感と装用感の関係n=153例(日中77例,夜間76例).n=153例(日中77例,夜間76例).夜間と暗所,日中と明所を対応させた.夜間と暗所,日中と明所を対応させた.プロット内の数字は同じ値の個数を表す.プロット内の数字は同じ値の個数を表す.0%20%40%60%80%100%容器からの取り出しやすさ表裏のわかりやすさつけ外しのしやすさレンズの携帯性暗所または薄暗い所でのくっきり感汚れにくさ総合的な満足度31292125321242519221823835333333034302931315045334282829181423771210101122416147988105310334611125図13アンケート調査(その他)─満足度(全被験者)上段:試験参加前レンズ(n=79例).下段:試験レンズ(n=77例).:非常に満足している,:やや満足している,:どちらでもない,:あまり満足していない,:まったく満足していない.グラフ内の数値は症例数.充血と痛みにより一時レンズを外し,数日後の受診時に周辺次に,有用性という面においては,装用直後の装用感が試部角膜浸潤後の瘢痕が疑われたごく軽度の角膜瘢痕を新たに験前に使用していたレンズと比較して統計学的に有意に良好認めたという例で,角膜の周辺部にあり,視力に影響するこという結果が得られた.ハイドロゲル素材の長所は装用感のともなかった.医師の指示で1日の一時休止があったが,そ良さであるが,含水率78%である試験レンズは元ハイドロの後試験レンズを再装用した.眼科医の管理のもと安全に使ゲルレンズ装用者の参加前レンズと比較しても装用感が良好用できるレンズであると考えられる.であることが明らかとなった.乾燥感については,元ハイド456あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015(146) 図14アンケート調査(その他)─総合的評価(全被験者):非常にそう思う,:そう思う,:ややそう思う,:あまりそう思わない,:そう思わない,:まったく思わない.グラフ内の数値は症例数.*元シリコーンハイドロゲルレンズ装用者1例無記入あり.341910922121933293026183331313112212518172117102611244129214531111:非常にそう思う,:そう思う,:ややそう思う,:あまりそう思わない,:そう思わない,:まったく思わない.グラフ内の数値は症例数.*元シリコーンハイドロゲルレンズ装用者1例無記入あり.3419109221219332930261833313131122125181721171026112441292145311110%20%快適な装用感(装用直後)快適な装用感(日中)快適な装用感が1日中持続*眼の乾燥が軽減見え方が鮮明でクリア(日中)見え方が鮮明でクリア(夜間)見え方が1日中安定レンズ装着後の指からの離れやすさロゲルレンズ装用者において日中,夜間で有意差を認めた.素材のもつ,高含水でありながら水分の蒸発を抑えられていることが反映されている可能性が考えられる.元シリコーンハイドロゲルレンズ装用者においては装用感,乾燥感とも装用直後は試験レンズのほうが良好であったが,日中,夜間にかけては試験参加前に使用していたレンズのほうが良好であった.乾燥感はさまざまな要因が関与しており,SCLのエッジと球結膜との摩擦で生じる違和感8)やレンズの汚れ,レンズの収縮・変形,レンズの張り付きなどによって生じ,これらの要因の単独あるいは組み合わせが関連している9)と考える.横井ら10)が述べているように涙液量を増やしてSCL上の涙液の菲薄化を防ぐ方法としては,人工涙液の点眼や,球結膜との摩擦を軽減するために,レンズの水濡れ性を改善したSCLを選択することが有用な手段の一つであると同時に,さらに今回,乾燥感と装用感で強い相関を示していたことから,乾燥感と装用感は密接に関係していて,装用感の良いSCLを選択することも有用な手段の一つではないかと考える.アンケート調査(満足度)の結果では,レンズの携帯性,容器からの取り出しやすさ,汚れにくさに関して満足度が高いということがわかった.つけ外しのしやすさについての満足度は他の項目より低く,総合的な満足度では,試験レンズ装用後に5例があまり満足していないと回答したが,これらの5例のアンケート結果でもっとも評価が低かった項目もつけ外しのしやすさであった.試験レンズの表面が滑りやすいとの訴えもあり,たとえば外し方の注意点として利き手の中指で下まぶたを引き下げ,レンズを人差し指でゆっくり黒眼(147)40%60%80%100%実感しないまったく実感しない13(1.3%)(3.9%)あまり実感しない9(11.7%)図15アンケート調査(その他)─うるおいや良好な装用感について(全被験者)(n=77例).グラフ内の数値は症例数(%).より少し下にずらして外すように指導するなど,初めにレンズの取扱いに関して十分な注意を払うことが大切である11,12)と,改めて感じた.さらに,アンケート調査(総合評価)の結果から,快適な装用感(装用直後),レンズ装着後の指からの離れやすさ,見え方が鮮明でクリア(日中),快適な装用感(日中)という項目において非常に高い評価が得られているということが明らかとなっている.快適な装用感については,装用直後,日中における評価が高く,見え方が鮮明でクリアということについて評価されていたことから,非球面設計された光学特性が寄与した可能性も考えられる13.17).あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015457非常に実感した11(14.3%)実感した30(39.0%)やや実感した23(29.9%) 担当医による診察で,レンズの動きが適切であった症例は98.6%という結果が得られている.一般的にハイドロゲル素材は,蛋白質が付着しやすいといわれている18)が99.1%のレンズに見かけ上,汚れは検出されなかった.1日使い捨てという使用方法のため,微生物からの汚染リスクを軽減できる19)と考える.以上のように,本試験レンズは近視眼に対し矯正効果が良好で,自覚的にも高い満足度が得られることが明らかとなった.1日使い捨てコンタクトレンズ「バイオトゥルーRワンデー」は,臨床的に安全であり,今までのSCLで乾燥感を訴えている例や,初めてSCLを使用する例においても非常に有用であると考えられた.文献1)佐野研二:進化するコンタクトレンズ素材─水との共生─.あたらしい眼科24:723-735,20072)佐野研二:コンタクトレンズ素材と汚染性.日コレ誌42:68-73,20003)HoldenBA,MertzGW:Criticaloxygenlevelstoavoidcornealedemafordailyandextendedwearcontactlense.InvestOphthalmolVisSci25:1161-1167,19844)HarvittDM,BonannoJA:Re-evaluationofoxygendiffusionmodelforpredictingminimumcontactlensDk/tvaluesneededtoavoidcornelanoxia.OptomVisSci76:712-719,19995)MaruyamaK,YokoiN,TakamataAetal:Effectofenvironmentalconditionsonteardynamicsinsoftcontactlenswears.InvestOphthalmolVisSci45:2563-2568,20046)KojimaT,MatsumotoY,IbrahimOMetal:Effectofcontrolledadversechamberenvironmentexposureontearfunctioninsiliconhydrogelandhydrogelsoftcontactlenswearers.InvestOphthalmolVisSci52:8811-8817,20117)LinhardtJG,SalamoneJC,AmmonDM,Jretal:Polymerizablesurfactantsandtheiruseasdeviceformingcomonomers.USPatent8,197,841.2012-06-128)濱野孝,光永サチ子,小谷摂子ほか:コンタクトレンズ装用に起因する「乾燥感」とその症状の調査.眼科49:183-190,20079)小玉裕司:乾燥予防ワンデー使い捨てコンタクトレンズ.あたらしい眼科24:717-712,200710)横井則彦:ソフトコンタクトレンズ装用時の眼乾燥感のメカニズム.日コレ誌51:補遺S33-S55,200911)東原尚代,稲富勉:コンタクトレンズと眼鏡Q&A「コンタクトレンズ装用による角膜上皮障害について教えてください」.あたらしい眼科20(臨増):1160-118,200312)伏見典子,豊嶋由美子,星美穂ほか:ソフトコンタクトレンズ装用者にみられる角膜ステイニグの発生調査.日コレ誌55:39-44,201313)MorganPB,EfronN:Comparativeclinicalperformanceoftwosiliconehydrogelcontactlensesforcontinuouswear.ClinExpOptom85:183-192,200214)植田喜一,永井浩一:頻回交換型非球面ソフトコンタクトレンズの使用経験.臨眼58:1785-1791,200415)糸井素純:前面非球面デザインの効用.日コレ誌48:S1-S6,200616)植田喜一,稲葉昌丸,岩崎直樹ほか:2週間頻回交換シリコーンハイドロゲルレンズ「メダリスト2ウィークSH」の臨床試験.日コレ誌55:266-273,201317)宮本裕子,稲葉昌丸,梶田雅義ほか:非球面頻回交換乱視用シリコーンハイドロゲルレンズの臨床試験.あたらしい眼科31:145-155,201318)佐野研二:FDA分類とケア.日コレ誌47:284-286,200519)稲葉昌丸,佐野研二,濱野孝:コンタクトレンズによる眼科救急の実態.日コレ誌49:84-88,2007***458あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015(148)