《原著》あたらしい眼科30(8):1181.1184,2013c25ゲージ黄斑円孔手術におけるアキュラスRとコンステレーションRの比較安藤友梨田中秀典谷川篤弘桜井良太堀口正之藤田保健衛生大学医学部眼科学教室PerformanceComparisonofAccurusRandConstellationRin25-GaugeMacularHoleSurgeryYuriAndo,HidenoriTanaka,AtsuhiroTanikwa,RyotaSakuraiandMasayukiHoriguchiDepartmentofOphthalmology,FujitaHealthUniversitySchoolofMedicine目的:アキュラスRとコンステレーションR(ともにアルコン社)を25ゲージ黄斑円孔手術において比較することを目的とした.方法:特発黄斑円孔(stage3)38例を対象として,アキュラスRとコンステレーションRを用いて手術を行い,水晶体核乳化吸引時間(PEA),水晶体皮質吸引時間(I/A),硝子体.離作製時間(PVD),硝子体切除時間(VIT),液-空気置換時間(FAX),総手術時間をビデオより計測した.アキュラス群(A群)は20例,コンステレーション群(C群)は18例であり,角膜曲率半径,眼軸長,年齢に有意差はなかった.男女比のみに差があった(p=0.02)が,今回測定した手術時間には影響はないと考えた.結果:PEA,I/A,PVDは2群で有意差はなかった.VIT,FAX,総手術時間は有意にC群で短かった.VIT:A群5分38秒±37秒,C群4分11秒±52秒(p<0.01),FAX:A群2分1秒±28秒,C群1分27秒±30秒(p<0.01),総手術時間:A群29分52秒±1分52秒,C群27分31秒±2分35秒(p=0.01).結論:コンステレーションRの硝子体切除装置はカッター,吸引装置を中心として多くの点で改良が加えられており,25ゲージ手術に適した器械であると考えた.Purpose:TocomparetheperformanceofAccurusR(Alcon)andConstellationR(Alcon)in25-gaugemacularholesurgery.SubjectsandMethods:Weoperatedon38patientswithidiopathicmacularhole(stage3),usingeitherAccurusRorConstellationR,andmeasuredthedurationofphacoemulsification(PEA),cortexaspirationwithirrigationandaspiration(I/A),posteriorvitreousdetachmentformation(PVD),vitrectomy,fluid-airexchange(FAE)andtotalsurgerydurationfromthevideofilmofthesurgery.TheAccurusgroupincluded20patientsandtheConstellationgroup18patients.Wefoundnostatisticallysignificantdifferencebetweenthe2groupsincornealcurvatureradius,axiallengthorage,butdidfindasignificantdifference(p=0.02)inrelationtogenderthatseemedtohavelittleeffectonourresults.Results:WefoundnostatisticallysignificantdifferenceindurationofPEA,I/AandPVD,butdidfindasignificantdifferenceinthedurationofvitrectomyandFAE,asfollows:vitrectomy:Accurusgroup:5m38s±37s,Constellationgroup:4m11s±52s,(p<0.01);FAE:Accurusgroup:2m1s±28s,ConstellationRgroup:1m27s±30s(p<0.01).Fortotalsurgery,thedurationwas:Accurusgroup:29m52s±1m52s,Constellationgroup:27m31s±2m35s(p=0.01).Conclusion:OurresultssuggestthatConstellationRimprovestheefficacyofvitreouscuttingandaspiration,whichissuitablefor25-gaugevitrectomy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(8):1181.1184,2013〕Keywords:アキュラスR,コンステレーションR,硝子体手術,黄斑円孔,25ゲージ.AccurusR,ConstellationR,vitrectomy,macularhole,25-gauge.はじめにた1).1980年代には23ゲージの器具が開発され,小児の硝20ゲージの硝子体切除システムは1970年代より標準的な子体手術に使用された2).器具として使用され,結膜切開と強膜創作製が行われてき2002年にFujiiらにより,25ゲージの経結膜無縫合硝子〔別刷請求先〕堀口正之:〒470-1192愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98藤田保健衛生大学医学部眼科学教室Reprintrequests:MasayukiHoriguchi,M.D.,DepartmentofOphthalmology,FujitaHealthUniversitySchoolofMedicine,1-98Dengakugakubo,Kutsukake-cho,ToyoakeCity,Aichi470-1192,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(137)1181体手術(transconunctivalsuturelessvitrectomysurgery)が発表された3).手術時間の短縮や強膜縫合や結膜縫合がないことなどの利点があり,手術後の疼痛が少なく創傷治癒も早いとされた.しかし,20ゲージに比較して多くのメリットがある一方,吸引孔が小さいので,吸引が弱く,硝子体切除や出血の除去などには多くの時間を要するという欠点がある.最近になって,最高5,000cpm(cutsperminute)のカットレイトが可能であり,dutycycleが変更できる器械(コンステレーションR,アルコン社)が発売された.Dutycycle(カッターの吸引口が開いている時間比率)を長くすることにより吸引はよくなり,カットレイトを速くすることにより網膜にかかる牽引は減少する.筆者らは,コンステレーションRとアキュラスR(アルコン社製で,カットレイトが最高2,500cpmであり,dutycycleが不変)を使用し,25ゲージ黄斑円孔手術を行った.手術手技にかかる時間を比較した.I対象および方法この研究はレトロスペクティブに行われた.1.対象2011年1月から2012年4月までに,一人の術者が25ゲ表1対象の背景Accurus群Constellation群p値症例数2018─性別(男性/女性)4/1610/80.02*平均年齢(歳)64.9±7.267.9±5.50.15**平均角膜曲率半径(mm)7.61±0.247.67±0.190.44**眼軸長(mm)23.43±0.9023.48±0.710.85**硝子体切除腔容積(ml)4.87±1.034.68±0.360.48***:c2検定,**:t検定.数値は平均値±標準偏差.ージシステムを用いて白内障硝子体同時手術を行った特発黄斑円孔症例38例(全例stage3)を対象として調査した.手術中に網膜裂孔ができた症例は除外した.除外した症例数はアキュラスRを使用した群(アキュラス群)で3例,コンステレーションRを使用した群(コンステレーション群)で4例であった.それぞれの器械を用いて手術を行った時期は以下のとおりである.アキュラス群:20症例.2011年1月から2012年3月.コンステレーション群:18症例.2012年4月から9月.男女比,年齢,角膜曲率半径,眼軸長は表1に示した.2.手術手技手術前にすべての症例から手術についての同意を得た.球後麻酔を行った後,角膜切開を行い,CCC(continuouscurvilinearcapsulorrhexis)を完成し,水晶体核を乳化吸引し,I/A(灌流・吸引)handpiece(+双手吸引法)4)により皮質を吸引した.25ゲージトロッカーにて3ポートを作製し(クロージャーバルブのないもの),硝子体手術を開始した.カッターにて後部硝子体.離を作製し,OFFISS(opticalfiber-freeintravitrealsurgeysystem)120D5,6)を用いて硝子体を周辺まで除去した.トリアムシノロンにて内境界膜を.離した7).ここで眼内レンズを挿入した.その後に液-空気置換を行い,0.8.1.2mlの100%SF6(六フッ化硫黄)を注入した.PEAとI/A,硝子体切除の器械の設定は表2に示した.3.時間測定方法ビデオをみて手技の時間(水晶体核乳化吸引,皮質吸引,後部硝子体.離作製,硝子体切除,液-空気置換)を測定した.2群間の比較はc2検定とt検定を用いて検定した.p<0.05を有意差ありとした.II結果両群で黄斑円孔は閉鎖した.表2装置の設定Accurus群Constellation群PEAチップストレートストレート灌流圧(cmH2O)7575吸引圧(mmHg)180280I/A灌流圧(cmH2O)7575吸引圧(mmHg)500550硝子体切除灌流圧(mmHg)3535カッターの最大吸引圧(mmHg)600650カットレート(cpm)固定2,5005,000Dutycycle(%)2550FAE灌流圧(mmHg)3030最大吸引圧(mmHg)400450cpm:cutsperminute,dutycycle:吸引孔が開いている時間比率.1182あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(138)NS30:00:Accurus群p=0.01■:Constellation群35:0029:52±1:5227:31±2:352:001:37±0:231:38±0:20NS1:06±0:281:12±0:25時間(分:秒)25:001:4520:00:Accurus群時間(分:秒)1:30■:Constellation群15:001:1510:001:005:000:450:300:00Accurus群Constellation群0:15図3総手術時間の比較0:00水晶体核乳化吸引皮質吸引総手術時間は,コンステレーション群で有意に短かった.図1水晶体核乳化吸引,皮質吸引に要した時間の比較水晶体核乳化吸引時間,皮質吸引時間ともに有意差はなかった.NS:notsignificant.水晶体核乳化吸引時間,皮質吸引時間の結果を図1に示した.水晶体核乳化吸引時間はアキュラス群で1分37秒±23秒,コンステレーション群で1分38秒±20秒であり,有意差はなかった.皮質吸引時間はアキュラス群で1分6秒±28秒,コンステレーション群で1分12秒±25秒であり,有意差はなかった.後部硝子体.離作製時間,硝子体切除時間,液-空気置換時間を図2に示した.後部硝子体.離作製時間はアキュラス群で20秒±13秒,コンステレーション群で22秒±11秒であり,有意差はなかった.硝子体切除時間はアキュラス群で5分38秒±37秒,コンステレーション群で4分11秒±52秒であり,有意にコンステレーション群で短かった(p<0.01).液-空気置換時間は,アキュラス群で2分1秒±28秒,コンステレーション群で1分27秒±30秒であり,有意にコンステレーション群で短かった(p<0.01).総手術時間を図3に示した.アキュラス群で29分52秒±1分52秒,コンステレーション群で27分31秒±2分35秒であり,有意にコンステレーション群で短かった(p=0.01).III考按Rizzoら8)によりstandardcutterとultrahigh-speedcutterの比較が報告され,アキュラスRとコンステレーションRの比較は,柳田ら9)によって行われている.ともに複数の疾患に対して手術を行っており,ultrahigh-speedcutterとコンステレーションの優位性を結論している.筆者らは,stage3の黄斑円孔手術のみを対象とし,裂孔形成などの症例を除外して,手術手技に要する時間を分析した.疾患とstageを限定したほうが,2群の病態の差は少なくなり,より正確な比較が可能であると考えたからである.表1に示したように,2群間で,角膜曲率半径と眼軸長に差はなく,眼p<0.01:Accurus群■:Constellation群5:38±0:376:00硝子体.離作製液-空気置換NS硝子体切除0:20±0:130:22±0:114:11±0:522:01±0:281:27±0:30p<0.01図2硝子体.離作製,硝子体切除,液.空気置換に要した時間の比較5:305:004:304:003:303:002:302:001:301:000:300:00時間(分:秒)後部硝子体.離作製時間は差がなかったが,硝子体切除時間,液-空気置換時間ではコンステレーション群で有意に短かった.NS:notsignificant.(139)あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131183球の大きさにも差がないと推測される.男女比に差があったが,結果に差を及ぼすものではないと考えられる.白内障手術では,核乳化吸引と皮質除去時間に有意差がなかった.両群ともにストレートチップを同様の条件で行っているからであろう.コンステレーションRではKelmanチップなども使用できるので,さらに効率化できる可能性がある.しかし,黄斑円孔手術の白内障手術は,将来の白内障進行に対する予防手術の側面もあり,硬い水晶体核は少ないので差がでにくい可能性もある.硝子体切除時間は,コンステレーション群のほうが有意に短く,これは切除吸引効率の良さを示している.アキュラスRのカッターをはじめ多くの硝子体カッターは,閉鎖は空気圧で行い,開放はバネで行われる.このシステムでは閉鎖するときにバネが収縮するので,空気圧による閉鎖のトルクが減少する.コンステレーションRでは閉鎖も開放も空気圧で行われるので,閉鎖時に空気圧のトルクが減少することが少なくカッターの内刃に伝えられると思われる.このシステムはカットレイトを上げられるのみでなく,カッターの切れを良くすることができるであろう.高いカットレイトと良好な切れは手術者に安心感を与え,硝子体切除のストレスが減少する.コンステレーションRには,IOP(眼圧)コントロールという新しい装置が装備されている.灌流チューブ内圧から眼内圧を推測して,灌流圧を変化させ眼内圧を一定に保持することができる.このシステムにより眼球の虚脱を予防することができる.黄斑円孔手術では,カットを停止してカッターを用いて吸引のみ行う手技,つまり硝子体.離作製に有効である.硝子体.離作製では,視神経乳頭上,あるいは網膜上にカッターを位置し,カットを停止して吸引圧を上げ硝子体を吸引孔に嵌頓させる.つぎに,乳頭から離れる方向にカッターを動かし物理的に硝子体を網膜から.がす.虚脱の危険がないので術者は安心して吸引圧を上昇させることができる.しかし,今回の硝子体.離作製時間には差がなかった.これは吸引口を開放してから吸引をはじめ,硝子体が吸引孔に嵌頓するまでの時間がわずかであるからであろう.さらに,内境界膜.離時にはカットを停止して吸引のみで余剰のトリアムシノロン除去を行う.しかし,注入するトリアムシノロンの量が一定でないので,今回の分析では時間を計測しなかった.液-空気置換の時間は,コンステレーション群で有意に短かった.空気置換時にはIOPコントロールは作動せず,アキュラス群と同じシステムを用いている.空気灌流圧は30mmHgであり,液吸引圧にも大きな差はない.この結果は,コンステレーションRの吸引チャンバーのサイズや吸引カセットなどに多くの工夫がなされているからと思われる.黄斑円孔手術の網膜裂孔の形成に関しては,Rizzoの報告では,standardsystemで12症例中3症例,ultrahighspeedcutterでは11症例中0症例であった.筆者らはアキュラス群で20症例中3例,コンステレーション群で18症例中4例であった.筆者らの手術では,吸引のみによって硝子体.離を赤道部まで作製するため,裂孔の形成がカッターの優劣に左右されにくいと思われる.以上より,コンステレーションRの硝子体切除装置はカッター,吸引装置を中心として多くの点で改良が加えられており,25ゲージ手術の弱点である吸引効率の低さを補うものであると考えた.文献1)O’MallyC,HeintzRMSr:Vitrectomywithanalternativeinstrumentsystem.AnnOphthalmol7:585-588,591598,19752)PeymanGA:Aminiaturizedvitrectomysystemforvitreousandretinalbiopsy.CanJOphthalmol25:285-286,19903)FujiiGY,DeJuanEJr,HumayunMSetal:Initialexperienceusingthetransconjunctivalsuturelessvitrectomysystemforvitreoretinalsurgery.Ophthalmology109:1814-1820,20024)HoriguchiM:Instrumentationforsuperiorcortexremoval.ArchOphthalmol109:1170-1171,19915)HoriguchiM,KojimaY,ShimadaY:Newsystemforfiberopic-freebimanualvitreoussurgery.ArchOphthalmol120:491-494,20026)矢田弘一郎,谷川篤弘,中田大介ほか:手術用顕微鏡OMS800-OFFISSと120D観察レンズを用いた広角観察システムの使用経験.臨眼63:211-215,20097)HorioN,HoriguchiM,YamamotoN:Triamcinoloneassistedinternallimitingmembranepeelingduringidiopathicmacularholesurgery.ArchOphthalmol123:96-99,20058)RizzoS,Genovesi-EbertF,BeltingC:Comparativestudybetweenastandard25-gaugevitrectomysystemandanewultrahigh-speed25-gaugesystemwithdutycyclecontrolinthetreatmentofvariousvitreoretinaldiseases.Retina31:2007-2013,20119)柳田智彦,清水公也:25ゲージ硝子体手術におけるアキュラスRとコンステレーションRの硝子体切除時間の比較.あたらしい眼科29:869-871,2012***1184あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(140)