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増殖糖尿病網膜症に対する25 ゲージ,27 ゲージ 小切開硝子体手術成績の比較

2022年3月31日 木曜日

《第26回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科39(3):350.353,2022c増殖糖尿病網膜症に対する25ゲージ,27ゲージ小切開硝子体手術成績の比較関根伶生重城達哉佐藤圭司四方田涼佐々木寛季向後二郎高木均聖マリアンナ医科大学眼科学教室CComparativeStudyof25-vs27-GaugeVitrectomyforProliferativeDiabeticRetinopathyReioSekine,TatsuyaJujo,KeijiSato,RyoYomoda,HirokiSasaki,JiroKogoandHitoshiTakagiCDepartmentofOphthalmology,St.MariannaUniversitySchoolofMedicineC目的:増殖糖尿病網膜症(proliferativeCdiabeticretinopathy:PDR)に対するC25ゲージ(G)・27CG硝子体手術成績を比較し,27CG硝子体手術の安全性と有効性について検討する.方法:対象はC2012年C12月.2019年C12月に聖マリアンナ医科大学病院にてCPDRに対し単一術者が手術を施行し,6カ月以上経過観察が可能であったC128眼.25CG群とC27CG群に分け,視力,眼圧,手術時間,再手術の有無を後ろ向きに検討した.結果:25G群はC46眼,27G群はC82眼であった.logMAR矯正視力は両群とも術前と比較し,術後C1,3,6カ月で有意に改善が得られたが,各時期において両群間での有意差は認められなかった.手術時間はC25CG群C98.0分,27CG群C80.6分,再手術はC25CG群でC11眼(24%),27G群で8眼(10%)といずれも有意にC27CG群が少なかった(各Cp<0.05).結論:PDRにおいて,27CG硝子体手術の成績はC25CGと同等であったが,再手術が少なく有用である可能性が示唆された.CPurpose:Tocomparativelyexaminethesurgicaloutcomesof25-gauge(G)vs27-Gvitrectomyforprolifera-tivediabeticretinopathy(PDR).Methods:Thisretrospectivestudyinvolved128eyeswithPDRthatunderwentvitrectomybetweenDecember2012andDecember2019.Visualacuity(VA),intraocularpressure,operationtime,andCpostoperativeCcomplicationsCwereCcomparedCbetweenCtheCtwoCgroups.CResults:ThereCwereC46CeyesCinCtheC25-Ggroupand82eyesinthe27-Ggroup.Bothgroupsshowedsigni.cantimprovementinlogarithmofminimalangleofresolution(logMAR)correcteddistanceVA(CDVA)at1-,3-,and6-monthspostoperative.However,nosigni.cantCdi.erenceCinClogMARCCDVACwasCfoundCbetweenCtheCtwoCgroups.CBetweenCtheC25-andC27-GCgroups,Cthemeanoperationtimewassigni.cantlyshorterinthe27-Ggroup(98.0vs80.6minutes,respectively)andthereoperationratewassigni.cantlylowerinthe27-Ggroup(24%Cvs10%,respectively).Conclusion:Thesurgicaloutcomesof27-GvitrectomyforPDRwereequivalenttothoseof25-Gvitrectomy,yetwithashorteroperationtimeandalowerreoperationrate.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(3):350.353,C2022〕Keywords:25ゲージ硝子体手術,27ゲージ硝子体手術,増殖糖尿病網膜症,矯正視力,手術時間.25-gaugevit-rectomy,27-gaugevitrectomy,proliferativediabeticretinopathy,correcteddistancevisualacuity,operation-time.Cはじめに27ゲージ(G)硝子体手術はC2010年にCOshimaらにより開発された1).27CG硝子体手術は従来のC25CGと比較し術後炎症の軽減,創部の早期治癒,切開創を無縫合で終えることが可能であることから,結膜が温存され眼表面の涙液層の安定や術後逆起乱視の低減化により術後早期の視機能改善が得られると考えられている2,3).また,術後の創口閉鎖不全による低眼圧や眼内炎などの術後合併症発生リスクが少なく,安全な手術方法とされている.Mitsuiらは網膜前膜においてC27CGとC25CGを前向きに比較検討し,同等の治療成績を認め,27CGの安全性と有効性を報告している4).さらに裂孔原性網膜.離においても網膜復位率・術後視力・術後眼圧とも〔別刷請求先〕重城達哉:〒216-8511神奈川県川崎市宮前区菅生C2-16-1聖マリアンナ医科大学眼科学教室Reprintrequests:TatsuyaJujo,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,St.MariannaUniversitySchoolofMedicine,2-16-1Sugao,Miyamae-ku,Kawasaki-shi,Kanagawa216-8511,JAPANC350(88)にC27CGはC25CGと同等の成績であったと報告され5),今後も27CG硝子体手術はその有用性から,複雑な疾患まで適応が拡大していくと考えられる.増殖糖尿病網膜症(proliferativeCdiabeticretinopathy:PDR)は新生血管の破綻により硝子体出血をきたし,硝子体手術が必要となることが多々ある.また,線維血管性増殖膜が形成されると硝子体と網膜との間に強固な癒着が生じ,牽引性網膜.離が発生するために術中に多くの処理を要することがある.27CG硝子体カッターはC25CGと比較し開口部が先端にあり,増殖膜と網膜の間隙に滑り込ませるなどして,より繊細な作業を行えるために,PDRにおいてC27CG硝子体手術は有用である可能性が考えられる.そこで今回の目的はCPDRに対し手術を施行したC25G,27G硝子体手術の手術成績を後ろ向きに比較することでPDRにおけるC27CG硝子体手術の安全性と有効性について検討した.CI対象および方法本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会の承認を得たものである.PDRの診断にて手術加療が必要である患者に対し,手術の必要性や合併症の可能性について十分に説明を行い,インフォームド・コンセントを得て,患者と医師が署名した手術同意書を作成したうえで行った.対象はC2012年C12月.2019年C12月に聖マリアンナ医科大学病院にてCPDRに対し硝子体手術を施行され,6カ月以上経過観察が可能であったC128眼.手術は全例同一術者により施行された.術者は眼科歴C20年以上で増殖糖尿病網膜症の手術に豊富な経験をもつ者である.硝子体手術はCConstellationCVisionSystem(AlconCLabo-ratories)を使用した.2012年C12月.2015年C9月の手術は25G硝子体システムを使用し,2015年C10月.2019年C12月の手術はC27CG硝子体システムを使用した.手術は硝子体手術単独または水晶体再建術併用硝子体術を行い,全例で強膜内陥術の併用は行わなかった.手術終了時のタンポナーデは必要に応じ,六フッ化硫黄ガス(SFC6),八フッ化プロパンガス(CC3F8),シリコーンオイル(SO)に置換し手術を終了した.検討項目は術前,術後C1カ月,3カ月,6カ月時の矯正視力と眼圧,再手術の有無,タンポナーデの有無とし,25CG群とC27CG群とに分け,データを収集した.検討方法は小数視力をClogMAR換算し,各群で術前後の視力と眼圧をWelchのCt検定にて比較検討し,各群間での視力と眼圧をMann-WhitneyのCU検定を用いて検討を行った.各群間での再手術の有無とタンポナーデの有無についてはCc2検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.II結果患者背景を表1に示した.25G群はC46眼,27G群はC82眼であった.性別はC25CG群で男性C31眼,女性C15眼であり,27CG群は男性C58眼,女性C24眼であった.平均年齢はC25CG群でC54.6C±14.4,27G群でC56.5C±11.7であった.眼軸長は25G群でC23.6C±1.0Cmm,27CG群でC23.9C±1.3Cmmであった.増殖膜の処理を行った症例数はC25CG群でC33眼,27CG群で47眼であった.術前眼圧はC25G群でC14.3C±2.9CmmHg,27G群でC14.4C±3.5CmmHgであった.術前ClogMAR矯正視力はC25G群でC0.93C±0.60,27CG群でC0.95C±0.68とそれぞれの項目で両群間に有意差は認められなかった(p>0.05).視力の推移を図1に示した.術C1カ月後のClogMAR矯正視力はC25G群でC0.64C±0.48,27G群でC0.65C±0.65,術C3カ月後はC25G群でC0.54C±0.49,27G群でC0.54C±0.50,術C6カ月後ではC25CG群はC0.48C±0.55,27CG群はC0.43C±0.44であり両群ともにベースラインと比較し術C1カ月後から有意な改善を得ることができた(各Cp<0.01).しかし,各時点でのlogMAR矯正視力に両群間で有意差は認められなかった.術後翌日,1,3,6カ月後の眼圧の推移を図2に示した.術後翌日の眼圧はC25G群でC14.9C±7.6CmmHg,27CG群でC15.7±7.4CmmHgであり,いずれの群においても術前眼圧と有意差は認められなかった.術後C1カ月はC25CG群でC13.8C±3.0CmmHg,27CG群でC14.5C±4.2CmmHg,術後C3カ月はC25CG群でC14.3C±3.6mmHg,27G群でC14.6C±3.3mmHg,術後C6カ月は25CG群で13.9C±3.1mmHg,27CG群で15.0C±3.6CmmHgであり,ベースラインと比較して有意差は認められなかった.また,各時点での両群間においても眼圧に有意差は認められなかった.術翌日の低眼圧(<5CmmHg)はC25CG群でC2眼(4.3%),27CG群でC3眼(3.7%)であり,低眼圧発生の割合も有意差は認められなかった(p=0.85).手術方法,タンポナーデ,手術時間,再手術件数について表2に示した.手術方法はC25G群で白内障併用がC27眼,27CG群でC39眼であり,有意差は認めなかった.タンポナーデを行った症例はC25G群でCSFC6がC5眼,CC3F8がC4眼,SOがC6眼であり,27CG群でCSFC6がC9眼,SOがC6眼でタンポナーデを行った割合に有意差は認めなかった.手術時間は25G群でC98.0C±46.1分,27CG群でC80.6C±37.7分と有意に27CG群が短かった.術後C6カ月以内に再手術を要した症例はC25G群でC11眼,27G群でC8眼であり有意にC27G群が少なかった.CIII考按本研究結果においてC25CGとC27CGともに術後矯正視力は術前より有意に改善を得ることができたが,ゲージ間での有意な差は認められなかった.Naruseらは網膜上膜において術表1患者背景25CG群27CG群Cpvalue性別男性(眼)C31C58C0.69女性(眼)C15C24年齢(年)C54.6±14.4C56.5±11.7C0.26眼軸(mm)C23.6±1.0C23.9±1.3C0.10増殖膜処理(眼)C33C47C0.11術前眼圧(mmHg)C14.3±2.9C14.4±3.5C0.43術前ClogMAR矯正視力C0.93±0.60C0.95±0.68C0.42各項目において,両群間に有意差はなかった(p>0.05).C27G25G*27G25G*1.2*16.5****16logMAR矯正視力0.80.60.4眼圧(mmHg)15.51514.51413.5130.212.50pre1day1M3M6Mpre1M3M6M経過期間経過期間図2眼圧の推移図1視力の推移*p>0.05.両群とも術前と比べ術C1,3,6カ月の眼圧に有*p<0.05.両群とも術前と比べて術C1,3,6カ月で有意に意差はなかった.また術前,術後C1日,1カ月,3カ月,6視力は改善していた.また術前,術後1,3,6カ月時点で両カ月において両群間で眼圧の有意差はなかった.群間に視力は有意差を認めなかった.表2術中,術後転帰の比較術式タンポナーデ手術時間(分)再手術C25CGCPEA+IOL+VIT:2C7眼VIT単独:1C9眼CSF6:5眼CC3F8:4眼SO:6眼C98.0±46.18眼C27CGCPEA+IOL+VIT:3C9眼VIT単独:4C3眼CSF6:9眼SO:6眼C80.6±37.711眼p値C0.23C0.07C0.04C0.03各群で術式,タンポナーデの有無に有意差はなかった(p>0.05).手術時間,再手術件数は有意にC27CG群が少なかった(p<0.05).PEA:phacoemulsi.cation,IOL:intraocularClens,VIT:vitrectomy,CSF6:sulfurChexa.uoride,C3F8:per.uoropropane,SO:siliconoil.1カ月後の視力改善はC25CGと比較し,C27CGが早期に得るこであることが示唆された.とができると報告した6).その要因としてはゲージが小さい眼圧は両群間において,各時期で有意差は認められなかっことにより術後炎症が抑えられること,また角膜形態に与えた.また,術翌日の低眼圧の発症率はC25CG群がC4.3%,2C7CGる影響を少なくすることがあげられる.しかし,CNaruseら群がC3.7%であり有意差は認められなかった.CTakashinaらはCPDRにおいてはC25CGとC27CGで視力の改善に有意差はなはC27CGトロカールの斜め穿刺により,C25CGの同様の方法とかったと報告した7).今回の筆者らの結果も同様であり,比較し,術後低眼圧の発症率を低下させたと報告した8).筆PDRにおけるC27CG硝子体手術はC25CGと同等に有用な術式者らの結果では有意差は認められなかったものの,術翌日の眼圧に関してはC27CG群のほうが安定していた.これらより,PDRの硝子体手術においてもC25CGと同様にC27CGにて安定した術後眼圧を得ることができたと考えられた.術中および術後転帰に関しては,両群間でタンポナーデを行った症例数に有意差はなかったが,手術時間,6カ月以内の再手術件数は25CG群と比較しC27CG群が有意に少なかった.硝子体切除効率はC27CGと比較し,ゲージの大きいC25CGのほうが高く,より硝子体処理を短時間で行うことが可能である4,6).本研究は前向き無作為ではないため患者背景の影響は考慮しなくてはならないが,27CGとC25CGで増殖膜の処理を行った症例数に有意差がなかったため,増殖膜の処理の有無による手術時間への影響は少なかったと考えられる.しかし,PDRにおいてC27CG群で有意に手術時間を短縮できた要因としては,27CGカッター,鑷子,剪刀のほうがC25CGと比較し繊細な操作を行うことができるため,増殖膜の処理時間を短縮することができたこと,また術中網膜.離を起こす症例を少なくすることができた可能性があると考えられた.そしてその優位性が再手術の件数を少なくすることができた要因ではないかと考えられた.しかし,各群間での増殖膜の範囲,処理時間の検討を行えていないため今後の検討課題とした.術者のClearningcurveの影響については,手術技術に関して経験豊富な術者が施行したことから,その影響は少ないと考えられる.また,27CG硝子体システム移行後のC3カ月以内の手術成績とそれ以降の手術成績とを比較し,結果の傾向に違いは認められなかったため,その点の影響も少なかったと考えられた.増殖糖尿病網膜症に対するC27CG硝子体手術は従来のC25CGと同等の手術成績を得ることができ,有用な手術方法である可能性が示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)OshimaCY,CWakabayashiCT,CSatoCTCetal:AC27-gaugeCinstrumentsystemfortransconjunctivalsuturelessmicro-incisionCvitrectomyCsurgery.COphthalmologyC117:93-102,C20102)GozawaCM,CTakamuraCY,CMiyakeCSCetal:ComparisonCofCsubconjunctivalCscarringCafterCmicroincisionCvitrectomyCsurgeryusing20-,23-,25-and27-gaugesystemsinrab-bits.ActaOphthalmolC95:e602-e609,C20173)TekinK,SonmezK,InancMetal:EvaluationofcornealtopographicCchangesCandCsurgicallyCinducedCastigmatismCaftertransconjunctival27-gaugemicroincisionvitrectomysurgery.IntOphthalmolC38:635-643,C20184)MitsuiCK,CKogoCJ,CTakedaCHCetal:ComparativeCstudyCofC27-gaugeCvsC25-gaugeCvitrectomyCforCepiretinalCmem-brane.Eye(Lond)C30:538-544,C20165)OtsukaCK,CImaiCH,CFujiiCACetal:ComparisonCofC25-andC27-gaugeCparsCplanaCvitrectomyCinCrepairingCprimaryCrhegmatogenousretinaldetachment.JOphthalmol2018:C7643174,C20186)NaruseCS,CShimadaCH,CMoriR:27-gaugeCandC25-gaugeCvitrectomyCdayCsurgeryCforCidiopathicCepiretinalCmem-brane.BMCOphthalmolC17:188,C20177)NaruseCZ,CShimadaCH,CMoriR:SurgicalCoutcomeCofC27-gaugeCandC25-gaugeCvitrectomyCdayCsurgeryCforCpro-liferativeCdiabeticCretinopathy.CIntCOphthalmolC39:1973-1980,C20198)TakashinaCH,CWatanabeCA,CTsuneokaH:PerioperativeCchangesoftheintraocularpressureduringthetreatmentofepiretinalmembranebyusing25-or27-gaugesuture-lessCvitrectomyCwithoutCgasCtamponade.CClinCOphthalmolC11:739-743,C2017***