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原発開放隅角緑内障に対するサイヌソトミーおよび深層強膜弁切除術併用360°Suture Trabeculotomy Ab Externoの3年成績

2024年8月31日 土曜日

《第34回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科41(8):997.1002,2024c原発開放隅角緑内障に対するサイヌソトミーおよび深層強膜弁切除術併用360°SutureTrabeculotomyAbExternoの3年成績柴田真帆豊川紀子黒田真一郎永田眼科CThree-YearOutcomesof360-SutureTrabeculotomyAbExternowithSinusotomyandDeepSclerectomyforPrimaryOpenAngleGlaucomaMahoShibata,NorikoToyokawaandShinichiroKurodaCNagataEyeClinicC目的:原発開放隅角緑内障(primaryCopen-angleCglaucoma:POAG)に対するC360°CsutureCtrabeculotomyCabexterno(S-LOT)のC3年成績を検討する.対象および方法:永田眼科においてC2016年C1月.2020年C12月にCPOAGに対してCS-LOTを施行した連続症例のうち,緑内障手術既往歴のない白内障同時手術C32眼,単独手術C10眼(有水晶体眼)を対象とした.すべての症例でサイヌソトミーと深層強膜弁切除術を併用した.診療録から後ろ向きに眼圧,緑内障点眼数,眼圧C14・12CmmHg以下C3年生存率,併発症を検討した.結果:白内障同時手術群では術前眼圧C17.5mmHgからC3年後C13.7CmmHgと有意な眼圧下降を認め,14・12CmmHg以下C3年生存率はそれぞれC53.7%,33.6%であった.単独手術群ではC17.5CmmHgからC3年後C12.1CmmHgと有意な眼圧下降を認め,14・12CmmHg以下C3年生存率はそれぞれC60%,30%であった.術後C3Cmmを超える前房出血を白内障同時手術群のC4眼(13%)で認め,1眼は前房洗浄を必要とした.結論:POAGに対するCS-LOTは白内障同時手術・有水晶体眼に対する単独手術とも術後C3年にわたり有意な眼圧下降を認めた.CPurpose:ToCevaluateCtheC3-yearCoutcomesCofC360-degreeCsutureCtrabeculotomyCabexterno(S-LOT)inCpri-maryCopenangleCglaucoma(POAG)patients.CSubjectsandMethods:WeCretrospectivelyCreviewedCtheCmedicalCrecordsCofC42CPOAGCeyesCwithCnoChistoryCofCotherCglaucomaCsurgeryCthatCunderwentCconsecutiveCS-LOTCwithphacoemulsi.cationandintraocularlensimplantation(S-LOT+P+I)(n=32eyes)andS-LOTalone(n=10phakiceyes)atCNagataCEyeCClinic,CNara,CJapanCbetweenCJanuaryC2016CandCDecemberC2020.CAllCpatientsCunderwentCS-LOTCcombinedCwithCsinusotomyCandCdeepCsclerectomy.CWeCinvestigatedCintraocularpressure(IOP)C,CglaucomaCmedications,Csurgicalsuccess(de.nedCasCanCIOPCofC≦14CmmHgCandC12CmmHgCwithCorCwithoutCglaucomaCmedica-tions)C,CandCpostoperativeCcomplications.CResults:InCtheCS-LOT+P+ICgroup,CtheCmeanCIOPCwasCsigni.cantlyCreducedfrom17.5CmmHgto13.7CmmHg,andthesurgicalsuccessratesat3-yearspostoperativewere53.7%(IOP≦14CmmHg)and33.6%(IOP≦12CmmHg)C.CInCtheCS-LOTCaloneCgroup,CtheCmeanCIOPCwasCsigni.cantlyCreducedCfromC17.5CmmHgCtoC12.1CmmHg,CandCtheCsurgicalCsuccessCratesCatC3-yearsCpostoperativeCwere60%(IOP≦14mmHg)and30%(IOP≦12CmmHg)C.CLayeredChyphemaCoccurredCinC4eyes(13%)postCS-LOT+P+Iand1eyerequiredahyphemawashout.Conclusion:InPOAGpatients,S-LOT+P+IandS-LOTaloneshowedsigni.cante.cacyinreducingIOPupto3-yearspostoperative.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(8):997.1002,C2024〕Keywords:sutureCtrabeculotomyCabexterno,眼圧,3年成績.sutureCtrabeculotomyCabCexterno,CintraocularCpres-sure,Cthree-yearCoutcomes.C〔別刷請求先〕柴田真帆:〒631-0844奈良市宝来町北山田C1147永田眼科Reprintrequests:MahoShibata,M.D.,Ph.D.,NagataEyeClinic,1147Kitayamada,Horai,Nara-city,Nara631-0844,JAPANC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(125)C997はじめに線維柱帯切開術(trabeculotomy:LOT)は,房水流出抵抗の首座である傍CSchlemm管内皮網組織を切開し,房水の流出抵抗を下げることで眼圧を下降させる生理的房水流出路再建術である.流出路再建術の一つであるCsutureCtrabecu-lotomy(S-LOT)は,ナイロン糸をCSchlemm管に通して傍Schlemm管内皮網組織を切開する術式であり,Chinら1)が報告したC360°Csuturetrabeculotomyは眼外法(abexterno)で強膜弁を作製するため,LOTの問題点であった術後一過性高眼圧の減少を目的としたサイヌソトミー(sinusotomy:SIN)や,眼圧下降効果増強を目的とした深層強膜弁切除術(deepsclerectomy:DS)の併用が可能である.しかし,角膜切開で前房側からCSchlemm管に通糸する眼内法(abCinter-no)と比較すると報告が少なく,今回,原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleglaucoma:POAG)に対するC360°Csuturetrabeculotomyabexterno+SIN+DS(S-LOT+SIN+DS)のC3年成績を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2016年C1月.2020年C12月に,永田眼科においてCPOAGに対し下方象限でCS-LOT+SIN+DSを施行した連続症例64眼のうち,緑内障手術既往のある症例を除いた白内障同時手術C32眼と有水晶体眼に対する単独手術C10眼を対象とした.診療録から後ろ向きに術前と術後C3年までの眼圧,緑内障点眼数,併発症を調査し,眼圧と緑内障点眼数の経過,眼圧下降率,目標眼圧をC14,12CmmHg以下としたC3年生存率についてそれぞれ検討した.CS-LOT+SIN+DS白内障同時手術と単独手術の術式を以下に示す.2%キシロカインによるCTenon.下麻酔下に施行した.円蓋部基底で下方結膜を切開,左右眼ともC8時方向にC4×4Cmmの外層強膜弁,3.5C×3.5Cmmの深層強膜弁を作製しSchlemm管を露出した.その後白内障同時手術の場合は上方角膜切開で白内障手術を施行した.白内障手術終了後,先端を熱加工して丸くしたC5-0ナイロン糸を強膜弁両側からSchlemm管にそれぞれ挿入,上下半周ずつ通糸した両糸の先端を隅角鏡下に角膜サイドポートから挿入した永田氏スーチャートラベクロトミー鑷子で線維柱帯内壁ごしにそれぞれ把持し角膜サイドポートから眼外へ引き出して線維柱帯を全周切開した.Schlemm管露出部の内皮網を除去し,二重強膜弁の深層強膜弁を切除するCdeepsclerectomyを施行した.外層強膜弁を縫合し,ケリー氏デスメ膜パンチでC1カ所sinusotomyを施行,結膜を縫合した.最後に術中の前房出血を洗浄し,終了した.検討項目を以下に示す.手術前の眼圧と緑内障点眼数,術後1,3,6,9,12,18,24,30,36カ月の眼圧と緑内障点眼数,目標眼圧をC14CmmHg,12CmmHgとしたC3年生存率,術後併発症について検討した.緑内障点眼数について,炭酸脱水酵素阻害薬内服はC1剤,配合剤点眼はC2剤と計算し,合計点数を薬剤スコアとした.生存率における死亡の定義は,緑内障点眼薬の有無にかかわらず,術後C3カ月以降C2回連続する観察時点でそれぞれの目標眼圧を超えた時点,もしくは追加観血的手術が施行された時点とした.解析方法として,術後眼圧と薬剤スコアの推移にはCone-wayanalysisofvariance(ANOVA)とCDunnettの多重比較による検定を行い,生存率についてはCKaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成し生存率を算出した.有意水準はCp<0.05とした.本研究は臨床研究法を遵守しヘルシンキ宣言に則り行われ,診療録を用いた侵襲を伴わない後ろ向き研究のためインフォームド・コンセントはオプトアウトによって取得され,永田眼科倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号C2022-004).CII結果表1に白内障同時手術症例C32眼の患者背景を示す.平均年齢はC70.4C±9.8歳(平均C±標準偏差),術前平均眼圧はC17.5C±4.9mmHg,術前平均薬剤スコアはC3.2C±1.0,術前平均Cmeandeviation(MD)値はC.12.3±8.4CdBであった.図1に白内障同時手術症例の眼圧と薬剤スコアの経過を示す.眼圧は術前C17.5C±4.9mmHgからC3年後にC13.7C±4.9mmHg,薬剤スコアは術前C3.2C±1.0からC3年後にC1.3C±1.2となり,眼圧,薬剤スコアとも術後すべての観察期間で有意に下降し(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest),術C3年後までの平均眼圧下降率はC20.2%であった.図2にCKaplan-Meier生命表解析を用い,目標眼圧をC14,12CmmHgとした生存曲線を示す.14CmmHg以下C3年生存率はC53.7%,12CmmHg以下C3年生存率はC33.6%であった.表2に有水晶体眼単独手術症例C10眼の患者背景を示す.平均年齢はC60.4C±7.6歳,術前平均眼圧はC17.5C±6.6CmmHg,術前平均薬剤スコアはC3.5C±0.5,術前平均CMD値はC.17.5±6.6CdBであった.図3に有水晶体眼単独手術症例の眼圧と薬剤スコアの経過を示す.眼圧は術前C17.5C±6.6CmmHgからC3年後にC12.1C±2.6mmHg,薬剤スコアは術前C3.2C±0.8からC3年後にC1.4C±1.7となり,眼圧,薬剤スコアとも有意に下降し(p<0.05,CANOVA+Dunnett’stest),術C3年後までの平均眼圧下降率はC18.5%であった.図4にCKaplan-Meier生命表解析を用い,目標眼圧をC14,12CmmHgとした生存曲線を示す.14CmmHg以下C3年生存率はC60.0%,12CmmHg以下C3年生存率はC30.0%であった.表3に併発症の内訳と眼数を示す.白内障同時手術で術後C3Cmmを超える前房出血をC4眼(12%)に認め,うちC1眼は998あたらしい眼科Vol.41,No.8,2024(126)前房洗浄を必要とした.30CmmHgを超える一過性高眼圧を白内障同時手術でC10眼(31%)に認めた.白内障同時手術で術後硝子体出血をC1眼認めたが,経過観察で自然消退した.術後追加緑内障手術として白内障同時手術,有水晶体眼単独手術とも線維柱帯切除術を必要とした症例をC1眼ずつ認めた.SIN併用による長期濾過胞形成を認めた症例はなかっ表1患者背景(白内障同時手術)眼数32眼年齢C70.4±9.8(39.83)歳男/女C21/11右/左C12/20術前眼圧C17.5±4.9(12.30)mmHg術前薬剤スコアC3.2±1.0(1.5)術前CMD値(23眼)C.12.3±8.4(C.1.23.C.29.1)(dB)MD:meandeviation(mean±SD)(range)C2517.5±4.9mmHg20た.CIII考按POAGに対するCS-LOT+SIN+DSの術後C3年成績を検討した.白内障同時手術で平均眼圧はC17.5C±4.9CmmHgからC3年後にC13.7C±4.9CmmHgへ有意に下降し,単独手術ではC17.5C±6.6CmmHgからC12.1C±2.6CmmHgへ有意に下降した.目標眼圧をC14,12CmmHgとしたC3年生存率は白内障同時手術でそれぞれC53.7%,33.6%,単独手術でC60.0%,30.0%であった.Shinmeiら2)は白内障同時手術でC14CmmHg以下C3年生存率はC63%,単独手術ではC67.4%と報告し,Satoら3)は白内障同時手術でC15カ月生存率がC78.3%と報告していることから,今回の結果は既報とほぼ同等であったと考える.以前に筆者らは,少数例の検討であるがCS-LOT+SIN+DSの14CmmHg以下C3年生存率をC50.5%と報告4)し,今回の結果はこれともほぼ同等と考えられた.一方,12CmmHg以下C3C13.7±4.9mmHg薬剤スコア眼圧(mmHg)**15*************105543210(mean±SD)観察期間(月)眼数323232313128282824図1眼圧・薬剤スコア経過(白内障同時手術)術後すべての観察期間で有意に下降した(**p<0.01,*p<0.05,ANOVA+Dunnett’stest).10080生存率(%)表2患者背景(有水晶体眼単独手術)眼数10眼C20年齢C60.4±7.6(51.74)C男/女C8/2右/左C5/5生存期間(月)術前眼圧C17.5±6.6(13.34)図2白内障同時手術症例の3年生存率術前薬剤スコアC3.5±0.5(3.4)術前MD値(9眼)C.17.5±6.6(C.1.78.C.30.62)(dB)0051015202530354014,12CmmHg以下C3年生存率はそれぞれC53.7%,33.6%であった.MD:meandeviation(mean±SD)(range)(127)あたらしい眼科Vol.41,No.8,2024C999薬剤スコア眼圧(mmHg)252012.1±2.6mmHg15*105543210観察期間(月)眼数1099999987図3眼圧・薬剤スコア経過(有水晶体眼単独手術)眼圧,薬剤スコアとも有意に下降した(**p<0.01,*p<0.05,ANOVA+Dunnett’stest).80DSとの差はわずかではあるが有意差をもってCS-LOT+SIN+DSが良好である3,7,8)ことから,S-LOT+SIN+DSの手術適応としては以下のように考えられる.従来のCLOT+SINC+DS術C5年後の平均眼圧はC15CmmHgと報告13,14)されてい生存率(%)60るため,術後眼圧としてそれ以下を期待する中期緑内障,高40齢者であれば視力予後を考慮して中期以降の症例にも適応可200図4有水晶体眼単独手術症例の3年生存率14,12CmmHg以下C3年生存率はそれぞれC60.0%,30.0%であった.年生存率は白内障同時手術,単独手術でそれぞれC33.6%,30%であり,これらは日本人におけるCPOAGに対する線維柱帯切除術の中期成績4.6)より劣るものであった.CS-LOTCabexternoはCChinら1)によって初めて報告され,従来の金属プローブによるCLOTよりも眼圧下降効果が良好であると報告された.以降,同様の報告3,7,8)がなされている.これは線維柱帯切開幅の差によるものであり,集合管は不規則に存在する9,10)ため全周切開のほうが集合管への流出が効果的であるためとされる.一方で切開幅は術後眼圧に影響しないとする報告11,12)がある.既報13)におけるCPOAGに対するCLOT+SIN+DSの術後眼圧C14CmmHg以下生存率は今回の研究CS-LOT+SIN+DSの結果とほぼ同等であることから,切開幅と眼圧下降効果は直線的に相関しないことが示唆される.しかし,術後経過眼圧においては,LOT+SIN+1000あたらしい眼科Vol.41,No.8,2024能と考える.また線維柱帯切除術の術後成績と比較すると眼圧下降効果は劣ることが今回の結果で示されたが,濾過胞形成しないことや術後薬物治療が併用できることから,濾過手術適応だが若年であることや濾過胞管理ができないため,濾過手術が躊躇される症例について,一次的な選択肢として適応があると考える.一方,前房側からCSchlemm管に通糸する眼内法についてGroverら15)はCgonioscopy-assistedtransluminaltrabeculot-omyとして報告し,以降CS-LOTabinternoに関しての報告は少なくない.結膜切開が不要であり,将来的な追加濾過手術に備えて結膜を温存できるという利点があるためと考えられる.それに対しCS-LOTabexternoは結膜・強膜を切開するが,将来的な濾過手術に備えて下方象限で施行することで上方結膜は温存でき,LOTの問題点であった術後一過性高眼圧を減少させる効果のあるCSINと,さらなる眼圧下降効果増強を目的としたCDSの併用が可能であることが利点であると考える.S-LOTabinternoとの術後成績比較において,以前筆者らはCS-LOTCabexternoとCabinternoの術後C3年成績と併発症を比較し,S-LOTabexterno+SIN+DSのほうがCS-LOTabinternoよりも術後眼圧が有意に低く一過性高眼圧が少ないことを報告し,線維柱帯の切開範囲が同じであることから,これはCSIN+DSの効果によるものであるこ(128)0510152025303540生存期間(月)表3併発症白内障同時手術単独手術(有水晶体眼)32眼10眼前房出血>3Cmm4眼(12%)→C1眼前房洗浄0眼一過性高眼圧>3C0CmmHg10眼(31%)0眼併発症1眼硝子体出血→自然消退0眼追加手術1眼LET(1C.5年後)1眼LET(4日後)LET:trabeculectomyとを報告した7).また,Yalinbasら16)はCS-LOTCabCexterno+DSとCabinternoの術後C1年成績比較において,統計的有意差はないが術後眼圧はCS-LOTabexterno+DSのほうが低いことを報告し,これはCDSの眼圧下降効果によるものと報告している.ほかにもCSIN併用CLOTの眼圧下降効果17),DS併用CLOTの眼圧下降効果18)が報告されておりCSIN+DSには眼圧下降効果があると考える.SINとCDSの明確な眼圧下降機序は不明であるが,SINによる濾過胞の形成はないが長期にわたりわずかな濾過効果が続いているのか17),DSにおける強膜弁下Clakeの強膜床からClake内房水が経ぶどう膜強膜路から吸収されるのか19),lake内房水がCSchlemm管に流出されるのか20)などが考えられている.S-LOTabexter-no+SIN+DSは下方象限施行で上方結膜の温存ができ,CSIN+DSの利点を生かした手術であると考える.術後併発症については,白内障同時手術でC3Cmmを超える前房出血をC4眼(12%),術後一過性高眼圧をC10眼(31%)に認めた.頻度については既報とほぼ同等であったが,高頻度であった一過性高眼圧については単独手術でほぼ認めていないことと比較すると,白内障手術の術後炎症の影響や術前縮瞳剤の有無の影響などが考えられるが,これについては症例数を増やして今後も検討を必要とする.本研究にはいくつかの限界がある.本研究は後ろ向き研究であり,その性質上結果の解釈には注意を要する.術式選択の適応,術後眼圧下降効果不十分症例に対する追加点眼や追加手術介入の適応と時期は,病期に基づく主治医の判断によるものであり,評価判定は事前に統一されていない.また,対象が少数例であることから,今後多数例での検討が必要であると考える.今回の検討の結果,POAGに対するCS-LOTabexterno+SIN+DSは,白内障同時手術,単独手術とも中期的に有意な眼圧下降を認めた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)ChinS,NittaT,ShinmeiYetal:Reductionofintraocularpressureusingamodi.ed360-degreesuturetrabeculoto-mytechniqueinprimaryandsecondaryopen-angleglau-coma:apilotstudy.JGlaucomaC21:401-407,C20122)ShinmeiY,KijimaR,NittaTetal:Modi.ed360-degreesutureCtrabeculotomyCcombinedCwithCphacoemulsi.cationCandCintraocularClensCimplantationCforCglaucomaCandCcoex-istingCcataract.CJCCataractCRefractCSurgC42:1634-1641,C20163)SatoCT,CHirataCA,CMizoguchiT:OutcomeCofC360CdegreesCsutureCtrabeculotomyCwithCdeepCsclerectomyCcombinedCwithCcataractCsurgeryCforCprimaryCopenCangleCglaucomaCandCcoexistingCcataract.CClinCOphthalmolC8:1301-1310,C20144)狩野廉,桑山泰明,水谷泰之:強膜トンネル併用円蓋部基底トラベクレクトミーの術後成績.日眼会誌C109:C75-82,C20055)FukuchiCT,CUedaCJ,CYaoedaCKCetal:ComparisonCofCfor-nix-andClimbus-basedCconjunctivalC.apsCinCmitomycinCCCtrabeculectomywithlasersuturelysisinJapaneseglauco-mapatients.JpnJOphthalmolC50:338-344,C20066)SugimotoCY,CMochizukiCH,COhkuboCSCetal:IntraocularCpressureCoutcomesCandCriskCfactorsCforCfailureCinCtheCCol-laborativeBleb-relatedInfectionIncidenceandTreatmentCStudy.Ophthalmology122:2223-2233,C20157)柴田真帆,豊川紀子,黒田真一郎:開放隅角緑内障に対し同一患者に施行したC180°,360°CSutureTrabeculotomyAbInterno,C360°CSutureCTrabeculotomyCAbExternoと僚眼CMetalTrabeculotomyの術後C3年成績の比較あたらしい眼科38:1097-1104,C20218)木嶋理紀,陳進輝,新明康弘ほか:360°CSutureTrabecu-lotomy変法とCTrabeculotomyの術後眼圧下降効果の比較検討.あたらしい眼科C33:1779-1783,C20169)HannCCR,CBentleyCMD,CVercnockeCACetal:ImagingCtheCaqueoushumorout.owpathwayinhumaneyesbythree-dimensionalmicro-computedtomography(3D-micro-CT)C.CExpEyeResC92:104-111,C201110)HannCCR,CFautschMP:PreferentialC.uidC.owCinCtheChumanCtrabecularCmeshworkCnearCcollectorCchannels.CInvestOphthalmolVisSciC50:1692-1697,C200911)ManabeCS,CSawaguchiCS,CHayashiK:TheCe.ectCofCtheCextentoftheincisionintheSchlemmcanalonthesurgi-(129)あたらしい眼科Vol.41,No.8,2024C1001calCoutcomesCofCsutureCtrabeculotomyCforCopen-angleCglaucoma.JpnJOphthalmolC61:99-104,C201712)SatoT,KawajiT:12-monthrandomizedtrialof360°Cand180°CSchlemm’sCcanalCincisionsCinCsutureCtrabeculotomyCabCinternoCforCopen-angleCglaucoma.CBrCJCOphthalmolC105:1094-1098,C202113)後藤恭孝,黒田真一郎,永田誠:原発開放隅角緑内障におけるCSinusotomyおよびCDeepCSclerectomy併用線維柱帯切開術の長期成績.あたらしい眼科26:821-824,C200914)溝口尚則,黒田真一郎,寺内博夫ほか:開放隅角緑内障に対するシヌソトミー併用トラベクロトミーの長期成績.日眼会誌C100:611-616,C199615)GroverCDS,CGodfreyCDG,CSmithCOCetal:Gonioscopy-assistedCtransluminalCtrabeculotomy,CabCinternoCtrabecu-lotomy:techniqueCreportCandCpreliminaryCresults.COph-thalmologyC121:855-861,C201416)YalinbasCD,CDilekmanCN,CHepsenIF:ComparisonCofCabCexternoandabinterno360-degreesuturetrabeculotomyinCadultCopen-angleCglaucoma.CJCGlaucomaC29:1088-1094,C202017)MizoguchiCT,CNagataCM,CMatsuuraCMCetal:SurgicalCe.ectsCofCcombinedCtrabeculotomyCandCsinusotomyCcom-paredCtoCtrabeculotomyCalone.CActaCOphthalmolCScandC78:191-195,C200018)豊川紀子,多鹿三和子,木村英也ほか:原発開放隅角緑内障に対する初回CSchlemm管外壁開放術併用線維柱帯切開術の長期成績.臨眼C67:1685-1691,C201319)MarchiniG,Marra.aM,BrunelliCetal:Ultrasoundbio-microscopyCandCintraocular-pressure-loweringCmecha-nismsCofCdeepCsclerectomyCwithCreticulatedChyaluronicCacidimplant.JCataractRefractSurgeC27:507-517,C200120)StegmannCR,CPinaarCA,CMillerD:ViscocanalostomyCforCopen-angleglaucomainblackAfricanpatients.JCataractRefractSurgeC25:316-322,C1999***1002あたらしい眼科Vol.41,No.8,2024(130)