———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.5,2006???0910-1810/06/\100/頁/JCLS現在,Bausch&Lomb社製のZyoptixシステムはフライングスポットのエキシマレーザーT-217z100と,波面収差計であるZywave,レーザー照射後のシミュレーションに用いる角膜形状解析装置Orbscan-Ⅱから構成されている(図1).●T-217z100T-217z100は,もともとカイロン社製ブロードビームレーザーKeracor116から発展してきたレーザーで,Keracor117cに改良され径2mmのフライングスポットレーザーとなり,T-217zとなり径1mmのtruncat-edgaussianbeamが加わりwavefront-guidedablationが可能になった.T-217zは2003年にAlcon社製LADARVision,VISX社製StarS4につづく3つめのwavefront-guidedLASIK(laser???????keratomileu-sis)に用いるエキシマレーザーシステムとして米国食品医薬品局(FDA)で認可された.わが国でも治験が行われ,厚生労働省の認可を待っている状態である.2004年初頭に照射周波数50HzであったT-217zがアップグレードされ,照射周波数が100Hzとなり,それに伴いアイトラッキングのサンプリングレートが240Hzになり,虹彩認識などの機能も付加されT-217z100と名称が変更された.ヨーロッパを始めとして世界中で使用されているレーザーであり,市販されたT-217zを使用したwavefront-guidedLASIKの成績も報告されている1).●Zyoptixの実際Zyoptixシステムで行うwavefront-guidedLASIKは,Zywaveで測定した波面収差をそのまま打ち消すようなレーザー照射を行うので,wavefront-guidedablationの原法に忠実である.しかし,球面度数に関してはPPR(predictedphoroptorrefraction)とよばれる瞳孔径3.5mmの解析から算出された値をそのまま使用するよりも,自覚的屈折度を用いたほうが術後成績は安定する.各個人の波面で径のどこまでが自覚的屈折度数に関与しているかは古くて新しい問題で結論はでていないが,一律3.5mmというわけでもないうようである.また,高次収差が多い眼においては,それだけ高次収差矯正量が増加するので,低次収差(球面度数,円柱度数)矯正による高次収差の増大は起こるものの,術後の高次収差を(61)●連載?屈折矯正手術セミナー監修=木下茂大橋裕一坪田一男72.B&LZyoptix217z100とZywave稗田牧バプテスト眼科クリニックZyoptixシステムは,Zywaveで波面収差を測定し,T-217z100でwavefront-guidedablationを行う.特徴は,比較的高次収差が多い眼も波面収差の測定が可能な点,虹彩認識による,回旋偏位の補正,散瞳時と自然瞳孔時の瞳孔中心の偏位の補正などでレジストレーションに優れている点である.図1ZyoptixシステムエキシマレーザーT-217z100(左),ZtwaveとOrbscan-Ⅱ(右).術前術後6カ月図2屈折矯正術後眼へのwavefront-enhancementStandardなLASIK術後に非対称な乱視が残ってしまった例.Wavefront-enhancementでコマ収差が著明に減少している.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.5,2006減少させる効果が期待できる.特に,屈折矯正手術後眼のエンハンスメントでは,低次収差はそれほど多くなく,高次収差は増大しているので比較的確実に術後高次収差を減少させることができる(図2).エンハンスメントにZyoptixを用いると,術眼の高次収差の量に比例してエンハンス術後高次収差が減少したとする報告2)や,エンハンス術後のコントラスト感度の低下が起こらないとする報告3)がある.●球面収差対策球面度数をレーザー照射で矯正することにより矯正量依存的に誘発される球面収差を補正するアルゴリズムは加えられていない.したがって,照射径を狭くすると瞳孔径6mmで解析した球面収差が増加しやすいが,照射径を拡大することで抑えることは可能である.しかし,測定できた波面収差の範囲でのみ照射径がデザインできるシステムなので,6mm以上の広いオプチカルゾーンで照射するためには,術前に散瞳して波面収差を測定しなくてはならない.●コマ収差矯正コマ収差矯正はT-217zについてFDAが公開している治験時のデータや論文など1~3)からも現在,市販されているwavefront-guidedLASIKのシステムのなかでも,特に優れた矯正効果をもつと思われる.T-217z100となり,虹彩認識による回旋偏位の補正(レーザー照射前に1回のみ),散瞳時と自然瞳孔時の瞳孔中心の偏位の補正(図3)などが加わりレジストレーションが充実することで,コマ収差矯正力はさらに改善している.照射中に回旋偏位を補正するトラッキングシステムのバージョンアップも予定されている.●ZywaveZywaveはHartmann-Schack型波面センサーで瞳孔7mmでの測定点は75と比較的少ない.しかし,レーザースポットが径1.0mmでは理論上四次収差までしか矯正できないことを考えると,今の時点でのwave-front-guidedLASIKには必要かつ十分であるかもしれない.測定点が少ないことで不正乱視や高次収差が多い眼でもHartmann像がどうにか認識でき,高次収差が測定できることがある.不正乱視測定にある程度までは対応できるということは,エンハンスに使用できる機会が増えるということでもある.また,この特徴を生かして,屈折矯正術後に訴えのある症例は,通常症例より約3倍高次収差が多いという報告4)にもZywaveは使用されていた.しかし,測定に再現性がない場合にレーザー照射に用いるのは避けたほうがよい.Zyoptixのシステムに入りながらOrbscan-Ⅱのデータは照射アルゴリズムに組み込まれていない.角膜の非球面性を保持するような照射を行うため,Orbscan-Ⅱのデータも活用されるようになれば,さらなる成績の向上が期待できる.文献1)KohnenT,BuhrenJ,KuhneCetal:Wavefront-guidedLASIKwiththeZyoptix3.1systemforthecorrectionofmyopiaandcompoundmyopicastigmatismwith1-yearfollow-up:clinicaloutcomeandchangeinhigherorderaberrations.?????????????111:2175-2185,20042)CastaneraJ,SerraA,RiosC:Wavefront-guidedablationwithBauschandLombZyoptixforretreatmentsafterlaserinsitukeratomileusisformyopia.??????????????20:439-443,20043)AlioJL,Montes-MicoR:Wavefront-guidedversusstan-dardLASIKenhancementforresidualrefractiveerrors.?????????????113:191-197,20064)McCormickGJ,PorterJ,CoxIGetal:Higher-orderaber-rationsineyeswithirregularcorneasafterlaserrefrac-tivesurgery.?????????????112:1699-1709,2005(62)図3散瞳・自然瞳孔の瞳孔中心の位置変化上段の散瞳時の瞳孔中心と,下段の自然瞳孔時の瞳孔中心の位置の違いを角膜輪部の中心が一定と仮定してXY表示で認識しておき,レーザー照射時に使用する.