———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSa.異形性の有無偽性うっ血乳頭は,共通した特徴がある.生理的陥凹(cup)を欠き,血管は乳頭中央から出て,3分岐,4分岐といった大血管系の異常を伴うことが多い.後天性の視神経乳頭腫脹とは,機械的に,あるいは,循環障害や炎症などの何らかの後天的な原因で軸索流が停滞することによって神経線維束が光学的に混濁した結果,検眼鏡的に視神経乳頭が腫れたようにみえる(discedema).後天性の腫脹は,この傍乳頭神経線維層の混濁の有無を評価判断することにある.異形性に基づく視神経乳頭の隆起は,神経線維束によって乳頭は隆起していても神経線維束には混濁はなく,乳頭縁に直交して放射状に走る網膜神経線維束のキラキラとした光学的反射を認めることができる.視神経乳頭上の静脈の自発拍動を認めれば,先天異常を支持する所見であるが,先天性か後天性かの決定は,決して一つの所見に基づくのではなく,両者の鑑別点を比較して総合的に判断する.異形性をもった視神経乳頭は“偽性”うっ血乳頭とよばれるが,真のうっ血乳頭を否定するものではない.一つでも疑わしい点があれば,うっ血乳頭除外のため頭部画像検査を施行する.b.うっ血乳頭の除外診断検眼鏡的にdiscedemaを認めた場合,鑑別診断は山のようにある1).見た目の様子だけからでは原因疾患は特定できない.診断には神経眼科の基本ルール,ことに視力と視野検査が役立つ(表1).視神経疾患に伴う視野はじめに視神経疾患は,現病歴から,視力,瞳孔,視野,色覚,眼底検査を含めた神経眼科的所見をもとに最も考えうる臨床診断から,超音波検査や蛍光造影眼底撮影などの眼科外来検査やコンピュータ断層撮影(CT)や磁気共鳴画像法(MRI)といった画像検査を用いて鑑別を進め,必要に応じて,脳脊髄液の検査や神経内科医による診察を踏まえて総合的に患者を評価して初めて診断が可能となる.本稿では,頭部画像検査の必要な視神経疾患について,視神経乳頭の検眼鏡的所見をもとにまとめる.視神経乳頭の検眼鏡による鑑別診断視神経乳頭は,検眼鏡的に乳頭の隆起(elevation)の有無から診断を進める.1.隆起した視神経乳頭隆起した視神経乳頭(elevateddisc)を見れば,何はさておき,脳脊髄液圧亢進によるうっ血乳頭(papillede-ma)を除外しないといけない.うっ血乳頭は,脳神経学的な緊急状態を意味する.時間をおかずにただちに頭部画像検査が必要である.隆起した視神経乳頭(elevateddisc)は,まず,本当に視神経乳頭が腫れているかどうか,視神経乳頭の腫脹(discswelling)の有無を決定する.異形性の有無について,視神経乳頭の先天的形成異常である偽性うっ血乳頭(pseudopapilledema)を鑑別する.(9)???*SatoshiKashii:大阪赤十字病院眼科〔別刷請求先〕柏井聡:〒543-8555大阪市天王寺区筆ヶ崎町5-30大阪赤十字病院眼科特集●視神経疾患と乳頭所見─異常所見の鑑別法あたらしい眼科23(5):571~576,2006頭部画像診断の重要性?????????????????????????????????????????????????????????柏井聡*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.5,2006障害は,網膜神経線維束の走行に沿った欠損をつくることが知られている.疾患に応じて網膜神経節細胞の脆弱性が異なり,遺伝性や中毒性視神経症のように視力に関わる乳頭黄斑線維束が障害されると視野上,盲・中心暗点をつくり,緑内障や慢性うっ血乳頭では視力は保存され,網膜神経線維束が好んで障害される.こうした背景疾患をもとに生じる視力や視野障害は両眼性が原則である.一方,成人の視神経炎や非動脈炎性前部虚血性視神経症では単眼性発症が中心である.ここで,注意を要するのは,初期うっ血乳頭である.脳圧亢進に基づいて軸索流が渋滞し視神経乳頭が腫脹するが,初期では,必ずしも,両眼同時に発症するわけではなく左右差がある点である.軸索流の渋滞だけでは視機能障害は生じず,視神経乳頭周囲の隆起した網膜に基づく屈折性の暗点形成による盲点拡大が初期症状であるので,機能的な障害の認められない患者では,単眼性でも傍乳頭神経線維層の混濁を認めれば,うっ血乳頭の可能性がある.「うっ血乳頭は視力障害をきたさない」というルールは,小児に“中途半端”にあてはめてはいけない.成人では,頭蓋咽頭腫や胚細胞腫は,大きな腫瘤を形成することはまれだが,小児では腫瘍の進展に伴い第3脳室のMonro孔を閉塞しうっ血乳頭をきたすことがある.このように原発病変によっては視神経/視交叉を障害することがあるので,注意が必要である.また,小児の視神経炎は成人と異なり両眼発症が多いので「両眼性の視神経炎」に見えても,「うっ血乳頭と視力障害」が共存していることがあるため,小児の視神経炎ではうっ血乳頭を,ただちに,頭部画像検査によって除外しないといけない.したがって,両眼性は言うまでもなく単眼性でも視機能の良好な“微妙な”subtlediscedemaは,うっ血乳頭を除外するため,頭部の画像検査を行い,脳内占拠性病変を除外する必要がある.c.単眼性視神経乳頭腫脹脳圧亢進によるうっ血乳頭(papilledema)だけでなく視神経を取り巻くくも膜下腔の内圧が局所的に上昇しても視神経の軸索流が障害され検眼鏡的に視神経乳頭が腫脹(discedema)する.盲点拡大程度で視機能が保存された患者では,subtlediscedemaでも,誰が見てもわかるfull-blowndiscedemaでも,単眼性では浸潤性ないし圧迫性視神経症を除外する.したがって,単眼性discedemaでは「頭部」画像検査だけでは不十分で,眼窩部の画像検査を必ず施行しないといけない.表1脚注のように,通常は,(眼窩部)視神経?髄膜腫を含めて圧迫性視神経症は原則として潜行性進行性の中心視力の低下を伴うのが特徴である.単眼性discedemaに突発性あるいは急性の視力,視野障害をきたした場合は,発赤性腫脹の視神経炎(脱髄性視神経症)や蒼白性腫脹の前部虚血性視神経症が鑑別にあがってくる(表1).患者の年齢とともに確定診断には時間経過が必須となる.d.脳脊髄液圧の測定うっ血乳頭は検眼鏡的所見から疑って,実際に脳圧を測定しない限り診断は確定しない.頭部画像が正常であるからといって,脳圧が正常であるとは言えない.必ず,専門医に依頼し腰椎穿刺のうえ,脳圧を測定する.脳圧が亢進しているにもかかわらず,頭部画像上,占拠性病変が認められない場合,特発性および二次性頭蓋内圧亢進症を鑑別することになる2).ことに脳静脈洞閉塞(10)表1視神経疾患の視力と視野の特徴■両眼性1.中心視力の低下(+):乳頭黄斑線維束障害型(盲中心暗点)中毒性視神経症遺伝性視神経症(Leber遺伝性視神経症など)栄養障害性視神経症2.中心視力の低下(-):非乳頭黄斑線維束障害型(神経線維束障害型欠損)原発開放隅角緑内障慢性うっ血乳頭■単眼性3.中心視力の低下(±):混合型=乳頭黄斑線維束+神経線維束欠損型圧迫性視神経症外傷性視神経症急性緑内障視神経炎*虚血性視神経症*網膜中心動脈分枝閉塞症**乳頭黄斑線維束を保存することもある.一方,圧迫性視神経症,外傷性視神経症,急性緑内障では原則として中心視力の低下を伴うと考えてよい.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.5,2006???症には最近MRvenographyの有用性が報告されているので,脳圧亢進患者の診断にあたっては通常のMRI検査に加えて施行するとよい.2.平坦な視神経乳頭視力や視野障害のある患者の視神経乳頭が検眼鏡的に平坦(?atdisc)なら,病的過程の結果かどうか,まず,先天的な乳頭の異形性の有無をチェックする.乳幼児では乳頭の異形性そのものが,腫瘍などの病的過程の結果生じることがあるので,年齢に応じて対応が異なる.a.異形性の有無乳幼児に乳頭低形成を認めると,成人とは対応がまったく異なる.これは,視神経乳頭低形成は,網膜神経節細胞の未発達,アポトーシスと関連し発達途上で,視交叉の構造異常(deMorsier症候群)や腫瘍(頭蓋咽頭腫や視神経膠腫)によってシナプスが形成できないと視神経乳頭低形成となるからである3).4歳までは全例頭部MRI検査を行い,透明中隔欠損(無害性),異所性下垂体後葉(下垂体前葉ホルモン低下症),大脳半球性異常(神経機能発達不全)などに注意する.deMorsier症候群ではプロラクチンの上昇で生後3~4歳までは正常の成長範囲内となることがあるので,4歳以降の正常発育児の乳頭低形成例では,小学生高学年までは体重と身長の成長曲線を記録するように母親に指導する.小児乳頭低形成において,年齢にかかわらず,進行性の視力・視野障害や視神経萎縮を認めたときは,潜在性の悪性疾患を考え,ただちに,視交叉の画像検査を行う.成人において,網膜神経線維束欠損型の視野異常に視神経乳頭の低形成などの異形性を認めると先天的な視野障害が示唆され,たまたま検査で発見されて視野障害に気づいた場合が多い4).典型的なdoubleringsignは診断が容易であるが,部分的な場合に低形成乳頭を取りまく色素輪を視神経萎縮と見誤られることがある.屈折性暗点を呈するlaterallytilteddiscsyndromeを含めて乳頭の形成異常や低形成に基づく視野障害は正中線を無視した視野欠損となることが多い.成人の視神経乳頭の形成異常例では,視野障害が進行性であるかどうか,必ず間隔を開けて視野の経時的変化を追うことが大切である.神経線維束欠損性の視野では初診の眼底検査だけでは正常眼圧緑内障を除外するものではないからである.b.視神経萎縮の有無視神経萎縮の鑑別診断は,生命的予後とも関連して実地臨床上まず何をおいても視神経の圧迫性病変を除外しないといけない.特に,視神経萎縮をきたす代表的疾患の緑内障では治療によっていくらうまく眼圧下降が得られても一旦消失した視機能は戻らない.圧迫性視神経症では手術的に減圧すれば視力,視野が著明に改善することが古くから知られており,失明の予防からも,早期に正しく診断することは眼科医として大切な責務である.視神経萎縮(opticatrophy)とは,何らかの不可逆的傷害の結果,網膜神経節細胞の軸索の消失が検眼鏡的に認められる状態を指す.したがって,視神経萎縮は,検眼鏡的な視神経乳頭部の色調が退色ないし網膜神経線維層の厚みが菲薄化した状態を指す臨床的呼称で診断名ではない検眼鏡的な乳頭の色調は乳頭の構造血管を反映しているので,乳頭の大きさは色調に影響し,大きな視神経乳頭は篩状板が大きいのでそれだけ蒼白化して見えやすい.また,視神経乳頭の耳側は,神経線維の直径が小さく,広く乳頭面上に広がるので,鼻側に比べ蒼白化して見えやすい.したがって,検眼鏡的な視神経乳頭の蒼白化を視神経萎縮と早合点してはいけない.乳頭の色調の蒼白化が視神経萎縮かどうかの判定は視機能障害の有無によって決まる.しかし,最近進歩した画像解析で網膜神経線維層の菲薄化が経時的に証明できれば,今ある検査法では機能障害の進行を検出できなくても,視神経萎縮が有意に進行したと判断できるようになってきた.ただ,一般の実地臨床では,検眼鏡的な視神経乳頭の蒼白化は,単眼性の場合や何らかの機能的な障害〔中心暗点,色覚障害,相対的入力瞳孔反射異常(RAPD)など〕が認められる場合以外は,視神経萎縮の判定はむずかしい.c.圧迫性視神経症の除外眼窩内の圧迫性視神経症では,まれに眼窩後方の病変で乳頭腫脹を認めない場合があるが,多くは片側性の視神経乳頭腫脹をきたす.上記1-c項のように視機能がよく保存されているのと対照的な派手な腫れfull-blowndiscedemaが特徴である.一方,頭蓋内での圧迫性病(11)———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.23,No.5,2006変は通常は乳頭腫脹をきたさないのが原則で,検眼鏡的に正常なものから視神経萎縮を呈するものまで,検眼鏡的所見のみから診断を下すことは基本的には困難で,視野などの臨床所見が必要である.ただ,Frisen-Hoytの3徴として知られる,(1)潜伏性に徐々に進行する視力障害の(2)視神経萎縮に(3)乳頭毛様静脈(optociliaryveins)を認めれば,検眼鏡的所見のみから,ただちに視神経?髄膜腫と診断できる.確定診断は眼窩部の画像検査による.単純CTで特徴的な石灰化像が描出されれば確定する.眼窩部MRI検査では,脂肪抑制モードにGd(ガドリニウム)造影しないと描出できないので,検査を申し込む際,注意を要する.蝶型視神経萎縮は特徴的だが検眼鏡だけではむずかしく,通常は,耳側半盲から逆に疑って観察しないと“そのように”見えない.d.緑内障性視神経症視神経萎縮の鑑別診断上で,日常,頻度的に最もよく遭遇するのが,緑内障性視神経症である.圧迫性視神経症の除外診断は,緑内障性視神経症をきちんと診断することと表裏一体をなす.緑内障性視神経障害の最も早期の変化は網膜神経線維束欠損(retinalnerve?berlayerdefect:NFLD)である.検眼鏡的な視神経乳頭の萎縮像だけに気を取られていると,緑内障の網膜神経線維束の初期脱落を見逃す.局所的に網膜神経線維束が脱落する緑内障性陥凹では,生理的陥凹の壁面を浸食するように拡大していく.したがって,緑内障では陥凹が蒼白部分(pallor)を越えて,辺縁部(rim)に食い込んでいくため,陥凹形成のほうが蒼白部分より先行していく傾向がある.一方,視神経乳頭より後方で視神経が傷害される圧迫性視神経症では,逆向性変性によるため,視神経乳頭の陥凹の形状とは無関係に萎縮が進み,蒼白部の範囲が生理的陥凹を無視して広がっていく.e.“緑内障”様視神経乳頭(glaucoma-look-a-like)視神経乳頭の陥凹が一見緑内障様に見えても,表2のように,緑内障としては非典型的な所見が認められれば,まず,圧迫性視神経症を除外すべく画像検査を施行する.また,緑内障患者でも当然脳内病変を伴うことが(12)表2“緑内障”様の陥凹で画像検査が必要な所見1.一眼に限局2.陥凹を越える辺縁部蒼白化(rimpale)3.半盲(1/4盲)性視野欠損4.陥凹の進行に先立つ視力低下や色覚異常図1症例(67歳,男性)の紹介1カ月前のGoldmann動的視野検査視力はVD=(0.8),VS=(0.5),右眼の耳下側にはI3eのイソプターで固視点に向かう垂直正中線を守る欠損が認められる.左眼はV4eでは耳側周辺部穿破型欠損だが,よく見るとI3eで垂直経線を守る耳側半盲パターンをすでに呈している.すでにこの段階で,左側視交叉の前部を横断性に右側視交叉の前上方にかけて圧迫性病変の存在が示唆される.LR———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.5,2006???(13)ab図4症例(67歳,男性)の頭部MRI(Gd造影T1強調画像)a:軸性断で視交叉上方のGdでよく造影される腫瘤(矢印)を認める.b:冠状断でGd造影される第3脳室間から視交叉上部の腫瘤(矢印)につながり,さらに下垂体柄に沿って広がる転移性腫瘍がよくわかる.本例のように圧迫性視神経症では早期から中心視力が低下する傾向がある.LR図2症例(67歳,男性)の紹介受診時のHumphrey静的視野検査(SITA-fast24-2)視力はVD=(0.07),VS=(0.5)と,右眼の中心視力が高度に障害され,静的中心視野検査で図1当時と比べると右眼の正中線を越える下鼻側の欠損が目立つ.左眼はGoldmannで認められた耳側半盲を示している.上方はグレースケール表示,下方はパターン偏差確率プロット図.LR*図3症例(67歳,男性)の紹介受診時の視神経乳頭のカラー写真右眼(R)の乳頭陥凹は細隙灯で見ると下方の浸食性の進展がよくわかるが,蒼白調の部分は陥凹の中心部に限局しており浸食側の底部(*)の色調は良好な緑内障のごく早期の変化を呈している(centralpallor).左眼(L)の視神経乳頭は浸食型陥凹を乗り越えて耳側辺縁部が蒼白化(矢印)している(rimpal-lor).右眼の急激な視力障害のわりに視神経乳頭はごく早期の緑内障性変化しか認められないことから,球後性の障害が急激に進行していることが示唆される.左眼の耳側半盲と辺縁蒼白より視交叉前部と両視神経の接合部の圧迫性病変についての画像検査がただちに必要である.———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.23,No.5,2006ある.そうした例に図1の67歳,男性がある.近医で緑内障の治療を受けていた.2カ月前に肺癌のため呼吸器科に入院,当時VD=(0.8),VS=(0.5),視野は図1のごとくで,眼圧下降が不十分なため点眼薬が追加された.1カ月前より視力障害が急に進行しVD=(0.07),VS=(0.5)となったので紹介されてきた.静的視野検査(図2)で,左眼に明らかに半盲を呈し,検眼鏡的に左眼視神経乳頭の辺縁部蒼白化(図3)が認められ,頭部MRIを調べると視交叉に肺癌の転移性病変(図4)を認めた.眼圧が高値を示し,検眼鏡的に浸食性(undermining)の陥凹を見ると緑内障と反射的に考えやすいが,前医の視野をよく見るとGoldmann動的視野検査(図1)でも正中線を守る半盲性視野欠損を呈している.もちろん,緑内障でも半盲性欠損を呈することがあるが,正中線を守る視野欠損は,緑内障患者であろうとなかろうと,ただちに,視神経~視交叉の圧迫性ないし浸潤性視神経症を除外しないといけない5).視交叉前部の圧迫性視神経症では早期から視力低下を自覚するのが特徴で,同じ視力1.0でも反対眼と比べて「見えにくい」と訴えることが多い.また圧迫性病変の視力障害の大事な特徴に右下さがりの下降的経過がある.一方,緑内障では進行例を除いて乳頭黄斑線維束は保存されるので,視野検査で神経線維束欠損性の視野に中心視力の低下を伴う場合,外傷や急性視力視野障害の既往がなければ,まず,圧迫性視神経症を除外する必要がある(表1の脚注).おわりに視神経疾患で画像検査が必要な場合,頭部,眼窩部,(14)視交叉部など,どの部位の画像検査か,検査を予約する際にきちんと鑑別診断を念頭に施行しないといけない.圧迫性や浸潤性視神経症を考える場合は,視神経から視交叉について単純だけでなく造影検査を施行しないといけない.うっ血乳頭や半盲性視野を認める場合は,視交叉周辺から後頭葉を含めた頭部画像を造影を含めて検査する.CTは眼窩内を評価するのにはすぐれている.MRIは,脂肪抑制モードにGd造影すれば眼窩先端部の評価にはCTより詳細に見える.頭部の画像検査はMRIが原則である.脱髄病変はT2強調画像で見えるが,眼窩内では脂肪のため単純撮影では見えず,脂肪抑制モードにGd造影が必要である.髄膜腫は単純CTで石灰化が見えるが,MRIでは評価する際はGd造影が必要である.画像検査のオーダーには,具体的に,検査したい部位と疾患名を記載して,放射線医に最適の検査を施行してもらわないと“見えるもの”も見えなくなってしまう.文献1)柏井聡:視神経乳頭炎・浮腫の鑑別診断.臨眼54:102-104,20002)GansM,BurdeRM,KashiiSetal:Idiopathicintracranialhypertensionandpseudotumorcerebri.CurrentOcularTherapy5(edbyFraunfelderFT,RoyFH),p217-219,WBSaunders,Philadelphia,20003)KashiiS,KikuchiM,HashimotoTetal:Achildwithhypoplasticopticdiscwhohadasuprasellartumor.神経眼科14:98-106,19974)KashiiS,dGaunnttC,MatsumotoMetal:Acaseofatilteddiscsyndrome.神経眼科11:348-356,19945)KashiiS,dGaunnttC,ShimizuHetal:Acaseofnasalvisual?elddefect,inwhichglaucomawassuspected.神経眼科11:86-95,1994