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EX-PRESS®併用濾過手術後の経過良好例と不良例の比較

2015年10月31日 土曜日

14725100,212,No.31472(100)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科32(10):1472.1476,2015cはじめに1999年以降海外で臨床使用されているEX-PRESSR(AlconInc.,FortWorth,TX)は,プレート部分や調節弁をもたないステンレス製の緑内障手術用ミニデバイスである.EX-PRESSRを用いた濾過手術(以下,EX-PRESSR併用濾過手術)は線維柱帯切除術と似ているが,強膜切開や周辺虹彩切除を必要としない.術後の早期合併症の頻度が線維柱帯切除術より少なく,眼圧下降効果は良好で,線維柱帯切除術と同等と報告されている1.15).日本では2012年5月に緑内障治療用インプラント挿入術が保険適用となり,臨床使用が可能となった.日本人を対象とした報告でも良好な眼圧下降効果が示されている1.4).また,難症例に対しても有効性が報告されている16,17).しかし,EX-PRESSR挿入術後には全例が経過良好ではなく,経過不良例も存在する18).経過不良となる要因が術前あるいは術後の経過観察において判明すれば,症例選択や,術後の経過観察での注意が行いやすいが,〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANEX-PRESSR併用濾過手術後の経過良好例と不良例の比較井上賢治*1藤本隆志*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科ComparisonbetweenPatientswithFavorableandUnfavorableResultsinEX-PRESSRKenjiInoue1),TakayukiFujimoto1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:EX-PRESSR併用濾過手術後に経過不良となる因子を後ろ向きに検討する.方法:EX-PRESSR併用濾過手術後6カ月間の経過観察が可能だった37例37眼を対象とした.6カ月後の眼圧15mmHg未満と15mmHg以上の症例,眼圧下降率30%以上と30%未満の症例に分けた.各群で性別,年齢,病型,糖尿病の有無,術前使用薬剤数,術式,視野meandeviation(MD)値,手術前後の眼圧,lasersuturelysis施行の有無,ブレブ再建術施行の有無を比較した.結果:眼圧15mmHg未満は78.4%,15mmHg以上は21.6%で,前者で3カ月後の眼圧が有意に低かった.眼圧下降率30%以上は83.8%,30%未満は16.2%で,前者で年齢と手術前眼圧が有意に低く,術前投与薬剤数が多かった.結論:EX-PRESSR併用濾過手術の経過不良例は16.22%存在する.危険因子は年齢,手術前眼圧,術前投与薬剤数,3カ月後の眼圧だった.Purpose:WeretrospectivelyinvestigatedcharacteristicsinpatientswithunfavorableprogressfollowingEX-PRESSRglaucomafiltrationdeviceimplantation.Methods:Investigatedwere37eyesof37patientswhohadundergoneEX-PRESSRimplantation.At6monthsaftersurgery,patientsweredividedintothosewithintraocularpressure(IOP)≧15mmHgor<15mmHg,andthosewithIOP-reductionrate≧30%or<30%.Ineachgroup,patientswereanalyzedbygender,age,glaucomatype,diabetes,previousmedications,previousglaucomasurger-ies,meandeviationvalue,previousIOP,lasersuturelysisandfilteringblebrevision.Results:ThosewithIOP<15mmHgor≧15mmHgcomprised78.4%and21.6%,respectively;IOPafter3monthswassignificantlylowintheformergroup.TherespectivepercentagesofcaseswithIOP-reductionrate≧30%or<30%were83.8%and16.2%.Intheformergroup,ageandpreviousIOPweresignificantlylow,andnumberofmedicinesbeforesurgerywassignificantlylarge.Conclusions:PatientswithunfavorableprogressfollowingEX-PRESSRimplantationcom-prised16-22%.Themainriskfactorsforfailurewereage,previousIOP,numberofmedicinesbeforesurgeryandIOPafter3months.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(10):1472.1476,2015〕Keywords:EX-PRESSR併用濾過手術,経過不良,眼圧,眼圧下降率.EX-PRESSRimplantation,unfavorableprogress,intraocularpressure,intraocularpressurereductionrate.1472(100)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科32(10):1472.1476,2015cはじめに1999年以降海外で臨床使用されているEX-PRESSR(AlconInc.,FortWorth,TX)は,プレート部分や調節弁をもたないステンレス製の緑内障手術用ミニデバイスである.EX-PRESSRを用いた濾過手術(以下,EX-PRESSR併用濾過手術)は線維柱帯切除術と似ているが,強膜切開や周辺虹彩切除を必要としない.術後の早期合併症の頻度が線維柱帯切除術より少なく,眼圧下降効果は良好で,線維柱帯切除術と同等と報告されている1.15).日本では2012年5月に緑内障治療用インプラント挿入術が保険適用となり,臨床使用が可能となった.日本人を対象とした報告でも良好な眼圧下降効果が示されている1.4).また,難症例に対しても有効性が報告されている16,17).しかし,EX-PRESSR挿入術後には全例が経過良好ではなく,経過不良例も存在する18).経過不良となる要因が術前あるいは術後の経過観察において判明すれば,症例選択や,術後の経過観察での注意が行いやすいが,〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANEX-PRESSR併用濾過手術後の経過良好例と不良例の比較井上賢治*1藤本隆志*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科ComparisonbetweenPatientswithFavorableandUnfavorableResultsinEX-PRESSRKenjiInoue1),TakayukiFujimoto1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:EX-PRESSR併用濾過手術後に経過不良となる因子を後ろ向きに検討する.方法:EX-PRESSR併用濾過手術後6カ月間の経過観察が可能だった37例37眼を対象とした.6カ月後の眼圧15mmHg未満と15mmHg以上の症例,眼圧下降率30%以上と30%未満の症例に分けた.各群で性別,年齢,病型,糖尿病の有無,術前使用薬剤数,術式,視野meandeviation(MD)値,手術前後の眼圧,lasersuturelysis施行の有無,ブレブ再建術施行の有無を比較した.結果:眼圧15mmHg未満は78.4%,15mmHg以上は21.6%で,前者で3カ月後の眼圧が有意に低かった.眼圧下降率30%以上は83.8%,30%未満は16.2%で,前者で年齢と手術前眼圧が有意に低く,術前投与薬剤数が多かった.結論:EX-PRESSR併用濾過手術の経過不良例は16.22%存在する.危険因子は年齢,手術前眼圧,術前投与薬剤数,3カ月後の眼圧だった.Purpose:WeretrospectivelyinvestigatedcharacteristicsinpatientswithunfavorableprogressfollowingEX-PRESSRglaucomafiltrationdeviceimplantation.Methods:Investigatedwere37eyesof37patientswhohadundergoneEX-PRESSRimplantation.At6monthsaftersurgery,patientsweredividedintothosewithintraocularpressure(IOP)≧15mmHgor<15mmHg,andthosewithIOP-reductionrate≧30%or<30%.Ineachgroup,patientswereanalyzedbygender,age,glaucomatype,diabetes,previousmedications,previousglaucomasurger-ies,meandeviationvalue,previousIOP,lasersuturelysisandfilteringblebrevision.Results:ThosewithIOP<15mmHgor≧15mmHgcomprised78.4%and21.6%,respectively;IOPafter3monthswassignificantlylowintheformergroup.TherespectivepercentagesofcaseswithIOP-reductionrate≧30%or<30%were83.8%and16.2%.Intheformergroup,ageandpreviousIOPweresignificantlylow,andnumberofmedicinesbeforesurgerywassignificantlylarge.Conclusions:PatientswithunfavorableprogressfollowingEX-PRESSRimplantationcom-prised16-22%.Themainriskfactorsforfailurewereage,previousIOP,numberofmedicinesbeforesurgeryandIOPafter3months.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(10):1472.1476,2015〕Keywords:EX-PRESSR併用濾過手術,経過不良,眼圧,眼圧下降率.EX-PRESSRimplantation,unfavorableprogress,intraocularpressure,intraocularpressurereductionrate. それらの報告は少ない19).そこで今回EX-PRESSR併用濾過手術の手術6カ月間の経過良好例と不良例を比較し,経過不良例となりやすい因子を後ろ向きに検討した.I対象および方法2012年6月.2013年9月に井上眼科病院でEX-PRESSR併用濾過手術を行い,6カ月間以上の経過観察が可能だった37例37眼を対象とした.平均年齢は68.2±12.0歳(平均値±標準偏差),29.89歳,男性21例,女性16例だった.病型は原発開放隅角緑内障22例22眼,続発緑内障15例15眼だった.続発緑内障の内訳は落屑緑内障7例,血管新生緑内障7例,白内障手術後1例だった.手術前の平均眼圧は25.8±8.4mmHgで14.62mmHgだった.手術前の平均薬剤使用数は3.9±1.2剤で1.6剤だった.なお,配合点眼薬は2剤として解析した.手術前のHumphrey視野検査プログラム中心30-2SITA-standardのmeandeviation(MD)値は.16.5±8.2dBで,.31.5..1.5dBだった.術式はEX-PRESSR併用濾過手術単独が28例,EX-PRESSR併用濾過手術と白内障手術の同時手術が9例だった.緑内障手術平行にBlue-Grayzoneに穿刺し,25G穿刺創に沿ってEXPRESSRを挿入した.強膜弁を10-0ナイロン糸で4.6針縫合した後,結膜を10-0ナイロン糸で連続縫合した.手術後は眼圧,前房深度,濾過胞の状態をみて,術者の判断でlasersuturelysis(LSL)を行った.LSLは眼球マッサージを行わないと眼圧が十分に下降しないときに施術した.入院期間は7.10日間で,術後の経過により退院日を決定した.手術6カ月後の使用薬剤数の中央値は0剤,第3四分位数は0剤で,使用薬剤がなしの症例が86.5%(32例/37例)だった.緑内障薬剤使用の有無にかかわらず,6カ月後の眼圧が15mmHg未満と15mmHg以上の症例に分けた.さらに6カ月後の眼圧下降率が30%未満と30%以上の症例に分けた.以下の項目に両群で相違があるかを検討した.項目は,①性別,②年齢,③緑内障病型,④糖尿病の有無,⑤術前使用薬剤数,⑥術式,⑦術前のHumphrey視野検査のMD値,⑧3515mmHg以上30眼圧(mmHg)15mmHg未満****の既往がある症例は2例だった.手術はすべて同一術者が行った.角膜輪部に制御糸を掛け,上鼻側あるいは上耳側に円蓋部基底結膜切開を行い,強膜半層の深さで3mm×3mmの強膜弁を作製した.さらに25201510500.04%マイトマイシンCを3分間留置し,balancedsalt手術前術翌日1週間後1カ月後3カ月後6カ月後solution(BSS)100mlにて洗浄した.白内障手術併用症例図1手術6カ月後の眼圧が15mmHg未満症例と15mmHgではこの後,耳側角膜より超音波水晶体乳化吸引術と眼内レ以上症例における手術前後の眼圧ンズ挿入術を行った.その後,25ゲージ(G)針で虹彩面と*p<0.05,***p<0.0001,対応のないt検定.表1手術6カ月後の眼圧が15mmHg未満症例と15mmHg以上症例における各因子の相違15mmHg未満29例15mmHg以上8例p性別(男:女)18:113:050.2540年齢(歳)66.8±11.973.4±11.60.1738緑内障病型原発開放隅角緑内障1840.6897続発緑内障114糖尿病有710.6555無227術前使用薬剤数3.8±1.34.1±0.80.1974術式EX-PRESSR併用濾過手術2080.1589EX-PRESSR併用濾過+白内障同時手術90視野のmeandeviation値(dB).16.7±8.7.15.9±7.70.4124Lasersuturelysis有710.6665無227ブレブ再建術有120.1117無286(101)あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151473 眼圧(手術前,手術翌日,1週間後,1カ月後,3カ月後),⑨入院中のLSL施行の有無,⑩6カ月後までにブレブ再建術施行の有無とした.なお,眼圧はGoldmann圧平眼圧計を用いて測定した.ブレブ再建術はLSLを行っても眼圧が下降せず,眼圧上昇が強膜フラップの癒着が原因と考えられる場合に施行した.統計学的検討は性別,緑内障病型,糖尿病の有無,術式,入院中のLSL施行の有無,6カ月後までにおけるブレブ再建術施行の有無はc2検定を用いた.年齢,術前使用薬剤数,術前のHumphrey視野検査のMD値,眼圧は対応のないt検定を用いた.検定はp<0.05を統計学的有意とした.II結果6カ月後の眼圧が15mmHg未満の症例は29例(78.4%)15mmHg以上の症例は8例(21.6%)だった.眼圧は手術前,(,)手術翌日,1週間後,1カ月後は両群で同等だったが,3カ月後は眼圧15mmHg以上の症例のほうが有意に高かった(3カ月後p<0.05,6カ月後p<0.0001)(図1).両群間に性別,のほうが30%以上症例(66.8±12.1歳)に比べて有意に高かった(p<0.05).術前使用薬剤数は眼圧下降率30%未満症例(4.5±0.5剤)のほうが,30%以上症例(3.7±1.3剤)に比べて有意に多かった(p<0.05).手術前眼圧は眼圧下降率30%未満症例(21.7±3.9mmHg)のほうが30%以上症例(26.5±8.9mmHg)に比べて有意に低かった(p<0.05).III考按EX-PRESSR併用濾過手術の眼圧下降効果については多数報告されている(表3)1.13).今回の全症例での眼圧下降率は手術1カ月後で56.0±19.2%,3カ月後で51.0±19.1%,6カ月後で48.4±18.9%で,過去の報告(36.8.61.0%)とほぼ同等だった.EX-PRESSR併用濾過手術の成功率は成功の定義により異なるが,おおむね良好である(表4)6.8,11,12,19).今回は6カ月3030%未満*30%以上25年齢,緑内障病型,糖尿病の有無,術前使用薬剤数,術式,視野のMD値,LSLの有無,ブレブ再建術の有無に差はなかった(表1).6カ月後の眼圧下降率が30%以上の症例は31例(83.8%),眼圧(mmHg)**201510530%未満の症例は6例(16.2%)だった.眼圧は手術翌日,1週間後,1カ月後,3カ月後は両群で同等だった(図2).両0手術前術翌日1週間後1カ月後3カ月後6カ月後群間に性別,緑内障病型,糖尿病の有無,術式,視野のMD図2手術6カ月後の眼圧下降率が30%未満症例と30%以上値,LSLの有無,ブレブ再建術の有無に差はなかった(表症例における手術前後の眼圧2).一方,年齢は眼圧下降率30%未満症例(75.7±9.2歳)*p<0.05,**p<0.001,対応のないt検定.表2手術6カ月後の眼圧下降率が30%未満症例と30%以上症例における各因子の相違30%以上31例30%未満6例p性別(男:女)20:111:050.0662年齢(歳)66.8±12.175.7±9.2<0.05緑内障病型原発開放隅角緑内障1930.6696続発緑内障123糖尿病有800.3053無236術前使用薬剤数3.7±1.34.5±0.5<0.05術式EX-PRESSR併用濾過手術235>.999EX-PRESSR併用濾過+白内障同時手術81視野のmeandeviation値(dB).16.5±8.5.16.5±8.30.165Lasersuturelysis有71>0.999無245ブレブ再建術有210.4215無295(102) 表3EX-PRESSR併用濾過手術の眼圧下降率報告者文献観察期間眼圧下降率Marzetteら5)1カ月44%前田ら1)3カ月56.10%尾崎ら3)6カ月52.80%木村ら4)6カ月61.00%Marisら6)12カ月39.90%deJong7)12カ月42.00%Sugiyamaら2)12カ月48.52%Seiderら8)1年後36.80%Gavri.ら9)1年後52.80%Dahanら10)24カ月47.80%Goodら12)28カ月45%Dahanら11)30カ月44.13%Salimら13)33カ月53.8.55.1%表4EX-PRESSR併用濾過手術の成功率報告者文献緑内障点眼薬使用成功率の定義観察期間成功率Mariottiら19)不明>5mmHgかつ1年85%≦18mmHg5年63%Marisら6)不問≧5mmHgかつ10.8±3.1カ月90%≦21mmHgdeJong7)使用なし>4mmHgかつ1年71.70%≦15mmHgSeiderら8)不問6.12mmHg1年91%Dahanら11)不問>5mmHgかつ30カ月約80%<18mmHgGoodら12)不問≧5mmHg≦18mmHg28カ月82.85%あるいは眼圧下降率30%以上後の眼圧が15mmHg未満の症例が78.4%で,過去の報告とほぼ同等だった.また,6カ月後の眼圧が5mmHg以下の症例はなかった.MariottiらはEX-PRESSR併用濾過手術の不成功例の危険因子について248例を対象として平均3.46±1.76年の経過観察期間で調査した19).不成功の基準を眼圧5mmHg以下または18mmHgを超えると定め,年齢,性別,人種,緑内障病型,術前使用薬剤数,緑内障手術の既往,糖尿病の有無,喫煙の有無を危険因子として検討した.危険因子は糖尿病,非白人,緑内障手術の既往だった.今回は糖尿病は危険因子でなかった.人種はすべて日本人だった.緑内障手術既往がある症例は2例のみで解析できなかった.喫煙の有無については調査できなかった.三木らはEX-PRESSR併用濾過手術後の経過が思わしくなかった症例を報告した18).経過が思わしくなかった原因として,血管新生緑内障,多重手術既往,虹彩角膜内皮症候群,結膜瘢痕化が強いことがあげられた.今回は,緑内障手術既往のある症例は2例と少なく,虹彩角膜内皮症候群の症例はなかった.血管新生緑内障の症例は7例だったが,7例とも手術6カ月後の眼圧は15mmHg(103)未満で,眼圧下降率も30%以上と経過良好だった.今回経過良好例が78.84%と多かった理由として,Mariottiら19)と三木ら18)がともに危険因子としてあげている多重手術既往症例が2例(5.4%)と少なかったことが考えられる.今回EX-PRESSR併用濾過手術6カ月後までの経過を観察したところ,経過不良の定義により異なるが,経過不良症例は16.22%存在した.その危険因子として年齢,術前使用薬剤数,手術前眼圧,3カ月後の眼圧があげられた.そこで,高齢者で使用の薬剤数が多く,手術前眼圧の低い症例では術後に注意深い経過観察が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)前田征宏,近藤奈津,大貫和徳:Ex-PRESSTMを用いた濾過手術の術後早期成績:Trabeculectomyとの比較.あたらしい眼科29:1563-1567,20122)SugiyamaT,ShibataM,KojimaSetal:Thefirstreportあたらしい眼科Vol.32,No.10,20151475 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