《原著》あたらしい眼科36(2):286.290,2019c10年間以上経過観察を行っている原発開放隅角緑内障症例の視野障害進行井上賢治*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科CVisualFieldProgressioninPrimaryOpenangleGlaucomaPatientswithFollow-upPeriodsofMoreThan10YearsKenjiInoue1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:原発開放隅角緑内障の視野障害進行状況と,関連する因子を後ろ向きに検討する.対象および方法:10年間以上経過観察を行い,その間に緑内障手術や緑内障レーザー治療を行っていない原発開放隅角緑内障C304例C304眼を対象とした.Humphrey視野検査のCmeandeviation(MD)スロープを算出した.MDスロープに関連する因子(性別,年齢,病型,屈折値,観察開始時眼圧,眼圧変動幅,平均眼圧,使用薬剤数,薬剤増加数,観察開始時CMD値,中心角膜厚,白内障手術施行の有無)を検索した.結果:MDスロープはC.0.25±0.27CdB/年で,C.0.5CdB/年以下がC56例(18.4%)だった.MDスロープに関連する因子は年齢,使用薬剤数,薬剤増加数,観察開始時CMD値,観察開始時眼圧だった.結論:10年以上経過観察を行っている原発開放隅角緑内障での視野障害進行はC18.4%でみられた.高齢で観察開始時CMD値が良好な症例で視野障害進行のスピードが速く,注意を要する.CPurpose:ToretrospectivelyinvestigatevisualC.eldprogressionandcorrelatedfactorsinprimaryopen-angleglaucoma(POAG)patientsCwithCfollow-upCperiodsCofCmoreCthanC10years.CMethods:SubjectsCwereC304patients(304eyes)withPOAGwhowerefollowed-upformorethan10years,duringwhichnosurgeryorlasertreatmentforCglaucomaCwasCperformed.CMeandeviation(MD)slopeCbyCHumphreyCwasCcalculated.CFactorsCcorrelatingCwithCMDslope(gender,age,typeofdisease,refractivevalue,baselineMDandIOP,IOPrange,IOPaverage,numberofmedicationsCatCbaseline,CnumberCofCincreasedCmedications,CcentralCcornealCthicknessCandCsurgicalChistoryCofCcata-ract)wereCsearched.CResults:SlopeCgradeCwasC.0.25±0.27CdB/year,CwithC56patients(18.4%)beingClessCthanC.0.5CdB/Cyear.CFactorsCthatCcorrelatedCwithCMDCslopeCwereCage,CnumberCofCmedicationsCatCbaseline,CnumberCofCincreasedmedications,andMDandIOPatbaseline.Conclusions:VisualC.eldprogressionoflessthanC.0.5CdB/ywasobservedin18.4%ofsubjects.ElderlypatientswithincipientstageofMDatbaselinehadworseprognosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C36(2):286.290,C2019〕Keywords:原発開放隅角緑内障,視野障害進行,MDスロープ,高齢,meandeviation値.primaryopenangleglaucoma,visualC.eldprogression,MDslope,elderlypatients,meandeviation.Cはじめに緑内障は視野障害をきたす疾患である.視野障害は改善することはなく,慢性進行性である.そのため緑内障治療は視野障害進行を抑制あるいは停止させることが最終目標となる.緑内障性視野障害の進行速度を示すCmeanCdeviation(MD)スロープは,無治療で経過観察した症例において正常眼圧緑内障(normalCtensionglaucoma:NTG)ではC.0.22CdB/年1),C.0.41CdB/年2),C.0.78CdB/年3),原発開放隅角緑内障(primaryCopenangleCglaucoma:POAG)ではC.0.46dB/年1)と報告されている.また,緑内障性視野障害の進行抑制に対して,唯一エビデンスが得られているのが眼圧下降である4).しかし,眼圧を十分に下降(眼圧下降率C30%以上)させても視野障害が進行する症例や,無治療でも視野障害が進行しない症例が存在する4).どのような症例で視野障害が〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC286(156)進行するか判明すれば,緑内障の治療方針の参考となる.緑内障による視野障害進行を検討した報告は過去に多数あるが5.10),10年間以上の長期間にわたる視野障害進行を検討した報告は少ない9,10).また,300例以上の多数症例での報告は過去にない.そこで今回C10年間以上の長期にわたり経過観察できた多数症例の(広義)POAGの視野障害進行状況と視野障害進行に関連する因子を後ろ向きに検討した.CI対象および方法井上眼科病院に通院中で,10年間以上経過観察可能であった(広義)POAG304例C304眼を対象とした.対象の概要を表1に示す.組入基準として,Humphrey視野中心C30-2プログラムCSITAStandardの信頼性のあるデータがC16回以上得られた症例とした.信頼性のあるデータは固視不良20%以下,偽陽性C33%以下,偽陰性C33%以下とした.また,Humphrey視野検査によるCMD値がC.18.0CdB以上の症例とした.除外基準として経過観察中に選択的レーザー線維柱帯形成術(selectiveClasertrabeculoplasty:SLT)施行眼,緑内障手術施行眼とした.両眼該当例では右眼を対象とした.Humphrey視野検査によるCMDスロープを各症例で算出した.MDスロープに関連する因子を重回帰分析で解析した.従属変数はCMDスロープとした.独立変数は性別,観察開始時年齢,病型,観察開始時屈折値,観察開始時眼圧,経過観察中の眼圧変動幅,経過観察中の平均眼圧,観察開始時使用薬剤数,薬剤増加数,観察開始時CMD値,中心角膜厚,経過観察開始時の白内障手術施行有無とした.MDスロープC.0.5CdB/年以下とC.0.5CdB/年超の症例に分けて上記各因子の相違を解析した.さらに視野障害度による症例の検討を行った.具体的には観察開始時CMD値をC.6.0dB超(初期),C.12.0dB以上C.6.0dB以下(中期),C.18.0dB以上C.12.0CdB未満(後期)のC3群に分けて上記各因子とMDスロープの相違を解析した.MDスロープC.0.5CdB/年以下とC.0.5CdB/年超の症例の解析には,観察開始時年齢,観察開始時の屈折値,観察開始時眼圧,経過観察中の眼圧変動幅,観察開始時使用薬剤数,薬剤増加数,観察開始時CMD値はCMann-WhitneyU検定を,平均眼圧,中心角膜厚は対応のないCt検定を,性別,病型,白内障手術施行有無はCc2検定を使用した.視野障害度による症例の解析には,観察開始時年齢,観察開始時屈折値,観察開始時眼圧,経過観察中の眼圧変動幅,観察開始時使用薬剤数,薬剤増加数,中心角膜厚,MDスロープはCKruskal-Wallis検定を,3群に有意差があればCMann-WhitneyU検定を,平均眼圧はCone-wayANOVAを,3群に有意差があればCBonferroni-Dunn検定を,性別,病型,白内障手術施行有無はCc2検定を使用した.有意水準はp<0.05とした.表1対象の概要性別男性C135例,女性C169例観察開始時年齢C52.3±10.2歳(22.74歳)病型NTG185例,POAG119例観察開始時屈折値C.4.2±3.7D(C.17.0.+3.5D)観察開始時眼圧C15.7±2.3CmmHg(11.21mmHg)観察開始時使用薬剤数C1.8±1.2剤(0.4剤)観察開始時CMD値C.6.95±4.68CdB(C.17.69.+1.74dB)中心角膜厚C527.1±34.9Cμm(392.624Cμm)解析視野検査回数C24.0±4.8回(16.39回)平均観察期間C11.6±1.1年(10.14年)本臨床試験は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認された.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者が拒否できる機会を保障した.CII結果全症例(304例)のCMDスロープはC.0.25±0.27CdB/年(平均値C±標準偏差),C.1.30.0.30dB/年だった.MDスロープがC.0.5dB/年以下の症例はC56例(18.4%),C.1.0CdB/年以下の症例はC7例(2.3%)だった(図1).MDスロープに関連する因子は観察開始時年齢,観察開始時眼圧,観察開始時使用薬剤数,薬剤増加数,観察開始時MD値だった(表2).観察開始時年齢が高いほど,観察開始時眼圧が低いほど,使用薬剤数が多いほど,薬剤増加数が多いほど,観察開始時CMD値が高値なほどで,MDスロープの値が小さかった(視野進行障害が早かった).MDスロープC.0.5CdB/年以下とC.0.5CdB/年超の症例の比較では,観察開始時年齢,薬剤増加数に有意差がみられた(表3).MDスロープがC.0.5dB/年以下の症例ではC.0.5CdB/年超の症例に比べて有意に年齢が高く(p<0.001),薬剤数が増加していた(p<0.01).視野障害度による症例比較では,緑内障病型は後期症例で初期症例に比べてCNTGが有意に少なかった(p<0.01,p=0.008)(表4).使用薬剤数は初期症例が中期症例,後期症例に比べて有意に少なかった.(p<0.001,p<0.001).白内障手術施行例は中期症例が初期症例に比べて有意に多かった(p<0.05).MDスロープは初期症例と中期症例が後期症例に比べて有意に低値だった(p<0.05).CIII考按緑内障患者の視野障害進行の検討は多数報告されている5.10)が,報告により対象,経過観察期間,視野障害進行判定が異なるのでその評価はむずかしい.NaitoらはCPOAG,CNTG156例を平均C7.6年間経過観察した5).MDスロープの有意な悪化を視野障害進行と定義したところ,視野障害進行例はC44.9%だった.視野障害進行例の特徴は,ベースライ(例)60535250403020100-1.3-1.2-1.1-1.0-0.9-0.8-0.7-0.6-0.5-0.4-0.3-0.2-0.10.00.10.20.3(dB/年)図1MDスロープの分布表2MDスロープに関連する因子独立変数p値Cb性別C0.6160C.0.029観察開始時年齢<C0.0001C.0.267病型C0.7683C.0.022観察開始時屈折値C0.2716C0.072観察開始時眼圧C0.0225C0.125経過観察中の眼圧変動幅C0.2502C.0.071経過観察中の平均眼圧C0.0862C0.128観察開始時使用薬剤数C0.0035C.0.215薬剤増加数C0.0001C.0.272観察開始時CMD値C0.0004C.0.214中心角膜厚C0.6054C.0.031白内障手術施行C0.1812C0.079表3MDスロープ.0.5dB/年以下と.0.5dB/年超の症例比較.0.5dB/年以下.0.5dB/年超項目C(有意に悪化)(有意な変化なし)p値56例C248例性別男性C21:女性C35男性C114:女性C134C0.249観察開始時年齢(歳)C57.5±11.9C52.3±10.3<C0.001病型(例)NTG33:POAGC23NTG152:POAGC96C0.744観察開始時屈折値(D)C.3.2±4.1C.4.2±3.6C0.065観察開始時眼圧(mmHg)C15.9±3.0C15.8±2.5C0.708経過観察中の眼圧変動幅(mmHg)C7.2±2.1C6.9±2.1C0.378経過観察中の平均眼圧(mmHg)C14.2±1.7C14.2±1.7C0.866観察開始時使用薬剤数(剤)C1.1±0.9C1.3±1.0C0.200薬剤増加数(剤)C1.1±1.1C0.6±0.8C0.001観察開始時CMD値(dB)C.5.77±3.55C.7.21±4.86C0.0957中心角膜厚(Cμm)C524.6±37.2C527.7±34.5C0.7002白内障手術施行あり4:なしC52ありC31:なしC217C0.257Cン眼圧が低い,眼圧下降率が低い,眼圧変動幅が大きいだっところ,視野障害進行例はC23.1%だった.視野障害進行例た.MuschらはCPOAG,色素緑内障C293例をC9年間経過観の特徴は最大眼圧が高い,眼圧変動幅が大きい,眼圧のばら察した6).MD値のC3CdB以上悪化を視野障害進行と定義したつき〔standarddeviation(SD)値〕が大きいだった.Fuku-表4視野障害度による症例比較.6.0CdB超C.12.0.C.6.0CdBC.12.0CdB未満項目(初期)151例(中期)99例(後期)54例p値性別男性C58:女性C93男性C48:女性C51男性C29:女性C25C0.093観察開始時年齢(歳)C53.3±10.8C53.8±11.3C52.6±10.3C0.777病型(例)NTG103:POAGC48NTG58:POAGC41NTG24:POAGC30C0.008観察開始時屈折値(D)C.3.8±3.6C.4.4±3.9C.4.2±3.6C0.388観察開始時眼圧(mmHg)C16.1±2.7C15.3±2.6C15.7±2.3C0.094経過観察中の眼圧変動幅(mmHg)C7.0±2.1C6.7±1.9C7.5±2.5C0.215経過観察中の平均眼圧(mmHg)C14.3±1.6C14.1±1.8C14.2±1.7C0.599観察開始時使用薬剤数(剤)C1.0±0.9C1.5±1.0C1.8±1.1<C0.001薬剤増加数(剤)C0.7±0.9C0.7±0.9C0.6±1.0C0.326中心角膜厚(Cμm)C528.6±34.4C530.6±36.5C516.7±32.0C0.062白内障手術施行ありC10:なしC141ありC19:なしC80あり6:なしC48C0.010MDスロープ(dB)C.0.28±0.13C.0.25±0.14C.0.15±0.13C0.01CchiらはCPOAG121例を平均C8.68年間,NTG166例を平均9.19年間経過観察した7).POAGのCMDスロープはC.0.51±0.63dB/年で,MDスロープに関連する因子は,性別(男性),観察開始時年齢,経過観察中の平均眼圧だった.NTGのMDスロープはC.0.35±0.41CdB/年で,MDスロープに関連する因子は観察開始時の年齢,観察開始時のCMD値,経過観察中の眼圧変動(SD)だった.KoonerらはCPOAG487例を平均C5.5年間経過観察した8).失明に至る症例の特徴を調査した.失明の定義は,矯正視力C20/200以下あるいは視野が中心C20°以内とした.失明に至る症例はC42.1%(205例/487例)で,その特徴は平均眼圧が高い,眼圧の変動が大きい,発見が遅れた,眼圧コントロール不良,コンプライアンス不良だった.KomoriらはCNTG78例を平均C18.3年間経過観察した9).MDスロープはC.0.30±0.29CdB/年だった.視野障害進行例をCMD値がC3CdB以上悪化とした場合には53.8%,MDスロープがC.0.5CdB/年以下とした場合にはC19.2%だった.視野障害進行の危険因子は視神経乳頭出血と経過観察中の眼圧変動だった.KimらはCNTG121例を平均C12.2年間経過観察した10).緑内障の進行を構造的変化と視野障害進行のいずれかとした場合にはC46.3%が該当した.危険因子は視神経乳頭出血と眼圧下降不良だった.今回の症例でのMDスロープはC.0.25±0.27CdB/年で,過去の報告7,9)より良好だった.また,MD値がC3CdB以上悪化した症例はC45.4%(138例/304例)で,Muschらの報告(23.1%)6),Komoriらの報告(19.2%)9)より視野障害進行例が多かった.今回CMDスロープに関連する因子として年齢,観察開始時使用薬剤数,観察開始時CMD値,観察開始時眼圧値,増加薬剤数があげられた.視野障害進行が早い(MDスロープ値が小さい)症例には年齢が高い,観察開始時の使用薬剤数が多い,観察開始時CMD値が高値,観察開始時眼圧が低値,使用薬剤数が増加という特徴がみられた.原因として年齢が高いほど余命を考えて緑内障手術は控える傾向となる.使用(159)薬剤が多い症例ではさらに薬剤を増やすことは困難なのでSLTや緑内障手術を施行することが多い.観察開始時CMD値が高値で初期の症例では,視野障害が進行する余地が大きい.言い換えるとCMD値が低値で後期の症例では,それ以上はなかなか進行しない.観察開始時眼圧が低値な症例では,加療がむずかしく,視野障害が進行しても経過観察する傾向がある.眼圧が高値な症例ではCSLTや緑内障手術を行う頻度も高い.使用薬剤数が増加した症例では視野障害が進行したために目標眼圧を下げる必要が生じた9)と考えられる.このことからたとえば他院で診療を行っている緑内障患者を初めて診察する場合は,年齢,使用薬剤数,MD値,眼圧を考慮し,その後の治療にあたる必要がある.FukuchiらはCMDスロープC.0.3CdB/年を基準としてCPOAG,NTG症例で各因子の相違を検討した7).POAG症例ではCMDスロープC.0.3CdB/年以下の症例ではC.0.3CdB/年超の症例に比べて,年齢は高く,経過観察期間は短く,経過観察開始時CMD値は良好で,平均眼圧は高く,経過観察中の最高眼圧が高く,最低眼圧が高く,平均眼圧下降率が不良だった.NTG症例ではCMDスロープC.0.3CdB/年以下の症例ではC.0.3CdB/年超の症例に比べて,経過観察中の最高眼圧が高く,眼圧変動幅が大きかった.今回の研究ではCMDスロープC.0.5CdB/年を基準として検討した.症例はCNTG(185例)がCPOAG(119例)より多かった.MDスロープC.0.5CdB/年以下の症例ではC.0.5CdB/年超の症例に比べて,年齢が高く,薬剤増加が多かった.Fukuchiらの報告7)と今回の研究の結果の共通点として年齢が高い症例はリスクが高いと考えられる.今回の研究の視野障害度による比較においても,初期症例(C.6.0CdB超)と中期症例(C.12.0CdB.C.6.0CdB)は後期症例(C.18.0CdB.C.12.0dB)に比べてCMDスロープが有意に小さかった.今回の研究の視野検査の経過観察開始時期はC2000年C1月.2007年C6月である.それ以前には視野検査はCHumphrey視野中心C30-2FullThresholdで行っていた.Humphrey視あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019C289野検査のプログラムを中心C30-2SITAStandardへ変更したので,その時期を開始として検討した.そのため,すでに点眼薬治療中の症例も多く,各症例のベースライン眼圧は不明だった.理想的にはベースライン眼圧が判明し,治療開始時を観察開始時とするほうがよいが,今回は日常診療のなかでの評価を考えて,視野検査のプログラムを変更した時期を観察開始とした.したがって経過観察開始時に眼圧が高値,あるいは視野障害進行中の症例も含まれていた可能性がある.視野障害進行を検討したが,ベースラインからの視野障害進行の評価はできなかった.他にも今回の研究には問題点が多数ある.後ろ向き研究のためにさまざまな理由で来院中断となった症例は組入れされていない.治療強化の基準が定められていないので,点眼薬の追加や緑内障手術への移行のタイミングは症例ごとに異なっていた.視野障害が中心近傍に進行した症例では,Humphrey視野検査がC30-2プログラムからC10-2プログラムへ変更したり,Goldmann視野検査に変更したりするが,それらの症例は除外された.経過観察中に緑内障手術が行われた症例は除外されており,それらの症例では視野障害が進行している可能性が高い.眼圧測定時間は全症例で統一されておらず,症例ごとにおいても眼圧測定時間がほぼ同一の症例もあれば,さまざまな時間帯の症例も存在する.通院間隔も統一されておらず,眼圧測定回数も症例ごとに異なる.点眼アドヒアランスは評価されていないので,点眼薬をきちんと使用しているかは不明である.今回,10年間以上経過観察可能だったCPOAG症例の視野障害進行状況と視野障害進行に関連する因子を検討した.視野障害進行をCMDスロープC.0.5CdB/年以下と定義すると18.4%の症例が該当した.高齢で,多剤併用で,MD値が初期の症例で視野障害が進行しやすく,経過観察において注意を要する.文献1)HeijilA,BengtssonB,HymanLetal:Naturalhistoryofopen-angleCglaucoma.COphthalmologyC116:2271-2276,C20092)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CNaturalhistoryofnormal-tensionglaucoma.Ophthalmolo-gyC108:247-253,C20013)KosekiCN,CAraieCM,CYamagamiCJCetal:E.ectsCofCoralCbrovincamineonvisualC.elddamageinpatientswithnor-mal-tensionCglaucomaCwithClow-normalCintraocularCpres-sure.JGlaucomaC8:117-123,C19994)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CThee.ectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentCofCnormal-tensionCglaucoma.CAmCJCOphth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