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DSAEK とPKP 術後の角膜ヒステリシスの比較

2022年11月30日 水曜日

《原著》あたらしい眼科39(11):1525.1529,2022cDSAEKとPKP術後の角膜ヒステリシスの比較山口裕子竹澤由起池川和加子井上英紀坂根由梨原祐子白石敦愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座CAnalysisofCornealHysteresisafterDSAEKandPKPHirokoYamaguchi,YukiTakezawa,WakakoIkegawa,HidenoriInoue,YuriSakane,YukoHaraandAtsushiShiraishiCDepartmentofOphthalmology,EhimeUniversitySchoolofMedicineC目的:角膜内皮移植術(DSAEK)および全層角膜移植(PKP)術後の角膜ヒステリシスについて比較検討した.対象および方法:対象はC2020年C7月.9月に愛媛大学附属病院を受診し,DSAEKまたはCPKPを施行したCDSAEK群22例C22眼(76.0C±7.6歳),PKP群C17例C17眼(69.8C±15.4歳)で,角膜手術歴のない僚眼を対照群とした.OcularResponseCAnalyzer(ORA)で角膜ヒステリシス(CH),Goldmann相関眼圧(IOPg),補正眼圧(IOPcc)を測定した.結果:CHはCDSAEK術眼C7.4C±1.6,僚眼C9.3C±1.0CmmHg(p<0.001),PKP術眼C8.6C±1.8,僚眼C9.6C±1.6CmmHg(p<0.05)で両群とも有意に術眼が僚眼より低く,術眼の比較ではCDSAEK群がCPKP群より低かった(p=0.047).IOPgはDSAEK術眼C12C±6.7,PKP術眼C17.5C±6.7CmmHgでCDSAEK術眼が有意に低かった(p=0.045)が,IOPccはCDSAEK術眼C16.2C±6.4,PKP術眼C19.8C±6.8CmmHgで有意差はなかった.結論:角膜移植術後,とくにCDSAEK術後ではCCHが低いため,補正前の眼圧(IOPg)よりも補正後の眼圧(IOPcc)が高くなる.CPurpose:Tocomparecornealhysteresis(CH)usingtheOcularResponseAnalyzer(ORA;ReichertOphthal-micInstruments)intheeyesofpatientswhounderwentpenetratingkeratoplasty(PKP)andDescemetstrippingautomatedCendothelialkeratoplasty(DSAEK)withCthatCinCtheCnormalCfellowCeyes.CMethods:ThisCcross-sectionalCcomparativestudyinvolved22post-DSAEKeyes(DSAEKgroup;meanage:76.0C±7.6years)C,17post-PKPeyes(PKPgroup;meanage:69.8C±15.4years),andtherespectivenormalfelloweyes.Inalleyes,theORAwasusedtoCmeasureCCH,CGoldmann-correlatedIOP(gcIOP)C,CandCcorneal-compensatedIOP(ccIOP)C.CResults:MeanCCHCinCtheDSAEKgroupandPKPgroupwas7.4±1.6CmmHgand8.6±1.8CmmHg,respectively,andsigni.cantlylowerinbothCgroupsCcomparedCtoCtheCrespectiveCnormaleyes(p<0.001,Cp=0.047)C.CMeanCCHCinCtheCDSAEKCgroupCwassigni.cantlylowerthanthatinthePKPgroup(p=0.037)C.MeangcIOPintheDSAEKgroup(12C±6.7mmHg)wassigni.cantlyClowerCthanCthatCinCtheCPKPgroup(17.5C±6.7CmmHg)(p=0.045)C.CMeanCccIOPCinCtheCDSAEKCgroupCandPKPgroupwas16.2±6.4CmmHgand19.8±6.8CmmHg,respectively,withnosigni.cantdi.erencebetweenthetwogroups.Thedi.erencebetweenccIOPandgcIOP(CΔIOP)wassigni.cantlyhigherintheDSAEKgroup(4.2C±1.7mmHg)thaninthePKPgroup(2.3C±1.7mmHg)(p=0.002)C,andasigni.cantnegativecorrelationwasfoundbetweenCCHCwithCccIOPCandΔCIOP.CConclusion:CHCpostCPKPCandCDSAEKCwasClowerCthanCthatCinCnormalCeyes,CandthevaluesofccIOPwerehigherthanthoseofgcIOP,especiallypostDSAEK.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(11):1525.1529,C2022〕Keywords:角膜ヒステリシス,OcularResponseAnalyzer,全層角膜移植,角膜内皮移植術,補正眼圧.cornealhysteresis,OcularResponseAnalyzer,PKP,DSAEK,corneal-compensatedintraocularpressure.Cはじめに染症,縫合による不正乱視などの問題も多く,近年では角膜水疱性角膜症や角膜混濁などの角膜疾患に対する外科的治内皮移植術(DescemetCstrippingCautomatedCendothelial療として,従来は全層角膜移植(penetratingkeratoplasty:karatoplasty:DSAEK)などの角膜パーツ移植が登場したこPKP)がおもに施行されてきた.しかし,術後拒絶反応や感とにより,合併症のリスクが少ない術式の選択肢が増えてい〔別刷請求先〕山口裕子:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部眼科学教室Reprintrequests:HirokoYamaguchi,M.D.,DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversitySchoolofMedicine,Shitsukawa,Toon,Ehime791-0295,JAPANCる.一方で,DSAEK後の眼圧上昇やCDSAEK後の角膜厚の増加が眼圧測定の精度に悪影響を与える可能性を指摘する報告1)もあり,DSAEKにおいても合併症の課題は少なからず残っている.角膜移植後の眼圧上昇は重大な合併症の一つであるが,角膜移植後では縫合糸や残存する角膜浮腫などの影響による角膜上皮の不整や角膜厚が一定でないことが多く,どのような眼圧計を用いても測定値に影響を受ける2,8).さらに角膜移植後は眼底透見性も不良となりやすく,視神経乳頭所見や視野異常の判定が困難なことが多い2).そのため角膜移植後では,緑内障管理のみならず眼圧測定値についても正しく評価することがむずかしい.また,近年の日本におけるCDSAEKの原因疾患では,Fuchs角膜ジストロフィやレーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症よりも線維柱帯切除術後の水疱性角膜症が増えている3).そのためCDSAEK後の眼圧測定精度については既存の緑内障進行の面においても重要と考えられる.近年,角膜生体力学特性の概念が臨床的に用いられ,眼圧計測や緑内障進行に関連する可能性があることが報告されている4.7).角膜は外力が加わり変形すると,元に戻ろうとする弾性と,押し込まれたときと戻るときの動きに抵抗する粘性を併せ持つ“粘弾性”が働く.弾性によって戻ろうとする動きを粘性が抑えるため,角膜頂点を押し込むときと戻るときの動きは一致しない.この動きの違いにより,角膜に加えられたエネルギーは吸収され,その特性を角膜ヒステレシス(cornealhysteresis:CH)といい,角膜生体力学特性の一つとされる.OcularResponseCAnalyzer(ORA,Reichert社)は,定量的にCCHを測定でき,ORAで与える空気圧エネルギーを多く吸収できる場合には計測されるCCHが高くなり,反対に空気圧エネルギーの吸収が少ない場合にはCCHは低くなる.CHは日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン(第C4版)で進行危険因子の一つとして記載されており,低いCCHは緑内障性視野障害の進行に相関があるとの報告もある6.8).眼科手術のなかでも,とくに角膜移植後は前眼部構造が大きく変化するため,角膜生体力学特性も変化すると考えられる.これまでにもCPKP術後やCDSAEK術後では正常眼と比べてCCHが低いとの報告があり8.10),角膜移植後の生体力学特性の変化は,眼圧測定や角膜移植後緑内障に影響している可能性がある.そこで今回,筆者らはCORAを用いて,DSAEK後とCPKP後の角膜ヒステリシスや眼圧測定値について比較検討を行った.CI対象および方法対象はC2020年C7月.10月に愛媛大学附属病院眼科を受診したCDSAEK眼(DSAEK群)22名C22眼,平均年齢C76.0C±7.6歳(62.87歳),平均術後経過月数C26.7C±34.3カ月(1.132カ月),PKP眼(PKP群)17名C17眼,平均年齢C68.7C±15.4(26.86歳),平均術後経過月数C31.1C±34.5カ月(1.136カ月)である.DSAEK,PKP群ともに術後移植片不全や拒絶反応を認める症例は除外とした.対照群は,角膜移植歴および角膜疾患のないそれぞれの僚眼とした.検討項目はReichert社製COcularResponseCAnalyzer(ORA)を用いて測定したCH,およびCGoldmann相関眼圧値(Goldmann-cor-relatedCIOPmeasurement:IOPg),CHを考慮した補正眼圧値(corneal-compensatedIOP:IOPcc),また中心角膜厚(centralCcornealthickness:CCT)とした.CCTはCTOMEYCASIA2で測定を行った.各項目について後ろ向きに検討した.すべての統計解析には統計ソフトウェアJMP11を使用し,p<0.05をもって有意とした.なお本研究は愛媛大学医学部附属病院倫理委員会の承認(承認番号:1503007)のもと行った.CII結果原疾患の内訳は,DSAEK群ではすべて水疱性角膜症で,PKP群では角膜感染がC6眼,外傷がC4眼,水疱性角膜症C5眼,ICE症候群C1眼,サイトメガロウイルス角膜内皮炎C1眼であった.また,緑内障手術既往はCDSAEK群ではC15眼,PKP群ではC3眼でありCDSAEK群で有意に多かった.DSAEK群とCPKP群において平均年齢,平均術後期間に有意差は認めなかった(表1).まずCDSAEK群,PKP群それぞれにおける術眼と僚眼(対照群)での比較(表2)では,CCTはCDSAEK群では術眼が僚眼よりも有意に厚いが,PKP群では術眼と僚眼に有意差は認めなかった.CHは,DSAEK群では術眼C7.4C±1.6CmmHg,僚眼C9.3C±1.0CmmHg,PKP群では術眼C8.6C±1.8CmmHg,僚眼C9.6C±1.6CmmHgと両群とも術眼が有意に低かった.またIOPg,IOPccでは,DSAEK群では術眼と僚眼に有意差を認めなかったが,PKP群では術眼が僚眼より有意に高かった.さらにCIOPccとCIOPgの差(CΔIOP)においては,DSAEK群では術眼が僚眼より有意にCΔIOPが大きく,PKP群では術眼と僚眼に有意差を認めなかった.つぎに,DSAEK群およびCPKP群における術眼での比較(表3)では,DSAEK群の術眼においてCCHおよびCIOPgは有意にCPKP群の術眼より低かった.IOPccは両群間で有意差は認めなかった.CΔIOPにおいてはCDSAEK術眼で有意にCPKP術眼より大きかった.最後に各群におけるCCHとの相関を検討した.年齢や術後期間,graft/host厚比,CCTおよびCIOPgではCDSAEK群,PKP群ともに有意な相関を認めなかったが,IOPccおよびCΔIOPは両群ともCCHと負の相関を認めた(表4,図1).CIII考察今回の検討では,DSAEK,PKP両群ともに術眼でのCCH表1対象の内訳DSAEK群PKP群p値症例22眼17眼性別男性C12眼,女性C10眼男性C10眼,女性C7眼年齢C76±7.6歳(62.8C7歳)C68.7±15.4歳(26.8C6歳)Cp=0.105術後平均期間(カ月)C26.7±34.4C31.1±34.5Cp=0.695原疾患水疱性角膜症2C2眼角膜感染6眼水疱性角膜症5眼外傷4眼ICE症候群1眼サイトメガロウイルス角膜内皮炎1眼緑内障手術既往15眼3眼C*p=0.003Paired-t検定およびCFisher正確検定,*:有意差あり.年齢,術後平均期間において,各群間での有意差は認めなかった.DSAEK群ではCPKP群より有意に緑内障手術既往眼が多かった.表2DSAEK群,PKP群の術眼と僚眼(対照群)での比較DSAEK群PKP群術眼僚眼p値術眼僚眼p値CCT(Cμm)C633±89.4C532±48.7*p<C0.001554±68.5C537±48.9Cp=0.84CH(mmHg)C7.4±1.6C9.3±1.0*p<C0.0018.6±1.8C9.6±1.6C*p=0.047IOPg(mmHg)C12.0±6.7C12.8±3.2Cp=0.633C17.5±6.7C13.0±3.3C*p=0.031IOPcc(mmHg)C16.2±6.4C14.8±2.9Cp=0.331C19.8±6.8C14.7±3.5C*Cp=0.013ΔIOP(mmHg)C4.16±1.7C2.03±1.2*p<C0.0012.28±1.7C1.64±1.8Cp=0.21Paired-t検定,*:有意差あり.CCT:中心角膜厚,CH:角膜ヒステレシス,IOPg:Goldmann相関眼圧値,IOPcc:補正眼圧値,ΔIOP:IOPccとCIOPgの差(IOPcc-IOPg).各群の術眼と僚眼での比較では,DSAEK群でCCT,CH,CΔIOPにおいて有意差を認めた.一方CPKP群ではCH,IOPg,IOPccにおいて有意差を認めた.表3DSAEK群,PKP群の術眼での比較DSAEK群の術眼PKP群の術眼p値CH(mmHg)C7.4±1.6C8.6±1.8C*p=0.037IOPg(mmHg)C12.0±6.7C17.5±6.7C*p=0.045IOPcc(mmHg)C16.2±6.4C19.8±6.8Cp=0.225CΔIOP(IOPcc-IOPg)C4.16±1.7C2.28±1.7C*p=0.002Paired-t検定,*:有意差あり.CCT:中心角膜厚,CH:角膜ヒステレシス,IOPg:Goldmann相関眼圧値,IOPcc:補正眼圧値,ΔIOP:IOPccとCIOPgの差(IOPcc-IOPg).術眼での比較では,CH,IOPgはともにCDSAEK群で有意に低く,CΔIOPはDSAEK群で有意に大きかった.が僚眼より有意に低くなっており,既報とも一致した結果ででIOPgやIOPccに有意な差はなく,PKP群では術眼であることから角膜移植術後眼ではCCHが低下している可能性IOPg,IOPccともに有意に僚眼より高くなっていた.これが示唆された8.10).一方で,今回CDSAEK群では術眼と僚眼はCDSAEK術後に比べるとCPKP術後ではステロイド点眼使表4DSAEK群,PKP群におけるCHとの相関DSAEK群PKP群p値相関係数p値相関係数CIOPgCp=0.31Cr=.0.23Cp=0.089Cr=.0.42CIOPccC*Cp=0.028r=.0.47C*Cp=0.005r=.0.64CΔCIOP*p<C0.001r=.0.85*p<C0.001r=.0.87CCCTCp=0.82Cr=0.05Cp=0.66Cr=.0.11graft厚/host厚Cp=0.91Cr=0.03C..平均術後期間Cp=0.34Cr=0.21Cp=0.21Cr=.0.32年齢Cp=0.62Cr=0.11Cp=0.11Cr=0.11Pearsonの積率相関係数,*:有意差あり.CCT:中心角膜厚,CH:角膜ヒステレシス,IOPg:Goldmann相関眼圧値,IOPcc:補正眼圧値,ΔIOP:IOPccとCIOPgの差(IOPcc-IOPg).両群ともCIOPccおよびCΔIOPにおいてCCHと有意な負の相関を認めた.CHCHΔIOPΔIOP図1:CHとΔIOPの相関両群ともCCHとCΔIOPにおいて有意な負の相関を認めた(p<0.001,Pearsonの積率相関係数).用が長期であることや,DSAEK群で有意に緑内障手術後の水疱性角膜症が多かったことが影響し,僚眼との比較においてこのような結果となったと考える.術眼における比較では,DSAEK群の術眼がCPKP群の術眼より有意にCCHが低く,さらにCCHを考慮し補正された眼圧であるCIOPccとCIOPgの差(CΔIOP)においても,DSAEK術眼では僚眼およびCPKP術眼と比較しても有意に大きかった.以上の結果より,DSAEK術眼では緑内障手術既往眼が多いため,僚眼と有意差をもつほどの高い眼圧値とはならないものの,PKP術眼よりもCΔIOPが大きく,DSAEK眼のIOPccはIOPgより高くなりやすい可能性があると思われる.また今回CCHと有意な相関を認めたのはCIOPccとCΔCIOPのみであり,どちらも負の相関であった.IOPccはCCHを考慮し補正された眼圧であり,その補正計算式などの詳細な情報は明らかとなっていないが,CHが低いほどその補正された眼圧であるCIOPccが大きくなることは補正上当然の結果である.またΔIOPにおいてもCCHと有意な負の相関を認めたが,CHが低いほどその補正された眼圧であるCIOPccとIOPgとの眼圧測定値の差が大きくなることから,これも補正上当然の結果といえる.一方で,今回の検討においてはCDSAEK群,PKP群ともにCCCTやCgraft厚/host厚比,術後平均期間,および年齢とはCCHと有意な相関は認めなかった.正常眼におけるCCHでは,CCTが薄く眼圧が高い症例ほどCCHは低くなるが,年齢や性別についてはCCHと明らかな相関は認めないという報告11)がある.しかしながら,角膜移植術後のCCHに関する既報では,PKPおよびCDSAEK後どちらも有意に正常眼よりもCCHが低く,IOPccと負の相関がある一方,CCTとは相関しないという報告8,10)があることから,やはり角膜移植後ではその角膜生体力学特性は正常眼とは異なり,角膜厚以外にもドナー角膜の剛性や術後構造変化などさまざまな因子が複雑に関連している可能性が考えられる.角膜移植術後においてCCHが変化する理由はこれまで明らかとはなっていないが,既報では角膜移植後の曲率の変化や残存レシピエント角膜の力学特性の影響の可能性を推察する報告10)のほか,ドナーとレシピエント間の創傷治癒反応による影響を指摘する報告12)などがある.PKP術後においては縫合による影響の可能性も考えられるが,既報では縫合糸の有無による眼圧やCCHなどへの相関はみられていない13).一方CDSAEKにおいては,水疱性角膜症に伴う術前からの慢性的な角膜浮腫によって実質コラーゲンがたるんでしまい,実質が置き換わるCPKPと違ってCDSAEKでは移植後もその影響が残るため,CHが低いのではないかと推察する報告12)もある.今回の検討においては,既報とほぼ一致する結果であったが,一方で術後経過中一度のみの測定結果であるため,術前および術後経過中の角膜力学特性については評価できなかった.また,Fuchs角膜ジストロフィや緑内障多重手術後など水疱性角膜症の原因による角膜力学特性の違いや術前後での角膜浮腫の軽減に伴う経時的なCCHの変化については今後症例数を増やし,検討課題としたい.角膜移植が必要な症例では,術前から緑内障を合併している患者や,術後もステロイド使用などの影響によって続発緑内障を合併する患者も多く,眼底透見性の低下や眼圧測定がむずかしく緑内障進行の評価が困難なことが多い.今回の検討では角膜移植術後,とくにCDSAEK後においてはCCHが低く,IOPgとCCHを考慮した補正後眼圧CIOPccとの差が大きかった.今回,実際のCGoldmann眼圧は測定していないため,一般の非接触眼圧計での測定値とCIOPg,およびIOPccとの差は不明であるが,今回の結果から角膜移植術後眼において,一般的な補正機能のない非接触眼圧計の測定値の解釈には注意が必要と考えられた.文献1)EspanaCEM,CRobertsonCZM,CHuangB:IntraocularCpres-sureCchangesCfollowingCDescemet’sCstrippingCwithCendo-thelialCkeratoplasty.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC248:237-242,C20102)森和彦:角膜移植後の緑内障はこう治す.あたらしい眼科C26:317-321,C20093)NishinoCT,CKobayashiCA,CYokogawaCHCetal:AC10-yearCreviewofunderlyingdiseasesforendothelialkeratoplasty(DSAEK/DMEK)inatertiaryreferralhospitalinJapan.ClinOphthalmolC12:1359-1365,C20184)DascalescuD,CorbuC,VasilePetal:TheimportanceofassessingCcornealCbiomechanicalCpropertiesCinCglaucomaCpatientsCcare-aCreview.CRomCJCOphthalmolC60:219-225,C20165)CongdonCNG,CBromanCAT,CBandeen-RocheCKCetal:Cen-tralCcornealCthicknessCandCcornealChysteresisCassociatedCwithCglaucomaCdamage.CAmCJCOphthalmolC141:868-875,C20066)MangouritsasG,MorphisG,MourtzoukosSetal:Associ-ationCbetweenCcornealChysteresisCandCcentralCcornealCthicknessCinCglaucomatousCandCnon-glaucomatousCeyes.CActaOphthalmolC87:901-905,C20097)ParkJH,JunRM,ChoiKR:Signi.canceofcornealbiome-chanicalCpropertiesCinCpatientCwithCprogressiveCnormalCt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