‘Posner-Schlossman症候群’ タグのついている投稿

Posner-Schlossman症候群に伴う続発緑内障の手術成績

2017年7月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科34(7):1050.1053,2017cPosner-Schlossman症候群に伴う続発緑内障の手術成績榮辰介徳田直人宗正泰成北岡康史高木均聖マリアンナ医科大学眼科学教室SurgeryforSecondaryGlaucomatoPosner-SchlossmanSyndromeShinsukeSakae,NaotoTokuda,YasunariMunemasa,YasushiKitaokaandHitoshiTakagiDepartmentofOphthalmology,StMariannaUniversity,SchoolofMedicine目的:Posner-Schlossman症候群(PSS)に伴う続発緑内障の手術成績について検討する.対象および方法:ぶどう膜炎続発緑内障に対して線維柱帯切除術(LEC)または線維柱帯切開術(LOT)を施行し,術後36カ月以上経過観察可能であった20例22眼を対象とした.原疾患がPSSであった10眼(PS群)と,原疾患のぶどう膜炎が急性前部ぶどう膜炎(acuteanterioruveitis:AAU)であった12眼(AAU群)に分類し,比較検討した.結果:眼圧はPS群で術前34.7±7.1mmHgが術後36カ月で10.0±2.4mmHg,AAU群で術前32.4±6.4mmHgが術後36カ月で11.8±3.8mmHgとなり,両群ともに有意に下降した.術後36カ月における累積生存率はPS群90.0%,AAU群46.9%であった.PS群において,LECを施行した9眼はすべて経過良好であったが,LOTを施行した1眼が再手術を要した.結論:PSSに対する緑内障初回手術としてはLECが望ましい.Subjectsandmethods:Subjectsincluded20patients(22eyes)thatunderwenttrabeculectomy(LEC)ortra-beculotomy(LOT)forsecondaryglaucomatouveitisandcouldbefollowedforatleast36monthspostoperatively.Thesubjectsweredividedinto2groupsforcomparison:agroupwithPSS(PSgroup,10eyes)andagroupwithacuteanterioruveitis(AAUgroup,12eyes).Results:IntraocularpressureinthePSgroupwas34.7±7.1mmHgpreoperativelyand10.0±2.4mmHgat36monthsfollowingsurgery.TherespectivevaluesintheAAUgroupwere32.4±6.4mmHgand11.8±3.8mmHg;thus,eyesinbothgroupsdemonstratedsigni.cantdecreasesinintra-ocularpressure.Thecumulativesurvivalrateat36monthsfollowingsurgerywas90.0%and46.9%inthePSandAAUgroups,respectively.Progresswasfavorableforall9eyesthatunderwentLEC;however,reoperationwasrequiredfor1eyethatunderwentLOT.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(7):1050.1053,2017〕Keywords:Posner-Schlossman症候群,続発緑内障,緑内障手術,ぶどう膜炎.Posner-Schlossmansyndrome,secondaryglaucoma,surgeryforglaucoma,uveitis.はじめにPosner-Schlossman症候群(Posner-Schlossmansyn-drome:PSS)は,PosnerとSchlossmanによって報告1)された片眼性,再発性,発作性の眼圧上昇を伴う虹彩毛様体炎を特徴とする疾患である.自覚症状として霧視,虹輪視,違和感などを生じ,検眼鏡的には軽度の前房内炎症,角膜後面沈着物,虹彩異色などが認められる.発作は自然軽快することもあるが,副腎皮質ステロイド(以下,ステロイド)点眼薬による薬物療法が奏効し,数日から数週間で寛解する.通常,視野異常や視神経障害などの後遺症を残さない比較的良性の疾患と考えられている.しかし実際の臨床では,薬物治療のみでは高眼圧の状態が軽快せず,眼圧コントロール不良な状態が長期間継続し,緑内障性視神経萎縮やそれに伴う視野障害が生じる症例も存在する2.4).そのような場合には眼圧コントロール不良のぶどう膜炎続発緑内障として対応する必要があり,緑内障手術が必要となる場合もある.今回筆者らは,PSSと診断され,その後に緑内障手術が必要になった症例について,術式および術後経過について検討したので報告する.〔別刷請求先〕榮辰介:〒216-8511神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1聖マリアンナ医科大学眼科学教室Reprintrequests:ShinsukeSakae,M.D.,DepartmentofOphthalmology,StMariannaUniversity,SchoolofMedicine,2-16-1Sugao,Miyamae-ku,Kawasaki-shi,Kanagawa216-8511,JAPAN1050(134)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(134)10500910-1810/17/\100/頁/JCOPYI対象および方法ぶどう膜炎続発緑内障に対して線維柱帯切除術(trabecu-lectomy:LEC)または線維柱帯切開術(trabeculotomy:LOT)を施行し,術後36カ月以上経過観察が可能であった20例22眼(平均年齢53.0±10.1歳)を対象とした.原疾患がPosner-Schlossman症候群であった10例10眼(平均年齢51.8±9.7歳)をPS群とし,原疾患のぶどう膜炎が急性前部ぶどう膜炎(acuteanterioruveitis:AAU)であった10例12眼(平均年齢53.9±10.7歳)をAAU群(コントロール群)として術前後の眼圧と薬剤スコアの推移,累積生存率について比較検討した.両群の詳細については表1に示す.薬剤スコアについては,抗緑内障点眼薬1剤につき1点(緑内障配合点眼薬については2点),炭酸脱水酵素阻害薬内服は2点として計算した.累積生存率については,術後眼圧が2回連続して基準①21mmHg以上または4mmHg未満を記録した時点,もしくは,基準②16mmHg以上または4mmHg未満を記録した時点を死亡と定義とした.基準①②とも再手術になった時点も死亡とした.術後経過観察期間中に抗緑内障点眼薬の追加となった症例も存在するが,その時点では死さらに,PS群については術前後のぶどう膜炎発作回数の変化,角膜内皮細胞密度の患眼と僚眼の比較および術前後の変化についても検討した.PSSと診断した根拠としては,片眼性であり,発作性の肉芽腫性角膜後面沈着物を伴う前房内炎症と,30mmHg以上の眼圧上昇を繰り返すもの,ステロイド点眼薬によく反応し症状の改善を認めるもの,以上の項目を満たしたものとした.PSS続発緑内障に対する緑内障手術の施行基準は,虹彩毛様体炎と一過性眼圧上昇の頻度の増加や,ステロイド点眼薬や抗緑内障点眼薬に対する抵抗性を示し,薬物治療による眼圧コントロールが不良な状態となり,緑内障性視神経障害とそれに伴う視野異常が認められるものとした.II結果図1に各群の術前後の眼圧推移を示す.眼圧はPS群では術前平均34.7±7.1mmHgが術後12カ月で10.0±3.0mmHg,24カ月で9.4±2.5mmHg,36カ月で10.0±2.4mmHg,AAU群で術前32.4±6.4mmHgが術後12カ月で16.1±7.9mmHg,亡として扱わず生存症例とした.表1群別背景PS群AAU群p値症例数(男女比)10(4/6)12(6/6).手術施行時平均年齢(歳)51.8±9.753.9±10.70.6(Mann-WhitneyUtest)術前眼圧(mmHg)34.7±7.132.4±6.40.69(Mann-WhitneyUtest)術前術後術後術後術後術前発作回数(回/年)4.6±1.8..6カ月12カ月24カ月36カ月1.00.80.60.40.20観察期間図1各群の術前後の眼圧推移PS群基準①PS群基準②AAU群基準①AAU群基準②術前術後術後術後術後6カ月12カ月24カ月36カ月0510152025303540観察期間生存期間(カ月)図2各群の術前後の薬剤スコアの推移図3各群の術後累積生存率(135)あたらしい眼科Vol.34,No.7,2017105124カ月で12.3±3.1mmHg,36カ月で11.8±3.8mmHgと,両群ともに術前に比し有意な眼圧下降を示した(対応のあるt検定p<0.01).図2に各群の術前後の薬剤スコア推移を示す.各群ともに術後1カ月目より薬剤スコアが有意に減少した.PS群は,再手術となった1症例を除くすべての症例が術後36カ月の時点で薬剤スコアが0点であったのに対して,AAU群では術後36カ月の時点で1.5±1.2点であり,AAU群では術後抗緑内障点眼薬の併用を要する症例が多く存在した.図3に各群の術後累積生存率を示す.PS群では,基準①,基準②ともに術後36カ月おける累積生存率は90.0%であったが,AAU群については基準①では50.0%(Logranktestp=0.06),基準②では46.9%(Logranktestp=0.05)であり,両基準ともにPS群はAAU群に比し有意差を認めないものの高い累積生存率であった.PS群の緑内障手術術式については,今回対象となった10眼のうち,LECを施行した9眼が経過良好であり,LOTを施行した1眼が再手術を要した.再手術が必要であった症例については,その後LECを施行し,良好な経過が得られた.AAU群については12眼中LECが10眼であり,そのうち3眼においては再手術を要した.LOTを施行した2眼については,1眼は経過良好であったが,もう1眼については再手術を要した.PS群の虹彩毛様体炎発作回数の頻度は術前4.6±1.8回/年が術後0.28±0.4回/年と術後有意な減少を認めた(対応のあるt検定p<0.01).PS群の術前角膜内皮細胞密度は2,111.5±679/mm2であり,僚眼の角膜内皮細胞密度2,722±227/mm2に比し有意に少なくなっていた(対応のあるt検定p=0.04).とくにPS群10眼のうちの5眼は,患眼と僚眼の角膜内皮細胞密度に500/mm2以上の差を認めていた.PS群の術後3年における角膜内皮細胞密度は1,912.2±472/mm2と術前に比し有意差は認めないものの減少傾向を認めた(対応のあるt検定p=0.38).PS群の隅角所見については,全症例Sha.er分類3.4度の開放隅角であり,色素沈着についてはScheie分類IIが8眼,IIIが2眼であり,全症例僚眼に比し色素沈着の程度が少ないという印象はなかった.AAU群についても全症例Sha.er分類3.4度の開放隅角であったが,色素沈着についてはScheie分類IIが8眼,IIIが4眼であった.また,周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)が存在した症例が7眼存在したが,いずれも20%以下であった.III考按今回,筆者らはPSSと診断された症例において,経過観察中に観血的緑内障手術が必要となった10症例を経験した.以下PSS続発緑内障に対する治療について考察する.まず,治療にあたり,診断に誤りがないかを確認する必要がある.ぶどう膜炎続発緑内障に対してステロイド点眼薬による治療を行っている間に副作用で眼圧上昇が生じていたという報告2)もあるため注意が必要である.当院でも,Armalyの報告3)を参考に,僚眼に対するステロイド点眼薬への反応を確認することが多いが,今回の対象ではArmalytestを行った3症例においてはすべて陰性であった.当院における発作時の治療は,消炎目的でステロイド点眼薬,高眼圧に対してはプロスタグランジン関連薬を第一選択とし,効果不十分であれば交感神経b遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬の点眼および内服を追加している.40mmHg以上の高眼圧の際には高浸透圧利尿薬の点滴を併用している.プロスタグランジン関連薬は虹彩炎,ぶどう膜炎に対しては慎重投与とされているが,当院ではぶどう膜炎に伴う眼圧上昇の際には強力な眼圧下降作用を期待してステロイド点眼薬または非ステロイド性消炎鎮痛点眼薬と併用することが多い.これらの治療を行っても長期に眼圧コントロールが得られない場合に,緑内障観血的手術を検討する.眼圧上昇が不可逆的になってしまった原因は,炎症が長期に及んだことにより,Schlemm管内壁などの線維柱帯以降にも通過障害が生じているためではないかと予想し,10眼中9眼にLECを行い良好な結果を得た.小俣らは,実際にPSSと診断された症例を病理組織学的に検討した結果,線維柱帯間隙,Sch-lemm管,集合管周囲にマクロファージが認められ,傍Sch-lemm管結合組織は厚く,間隙は細胞外マトリックスで満たされていたと報告している4).つまり,PSS続発緑内障に至るような症例は,炎症の繰り返しにより,集合管付近にまで影響が及んでいる可能性が高いと考える.今回の対象においてLOTを試みたものの,十分な眼圧下降が得られなかった症例もこの事実を支持する結果といえる.森田らもPSS続発緑内障8眼について手術成績を報告しており5),LECを施行した4眼は経過良好であったものの,非穿孔性線維柱帯切除術を行った1眼およびLOTを行った3眼は再手術を要しており,筆者らの結果と近い内容になっている.それに対してChinらはぶどう膜炎続発緑内障に対して360°suturetra-beculotomyが有効であったと報告している6).炎症細胞などにより線維柱帯以降にも閉塞が広範囲に生じていたとしても,一部でも閉塞を免れている部分があれば理論上ではLOTは有効であるため,LECが選択できない場合には360°suturetrabeculotomyは選択肢になりうると考える.またAAU群については,LECを施行した10眼中7眼(70%)は経過良好であったが3眼は再手術を必要とした.ぶどう膜炎続発緑内障は一般的には難治緑内障といわれるため,LEC後も再手術が必要となることもあるが,PS群ではLECを施行した9眼については再手術を要した症例がなかったという(136)ことは実に興味深い事実である.その原因については現時点では確かな根拠はないが,PS群はAAU群よりも線維柱帯やSchlemm管への炎症細胞の浸潤が乏しいためではないかと考える.PSS続発緑内障の患者にLEC施行後,眼圧下降に加え,ぶどう膜炎発作頻度の低下を認めた.それについては,LECが奏効している場合,虹彩毛様体炎の発作が起きたとしても,炎症細胞が濾過胞側に排出されるため眼圧上昇が抑えられる可能性7)があることと,濾過手術により眼圧上昇が抑えられるため患者本人が発作に気づかず,みかけの発作頻度が低下している可能性5)が考えられる.地庵らは8),LEC後に自覚症状を伴わない前房内炎症細胞の増加を認めたとしている.また,檜野らは9),自覚的発作は認められたものの,術後の発作頻度は減少したと報告している.今回の対象でも,再発作は1眼で認められ,20mmHgを超えない眼圧上昇と角膜後面沈着物がみられた.これらの結果やその他の報告を合わせて考えると,術後の濾過胞が機能していれば仮に虹彩毛様体炎が生じても,眼圧上昇が軽度ですむ可能性が高いと考える.また以前より,PSSの原因としてサイトメガロウイルスや単純ヘルペスウイルスの感染10,11)が関与しているという報告がある.最近PSSへの抗サイトメガロウイルス薬(ガンシクロビル)内服治療による改善例12)も認められている.これらの症例では角膜内皮炎を併発していることも報告されており,PSS続発緑内障術後については,とくに角膜内皮細胞密度の推移は今後も確認していく必要があると考える.今回の検討においても角膜内皮細胞密度が僚眼より500/mm2以上も少ない症例が5眼認められたが,これらについては角膜内皮炎を併発していた可能性も考慮して対応する必要があったと考える.これらのことを踏まえて今後は,眼圧コントロール不良もしくは発作を頻発する難治性のPSSについては,術前後の前房水の成分分析や,濾過胞形状解析,角膜内皮細胞密度の経過観察など,さらなる検討が必要と考える.以上より,PSS続発緑内障に対する手術治療を中心に検討した.薬物治療で眼圧降下が得られず,視野障害や視神経障害が発症するような症例については積極的にLECを施行することが必要と考える.今回の検討は,診療録による後ろ向き検討であることや,治療前に前房水のウイルス検索などを行っていないため,今後はさらに症例数を増やし,PSSの原因についても検討すべきと考える.文献1)PosnerA,SchlossmanA:Syndromeofunilateralrecur-rentattacksofglaucomawithcycliticsymptoms.ArchOphthalmol39:517-535,19482)崎元晋,大鳥安正,岡田正喜ほか:ステロイド緑内障を合併したPosner-Schlossman症候群の2症例.眼紀56:640-644,20053)ArmalyMF:Statisticalattributesofthesteroidhyper-tensiveresponseintheclinicallynormaleye.Thedemon-strationofthreelevelsofresponse.InvestOphthalmol4:187-197,19654)小俣貴靖,濱中輝彦:Posner-Schlossman症候群における線維柱帯の病理組織学的検討─眼圧上昇の原因についての検討─.あたらしい眼科24:825-830,20075)森田裕,野崎実穂,高瀬綾恵ほか:Posner-Schlossman症候群に対する緑内障手術.あたらしい眼科28:891-894,20116)ChinS,NittaT,ShinmeiYetal:Reductionofintraocularpressureusingamodi.ed360-degreesuturetrabeculoto-mytechniqueinprimaryandsecondaryopen-angleglau-coma.apilotstudy.JGlaucoma21:401-407,20127)KassMA,BeckerB,KolkerAE:Glaucomatocycliticcrisisandprimaryopen-angleglaucoma.AmJOphthalmol75:668-673,19738)地庵浩司,塚本秀利,岡田康志ほか:緑内障手術を行ったPosner-Schlossman症候群の3例.眼紀53:391-394,20029)檜野亜矢子,前田秀高,中村誠:手術治療を要したポスナー・シュロスマン症候群の3例.臨眼54:675-679,200010)Bloch-MichelE,DussaixE,CerquetiPetal:PossibleroleofcytomegalovirusinfectionintheetiologyofthePosner-Schlossmannsyndrome.IntOphthalmol96:1195-1196,198711)YamamotoS,Pavan-LangstonD,TadaRetal:PossibleroleofherpessimplexvirusintheoriginofPosner-Schlossmansyndrome.AmJOphthalmol119:796-798,199512)SobolewskaB,DeuterC,DoychevaDetal:Long-termoraltherapywithvalganciclovirinpatientswithPosner-Schlossmansyndrome.GraefesArchClinExpOphthalmol252:117-24,2014***(137)あたらしい眼科Vol.34,No.7,20171053

Posner-Schlossman症候群45症例の好発季節の検討

2015年7月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科32(7):1052.1056,2015c(00)1052(130)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科32(7):1052.1056,2015c〔別刷請求先〕西野和明:〒348-0045埼玉県羽生市下岩瀬289栗原眼科病院Reprintrequests:KazuakiNishino,M.D.,KuriharaEyeHospital,Shimoiwase289,Hanyu,Saitama348-0045,JAPANPosner-Schlossman症候群45症例の好発季節の検討西野和明*1,2鈴木茂揮*1堀田浩史*1城下哲夫*1福澤裕一*1小林一博*1栗原秀行*1*1栗原眼科病院*2回明堂眼科・歯科AnalysisofSeasonalVariationin45CasesofPosner-SchlossmanSyndromeKazuakiNishino1,2),ShigekiSuzuki1),HiroshiHotta1),TestuoJoshita1),YuichiFukuzawa1),KazuhiroKobayashi1)andHideyukiKurihara1)1)KuriharaEyeHospital,2)KaimeidoOphthalmic&DentalClinic目的:Posner-Schlossman症候群(PSS発作)の好発季節を後ろ向きに検討すること.対象および方法:対象は札幌市内の回明堂眼科・歯科にて1990.2014年まで経過観察中,あるいは経過観察していたPSS患者45例45眼,男35例,女10例で,初回PSS発作の平均年齢(±標準偏差)47.3±12.6歳,平均観察期間8.5±7.3年であった.札幌の月別平均気温が20℃以上になる7月と8月を夏,また氷点下になる12月から2月と0.6℃の3月を合わせて冬,その他を春秋とした.症例ごとにPSS発作が発症した季節,季節種数(1,2,3,4季節型),総発作数をそれぞれ確認したのち,好発季節の有無を検討,続いて季節種数と総発作数が経過観察期間と相関するか検討した.結果:1季節型は夏,秋,冬は各5例,春3例の計18例.2季節型は秋冬5,春冬と春秋は各4,春夏と夏冬は各2,夏秋1の合計18例.3季節型は春秋冬4,春夏秋2,春夏冬1,夏秋冬0の計7例.4季節型は2例のみであった.2および3季節型から夏を含む前後の季節(暖期)より冬を含む前後の季節(寒期)に多い傾向がみられたが,1,2,3季節型を暖期と寒期に分け比較検討しても統計学的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test).一方,経過観察期間と季節種数また総発作数との間にはそれぞれ有意な相関がみられた(p=0.019,p=0.0002,単回帰分析).結論:PSS発作は寒暖差による好発時期はみられず,季節種数および総発作数は経過観察期間の長期化に伴い増加する.Purpose:Toretrospectivelyinvestigateseasonalvariationin45casesofPosner-Schlossmansyndrome(PSS).PatientsandMethods:Inthisstudy,therecordsof45PSSpatients(35malesand10females)treatedattheKai-meidoOphthalmicandDentalClinic,Sapporo,Japanwereretrospectivelyreviewed.MeanpatientageattheinitialPSSattackwas47.3±12.6years,andthemeanfollow-upperiodwas8.5±7.3years.ThePSSattacksweredividedintothefollowing4seasonalgroupsaccordingtotheaverageoutdoorairtemperatureinSapporo,Japan:spring(AprilthroughJune),summer(JulyandAugust),autumn(SeptemberthroughNovember),andwinter(DecemberthroughMarch).AfterconfirmationoftheseasonofthePSSattack,theseasonaltypes(i.e.,one-,two-,three-,andfour-seasontype),andthetotalnumberofPSSattacks,weanalyzedtheseasonaltendency(c2test),correlationbetweenthekindsofseasons,thetotalamountofattacks,andthefollow-upyear(singleregressionanalysis).Results:Theone-seasontypeconsistedof18cases(5summercases,5autumncases,5wintercases,and3springcases).Thetwo-seasonaltypeconsistedof18cases(5autumn-wintercases,4spring-wintercases,4spring-autumncases,2spring-summercases,2summer-wintercases,and1summer-autumncase).Thethree-seasontypeconsistedof7cases(4spring-autumn-wintercases,2spring-summer-autumncases,and1spring-summer-wintercase).Thefour-seasontypeconsistedofonly2cases.Althoughwinterwithbeforeandafterarespeculatedtobehigherthansummerwithbeforeandafterfromthosedata,nostatisticdifferencewasbeenfound(p=0.471).Significantdifferenceswerefoundbetweenthekindsofseason,thetotalamountofPSSattacks,andthefollow-upyears,respectively(p=0.019,p=0.0002).Conclusions:ThefindingsofthisstudyshowthatPSSattacksarenotcorrelatedwithseason,yetthekindsofseasoninPSSattacksandthetotalamountofattacksaresignificantlycor-relatedwithfollow-upyears.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(7):1052.1056,2015〕 Keywords:Posner-Schlossman症候群,好発季節,経過観察期間.Posner-Schlossmansyndrome(PSS),seasonalvariation,followupyears.はじめにPosner-Schlossman症候群(Posner-Schlossmansyn-drome:PSS)は1948年,AdolfPosnerとAbrahamSchlossmanが初めて報告し,その後の経過観察によりいくつかの特徴的な所見がまとめられた1,2).それらは,角膜後面に数カ所の細かい沈着物を伴う繰り返す片眼性で軽度の虹彩毛様体炎,隅角は開放で最高眼圧は40mmHg以上(PSS発作)に上昇,高眼圧や炎症は短ければ数日で鎮静化するが,長ければ数週間続く.PSS発作とつぎのPSS発作の間には眼圧上昇や炎症はみられない,視神経乳頭や視野には異常がみられないことなどである.しかしながらその後,まれながら両眼にPSSが発症する症例の報告がみられたり3,4),PSSに緑内障が併発している症例の存在も明らかになってきた5,6).また,病因に関しては感染という観点からサイトメガロウイルス7,8)や単純ヘルペス9)が考えられているほか,Hericobacterpylori10)との因果関係なども報告されている.さらに近年前房水中のサイトカイン11)の変化なども研究されており,原著論文の定義を超えて多彩な背景要因が検討されている.しかしながら,いまもってなお発症機序は不明である.病因に関しては上記感染のほか,古くは自律神経の調整不全1,2)やアレルギー12)なども候補にあがっていた時代もあったことから,それらに影響する季節変化などの因果関係も検討する必要がある.ぶどう膜炎には好発季節がみられるとの報告はみられるものの13.17),PSSに関しては筆者らの知る限り好発季節に関する報告はみられない.そこで今回札幌の回明堂眼科・歯科におけるPSSの自験例で好発季節あるいは好発時期を後ろ向きに検討した.I対象および方法本研究の定義,登録基準,除外基準についてはつぎのように定めた.定義の基本はAdolfPosnerとAbrahamSchlossmanが報告した臨床所見に準ずる.つまり繰り返す片眼性の軽度虹彩毛様体炎,角膜後面に数カ所の細かい沈着物が認められる,開放隅角で最高眼圧が40mmHg以上に上昇,高眼圧や炎症は短ければ数日であるが長ければ数週間続く,発作とつぎの発作の間には眼圧上昇や炎症はみられないなどである.隅角検査で発作眼が僚眼より色素が少ない,網膜硝子体病変が基本的にはないことなども参考所見とした.PSSはぶどう膜炎による続発緑内障の位置付けなので,症例の組み入れ条件として眼圧の定義は重要である.そこで本研究においては経過観察中,一度でも40mmHg以上の眼圧(131)上昇が認められれば,別の時期に30mmHg以上の眼圧を認めた場合でも,PSS発作として組み入れた.また,原著には,視神経や視野が正常であると記載されているが,近年緑内障の併発例も確認されていることから5,6),ことさら視神経乳頭が正常であることや緑内障による視野異常の有無にこだわらず組み入れた.つぎにPSSは基本的に複数回発作を繰り返すという定義ではあるものの,実際は1回のPSS発作しか経過観察できない場合がある.その場合,初診時より過去に遡り,問診上同様の発作を起こしたことがあり,日時や受診した状況などを明確に記憶している場合は,反復するPSS発作とみなした.しかしながらPSS発作が1回限りで,かつ経過観察期間が数カ月など1年未満をすべて経過観察期間1年として計算した.また,紹介状あるいはこちらからの問い合わせなどにより明確な臨床過程が記載されている3件に関しては,当院の経過観察期間および発作頻度などに追加として組み入れた.一方,登録した症例のなかで,問診により本人からPSSの可能性が高い具体的な既往歴があっても,過去の発作時期があいまいな既往歴を登録することはせず,経過観察期間から除外した.また,経過観察中眼圧のコントロールが不十分で緑内障手術を行った2症例では,その後に発作がみられず,眼圧に関する眼内環境が大きく変化したと判断し,緑内障手術後を経過観察時期から除外した.ちなみに両症例の手術後に除外した期間は10年と3年である.一方,白内障手術後にPSS発作が認められた症例も確認されたことから,本研究においては白内障手術に関しては手術後も経過観察期間として組み入れた.その他,近年両眼の発症例もみられたとの報告があるが3,4),混乱を避けるためそのような症例を除外した.対象は札幌の回明堂眼科・歯科にて1990.2014年の間,経過観察中あるいは経過観察していたPSS患者45例45眼,男性35例,女性10例.当院における初回のPSS発作の平均年齢(標準偏差)47.3±12.6歳,平均観察期間は8.5±7.3年であった.好発季節を検討するため,札幌の年間平均気温別に季節を分類した.4月から6月を春,7月と8月を夏,9月から11月を秋,12月から3月までを冬と定義した.これは気象庁のホームページで1981.2010年までの札幌の平均気温が公表されており,20℃以上になるのは7月と8月だけ.また氷点下の気温になる12月から2月までとされているからである.ちなみに3月は0.6℃であったが冬とした.つぎにPSS発症の季節は単一あるいは複数にまたがるため,すべあたらしい眼科Vol.32,No.7,20151053 1054あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(132)ての組み合わせを分類し,患者数の分布を確認した.1季節型は春,夏,秋,冬の4群,2季節型は春夏,春秋,春冬,夏秋,夏冬,秋冬の6群,3季節型は春夏秋,春夏冬,春秋冬,夏秋冬の4群,4季節型(春夏秋冬)の1群である.すべての群を合計すると15群になるため解析がむずかしくなる.そこで夏を含む前後の季節(暖期)と冬を含む前後の季節(寒期)を型分けしたまま比較検討した(c2test).したがって,夏冬を同時に含む群は解析から除外したほか,4季節型も暖期と寒期が重複するため除外した.また,季節種数(1,2,3,4季節型),総発作数をそれぞれ確認したのち,経過観察期間と相関するか検討した(単回帰分析).使用した統計ソフトはStat123/Winver.2.2である.なお本研究はヘルシンキ宣言に沿って,十分な説明の後に自由意思に基づくインフォームド・コンセントを得るよう努力はしたが,現時点において一部の患者とは連絡が取れないことや,最終観察日から長年経過した症例もあることから,今のところ不十分な同意状況である.しかしながら当院においては,院内のお知らせとして患者のデータを学術目的に使用する場合もあることや,折に触れ学術研究に協力してくれるよう依頼している.II結果1季節型は夏,秋,冬は各5例,春3例の計18例.2季節型は秋冬5例,春冬と春秋は各4例,春夏と夏冬は各2例,夏秋1の合計18例.3季節型は春秋冬4例,春夏秋2例,春夏冬1例,夏秋冬0例の計7例.4季節型は2例のみであった(図1).2および3季節型から暖期より寒期に多い傾向がみられたが,1,2,3季節型を型別にしたまま暖期18例と寒期10例として比較しても統計的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test)(表1).一方,経過観察期間と季節種数(図2)また総発作数(図3)との間にはそれぞれ有意な相関がみられた(p=0.019,p=0.0002,単回帰分析).III考按ぶどう膜炎の発症に影響する疫学的要因としては地理的,民族的,遺伝的な要因などが考えられているほか,季節も関与するとの報告がみられる13.17).まず寒期よりは暖期に多いという報告として,Paivonsaloら13)によるフィンランド南西部におけるぶどう膜炎新患414例の好発季節の検討がある.その結果ぶどう膜炎全体でみると,夏(6.9月)およびの春秋(4,5,10,11月)は冬(12.3月)より発症率が高かったという.しかしながら,ぶどう膜炎の部位別に検討すると,対象の大半を占める急性前部ぶどう膜炎(acuteanteri-oruveitis:AAU)では冬と比較し春秋に好発したものの,中間部,後極部,および汎ぶどう膜炎には好発季節は認めら1季節型2季節型3季節型4季節型春3夏5秋5冬5春夏2春秋4春冬4夏秋1夏冬2秋冬5春夏秋2春夏冬1春秋冬4夏秋冬0春夏秋冬2181872秋冬5春冬4春秋4春夏2夏冬2夏秋1春秋冬4春夏秋2春夏冬1夏秋冬01季節型2季節型3季節型冬を含む前後の季節(寒期)594夏を含む前後の季節(暖期)532図1各患者のPSS発作を発症した季節の種類と種類数2季節型と3季節型は吹き出しで多い順に並べかえた.表1PSS発作の好発季節:寒期と暖期の比較p=0.471:c2test図1から季節型から夏を含む前後の季節(暖期)より冬を含む前後の季節(寒期)に多い傾向がみられたが,統計学的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test).(132)ての組み合わせを分類し,患者数の分布を確認した.1季節型は春,夏,秋,冬の4群,2季節型は春夏,春秋,春冬,夏秋,夏冬,秋冬の6群,3季節型は春夏秋,春夏冬,春秋冬,夏秋冬の4群,4季節型(春夏秋冬)の1群である.すべての群を合計すると15群になるため解析がむずかしくなる.そこで夏を含む前後の季節(暖期)と冬を含む前後の季節(寒期)を型分けしたまま比較検討した(c2test).したがって,夏冬を同時に含む群は解析から除外したほか,4季節型も暖期と寒期が重複するため除外した.また,季節種数(1,2,3,4季節型),総発作数をそれぞれ確認したのち,経過観察期間と相関するか検討した(単回帰分析).使用した統計ソフトはStat123/Winver.2.2である.なお本研究はヘルシンキ宣言に沿って,十分な説明の後に自由意思に基づくインフォームド・コンセントを得るよう努力はしたが,現時点において一部の患者とは連絡が取れないことや,最終観察日から長年経過した症例もあることから,今のところ不十分な同意状況である.しかしながら当院においては,院内のお知らせとして患者のデータを学術目的に使用する場合もあることや,折に触れ学術研究に協力してくれるよう依頼している.II結果1季節型は夏,秋,冬は各5例,春3例の計18例.2季節型は秋冬5例,春冬と春秋は各4例,春夏と夏冬は各2例,夏秋1の合計18例.3季節型は春秋冬4例,春夏秋2例,春夏冬1例,夏秋冬0例の計7例.4季節型は2例のみであった(図1).2および3季節型から暖期より寒期に多い傾向がみられたが,1,2,3季節型を型別にしたまま暖期18例と寒期10例として比較しても統計的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test)(表1).一方,経過観察期間と季節種数(図2)また総発作数(図3)との間にはそれぞれ有意な相関がみられた(p=0.019,p=0.0002,単回帰分析).III考按ぶどう膜炎の発症に影響する疫学的要因としては地理的,民族的,遺伝的な要因などが考えられているほか,季節も関与するとの報告がみられる13.17).まず寒期よりは暖期に多いという報告として,Paivonsaloら13)によるフィンランド南西部におけるぶどう膜炎新患414例の好発季節の検討がある.その結果ぶどう膜炎全体でみると,夏(6.9月)およびの春秋(4,5,10,11月)は冬(12.3月)より発症率が高かったという.しかしながら,ぶどう膜炎の部位別に検討すると,対象の大半を占める急性前部ぶどう膜炎(acuteanteri-oruveitis:AAU)では冬と比較し春秋に好発したものの,中間部,後極部,および汎ぶどう膜炎には好発季節は認めら1季節型2季節型3季節型4季節型春3夏5秋5冬5春夏2春秋4春冬4夏秋1夏冬2秋冬5春夏秋2春夏冬1春秋冬4夏秋冬0春夏秋冬2181872秋冬5春冬4春秋4春夏2夏冬2夏秋1春秋冬4春夏秋2春夏冬1夏秋冬01季節型2季節型3季節型冬を含む前後の季節(寒期)594夏を含む前後の季節(暖期)532図1各患者のPSS発作を発症した季節の種類と種類数2季節型と3季節型は吹き出しで多い順に並べかえた.表1PSS発作の好発季節:寒期と暖期の比較p=0.471:c2test図1から季節型から夏を含む前後の季節(暖期)より冬を含む前後の季節(寒期)に多い傾向がみられたが,統計学的有意差はみられなかった(p=0.471,c2test). 984763PSS発作の総数(回)季節種数の合計5432211000510152025経過観察期間(年)経過観察期間(年)051015202530図2PSS発作発症の季節種数と経過観察期間の関係季節種数と経過観察期間との間には有意な相関がみられた.Y=0.041X+1.5,R2=0.126.(p=0.019:単回帰分析)れなかった.同様にCasselら14)は,非肉芽腫性の前部ぶどう膜炎の発症は夏に多いと報告した.その反対に暖期より寒期が多いという報告もみられる.Mercantiら15)はイタリア北東部における655例のぶどう膜炎の新患で好発時期を検討したところ,各種ぶどう膜炎を全体でみた場合には月別の差はなかったが,再発に限れば平均気温が8℃以下となる冬(11.2月)および8.18℃になる春秋は,いずれも18℃以上になる夏(6.9月)より多かったという.同様にLevinsonら16)は,米国のNewMexicoで77例94眼のAAUを二度にわたり調査したところ,いずれも12月の発症が多かったと報告しているほか,Stan17)もルーマニアで急性ぶどう膜炎597例の好発時期を調べたところ,冬の発症が多いと報告した.このように寒暖差によるぶどう膜炎の発症が地域的な差によるものかどうかは不明であるが,寒期にぶどう膜炎の発症が多いという理由として,Stanはいくつかの要因を候補としてあげている.まず発症当日の気温が平年のその時期の気温より暑いか寒いかなどの気温差が考えられるとのことで,具体的には前日より4℃以上の差がみられる場合などが該当するという.また,寒期の乾燥や風速(4m/秒)などの気象条件も関係しているのではないかと推論している17).これらの報告から明らかなように地理的,民族的に異なる地域や国からの報告では,好発季節に関して同一の結果が得られない.その背景として気象条件のみならず,遺伝的な背景も検討しなければならないかもしれない.Ebringerら18)は,AAU発症は8月から12月にかけて多かったが,そのなかでもHLA-B27陽性患者より陰性患者のほうが,その発症傾向が著明であったという.したがって,ぶどう膜炎に関する疫学的検討をする場合には,地理的,民族的な背景を考慮しなければならないことがわかる.しかしながら,PSSはAAUと比較してその頻度が低く,しかも40例以上の症例数を解析した報告も限られている8,10,11).さらにPSSの発作の間隔はかなり長い場合もあ図3PSSの総発作数と経過観察期間の関係総発作数と経過観察期間との間には有意な相関がみられた.Y=0.12X+1.44,R2=0.126.(p=0.0002,単回帰分析)り,長期経過観察なしには好発季節の確認がむずかしい.したがって,本研究では1施設の限られた症例数であったため,PSSの好発季節を確認できなかった.PSSはPosnerとSchlossmanが最初に報告してから半世紀以上の月日が経過しているにもかかわらず,いまだにその病態は明らかではない.なかには論文のタイトル自体がpresumedPosner-Schlossmansyndromeなどと表現されている場合もあり,PSSの鑑別診断の境界線はいまもってなお不明瞭な状況である8).しかも発作の定義自体もあいまいである.したがって,今回の研究においては一度でも40mmHg以上の眼圧上昇が認められれば,別の時期に30mmHg以上の眼圧を認めた場合でも,PSS発作として組み入れるという独自の定義で分析を行った.当然ながら眼圧が40mmHg以上のみを発作とするというような厳しい定義を用いれば違う結果が出たと思われる.しかしながら,自験例からPSS発作はわずかな重症例を除けば軽症のことが多く,来院時が必ずしもPSS発作のピークとは限らず,鎮静化しつつある場合があると考えたためそのような幅広い解釈で定義した.したがって,その定義に基づき30mmHg未満の眼圧は除外されたため,さらに拡大解釈した場合の発作数はもっと多かったのではないかと推定される.今後は再発作がどれくらいの眼圧であれば発作として組み入れるかという議論も必要と思われる.さらに今回の研究のような好発季節のみならず,性別や年齢による相違,ストレスなど誘因となる要因の検討などを他国のデータあるいは国内における他地域のデータと比較検討することができれば,本症の疫学的な側面を理解するだけでなく,病態を理解するうえでも有用ではないかと考えた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし(133)あたらしい眼科Vol.32,No.7,20151055 文献1)PosnerA,SchlossmanA:Syndromeofunilateralrecurrentattacksofglaucomawithcycliticsymptoms.ArchOphthalmol39:517-535,19482)PosnerA,SchlossmanA:Furtherobservationsonthesyndromeofglaucomatocycliticcrises.TransAmAcadOphthalmolOtolaryngol57:531-536,19533)LevatinP:Glaucomatocycliticcrisesoccurringinbotheyes.AmJOphthalmol41:1056-1059,19564)PuriP,VremaD:BilateralglaucomatoycliticcrisisinapatientwithHolmesAdiesyndrome.JPostgradMed44:76-77,19885)KassMA,BeckerB,KolkerAE:Glaucomatocycliticcrisisandprimaryopen-angleglaucoma.AmJOphthalomol75:668-673,19736)JapA,SivakumarM,CheeSP:IsPosnerSchlossmansyndromebenign?Ophthalmology108:913-918,20017)Bloch-MichelE,DussaixE,CerquetiPetal:PossibleroleofcytomegalovirusinfectionintheetiologyofthePosner-Schlossmannsyndrome.IntOphthalmol11:95-96,19878)CheeSP,JapA:PresumedfuchsheterochromiciridocyclitisandPosner-Schlossmansyndrome:comparisonofcytomegalovirus-positiveandnegativeeyes.AmJOphtlamol146:883-889,20089)YamamotoS,Pavan-LangstonD,TadaRetal:PossibleroleofherpessimplexvirusintheoriginofPosner-Schlossmansyndrome.AmJOphthalmol119:796-798,199510)ChoiCY,KimMS,KimJMetal:AssociationbetweenHelicobacterpyloriinfectionandPosner-Schlossmansyndrome.Eye24:64-69,201011)LiJ,AngM,CheungCMetal:AqueouscytokinechangesassociatedwithPosner-Schlossmansyndromewithandwithouthumancytomegalovirus.PloSOne7:e44453,201212)ShenSC,HoWJ,WuSCetal:Peripheralvascularendothelialdysfunctioninglaucomatocycliticcrisis:apreliminarystudy.InvestOphthalmolVisSci51:272-276,201013)Paivonsalo-HietanenT,TuominenJ,SaariKM:Seasonalvariationofendogenousuveitisinsouth-westernFinland.ActaOphthalmolScand76:599-602,199814)CasselGH,BurrowsA,JeffersJBetal:Anteriornonglanulomatosisuveitis:aseasonalvariation.AnnOphthalmol16:1066-1068,198415)MercantiA,ParoliniB,BonoraAetal:Epidemiologyofendogenousuveitisinnorth-easternItaly.Analysisof655newcases.ActaOphthalmolScand79:64-68,200116)LevinsonRD,GreenhillLH:Themonthlyvariationinacuteanterioruveitisinacommunity-basedophthalmologypractice.OculImmunolInflamm10:133-139,200217)StanC:Theinfluenceofmeteorologicalfactorsinwintertimeontheincidenceoftheoccurrenceofacuteendogenousiridocyclitis.Oftalmologia52:16-21,200018)EbringerR,WhiteL,McCoyRetal:Seasonalvariationofacuteanterioruveitis:differencesbetweenHLA-B27positiveandHLA-B27negativedisease.BrJOphthalmol69:202-204,1985***(134)