《原著》あたらしい眼科37(9):1161.1165,2020cEnFaceSwept-SourceOCTを用いた急性帯状潜在性網膜外層症における視細胞内節エリプソイドの評価馬場悠花里*1,2梅岡亮介*1青柳蘭子*2浦島容子*3敷島敬悟*2中野匡*2酒井勉*2,3*1東京慈恵会医科大学附属第三病院眼科*2東京慈恵会医科大学附属病院眼科*3愛宕アイクリニックCEvaluationofPhotoreceptorEllipsoidZoneinAcuteZonalOccultOuterRetinopathywithEnFaceSwept-SourceOpticalCoherenceTomographyYukariBaba1,2)C,RyosukeUmeoka1),RankoAoyagi2),YokoUrashima3),KeigoShikishima2),TadashiNakano2)andTsutomuSakai2,3)1)DepartmentofOphthalmology,JikeiDaisanHospital,2)3)AtagoEyeClinicCDepartmentofOphthalmology,JikeiUniversitySchoolofMedicine,目的:Swept-sourceOCT(SS-OCT)を用いて視細胞内節エリプソイド(EZ)のCenfaceview解析を行い,急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)における視細胞障害の評価に関して新たな知見を得たので報告する.症例:対象は,男性C3例,平均年齢はC36歳であった.全例に,急性の視力・視野障害がみられ,視野障害部位に一致して,SS-OCTではCEZの不明瞭化を,多局所網膜電図では応答密度の低下を認めたことからCAZOORと診断した.EZのCenCfaceview解析を行い,視野障害の程度と比較した.EZのCenCfaceview画像の異常低反射域は視野障害部位と一致していた.また,視野障害が改善した症例では,EZの異常低反射域も縮小した.結論:SS-OCTを用いたCEZのCenCfaceview解析は,AZOORにおける視細胞障害の範囲の同定と経過評価に有用であった.SS-OCTのCenfaceview解析によるCEZの評価は,AZOORの新しいCimagingbiomarkerとなる可能性が示唆された.CPurpose:Toevaluatethephotoreceptorellipsoidzone(EZ)ineyeswithacutezonaloccultouterretinopathy(AZOOR)usingenfaceswept-sourceopticalcoherencetomography(SS-OCT)C.Caseseries:EnfaceOCTimageswereobtainedusingSS-OCTfrom3malepatients(3eyes)withAZOORandcomparedwithvisual.eld.ndings.Visual.eldexaminationswereperformedbyHumphrey30-2orGoldmannperimetry.Foralleyes,photoreceptordamageCwasCvisualizedCasCaChypore.ectiveCareaConCtheCEZ.CFurthermore,CtheCareaCwasCwellCcorrelatedCwithCtheCvisualC.eldC.ndings.CConclusion:EnCfaceCSS-OCTCmayCbeCusefulCforCvisualizingCtheCpresenceCofCAZOORCandCitsCdiseasefollow-up.TheareaofphotoreceptordamageexaminedonenfaceOCTimagesshowedawellcorrelationwithfunctionalvisual.elddefects.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(9):1161.1165,C2020〕Keywords:SS-OCT,enfaceview,急性帯状潜在性網膜外層症,視細胞内節エリプソイド,視野障害.SS-OCT,enfaceview,AZOOR,ellipsoidzone,visual.elddefect.Cはじめに急性帯状潜在性網膜外層症(acutezonaloccultouterreti-nopathy:AZOOR)は急性の視力・視野障害を呈し,網膜外層の機能的・形態的障害がみられる原因不明の疾患である1).多くの症例で検眼的に網膜に異常所見は生じず,多局所網膜電図(multifocalelectroretinogram:mfERG)や光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で,視野異常部位に一致した網膜外層の機能・形態障害を証明することで診断される2).mfERGでは視野障害部位に一致した応答密度の低下がみられるとされており,OCTでは視野障害〔別刷請求先〕馬場悠花里:〒201-8601東京都狛江市和泉本町C4-11-1東京慈恵会医科大学附属第三病院眼科Reprintrequests:YukariBaba,DepartmentofOphthalmology,JikeiDaisanHospital,4-11-1Izumihonchou,Komae,Tokyo201-8601,JAPANC部位の視細胞内節エリプソイド(ellipsoidzone:EZ)の不明瞭化がみられることが特徴的な所見である3).CEnface画像は連続して撮影した網脈絡膜の断層像(Bスキャン像)から構築された冠状断像であり,網膜面に対して水平の断面像(Cスキャン像)である.検眼鏡的所見と同じ面で捉えられるため,病変の大きさ,位置,形状,分布などの把握が可能である.また,近年,眼球壁の曲率による歪みを平坦化(.attening)させることで,描出したい層に応じたノイズが少ない画像が得られるようになった.今回,swept-sourceOCT(SS-OCT)のCenCfaceview解析を用いてCEZの評価を行い,AZOORにおける視細胞障害の評価に関して新たな知見を得たので報告する.CI症例症例のCSS-OCTのCenfaceview解析は,以下の手順で行われた.C①Bruch膜(Bruchmembrane:BM)を基軸とした.attening機能により,EZを抽出(Bスキャン像).C②マニュアルでCEZに基線を合わせ,高精細なCenface画像を取得(Cスキャン像).〔症例1〕22歳,男性.主訴:左眼視野障害,羞明.現病歴:4日前より左眼中心から外側にかけての視野異常・羞明が出現し,精査目的で東京慈恵会医科大学附属病院を受診した.初診時所見:視力は右眼C0.06(1.5C×.4.25D),左眼C0.06(0.2C×.4.00D),眼圧は右眼16mmHg,左眼C16mmHgであった.前眼部,中間透光体,眼底に異常はなく(左眼眼底:図1a),自発蛍光で,視神経乳頭から黄斑部にかけて過蛍光領域がみられた(図1b).Humphrey視野検査で,左眼Mariotte盲点の拡大と中心感度の低下を認め(図1c),OCTでは視野障害部位に一致してCEZの不明瞭化を(図1d),mfERGでは視野障害部位に一致した応答密度の低下がみられた(図1e).EZのCenCfaceview解析では,視野障害部位に一致した低反射域を認めた(図1f).AZOORと診断し,本人の希望によりステロイドパルス療法を施行した.治療後,左眼矯正視力はC0.2であったが,視野,OCTともに改善がみられ(図2a,b),enCfaceview画像では低反射域の縮小を認めた(図2c).〔症例2〕49歳,男性.主訴:右眼視野障害,羞明.現病歴:右眼中心から外側にかけての視野異常・羞明を主訴に他院を受診し,AZOORと診断された.自覚症状の増悪を認めたため,精査目的で東京慈恵会医科大学附属病院を受図1症例1の初診時の所見(22歳,男性:左眼)Ca:眼底写真.明らかな異常を認めない.Cb:自発蛍光.視神経乳頭から黄斑部にかけて過蛍光領域を認めた.Cc:Humphrey視野検査.Mariotte盲点の拡大と中心感度の低下を認めた.Cd:OCT.EZの不明瞭化(C.)を認めた.Ce:mfERG.視野障害部位に一致した応答密度の低下を認めた.f:EZのCenfaceview画像.視野障害部位に一致した低反射域を認めた.図2症例1のステロイドパルス療法施行後の所見a:Humphrey視野検査.感度低下の改善を認めた.Cb:OCT.EZの不明瞭化の改善を認めた.Cc:EZのCenfaceview画像.異常低反射域の縮小を認めた.図3症例2の初診時の所見(49歳,男性:右眼)Ca:Humphrey視野検査.Mariotte盲点から上下に感度低下を認めた.Cb:OCT.EZの不明瞭化を認めた.Cc:EZのCenCfaceview画像.視野障害部位に一致した低反射域を認めた.診した.初診時所見:視力は右眼C0.04(1.2C×.6.50D(cyl.0.25DAx50°),左眼C0.06(1.2C×.6.50D(cyl.0.50DAx150°),眼圧は右眼C10CmmHg,左眼C10CmmHgであった.前眼部,中間透光体,眼底に異常はなく,Humphrey視野検査で右眼Mariotte盲点から上下に感度低下がみられ(図3a),OCTでは視野障害部位に一致したCEZの欠損を認めた(図3b).自発蛍光では同部位で低蛍光を示し,enfaceview画像では視野障害部位に一致した低反射域がみられた(図3c).〔症例3〕37歳,男性.主訴:右眼視野障害,羞明.現病歴:数日前から右眼中心から外側にかけての視野異常・羞明が出現し,他院受診.視野検査にてCMariotte盲点の拡大を認め,精査目的で東京慈恵医大附属病院を受診した.初診時所見:視力は右眼C0.04(1.5C×.9.50D(cyl.1.25DAx15°),左眼C0.04(1.5C×.9.00D(cyl.1.00DAx160°),眼圧は右眼C11CmmHg,左眼C11CmmHgであった.前眼部,中間透光体,眼底に異常はなく,Goldmann視野検査でCMari-otte盲点拡大がみられ(図4a),OCTでは視野障害部位に一致したCEZの不明瞭化を認めた(図4b).EnCfacevie画像では視野障害部位に一致した低反射域がみられた(図4c).AZOORと診断し,本人の希望によりステロイドパルス療法を施行した.治療後,視野,OCTともに改善がみられ(図5a,b),enCfaceview画像では低反射域の縮小を認めた(図5c).CII考按本研究は,AZOORの症例においてCEZのCenfaceOCT画像における異常低反射域が視野障害部位と一致すること,視野障害の改善と異常低反射域の改善に相関があることを明らかにした.このことは,SS-OCTを用いたEZのenCfaceview解析がCAZOORの病変範囲,経過観察の評価に有用であることを示し,AZOORの新たなCimagingbiomarkerとなる可能性を示唆した.既報では,多発消失性白点症候群(multipleCevanesentCwhiteCdotsyndrome:MEWDS),Stargardt病,ヒドロキシクロロキン網膜症においてCEZのCenCfaceOCT画像所見と視野障害や網膜機能障害との相関が指摘されており,本解析が病勢の把握に有用であるとされている4.6).しかし,それぞれの疾患は病態が異なることからその解釈には十分な注意を要する.MEWDSは主要な病態が網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)の炎症であり,視細胞障害は二図4症例3の初診時所見(37歳,男性:右眼)Ca:Goldmann視野検査.Mariotte盲点拡大を認めた.Cb:OCT.EZの不明瞭化を認めた.Cc:EZのCenfaceview画像.視野障害部位に一致した低反射域を認めた.図5症例3のステロイドパルス療法施行後の所見a:Goldmann視野検査.Mariotte盲点拡大の改善を認めた.Cb:OCT.EZの不明瞭化の改善を認めた.Cc:EZのCenCfaceview画像.異常低反射域の縮小を認めた.次的な変化であることから,蛍光眼底造影検査や眼底自発蛍光などのCRPE障害をより正確に反映する画像機器が病勢把握には有用であると考えられる.Stargardt病は視細胞とRPEの両方に病変の主座があると考えられるが,RPE障害が視細胞障害に先行すると考えられており,EZのCenCfaceview解析は眼底自発蛍光の補助的な役割であると指摘されている.ヒドロキシクロロキン網膜症は,視細胞とCRPEの両方に障害が及ぶが,病変の評価にはCEZのCenCfaceCview解析が優れていることが示されている.Ahnらは,眼底自発蛍光では初期あるいは中期の網膜症の正確な評価が困難であることをあげ,正確かつ簡便な評価が可能なCEZのCenCfaveview解析に一日の長があると述べている6).本研究で対象となったCAZOORは,視細胞障害が本態であることから,EZのCenfaceview解析がとくに有用であると考えられる.さらに,本研究では広角画像を用いたことで,視細胞障害の存在や範囲を一つの画像で捉えることが可能となり,病変範囲の把握や視野との対比のうえで大きな利点であった.網膜変性疾患における視野検査は,視力障害を伴う場合には,その評価が困難である場合が多い.とくにCHumphrey視野計による明度識別視野検査は増分閾値を測定する検査であるため,錐体が中心に障害される疾患,錐体ジストロフィやCAZOORなどでは,信頼性の高いデータが得にくい.mfERGや局所CERGは有用性が高いが,手技が煩雑で,時間を要し,高い専門性が必要となる.新しいCOCTであるスペクトラルドメインCOCTやCSS-OCTはその高い解像度から網膜層別解析が可能であり,網膜変性疾患ではCERGなどの機能検査を行う前に,視細胞障害を高精度に検出できることが知られている.AZOORにおけるCEZの異常所見も,Bスキャンで明確かつ迅速に捉えられるが,本人の自覚症状に即した病変の拡がりを識ることには及ばない.AZOORにおけるCEZのCenCfaceview解析は,明確,迅速,かつ他覚的に病変の拡がりを検出することが可能であり,有用性が高いと考えられる.EZのCenfaceview解析がCAZOORのCimagingbiomarkerとして確立されるにあたっては,いくつかの問題点があげられる.SS-OCTにおけるC.attening機能を使用し,AZOORの病態と関連がないCBruch膜を基軸とすることで,より正確にCEZを抽出することができると考えるが,segmentation時のCEZの選択が手動となることから,主観的要素が介入する可能性は否定できない.EZはある程度の厚みがあることから検者間で抽出画像に違いがみられる可能性もある,また,広く実用化するにあたっては,解析の簡便化に加えて,定量的評価を可能にするソフトの開発も重要となる.以上の問題点が考慮されるが,病態に精通した複数の検者による本解析は,AZOORにおける視細胞障害の新たな指標となる可能性を示唆する.以上より,SS-OCTのCenfaceview解析による視細胞内節エリプソイドの評価は,視細胞障害の範囲と程度を簡便に他覚的に評価可能で,AZOORの新しいCimagingCbiomarkerとなりうると考えられた.文献1)GassJD:AcuteCzonalCoccultCouterCretinopathy.CDondersCLecture:TheNetherlandsOphthalmologicalSociety,Maas-tricht,CHolland,CJuneC19,C1992.CJCClinCNeuroophthalmolC13:79-97,C19932)MrejenCS,CKhanCS,CGallego-PinazoCRCetal:AcuteCzonalCoccultCouterretinopathy:aCclassi.cationCbasedConCmulti-modalimaging.JAMAOphthalmolC132:1089-1098,C20143)FujiwaraCT,CImamuraCY,CGiovinazzoCVJCetal:FundusCauto.uorescenceCandCopticalCcoherenceCtomographicC.nd-ingsCinCacuteCzonalCoccultCouterCretinopathy.CRetinaC30:C1206-1216,C20104)PichiCF.,CSrvivastavaCS,CChexalCSCetal:EnCfaceCopticalCcoherencetomographyandopticalcoherencetomographyangiographyCofCmultipleCevanescentCwhiteCdotCsyndrome.CRetinaC36:S178-S188,C20165)GreensteinCVC,CNunezCJ,CLeeCWCetal:ACcomparisonCofCenfaceopticalcoherencetomographyandfundusauto.u-orescenceinStargardtdisease.InvestOphthalmolVisSciC58:5227-5236,C20176)AhnSJ,JoungJ,LeeBR:Enfaceopticalcoherencetomog-raphyCimagingCofCthephotoreceptorClayersCinChydroxychlo-roquineretinopathy.AmJOphthalmolC199:71-81,C2019***