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硝子体手術後のStaphylococcus lugdunensis 眼内炎の 1 例

2024年1月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科41(1):101.105,2024c硝子体手術後のCStaphylococcuslugdunensis眼内炎の1例福田達也*1上田晃史*1小野喬*1,2子島良平*1野口ゆかり*1佐々木裕美*3岩崎琢也*1宮田和典*1*1宮田眼科病院*2東京大学大学院医学系研究科眼科学教室*3(一財)阪大微生物病研究会CARareCaseofStaphylococcuslugdunensisCEndophthalmitisafterVitreousSurgeryCTatsuyaFukuda1),KojiUeda1),TakashiOno1,2)C,RyoheiNejima1),YukariNoguchi1),YumiSasaki3),TakuyaIwasaki1)CandKazunoriMiyata1)1)MiyataEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,UniversityofTokyo,GraduateSchoolofMedicine,3)ResearchFoundationforMicrobialDiseasesofOsakaUniversityC緒言:1980年後半に発見されたCStaphylococcuslugdunensisによる術後眼内炎の臨床報告は少ない.症例:61歳,男性.飛蚊症を自覚し,裂孔原性網膜.離と白内障と診断され,局所麻酔下で経毛様体扁平部硝子体切除術および白内障手術を行った.術後C4日目に結膜・毛様充血と前房蓄膿が出現し,Bモードエコーで硝子体腔に高輝度像を認め,急性術後眼内炎と診断し,硝子体手術および眼内レンズ摘出を行った.前房水と硝子体の塗抹にグラム陽性球菌を検出し,メロペネムの静注,レボフロキサシンとセフメノキシム・ベタメタゾンの点眼を開始した.再手術後C4日で眼底の透見性は改善した.前房水・硝子体からCS.lugdunensisが分離された.最終矯正視力は(0.1)であった.結論:硝子体手術後の眼内炎の起炎菌として,S.lugdunensisにも注意が必要である.CPurpose:ToCreportCaCrareCcaseCofCStaphylococcusClugdunensisCendophthalmitisCthatCoccurredCafterCvitreousCsurgery.CCase:AC61-year-oldCmanCwasCreferredCtoCourChospitalCdueCtoC.oaters,CandCunderwentC25CGCparsCplanaCvitrectomyCandCcataractCsurgeryCforCrhegmatogenousCretinalCdetachmentCandCcataract.CAtC4-daysCpostoperative,Chyperemia,Chypopyon,CandC.brinCprecipitationCappeared.CBasedConChyper-re.ectiveCimagingCofCtheCvitreousCviaCechography,CheCwasCdiagnosedCasCacuteCendophthalmitisCandCvitreousCsurgeryCwithCintraocularClensCremovalCwasCperformed.Gram-positivecocciweredetectedintheaqueoushumorandvitreous,andtreatmentwithintravenousmeropenemandlevo.oxacin,cefmenoxime,andbetamethasoneinstillationwereinitiated.Transparencyofthefun-dusCimprovedCandCS.ClugdunensisCwasCisolatedCfromCtheCaqueousChumorCandCvitreousCatC6-daysCpostoperative.CIntravenousCantibioticsCandCdrugCinstillationsCwereCreducedCwithCimprovementCofCintraocularCin.ammation.CBest-correctedvisualacuitywas(0.1)atthe.nalvisit.Conclusion:Incasesofpostoperativeendophthalmitis,itisvitaltokeepS.lugdunensisCinmindasapossiblecausativeorganism.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(1):101.105,C2024〕Keywords:Staphylococcuslugdunensis,術後急性眼内炎,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,抗菌薬感受性.Staphy-lococcuslugdunensis,postoperativeendophthalmitis,coagulasenegativestaphylococci,antimicrobialsensitivity.Cはじめに1988年にリヨン(ラテン名CLugdunum)で発見されたCStaphylococcuslugdunensis(S.lugdunensis)はコアグラーゼが陰性のため,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negativeStaphylococci:CoNS)に分類されているが1),ゲノム上の遺伝子数がC3,800台の表皮ブドウ球菌に比較し,3,000未満とかなり少なくユニークな細菌である2).また,軟部組織,骨・関節組織ならびに心血管感染では黄色ブドウ球菌感染に近似の重篤な感染を引き起こし,他のCCoNSとは異なる菌種として注目されている3.6).〔別刷請求先〕福田達也:〒885-0051宮崎県都城市蔵原町C6-3宮田眼科病院Reprintrequests:TatsuyaFukuda,M.D.,MiyataEyeHospital,6-3Kurahara,Miyakonojo,Miyazaki885-0051,JAPANC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(101)C101C図1a眼内炎発症時の左眼の前眼部写真結膜の充血と少量の前房蓄膿がみられ,角膜にはCDescemet膜皺襞を認める.2010年代より質量分析法が細菌学的検査に広く導入されるようになり,以前に比較して菌種の同定が迅速かつ容易となり,S.lugdunensisは皮膚・眼表面の常在菌として認識されるようになり7,8),この菌種がそれほどまれな菌種でないことも明らかにされている.眼科領域の感染症として,重症角膜炎,内眼手術後や硝子体注射後の眼内炎などが報告されているが9.16),報告数は限られており,眼科領域のCS.Clug-dunensis感染症の他のCCoNS感染症との違いに関しては不明な点が多い.裂孔原性網膜.離と白内障に対してC25ゲージ経毛様体扁平部硝子体切除および白内障手術を行ったC1例で,術後C4日目にCS.lugdunensisによる急性眼内炎を発症したC1例を経験したので,その臨床経過を報告する.CI症例患者:61歳,男性.主訴:飛蚊症.既往歴:眼科ならびに内科的に特記すべき既往歴はなく,ヘモグロビンCA1cはC5.5%であった.現病歴:飛蚊症の増悪を主訴に前医を受診し,左眼)裂孔原性網膜.離の診断を受けて精査加療目的に宮田眼科病院(以下,当院)を紹介受診した.受診時所見:視力は右眼C0.05(0.9C×sph.9.50D(cylC.1.50DAx50°),左眼C0.07(0.6C×sph.7.50D),眼圧は右眼C11CmmHg,左眼C9CmmHgであった.左眼には軽度の白内障と,視神経乳頭からC6時方向に単一裂孔を伴った網膜.離を認めた.前眼部には特記すべき所見は認めなかった.術前C2日前よりC1日C4回C1.5%レボフロキサシン(LVFX)点眼を開始した.手術前室にて左眼眼瞼ならびに周囲の皮膚をC10%ポビドンヨード,眼表面はC8倍希釈ポリビニルアルコール(PA)・ヨードC30秒間の消毒を行い,ドレーピング図1b眼内炎発症時の左眼のBモードエコー画像所見硝子体内に高輝度エコーを認める.図1c眼内炎に対する硝子体手術時の術中眼底所見硝子体内は混濁し,網膜上にフィブリンの析出と出血を認めた.後に,開瞼器装着,再度CPA・ヨード消毒を実施し,左眼白内障手術,眼内レンズ挿入およびC25ゲージ経毛様体扁平部硝子体切除,100%空気によるタンポナーデを施行した.術後,1日C4回のC1.5%CLVFX点眼を継続した.経過:術中合併症はなく,術後C3日まで前眼部の炎症は軽度で,網膜は復位していた.眼圧はC10CmmHgであった.しかし,術後C4日目に結膜・毛様充血が生じ,Descemet膜皺襞とフィブリン析出を伴う前房蓄膿を認めた(図1a).眼痛はなかった.全身状態は良好で,体温はC36.7℃で,血清CC表1Staphylococcuslugdunensis分離株の薬剤感受性抗菌薬前房水分離株硝子体分離株CMIC感性CMIC感性CoxacillinC2CSC2CSCceftazidimeC8CSC8CSCceftriaxoneC4CSC2CSCcefmenoximeC1CSC1CSCmeropenemC≦0.25CSC≦0.25CSCvancomycinC≦1CSC≦1CSCtobramycinC≦1CSC≦1CSCazithromycinC≦0.25CSC≦0.25CSCmoxi.oxacinC≦0.25CSC≦0.25CSCgati.oxacinC0.5CSC0.5CSClevo.oxacinC1CSC≦0.25CSCchloramphenicolC4CSC4CSCminocyclineC≦1CSC≦1CSCimipenemC≦0.25CSC≦0.25CSMIC:minimumCinhibitoryconcentration(μg/ml),S:sus-ceptible.反応性蛋白はC0.56Cmg/dlであった.眼底が透見できないため超音波CBモードで観察したところ,硝子体腔に高輝度エコーを認めた(図1b).前眼部とエコー所見より術後眼内炎と診断し,左眼の硝子体手術・眼内レンズ摘出術を緊急に行った.手術:眼内レンズを抜去し,水晶体.を摘出し,細菌学的検査のための硝子体検体の採取後,0.002%バンコマイシン(VCM)およびC0.004%セフタジジム(CAZ)を添加したCBSSPlus(日本アルコン)で眼内を灌流しながら硝子体切除を実施した.網膜の広範囲にフィブリンが析出し,一部の網膜は虚血となっていたため(図1c),網膜裂孔に対してレーザー治療を行うことができなかったため,シリコーンオイルを注入して手術を終了した.術中に採取した前房水,硝子体,眼内レンズ,水晶体.検体の検鏡および培養検査を行った.前房水と硝子体の塗抹標本にはグラム陽性球菌を認め,好中球の貪食像も観察した(図2a,C2b).前房の標本では浸潤する細胞は好中球が主体であったが,硝子体には好中球に加えて単核球も存在し,さらに好中球は核変性を伴っているものが目立った.術後はメロペネム(MEPM)0.5CgのC1日C3回の静注に加えて,1時間ごとのC0.5%セフメノキシム(CMX)とC1.5%LVFX点眼,1日C6回のC0.1%ベタメタゾン点眼,1日C2回のブロムフェナク,1%アトロピン点眼,トロピカミド・フェニレフリン点眼,0.3%オフロキサシン(OFLX)眼軟膏塗布を開始した.再手術後C5日目には眼底の透見性ならびに炎症所見が改善傾向を示し,MEPM静注を中止し,0.5%CCMXとC1.5%LVFX点眼はC2時間ごとに漸減した.再手術後C6日目に細菌培養結果が判明し,前房水と硝子体検体からCS.lugdunen-sisが分離され,抗菌薬感受性(表1)も同一で,起因菌と判断した.点眼中のCLVFXとCCMXに感受性を確認したので,治療を継続した.その後も抗菌薬に対する反応は良好で,眼底の透見性も徐々に改善した.再手術後C7日目にC0.5%CMX,1%アトロピン,トロピカミド・フェニレフリン点眼を中止し,1.5%CLVFX点眼はC1日C6回に,0.1%ベタメタゾン点眼はC1日C4回に漸減し,11日目に退院となった.退院後,眼内炎症の再燃は認めなかったが,再手術後C18日目に眼圧がC44CmmHgと上昇し,角膜上皮浮腫を生じたため,アセタゾラミドC250Cmg内服およびカルテオロール・ラタノプロスト点眼およびブリモニジン・ブリンゾラミド点眼による治療を開始した.その後,眼圧はC19CmmHgまで低下し,内服を中止し,点眼薬も中止した.再手術後C4カ月目に眼圧がC25CmmHgまで上昇したため,タフルプロスト点眼C1日C1回を追加した.再手術後C12カ月目に眼内レンズの強膜固定が行われ,再手術後C23カ月の最終観察時,矯正視力は(0.1C×IOL×sph.1.5D)で,網膜はシリコーンオイルにて復位しており,ブリモニジン・ブリンゾラミド点眼のみで眼圧はC14CmmHgであり,感染の再燃なく経過している.なお,眼底には一部網膜動脈の白線化と局所的な網膜喪失部位を認める.分離株の細菌学的特徴:前房水ならびに硝子体検体より分離され,冷凍保存していた分離株を再度培養し,コロニーの性状,質量分析,clumpingfactor(膜型コラゲナーゼ)について検討した.その結果,コロニー性状と質量分析パターン(図2c,C2d)は一致し,ガラス板法(ウサギ血漿,デンカ)によるCclumpingfactorは両分離株とも陰性であった.CII考按本例は内科的基礎疾患を伴わない成人男性で,硝子体手術後C4日目に眼内炎を発症した.術中に採取した前房水と硝子体の塗抹標本で,同一性状のグラム陽性球菌とその貪食像を認め,両検体からCS.lugdunensisが分離され,抗菌薬感受性,コロニー性状,質量分析パターンも一致したことより,CS.lugdunensisによる内眼手術後の急性細菌性眼内炎と診断した.S.lugdunensisは眼表面の常在菌種であり,採取時のコンタミネーションの可能性もあるため,起因菌としての同定には細菌分離のみならず,塗抹標本での確認も重要と考える.また,塗抹標本では前房水では好中球の浸潤が主体であったが,硝子体では好中球に加えて,単核球も存在し,さらに好中球では核変性もみられたことより,眼内炎は硝子体に始まり,前房に広がったことが示唆された.筆者らが行った白内障術前患者の眼表面からの分離株(9,894株)の解析では,表皮ブドウ球菌がC31%(3,063株),黄色ブドウ球菌がC6.1%(601株)を占め,S.lugdunensisは図2眼内炎に対する術中に採取した左眼前房水(a),左眼硝子体(b)の塗沫検鏡像(グラム染色)と左眼前房水(c),左眼硝子体(d)のグラム陽性球菌のBurkerを使用した質的分析結果a:眼内炎に対する硝子体手術時に採取した左眼前房水の塗抹検鏡像(グラム染色).好中球が散見され,なかには多数のグラム陽性球菌を貪食する好中球を認めた().b:硝子体手術時に採取した左眼硝子体の塗抹検鏡像(グラム染色).好中球と単核球が散見され,一部の好中球は核濃縮を伴っていた.変性した好中球内に多数のグラム陽性球菌の貪食を認めた().c:左眼前房水から分離されたグラム陽性球菌のCMALDCBiotyperCMSPCidenti.cationCstandardCmethodC1.1(Bruker)を使用した質量分析結果.StaphylococcusClugdunensisCDSMC4806DSM(NCBI28035)とマッチし,ScorevalueはC2.32であった.Cd:左眼硝子体から分離されたグラム陽性球菌のCMALDBiotyperMSPidenti.cationstandardmethod1.1(Bruker)を使用した質量分析結果.StaphylococcuslugdunensisCDSM4806DSM(NCBI28035)とマッチし,ScorevalueはC2.33であった.3.9%(386株)とC3番目に多いブドウ球菌であった8).一方,て,丹らの硝子体生検と白内障手術のC1例では術後C4日目にEVSの白内障術後眼内炎の分離株(250株)の解析では,発症13),佐藤らの白内障手術のC1例では術後C8日目14),フラStaphylococcusepidermidisがC81.9%(204株)で,ついでCS.ンスのCChiquetらの白内障手術のC5例では術後C5日からC12lugdunensisとCStaphylococcusCwarneriのそれぞれがC3.6%(9日(平均C7.6日)11),台湾のCChenらの硝子体手術C1例では術株)と,CoNSが分離された術後眼内炎ではC2番目に多い菌後C41日目,白内障手術C3例では術後C3.81日16)に発症して種であった17).おり,S.lugdunensisによる術後眼内炎の発症時期は多様でCS.lugdunensisが分離された術後眼内炎の発症時期としある.本例のCS.lugdunensis分離株は,治療に使用したMEPM,CMX,LVFXを含め,検査した抗菌薬すべてに対し薬剤感受性を示した.しかし,近年ではメチシリン耐性CS.Clugdu-nensisによる術後髄膜炎感染が報告され18),また,筆者らもメチシリン耐性CS.lugdunensisを術前の眼表面より分離しており8),治療に際しては薬剤感受性結果に基づき適切な抗菌薬を選択することが重要と考えられる.CS.lugdunensisはCS.aureusのCclumpingfactorとアミノ酸の相同性を有するCFbl遺伝子を有し19,20),この遺伝子産物はフィブリノーゲンと結合し,病原性を増強している可能性が示唆されている3).一方,S.lugdunensisのすべての株がclumpingfactor陽性ではないことも判明している1).本例の眼内炎手術時に硝子体内にフィブリンの析出は認められたが,分離株はウサギ血漿を使ったCclumpingfactorは陰性であり,フィブリン析出の発症機序は不明である.他のCCoNSによる眼内炎とCS.lugdunensis眼内炎の差異に関する今後の解析が期待される.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)FreneyCJ,CBrunCY,CBesetCMCetal:StaphylococcusClugdu-nensisCspCnovCandCStaphylococcusCschleiferiCspCnov,CtwoCspeciesfromhumanclinicalspecimens.IntJSystBacteriolC38:436-439,C19882)ArgemiCX,CMatelskaCD,CGinalskiCKCetal:ComparativeCgenomicCanalysisCofCStaphylococcusClugdunensisCshowsCaCclosedCpna-genomeCandCmultipleCbarriersCtoChorizontalCgenetransger.BMCGenomicsC19:621,C20183)FrankKL,delPozoJL,PatelR:FromclinialmicrobiologytoCinfectionpathogenesis:HowCdaringCtoCbeCdi.erentCworksforStaphylococcuslugdunensis.ClinMicrobiolRevC21:111-133,C20084)BeckerCK,CHeilmannCC,CPetersG:Coagulase-negaiveCStaphylococci.ClinMicrobiolRevC27:870-926,C20145)ArgemiCX,CHansmannCY,CRiegelCPCetal:IsCStaphylococusClugdunensisCsigni.cantinclinicalsamples?.JClinMicrobi-olC55:3167-3174,C20176)HeilbronnerCS,CFosterTJ:Staphylococuslugdunensis:askinCcommensalCwithCinvasieCpathogenicCpotential.CClinCMicrobiolRevC34:e00205-20,C20217)ElaminCWF,CBallCD,CMillarM:UnbiasedCspecies-levelCidenti.cationCofCclinicalCisolatesCofCcoagulase-negativeStaphylococci:DoesitchangetheperspectiveonStaphy-lococuslugdunensis.JClinMicrobiolC53:292-294,C20158)SakisakaT,IwasakiT,OnoTetal:Changesinthepre-operativeCocularCsurfaceC.oraCwithCanCincreaseCinCpatientage:ACsurveillanceCanalysisCofCbacterialCdiversityCandCresistanceto.uoroquinolone.GraefesArchClinExpOph-thalmol(e-pub)doi.10.1007/Cs00417-023-06121,C20239)InadaN,HaradaN,NakashimaMetal:SevereStaphylo-coccuslugdunensisCkeratitis.InfectionC43:99-101,C201510)ChiquetCC,CPechinotCA,CCreuzut-GarcherCCCetal:AcuteCpostoperativeCendophtalmitisCcausedCbyCStaphylococcusClugdunensis.JClinMicrobiolC45:1673-1678,C200711)GarronCRB,CMillerCD,CFlynnCHWJr:Acute-onsetCendo-phthalmitisCcausedCbyCStaphylococcusClugdunensis.AmJOphthalmolCaseRepC9:28-30,C201812)犬塚将之,石澤聡子,小澤憲司ほか:StaphylococcusClug-dunensisによる抗血管内皮増殖因子薬硝子体内投与後眼内炎のC1例.眼科61:1535-1540,C201913)丹啓紀,池川泰民,小林武史ほか:StaphylococcusClug-dunensisによる硝子体手術後眼内炎のC1例.眼科手術34:C633-637,C202114)佐藤慧一,竹内正樹,石戸みづほほか:良好な視力経過をたどったCStaphylococcuslugdunensisによる白内障術後眼内炎のC1例.あたらしい眼科C39:644-648,C202215)AhmedCU,CNozadCL,CSaldana-VelezM:StaphylococcusClugdunensisCendophthalmitisCfollowingCintravitrealCanti-vascularCendothelialCgrowthCfactor.CCureusC14:e30439,C202216)ChenKJ,SunMH,TsaiAetal:StaphylococcuslugdunenC-sisendophthalmitis:caseCseriesCandCliteratureCreview.Antibiotics(Basel)C11:1485,C202217)BannermannCTL,CRhodenCDL,CMcAlisterCSKCetal:TheCsourceCofCcoagulase-negativeCstaphylococciCinCtheCEndo-phthalmitisVitrectomyStudy.AcomparisonofeyelidandintraocularCisolatesCusingCpulsed-.eldCgelCelectrophoresis.CArchOphthalmolC115:357-361,C199718)佐々木康弘,金丸亜佑美,内田壽恵ほか:術後にメチシリン耐性CStaphylococcuslugdunensisによる髄膜炎を起こした1例.臨床神経C56:773-776,C201619)NilssonCM,CBjerketorpCJ,CFussCBCetal:AC.brinogen-bindingCproteinCofCStaphylococcusClugdunensis.CFEMSCMicrobiolLettC241:87-93,C200420)GeogheganCJA,CGaneshCVK,CSmedsCECetal:MolecularCcharacterizationoftheinteractionofstaphylococcalmicro-bialsurfacecomponentsrecognizingadhesivematrixmol-ecules(MSCRAMM)ClfAandFiblwith.brinogen.JBiolChemC285:6208-6216,C2010***

良好な視力経過をたどったStaphylococcus lugdunensis による白内障術後眼内炎の1 例

2022年5月31日 火曜日

《第57回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科39(5):644.648,2022c良好な視力経過をたどったCStaphylococcuslugdunensisによる白内障術後眼内炎のC1例佐藤慧一竹内正樹石戸みづほ岩山直樹岡﨑信也山田教弘水木信久横浜市立大学大学院医学研究科眼科学教室CARareCaseofEndoophthalmitisCausedbyStaphylococcuslugdunensisCafterCataractSurgeryCKeiichiSato,MasakiTakeuchi,MiduhoIshido,NaokiIwayama,ShinyaOkazaki,NorihiroYamadaandNobuhisaMizukiCDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,YokohamaCityUniversitySchoolofMedicineC目的:硝子体検体からCStaphylococcusClugdunensis(S.lugdunensis)が培養された良好な視力経過をたどった白内障術後眼内炎のC1例を報告する.症例:64歳,女性.左眼白内障手術施行後C8日目に霧視を自覚し前医を受診し,当院紹介となった.左眼矯正視力はC20Ccm手動弁まで低下しており,前房蓄膿と硝子体混濁を認め,左眼白内障術後眼内炎と診断した.霧視出現の翌日に眼内レンズ抜去と硝子体切除術を施行し,術後に硝子体検体からCS.lugudunensisが培養された.培養されたCS.lugudunensisはセフタジジムとバンコマイシンに感受性を示し,レボフロキサシンに中間耐性を示した.術後経過は良好であり,左眼矯正視力は(1.2)まで改善した.結語:眼内炎の起因菌として,S.lugu-dunensisも考慮する必要がある.早期の硝子体手術と抗菌薬の硝子体注射により眼内炎の予後は良好となりうる.CPurpose:ToreportararecaseofendophthalmitispostcataractsurgerycausedbyStaphylococcuslugdunen-sis(S.lugdunensis)inCwhichCaCgoodCvisualCoutcomeCwasCobtained.CCaseCreport:AC64-year-oldCfemaleCpresentedCwithCblurredCvisionCinCherCleftCeyeC8CdaysCafterCundergoingCphacoemulsi.cationCandCaspirationCcataractCsurgeryCwithCintraocularlens(IOL)implantation.CUponCexamination,Cvisualacuity(VA)inCthatCeyeCwasChandCmotionCatC20Ccm,andhypopyonandvitreousopacitywereobserved.Shewassubsequentlydiagnosedaspostoperativeendo-phthalmitis,andparsplanavitrectomy(PPV)andIOLexplantationwereimmediatelyperformedthefollowingday.ACcultureCtestCofCanCobtainedCvitreousChumorCspecimenCshowedCpositiveCforCS.lugdunensis,CwithCsusceptibilityCtoCceftazidimeandvancomycin,yetnotlevo.oxacin.Posttreatment,thebest-correctedVAinherlefteyeimprovedtoC20/16.CConclusion:Inthisrarecase,agoodvisualoutcomewasobtainedviaearlyPPVcombinedwithintravit-realantibioticadministration,andcliniciansshouldbestrictlyawarethatendophthalmitiscausedbyS.lugdunensisCcanoccurpostcataractsurgery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(5):644.648,C2022〕Keywords:Staphylococcuslugdunensis,白内障手術,術後眼内炎,硝子体手術.Staphylococcuslugdunensis,cat-aractsurgrery,endopthalmitis,postoperativeendophthalmitis,parsplanavitrectomy.Cはじめに術後眼内炎は白内障手術の重大な合併症である.起炎菌としては,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negativestaphylococci:CNS)が半数を占め,とくにCStaphylococcusepidermidisが多い.StaphylococcusClugdunensis(S.lug-dunensis)はCCNSに含まれる皮膚常在菌の一つであり,軟部組織感染や菌血症,心内膜炎などの原因菌として近年報告されているが1.3),眼内炎の起因菌としての報告はまだ少ない.抗血管内皮増殖因子薬硝子体内注射後の眼内炎は犬塚らの報告がわが国でもされているが4),白内障術後眼内炎の起因菌となった症例はわが国ではまだ報告がない.今回,StaphylococcusClugdunensisによる白内障術後眼内〔別刷請求先〕佐藤慧一:〒236-0004神奈川県横浜市金沢区福浦C3-9横浜市立大学大学院医学研究科眼科学教室Reprintrequests:KeiichiSato,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,YokohamaCityUniversitySchoolofMedicine,3-9Fukuura,Kanazawa-ku,Yokohama,Kanagawa236-0004,JAPANC644(94)図1初診時所見a:前眼部写真.前房蓄膿と前房内フィブリン析出を認める.Cb:超音波断層検査像.硝子体混濁を認める.明らかな網膜.離は認めない.炎を生じ,良好な経過をたどったC1例を経験したので報告する.CI症例患者:64歳,女性.主訴:左眼視力低下.既往歴:左眼白内障,右眼眼内レンズ(intraocularlens:IOL)挿入眼.その他特記事項なし.糖尿病罹患歴なし.現病歴:左眼白内障の進行により近医にて左超音波乳化吸引術とCIOL挿入術を施行された.術後点眼として,モキシフロキサシンC4回,ベタメタゾンC4回,ブロムフェナクC2回の点眼が行われていた.手術C8日後,外来診察にてCVS=(1.0)であり,診察上感染兆候はみられなかったが,同日帰宅後に左眼霧視を自覚した.手術C9日後,起床時から左眼視力低下を自覚し,近医受診し,同日横浜市立大学附属病院(以下,当院)紹介受診となった.当院受診時所見:視力は左眼C20Ccm手動弁であり矯正不能であった.眼圧は左眼C11CmmHg,右眼C17CmmHgであった.左眼前眼部には前房蓄膿に加え,多数の炎症細胞とフィブリン析出,虹彩癒着を認めた.左眼CIOLは.内固定されており,左眼底は透見不可能であった.右眼は特記すべき異常はみられなかった.Bモード断層超音波検査では左眼の硝子体混濁を認め,明らかな網膜.離はみられなかった(図1).以上の病歴と所見より白内障術後感染性眼内炎と診断した.同日硝子体手術およびCIOL摘出術を施行し,術中の灌流液にバンコマイシン(VCM)10Cmg/500Cmlおよびセフタジジム(CAZ)20Cmg/500Cmlを混注した.術中所見では濃厚な硝子体混濁と,網膜の全象限に網膜出血と浸潤病巣が観図2術中眼底写真硝子体混濁に加え,網膜に出血と浸潤病巣が観察される.察された.網膜.離はみられなかった(図2).経過:術直後からセフトリアキソン(CTRX)1Cg/日の点滴を開始した.また,当院では硝子体手術後術後に追加治療としての硝子体内注射を行っており,術後C2日目とC5日目にCVCM2.0Cmg/0.2CmlとCCAZ4.0Cmg/0.2Cmlの連続した硝子体注射を行った.点眼としてガチフロキサシン(GFLX)6回,ベタメタゾンC6回,ブロムフェナクC2回を開始した.術後翌日から前房蓄膿は消失した.術後C6日目,術中の硝子体検体からCS.lugdunensisが培養され,眼底透見も改善傾向であった.本症例で培養されたCS.lugdunensisの薬剤感受性結果は,CAZとCVCMに感受性を示し,レボフロキサシ表1薬剤感受性試験結果ン(CLVFX)に中間耐性を示していた(表1).感受性確認後,薬剤MIC(Cμg/ml)判定CCTRXの点滴からセファレキシン(CCEX)C750Cmg/日内服へPCGC≦0.06CSC抗菌薬を変更し,退院とした.CGFLX点眼は術後感染予防目ABPCC≦1CSC的に退院後も継続した.術後C16日目には,CVS=(C0.5C×IOLCMPIPCC0.5CSC×sph+5.50D(cyl.0.75DAx5°)まで改善し,前眼部は炎CEZCCMZC≦1C≦4CSCSC症細胞を軽度認め,眼底には線状硝子体混濁がわずかに残るIPM/CSC≦1CSCが,網膜色調は良好であり,白斑や変性巣はみられなかっSBT/ABC≦2CSCた.術後C1カ月後にはCVS=(C1.0C×IOL×sph+5.00(cylCGMC≦1CSC.0.50DAx165°)の視力が得られた.術後C2カ月で点眼をABKCEMC≦1C≦0.25CNACSC終了した.術後C5カ月の時点で硝子体混濁は消失し,CIOL二CLDMC≦0.25CSC次挿入を施行した.術後C11カ月の時点でCVS=(C1.2C×IOL×MINOC≦1CSCsph.1.50(cyl.0.50)の最終視力が得られ,経過は非常にCAZC1CSC良好であった.CLVFXC2CICVCMC0.5CSCII考按TEICC≦1CSCDAPC≦0.25CSCS.lugdunensisは皮膚常在菌であり,CNSの一つである.STC≦0.5CSC皮膚感染症に加え,脳膿瘍,膿胸,軟部膿瘍,心内膜炎,FOMCRFPC≦4C≦0.5CSCSC敗血症,腹膜炎,人工関節周囲感染の原因菌としても知られLZDC1CSCている.他のCCNSに比べ病原性が高く,皮膚感染症や整形MUPC≦256CS外科疾患の領域ではCStaphylococcusaureus(CS.aureus)と臨PCG:ベンジルペニシリン,ABPC:アンピシリン,MPIPC:オ床上同等に扱われている2,3).キサシリン,CEZ:セファゾリン,CMZ:セフメタゾール,IPM/S.lugdunensisに起因する白内障術後眼内炎のこれまでのCS:イミペネム/シラスタチン,SBT/AB:スルバクタム/アンピ報告ではCLVFXに対して感受性をもつ株が培養されているシリン,GM:ゲンタマイシン,ABK:硫酸アルベカシン,EM:が5,6),本症例では感受性をもたなかった.エリスロマイシン,CLDM:クリンダマイシン,MINO:ミノサイクリン,CAZ:セフタジジム,LVFX:レボフロキサシン,2007年のChiquetらの報告では,白内障術後のS.VCM:塩酸バンコマイシン,TEIC:テイコプラニン,DAP:ダlugdunensis眼内炎C5例のうち,4例について硝子体切除術プトマイシン,ST:スルファメトキサゾール・トリメトプリム合を施行し,3例については術後網膜.離を発症し最終矯正視剤,FOM:ホスホマイシン,RFP:リファンピシン,LZD:リネゾリド,MUP:ムピロシン.力は手動弁以下であり,網膜.離を発症しなかった残りC1例CX-8日X日X+1日X+1カ月X+2カ月X+5カ月PEA+IOL挿入発症初診S.lugdunensis検出PPV+IOL摘出IOL二次挿入VCM+CAZ(I.V.)CTRX(div)CEX(p.o.)GFLX(点眼)矯正視力1.00.1図3治療経過PEA:水晶体乳化吸引術,IOL:眼内レンズ,PPV:経毛様体扁平部硝子体手術,VCM(I.V.):バンコマイシン硝子体注射(2.0Cmg/0.2Cml),CAZ(I.V.):セフタジジム硝子体内注射(4.0Cmg/0.2Cml),CTRX(div):セフトリアキソン経静脈投与(1Cg/日),CEX(p.o.):セファレキシン内服(750Cmg/日),GFLX(点眼):ガチフロキサシン点眼(6回/日).表2Staphylococcuslugdunensisによる白内障術後眼内炎の報告報古者発症から発症から受診時最終年齢術後受診まで手術まで治療合併症(報告年)の日数の日数矯正視力矯正視力827日2日5日硝子体手術Cm.m.C0.5特記なしCChiquetら(C2007)C8478696日5日12日不明不明不明C7日4日N/A硝子体手術C硝子体手術C硝子体注射Cs.L(+)Cs.l.(+)C0.2Cm.m.s.1.(.)1.0術後網膜.離C術後網膜.離C特記なしC647日不明5日硝子体手術Cm.m.Cn.d.術後網膜.離6810日不明CN/A硝子体注射Cn.d.C0.7特記なしGaroonらC757日1日CN/A硝子体注射Cn.d.C0.5特記なし(2018)C7321日不明2週間硝子体手術Cn.d.C0.2特記なし本症例(2021)C648日1日1日硝子体手術Cm.m.C1.0特記なしN/A:手術未施行につき該当なし,m.m.:手動弁,n.d.:指数弁,s.I.:光覚弁.は最終矯正視力はC0.5であった.いずれも受診時の視力は手動弁以下であり,発症から手術までの期間はC4.7日であった.1例については受診時矯正視力がC0.2と良好であり,硝子体注射による治療で最終矯正視力C1.0が得られている5).またCGaroonらの報告では白内障術後のCS.lugdunensis眼内炎C3例のうち,硝子体手術を施行した症例はC1例で,発症から手術まではC2週間が経過しており,最終矯正視力はC0.2であった.残りC2例は硝子体内注射で治療が行われ,最終矯正視力はそれぞれC0.7とC0.5であった(表2).Garoonらは硝子体手術には術後網膜.離のリスクが伴い,硝子体手術を施行しなかった症例に比べて視力予後が悪いとして,S.lugdu-nensis眼内炎に対する硝子体手術治療については懐疑的な提言をしていた6).しかし,本症例では矯正視力が手動弁からC1.0まで回復した.本症例では発症C1日以内と早期に手術治療を行ったことが過去の症例と異なっており,発症後早期に手術加療を行った場合は高い治療効果が期待できる可能性があると考える(表2).また,網膜全象限に浸潤病巣が出現していたが,網膜.離は生じておらず,網膜.離が生じる前に硝子体手術を完了できたことも治療効果につながった可能性がある.今回の症例では前房蓄膿が生じていたが,前述したCChi-quetらとCGaroonらのC8例の報告においても,Chiquetらの硝子体注射のみで治療を行ったC1例を除き,すべての症例で前房蓄膿を合併していた5,6).また,Cornutらの報告でもS.lugudunensis白内障術後眼内炎における前房蓄膿はその他のCCNS術後眼内炎による前房蓄膿に比べ丈が高いことが報告されている7).他科領域でもCS.lugdunensisによる人工関節周囲感染症は高率で膿瘍を合併することが知られており2),眼内炎の際に前房蓄膿の合併が多いことはCS.lugdu-nensis眼内炎の特徴の一つであると考えられる.先に述べた白内障術後眼内炎の報告において,発症から手(97)術まで数日以上経過している原因として,EndophtalmitisVitrectomyCStudy(EVS)の影響が考えられる.EVSでは1990.1995年にかけて白内障術後眼内炎に対する硝子体手術の治療効果を検討し,光覚弁まで低下している患者に対しては硝子体茎離断術の利益が考えられるが,手動弁以上の視力がある症例には必ずしも硝子体茎離断術は必要でないと提言している8).2013年のCEuropeanCSocietyCofCCataractCandCRefractiveSurgeon(ESCRS)のガイドラインでは,まず前房穿刺を行い,初期治療としてはクラリスロマイシンの経口投与が提言されている.硝子体手術は前房水の培養とCPCRで感染が確認された場合に検討し,その際抗菌薬の硝子体注射と併用することが提言されている.また,手術の際も初回はCIOL摘出を行わず,後.切開を伴う硝子体切除に留めるとされている9).当院においては術後眼内炎発症時は早期に初期治療として硝子体切除術と硝子体検体の培養検査を施行し,その後数回の硝子体注射を施行している.IOL摘出術については必ずしも視力予後に寄与しないという報告もあるが10),今回は施行した.S.lugdunensis感染症は組織破壊性が高く,とくに心内膜炎の起因菌としてはCS.aureusと比べても死亡率が高いため,積極的な手術治療の必要性が論じられている11,12).S.lugdu-nensisに起因する心内膜炎のみならず,眼内炎についても,早期の手術治療の必要性について論じる余地があると考える結果であった.今回はわが国でこれまで報告のなかったCS.lugdunensisによる白内障術後眼内炎を経験した.S.lugdunensisは発症早期に硝子体手術を行い,硝子体培養によって適切な抗菌薬を選択することが予後につながると考えられた.あたらしい眼科Vol.39,No.5,2022C647C文献1)FrankKL,PozoJLD,PatelR:FromclinicalmicrobiologytoCinfectionpathogenesis:HowCdaringCtoCbeCdi.erentCworksforStaphylococcuslugdunensis.,ClinMicrobiolRev21:111-133,C20082)Lourtet-HascoeJ,Bicart-SeeA,FeliceMPetal:Staphy-lococcusClugdunensis,CaCseriousCpathogenCinCperiprostheticjointinfections:comparisontoStaphylococcusCaureusCandCStaphylococcusCepidermidis,IntCJCInfectCDisC51:56-61,C20163)桜井博毅,堀越裕歩:小児のCStaphylococcuslugdunensisによる市中感染症と院内感染症の臨床像と細菌学的検討,小児感染免疫31:21-26,C20194)犬塚将之,石澤聡子,小澤憲司ほか:StaphylococcusClug-dunensisによる抗血管内皮増殖因子薬硝子体内投与後眼内炎のC1例.眼科61:1535-1540,C20195)ChiquetCC,CPechinotCA,CCreuzot-GarcherCCCetal:AcuteCpostoperativeCendophthalmitisCcausedCbyCStaphylococcusClugdunensis.JClinMicrobiolC45:1673-1678,C20076)GaroonCRB,CMillerCD,CFlynnCHWJr:Acute-onsetCendo-phthalmitisCcausedCbyCStaphylococcusClugdunensis.AmJOphthalmolCaseRepC9:28-30,C20187)CornutCPL,CThuretCG,CCreuzot-GarcherCCCetal:RelationC-shipCbetweenCbaselineCclinicalCdataCandCmicrobiologicCspectrumCinC100CpatientsCwithCacuteCpostcataractCendo-phthalmitis.RetinaC32:549-557,C20128)EndophthalmitisCVitrectomyCStudyGroup:ResultsCofCtheCEndophthalmitisVitrectomyStudy.ArandomizedtrialofimmediateCvitrectomyCandCofCintravenousCantibioticsCforCtheCtreatmentCofCpostoperativeCbacterialCendophthalmitis.CArchOphthalmolC113:1479-1496,C19959)BarryCP,CCordovesCL,CGardnerS:ESCRSCguidelinesCforCpreventionCandCtreatmentCofCendophthalmitisCfollowingCcataractsurgery:Data,CdilemmasCandCconclusions.Cwww.Cescrs.org/endophthalmitis/guidelines/ENGLISH.pdf,201310)望月司,佐野公彦,折原唯史:硝子体手術を施行した白内障術後急性眼内炎の起炎菌と手術成績の推移.日眼会誌C121:749-754,C201711)KyawCH,CRajuCF,CShaikhAZ:StaphylococcusClugdunensisCendocarditisCandCcerebrovascularaccident:ACsystemicCreviewCofCriskCfactorsCandCclinicalCoutcome.CCureusC10:Ce2469,C201812)AngueraI,DelRioA,MiroJMetal:Staphylococcuslug-dunensisCinfectiveendocarditis:descriptionCofC10CcasesCandCanalysisCofCnativeCvalve,CprostheticCvalve,CandCpace-makerleadendocarditisclinicalpro.les.Heart(Britshcar-diacsociety)91:e10,C2005***