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正常眼におけるTendency-Oriented Perimetry の信頼性と再現性

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page1(97)3750910-1810/10/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科27(3):375381,2010c〔別刷請求先〕平澤一法:〒228-8555相模原市北里1丁目15番地1号北里大学大学院医療系研究科眼科学Reprintrequests:KazunoriHirasawa,C.O.,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalScience,KitasatoUniversity,1-15-1Kitasato,Sagamihara-shi,Kanagawa228-8555,JAPAN正常眼におけるTendency-OrientedPerimetryの信頼性と再現性平澤一法*1庄司信行*1,2遠藤美奈*2黒沢優佳*2郡司舞*2*1北里大学大学院医療系研究科眼科学*2北里大学医療衛生学部視覚機能療法学Tendency-OrientedPerimetryTest-RetestVariabilityandReproducibilityinNormalSubjectsKazunoriHirasawa1),NobuyukiShoji1,2),MinaEndo2),YukaKurosawa2)andMaiGunji2)1)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalScience,KitasatoUniversity,2)DepartmentofOrthopticsandVisualScience,SchoolofAlliedHealthScience,KitasatoUniversity目的:正常者においてTendency-OrientedPerimetry(TOP)をStandardAutomatedPerimetry(SAP),Short-WavelengthAutomatedPerimetry(SWAP),FlickerPerimetry(FP)の測定に用いて得られた結果から信頼性と再現性を検討すること.対象および方法:対象は正常者50名50眼である.視野測定にはOCTOPUS311のTOPを使用した.信頼性の検討はSAP,SWAP,FPの結果より特異度を算出し比較した.再現性は50名50眼のうち20名20眼に対しSAP,SWAP,FPを各3回ずつ施行し,meansensitivity(MS),meandefect(MD),lossvariance(LV)の級内相関係数を比較した.さらに各測定点の網膜感度の再現性を個人内変動係数と個人間変動係数に分けて比較した.結果:SAP,SWAP,FPの特異度はそれぞれ97.9%,75.0%,81.3%であった.MS,MD,LVの級内相関係数はSAP(0.97,0.97,0.77),SWAP(0.85,0.87,0.71),FP(0.93,0.93,0.86)であった.測定点ごとの個人内変動係数と個人間変動係数はSAP(4.6±1.1%,10.4±1.4%),SWAP(8.2±1.9%,12.1±2.8%),FP(7.4±2.1%,11.2±2.1%)であった.結論:TOPをSAPに用いる場合は良好な信頼性と再現性を示すので有用である.SWAPとFPは個人内では良好な再現性を示すため有用であるが,個人間でのばらつきが大きいため特異度がやや低くなり,診断の目的で用いるよりも経時的な変化を検討するために用いるほうが適当ではないかと考えた.In50normalvolunteers,weevaluatedthereliabilityandtest-retestvariabilityofTendency-OrientedPerime-try(TOP)employingOCTOPUS311inStandardAutomatedPerimetry(SAP),Short-WavelengthAutomatedPerimetry(SWAP)andFlickerPerimetry(FP).Weevaluatedreliabilitybycalculatingthespecicitywhen50subjectsunderwentSAP,SWAPandFP.Wecomparedtest-retestvariabilitybycalculatingtheintra-classcorrela-tionformeansensitivity(MS),meandefect(MD),andlossvariance(LV),andbycalculatingtheintra-andinter-individualcoecientforeachtestpointatwhich20subjectshadundergoneSAP,SWAPandFP3timeseach.ThespecicitiesofSAP,SWAPandFPwere97.9%,75.0%and81.3%,respectively.Therespectiveintra-classcorrelationsofMS,MDandLVwere:forSAP:0.97,0.97,0.77;forSWAP:0.85,0.87,0.71,andforFP:0.93,0.93,0.86.Therespectiveintra-andinter-individualcoecientsforeachtestpointwere:forSAP:4.6±1.1%and10.4±1.4%;forSWAP:8.2±1.9%and12.1±2.8%,andforFP:7.4±2.1%and11.2±2.1%.TOPisusefulinSAPforshowinggoodreliabilityandtest-retestvariability.AlthoughTOPisusefulinSWAPandFPforshowinggoodtest-retestvariabilityintra-individually,itindicateslowspecicitybecauseofhighinter-individualvariability.TOPmaybemoresuitableforfollow-upthanfordiagnosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(3):375381,2010〕Keywords:SAP,SWAP,Flicker視野,TOP,視野.StandardAutomatedPerimetry(SAP),Short-WavelengthAutomatedPerimetry(SWAP),FlickerPerimetry,Tendency-OrientedPerimetry(TOP),visualeld.———————————————————————-Page2376あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(98)はじめにOCTOPUS視野計に搭載されているTendency-OrientedPerimetry(TOP)は,各測定点を4つのstageに分けて統計学的に予想される視標を1回ずつ呈示し,その反応の有無からstageごとに測定点とその隣接点の網膜感度を補間しながら視野計測を行う方法である1).stage1では正常網膜感度の4/16,stage2では3/16,stage3では2/16,stage4では1/16が補間される(図1).TOPは視標呈示回数が少なく時間が短縮されるが,各測定点の網膜感度を測定するstaircase法とは違い,隣接点の網膜感度を補間する測定原理のため,ある測定点での反応の違いがその測定点と隣接点の網膜感度を変動させ結果がばらつくことや,反対に測定時間が短くなることで疲労が軽減され結果のばらつきが小さくなることも予想される.一方,OCTOPUS視野計には白色背景に白色視標を呈示するStandardAutomatedPerimetry(SAP)のほかに,黄色背景に青色視標を呈示するShort-WavelengthAutomatedPerimetry(SWAP)やフリッカー融合頻度を視野測定に応(dB)2928303028282827273029302828272827262624262426272725272627272628282828272829293030283029272628262525242524262727282929282726252626272728272628272626(dB)1514151514141414141515151414141414131312131213141413141314141314141414141415151515141515141314131313121312131414141515141413131313141414141314141313(dB)15201502828292628302929292826282622232426222620282628262827262829282726151051029293029272627262324222322261618202928272522110152527272727251224312142323412341243214312312434312324312341234124321431414141414213412323EuEuEuEuEu?YEuEuEuEu?YEuEu?Y?Y?YEuEu11443333344444343333031-3033343334433-4-2-400424434333-3-30-2-3-3-2-40433-10-1-1-4-4-13-1333EuEuEu?Y?YEu?Y?Y?YEu?Y?YEu?YEu?YEu?YEu0212202202020-2-2-2-2-2-2222212222-2-2-2-2-1-2-2-2-2-2002020-2-2-2-2-2-2222200-2020-2-220-2-2002221-2-1?YEuEuEuEuEuEuEu?YEuEuEuEu?YEuEu?Y?YEu-1-1-8-837777-17-1777777767677777777777777-4-1-8-807-17777777626707-7-70777-7-7-7-7-7-707077-7(dB)141377172121212114221421212121212020182018202121202120212120212121212110147715211422212021202020181518201421781521212066677714201421206(dB)NV?4/16D+???2/16NV?1/16D+??+???????????????????????3/16D+?(dB)(dB)(dB)(dB)(dB)(dB)(dB)(dB)(dB)151414141214131415151312141514131314131417211421202020212110152120157142019181312222626262620282026262626262525232523252626252625262625262626262615191313212720282625262525252320232519261213212626251111111212121925192625111326282623262625262613272523191226112019171625292929292432243030293029282826252626232628292830292829303029291117913213122323028302828282017232316231092130292810111011881828182928141929243028262929172230282310212910101820211818272931312926322630282728272626282728282428303130282726272928272791591323312432282628262626221925251623892330272612118988203020302613年齢別正常値normalvalue:NVNV×8/16(①)実際の閾値Stage別測定点Stage1視標呈示Stage1応答Stage1補間(②)Stage1推定閾値(③)Stage2視標呈示Stage2応答Stage2補間(④)Stage2推定閾値(⑤)Stage3視標呈示Stage3応答Stage3補間(⑥)Stage3推定閾値(⑦)Stage4視標呈示Stage4応答Stage4補間(⑧)最終推定閾値図1TOPの測定原理TOPストラテジーの測定原理をstage1からstage4まで表現した.実測閾値は実際の緑内障患者の閾値を再現したもので,正常値は内蔵されている50歳の正常値である.Gonzalezらによって公開されたstage配置とOCTOPUSに内蔵されているstage配置は異なるが,測定原理は同じである.本図はOCTOPUSに内蔵されているstage配置で表現した.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010377(99)用したFlickerPerimetry(FP)など,おもに早期視野異常の検出を目的とする測定方法が搭載されている.これらの測定方法がスクリーニング目的で用いられるとすると,短時間で測定可能なTOPが用いられる頻度も多いと考えられる.そこで今回筆者らは,正常者において,SAP,SWAPおよびFPに対しTOPを用いて測定したときに得られた結果から信頼性と再現性を検討した.I対象および方法対象は緑内障専門医の眼底検査により屈折異常以外に眼科的疾患を認めなかった正常者50名50眼(男性10名,女性40名),平均屈折値3.39±3.20D(+3.009.00D),平均年齢21.1±2.0歳(1829歳)である.視野測定にはOCTOPUS311(HAAG-STREIT)を使用し,同一被験者に対しSAP,SWAP,FPの順番に視野測定を施行した.測定間の休憩は10分以上とって同日に行った.キャッチトライアルの偽陽性・偽陰性に対し2回以上反応した被験者は除外した.測定プログラムは32,ストラテジーはTOP,視標サイズはSAPとFPはGoldmannIII,SWAPはGoldmannVを使用し,測定中の視標呈示間隔はadaptive,固視感度はautoで行った.これらの測定によって得られた結果から信頼性と再現性を以下の内容で検討した.本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,被験者には本研究の主旨を口頭により十分説明し,口頭により同意を得て行った.1.信頼性対象は50名50眼である.信頼性は,以下の3つの基準によって判定される特異度から検討した.1つ目はグローバルインデックスから比較する方法(①),2つ目は年齢別正常値からの偏差であるcomparisonから比較する方法(②),3つ目はcomparisonにおける全体的な網膜感度の偏差を修正したcorrectedcomparisonから比較する方法(③)である.詳細は以下に示す.①MeanDefect(MD)が2dBより悪いか,LossVriance(LV)が6dBより悪いである2).②Comparisonにて5dB以上の感度低下が7個以上存在し,そのうち3つは連続している3).③Correctedcomparisonの確率プロットにて有意水準5%未満の異常点が連続して3つ以上存在し,1つは1%未満である4).①と②はOCTOPUS視野計のSAPにおける判定基準で,③はHumphrey視野計で使用されるAnderson-Patellaの判定基準を応用したものである.これらの基準をSWAP,FPにも使用して検討した.さらに③の判定基準に当てはまらなかった被験者を正常者として,SAP,SWAP,FPのグローバルインデックスであるmeansensitivity(MS),MD,LVの5%,25%,中央値,75%,95%信頼区間を求めた.2.再現性対象は50名50眼中20名20眼で,平均屈折値3.38±3.29D(+3.008.75D),平均年齢22.0±1.5歳(2127歳)である.再現性は,同一被験者に対しSAP,SWAP,FPを3回ずつ施行して得られたMS,MD,LVの相関(級内相関係数)と測定点ごとの網膜感度の個人内変動係数と個人間変動係数を算出して検討した.さらに変動係数はstageごとにも分けて算出した.変動係数は,測定点ごとの平均網膜感度とその標準偏差から,変動係数%=平均網膜感度の標準偏差/平均網膜感度×100で算出した.個人内変動係数は,3回の測定によってどれか1回が異常と判定されていても除外せずにそのまま検討した.個人間変動係数は,50名50眼のうち③の基準に当てはまる被験者は除外した.II結果1.信頼性50名中2名は偽陽性・偽陰性反応が2回を超えたため,48名48眼で検討した.全結果は表1に示す.グローバルインデックスから比較する方法(①)と年齢別正常値からの偏差であるcomparisonから比較する方法(②)では特異度が低かった.しかし,comparisonの網膜感度の偏差を修正したcorrectedcomparisonで検討すると特異度は高くなった.③の判定基準に当てはまり異常と判定された被験者を除外し,SAPは47名47眼,平均屈折値3.38±3.26D(+3.009.00D),SWAPは36名36眼,平均屈折値3.23±3.26D(+3.008.75D),FPは38名38眼平均屈折値3.05±3.25D(+3.008.75D)で検討した.SAP,SWAP,FPにおけるMD,MS,LVの5%から95%信頼区間を表2に示す.SAP,SWAP,FPにおいて全体的にやや幅が広かった.表1各検討項目における特異度の結果検討項目特異度n=48SAPSWAPFP①MD>2dBorLV>6dB50.0%18.8%25.0%②Comparisonにて5dB以上の感度低下が7つ以上,そのなかで最低3つは連続37.5%12.5%35.4%③Correctedcomparisonの確率プロットにて5%未満が連続して3つ以上,かつ1つは1%未満97.9%75.0%81.3%特異度の結果を判定項目別に表した.SAP:StandardAutomatedPerimetry,SWAP:Short-WavelengthAutomatedPerimetry,FP:FlickerPerimetry,MD:meandefect,LV:lossvariance.———————————————————————-Page4378あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(100)2.再現性再現性を検討した被験者は除外基準に当てはまらなかったため,20名20眼すべてが対象となった.MS,MD,LVの級内相関係数はSAPでそれぞれ0.97,0.97,0.77,同様にSWAPで0.85,0.87,0.71,FPで0.93,0.93,0.86であった.相関関係の信頼区間の結果は表3に示す.SAP,SWAP,FPのLVは信頼区間の幅が広くばらつきがやや大きかった.ばらつきが大きかったLVの結果を散布図で示す(図2).個人間変動係数の検討では信頼性の検討で正常と判定された被験者で検討した.SAPは47名47眼,SWAPは36名36眼,FPは38名38眼である.各測定点を平均した個人内変動係数と個人間変動係数はSAPで4.6±1.1%,10.4±1.4%,SWAPで8.2±1.9%,12.1±2.8%,FPで7.4±2.1%,11.2±2.1%であった(図3).測定点ごとにおける個人内・個人間変動係数は図4に示す.個人内変動係数はSAP,SWAP,FPともに10%未満と良好であったが,個人間変動係数は10%を超え,特にSWAPとFPはばらつきが大きかった.また,stageごとの変動係数は個人内,個人間においてもstgae3がやや高かった.III考按再現性の検討では,グローバルインデックスであるMS,MD,LVの相関と測定点ごとの網膜感度の変動係数を検討した.MS,MD,LVは良好な相関を示したが,LVに関しては信頼区間の幅が広くばらつきがみられた.個人内変動係数は10%未満と良好であったが,個人間変動係数は10%を超える結果であった.SAPにおいても個人間変動係数が大きくなった原因は年齢別正常値を基準とするTOPの測定原理が影響していると考えられる.各測定点に視標を何回か呈示して網膜感度を測定するstaircase法とは異なり,TOPは図1のように各測定点を4つのstageに分けて1回だけ視標を呈示して測定を行う1).すべての視標呈示に対し反応があったと仮定すると,stage1,2,3,4に呈示される視標輝度はそれぞれ年齢別正常値の8/16(50%),12/16(75%),15/16(94%),17/16(106%)であり,補間される網膜感度は年齢別正常値の4/16,3/16,2/16,1/16である.stage3の視標輝度は年齢別正常値の94%の視標輝度であり,正表2グローバルインデックスの信頼区間5%25%中央値75%95%MeansensitivitySAP(dB)22.825.126.828.229.5SWAP(dB)20.722.523.724.926.6FP(Hz)36.038.942.044.846.4MeandefectSAP(dB)0.50.92.03.96.3SWAP(dB)0.31.83.44.46.3FP(Hz)5.13.50.82.45.3LossvarianceSAP(dB)0.81.72.94.15.3SWAP(dB)2.53.74.84.46.3FP(Hz)0.94.010.214.421.0正常と判定した被験者でSAP,SWAP,FPにおけるMS,MD,LVの5%,25%,中央値,75%,95%の信頼区間を算出した.SAP:n=47,SWAP:n=36,FP:n=38.SAP:StandardAutomatedPerimetry.SWAP:Short-WavelengthAutomatedPerimetry.FP:FlickerPerimetry.dB:Decibel,Hz:Hertz.表3グローバルインデックスの級内相関係数1回目2回目3回目級内相関係数信頼区間下限上限MeansensitivitySAP(dB)26.5±2.226.9±1.926.6±1.80.970.930.99SWAP(dB)23.7±2.223.7±2.323.6±2.10.850.680.94FP(Hz)41.0±4.440.7±4.240.9±3.90.930.840.97MeandefectSAP(dB)2.5±2.32.1±2.42.4±1.80.970.940.99SWAP(dB)3.2±2.33.1±2.43.2±2.20.870.730.95FP(Hz)0.2±4.50.7±4.20.3±4.00.930.840.97LossvarianceSAP(dB)2.7±1.33.3±1.53.1±1.20.770.520.90SWAP(dB)5.8±2.95.8±2.75.4±2.50.710.390.88FP(Hz)13.1±11.314.7±11.915.5±11.10.860.710.94SAP,SWAP,FPを3回ずつ施行して得られたMS,MD,LVの級内相関係数とその信頼区間を表している.n=20.平均±標準偏差.SAP:StandardAutomatedPerimetry,SWAP:Short-WavelengthAutomatedPerimetry,FP:FlickerPerimetry,dB:Decibel.Hz:Hertz.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010379(101)0510150510150246802468SAP2回目LV(dB)SWAP2回目LV(dB)FP2回目LV(Hz)SAP1回目LV(dB)SWAP1回目LV(dB)FP1回目LV(Hz)051015051015SWAP3回目LV(dB)SWAP1回目LV(dB)051015051015SWAP3回目LV(dB)SWAP2回目LV(dB)0246802468SAP3回目LV(dB)SAP1回目LV(dB)0246802468SAP3回目LV(dB)SAP2回目LV(dB)010203040010203040FP3回目LV(Hz)FP1回目LV(Hz)010203040010203040FP3回目LV(Hz)FP2回目LV(Hz)010203040010203040図2SAP(上段),SWAP(中段),FP(下段)におけるLVの散布図ばらつきが大きかったSAP,SWAP,FPにおけるLVの結果を散布図で示した.0510152025変動係数(%)個人内個人間個人内個人間個人内個人間SAPSWAPFP8.35.34.34.02.613.511.410.19.37.713.49.47.96.94.922.613.712.09.88.114.08.77.15.84.420.412.211.19.88.1最大値最小値中央値7525図3各測定点を平均した変動係数SAP,SWAP,FPにおける測定点ごとの個人内変動係数と個人間変動係数を平均した値をboxplotで表した.———————————————————————-Page6380あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(102)常者の視覚確率は閾値の50%や75%の視標輝度に対しては100%の反応を示すが,閾値の94%の視標輝度に対しては100%ではない5).図4の測定点ごとの個人内・個人間変動係数からstage3の測定点は個人内・個人間の変動がやや高く,閾値に近い視標輝度が呈示されるstage3は個人内でも個人間でも変動が大きいことがわかる.stage3に呈示される視標に対する反応の有無により年齢別正常値の±2/16が補間されるためstage3の反応は網膜感度を左右しやすい.たとえば,stage3の測定点であればおよそ±4dB補間されるため,最終的にはstage4での反応にもよるが,stage3での反応の有無で46dB差を生じることが計算上予想できる.網膜感度は正常範囲内であっても,全体的にやや感度が低い場合はstage3で反応できず網膜感度が低くなり,年齢別正常値と同じくらいの網膜感度を有する被験者はstage3で反応できるため網膜感度が高くなる.そのため個人間変動係数が高くなったと思われ,さらに個人間で網膜感度の差が大きいSWAP,FPはSAPに比べ個人間変動係数が高くなったと考えられる.過去の報告によると,個人間変動係数はFullThresholdとFASTPACを用いた場合SAPでそれぞれ6.0%,8.1%,SWAPでそれぞれ20.4%,26.0%6),Dynamicを用いた場合FPでは6.4%である7).しかし,同一被験者に対してTOPを用いた場合,つまり個人内変動係数を検討した結果は,SAPやFPは10%未満と良好な再現性を維持し,SWAPでは大幅に小さくなる(8.2%)ことからも,同一被験者に対するTOPの使用は有用であると思われるグローバルインデックスであるMSは全体の網膜感度を平均した値であり,MDは年齢別正常値との偏差を平均した値である.MSやMDは,網膜感度が良いところと悪いところがあったとしても平均されるため,大きな網膜感度差が生じない限り変動を受けにくい.しかし,年齢別正常値からの偏差をさらにMDで修正し視野の凹凸を表したLVは,MDに変化がなくても測定点によって網膜感度の変動があるとLVは変化しやすい.個人内変動係数の検討からもstage3の反応のばらつきがLVに影響して3回の結果の信頼区間が広くなったと考えられる.信頼性の検討では全体的な視野指標になるグローバルインデックス,年齢別正常値からの偏差であるcomparisonおよびcomparisonにおける全体的な網膜感度の偏差を修正したcorrectedcomparisonの3つの項目から検討したが,検討する項目によって特異度に差を生じた.①のグローバルインデックスのMDと②のcomparisonは年齢別正常値からの偏差を表しているため,個人間での網膜感度差が生じやすいTOPでは局所的な異常がなくても全体的に網膜感度が低い被験者は異常の基準に当てはまりやすい.また,TOPは隣接する測定点の網膜感度を補間する原理のため,網膜感度の沈下は浅くなり広くなる.そのため,グローバルインデックスやcomparisonの判定基準では異常と判定され特異度が低くなったと思われる.SWAPとFPはグローバルインデックスやcomparisonで特異度を検討すると低くなるが,これはSAPの基準と比較したからである.NormalストラテジーではあるがSAPとSWAPにおけるMS,MD,LVの信頼区間を求めた報告8)と比較するため,今回は参考までに若年者におけるグローバルインデックスの信頼区間を求めた.ストラテジーや被験者の年齢が違うため単純には比較できな(%)(%)(%)Stage1Stage2Stage3Stage4個人内4.04.06.04.4個人間9.69.912.110.1Stage1Stage2Stage3Stage4個人内7.18.99.47.2個人間12.111.813.611.1Stage1Stage2Stage3Stage4個人内6.38.18.66.9個人間10.210.812.711.2(%)(%)(%)SAP上段:個人内変動係数下段:個人間変動係数SWAP上段:個人内変動係数下段:個人間変動係数FP上段:個人内変動係数下段:個人間変動係数図4各測定点の変動係数(上)と各stageの変動係数(下)SAP,SWAP,FPにおける測定点ごとの個人内・個人間変動係数とstageごとの変動係数を表した.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010381いが結果はやや異なり(表4),今後は軽度緑内障患者と正常者を比較してSWAPやFPの異常基準も検討する必要がある.以上をまとめると,SAP,SWAP,FPにTOPを用いることは良好な信頼性と再現性を示すため有用である.しかし,個人間での網膜感度に差を生じやすいためTOPが適切ではない被験者も存在する.特に個人間で網膜感度に差が大きいSWAPやFPは年齢別正常値を基準に測定するTOPの原理が影響して特異度がやや低くなりやすい.グローバルインデックスやcomparisonで網膜感度が低くなる場合は,測定原理上生じた感度の低下なのか,真の感度の低下なのかを確かめるために測定点ごとの網膜感度を測定するNormal,Dynamicストラテジーによる確認も必要と考えられる.今回は正常若年者の検討であったが,早期緑内障の検出に有用であるSWAPやFPは使用される頻度も今以上に多くなることが予想される.短時間で精度が高いTOPにおける異常判定基準の検討が今後必要と考えられるが,現時点でSWAPやFPにおいてTOPを用いる場合は,診断の目的で用いるよりも経時的な変化を検討するために用いるほうが適当ではないかと考えた.文献1)GonzalezdelaRosaM,MartinezA,SanchezMetal:Accuracyoftendency-orientedperimetrywiththeOCTOPUS1-2-3perimeter.InWallM,HeijlAed:PerimetryUpdate1996/1997,p119-123,Kugler,Amster-dum/NewYork,19972)Octopus1-2-3perimeterdigest.Schlieren,Switzerland:InterzeagAG,19913)MoralesJ,WeitzmanML,GonzalezdelaRosaM:Com-parisonbetweenTendency-OrientedPerimetry(TOP)andoctopusthresholdperimetry.Ophthalmology107:134-142,20004)AndersonDR,PatellaVM:Automatedstaticperimetry.2ndedition.Mosby,StLouis,19995)ChauhanBC,TompkinsJD,LeBlancRPetal:Character-isticsoffrequency-of-seeingcurvesinnormalsubjects,patientswithsuspectedglaucoma,andpatientswithglau-coma.InvestOphthalmolVisSci34:3534-3540,19936)BlumenthalEZ,SamplePA,BerryCCetal:EvaluatingseveralsourcesofvariabilityforstandardandSWAPvisualeldsinglaucomapatients,suspects,andnormal.Ophthalmology110:1895-1902,20037)BernardiL,CostaVP,ShiromaLO:Flickerperimetryinhealthysubjects:inuenceofageandgender,learningeectandshort-termuctuation.ArqBrasOftalmol70:91-99,20078)MojonDS,ZulaufM:Normalvalueofshort-wavelengthautomatedperimetry.Ophthalmologica217:260-264,2003(103)表4過去の報告との比較Mojonetal今回の検討5%中央95%5%中央95%MeansensitivitySAP(dB)23.427.128.922.826.829.5SWAP(dB)17.825.429.820.723.726.6FP(Hz)36.042.046.4MeandefectSAP(dB)2.00.03.10.52.06.3SWAP(dB)4.20.45.30.53.46.3FP(Hz)5.10.85.3LossvarianceSAP(dB)2.03.612.30.82.95.3SWAP(dB)2.96.821.22.54.86.3FP(Hz)0.910.221.0過去の報告によって算出されたOCTOPUS視野計のSAP,SWAP(NormalStrategy)のMS,MD,LVの5%,25%,中央値,75%,95%の信頼区間と今回の結果と比較した.SAP:StandardAutomatedPerimetry,SWAP:Short-WavelengthAutomatedPerimetry,FP:FlickerPerimetry,dB:Decibel,Hz:Hertz.***

短波長視標を用いた新しいフリッカー視野測定

2009年4月30日 木曜日

———————————————————————-Page1(137)5690910-1810/09/\100/頁/JCLSあたらしい眼科26(4):569572,2009cはじめにStandardautomatedperimetry(SAP)によって510dBの網膜感度の低下が検出される頃にはその部位に対応する網膜神経節細胞はおよそ2040%失われている1).しかし,余剰性の少ない神経経路を測定することで,より早期の網膜感度の低下を検出できるようになってきた.これらの測定方法は大きく分けて2つあげられる.1つは短波長視標を用いた視野測定で余剰性の少ないkoniocellular系(K-cell系)を測定するshort-wavelengthautomatedperimetry(SWAP).もう1つは視標に点滅や錯視などの動きを用いた視野測定で余剰性の少ないmagnocellular系(M-cell系)を測定するickerperimetry(FP),frequencydoublingtechnology(FDT)である.FPは視標と背景のコントラストを固定し各網膜部位のフリッカー融合頻度を測定する.FDTは視標の〔別刷請求先〕平澤一法:〒228-8555相模原市北里1丁目15番地1号北里大学大学院医療系研究科視覚情報科学Reprintrequests:KazunoriHirasawa,C.O.,DepartmentofVisualScience,KitasatoUniversityGraduateSchool,MastersProgramofMedicalScience,1-15-1Kitasato,Sagamihara,Kanagawa228-8555,JAPAN短波長視標を用いた新しいフリッカー視野測定平澤一法*1鈴木武敏*2浅川賢*3望月浩志*3柳澤美衣子*3庄司信行*1,3,4*1北里大学大学院医療系研究科視覚情報科学*2鈴木眼科吉小路*3北里大学大学院医療系研究科眼科学*4北里大学医療衛生学部視覚機能療法学NewShort-WavelengthAutomatedPerimetrywithFlickerTargetKazunoriHirasawa1),TaketoshiSuzuki2),KenAsakawa3),HiroshiMochizuki3),MiekoYanagisawa3)andNobuyukiShoji1,3,4)1)DepartmentofVisualScience,KitasatoUniversityGraduateSchool,2)SuzukiEyeClinicKichikoji,3)DepartmentofOphthalmology,KitasatoUniversityGraduateSchool,4)DepartmentofOrthopticsandVisualScience,KitasatoUniversity,SchoolofAlliedHealthScience目的:Short-wavelengthautomatedperimetry(SWAP)とickerperimetry(FP)の手法を組み合わせたSWAP-FPとSWAP,FPの正常者における網膜感度を比較すること.対象および方法:対象者は正常有志者30名30眼である.視野測定には興和社製の網膜機能検査装置を用い,中心から3°,9°,15°,21°の同心円状に配置された計58点における網膜感度を測定した.SWAP,FP,SWAP-FPの各領域から得られる網膜感度を平均し3群間で比較した.結果:SWAPとSWAP-FPの15°と21°領域においてSWAP-FPの有意な網膜感度低下がみられた(p<0.05,p<0.01).SWAPとFP,FPとSWAP-FPの網膜感度には有意な差はみられなかった.結論:SWAP-FPは9°以内の視野検査法としてはSWAPやFPと同等であり,Bjerrum領域においては,網膜感度の低下をより早期に検出できる可能性が示唆された.Wecomparedretinalsensitivityin30eyesof30normalvolunteers,using3programs:short-wavelengthauto-matedperimetry(SWAP),ickerperimetry(FP)andSWAPwithFP(SWAP-FP).Weevaluatedtheaveragereti-nalsensitivityineacharea(3°,9°,15°and21°)usinganewperimeterforretinalfunction(KOWACo.),andcom-paredtheresultsamong3programs.RetinalsensitivityasmeasuredwithSWAP-FPwassignicantlylowerthanthatwithSWAPinzones15°and21°(p<0.05,p<0.01),whereastherewasnosignicantdierenceinretinalsen-sitivitymeasurementbetweenSWAPandFP,orbetweenFPandSWAP-FP,ineachzone.RetinalsensitivityasmeasuredwithSWAP-FPwasequaltoSWAPandFPwithinthe9°area.ItissuggestedthatdecreasedretinalsensitivitymaybedetectableintheBjerrumareaatanearlystage.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(4):569572,2009〕Keywords:視野,SWAP,Flicker視野,FDT,S-錐体.visualeld,shortwavelengthautomatedperimetry(SWAP),ickerperimetry,frequencydoublingtechnology(FDT),shortwavelengthsensitivecone(S-cone).———————————————————————-Page2570あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009(138)時間周波数を固定し各網膜部位のコントラスト閾値を測定する.症例によってはK-cell系が先に異常を示す場合や,またはM-cell系のほうが先に異常を示すこともあり,必ずどちらか一経路が先に選択的に障害されるわけではない2).そのため,SWAPの結果とFDTの測定結果を統合し統計学的に解析することで,より早期の異常を検出する報告もある3).そこで筆者らは興和社製の網膜機能検査装置を用いてSWAPとFPの手法を組み合わせたSWAP-FPを作成し,実際に正常者の網膜感度の測定を試みた.そして同装置を用いてSWAP,FPも作成し,3群間の網膜感度を比較した.I対象および方法対象者は眼圧,眼底に異常がなく,30cm近見視力1.0以上,本研究の趣旨を理解し同意を得た正常有志者30名30眼(男性5名,女性25名)である.対象者の詳細は,平均屈折値1.93±2.17D(+1.506.50D),平均眼軸長24.45±1.11mm(21.0025.93mm),平均年齢22.7±3.0歳(2030歳)である.眼底に豹紋状の変化が顕著である者,眼軸長が26mm以上の者,色覚異常者は除外した.視野測定には,鈴木らによって開発された興和社製の網膜機能検査装置を使用した(図1).本装置は視標が呈示されるディスプレイ(LA-17SO1-1M,MITSUBISHI社製)とそれを制御するノートパソコンからなる単純な構造であるが,背景色や視標色,視標の形や大きさ,測定範囲や測定点などが自由に設定できる.それらのなかから黄色背景に青色視標を呈示するSWAP,白色背景に黒色点滅視標を呈示するFP,黄色背景に青色点滅視標を呈示するSWAP-FPを作成し,以下の条件で測定を行った.今回作成したFP,SWAP-FPはフリッカー融合頻度を測定するのではなくコントラスト閾値を測定する手法である.1.測定環境検査は遮光カーテンで仕切られた暗室で行った.視標が呈示されるモニターと被験者の距離は40cm,必要に応じて近方40cmの屈折矯正を行った.測定点は中心の固視部より3°,9°,15°,21°の同心円状に配列された計58点,視標の形は『#』模様を採用した(図2).その理由はモニターの性能の関係上,通常視野検査に使用される円形視標を10Hzで点滅させると視標を等しい時間で反転することができないが,面積を減らした線形視標を点滅させると反転時間が等しくなるためである.視標サイズは直径9.02mm(GoldmannV相当)を使用し,フリッカー視標は10Hzで測定した.フリッカー視標の呈示条件は,背景輝度と視標輝度の間を点滅させ最高視標輝度のみを変化させる方法を用いた.2.網膜感度・測定プログラム網膜感度はパソコン画面の色を256段階で調節するRGB(red-green-blue)基盤の比率を約25ずつ変化させ010の11段階で表した(図3).図3に示す網膜感度はRGB基盤の比率を変えて表現したもので,通常の視野検査のように輝度を均等に変化させたものとは異なるため単位はないが,各段階における視標輝度をRGB基盤の数値の横に供覧する.固視監視カメラ制御PC視標提示モニター図1網膜機能検査装置()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()視標度()網膜感度視標度()図3網膜感度の表現方法(左は黒視標,右は青視標)RGB表記の横に視標輝度(cd/m2)を供覧した.10°10°10°10°10°10°20°20°20°20°20°20°9.02mm9.02mm図2測定点(左)と視標(右)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009571(139)測定プログラムは2段階の上下法を用いた.たとえば,はじめに網膜感度5を呈示し,反応があれば7,反応がなければ3を呈示し,反応の有無で折り返し網膜感度を決定した.上記をまとめた測定条件は表1に示す.SWAP,FP,SWAP-FPの測定順序はランダムに選択し,測定前に練習を行い,各測定の間の休憩は5分以上とった.Mariotte盲点を挟む上下2点を除外した各領域の網膜感度を平均し,SWAP,FP,SWAP-FPの3群間で比較した(Schee法).SWAP-FPの再現性を検討するために,30名中5名の協力を得て3回測定を行い,再現性(変動係数=標準偏差/平均網膜感度×100)とそれぞれの方法における検査時間も検討した.II結果はじめにSWAP-FPの再現性は,各測定点10%未満と安定していた.SWAP,FP,SWAP-FPの検査時間はそれぞれ5:08±0:19,5:30±0:29,5:22±0:27であり統計学的な有意差はなかった.つぎに,それぞれの測定領域における3つの検査方法で得られた網膜感度を比較すると,3°と9°の領域では3群間に有意差はなかったが,SWAPとSWAP-FPの網膜感度は15°と21°領域でSWAP-FPの網膜感度が有意に低下していた(p<0.05,p<0.01).しかし,SWAPとFP,FPとSWAP-FPの網膜感度に有意差はなかった(図4).III考按今回筆者らは早期緑内障性視野異常の検出を目的としたSWAP-FPの手法を作成し,正常者においては再現性のある安定した結果を得た.視野検査は心理物理学的検査であり,自覚的要素と他覚的要素が複雑にかかわってくる.過去の報告をまとめると,コントラスト閾値を測定するSAP,SWAP,FDTの各測定点における正常者の短期変動は約12dBであるのに対し4,5),フリッカー融合頻度を測定するFPは約5Hzである6).同じM-cell系を測定しているFDTとFPを比べてもFDTのほうが変動は小さく,フリッカー融合頻度を測る方法とコントラスト閾値を測る方法では変動幅が異なる.SWAP-FPはコントラスト閾値を測る手法を用いているため再現性のある安定した結果を導いたと考えられる.また,網膜電図を用いた短波長感受性錐体(S-錐体)機能の他覚的測定では,S-錐体はフリッカー刺激に弱く20Hzを超える高時間周波数の刺激ではS-錐体系は波形が乱れ正しく追従できなくなるという報告がある7).今回筆者らが使用した10HzはS-錐体系の検査に適しており安定した結果を導いたのではないかと考えられる.SWAPとSWAP-FPの比較では15°と21°の2つの領域でSWAP-FPの有意な網膜感度の低下が検出された.解剖学的にも視細胞8)や網膜神経節細胞9)は網膜の中心部位に多く分布しており,特にS-錐体はほとんどが10°以内に分布し全視細胞のなかでも出現頻度は少なく,網膜周辺部分ではさらに少なくなる10).そのためSWAP-FPは9°以内の視野測定では従来の視野計と同等の結果が予想されるが,Bjer-rum領域に網膜感度の低下を生じやすい緑内障患者ではSWAP-FPはSWAPより早期に検出できるかもしれない.また,FPとSWAP-FPを比較するとSWAP-FPの有意な網膜感度の低下は認められなかったが,15°,21°の周辺領域では網膜感度は低くなる傾向であった.今回の黄色背景の輝度は100cd/m2に達していないため正しくS-錐体系を測定できていない可能性があるが,背景輝度が100cd/m2であるSWAP-FPを用いることで9°以内中心視野や15°より外側の周辺視野の網膜感度は変わってくるかもしれない.他に,フリッカー融合頻度とコントラスト閾値を測定するフリッカー視野測定では同じM-cell系を測定していても緑内障の検出力はコントラスト閾値を測定するほうが優れているといった報告もあり11),コントラスト閾値を測定しているSWAP-FPはより鋭敏な検出力を有する可能性もあり,さらなる検討が期待される.しかし,SWAP-FPは短波長視標を用いてコントラスト閾値を測定するため,加齢による中間透光体混濁の影響12)を受けやすい欠点が予想される.モニターの性能の関係で背景輝度が100cd/m2に達しなかったため,正しくS-錐体を分離できていない可能性や,視標呈示時間が0.3secであり1.0secの刺激でなかったこと,液晶モニターを使用して色を表現しているため,肉眼では認表1測定条件の詳細SWAPFPSWAP-FP背景輝度77.3cd/m280.6cd/m277.3cd/m2視標色/背景色青/黄黒/白青/黄周波数0Hz10Hz10Hz視標提示時間0.3sec0.3sec0.3sec視標提示時間1.2sec1.2sec1.2sec視標サイズ直径=9.02mm(GoldmannV相当):SWAP***:FP:SWAP-FP網膜感度測定部位789100n=30Mean±SDSche??test*p<0.05**p<0.013?9?15?21?~~図4各測定方法の網膜感度の結果———————————————————————-Page4572あたらしい眼科Vol.26,No.4,2009(140)識できないが厳密には他の波長成分が混入しているなど,さまざま問題点があげられ,それらは今後の検討課題である.文献1)QuigleyHA,DunkelbergerGR,GreenWR:Retinalgan-glioncellatrophycorrelatedwithautomatedperimetryinhumaneyeswithglaucoma.AmJOphthalmol107:453-464,19892)SamplePA,BosworthCF,WeinrebRN:Short-wave-lengthautomatedperimetryandmotionautomatedperim-etryinpatientswithglaucoma.ArchOphthalmol115:1129-1133,19973)HornFK,BrenningA,JunemannAGetal:Glaucomadetectionwithfrequencydoublingperimetryandshort-wavelengthperimetry.JGlaucoma16:363-371,20074)BlumenthalEZ,SamplePA,BerryCCetal:EvaluatingseveralsourcesofvariabilityforstandardandSWAPvisualeldsinglaucomapatients,suspects,andnormal.Ophthalmology110:1895-1902,20035)HoraniA,FrenkelS,BlumenthalEZ:Test-retestvari-abilityinvisualeldtestingusingfrequencydoublingtechnology.EurJOphthalmol17:203-207,20076)BernardiL,CostaVP,ShirotaOLetal:Flickerperimetryinhealthysubjects:inuenceofageandgender,learningeectshort-termuctuation.ArqBrasOftalmol70:91-99,20077)横山実:眼病と青の感覚.臨眼33:111-125,19798)CurcioCA,SloanKR,KalinaREetal:Humanphotore-ceptortopography.JCompNeurol292:497-523,19909)CurcioCA,AllenKA:Topographyofganglioncellinhumanretina.JCompNeurol300:5-25,199010)CurcioCA,AllenKA,SloanKRetal:Distributionandmorphologyofhumanconephotoreceptorsstainedwithanti-blueopsin.JCompNeurol312:610-624,199111)YoshiyamaKK,JohnsonCA:Whichmethodofickerperimetryismosteectivefordetectionofglaucomatousvisualeldloss.InvestOphthalmolVisSci38:2270-2277,199712)JohnsonCA,AdamsAJ,TwelkerJDetal:Age-relatedchangesinthecentralvisualeldforshort-wavelength-sensitivepathways.JOptSocAm5:2131-2139,1988***